2023年 12月 31日
2023年06月07日取次搬入予定:ベンジャミン・ピケット『ヘンリー・カウ――世界とは問題である』本体6,000円。 2023年05月18日取次搬入予定:小泉義之『弔い・生殖・病いの哲学――小泉義之前期哲学集成』本体3,600円。 ◆最新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません) 2023年04月26日発売:『巡礼――髙﨑紗弥香写真集』本体6,000円。 2023年04月04日発売:長崎浩『中江兆民と自由民権運動』本体2,800円。 2023年03月31日発売:大谷能生『歌というフィクション』本体3,800円。 2023年02月15日発売:鈴木創士編『アルトー横断――不可能な身体』本体3,200円。 2023年02月02日発売:ジョルジョ・アガンベン『バートルビー 新装版』本体2,600円。 2023年01月26日発売:ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『場所、それでもなお』本体2,600円。 郷原佳以氏書評「「ユダヤ虐殺の場」見つめる」(「読売新聞」2023年4月2日朝刊書評欄) 岡本源太氏書評「徹底した「見ること」の実践――権力がいかに経験されるのかを解明する考察」(「週刊読書人」2023年4月21日号) 2022年12月21日発売:アレクサンドル・コイレ『イェーナのヘーゲル』本体4,500円、シリーズ・古典転生第28回配本本巻27。 2022年12月15日発売:ジョルジョ・アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの 新装版』本体2,600円。 ぱや氏書評(『綴葉』2023年4月号「新刊コーナー」) 2022年12月14日発売:築地正明『古井由吉――永劫回帰の倫理』本体3,000円。 長瀬海氏書評「強靭な読み、思考的な粘度のある議論――その文学に挑み続ける、僧の修行のような文芸評論」(「週刊読書人」2023年2月24日号) 2022年11月11日発売:ウィリアム・モリス『小さな芸術――社会・芸術論集Ⅰ』本体2,800円。 鈴木沓子氏書評「芸術に宿る「何か」、現代にも響く感性」(「週刊金曜日」2023年1月13日発売1407号「きんようぶんか」欄) 椹木野衣氏書評「美のある暮らしへの渇望を呼ぶ」(「朝日新聞」2023年2月25日付朝刊書評欄) 2022年10月14日発売:『手先と責苦――アルトー・コレクションⅣ』本体4,500円。 2022年10月13日発売:谷川渥『ローマの眠り』本体2,200円。 春木有亮氏書評「まさにバロック的書物ーーヴェール=襞が存在の原理だ」(「図書新聞」2023年2月18日号8面) Y氏紹介記事「デザインに秘められている思想」(「世界」2023年3月号「SEKAI Review of Books」内「新刊紹介」欄) 2022年10月13日発売:堀千晶『ドゥルーズ 思考の生態学』本体3,200円。 小倉拓也氏書評「可能ではない世界を、それでも断固として譲らないこと――ドゥルーズの「実存主義」を精緻に読み解く」(「図書新聞」2023年3月10日号5面) 2022年9月21日発売:谷川雁『影の越境をめぐって』本体2,200円。 2022年9月21日発売:谷川雁『戦闘への招待』本体2,400円。 2022年9月16日発売:『カイエーーアルトー・コレクションⅢ』本体5,200円。 2022年8月22日発売:ジョルジュ・バタイユ『マダム・エドワルダ』本体2,200円、叢書・エクリチュールの冒険第21回配本。 2022年8月17日発売:『アルトー・ル・モモ――アルトー・コレクションⅡ』本体4,000円。 2022年8月3日発売:谷川雁『工作者宣言』本体2,200円。 2022年8月3日発売:谷川雁『原点が存在する』本体2,400円。 上原佳久氏書評「革命の時代を遠く離れて」(「朝日新聞」2022年9月17日付「ブックエンド」欄) 2022年7月29日発売:森崎和江『闘いとエロス』本体2,600円。 2022年7月29日発売:森崎和江『非所有の所有――性と階級覚え書』本体2,400円。 ◎2022年7月1日発売:『ロデーズからの手紙――アルトー・コレクションⅠ』本体3600円。 ◎2022年6月27日発売:マルシアル・ゲルー『ザロモン・マイモンの超越論的哲学』本体4,000円、シリーズ古典転生第27回配本本巻26。 ◎2022年6月21日発売:『表象16:アニソン的思考――オーディオヴィジュアルの可能性』本体2,000円。 ◎2022年6月8日発売:カジャ・シルヴァーマン『アナロジーの奇跡』本体3,600円。 ◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎重版出来: 2023年03月20日:星野太『崇高の修辞学』4刷(2017年初刷) 2023年03月29日:ジョルジョ・アガンベン『創造とアナーキー』2刷(2022年5月初刷) ◆出版=書店業界情報:リンクまとめ ◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信」 ◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン」 ◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営」 ◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞 ◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍 ※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください。 ※月曜社について一般的につぶやかれている様子はYahoo!リアルタイム検索からもご覧になれます。月曜社が公式に発信しているものではありませんので、未確定・未確認情報が含まれていることにご注意下さい。ちなみに月曜社はtwitterのアカウントを取得する予定はありませんが、当ブログ関連のアカウントはあります。 #
