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2019年 04月 04日

注目新刊:デリダ『プシュケーII』、ネグリ『デカルト・ポリティコ』、ほか

弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様のご活躍をご紹介します。

★ジャック・デリダさん(著書『条件なき大学』)
Psyché : inventions de l'autre, tome 2』(Galilée, 2003)の訳書がついに刊行されました。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。70年代後半から80年代の主要論考16篇を収録した第Ⅰ巻は2014年6月に刊行済です。

プシュケー――他なるものの発明(Ⅱ)
ジャック・デリダ著 藤本一勇訳
岩波書店 2019年3月 本体8,700円 A5判上製576頁 ISBN978-4-00-024690-3
帯文より:デリダが希望を込めた投壜通信。「ハイデガーの手」「いかに語らずにいられるか」「不時のアフォリズム」ほか、全12篇を収録。いかに脱構築を受け継ぐか。

★アントニオ・ネグリさん(著書『芸術とマルチチュード』)
ネグリさんの最初期作『Descartes politico o della ragionevole ideologia』(Feltrinelli, 1970)の訳書がこちらもついに刊行です。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。なお、manifestolibriから2007年に原著が復刊された際に付された新たな序文は訳出されていません。

デカルト・ポリティコ――政治的存在論について
アントニオ・ネグリ著 中村勝己/津崎良典訳
青土社 2019年4月 本体3200円 四六判上製254+134頁 ISBN978-4-7917-7149-3
帯文より:ネグリ思想の原点。世界を震撼させたベストセラー『〈帝国〉』『マルチチュード』へと連結する、ネグリの幻の出世作。不在とされたデカルトの政治思想を、彼の形而上学のなかに大胆に読み込んで抉り出し、哲学者デカルトによる〈ブルジョア〉即ち市民のための哲学的急進主義として甦生させる。ネグリの可能性が横溢する野心的論考。

★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』)
新潟大学大学院現代社会文化研究科/人文学部哲学・人間学部会による『知のトポス』第14号が刊行され、宮﨑さんは編集長として共訳と編集後記を寄せておられます。同号はいずれ「人間学ブログ NINGENGAKU Blog」にてPDFが各論文ごとに無償配布されるだろうと思われます。第14号の目次は以下の通りです。

スタンリー・カヴェル「近代哲学の美学的諸問題」宮﨑裕助/高畑菜子訳
ヨハネス・ローマン「西洋人と言語の関係(言述における意識と無意識的形式)〔一〕」阿部ふく子/渡邉京一郎訳
アレクサンドル・コイレ「ヘーゲルの言語と専門用語についてのノート」小原拓磨訳
ゲルハルト・クリューガー「カントの批判における哲学と道徳(五)」宮村悠介訳
編集後記

★立木康介さん(共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★廣瀬純さん(著書『絶望論』、共著『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★佐藤嘉幸さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
2018年5~6月にかけて京都大学人文科学研究所で開催された「人文研アカデミー連続セミナー〈68年5月〉と私たち」で発表された10名の論考を収録した論文集『〈68年5月〉と私たち』に寄稿されています。佐藤嘉幸さんは「ドゥルーズ=ガタリと〈68年5月〉(1)――『アンチ・オイディプス』、『千のプラトー』をめぐって」、廣瀬純さんは「ドゥルーズ=ガタリと〈68年5月〉(2)――「〈68年5月〉は起こらなかった」読解」、 編者をつとめる立木康介さんは「〈68年5月〉にラカンはなにを見たか」と「あとがき」を担当されています。なお、同書の巻頭には35頁にわたり、故・西川長夫さんが撮影された〈68年5月〉のカラー写真が多数収められています。

〈68年5月〉と私たち――「現代思想と政治」の系譜学
王寺賢太/立木康介編
読書人 2019年4月 本体3,600円 A5判上製324頁 ISBN978-4-924671-37-9
帯文より:「左派も、一枚岩ではない。別の未来を切り開くために、決して単純ではなかった歴史と理論の結び目に、もう一度立ち返らなければならない」(千葉雅也)。50年の時の隔たりと政治的・文化的流行の盛衰を超えて、〈68年5月〉の出来事と同時代の思想の双方に触発されながら、現在について考える―― 。2018年5月、京都大学人文科学研究所で行われた連続セミナー(全10回)の全記録。〈68年5月〉は今、私たちに何を問うているのか。フランス現代思想、政治、哲学、精神分析、歴史、エピステモロジー…… 、10名の論者が、それぞれの専門領域から思考する。

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# by urag | 2019-04-04 18:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 04日

月曜社4月発売予定新刊『表象13:ファッション批評の可能性』

2019年4月26日取次搬入予定
※ゴールデンウィーク直前の物流混雑の影響が見込まれるため、連休明けの発売にずれこむ可能性があります。

表象13:ファッション批評の可能性
表象文化論学会=発行 月曜社=発売
本体:2,000円 A5判並製304頁 ISBN978-4-86503-074-7 C0010

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

20世紀末のファッション研究の興隆とともに、ファッション批評の試みも盛んとなった。しかし、多様な方法論と領域横断的アプローチを包摂するファッション研究は、未だ人文科学において独自の学術分野を形成しているとは言い難い。本特集では、共通項の多い映画批評/研究を補助線としつつ、現代のメディア環境における文化産業と批評の実践や研究の遂行との間の諸問題を剔抉し、ファッション批評/研究の可能性を徹底討議する。21世紀以降のファッション・スタディーズや、ファッション批評の包括的モデルを思考する上で礎石となるテクストの本邦初訳と解題も掲載。

