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2022年 10月 14日

「週刊読書人」にアガンベン『散文のイデア』の書評記事

「週刊読書人」2022年10月14日付「学術・読物」欄に、月曜社3月刊、ジョルジョ・アガンベン『散文のイデア』(高桑和巳訳)の書評記事「アガンベン思想の精髄を集約した33の《イデア》――思考を喚起する”アイディア集”として、自由に読みたい」が掲載されました。評者は専修大学教授の宮﨑裕助さんです。「読者はアガンベンのかつての歩みの途上で、哲学と詩のせめぎ合いのうちに、端的に思考と呼ぶほかない何かが閃くいくつもの瞬間に居合わせることができるのである」と評していただきました。

# by urag | 2022-10-14 18:55 | 書評・催事・広告 | Comments(0)
2022年 10月 14日

保管:月曜社刊行物2021年9月~10月

◎2021年10月6日発売:佐藤泰志『光る道――佐藤泰志拾遺』本体3,400円
 外岡秀俊氏書評「死後も伸び続ける樹――早熟の作家が目指した「生命そのものの書物」」(「週刊読書人」2021年11月19日号)
 小田島本有氏書評「佐藤泰志ファンにとって必携の書――いまだに佐藤泰志ブームは継続中だ」(「図書新聞」2022年1月15日号)
 青来有一氏書評「もがき続けた才能の足跡」(「東京新聞」2022年1月15日)
◎2021年9月28日発売:長崎浩『叛乱を解放する――体験と普遍史』本体3,200円
 古賀暹氏書評「「叛乱」と政治的なるもの――その思想的個人史」(「週刊読書人」2021年12月10日付)
 高橋順一氏書評「叛乱から政治へ――長崎浩は語の真の意味で〈1968年〉の思想家である」(「図書新聞」2022年2月5日付)
◎2021年9月22日発売:谷川渥『孤独な窃視者の夢想――日本近代文学のぞきからくり』本体2,600円
 志賀信夫氏書評「美学と文学と変態と――陰からちらりと覗き見する異端的文学」(「週刊読書人」2021年11月5日号)
 福田宏樹氏書評「妖しき近代文学、美学者が凝視」(「朝日新聞」2021年11月6日付)
 林浩平氏書評「心憎いまでの目配り――日本の近代文学の精髄には、どこか猟奇的で倒錯的、犯罪的な要素が生きている」(「図書新聞」2021年11月20日号)
◎2021年9月21日発売:ロドルフ・ガシェ『読むことのワイルド・カード――ポール・ド・マンについて』本体5,400円、シリーズ・古典転生第25回配本(本巻24)
 遠藤不比人氏書評「ポール・ド・マンの批評を的確に形容する「ワイルド・カード」――ラディカルに厳格で執拗なド・マンの批評を同様の厳格さと執拗さで精読する」(「図書新聞」3月19日号)


# by urag | 2022-10-14 18:18 | 販売情報 | Comments(0)
2022年 10月 13日

本日取次搬入:谷川渥『ローマの眠り』、堀千晶『ドゥルーズ 思考の生態学』

月曜社10月新刊、谷川渥『ローマの眠り』、堀千晶『ドゥルーズ 思考の生態学』の取次搬入を本日10月13日開始しました。事前に御発注いただいた書店様には、来週半ば以降、順次着店予定です。

# by urag | 2022-10-13 18:59 | 販売情報 | Comments(0)
2022年 10月 10日

注目の文庫新刊および既刊:ちくま学芸文庫11月新刊、ほか

注目の文庫新刊および既刊:ちくま学芸文庫11月新刊、ほか_a0018105_01472153.jpg


★まず、明日発売予定のちくま学芸文庫の11月新刊5点を列記します。

『なめらかな社会とその敵――PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』鈴木健著、ちくま学芸文庫、2022年10月、本体1,400円、文庫判448頁、ISBN978-4-480-51120-1
『算数・数学24の真珠』野﨑昭弘著、ちくま学芸文庫、2022年10月、本体1,200円、文庫判286頁、ISBN978-4-480-51153-9
『イギリス社会史 1580-1680――経済・社会秩序・文化』キース・ライトソン著、中野忠/山本浩司訳、ちくま学芸文庫、2022年10月、本体1,700円、文庫判592頁、ISBN978-4-480-51142-3
『絵画を読む――イコノロジー入門』若桑みどり著、ちくま学芸文庫、2022年10月、本体1,100円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-51149-2
『政治宣伝』ジャン=マリー・ドムナック著、小出峻訳、ちくま学芸文庫、202年10月、本体1,000円、文庫判256頁、ISBN978-4-480-51150-8