by urag
| 2023-12-31 23:59
| ご挨拶
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2023年 05月 28日
★まず今月の注目新刊から4点列記します。 『アレ Vol.12 特集:それは「自然」ですか?』アレ★Club、2023年5月、本体1,500円、A5判並製268頁、ISDN278-4-572741-12-4 『耐え難き現在に革命を!――マイノリティと諸階級が世界を変える』マウリツィオ・ラッツァラート(著)、杉村昌昭(訳)、法政大学出版局、2023年5月、本体4,500円、四六判上製396頁、ISBN978-4-588-01156-6 『吉本隆明全集31[1998-1999]』吉本隆明(著)、月曜社、2023年5月、本体6,500円、A5判変型上製520頁、ISBN978-4-7949-7131-9 『レビュー大全 2012-2022』小谷野敦(著)、読書人、2023年5月、本体3,600円、四六判並製636頁、ISBN978-4-924671-59-1 ★『アレ Vol.12』は、「過去の人間の営みを振り返り、現代や未来について考える」というテーマで2021年の第9号から始まった第三期の締めくくりとなるもの。美術史家のクレア・ビショップさん、哲学者の古田徹也さん、都市工学者の廣井悠さんへのインタビューを掲載するほか、SF作家グレッグ・イーガンさんが昨春「クラークスワールド・マガジン」誌に発表した小説「ドリーム・ファクトリー」の翻訳を併載。充実した誌面に目を見張るばかりです。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。 ★『耐え難き現在に革命を!』は、『 L'intolérable du présent, l'urgence de la révolution - minorités et classes』(Eterotopia, 2022)の全訳。「この本の目的は〔…〕これまで書かれてこなかった20世紀における革命の総括をしながら、再び革命について語り始めることができるための諸条件を確定することである」(序論、5頁)。著者のラッツァラート(Maurizio Lazzarato, 1955-)はイタリアに生まれフランスで活躍する哲学者。これまでに5点ほどの既訳書があり、そのうちの4点に杉村昌昭さんが関わっておられます。なお杉村さんは来月、人文書院さんよりエドガール・モランの『戦争から戦争へ』という訳書を上梓されるご予定です。 ★『吉本隆明全集31[1998-1999]』は、『アフリカ的段階について――史観の拡張』(私家版非売品、試行社、1998年1月;市販版、春秋社、1998年5月;新装版、春秋社、2006年)を中心に、『遺書』(角川春樹事務所、1998年;ハルキ文庫、2004年)、『父の像』(ちくまプリマーブックス、1998年;ちくま文庫、2010年)、『少年』(徳間書店、1999年;徳間文庫、2001年)、などを中心に収録。付属の「月報32」は大塚融「一ツ橋新聞編集の青春と吉本さん」、小峰ひずみ「ポピュリストへ――吉本隆明について」、ハルノ宵子「科学の子」を掲載。 ★「19世紀の西洋資本主義社会の興隆期に、ルソーやヘーゲルやマルクスによってかんがえられた〔…〕史観がアフリカ大陸の社会の興隆とともにさまざまな矛盾や対立を惹き起こし、それが〔…〕19世紀的な史観の矛盾に起因するとみなされるとすれば、「アフリカ的段階」という概念を、人類史の母型(母胎)概念として基礎におき、史観を拡張して現代的に世界史の概念を組みかえざるをえないかもしれない。この考え方に形を与えようとする試みとして、この本の論考はできあがっている」(『アフリカ的段階について』序、10~11頁)。 ★『レビュー大全 2012-2022』は、小谷野さんによる、アマゾン・ジャパンへのカスタマーレビュー11年分を集成したもの。凡例によれば「書籍、雑誌、映画、ドラマ、オペラ、その他の映像・音声作品に対するレビュー」で、「各年の扉に、その年の「総括」を新たに付した」とのこと。総取り上げ作品=約3000点、と帯文にあります。 ★続いて人文書院さんの5月新刊より4点を列記します。『医学と儒学』のみ、まもなく発売で、ほかの書目は発売済です。 