目次:
★巻頭言
「経験と学問、あるいは、影を奪うために」田中純
★特集「ファッション批評の可能性」
共同討議「ファッション批評は可能か」平芳裕子+蘆田裕史+牧口千夏+三浦哲哉+門林岳史[司会]
「翻訳テクストへの序」蘆田裕史
「ベンヤミンと近代のファッションという革命」ウルリッヒ・レーマン|田邉恵子訳・解題
「ファッション批評の包括的システム」キョン-ヒ・チョイ&ヴァン・ダイク・ルイス|藤嶋陽子訳・解題
★投稿論文
「浮遊するカメラ・アイ――ヒッチコック『裏窓』とベケット『フィルム』をめぐって」岡室美奈子
「ミシェル・タピエの「アンフォルメル」概念について――『別の芸術』を中心に」野田吉郎
「王の肖像と装飾――ベルリン新博物館装飾壁画に描かれたフリードリヒ二世をめぐって」三井麻央
「エドワード・ゴードン・クレイグの仮面論と能の受容」山口庸子
★書評
「哲学は形式的告示であらざるをえないのか?――串田純一『ハイデガーと生き物の問題』書評」國分功一郎
「主体の哲学と概念の哲学のあいだで――阿部崇『ミシェル・フーコー、経験としての哲学』書評」柵瀨宏平
「ふたつの名をもつ国際展の定点観測――山下晃平『日本国際美術展と戦後美術史』書評」鯖江秀樹
「シェイクスピア受容研究と「女性史」の更新――北村紗衣『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち』書評」米谷郁子
「文学と映画の結節点としてのグレアム・グリーン――佐藤元状『グレアム・グリーン』書評」高村峰生
「映画/テレビ産業間の闘争と協働――北浦寛之『テレビ成長期の日本映画』書評」北村匡平
「「どこ」への郷愁――岡村民夫『立原道造』書評」串田純一
「「自由」な芸術のアクチュアリティ――木水千里『マン・レイ』書評」利根川由奈
「書かれている順番で読むことの難しさ――福尾匠『眼がスクリーンになるとき』書評」廣瀬純
「見ることと真似ること――平芳裕子『まなざしの装置』書評」北村紗衣

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# by urag | 2019-04-04 16:42 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 31日

注目新刊:エーディト・シュタイン『有限存在と永遠存在』水声社、ほか

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有限存在と永遠存在――存在の意味への登攀の試み』エーディト・シュタイン著、道躰章弘訳、水声社、2019年3月、本体8,000円、A5判上製602頁、ISBN978-4-8010-0420-7
新装版 ライプニッツ著作集 第I期[6]宗教哲学[弁神論]上』G・W・ライプニッツ著、佐々木能章訳、工作舎、2019年3月(初版1990年1月)、本体8,200円、A5判上製352頁+手稿8頁、ISBN978-4-87502-505-4 
新装版 ライプニッツ著作集 第I期[7]宗教哲学[弁神論]下』G・W・ライプニッツ著、佐々木能章訳、工作舎、2019年3月(初版1991年5月)、本体8,200円、A5判上製336頁+手稿8頁、ISBN978-4-87502-506-1
精神分析学入門』フロイト著、懸田克躬訳、中公文庫、2019年3月、本体1,500円、文庫判768頁、ISBN978-4-12-206720-2

★『有限存在と永遠存在』は、ブレスラウ(旧ドイツ帝国、現ポーランド)生まれ、フッサールに学んだユダヤ人哲学者で、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のガス室で亡くなった修道女のエーディト・シュタイン(Edith Stein, 1891-1942)の主著『Endliches und ewiges Sein: Versuch eines Aufstiegs zum Sinn des Seins』(Nauwelaerts / Herder, 1950)の全訳。執筆されたのは1935年から36年にかけての時期ですが、当時の発禁処分により死後刊行となったものです。底本はヘルダー社の新版全集11巻および12巻の合本版(2013年版、初版は2006年)とのことです。主要目次は書名のリンク先をご覧ください。訳者後記の言葉を借りると本書は、現象学を用いつつ「神を意識する哲学を構築し」「全存在の知解性の根源たる「第一存在」の意味へ」と向かうことにより「有限と無限なる両原理を総合」しようとしたもの。訳者の道躰さんによるシュタインの訳書は『国家研究』(水声社、1997年)に続く2点目です。

★シュタインは『有限存在と永遠存在』の第1章「緒論――存在の問題」でこう書いています。「神は己れの叡智が良しとする範囲内で、己れの叡智に相応しい方法で、人間精神に己れを伝達する。範囲を拡げるか否かは神の意志次第である。人間の思考方法に適合した形で、つまり漸進的認識に合わせ、概念的・断定的把握に即して啓示を与える、人間を自然的思考方法から引き上げ、それとは似ても似つかぬ認識方法へと拉し去り、一目ですべてを把捉する神の視点に据える、いずれも神の裁量である。真理探究としての哲学の到達点とは他でもない、神的叡智である。神をも全被造物をも把握せしめる単一の視点である。被造の精神が(無論自力によらずして)到達し得る極致とは、神のお蔭で神との合一を現出する「至福の視点」である。神の恵与せる視点である。被造の精神は神の生命と共生し、かくて神的認識に参入するのである。地上に生を営む間は、神秘的視覚心像が、上記の至高の目的を達成するための最重要な手掛かりとなる。が、かかる至福の恩寵に頼らぬ予備段階もある。真の生きた信仰がそれである」(43~44頁)。

★偶然ではありますが、シュタインの『有限存在と永遠存在』が初訳されたのとほぼ同時期にライプニッツの『弁神論』上下巻が再刊されたのは読書界にとっては良い贈物です。この二作を並行して読むことは、西欧哲学の深淵を読者に覗かせるものとなるでしょう。

★『新装版 ライプニッツ著作集 第I期[6/7]宗教哲学[弁神論]上下』は、新装復刊の第4回配本。『弁神論(Essais de Théodicée)』は1710年にアムステルダムで刊行。本論の副題にある通り、「神の正義、人間の自由、悪の起源について」を主題として書かれており、フランスの同時代人ピエール・ベール(Pierre Bayle, 1647-1706)による大著『歴史批評辞典』や『田舎人の問いへの答え』(野沢協個人訳『ピエール・ベール著作集』第3~5巻、第7~8巻参照)への批判的検討を試みています。

