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2019年 05月 05日

注目新刊:ちくま学芸文庫5月新刊4点5冊、ほか

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★まもなく発売(5月10日頃)となるちくま学芸文庫の5月新刊4点5冊は以下の通り。

『神社の古代史』岡田精司著、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,200円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-09913-6
『イタリア・ルネサンスの文化(上)』ヤーコプ・ブルクハルト著、新井靖一訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,500円、文庫判496頁、ISBN978-4-480-09914-3
『イタリア・ルネサンスの文化(下)』ヤーコプ・ブルクハルト著、新井靖一訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,500円、文庫判528頁、ISBN978-4-480-09915-0
『増補 普通の人びと――ホロコーストと第101警察予備大隊』クリストファー・R・ブラウニング著、谷喬夫訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,600円、文庫判528頁、ISBN978-4-480-09920-4
『アイデンティティが人を殺す』アミン・マアルーフ著、小野正嗣訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,100円、文庫判208頁、ISBN978-4-480-09926-6

★『神社の古代史』は2011年に学生社から刊行された単行本『新編 神社の古代史』を文庫化したもの。もともとは83年から85年にかけて朝日カルチャーセンター大阪で行った講座「神社の歴史と文化」(全45回)が85年に『神社の古代史』として書籍化され、版元であった大阪書籍の出版事業撤退に伴い、改訂を加えた新版が学生社から刊行されていました。著者の岡田精司(おかだ・せいし:1929-)さんは日本史学者で、古代祭祀や古代史がご専門。文庫で読める著書は今回の新刊が初めてのものです。

★『イタリア・ルネサンスの文化』上下巻は、2007年に筑摩書房より刊行された単行本全1巻を文庫化に際し上下分冊としたもの。上巻には第二版序言と第1章から第3章まで、下巻には第4章から第6章までと付録(16世紀中頃のイタリア主要都市の人口(概数)、主要家家系図)が収められています。「ちくま学芸文庫版訳者後記」によれば、「訳文中の誤りなどを可能なかぎり訂正した」とのことです。なお、現在も入手可能な文庫で読める同書の既訳には、中公文庫版『イタリア・ルネサンスの文化』(上下巻、柴田治三郎訳、1974年)があります。また、ちくま学芸文庫ではこれまでにブルクハルトの著書を、いずれも新井靖一さんによるもので、1999年に『ギリシア文化史』全8巻、2009年に『世界史的考察』、2012年『ルーベンス回想』と10点刊行しています。いずれも現在は電子書籍のみで紙媒体は版元品切。今回の新刊を紙媒体で取っておきたい方はお早目の購読をお薦めします。

★『増補 普通の人びと』は『Ordinary Men: Reserve Police Battalion 101 and the Final Solution in Poland』(HarperCollins, 1992; Revised edition, Harper Perennial, 2017)の全訳。親本は筑摩書房より1997年に刊行。文庫化に際して2017年の原著改訂版から「あとがき」と「二五年のあとで」(資料写真を多数掲載)が追加で訳出され、人名索引が新たに付されています。「訳者あとがき」には「訳文を読みやすくするために貴重なアドヴァイスを〔編集部から〕いただいた」とあるので、既訳分も改訂されているとみていいかと思います。一般市民を中心に編成された第101警察予備大隊がいかにユダヤ人虐殺に関わったかを綿密に検証した、文庫ながらとても重い本です。

★『アイデンティティが人を殺す』は『Les Identités meurtrières』(Grasset, 1998)の文庫オリジナル訳書。「民族や宗教といった分断線に貫かれた、いわば境界線上の人々〔…〕彼らには果たすべき役割があります。さまざまな結びつきを作り出し、誤解を解消させる。理性に訴えかけ、怒りをなだめ、困難を取り除き、和解をもたらす……。彼らの使命は、さまざまな共同体、さまざまな文化のあいだを結ぶハイフン、通路、媒介者となることです。それゆえにこそ、彼らのジレンマが持つ意味は重いわけです。もしも彼らがそのうちに抱える数多くの帰属を受け入れることができないのなら、そしてたえずどの陣営を選ぶかを要求され、どの部族につくかを命じられるとしたら、そのときこそ私たちはこの世界の進み行きに不安を抱くべきなのです」(13~14頁)。「アイデンティティにはただひとつの帰属しかないと声高に主張する、偏狭で、排他的で、妄信的で、単純きわまりない考え方〔…〕こんなふうにして殺戮者が「製造される」のだと私は声を大にして言いたいのです」(14頁)。マアルーフ(Amin Maalouf, 1949-)はレバノンに生まれ、フランスで活躍する作家。ちくま学芸文庫では『アラブが見た十字軍』(牟田口義郎/新川雅子訳、2001年2月)や『サマルカンド年代記――『ルバイヤート』秘本を求めて』(牟田口義郎訳、2001年12月、紙媒体版元品切)がこれまでに刊行されています。

★続いて最近出会った新刊を列記します。

流れといのち――万物の進化を支配するコンストラクタル法則』エイドリアン・ベジャン著、柴田裕之訳、木村繁男解説、紀伊國屋書店、2019年5月、本体2,200円、四六判上製404頁、ISBN978-4-314-01167-9
もっと速く、もっときれいに――脱植民地化とフランス文化の再編成』クリスティン・ロス著、中村督/平田周訳、人文書院、2019年4月、本体3,500円、4-6判並製310頁、ISBN978-4-409-03102-5
ウィニコットとの対話』カー・ブレット著、妙木浩之/津野千文訳、人文書院、2019年4月、本体4,000円、4-6判並製412頁、ISBN978-4-409-34054-7
移民政策とは何か――日本の現実から考える』高谷幸編著、樋口直人/稲葉奈々子/奥貫妃文/榎井縁/五十嵐彰/永吉希久子/森千香子/佐藤成基/小井土彰宏著、人文書院、2019年4月、本体2,000円、4-6判並製256頁、ISBN978-4-409-24124-0
現代思想2019年5月号 特集=教育は変わるのか――部活動問題・給特法・大学入学共通テスト』青土社、2019年4月、本体1,400円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1381-3

★『流れといのち』はまもなく発売(5月10日取次搬入)。『The Physics of Life: The Evolution of Everything』(St, Martin's Press, 2016)の全訳。J・ペダー・ゼインとの共著『流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則』(柴田裕之訳、木村繁男解説、紀伊國屋書店、2013年;『Design in Nature: How the Constructal Law Governs Evolution in Biology, Physics, Technology, and Social Organization』Doubleday Books, 2012)に続く話題作です。熱力学者ベジャンが提唱する「コンストラクタル法則」とは、生物・無生物を問わず、すべてはよりよく流れるかたちに進化する、というもの。この法則によれば、「資本主義は自然に発生する」(104頁)ものであり、「テクノロジーの進化は、動物の進化や河川流域の深化、科学の進化と何ら変わりはしない」(33頁)と。あらゆる事象を物理的現象として見るその徹底ぶりは挑発的ですらありますが、ベジャンはアメリカでは昨年フランクリン・メダルを受賞しています。