『デミーンの自殺者たち――独ソ戦末期にドイツ北部の町で起きた悲劇』エマニュエル・ドロア(著)、剣持久木/藤森晶子(訳)、川喜田敦子(解説)、人文書院、2023年5月、本体2,800円、4-6判上製194頁、ISBN978-4-409-51098-8 『吉見俊哉論――社会学とメディア論の可能性』難波功士/野上元/周東美材(編)、人文書院、2023年5月、本体4,500円、4-6判上製320頁、ISBN978-4-409-24157-8 『「ものづくり」のジェンダー格差――フェミナイズされた手仕事の言説をめぐって』山崎明子(著)、人文書院、2023年5月、本体4,500円、4-6判上製286頁、ISBN978-4-409-24156-1 『医学と儒学――近世東アジアの医の交流』向静静(著)、人文書院、2023年5月、本体5,200円、4-6判上製346頁、ISBN978-4-409-04124-6 ★特記したいのは『デミーンの自殺者たち』。『Les suicidés de Demmin : 1945, un cas de violence de guerre』(Gallimard, 2011)の全訳。著者のドロア(Emmanuel Droit, 1978-)はフランスの歴史家。ストラスブール政治学院教授。専門は東ドイツ史、20世紀の共産主義です。初めての訳書となる今回の新刊に、ドロアは「日本語版刊行に寄せて」という一文を寄せています。「本書は、第二次世界大戦末期の比較的知られていない出来事をフランスの読者に知ってもらうために書かれたものであった。1945年5月初めにドイツ北西部の小さな町は、ドイツ史上最大規模の集団自殺の舞台になった」(3頁)。 ★「ある時間的、空間的そして心理文化的な状況が、いかにして制御不能な暴力空間への道を開き、数百人もの市民が自殺するに至ってしまったのか」(同)。「この惨劇は、それが軍によるものであれ市民によるものであれ、暴力についての普遍的な謎にわれわれを対峙させる」(同)。「本書が定期した問題は、ナチ・ドイツに固有のものではない。それは第二次世界大戦末期において国土防衛に結びついた実存的課題を突き付けられ、軍部によって自己犠牲を求められていた日本人にも関わるものである」(4頁)。「より広く捉えるならば、ドイツの事例で出てきた場所、登場人物、描いてきた暴力の連鎖は、日本人の個人史や家族史と多くの潜在的な接点があるかもしれない」(同)。 ★帯文はこうです。「独ソ戦末期、ソ連兵の暴力をおそれ集団自殺を遂げたドイツの町があった。虐殺、強姦、放火、なぜ戦時暴力は起こりそのような悲劇が起こったのか。そしてその記憶は戦後ソ連の支配下にあった東ドイツでどのように封印されあるいは蘇ったのか。語られなかった戦争の悲劇を丹念に追う」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。 +++ 【雑記13】 出版社が十年に一度は必ず体験する災難のうち、台風や水害による書籍の汚損事故は多くの割合を占めるかもしれない。地震や雪害による汚破損の場合もないわけではないが、頻度がそれよりも高いのは水害である。商品が水害を受けた場合、取次から返品入帳の依頼が入る。汚破損となった書籍が返品されるわけではなく、実際は伝票上の処理である。丁寧な返品作業の場合には当該商品の汚損写真が送られてくるが、ここ二十年ではもはや写真提供はない。出版社から請求したとしても、汚損した書籍の山の写真のみの提示となる。そのなかに自社本が含まれているかどうかは確認のしようがない。あくまでも在庫データに基づいた返品依頼である。相手を信じるほかはない、いささか厄介な処理である。 後日、汚破損した書籍の代替品の出荷を短冊のみで依頼される場合がある。出版社が入帳したことへの一言の挨拶もなければ、水害対策の報告もない。率直な話、そういう店舗には再出荷する気にはなれない。某巨大チェーンのフランチャンジーの話だ。版元が出荷せずにいても、取次や書店から督促が入ることはない。要するにすべてが機械的プロセスなのだ。 そもそも論として、水害であれ閉店であれ、出版社に返品できることが当然とされているのは、商習慣として妥当なのだろうか。取次との取引契約書においてそのような条項はないと記憶する。契約外の事柄である。出版社として被災書店からの返品を断ることはない。しかし当然のように入帳を求められるのは違和感がある。将来的に日本列島を襲うかもしれない大地震や自然災害で大規模な被災が生じた場合、それもすべて出版社が肩代わりをするのだろうか。不安だと言わざるをえない。 被災ではなく通常の閉店で生じる返品については、いっそうの疑問が残る。書店の閉店は書店の都合であり、出版社の都合ではない。委託中の銘柄については返品は可能だとしても、それ以外の注文品も全部返品依頼を出版社に出すというのは、問題がある。なぜなら注文品は原則、書店側の売り切り努力が大前提だからだ。返品するかもしれないことを見込むならば、それは発注時に「返品条件付き」での出荷を出版社に要請する必要がある。 しかしそうしたルールはもはや長いことうやむやになっている。困ったことに「何でも注文できるし何でも返品できる」と勘違いしている現場書店員や本部統括担当は実在する。この話を某巨大チェーンとそのフランチャイジーに限定できればいいのだが、スタッフ教育のためのまとまった時間を作れないほど人員不足となっている書店ならどこでも起こりうることだ。 閉店返品の入帳が当然視される背景には、もっとも取り分の大きい出版社がリスクを取るべきだという考え方がある。それ自体としては間違いではないが、二つほど留意すべき点がある。ひとつには「だからと言って書店都合による閉店返品全入帳は取引条件の拡大解釈であり過剰適用である」こと、もうひとつはより根本的だが明るみにならない側面として「出版社とて本を作る直接費用や管理費、人件費などを除くと、残る利益は大きくはない」ということだ。 