★ライプニッツは序文と本論の間に置かれた「信仰と理性の一致についての緒論」でこう述べています。「理性が何らかの命題を破壊するなら、理性はその反対の命題を打ち建てるのである。反対しあう二つの名大を理性が同時に破壊しているように思えるときには、理性が進めるところまでわれわれが付いて行くなた、理性はわれわれに何か深いものを約束してくれる。ただしこのときには論争的な精神によって付いて行くのではなく、真理を求め洞見せんとする熱い願いをもって付いて行くのである。こうすれば必ず望外の成果を収めることになろう」(112頁)。

★さらにこうも書いています。「啓示的信仰に対する反論が現われたときには、神の栄光を保持し高めようという意図の下で、柔順にして情熱的な精神をもってすれば反論を突き返すことが十分にできる。そして神の正義に対する反論を巧みに一蹴できたなら、神の偉大さについて改めて驚嘆し、神の善意に心魅かれることであろう。これら神の正義、偉大さ、善意は、われわれには見えないが十分に確実な真の理性によって精神が高まるに応じて、それまで視覚によって欺かれていた見かけの理性という雲を突き抜けて行くようだ」(113頁)。

★「神の善意と正義とを論証的に確信しているならば、われわれの目に映じる偏狭な世界での冷酷さや不公正という現象は、無視できるのである。これまでわれわれを照らしていたのは自然の光と恩寵の光であったが、それに栄光の光を付け加えることはなかった。地上にはみかけの不公正があるが、われわれはそこに神の正義の真理が隠されていることを信じているし、知ってもいる。しかし正義という太陽がその真相を露わにするときには、われわれはその正義を目にすることであろう」(113~114頁)。

★『精神分析学入門』は中公文庫プレミアム「知の回廊」シリーズの最新刊。旧版は1973年刊。巻末の編集付記によれば、旧版29刷(2014年10月)を底本とし、中公クラシックス版『精神分析学入門』全2巻を参照したとのことで、新たに柄谷行人さんによるエッセイ「フロイトについて」(759~764頁)が追加されています。

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★また最近では次の新刊との出会いがありました。

イタリアン・セオリーの現在』ロベルト・テッロージ著、柱本元彦訳、平凡社、2019年3月、本体4,200円、4-6判上製464頁、ISBN978-4-582-70347-4
大清律・刑律――伝統中国の法的思考(2)』谷井俊仁/谷井陽子訳解、東洋文庫(894):平凡社、2019年3月、B6変判上製函入376頁、ISBN978-4-582-80894-0
〈後期〉ハイデガー入門講義』仲正昌樹著、作品社、2019年3月、本体2,000円、46判並製400頁、ISBN978-4-86182-739-6
黒人小屋通り』ジョゼフ・ゾベル著、松井裕史訳、作品社、2019年3月、本体2,600円、四六判上製296頁、ISBN978-4-86182-729-7

★まずは平凡社さんの3月新刊より2点。『イタリアン・セオリーの現在』はイタリアでキュレーターとして活躍し、現在はイタリアと日本の各大学で教鞭を執るロベルト・テッロージ(Roberto Terrosi, 1965-)さんによる2015年の書き下ろし作『Filosofia italiana contemporanea: Un'introduzione critica』の訳書。テッロージさんはイタリアの美学者マリオ・ペルニオーラ(Mario Perniola, 1941-2018)の弟子で、本書が初めての訳書となります。目次は以下に転記しておきます。

はじめに
序説
第一部 イタリアン・セオリー
 前史 1960・70年代のイタリア極左運動――イタリアのポストモダンとイタリアン・セオリーの文化的土壌
 イタリア・セオリー――鍵概念
 生政治
  ネグリの生政治
  アガンベンの生政治
  エスポジトの生政治
  生政治に関する結論
 共同体とコモン
  アガンベンの共同体
  エスポジトの共同体
  マルチチュードとしての共同体
  共同体に関する結論
 政治神学
  シュミット・リヴァイヴァル
  基本的概念
  討論
 身体の政治学とイタリアン・セオリーの背景
  剥き出しの生とペルソナ
  ネグリ工房
  ナポリの状況
インテルメッツォⅠ
 1990年代のテクノロジーの思想と哲学的人間学
  サイバーパンク
  ポストヒューマン
  哲学的人間学の再発見
第二部 イタリアのポストモダン
 イタリアのポストモダン誕生時の社会と文化
  ニーチェ・ルネサンス
  ヴァッティモとハイデガー主義
  主観なき主観主義
  資本主義の再編
  ポストモダンのベル・エポック
  弱い思考
  ラディカル・シック
  イタリアのメディア、そして記号学の短い黄金時代
  シミュラクル
  雑誌『アルファベータ』
  イタリアのポストモダンとアメリカのモストモダン
  ヴェルディリョーネ――八方美人的知識人から犯罪的知識人へ
 ポストモダンのテーマ
  美学
  解釈学
  ハイデガーの影響
  ニヒリズム
  古典文化への回帰
 ポストモダンの哲学者たちと神学文化
  教会とカトリック神学の状況
  カッチャーリの展開
  ヴァッティモとペルニオーラ
 フェミニズムの思想
 複雑系の科学認識論
インテルメッツォⅡ
 地方とメディア
  エンツォ・メランドリ
  ロベルト・ディオニジ
  「セヴェリーノ」のケース
  ウンベルト・ガリンベルディ
  アウトサイダー――マンリオ・ズガランブロの場合
第三部 アカデミズムの哲学
 イタリアのアカデミズムの状況
 現象学のハイデガー
  ミラノの現象学派
  受動的綜合
  神経現象学と鏡ニューロン
 イタリアの分析哲学
  新実在論
 科学史と認識論
 古代哲学
 アカデミズムの政治哲学
  マルクス主義
  超保守主義と秘教主義
  右翼思想
あとがき
引照・参考文献一覧
人名索引