★人文書院さんの最新刊より3点。いずれも取次搬入日は4月26日。『もっと速く、もっときれいに』は『Fast Cars, Clean Bodies: Decolonization and the Reordering of French Culture』(MIT Press, 1995)の全訳。ロスの単独著の訳書は『68年5月とその後――反乱の記憶・表象・現在』(箱田徹訳、航思社、2014年)に続く2冊目。「本書が68年5月という出来事の手前で考察を終えたのは、むしろそれに先立つ10年間で生じたフランスの近代化という出来事を考察――すなわち、フランスの近代化を出来事として考察――したかったからである」(序文、13頁)。

★『ウィニコットとの対話』は『Tea with Winnicott』(Karnac, 2016)の本文の全訳。原著にあった挿絵は省略されています。ウィニコット研究の第一人者が様々な文献や未公開資料を駆使してウィニコットとの仮想対話を試みたユニークな入門書。なお『ウィニコット著作集』(本巻全8巻、別巻2巻)は岩崎学術出版社より刊行。

★『移民政策とは何か』は先月(2019年4月)からスタートした外国人労働者受け入れ拡大のための新制度(入管法改正:出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律)を受けて様々なテーマから書かれた10本の論考を収めた論文集。ほぼ「緊急出版」と言っていいスピード感です。

★「現代思想」5月号は鉄板の大学特集から少し観点を拡張して教育もの。ブラック部活、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)、読解力、など問題の案件をめぐる論考が並んでいます。磯崎新さんの連載は今回の第二回からタイトル変更。「造物主義論 〈建築〉――あるいはデミウルゴスの“構築”」から端的に「デミウルゴス」に。次号(6月号)の特集は「加速主義――資本主義の疾走、未来への〈脱出〉」。木澤佐登志さんやニック・ランドの論考が載る予定ですが、ちょうど木澤さんの第二作『ニック・ランドと新反動主義――現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(星海社新書)と同時期の発売ですね。

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# by urag | 2019-05-05 20:10 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 05日

注目新刊:ちくま学芸文庫5月新刊4点5冊、ほか

★まもなく発売(5月10日頃)となるちくま学芸文庫の5月新刊4点5冊は以下の通り。

『神社の古代史』岡田精司著、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,200円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-09913-6
『イタリア・ルネサンスの文化(上)』ヤーコプ・ブルクハルト著、新井靖一訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,500円、文庫判496頁、ISBN978-4-480-09914-3
『イタリア・ルネサンスの文化(下)』ヤーコプ・ブルクハルト著、新井靖一訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,500円、文庫判528頁、ISBN978-4-480-09915-0
『増補 普通の人びと――ホロコーストと第101警察予備大隊』クリストファー・R・ブラウニング著、谷喬夫訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,600円、文庫判528頁、ISBN978-4-480-09920-4
『アイデンティティが人を殺す』アミン・マアルーフ著、小野正嗣訳、ちくま学芸文庫、2019年5月、本体1,100円、文庫判208頁、ISBN978-4-480-09926-6

★『神社の古代史』は2011年に学生社から刊行された単行本『新編 神社の古代史』を文庫化したもの。もともとは83年から85年にかけて朝日カルチャーセンター大阪で行った講座「神社の歴史と文化」(全45回)が85年に『神社の古代史』として書籍化され、版元であった大阪書籍の出版事業撤退に伴い、改訂を加えた新版が学生社から刊行されていました。著者の岡田精司(おかだ・せいし:1929-)さんは日本史学者で、古代祭祀や古代史がご専門。文庫で読める著書は今回の新刊が初めてのものです。

★『イタリア・ルネサンスの文化』上下巻は、2007年に筑摩書房より刊行された単行本全1巻を文庫化に際し上下分冊としたもの。上巻には第二版序言と第1章から第3章まで、下巻には第4章から第6章までと付録(16世紀中頃のイタリア主要都市の人口(概数)、主要家家系図)が収められています。「ちくま学芸文庫版訳者後記」によれば、「訳文中の誤りなどを可能なかぎり訂正した」とのことです。なお、現在も入手可能な文庫で読める同書の既訳には、中公文庫版『イタリア・ルネサンスの文化』(上下巻、柴田治三郎訳、1974年)があります。また、ちくま学芸文庫ではこれまでにブルクハルトの著書を、いずれも新井靖一さんによるもので、1999年に『ギリシア文化史』全8巻、2009年に『世界史的考察』、2012年『ルーベンス回想』と10点刊行しています。いずれも現在は版元品切。今回の新刊はお早目の購読をお薦めします。

★『増補 普通の人びと』は『Ordinary Men: Reserve Police Battalion 101 and the Final Solution in Poland』(HarperCollins, 1992; Revised edition, Harper Perennial, 2017)の全訳。親本は筑摩書房より1997年に刊行。文庫化に際して2017年の原著改訂版から「あとがき」と「二五年のあとで」(資料写真を多数掲載)が追加で訳出され、人名索引が新たに付されています。「訳者あとがき」には「訳文を読みやすくするために貴重なアドヴァイスを〔編集部から〕いただいた」とあるので、既訳分も改訂されているとみていいかと思います。一般市民を中心に編成された第101警察予備大隊がいかにユダヤ人虐殺に関わったかを綿密に検証した、文庫ながらとても重い本です。

★『アイデンティティが人を殺す』は『Les Identités meurtrières』(Grasset, 1998)の文庫オリジナル訳書。「民族や宗教といった分断線に貫かれた、いわば境界線上の人々〔…〕彼らには果たすべき役割があります。さまざまな結びつきを作り出し、誤解を解消させる。理性に訴えかけ、怒りをなだめ、困難を取り除き、和解をもたらす……。彼らの使命は、さまざまな共同体、さまざまな文化のあいだを結ぶハイフン、通路、媒介者となることです。それゆえにこそ、彼らのジレンマが持つ意味は重いわけです。もしも彼らがそのうちに抱える数多くの帰属を受け入れることができないのなら、そしてたえずどの陣営を選ぶかを要求され、どの部族につくかを命じられるとしたら、そのときこそ私たちはこの世界の進み行きに不安を抱くべきなのです」(13~14頁)。マアルーフ(Amin Maalouf, 1949-)はレバノンに生まれ、フランスで活躍する作家。ちくま学芸文庫では『アラブが見た十字軍』(牟田口義郎/新川雅子訳、2001年2月)や『サマルカンド年代記――『ルバイヤート』秘本を求めて』(牟田口義郎訳、2001年12月、版元品切)がこれまでに刊行されています。

★続いて最近出会った新刊を列記します。

流れといのち――万物の進化を支配するコンストラクタル法則』エイドリアン・ベジャン著、柴田裕之訳、木村繁男解説、紀伊國屋書店、2019年5月、本体2,200円、四六判上製404頁、ISBN978-4-314-01167-9
もっと速く、もっときれいに――脱植民地化とフランス文化の再編成』クリスティン・ロス著、中村督/平田周訳、人文書院、2019年4月、本体3,500円、4-6判並製310頁、ISBN978-4-409-03102-5
ウィニコットとの対話』カー・ブレット著、妙木浩之/津野千文訳、人文書院、2019年4月、本体4,000円、4-6判並製412頁、ISBN978-4-409-34054-7
移民政策とは何か――日本の現実から考える』高谷幸編著、樋口直人/稲葉奈々子/奥貫妃文/榎井縁/五十嵐彰/永吉希久子/森千香子/佐藤成基/小井土彰宏著、人文書院、2019年4月、本体2,000円、4-6判並製256頁、ISBN978-4-409-24124-0
現代思想2019年5月号 特集=教育は変わるのか――部活動問題・給特法・大学入学共通テスト』青土社、2019年4月、本体1,400円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1381-3