大型書店の閉店返品が年々増えている現在、閉店返品をめぐる基本ルールは書店、取次、出版社の三者間で今こそ再確認すべき重要事である。まずは、買切版元以外の本は何でも返品可能だという認識は間違っていると周知される必要があるのではないか。少なくとも、版元や取次の判断で送品されたものではなく書店が自主的に仕入れた書籍については、買切本でなくても販売責任があるということは、忘れられたり免責されたりして良いものではない。 再販制の弾力的運用を考えるならば、例えば閉店特別セールを考えてみるのもいいかもしれない。赤字になるほどの値引きが書店単独で不可能な場合は、版元によってはキックバックを許容するだろう。返品される方がいいか、売ってもらう方がいいか、の選択になる。実際のところは色々と制約と限界があるし、個々の準備や精算の手間も障害になる。閉店作業自体が大仕事なのだから、それに加えて書店の現場の仕事が増えるなら、それは現実的ではないだろう。チェーンなら本部の協力が不可欠だし、取次の助力も必要だ。 大型書店の閉店返品は出版社への過剰返品となる。他でかせいだ売上はその大量返品で相殺されてしまう。支店を続々と閉店させていく書店は、どんなチェーンであれ、一方で新規店を続々と計画したところで、出版社の信頼を徐々に失うだろう。いつ撤退するか分かったものではない店舗に出品などできない。その本音をチェーン本部や取次はどれくらい認識しているだろうか。 +++
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by urag
| 2023-05-28 22:08
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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2023年 05月 22日
2023年06月12日取次搬入予定 *人文・思想誌 多様体 第5号 特集:記憶/未来 月曜社 本体3,000円 A5判並製320頁(210x148x22mm) ISBN978-4-86503-167-6 過去から未来への、記憶の受け渡しを見つめる試み。記憶とはある時、哲学であり書物であり漁であり食である。人から人へ、ポステリティ(後世)の可能性が賭けられる。長編二篇は、フランスの哲学者トリスタン・ガルシアへのインタヴューと、哲学者近藤和敬による親子対話。デザイナーは松岡里美。 目次: 井奥陽子「〈占いの哲学〉に向けて」 東暑子「ロベルト・カラッソと「唯一の書物」」 なかのまさき「最後のサーミ人漁師」 秋元康隆「ラーショよ、永遠に」 栗脇永翔×中村彩「トリスタン・ガルシアとの対話」 近藤和敬×近藤きりん「多様体の哲学入門」 ジョヴァンニ・ジェンティーレ「純粋行為としての思考の行為」上村忠男訳 ノヴァーリス「『フィヒテ研究』抜粋【2】」宮田眞治訳 有地和毅「本を〈使う〉【2】」 鈴木康則「エリック・ヴェイユ、暴力と対話の哲学者【2】」 ハンス・カイザー「アクロアシス【4】」竹峰義和訳 檜垣立哉「中野幹隆とその時代【4】」 佐野衛「思想と時空【3】」 佐藤健一「店長日記【3】」 鎌垣英人「書店空間の定点観測【4】」 中野幹隆「編集後記四篇ほか」 #
by urag
| 2023-05-22 11:13
| 近刊情報
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2023年 05月 21日
★まず注目再刊書を2点挙げます。 『フランス語の余白に』蓮實重彦(著)、朝日出版社、初版1981年;2023年4月復刻版、本体3,630円、B5変型判上製104頁、ISBN978-4-255-01340-4 『キルヒャーの世界図鑑――よみがえる普遍の夢 新装版』ジョスリン・ゴドウィン(著)、川島昭夫(訳)、澁澤龍彦/中野美代子/荒俣宏(解説)、工作舎、初版1986年;新装版2023年3月、本体3,200円、A5判変型上製344頁、ISBN978-4-87502-553-5 ★『フランス語の余白に』は1989年3刷以来の再刊と思われます。久しぶりの刊行ですから、過去の版を持っていた方も再度購入されることでしょう。私もまたそうしました。その昔、書店員さんに請われて3刷を貸したことがありました。それほど待ち望まれていた再刊だったのではないかと思います。語学の教科書ではありますが、造本設計は瀟洒で美しく、見事としか言いようがありません。手掛けているのは杉浦康平さんと鈴木一誌さんです。 ★本書の「INTRODUCTION」はつとに有名だと思うのですが、語学習得にあたっての心得が開陳されており、わずか2頁の短文ながら、忘れ難い印象が読者の胸に刻まれます。「われわれが外国語を学ぶ唯一の目的は、日本語を母語とはしていない人びとと喧嘩することである。大学生たるもの、国際親善などという美辞麗句に、間違ってもだまされてはならぬ」(ii頁)。かつて別売だったマリー=シャンタル蓮實さん朗読の音声カセットは、復刻版に記載されているURLからストリーミングで聴けるようになりました。素晴らしいですね。 ★余談ですが、3刷と復刻版を見比べてみると、今回の復刻版はスキャン画像を元にしたものかと想像できます。一番分かりやすいところでは、巻頭の「INTRODUCTION」の漢字の潰れ具合からそう推理できるかもしれません。