★「第一部はいわゆるイタリアン・セオリーを扱う。つまり政治的または政治神学的な背景をもったあれらの哲学、アメリカをはじめ英語圏の国々で思いがけない流行現象を巻き起こした思想がテーマである。第二部はイタリアン・セオリーに先行するポストモダンの哲学、そして第三部はアカデミズムの哲学の特徴と主な潮流について述べる。さらにテクノロジーの思想に関する記述を追加した。これはとりわけ1990年代のイタリアに展開したものだが、ポストモダンやイタリアン・セオリーのような世界的影響力はもたなかった」(「はじめに」9頁)。

★イタリア現代思想の入門書には、岡田温司さんの二つの著書、『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ、2008年)、『イタリアン・セオリー』(中公叢書、2014年)などがありましたが、テッロージさんの新刊は新たな定番として認知されていくのではないでしょうか。本書の刊行は日本におけるイタリア現代思想の受容を新たなレベルに引き上げるものだと感じます。

★『大清律・刑律2』は全2巻の第2巻。中国清代の法典『大清律』巻18~28の「刑律」の本文と原註(いわゆる小註)の全訳。沈之奇『大清律輯註』での注釈に基づく解説を付しています。第2巻は、受贓篇、詐欺篇、犯姦篇、雑犯篇、捕亡篇、断獄篇を収録。巻末には訳註、改訂箇所一覧(雍正律、乾隆律)、参考文献、あとがき、索引が配されています。次回配本は2019年6月、『泰山』とのことです。

★次に作品社さんの3月新刊より2点。『〈後期〉ハイデガー入門講義』は2017年4月から11月にかけて読書人スタジオで行われた全7回の連続講義に加筆修正したもの。『形而上学入門』と『「ヒューマニズム」について』の読解を通じ、『存在と時間』以後の転回(ケーレ)を経た後期ハイデガーを解説しています。本書の冒頭で仲正さんはこう書いています。「近現代の哲学史の標準的教科書を書く場合〔…〕ハイデガーを省くことは困難だろう。ハイデガーを消せば、少なくとも、サルトル、メルロ=ポンティ、レヴィナス、アーレント、ハーバマス、デリダも消さざるを得なくなる。最近、天才哲学者として人気が出ているマルクス・ガブリエルを新たに書き加えるのも困難になるだろう」(1頁)。『ハイデガー哲学入門――『存在と時間』を読む』(講談社現代新書、2015年)に続く成果です。

★『黒人小屋通り』はフランス領マルチニック島(マルティニーク島とも)生まれの小説家ジョゼフ・ゾベル(joseph Zobel, 1915-2006)の自伝的小説『La Rue Cases-Nègres』(Éditions Présence Africaine, 1950)の訳書。1920年代から30年代前半のマルチニック島での植民地社会が少年の視点で描かれており、カリブ海文学の古典として高名。別刷付録として「マルチニック島詳細図」と「マルチニック島周辺地図」が付されています。同作品は1983年に映画化され日本でも1985年に『マルチニックの少年』として公開されていましたが、原作の日本語訳は初めてです。

★さらに次の書目との出会いもありました。年度末の忙しさから詳しくは言及できないのですが、書誌情報を列記します。

全ロック史』西崎憲著、人文書院、2019年2月、本体3,800円、A5判並製512頁、ISBN978-4-409-10041-7
皇室財産の政治史――明治二〇年代の御料地「処分」と宮中・府中』池田さなえ著、人文書院、2019年3月、本体6,800円、A5判上製444頁、ISBN978-4-409-52076-5
長崎の痕』大石芳野写真、藤原書店、2019年3月、本体4,200円、四六倍判変型並製288頁、ISBN978-4-86578-219-6
象徴でなかった天皇――明治史にみる統治と戦争の論理』岩井忠熊/広岩近広著、藤原書店、2019年3月、本体3,300円、四六並製304頁、ISBN978-4-86578-217-2
兜太 TOTA vol.2〈特集〉現役大往生』藤原書店、2019年3月、本体1,800円、A5並製192頁、ISBN978-4-86578-216-5
現実のクリストファー・ロビン――瀬戸夏子ノート2009-2017』瀬戸夏子著、書肆子午線、2019年3月、本体2,700円、四六判並製筒函入416頁、ISBN978-4-908568-20-6
現代思想2019年4月号 特集=新移民時代――入管法改正・技能実習生・外国人差別』青土社、2019年3月、本体1,400円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1379-0

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# by urag | 2019-03-31 23:54 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 29日

ブックツリー「哲学読書室」に久保田晃弘さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ジェームズ・ブライドル『ニュー・ダーク・エイジーーテクノロジーと未来についての10の考察』(NTT出版、2018年11月)の訳者、久保田晃弘さんによるコメント付き選書リスト「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?

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# by urag | 2019-03-29 19:38 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 28日

注目新刊:ele-king臨時増刊号『黄色いベスト運動』、岡田聡『ヤスパースとキリスト教』

弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様のご活躍をご紹介します。

★毛利嘉孝(著書:『文化=政治』、共訳:ギルロイ『ブラック・アトランティック』、クリフォード『ルーツ』)
★鵜飼哲(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★栗原康(寄稿:『多様体1』)
「eleking」誌の臨時増刊号2019 vo.l1『黄色いベスト運動』が今月発売となり、毛利さんが「「暴動」と新自由主義的グローバリズムの終焉──排他主義的極右勢力の台頭か、新しいコミュニズムか」と題したコラムを寄稿され(135~138頁)、鵜飼さんがセルジュ・カドリュッパニさんとの緊急討論「フランス「黄色いベスト(ジレ・ジョーヌ)」運動はどこに向かうのか?」を行ない(140~146頁)、栗原さんは白石嘉治さんと対談「黄色いベストはやさしい──問われているのは資本主義ではなく国家的なものである」を行なっています(147~154頁)。このほかにも、堀茂樹、松尾匡、國分功一郎の各氏へのインタヴューや、コリン・コバヤシさんらによる論考、『ル・モンド・ディプロマティーク』からの主要記事を掲載しています。目次詳細は誌名のリンク先でご確認下さい。

ele-king臨時増刊号 黄色いベスト運動──エリート支配に立ち向かう普通の人びと
ele-king編集部編
ele-king books: Pヴァイン 2019年3月 本体1,660円 A5判並製160頁 ISBN978-4-909483-25-6
帯文より:地方に暮らす “おじさん・おばさん” が起こした奇跡のムーヴメント、エスタブリッシュメントへの反撃。いま何が問題なのかを私たちにも教えてくれる、今世紀もっとも重要な社会運動の真相に迫る!