★『流れといのち』はまもなく発売(5月10日取次搬入)。『The Physics of Life: The Evolution of Everything』(St, Martin's Press, 2016)の全訳。J・ペダー・ゼインとの共著『流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則』(柴田裕之訳、木村繁男解説、紀伊國屋書店、2013年;『Design in Nature: How the Constructal Law Governs Evolution in Biology, Physics, Technology, and Social Organization』Doubleday Books, 2012)に続く話題作です。熱力学者ベジャンが提唱する「コンストラクタル法則」とは、生物・無生物を問わず、すべてはよりよく流れるかたちに進化する、というもの。この法則によれば、「資本主義は自然に発生する」(104頁)ものであり、「テクノロジーの進化は、動物の進化や河川流域の深化、科学の進化と何ら変わりはしない」(33頁)と。あらゆる事象を物理的現象として見るその徹底ぶりは挑発的ですらありますが、ベジャンはアメリカでは昨年フランクリン・メダルを受賞しています。

★人文書院さんの最新刊より3点。いずれも取次搬入日は4月26日。『もっと速く、もっときれいに』は『Fast Cars, Clean Bodies: Decolonization and the Reordering of French Culture』(MIT Press, 1995)の全訳。ロスの単独著の訳書は『68年5月とその後――反乱の記憶・表象・現在』(箱田徹訳、航思社、2014年)に続く2冊目。「本書が68年5月という出来事の手前で考察を終えたのは、むしろそれに先立つ10年間で生じたフランスの近代化という出来事を考察――すなわち、フランスの近代化を出来事として考察――したかったからである」(序文、13頁)。

★『ウィニコットとの対話』は『Tea with Winnicott』(Karnac, 2016)の本文の全訳。原著にあった挿絵は省略されています。ウィニコット研究の第一人者が様々な文献や未公開資料を駆使してウィニコットとの仮想対話を試みたユニークな入門書。なお『ウィニコット著作集』(本巻全8巻、別巻2巻)は岩崎学術出版社より刊行。

★『移民政策とは何か』は先月(2019年4月)からスタートした外国人労働者受け入れ拡大のための新制度(入管法改正:出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律)を受けて様々なテーマから書かれた10本の論考を収めた論文集。ほぼ「緊急出版」と言っていいスピード感です。

★「現代思想」5月号は鉄板の大学特集から少し観点を拡張して教育もの。ブラック部活、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)、読解力、など問題の案件をめぐる論考が並んでいます。磯崎新さんの連載は今回の第二回からタイトル変更。「造物主義論 〈建築〉――あるいはデミウルゴスの“構築”」から端的に「デミウルゴス」に。次号(6月号)の特集は「加速主義――資本主義の疾走、未来への〈脱出〉」。木澤佐登志さんやニック・ランドの論考が載る予定ですが、ちょうど木澤さんの第二作『ニック・ランドと新反動主義――現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(星海社新書)と同時期の発売ですね。

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# by urag | 2019-05-05 20:10 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 26日

注目新刊:『ことばを紡ぐための哲学』『本当の小説』『舞台芸術 第4期第22巻』

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★星野太さん(著書『崇高の修辞学』)
白水社さんから今月刊行されたアンソロジー集『ことばを紡ぐための哲学――東大駒場・現代思想講義』に寄稿されています。同書は、2014年度冬学期に東京大学教養学部で行なわれたEALAI(東アジアリベラルアーツイニシアティブ)のテーマ講義「グローバル化時代の現代思想――東アジアから」を担当した教員の方々が講義内容を再整理して書き直したもの、とのことです。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。星野さんは第Ⅱ部「システムに抗して」に「待つ・耐える」(128~147頁)という論考を寄せておられます。また第Ⅰ部「日常という場で」と第Ⅱ部の末尾に置かれた座談会『来たるべきことばのために』前篇/後篇にも参加されています。本書に収められた各論考の末尾には「基本文献案内」が付されており、書店員さんの棚作りに役立つのではないかと思います。版元紹介文の冒頭部分がが胸に沁みます。「「炎上」からヘイトスピーチまで、敵が敵を生む〈ことばの過剰〉に抗して、ともに生きる場を恢復する、「知の技法」のこれから」。

ことばを紡ぐための哲学――東大駒場・現代思想講義
中島隆博/石井剛[編著]
白水社、2019年4月、本体2,000円、4-6判並製216頁、ISBN978-4-560-09673-4

★フィリップ・ソレルスさん(著書『ドラマ』)
回想録『Un vrai roman : Mémoires』(Plon, 2007)の全訳が水声社さんから今月刊行されました。卓抜な同時代史、文壇史、思想史としても読めると思います。

本当の小説 回想録
フィリップ・ソレルス[著] 三ツ堀広一郎[訳]
水声社 2019年4月 本体3,000円 四六判上製344頁 ISBN978-4-8010-0408-5





★舞台芸術研究センターさん(発行『舞台芸術』第一期全十巻)
季刊誌『舞台芸術』第4期第22巻が先月末(2019年3月)に発売となりました。メイン特集は「〈劇場〉の現在形――「拡張」と「拡散」の間で」。渡邊守章さんへのインタビュー「「演劇作業」の現場――ラシーヌからクローデルまで」(聞き手:森山直人)や、宮沢章夫さんと黒瀬陽平さんの対談「〈3・11以後〉 の「劇場」、または メディア社会における 〈ライヴ〉 の現在」などが掲載されています。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。ハンス=ティース・レーマンの大著『悲劇とドラマ演劇』(Tragödie und Dramatisches Theater, Berlin: Alexanderverlag, 2013)より「序論」が津﨑正行さんによる翻訳と解題で掲載されています。

舞台芸術(22)〈劇場〉の現在形――「拡張」と「拡散」の間で
京都造形芸術大学舞台芸術研究センター[編著]
KADOKAWA 2019年3月 本体1,500円 B5判並製188頁 ISBN978-4-04-876501-5

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# by urag | 2019-04-26 15:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 25日

ブックツリー「哲学読書室」に須藤温子さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『エリアス・カネッティーー生涯と著作』(月曜社、2019年2月)の著者、須藤温子さんによるコメント付き選書リスト「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!