文字の鮮明さを求めるならば、図書館で旧版(活版印刷かと思います)をご覧になるか、古書価が高いですが、古書店で購入されることをお薦めします。 ★『キルヒャーの世界図鑑』はロングセラーの増補新装版。版元紹介文に曰く「図像を全面リマスター&20頁増補」とのこと。工作舎さんのウェブサイトでは「図像の新旧見比べ」という紹介ページがありますので、ぜひご参照ください。確かに今回の新しい版の方が断然鮮明です。目次を旧版と突き合わせてみると、今回増補された20頁というのは、「キルヒャー図像拾遺」のことかと思います。エディトリアル・デザインは旧版が祖父江慎さんで、新装版では宮城安総さんと小倉佐知子さんが加わっています。外まわりも中身もすべて美しいです。『フランス語の余白に』と同様に、問答無用で即決購入して良い本です。 ★次に今まで言及できていなかった注目既刊書を列記します。 『スピノザ全集 第Ⅴ巻 神、そして人間とその幸福についての短論文』上野修/ 鈴木泉(編)、上野修(訳)、岩波書店、2023年3月、本体4,200円、A5判上製函入232頁、ISBN978-4-00-092855-7 『泉々』ウラジーミル・ジャンケレヴィッチ(著)、合田正人(訳)、みすず書房、2023年3月、本体6,500円、A5判上製224頁、ISBN978-4-622-09607-8 『一八世紀の秘密外交史――ロシア専制の起源』カール・マルクス(著)、カール・アウグスト・ウィットフォーゲル(序)、石井知章/福本勝清(編訳)、周雨霏(訳)、白水社、2023年3月、本体2,500円、4-6判並製264頁、ISBN978-4-560-09494-5 『ポストメディウム時代の芸術――マルセル・ブロータース《北海航行》について』ロザリンド・クラウス(著)、井上康彦(訳)、水声社、2023年3月、本体2,500円、四六判上製182頁、ISBN978-4-8010-00698-0 ★特記したいのは、フランスの哲学者ジャンケレヴィッチ(Vladimir Jankélévitch, 1903-1985)の『泉々』。書名は「せんせん」と読みます。原著は『Sources : Recueil』(Seuil, 1984)です。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。訳者あとがきがないのでいささか戸惑いますが、原書の目次と比べる限りでは全訳と思われます。フランスワーズ・シュヴァブとの共編による論文集です。「トルストイとラフマニノフ」「似ている、似ていない(ユダヤ意識)」「思い出三篇」の三部構成。版元紹介文の文言を借りると、「1985年の哲学者の死の1年前、シュヴァブの協力を得て、みずからの意図を反映させて編まれた本書は、1冊の書物としてはじめて世に送られた論集。全12篇」。 ★原書通りに巻頭には、「これ〔本書〕に続いて音楽と哲学を論じた第二の論集が出版される予定である」と特記されていますが、生前には刊行されませんでした。シュヴァブの編纂によるジャンケレヴィッチの没後刊行物には『最初と最後のページ』(原著1994年;合田正人訳、みすず書房、1995年)や『死とはなにか』(原著1994年;原章二訳、青弓社、1995年)をはじめとして複数あります。ジャンケレヴィッチの著書には未訳のものがまだ多く、その全貌は日本の読者にはまだ知られていません。なお、訳者の合田正人さんは2003年に『ジャンケレヴィッチ――境界のラプソディー』という一書をみすず書房から上梓されています。現在は品切。 +++ 【雑記12】 周知の通り、丸善ジュンク堂書店および未来屋書店の日販帳合店が立て続けにトーハン帳合へと変更になった。業界外ではニュースになっていないが、これは出版人にとってみるとけっして小さいことではない。私が勤務する小さな専門書版元の場合、日販から丸善ジュンク堂書店が消えたことで、日販での新刊委託配本がしばしばできなくなるほど受注が減った。もともと小出版社はバラマキ配本ではなく、書店からの受注をもとに指定配本を行ってきたので、受注が少なければ、新刊の配本ラインを取得するほどの規模とはならず、注文条件での出荷に切り替わることとなる。 むろん返品条件付きでは出荷するが、書店と出版社は取次を挟んで取引条件が非対称になっているため、委託だろうが注文だろうが、書店には即請求となる。逆に版元では大手や老舗を除いては、委託条件の精算は半年後になるし、注文条件すら全額請求はできない。利益配分では取次会社が出版社や書店に比して一番小さいにもかかわらず、会社の規模としては大きくなるのは、出版業界でのモノとカネの流れを一挙的に集約する組織だからだが、彼らは非対称な時間差でカネの流れをコントロールできる存在でもある。これによって取次は相手が書店であれ出版社であれ、ほどほどに生かしておくことができる。 しかし今や書店の大半は経営に苦しんでおり、潰れるか取次の傘下になるかという厳しい選択肢が目前に迫っている。それ以外の第三の道は必ずしも自明ではない。いっぽう出版社は、大手を先行者として雑誌や書籍の出版元から電子形態を含むコンテンツ産業へと変貌しつつあり、変化できずに過去の栄光へしがみつくものは有名版元ですら淘汰される時代になってきた。とはいえ、紙媒体がすべてすたれてしまったわけではなく、人間が肉体を持つ以上は紙との親和性はまだ消えはしない。90年代後半から始まった出版不況以後も図書館は増え続けており、地域の賑わい創出に一役買っている側面もある。