★岡田聡(訳書:シュスラー『ヤスパース入門』)
初めての単独著『ヤスパースとキリスト教』を今月上梓されました。巻頭の「はじめに」によれば、「2014年の博士論文「精神医学から哲学へいたるヤスパースの思索全体と根本態度」にもとづきつつ、精神医学に関する部分を切り離して、ヤスパースとキリスト教にかかわる部分に加筆、修正したものである」とのことです。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。

ヤスパースとキリスト教――二〇世紀ドイツ語圏のプロテスタント思想史において
岡田聡著
新教出版社 2019年3月 本体2,500円 四六判上製224頁 ISBN978-4-400-31088-4
帯文より:ヤスパース思想はキリスト教からいかなる影響を受けたのか、またキリスト教にいかなる影響を与えたのか。本書はこの課題を、ヤスパースとキリスト教との「近さ」と「遠さ」の間に探りつつ、ブルトマン、ブーリ、ティリッヒ、H・バルト、K・バルトらとの関係を通して明らかにする。
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# by urag | 2019-03-28 23:56 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 27日

ジョルジョ・アガンベン「ホモ・サケル」シリーズ

◎アガンベン「ホモ・サケル」シリーズ

I) Homo Sacer: Il potere sovrano e la nuda vita, Torino: Einaudi, 1995.『ホモ・サケル――主権権力と剥き出しの生』高桑和巳訳、以文社、2003年。

II, 1) Stato di eccezione, Torino: Bollati Boringhieri, 2003.『例外状態』上村忠男・中村勝己訳、未來社、2007年。

II, 2) Stasis: La guerra civile come paradigma politico, Torino: Bollati Boringhieri, 2015.『スタシス――政治的パラダイムとしての内戦』高桑和巳訳、青土社、2016年4月。

II, 3) Il sacramento del linguaggio: Archeologia del giuramento, Roma: Laterza, 2008.

II, 4) Il Regno e la Gloria: Per una genealogia teologica dell'economia e del governo, Vicenza: Neri Pozza, 2007, Torino: Bollati Boringhieri, 2009.『王国と栄光――オイコノミアと統治の神学的系譜学のために』高桑和巳訳、青土社、2010年。
※『王国と栄光』の原書は当初「ホモ・サケル」第II部第2巻として初版が2007年に刊行され、2009年に別の版元から図版が増補された新版が刊行された。日本語訳はこの新版を底本としている。2015年に新たに『スタシス』が第II部第2巻として刊行されるに伴い、『王国と栄光』は第II部第4巻に変更された。

II, 5) Opus Dei: Archeologia dell'ufficio, Torino: Bollati Boringhieri, 2012.『オプス・デイ』杉山博昭訳、以文社、近刊。

III) Quel che resta di Auschwitz: L'archivio e il testimone, Torino: Bollati Boringhieri, 1998.『アウシュヴィッツの残りのもの――アルシーヴと証人』上村忠男・廣石正和訳、月曜社、2001年。

IV, 1) Altissima povertà: Regole monastiche e forma di vita, Vicenza: Neri Pozza, 2011.『いと高き貧しさ――修道院規則と生の形式』上村忠男・太田綾子訳、みすず書房、2014年。

IV, 2) L'uso dei corpi, Vicenza: Neri Pozza, 2014.『身体の使用――脱構成的可能態の理論のために』上村忠男訳、みすず書房、2016年1月。

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# by urag | 2019-03-27 18:17 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 22日

ブックツリー「哲学読書室」に森田裕之さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『ドゥルーズ『差異と反復』を読む』(作品社、2019年2月)の著者、森田裕之さんによるコメント付き選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ

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# by urag | 2019-03-22 15:46 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 19日

取次搬入日決定および書影公開:ロザリンド・クラウス『視覚的無意識』

弊社3月新刊、ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』の取次搬入日が決定しましたので、お知らせいたします。日販、トーハン、大阪屋栗田、ともに3月22日(金)です。書店さんへの着荷はおおよそ26日(火)ないし27日(水)以降、順次となります。店頭発売開始はおおよそ来週後半からです。どうぞよろしくお願いいたします。どこの書店さんに並ぶかは、地域をご指定いただければお答えします。電話、FAX、Eメール、当ブログコメント欄、ツイッター、等々でお気軽にお問い合わせください。

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# by urag | 2019-03-19 11:55 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 18日

注目新刊:ハーマン『非唯物論』河出書房新社、ほか

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弊社出版物でお世話になっている皆様の最近のご活躍をご紹介します。

◆上野俊哉さん(著書:『増補新版 アーバン・トライバル・スタディーズ』、共訳:ギルロイ『ブラック・アトランティック』)
一昨年に刊行された『四方対象――オブジェクト指向存在論入門』(岡嶋隆佑/山下智弘/鈴木優花/石井雅巳訳、人文書院、2017年9月)に続くグレアム・ハーマン(Graham Harman, 1968-)の訳書第2弾『非物質論』の翻訳を手掛けられました。同書は『Immaterialism: Objects and Social Theory』(Polity Press, 2016)の訳書です。書誌情報と目次を以下に掲げます。

非唯物論――オブジェクトと社会理論
グレアム・ハーマン著 上野俊哉訳
河出書房新社 2019年3月 本体2,600円 46判上製216頁 ISBN978-4-309-24901-8
帯文より:対象(オブジェクト)は非関係によって知られ、共生は非相互的、非対称的である――。アクター-ネットワーク論や新たな唯物論との対決を通して、オブジェクト指向存在論の核心を「非唯物論」としてあきらかにし、オブジェクトとしての東インド会社の考察によってその社会・歴史への応用をしめしたハーマン自身によるハーマン入門。
訳者解説より:むしろ、こう言ってもいい。ハーマンは、これまで人間について語られてきた哲学的概念を徹底して対象やモノ、非人間一般についても言えるようにするための概念に作りかえることを絶えず試みている、と。