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# by urag | 2019-04-25 19:43 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 23日

取次搬入日決定:『表象13:ファッション批評の可能性』

『表象13:ファッション批評の可能性』の取次搬入日が決まりました。日販、トーハン、大阪屋栗田、3社とも4月26日(金)です。連休直前なので、書店さんでの店頭発売日ははっきりとは読めませんが、早いお店で5月1日以降、通常では連休明けの5月7日以降になるのではないかと予想されます。どの書店さんで扱っていただく予定なのかは、地域をご指定のうえお問い合わせいただければ幸いです。

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# by urag | 2019-04-23 14:59 | 表象文化論学会 | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 22日

注目新刊:ライプニッツ『モナドロジー』岩波文庫新訳、ほか

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モナドロジー 他二篇』ライプニッツ著、谷川多佳子/岡部英男訳、岩波文庫、2019年4月、本体780円、文庫判256頁、ISBN978-4-00-336169-6
運命論を哲学する』入不二基義/森岡正博著、2019年4月、本体1,800円、4-6判上製304頁、ISBN978-4-7503-4826-1
脳のリズム』ジェルジ・ブザーキ著、渡部喬光監訳、谷垣暁美訳、みすず書房、2019年4月、本体5,200円、ISBN978-4-622-08791-5

★『モナドロジー 他二篇』は岩波文庫では、1951年の河野与一訳『単子論』以来の新訳。旧訳本に収められていたのは、以下の諸篇です。1695年「実体の本性及び実態の交通並びに精神物体間に存する結合に就いての新説」(およびその最初の草稿、フシェの異議、それに対するライプニッツの備考、新説の第一解明、第二解明、第三解明抜萃)、1714年の「理性に基づく自然及び恩恵の原理」、同年の「単子論」、さらに付録として、1684年の「認識、真理、観念に関する考察」、1694年の「第一哲学の改善と実体概念」、1697年の「事象の根本的生産」、1698年の「自然そのもの」でした。

★今回の新訳に収録されているのは、「モナドロジー」、「理性に基づく自然と恩寵の原理」、「実体の本性と実体間の交渉ならびに魂と身体のあいだにある結合についての新説」の3篇と、以下の付録の諸篇です。「物体と原動力の本性について」(抄訳、1702年5月)、「ゾフィー宛書簡」(1696年11月4日)、「ゾフィー・シャルロッテ宛書簡」(1704年5月8日)、「生命の原理と形成的自然についての考察、予定調和の説の著者による」(1705年5月)、「コスト宛書簡」(1707年12月19日)、「ブルゲ宛書簡」(1714年12月)、「ダンジクール宛書簡」(1716年9月11日)。底本はゲルハルト版『ライプニッツ哲学著作集』。

★「モナドロジー」より。「1 私たちがここで論じるモナドとは、複合体のなかに入る単純な実体に他ならない。単純とは部分がないことだ」(11頁)。「5〔…〕単純な実体が自然的に生じることがあるとは、どうしても考えられない。単純な実体は、複合によってつくることはできないからだ」(14頁)。「6 かくしてモナドは、生じるのも滅びるのも、一挙になされるほかない、と言ってよい。〔…〕けれども複合されたものは、部分部分で生じる、もしくは滅びる」(同頁)。「7〔…〕モナドには、何かものが入ったり出たりできるような窓がない。〔…〕」(15頁)。「3〔…〕モナドは、自然の真の原子であり、ひとことで言えば事物の要素である」(13頁)。「11〔…〕モナドの自然的変化は内的原理から来る〔…〕。外的原因はモナドの内部に作用することができないからである」(18頁)。「12 しかしまた、変化の原理のほかに、変化するものの細部があり、それが単純な実体の、いわば特殊化と多様性を与えているにちがいない」(19頁)。「13 この細部は、一なるもの、すなわち単純なもののなかに、多を含んでいるはずだ。〔…〕単純な実体のなかには、部分はないけれども、いろいろな変状や関係があるにちがいない」(同頁)。

★「14 一なるもの、すなわち単純な実体のなかで、他を含み、これを表現する推移的な状態がいわゆる表象にほかならない。これは意識される表象ないし意識とはしっかり区別されねばならない。〔…〕」(20頁)。ここで言う表象(perception)は、訳注によれば「表出(expression)」や「表現(representation)」とほぼ同義、とあります。あらわれ、とでも受け取った方が理解しやすそうです。「15 一つの表象から別の表象への変化ないし推移を起こす内的原理の働きを欲求と名づけることができる。〔…〕」(21頁)。「16 私たちの意識するどんなに小さな思考でもその対象のなかに多を含んでいるのを見いだすとき、私たちは自身で、単純な実体のなかに多様性を経験する。したがって、魂が単純な実体であることを認める人はすべて、モナドのなかにこの多を認めなければならない。〔…〕」(22頁)。以下略。

★「モナドロジー」の新本で入手可能な既訳には、「モナドロジー」清水富雄/竹田篤司訳(『モナドロジー/形而上学叙説』所収、中公クラシックス、2005年)、「モナドロジー(哲学の原理)」西谷裕作訳(『ライプニッツ著作集 第Ⅰ期第9巻 後期哲学』所収、工作舎、1989年)があります。

★訳者あとがきの次の説明が印象的です。「ライプニッツには精神の共同体、精神の共和国という理念が見られる。ライプニッツは数学や力学で顕著な業績のある自然科学者であったが、また文献学者・歴史家でもあり、過去の遺産も信頼した。知は、人類全体の事象であり、あらゆる時代のものである「精神の共和国」の所産である。精神が神とつながり、そうして諸精神が結びつきあうイメージは主要テクストで示されているが、「精神の共和国」という表現が書簡などにも見られる」(246頁)。

★『運命論を哲学する』は、「現代日本哲学に新たなページをきりひらく本格哲学入門シリーズ」と謳う「現代哲学ラボ・シリーズ」の第1巻。「これがJ-哲学だ」と帯文にあります。J-哲学とは「日本語をベースとした、オリジナルな世界哲学」とのことです。森岡正博さんによる「全巻のためのまえがき」には、「J-哲学」あるいは「J-フィロソフィー」について「ちょうど「J-ポップ」や「J-文学」があるように、日本から自生的に出てきて国際的な潮流に寄与しする哲学という意味」(ii頁)と説明されています。「「日本哲学」と言わないのは、この言葉が、鎌倉新仏教から京都学派までの日本の哲学を研究対象とする学術を指して、すでに国内外の学会で使用されているからである」(ii~iii頁)。「欧州大陸や英米の哲学を輸入紹介することをもって「哲学」と呼ぶ慣習はまだ続いている。私たちは、それらとは異なった道筋を開きたい」(i頁)。

★もともと「現代哲学ラボ」は森岡さんと田中さをりさん(『哲楽』編集人)が世話人をつとめた全4回の連続討論会企画(2015~2016年)で、これは電子書籍として哲楽編集部より刊行済。これに著者の皆さんが大幅加筆したのが、「現代哲学ラボ・シリーズ」です。森岡さんによる「第1巻のまえがき」によれば、本書は著者2氏が運命論と現実性を「徹底的に掘り下げる」もの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。続刊予定は、第2巻が永井均さんと森岡さんによる『私と今を哲学する』、第3巻が永井/入不二/森岡の3氏による『現実性を哲学する』、第4巻が加藤秀一さんと森岡さんによる『生命の価値を哲学する』です。

★『脳のリズム』は『Rhythms of the Brain』(Oxford University Press, 2006)の訳書。カバー表4の紹介文から引いておきます。「「脳は予測装置であり、その予測能力は、絶え間なく生成しているさまざまなリズムから生じる。」〔…本書は〕それまで“ノイズ”にすぎないとされていた脳内リズム現象の見方を一変させ、すでに現代の古典となっている。〔…〕脳内のリズム現象は私たちの認知機能の中核を担っている。脳の中では振動子としてのニューロンが集団的に同期しつつ、f分の1揺らぎ、時間窓によるスイッチング、確率共振といった特性を利用しながら、思考や記憶などの複雑かつ統合された能力を創発するシンフォニーを奏でているのだ」。目次詳細は書名のリンク先とご覧ください。