むろん現実として本の購入予算は年々減らされているし、自治体がいつまでハコモノを維持できるかという問題はあるので、安閑とはしていられない。 取次に話を戻すと、少なくとも数年前までは日販はリアル書店を大切にし、新業態の書店業を後押しする姿勢を見せていた。対照的だったのはトーハンで、不動産事業やフィットネス事業、コワーキングスペース事業等々、事業領域の拡大を図ってきた。二社とも本業の取次事業は苦戦している。出版人にはこう見えていたはずだ。トーハンがどこに向かうのかは分からないが、日販は本業での革新を目指すのだろう、と。しかし、このところ風向きが変わってきた。その最たるものが帳合変更である。丸善ジュンク堂や未来屋を取り込んだトーハンは売上が上向くだろうが、返品率上昇のリスクも否応なく高まるだろう。実際、小出版社の売上はそうなっている。トーハン帳合店の補充発注はかなり増えたが、返品もまた増えている。冷めた目で見れば、不採算店を順次切り捨てない限り、帳合店の増加はトーハンにとってお荷物を抱えるリスクになりかねない。 日販の場合、帳合店の補充注文は激減している。アマゾンと直取引している版元の場合、トーハンより月次の売上高が低くなるのではないか。日販経由でアマゾンに卸している版元はさほど売上に大きな変化はないだろう。それほどまでにアマゾンのシェアは大きい。アマゾン抜きでは日販はもはやリアル書店の取引においてはトーハンの後塵を拝することになるだろう。日販はもうダメでトーハンがいい、という単純な話ではない。ただ、日販とトーハンの棲み分けがそろそろはっきりしてくるころなのかもしれない。 特に気になるのはリアル書店との取引を縮小し続けている日販である。先日「文化通信」にこんな記事が出た。「日販グループホールディングス 代表取締役社長・吉川英作氏に聞く トリプルウィンから20年余 出版流通改革とESG」(2023年4月24日付)。有料記事である。大切な話があるなら業界紙に話すのではなくて、日販のウェブサイトに掲載するなり動画配信するなりすればいいではないか。がっかりである。 日販の3月9日付のニュースリリース「日販グループホールディングス、御茶ノ水本社と日販王子流通センターをリニューアル ~“共創と共生”一人ひとりが輝けるオフィス、環境と人に配慮したやさしい物流センターへ~」や、3月24日付の「日販 コーポレートサイトリニューアルのお知らせ~今後のさらなる成長に向けて全面刷新~」からも日販の方向性の一端は垣間見ることができるが、これらはありていに言えば「そとづら」である。また、日販のその後のニュースリリースには「2023年度 日販入社式を開催」(2023年4月5日)があり、そこでは代表取締役社長奥村景二氏のメッセージ要旨を読めるが、こちらは「うちづら」だ。 うちづらでもそとづらでもない、取次の本音の部分が見えてこない。イメージ戦略を取るのなら、本当に気にしなければならないのは世間様以上に取引先のはずである。コロナ流行以後、取次の仕入窓口と版元営業マンとの間には、リモート対応によって決定的な距離が生まれた。それによって無用の衝突の数々が減ったはずだが、逆に対話も途絶えた。互いに顔の見えない存在になりつつある。それでいいのだろうか。現在のリモート体制は実際のところコロナ前から実施が決まっていたもので、それが若干早まったにすぎない。既定路線を変更して昔に戻ればいいわけでもない。大切なのは本音で語り合える新しい絆、新しい真摯なつながりの回路を作ることだろう。そう信じることのできる取次人との出会いを希求している出版人もいるのだ。 +++
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by urag
| 2023-05-21 23:33
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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2023年 05月 14日
『シャーンドル・マーチャーシュ――地中海の冒険〈上・下〉』ジュール・ヴェルヌ[著]、三枝大修[訳]、ルリユール叢書:幻戯書房、2023年5月、上巻本体4,200円/下巻本体3,700円、四六変上製上巻456頁/下巻384頁、上巻ISBN978-4-86488-272-9/下巻ISBN978-4-86488-273-6 『方向性詩篇』大谷良太[著]、編集室水平線、2023年5月、本体2,700円、四六判上製110頁、ISBN978-4-909291-05-9 『サッシャ・ギトリ――都市・演劇・映画 増補新版』梅本洋一[著]、坂本安美[編]、ソリレス書店、2023年4月、本体3,600円、四六判並製394頁、ISBN978-4-908435-19-5 『戦争に行った父から、愛する息子たちへ』ティム・オブライエン[著]、上岡伸雄/野村幸輝[訳]、作品社、2023年4月、本体2,400円、46判並製288頁、ISBN978-4-86182-976-5 『人生を豊かにする科学的な考えかた』ジム・アル=カリーリ[著]、桐谷知未[訳]、作品社、2023年5月、本体1,800円、46判並製160頁、ISBN978-4-86182-971-0 ★特筆しておきたいのは『シャーンドル・マーチャーシュ』上下巻。「ルリユール叢書」第30回配本(41、42冊目)です。ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne, 1828–1905)は言わずと知れた19世紀フランスの小説家で、『海底二万里』『八十日間世界一周』『地底旅行』『十五少年漂流記』など数々の冒険小説によって、H・G・ウェルズと並ぶSFの先駆者として著名な大作家です。『シャーンドル・マーチャーシュ』(原題:Mathias Sandorf)は、1885年に刊行された海洋冒険小説。日本では金子博訳『アドリア海の復讐』(集英社、1968年;上下巻、集英社文庫、1993年)として知られています。 ★今回の新訳の帯文はこうです。「祖国ハンガリーの独立に向けた蜂起を計画し、順調に準備を進めていたはずの大貴族シャーンドル伯爵を待ち受ける試練とは――」。「悪党どもに正義の鉄槌を下さんとして、神出鬼没の謎多き医師アンテキルト博士とその仲間たちが地中海を舞台に躍動する」。「ヴェルヌが描く、狂瀾怒濤の海洋冒険物語」、「エッツェル版装画全点掲載の新訳決定版」。 ★訳者解題では次のように紹介されています。「『シャーンドル』はヴェルヌによる『モンテ・クリスト伯』〔大デュマ著、1844~1846年〕へのオマージュであり、それをあからさまに換骨奪胎してはいる。が、だからといって、前者が後者の焼き直し、二番煎じにすぎないというわけではないのである。〔…〕『シャーンドル』は〈驚異の旅〉におなじみのテーマをこれでもかというくらいに詰めこんだヴェルヌならではの快作であり、ひとたびこれを読み終えてみれば、ああヴェルヌだ、これぞまさにヴェルヌだ、としか感慨のつぶやきようがないのである」。 ★ちなみにヴェルヌ自身は1883年12月初旬の編集者エッツェル(Pierre-Jules Hetzel, 1814-1886)への手紙でこう書いていたそうです。「強姦も姦通も行き過ぎた情念も描くことなく、われわれの読者のために真の『モンテ=クリスト』を制作しようとしています」(訳者解題からの孫引き、下巻360頁)。ヴェルヌは『シャーンドル』を大デュマに捧げており、本書冒頭には献辞と、それに対する小デュマの返書が掲出されています。小デュマはこう書いています。「文学的な見地からすれば、貴方は私以上に彼〔大デュマ〕の息子なのです」。 +++ 【雑記11】 2017年3月に設立された自民党の議員連盟「書店議連」(街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟;旧称「全国の書店経営者を支える議員連盟」、2022年11月に改称、145名)の動向についてメモをとっておきたい。 業界紙「新文化」2023年5月1日付記事「書店議連、総会で「第一次提言案」を討議」によれば、同議連は去る4月28日に自民党本部で総会を開き、「書店業振興を政府に要望する「第一次提言」案を討議した」とのこと。連休明けから提言のとりまとめに入るとされ、「案では公正取引委員会に「不公正な競争環境等の是正」、文部科学省に「書店と図書館の連携促進」、経済産業省・財務省に「新たな価値創造への事業展開の支援」に取組むよう求めるなどしている」と報じられた。 遡って同紙の2022年12月9日付記事「書店議連「中間とりまとめ」発表、来春の最終報告に向け競争環境の是正など検討」では、検討の方向性として4点が挙げられている。改行を増やすなどして見やすくしてみる。 1)不公正な競争環境等の是正・・・ネット書店による送料無料配送、官公庁・図書館への納入業者を決める入札の際の過度な値引き、図書館の複本問題など。 2)DXの推進・・・ICタグの導入をテーマにした産官連携のモデルプロジェクトの発足など。 3)文化向上・文化保護の観点からの支援・・・クーポンの配布、出版物への消費税・軽減税率の適応など。 4)収益構造確立・新たな価値創造への支援・・・韓国・フランスなどに倣った書店業支援制度の創設、出店や新サービスへの支援など。 これらは12月8日の総会で確認されたもの。塩谷立会長(自民党財務委員長)は「法制化するところはしていきたい」と語ったとされている。さらに遡ってそのひと月前の11月2日の総会については、日書連(日本書店商業組合連合会)が発行する「全国書店新聞」2022年12月1日号記事「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟/新たな議連名に変更/来年5月までに提言書とりまとめ」で紹介されている。 席上で齋藤健幹事長(現法務大臣)が言及したのは次の4点。 1)深刻化する不公正な競争環境・・・ネット通販業者問題=過度な値引き、送料無料、発売日違反。 2)公共図書館問題・・・ベストセラーの過度な複数蔵書、著者権利の保護。 3)書店負担経費の増加・・・キャッシュレス手数料等。 4)万引きリスクの拡大・・・防犯カメラ・警備会社契約は書店負担。警察手続き負荷、買取業者の買取審査。 また、JPIC(出版文化産業振興財団)の松木修一専務理事(2022年4月時点ではトーハン図書館事業部長)が示した4項目の要望は以下の通り。これも見やすいよう改行等を施した。 1)書店産業振興のための経済対策(仮)の実施: 1-1)ICタグを活用した高度な商品供給インフラの整備・促進・・・ICタグの産業への大規模活用の実験的事例とするための、国の補助によるDXモデル事業の創出。 1-2)セルフレジ・キャッシュレス決済の普及への対応支援・・・対応途上である書店業界の対応加速化への国の支援。 