目次:
第一部 非唯物論
 1 オブジェクトとアクター
 2 掘り重ねという危険
 3 唯物論と非唯物論
 4 ANTを発展される試み
 5 モノ自体
第二部 オランダ東インド会社
 6 VOC(東インド会社)の紹介
 7 共生について
 8 総督クーン
 9 バタヴィア、スパイス諸島、マラッカ
 10 アジア内部のVOC
 11 ANT再論
 12 創生、成熟、衰微、終焉
 13 OOOの方法をめぐる15の暫定的なルール
解説 モノたちとのおちつかない共生に向けて|上野俊哉
参考文献

★「この本の第一部は1900年における現象学以降に登場した最も重要な哲学的方法となっているアクター-ネットワーク・セオリー(ANT)、ならびにわたし自身の立場であるオブジェクト指向存在論(OOO)と、これとしばしば混同される現代思想の一派である「新しい唯物論」に焦点をあてている」(9頁)。「オブジェクト指向社会理論の探究の動機は、まずオブジェクト指向哲学への関心に求められる。この哲学の最初の公準はこうなる。一切がひとしなみに実在=現実的であるとは言えないにしても、あらゆる対象はひとしく対象(オブジェクト)である。つまり、実在的対象の自律性と感覚的対象の従属性――対象(オブジェクト)に出会う存在者がどんなものであれ、感覚的対象(オブジェクト)はそれに従属しているということ――をわれわれは区別しなければならないということである」(11頁)。

◆溝口昭子さん(寄稿:『多様体1』)
◆吉田裕さん(寄稿:『多様体1』)
先月末発売され今月より店頭発売開始となった以下の論文集に『多様体1』へのご寄稿との関連がある論考を執筆されています。溝口さんは第Ⅰ部「ネイションを求めて――コロニアリズムからの脱却」の第2章「国民国家(ネイション=ステイト)を希求する人びと――南アフリカ人作家H・I・E・ドローモの劇における国家観の変遷」(61~97頁)を執筆され、吉田さんは第Ⅱ部「ネイションのはざまで――ポストコロニアリズムの位相」の第4章「植民地主義と情動、そして心的な生のゆくえ――ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』と『故郷喪失の喜び』における恥の位置」(137~174頁)を執筆されています。

国民国家と文学――植民地主義からグローバリゼーションまで
庄司宏子編著
作品社 2019年2月 本体3,200円 46判上製340+11頁 ISBN978-4-86182-727-3
帯文より:〈国民国家〉の“本質”とはなにか? 文学的想像力から迫るポストコロニアル研究の最前線。

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# by urag | 2019-03-18 18:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 17日

注目新刊:中村隆之編訳『ダヴィッド・ジョップ詩集』夜光社、ほか

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新記号論――脳とメディアが出会うとき』石田英敬/東浩紀著、ゲンロン、2019年3月、本体2,800円、四六判並製450頁、ISBN978-4-907188-30-6
いつもそばには本があった。』國分功一郎/互盛央著、講談社選書メチエ、2019年3月、本体900円、四六判並製128頁、ISBN978-4-06-515012-2
日本を解き放つ』小林康夫/中島隆博著、東京大学出版会、2019年1月、本体3,200円、四六判並製424頁、ISBN978-4-13-013097-4
創造と狂気の歴史――プラトンからドゥルーズまで』松本卓也著、講談社選書メチエ、2019年3月、本体2,150円、四六判並製384頁、ISBN978-4-06-515011-5
大人から見た子ども』モーリス・メルロ=ポンティ著、滝浦静雄/木田元/鯨岡峻訳、みすず書房、2019年3月、本体3,800円、四六判上製304頁、ISBN978-4-622-08783-0
アルゴナウティカ』アポロニオス・ロディオス著、堀川宏訳、西洋古典叢書:京都大学学術出版会、2019年3月、本体3,900円、四六変判上製432頁、ISBN978-4-8140-0174-3
社会学用語図鑑――人物と用語でたどる社会学の全体像』田中正人編著、香月孝史著、プレジデント社、2019年3月、本体1,800円、A5判並製296頁、ISBN978-4-8334-2311-3

★年度末の忙しさで一冊ずつ掘り下げる時間に乏しいため、いくつかにまとめてごく簡単にコメントします。まず最初に、ここ約一月半の間に優れた対談本が連続している件です。小林康夫/中島隆博『日本を解き放つ』と、石田英敬/東浩紀『新記号論』、そして対談ではありませんが、二人のやりとりを収めた國分功一郎/互盛央『いつもそばには本があった。』も加えておきたいと思います。最前線の星々の交流と邂逅は美しく刺激的です。東大閥かあ、などという表面的な括りは脇に置いて楽しむ方がいいですが、東大生協書籍部でこの3冊がどんな動きをするのかについては一営業マンとしてとても興味が沸きます。

★次に『創造と狂気の歴史』と『大人から見た子ども』。前者は「「創造と狂気」という問題が西洋思想史のなかでどのように扱われてきたのかを〔…プラトンからドゥルーズまで〕様々な哲学者や思想家の議論をもとに追いかけていきます。そうすることによって、これまでの世界で「クリエイティヴ」であるとされていたのがどのような人々であるのかを理解できるようになるでしょう。さらには、現代において「クリエイティヴ」であるための条件がどのようなものであるのかを理解できるようになるかもしれません」(4~5頁)。後者はカヴァー裏紹介文に曰く「1949年から1951年にかけてメルロ=ポンティがソルボンヌ大学の児童心理学と教育学の講座で行なった一連の講義の要録、およびそれに関連するテクスト4編を収録」。この2冊とも、AIによる分析や判断が社会を覆っていくただなかにおいて「人間とは何か」を考える上で示唆的です。