★理化学研究所・脳神経科学研究センターの渡部喬光さんは「監訳者あとがき」でこう書いています。「この本は、およそ過去40年に渡って海馬神経科学の最前線をひた走り、今も論文を出し続ける大御所電気生理屋さんの思想書・予言書だと思って、刺激され、訝しがり、楽しむのが生産的な姿勢だと個人的には思っている」。著者のブザーキ(György Buzáki, 1949-)はハンガリー出身で、現在はニューヨーク大学神経科学研究所ビッグス教授。研究対象は脳内の振動現象、睡眠、記憶。Györgyはforvoで現地の発音を確認するかぎりでは、ジェルジというよりかはジョルジュ(時にはギョルギュ)に近く、最近ではリゲティの名前もジョルジュとしている例を見かけます。ちなみにルカーチは訳書がいずれも古めのためかジェルジないしドイツ風にゲオルク表記。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

執念深い貧乏性』栗原康著、文藝春秋、2019年4月、本体1,800円、四六判並製280頁、ISBN978-4-16-390934-9
天皇制と闘うとはどういうことか』菅孝行著、航思社、2019年4月、本体3,200円、四六判上製346頁、ISBN978-4-906738-37-3
吉本隆明全集19[1982-1984]』吉本隆明著、晶文社、2019年4月、本体7,000円、A5判変型上製692頁。ISBN978‐4‐7949‐7119-7
評伝ジャン・ユスターシュ――映画は人生のように』須藤健太郎著、共和国、2019年4月、本体3,600円、菊変型判並製412頁、ISBN978-4-907986-54-4
美しく呪われた人たち』F・スコット・フィッツジェラルド著、上岡伸雄訳、作品社、2019年4月、本体3,200円、46判上製484頁、ISBN978-4-86182-737-2

★『執念深い貧乏性』は、「文學界」2017年5月号から2018年4月号までの全12回の連載をまとめたもの。新たに加えられた巻末の「おわりに」は天皇制への言及をめぐる某出版社との攻防が暴露されており、ある意味で今までの栗原さんの著書の中でもっとも攻めている内容となっています。「天皇制ってなんですか? それは純然たる統治だ、よりよい統治を呼び起こす装置みたいなもんだ。それこそいま天皇のことをマジで神だなんておもっているやるはほとんどいないとおもうし、わたくしどもはヘイカの赤子でございますっておもっているやつもまれだとおもう。なのに、なんで天皇がいたらあたまをさげてしまうのか、ヘイカとよんでしまうのか、たわいのない批判を自主規制しようとしてしまうのか。それは真理をもとめるこころがあるからだ。ぜったいにただしいなにかにすがりたいっておもっているからだ。どうしたらいいか。まずはここからはじめよう。くたばれ、天皇制。われわれは真理に反対する。ただしいことはダサいとおもえ」(258~259頁)。残尿感に始まり下剤に終わる本書の自由さ。

★『天皇制と闘うとはどういうことか』は、某社より刊行予定だった『天皇制論集第二巻 現代反天皇制運動の理論』が原型だそうです。同時に編著『叢書ヒドラ 批評と運動Ⅱ』の入稿済原稿もⅢ~Ⅴ号の計画も流れたのだとか。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「天皇制は、人の上に人をつくり、人の下に人をつくる。頂点に神聖の極致の存在を生み出し、対極に汚穢と卑賤の極致の存在を生む。つまり、絶対的な差別を生む。天皇制国家の観念体系の目的は、資本制による近代化の推進であるが、一見古代律令制の遺制のような観念とそれに基づく差別は、近代化と矛盾するどころか、資本制の支配を補完する機能を担ってきた。天皇制下の「四民平等」は差別構造を資本制的蓄積に適合させるための近代化の機能を果たした。戦後憲法14条の「法の下の平等」も、それだけでは空文であり、戦前よりも洗練された収奪の装置として、一見遺制的な観念に依拠した近代の差別構造は延命した。天皇を聖の極限とする差別の観念体系は、平等意識の暗渠を生み出した。それは差別する側に「外部」不在の、鈍感な自己――平等のつもりの差別――絶対化が生まれた。それは内部の異端に対する徹底的な抑圧と、外部に対する徹底的な排外主義と暴力行使の正当化を誘導する」(19~20頁)。

★『吉本隆明全集19[1982-1984]』はまもなく発売となる第20回配本。第Ⅰ部の『マス・イメージ論』、第Ⅱ部の「「反核」運動の思想批判」「反核運動の思想批判 番外」「情況への発言――「反核」問題をめぐって――」といった『「反核」異論』に収録された評論や講演、第Ⅲ部の『野生時代』連載詩篇、第Ⅳ部の評論、第Ⅴ部のアンケート、推薦文、あとがきなどから、ニューアカ・ブーム勃興期に吉本さんが論じ、綴り、語っていたことが一望できます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「核エネルギイの問題は、石油、石炭からは次元のすすんだ物質エネルギイを、科学が解放したことを問題の本質とする。政治闘争はこの科学の物質会報の意味を包括することはできない。既成左翼が「反原発」というときほとんどが、科学技術にたいする意識しない反動的な倫理を含んでいる。それだけではなく「科学」と「政治」の混同を含んでいる」(「「反核」運動の思想批判」299頁)。月報20は、小池昌代「父の内なる言語」、島亨「「軒遊び」と「生命呼吸」のこと」、ハルノ宵子「境界を越える」を掲載。島亨さんは出版社「言叢社」の編集者。次回配本は8月、第20巻とのことです。

★『評伝ジャン・ユスターシュ』はパリ第三大学に提出した博士論文『ジャン・ユスターシュ――生成と制作』の日本語訳全面改稿版。「映画を生き、愛し、時代との結託を拒むその稀有な生に魅せられた気鋭の批評家による、世界初の本格的な評伝」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻頭の序によれば、著者は作品を見直し、文献を読み、視聴覚資料をチェックし、未公刊資料を掘り起こし、関係者の証言を集め、脚本や製作資料や監督の手になる文書も細かく分析したそうです。「目標は、可能なかぎり資料に裏打ちされた方法で、彼の辿った行程を復元すること。完成された作品を外側から眺めて分析するのではなく、作られていく渦中に入り込み、内側から作品に触れること。創造のプロセスを辿り直すこと」(8頁)。本書の刊行を記念して、十数年ぶりのリバイバル上映会が以下の通り行われます。

◎ジャン・ユスターシュ「映画は人生のように」
日時:2019年4月27日(土)~5月9日(木)
場所:ユーロスペース(渋谷)

日時:5月11日(土)12日(日)18日(土)19日(日)
場所:アンスティチュ・フランセ東京(飯田橋)

★『美しく呪われた人たち』は1922年の『The Beautiful and Damned』の初訳。デビュー作『楽園のこちら側』(1920年;朝比奈武訳、花泉社、2016年)と『グレート・ギャツビー』(1925年、諸訳あり)との間に刊行された長編第2作です。帯文に曰く「刹那的に生きる「失われた世代」の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにありながら自らの転落を予期したかのような恐るべき傑作」と。これで生前に刊行された長編小説4作(4作目は1934年の『夜はやさし』、死去の翌年である1941年に出版された未完の遺作『ラスト・タイクーン』を含めると5作)はすべて翻訳されたことになります。なお同書の刊行を記念して、以下のイベントが行われます。