1-3)書店産業への助成・・・店舗運営に必要な固定費補助や新規出店の助成制度。 1-4)書店・出版社系スタートアップへの助成・・・広く書店関連・出版関連のスタートアップ企業を支援)。 2)再販制度を基盤とした公正な競争環境の整備: 2-1)著作物再販制度の適切な運用が必要・・・ネット書店等における送料無料化の禁止=公正な競争を妨げないよう、制限を課す法の整備が必要。 2-2)入札値引き問題・・・入札時の過剰な値引きを禁ずる措置が必要。 3)書店と図書館共存・共栄のための環境整備: 3-1)永年出版界と図書館界での懸案となっている「複本」や「新刊本の貸出不可期間」について一定のルールを設ける必要がある。 3-2)現行図書館法第7条の2にある「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を書店との共存も含めた内容に改正する必要がある。 3-3)「図書館蔵書等における地元書店からの優先購入」等の措置が不可欠。 4)出版物への消費税軽減税率適用・・・先進諸国では出版物は軽減税率が適用されているとして、各国の適用状況を紹介。 また、過去にはこんな要望もあった。「「ネット書店課税」創設を 実店舗経営者、自民に要望」(産経新聞、2018年7月12日付)に曰く、「自民党の「全国の書店経営者を支える議員連盟」(会長・河村建夫元官房長官)が12日に開いた会合で、出席した書店経営者から「インターネット書店課税」創設の要望が上がった。インターネットによる書籍販売が普及し、実店舗の経営が圧迫されているとして「われわれは固定資産税を払っている。区別を図ってほしい」などと訴えた。/著作物を定価販売する「再販制度」維持のため、ネット販売の過度なポイント還元による実質的な値引きの規制も要請。来年の消費税増税に際し、書籍・雑誌への軽減税率適用を求める声も出た」。 なお、「全国書店新聞」2023年1月15日付記事「書店議連岸田首相と面会/塩谷会長、齋藤幹事長ら「中間とりまとめ」手渡す/街の書店守る政策実現を訴え」では、書店議連からは塩谷立会長、山谷えり子副会長(北朝鮮による拉致問題対策本部長)、齋藤健幹事長、小寺裕雄事務局次長(農林部会副部会長)、JPICからは近藤敏貴理事長(トーハン社長)、奥村景二副理事長(日本出版販売社長)、矢幡秀治副理事長(日書連会長)、小野寺優副理事長(河出書房新社社長、書協〔日本書籍出版協会〕理事長)が、首相官邸で岸田文雄首相と面会した様子が伝えられている。「中間とりまとめを手渡し、街の書店を守るための政策実現を訴えた」と。 記事によれば出版業界からは以下の声があったと書かれている: 「小さな書店だけでなく大型書店も街からなくなっている。自ら努力は続けるが限界もある。政府の支援をお願いしたい」(矢幡氏)。 「さらに書店の減少が続けば、全国津々浦々に同一価格で本を届け、雑誌を同時発売している仕組みは維持できず、取次もなくなる」(近藤氏)。 「書店がなくなれば、本と読者の出会う場がなくなる。出版社にはとても大きな問題」(小野寺氏)。 議連からは次のような発言があったそうだ: 「フランス、韓国では街の書店を守る政策がある。日本でもあってしかるべき」(山谷副会長)。 「子どもはネット書店では本と出会えない。子どもたちが本と出会えるのは街の書店。これをなくしてはいけない」(小寺事務局次長)。 首相はこれに対し、「首相就任後なかなか書店に行けないが、様々な本が並ぶ書店はまさしく文化。自分もあの空間は好きだし、なくしてはいけないと思う。書店議連の責任は重大だと認識している。塩谷会長を中心に頑張ってほしい」と発言したとのこと。「文化通信」紙2022年12月23日記事「書店議連、岸田首相と面会」によれば「15分程度」の面会だったようだ。 これ以上は長くなるのでいったんやめておくが、議連の各議員がほかにどんな議連に所属しているのか、また、類似する議連にはどのようなものがあるか、については非常に興味深い情報なので各自確認されたい。出版業界のロビー活動は一概に否定するものではないが、議員連盟は利権が絡みやすいし、選挙協力など業界との関係性もウェットになりがちだろう。専修大の植村八潮教授(日本出版学会元会長)が「政治とは一定の距離を保つべきだ」と発言していることが「朝日新聞」3月29日付記事「書店の「文化」、守るべきは誰? 支援求める業界、政治に頼る危うさ」で伝えられている。 気になるのは、議連の議論が、読者や小書店、小出版社の視点とどれだけ交差するか、である。政治家はとかく大文字で語って細部を飛ばしてしまう。彼らの言う「国民」や「文化」は、国民ひとりひとりの顔やさまざまな文化の諸層を否応なく抽象化する。日書連や書協がすべての書店や出版社を代表しているのではないように、議連もまた、あくまでもカギカッコ付きの「国民代表」である。このギャップを埋めるためには小書店や小出版社が業界団体に加盟すればいい、という単純な話ではないし、国民は議員に付託するしかない、という話でもない。ではどうすればいいのだろうか。 +++
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by urag
| 2023-05-14 23:13
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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