★最後に『アルゴナウティカ』と『社会学用語図鑑』。前者は古代ギリシアの叙事詩の新訳であり、後者はベストセラー『哲学用語図鑑』『続・哲学用語図鑑』に続く図解本です。一見、まったく別の本ですが、かたや神話世界の、かたや学知の世界の、それぞれ英雄たちが活躍する様を堪能できるという意味ではどちらも素晴らしい本です。詩が喚起するものと、イラストが喚起するものは、想像力と視覚認識の差はあれともに映像的なのですね。この2冊が書店さんの店頭で隣り合わせになることはないと思いますけれども、群舞の壮麗さは特筆すべきではあります。

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★続いてここ最近の文庫新刊から注目書を列記します。

詩学』アリストテレス著、三浦洋訳、光文社古典新訳文庫、2019年3月、本体1,140円、413頁、ISBN978-4-334-75397-9
ソヴィエト旅行記』ジッド著、國分俊宏訳、光文社古典新訳文庫、2019年3月、本体1,100円、350頁、ISBN978-4-334-75396-2
技術とは何だろうか 三つの講演』マルティン・ハイデガー著、森一郎編訳、講談社学術文庫、2019年3月、本体720円、176頁、ISBN978-4-06-515010-8
孟子 全訳注』宇野精一訳、講談社学術文庫、2019年3月、本体1,690円、504頁、ISBN978-4-06-514311-7
花のことば辞典 四季を愉しむ』倉嶋厚監修、宇田川眞人編著、講談社学術文庫、2019年3月、本体1,110円、288頁、ISBN978-4-06-514684-2
悩ましい国語辞典』神永曉著、角川ソフィア文庫、2019年2月、本体1,080円、432頁、ISBN978-4-04-400348-7

★光文社古典新訳文庫の3月新刊は2点。アリストテレス『詩学』は「2000年間クリエーターたちの必読書である「ストーリー創作」の原点」という帯文が秀逸です。訳注だけでなく、本書の半分の分量を占める長編の訳者解説も充実。この解説には作者不明の写本ながら『詩学』と類似した内容をもつ「コワスラン論考」の全訳も含まれています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ジッド『ソヴィエト旅行記』は表題作とその続編『ソヴィエト旅行記修正』の久しぶりの新訳です。これもまた帯文が秀逸。「「楽園」は/看板倒れの/ディストピア。自らも熱烈に支持した理想国家への失望を、作家として誠実につづった紀行文」。今月の2点は何はともあれ即買いでした。

★講談社学術文庫の3月新刊から3点。ハイデガー『技術とは何だろうか』は文庫オリジナル新訳。1954年刊『講演と論文』より「物」「建てること、住むこと、考えること」「技術とは何だろうか」の3講演を収録。なお森さんはブレーメン講演版「物」もかつてお訳しになっておられます(創文社版『ハイデッガー全集』第79巻所収、2003年)。この版と『講演と論文』版との異同は今回の新訳文庫に訳注として掲載されています。『孟子 全訳注』は奥付前の特記によれば、1973年に集英社より刊行された『全釈漢文大系 第二巻 孟子』から抜粋し文庫化したもの。学術文庫での「孟子」の訳書はかの高額古書、穂積重遠『新訳孟子』(1980年)以来の久しぶりのものです(貝塚茂樹さんによる解説書は2004年に文庫化されています)。高額になっている学術文庫はぜひ復刊するかPODに加えていただければと念願しています。『花のことば辞典』は文庫オリジナルの書き下ろし。2014年刊『雨のことば辞典』、2016年刊『風と雲のことば辞典』に続く3部作の第3作。

★角川ソフィア文庫の2月新刊から1点。『悩ましい国語辞典』は2015年に時事通信出版局から刊行された単行本の文庫化。著者の神永曉(かみなが・さとる:1956-)さんは辞書編集のエキスパートでありベテラン。本書を読んでいると「まじか」やら「だよね」やらの連続で、改めて日本語と向き合う良い経験になります。知は細部にあり。一篇ずつは短いので短時間の移動中の読書に最適です。

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★また、最近では以下の新刊との出逢いがありました。

ダヴィッド・ジョップ詩集』中村隆之編訳、夜光社、2019年3月、本体1,200円、四六判変形96頁、ISBN978-4-906944-17-0
ジョルジョ・ヴァザーリと美術家の顕彰――16世紀後半フィレンツェにおける記憶のパトロネージ』古川萌著、中央公論新社、2019年3月、本体4,500円、A5判上製304頁、ISBN978-4-12-005181-4
オーロラの日本史――古典籍・古文書にみる記録』岩橋清美/片岡龍峰著、平凡社、2019年3月、本体1,000円、A5判並製88頁、ISBN978-4-582-36458-3
御簾の下からこぼれ出る装束――王朝物語絵と女性の空間』赤澤真理著、平凡社、2019年3月、本体1,000円、A5判並製120頁、ISBN978-4-582-36459-0
日本思想史の可能性』大隅和雄/大山誠一/長谷川宏/増尾伸一郎/吉田一彦著、平凡社、2019年3月、本体4,200円、4-6判上製512頁、ISBN9784582703597
音楽劇の歴史――オペラ・オペレッタ・ミュージカル』重木昭信著、平凡社、2019年3月、本体4,800円、4-6判上製408頁、ISBN978-4-582-21973-9

★『ダヴィッド・ジョップ詩集』は夜光社さんのシリーズ「民衆詩叢書」の第2弾でまもなく発売。フランス生まれの黒人詩人ジョップ(David Diop, 1927-1960;ディオップとも)の著作から詩作品22篇と散文4篇を選び一冊にまとめたものです。詩人でセネガル共和国初代大統領のサンゴールによるジョップの紹介文と、編訳者の中村さんによるジョップ小伝が付されています。ジョップ(ディオップ)の詩はこれまでに、登坂雅志さんの翻訳による『ブラックアフリカ詩集』(彌生書房、1987年)や『アフリカ詩集』(花神社、2010年)などに数編が訳出されたことがあります。今回の夜光社版詩集から、個人的に印象に残る、義兄のアリウンに宛てた美しく力強い詩篇「確信」を以下に引きます。