◎上岡伸雄×宮脇俊文「“狂騒の20年代”とF・スコット・フィッツジェラルドの世界」
日時:2019年5月9日19:30~21:00
場所:ブックス青いカバ(文京区本駒込2-28-24)
料金:1000円
定員:20名
予約:電話03-6883-4507

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# by urag | 2019-04-22 03:33 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 15日

月曜社5月新刊:ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』吉田裕訳

2018年5月15日取次搬入予定 *外国文学/カリブ文学

私の肌の砦のなかで
ジョージ・ラミング[著] 吉田裕[訳]
月曜社 2019年5月 本体:3,800円 46判並製480頁 ISBN: 978-4-86503-075-4 C0097

アマゾン・ジャパンで予約受付中

「明日、ぼくは旅立つ。似たような人間が出会い、陽気に遊んだりするのだろうが、人はけっして君のことを知ることはない、自分の肌の砦のどこかに隠れた、その君を知ることはないだろう」。時は第二次大戦中。少年の成長、そして旅立ちが、動乱に揺れるカリブ海の島バルバドスの命運と重なる。彼はなぜ土地から離れなければならなかったのか。生まれた場所から移動することで初めて知ることとは。エドワード・サイードやスチュアート・ホールも重視するポストコロニアル思想の原点にして、カリブ文学の古典的傑作。バルバドス出身の作家ジョージ・ラミングの小説、初めての全訳。【叢書・エクリチュールの冒険、第13回配本】

ジョージ・ラミング(George Lamming)1927年、バルバドス生まれ。1953年、小説『私の肌の砦のなかで』でデビュー。その他の作品に小説『成熟と無垢について』(1958年)、小説『冒険の季節』(1960年)、批評集『故国喪失の喜び』(1960年)などがある。現在までに計6冊の小説、1冊の批評集を出版。最も重要なカリブ文学の作家のひとり。

吉田裕(よしだ・ゆたか)1980年、岐阜生まれ。東京理科大学専任講師。専門はカリブ文学及び思想、ポストコロニアル研究、文化研究。訳書にノーム・チョムスキー『複雑化する世界、単純化する欲望――核戦争と破滅に向かう環境世界』(花伝社、2014年)、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(共訳、月曜社、2014年)、ポール・ビュール『革命の芸術家――C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房、2014年)など。

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# by urag | 2019-04-15 10:20 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 14日

注目新刊:『よくわかる哲学・思想』『現代思想43のキーワード』、ほか

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アンコール』ジャック・ラカン著、藤田博史/片山文保訳、講談社選書メチエ、2019年4月、本体1,950円、四六判並製272頁、ISBN978-4-06-515340-6
閨房の哲学』マルキ・ド・サド著、秋吉良人訳、講談社学術文庫、2019年4月、本体1,260円、A6判並製344頁、ISBN978-4-06-515341-3
完訳 ブッダチャリタ』梶山雄一/小林信彦/立川武蔵/御牧克己訳注、講談社学術文庫、2019年4月、本体1,650円、A6判並製512頁、ISBN978-4-06-515342-0
女について』ショーペンハウェル著、石井立訳、東海林ユキエ画、明月堂出版、2019年4月、本体1,500円、四六判並製124頁、ISBN978-4-903145-65-5

★『アンコール』はラカンのセミネール第20巻(1972~73年度)。原著は1975年刊。帯文に「最重要セミネール、ついに全訳」とあるようにたいへん名高い講義録です。「「愛」という重要なテーマが根底に据えられ、「女の享楽」という問題とともに、精神分析は新たな次元に飛翔する」(カバー表4紹介文より)。目次は書名のリンク先をご覧ください。今回の訳書での訳者自身による記述は凡例のみで、訳者あとがきはありません。ラカンのセミネールは岩波書店から出版されるものと思っていましたが、どういった事情でメチエでの刊行に至ったのか。それについては、版元ウェブサイトの内容紹介で次のように明かされていました。

★「セミネールの日本語訳は、1987年から着手されたが、パリ・フロイト派創設の時期にあたる1963-64年度の『精神分析の四基本概念』までの時期のものに限定されている上、価格も高く、また現在では入手できなくなっているものも多い。/そうした状況の中、選書メチエの1冊として、最も名高い『アンコール』をお届けする。これは1972-73年度のセミネールであり、既存の邦訳からはうかがうことのできない後期ラカンの真髄が語られている」。とすると、セミネール全27巻予定のうち、岩波書店から刊行されるのは第11巻までで未訳は第6巻と第9巻の2点ということになります。第12巻以降では『アンコール』が初訳となりますが、果たして今後残りの巻は訳出されるのでしょうか。

★なお、関連書として『ラカン『アンコール』解説』(佐々木孝次/荒谷大輔/小長野航太/林行秀著、せりか書房、2013年8月)が刊行されています。また『アンコール』の訳者である藤田さんと片山さんによるラカンの共訳書としては『テレヴィジオン』(青土社、1992年;改訳版、講談社学術文庫、2016年)があります。

★『閨房の哲学』は文庫オリジナルの新訳。凡例によれば、底本は最新のプレイヤード版(1998年)で、「明らかな誤植などは断りなく訂正した」とのことです。かの著名な作中作「フランス人よ、共和主義者になりたいなら、もうひとがんばりだ」は「第五の対話」に出てきます(194~260頁)。同書は今まで幾度となく翻訳されてきましたが、現在入手可能な既訳には澁澤龍彦訳『閨房哲学』(電子版、河出文庫、1992年)、佐藤晴夫訳『閨房の哲学』(未知谷、1992年)、小西茂也訳『閨房哲学』(一穂社、2007年)、関谷一彦訳『閨房哲学』(人文書院、2014年)などがあります。今回新訳を手掛けられた秋吉良人さんは澁澤訳を参照されたそうです。「実に数十年ぶりに手にとって、初めて全体を原文と突き合わせながら読んだ。教えられるところも多々あったし、日本語の達者さには改めて舌を巻いた。ただ、翻訳に誤訳はつきものとはいえ、ほぼ毎頁に誤訳を見つけるに至って、学生時代に愛読し、人にも勧めてきただけに、正直まいった」と、訳者解説で率直に綴っておられます。講談社の各種文庫でサドの翻訳が出るのは実に本書が初めてになります。

★『完訳 ブッダチャリタ』は1985年12月に講談社のシリーズ「原始仏典」の第10巻として刊行された『ブッダチャリタ』の文庫化。ブッダの生涯を描いた古典的名著です。アシュヴァゴーシャによるサンスクリット語原文の前半14章に加え、欠落した後半14章をチベット訳、漢訳を参照し再現して、全28章を翻訳したとのことです。巻末の「学術文庫版解説」は、東京大学東洋文化研究所教授は馬場紀寿さんによるもの。

★このほか4月の講談社学術文庫では、豊永武盛『あいうえおの起源――身体からのコトバ発生論』、長沢利明『江戸東京の庶民信仰』、奥富敬之『名字の歴史学』が刊行されており、いずれも大いに気になるものの、財布と相談して後日購読を期すこととしました。

★『女について』は石井立(いしい・たつ:1923-1964)さんの既訳(「女について」、『女について』所収、角川文庫、1952年)を現代表記に改めて、当時の訳者解説とともに収録し、さらに東海林ユキエさんによる挿画と四コマ漫画と「はじめに」、横山茂彦さんによる解説「ショーペンハウェルの『女について』」、そして東海林さんと横山さんによる「おまけ対談 挿画と造本について――東海林ユキエさんと鍋を囲んで語る(訊き手=横山茂彦)」を新規に加えたものです。なお、横山さんの解説には、シラーの詩「女性たちの品位」が引かれています。生涯独身だったショーペンハウアーの毒舌をどう読むか、挑戦的な復刊です。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

現代思想2019年5月臨時増刊号 総特集=現代思想43のキーワード』青土社、2019年4月、本体1,500円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1380-6
よくわかる哲学・思想』納富信留/檜垣立哉/柏端達也編、ミネルヴァ書房、2019年4月、本体2,400円、B5判並製232頁、ISBN978-4-623-08410-4
〈自閉症学〉のすすめ――オーティズム・スタディーズの時代』野尻英一/高瀬堅吉/松本卓也編著、ミネルヴァ書房、2019年4月、本体2,000円、4-6判並製392頁、ISBN978-4-623-08648-1
文化人類学の思考法』松村圭一郎/中川理/石井美保編、世界思想社、2019年4月、本体1,800円、4-6判並製224頁、ISBN978-4-7907-1733-1
世界思想 46号 2019春 特集:ジェンダー』世界思想社編集部編、世界思想社、2019年4月、非売品、A5判並製88頁
統べるもの/叛くもの――統治とキリスト教の異同をめぐって』新教出版社編集部編、新教出版社、2019年3月、本体2,200円、四六判並製216頁、ISBN978-4-400-31086-0

★優れたアンソロジーが目白押しです。まず『よくわかる哲学・思想』は西洋哲学史と日本におけるその需要、そして哲学の基礎的な諸テーマと現代の諸問題を、キーワードとキーパーソンで見開きごとに読み切る体裁の入門書です。書名のリンク先で公開されている目次を見ていただければわかるかと思いますが、ここ最近ではもっともバランスの取れた簡潔な入門書になっているという印象です。

★残りの5点はこの入門書に接続しうるぞれぞれに特異なブースターとなります。『現代思想43のキーワード』は一見雑然としたキーワード集に見えますけれども、その実像は、よくぞここまで「今」の諸相を手際よく集めたものだと感心するほかない、非常に意欲的な「ポスト人文学」の地図です。本書を売場構成の手本にするなら相当面白い実践となることでしょう。

★『よくわかる哲学・思想』と『現代思想43のキーワード』にもジェンダー関連のキーワードが複数出てきますが、『世界思想(46)ジェンダー』では「性と文化」「結婚と家事・育児」「職業と経済」をテーマに実力派の論客14名が寄稿。総論となる「ジェンダーとは何か」は伊藤公雄さんが執筆されています。これが無料のPR冊子だなんて、世界思想社さんは本当に毎年すごいことをやって下さいます。

★『現代思想43のキーワード』では「Anthropology & History」という枠で6つのキーワードが紹介されていますが、人類学の最前線は「ポスト人文学」のもっとも先鋭的な地平を描くものです。『文化人類学の思考法』は編者による序論「世界を考える道具をつくろう」と3部構成13本の論考からなるアンソロジーで、参考文献と「もっと学びたい人のためのブックガイド」、魅力的なコラムの数々を加えて、人類学の冒険へと読者をいざなってくれます。なお同書の刊行記念トークイベントとなる松村圭一郎×若林恵「いま、あたりまえの外へ」が今週土曜日4月20日18時より、青山ブックセンター本店の大教室で行われます。

★『〈自閉症学〉のすすめ』は、心理学、精神病理学/精神分析、哲学、文化人類学、社会学、法律、文学、生物学、認知科学、といった諸分野と連関する、こんにちもっとも注目が高まっているオーティズム・スタディーズの横断的射程を紹介する論文集です。國分功一郎×熊谷晋一郎×松本卓也の三氏による鼎談「今なぜ自閉症について考えるのか?──〈自閉症学〉の新たな可能性へ向けて」も必読です(ちなみに松本さんは『現代思想43のキーワード』で千葉雅也さんとも対談されています)。巻末に「自閉症当事者本リスト」あり。人文書でブックフェアをやるならこの本を中心としたフェアが一番やりがいがあるはずです。

★『統べるもの/叛くもの』は帯文に曰く「統治とキリスト教の関係にジェンダー/セクシュアリティ/クィアやアナーキーといった視点から切り込む」6本の論考と2本の鼎談を「身体・秩序・クィア」「自己・神・蜂起」の2部構成で収録。これらによって『現代思想43のキーワード』や『世界思想(46)ジェンダー』などと響きあうヴィヴィッドな政治的次元が開かれます。

★これら6点の編者や編集者、対談者が一堂に会したら相当面白い議論になるはずですが、そこまで都合のいいイベントはさすがにないでしょうから、これらがどのように互いに越境して交通するかを読み解くのは、ただ読者の特権というべきでしょう。互いに共鳴しあう集合知が短期間に集中して形を帯びたことに、人文書の新しい出発の予感を覚えます。

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# by urag | 2019-04-14 22:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 11日

ブックツリー「哲学読書室」に亀井大輔さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『デリダ 歴史の思考』(法政大学出版局、2019年1月)の著者、亀井大輔さんによるコメント付き選書リスト「「歴史の思考」へと誘う5冊」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊

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# by urag | 2019-04-11 14:54 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 04月 08日

注目新刊:ボテロ『都市盛衰原因論』、ニーチェ『偶像の黄昏』新訳、ほか

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都市盛衰原因論』ジョヴァンニ・ボテロ著、石黒盛久訳、水声社、2019年3月、本体3,000円、A5判上製216頁、ISBN978-4-8010-0401-6

★『都市盛衰原因論』は水声社の新シリーズ「イタリアルネサンス文学・哲学コレクション」(全6巻、澤井繁男責任編集)の第1回配本。16世紀後半から17世紀初頭のイタリアを生きた、聖職者で政治評論家のジョヴァンニ・ボテロ(Giovanni Botero, 1544-1617)による1588年の著書『Delle cause della grandezza e magnificenza delle città』を訳したもの。帯文の文言を借りると「東西の主要都市が栄える要因を地理条件と政治政策の面から考察し、領土の拡大ではなく交易を通じた富の増大が国家の繁栄をもたらすと説」いたもの。この著書の翌1589年に上梓された主著『国家理性論』は同じ訳者によって風行社より2015年に刊行されています。『都市盛衰原因論』はボテロ(ボッテーロ、とも)の訳書の2冊目となるものです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。表題作のほか、付録として「中立について」と「評判について」という2篇の論考が訳出されています。シリーズの第2回配本はタッソ『詩作論』(村瀬有司訳)で今月発売予定。その後、カンパネッラ、アレティーノ、ガリレイ、フィチーノと続きます。

★続いてちくま学芸文庫の4月新刊4点をご紹介します。

『孤島』ジャン・グルニエ著、井上究一郎訳、ちくま学芸文庫、2019年4月、本体1,200円、240頁、ISBN978-4-480-09921-1
『論証のルールブック[第5版]』アンソニー・ウェストン著、古草秀子訳、ちくま学芸文庫、2019年4月、本体1,000円、224頁、ISBN978-4-480-09924-2
『大嘗祭』真弓常忠著、ちくま学芸文庫、2019年4月、本体1,200円、320頁、ISBN978-4-480-09919-8
『私の憲法勉強――嵐の中に立つ日本の基本法』中野好夫著、ちくま学芸文庫、2019年4月、本体1,000円、256頁、ISBN978-4-480-09923-5