いくつもの殺人で肥えて太り
死体の数で自分たちの支配の段階を測っている連中に
私は言う 日々と人々が
太陽と星々が
諸地域の人民の同胞愛のリズムを描くと
私は言う 心と頭が
戦いのまっすぐな線のうちで合流すると
そして どこかで夏が生まれないような
日々などないと
私は言う 強い勢力の暴風雨が
忍耐を売る商人どもを粉砕するだろうと
そして 人々の体と調和する季節は
幸福の身振りが作り直されるのを見るだろうと。

★『ジョルジョ・ヴァザーリと美術家の顕彰』は京都大学大学院人間・環境学研究科へ2017年に提出された博士論文を加筆修正し再構成したもの。16世紀イタリアの画家であり建築家のヴァザーリ(Giorgio Vasari: 1511-1574)による『美術家列伝』(正式には『もっとも卓越せる画家・彫刻家・建築家列伝』)をひもときつつ、「美術史の父」としてのヴァザーリ像を捉え直す試みです。「本書では、ヴァザーリがコジモ一世・デ・メディチのもとおこなった諸活動をあらためて検討し、彼が打ち立てた「美術史」の根底にある儀礼的側面を浮かび上がらせる。特に着目するのは、「美術家を顕彰する」という行為である。〔…〕ヴァザーリ自身の関心と文化的背景の詳細な検討を通して、亡くなった美術家をしかるべきやり方で埋葬し、追悼するという行為が、一種のパトロネージと化していたことが理解されるだろう」(12~13頁)。

★「ヴァザーリはその活動を通して、メディチ家の面々が、美術家に作品を注文する一般的なパトロネージ以外にも、美術家自身の顕彰によって歴史にその記憶を刻み込む「記憶のパトロネージ」をおこなっていたことを強調した。実践しているのはヴァザーリ自身であっても、その出資者としてかならずメディチ家の名前を挙げ、彼らの営みに注意をうながしているのである。つまり、ヴァザーリの諸活動における「記憶のパトロネージ」実践は、16世紀フィレンツェの文化的・社会的・政治的事情が複雑に絡み合う、きわめて重要な結節点にほかならない」(13頁)。本書の主要目次を以下に転記しておきます。
序論
Ⅰ 『美術家列伝』と美術家の死
 第1章 テクストによる墓碑
 第2章 記憶のパトロネージ
Ⅱ アカデミア・デル・ディセーニョと美術家の顕彰
 第1章 ミケランジェロの死
 第2章 「画家の礼拝堂」とアカデミア
Ⅲ ヴァザーリと作品の保存・展示
 第1章 「カリオペの書斎」と歴史性
 第2章 「素描集」と聖なるものの巡礼
結論
あとがき
付録 アントン・フランチェスコ・ドーニ『大理石』抄訳
参考文献

★『オーロラの日本史』と『御簾の下からこぼれ出る装束』は平凡社さんのシリーズ「ブックレット〈書物をひらく〉」の第18巻と第19巻。前者は『日本書紀』や『明月記』をはじめとする数々の古典籍で言及されあるいは絵画史料に描かれててきた、飛鳥時代から江戸時代に至る低緯度オーロラの記録を追うもの。後者は王朝物語絵に描かれた「打出(うちいで)」を分析する内容。「打出」とは中世において、晴れやかな行事で女性の装束をすだれの下からはみださせて見せる、邸宅の空間演出方法のこと。低緯度オーロラにせよ打出にせよ、歴史とその記録への興味は尽きません。

★『日本思想史の可能性』は、大隅和雄、大山誠一、長谷川宏、増尾伸一郎、吉田一彦の5氏による「日本思想史の会」での長年の議論を出発点にして編まれた論文集。増尾さんは2014年7月にお亡くなりになっており、各章末の座談会には参加しておられません。また、増尾さんによる補論は他の論考と違って書き下ろしではなく、2007年に発表された論考の再録です。巻末のあとがきは増尾さん以外の4氏がそれぞれお書きになっています。目次は以下の通り。

はじめに|吉田一彦
序章 日本思想の外来と固有
 西洋の近代思想と日本思想史|長谷川宏
 日本をいつに求めるか――日本的思想の歴史的形成について|吉田一彦
 座談会
第Ⅰ章 天皇制の成立とその政治思想
 天皇制とは何か|大山誠一
 座談会
第Ⅱ章 思想における「日本的なるもの」
 思想における「日本的なるもの」をめぐって|長谷川宏
 座談会
第Ⅲ章 仏教徒日本思想史
 アジアの中の日本仏教の思想――仏教史は日本史より大きい|吉田一彦
 座談会
第Ⅳ章 中世の歴史書と天皇観
 『愚管抄』の天皇論|大隅和雄
 座談会
終章 天皇制は外来か固有か
 日本の思想をどう語るか|大隅和雄
 天皇制の本質|大山誠一
補論 説話の伝播と仏教経典
 説話の伝播と仏教経典――高木敏雄と南方熊楠の方法をめぐって|増尾伸一郎 
 付記|吉田一彦
あとがき|大隅和雄/大山誠一/長谷川宏/吉田一彦

★『音楽劇の歴史』はオペラ(17世紀以降)、オペレッタ(19世紀以降)、ミュージカル(20世紀以降)など、現代に至る音楽劇の変化を通史として記述したもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「ルネサンス、フランス革命、第一次世界大戦、ヴェトナム戦争などの出来事を通じて、社会だけでなく音楽劇も大きく変わった。本書の狙いは、その変化がなぜ起こったのかを考えることだ。そのため、芸術にとどまらず、政治、経済、社会制度、風俗、技術についても広範に言及」した(12頁)、とあります。
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# by urag | 2019-03-17 23:46 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)