★『孤島』はジャン・グルニエ(Jean Grenier, 1898-1971)のエッセイ集。1968年に竹内書店より井上究一郎訳が刊行され(底本は1959年にカミュの序文を付して刊行された改版)、1979年に竹内書店新社より改訂版が刊行、1991年に筑摩叢書より改訳新版が出され、このたび文庫化されるものです。訳者は99年に逝去されており、巻末の特記によれば、本文中の誤りを適宜訂正したとのこと。新たに付された巻末解説「詩的霊感に満ちた導きの書」は松浦寿輝さんによるもの。グルニエの訳書はほとんどが国文社から刊行されています。文庫化は今回が初めてです。

★『論証のルールブック[第5版]』は巻末特記によれば「2005年10月に刊行された『論理的に書くためのルールブック』(PHP研究所、原著第三版からの訳出)をもとに、2018年刊行の原著第五版に沿って、全面的な改訂を施したもの」。第三版と目次を見比べるだけでも主に第4章ルール17以降に手が加えられていることが分かります。取り上げられているルール(作法)はどれも重要なアドバイスばかり。学生からビジネスマンまで広く活用できる内容で、新春の読書に最適です。

★『大嘗祭(だいじょうさい)』は1988年に国書刊行会より刊行された単行本の文庫化。新たに文庫版あとがきが加えられています。カバー裏紹介文の文言を借りると「天皇の即位に伴う皇位継承儀礼のひとつである大嘗祭〔…〕。本書は歴史的史料を博捜して、大嘗祭を校正する儀礼である斎田点定(さいでんてんてい)、大嘗宮(だいじょうきゅう)の造営、大嘗宮の儀、廻立殿(かいりゅうでん)の儀等を詳述し、全体像を明らかにする」とのこと。改元が迫った今こそひもときたいです。

★『私の憲法勉強』は1965年9月に講談社現代新書の1冊として刊行されたものの文庫化。巻末特記によれば『中野好夫集Ⅲ』(筑摩書房、1984年)を参照しており、さらに「明らかな誤りは適宜訂正し、ルビも増やした。編集部による注は[ ]で示してある」とのことです。憲法改正問題をめぐり、「アメリカの押しつけ」論や「自主的憲法」議論を検証し、改憲論の欺瞞と問題点を率直に指摘されています。帯文には「素朴な感情論にのみこまれないために」とあります。今なお繰り返されている改憲論を冷静に分析するために必要な本です。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

偶像の黄昏』フリードリヒ・ニーチェ著、村井則夫訳、河出文庫、2019年4月、本体800円、232頁、ISBN978-4-309-46494-7
大英帝国は大食らい』リジー・コリンガム著、松本裕訳、河出書房新社、2019年3月、本体3,200円、46変形判上製448頁、ISBN978-4-309-22759-7
文藝 2019年夏季号/平成最終号』河出書房新社、2019年4月、本体1,380円、A5判並製504頁、ISBN978-4-309-97970-0
アンドレ・バザン研究 第3号』アンドレ・バザン研究会発行、2019年3月、A5判104頁、ISSN2432-9002

★『偶像の黄昏』はニーチェが精神に変調を来す直前の最晩年の書。コッリとモンティナーリの編纂によるグロイター社の批判校訂版全集第6巻からの新訳です。同じ批判校訂版からの既訳には白水社版『ニーチェ全集 第Ⅱ期第4巻』所収の西尾幹二訳「偶像の黄昏」(1987年、現在品切)があります。底本は異なりますが、文庫で現在も入手可能な既訳には、ちくま学芸文庫版『ニーチェ全集(14)』所収の原佑訳「偶像の黄昏」(1993年)があります。こちらは批判校訂版より古いクレーナー版からの翻訳。河出文庫ではこれまで、2012年に今回と同じく村井則夫さん訳で『喜ばしき知恵』、2015年に佐々木中さん訳『ツァラトゥストラかく語りき』、と2点の新訳を刊行済。ニーチェの新訳は光文社古典新訳文庫や講談社学術文庫などでも出ており、今後も点数が増える可能性がきっと高いでしょう。

★『大英帝国は大食らい』は『The Hungry Empire: How Britain's Quest for Food Shaped the Modern World』(The Bodley Head, 2017)の訳書。「近代世界の食習慣をかたちづくるうえで帝国が果たした役割を明らかに」するという本書は「イギリスの食糧探求がいかに大英帝国の誕生につながったかを語」り、「各章は特定の食事で始まり、その食事を可能にした歴史を掘り下げ」ています(「はじめに」より)。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。著者のコリンガムはイギリスの歴史家。河出書房新社ではこれまでに『インドカレー伝』(東郷えりか訳、2006年;河出文庫、2016年)や、『戦争と飢餓』(宇丹貴代実/黒輪篤嗣訳、2012年、品切)の2冊を刊行しており、本書が3冊目となります。

★『文藝 2019年夏季号/平成最終号』は「文芸再記号」を謳い文句に、新体制の編集部とアートディレクションおよびデザインに佐藤亜沙美さんを迎え、特集の再導入など、約20年ぶりに誌面リニューアルを行なったもの。個人的に注目しているのは、新連載のいとうせいこうさんの「福島モノローグ WITH COWS」や、岸政彦さんと柴崎友香さんの共作「大阪――地元を想像する/港へたどり着いた人たちの街で」、メイン特集「天皇・平成。文学」での、池澤夏樹さんと高橋源一郎さんの対談「なぜ今、天皇を書くのか」や、東浩紀さんのロングエッセイ「平成という病」、笠井叡さんのエッセイ「平成の時代に響く極上の声」、さらにリニューアル前から開始されている山本貴光さんの季評「文態百版」と「文芸的事象クロニクル 2018年12月~2019年2月」。

★「ぼくは平成の批評家だった。それは、平成の病を体現する批評家であることを意味していた。だからぼくは、自分の欲望に向きあわず、自分にはもっと大きなことができるはずだとばかり考えて、空回りを繰り返して四半世紀を過ごしてしまった。/ぼくは新元号では、そんな空回りをやめて、社会をよくすることなど考えず、地味にできることだけをやっていきたいと思う」(31頁)という東さんの発言は、他人事とは思えない何かを感じます。「その疲労は、きっと、ぼくと同世代の多くの日本人が共有しているはずだとも思うのだ」。その通りだと思います。

★『アンドレ・バザン研究』は山形大学人文社会科学部付属映像文化研究所内で2016年6月に発足したアンドレ・バザン研究会が発行する学術誌で、今般刊行される第3号は同会の2018年度の成果としてまとめられたもの。2018年はバザンの生誕100年であると同時に歿後60年で、昨年末来日したバザン研究の第一人者ダドリー・アンドルーさんの講演をもとにした論考や、野崎歓さん、三浦哲哉さんらの応答などが収められています。小特集は「映画とアダプテーション」。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。なお同誌は書店での一般発売はされないため、入手方法については後日同誌ブログにて告知があるとのことです。

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# by urag | 2019-04-08 02:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)