★『なめらかな社会とその敵』は、Math&Scienceシリーズの1冊。勁草書房より2013年に刊行された単行本の文庫化。現在、東大の特任研究員で、スマートニュース代表取締役会長兼社長の鈴木健(すずき・けん, 1975-)さんの初の単独著で、大きな話題を呼んだ代表作です。帯文には「300年先を見据えた社会構想、ついに文庫化」とありますが、それは大げさな宣伝文句ではなく、鈴木さん自身の自負でもあります。巻頭に「文庫版によせて」、巻末に「なめらかな社会への断章2013-2022」が加えられています。後者は著者自身の言葉を借りると「〔単行本刊行後〕10年間の世界の変容を踏まえて本書を読む意義と、勁草書房版ではまだ考えをまとめることができなかった論点について現在の考えを加筆」したものです。

★東欧で戦争が始まり、極東でもその足音が近づいてきたこんにち、本書の第11章「敵」を再読する意義は高まっているように思います。本書を買おうか買うまいか迷う方はまず、第11章第3節「公敵なき社会」の第5段落、354頁以下をざっと立ち読みしてみてください。引用すると長くなるのでしませんが、この国でも進行中の「なにごとか」に想像を巡らせるきっかけを得ることができるのではないかと思います。

★『算数・数学24の真珠』は、Math&Scienceシリーズの1冊。2012年に日本評論社より刊行された単行本の文庫化。もともとは、国土社の月刊誌『数学教室』での連載に加筆修正したもの。著者の野﨑昭弘(のざき・あきひろ, 1936-)さんは数学者。文庫版解説「こころ優しい数楽者」は親本の企画製作を担当された亀書房の編集者、亀井哲治郎さんが寄せておられます。

★『イギリス社会史 1580-1680』は、リブロポートの「社会科学の冒険」シリーズより1991年に刊行された単行本の文庫化。原著は第2版が2003年に刊行されており、この版から序文が新たに訳出されるとともに、同版の参考文献も加えられています。また、巻末には文庫版訳者あとがきと、山本浩司さんによる解説「ますます豊かで不平等な社会」が加わっています。前者によれば、文庫化にあたって訳文は改訂されています。著者のキース・ライトソン(Keith Wrightson, 1948-)は英国の歴史学者で、日本語訳書は本書のみです。

★『絵画を読む』は、NHKブックスの1冊として1993年に刊行されたものの文庫化。文庫版解説「美術という無限の深みへ」は、神戸大教授の宮下規久朗さんが寄せておられます。著者の若桑さんは15年前に逝去されています。

★『政治宣伝』は、文庫クセジュで1957年に刊行されたものの文庫化。新たに解説「デマゴギーとペダゴジーのはざまで」を寄せられている上智大准教授の川口茂雄さんが訳文を最小限改訂され、訳注を追加し、79年刊の原著第8版での加筆分を訳出されています。クセジュの古い本や絶版本の中には宝物がまだまだあるので、どんどん発掘されると良いですね。ジャン=マリー・ドムナック(Jean-Marie Domenach, 1922-97)はフランスの『エスプリ』誌の編集長。訳書は複数ありますが、日本でもっとも読まれたのは編書『構造主義とは何か』(平凡社ライブラリー、2004年、紙版品切)でしょうか。

★続いて、今年2月から9月までの文庫既刊書で今まで言及していなかった書目を列記します。自分が講読したかったすべての文庫ではありませんが、発売の都度購入したり、買いそびれていたものを後日買ったりして、手元に増えていったものです。当ブログでは単行本新刊の掲出に注力して、文庫の大半を後回しにしている間に、晩秋となりました。1点ずつに言及する時間がないのですけれども、関連する書目について少しだけ補足します。

世界の果てまで連れてって!…』ブレーズ・サンドラール著、生田耕作訳、ちくま文庫、2022年2月、本体1,100円、文庫判416頁、ISBN978-4-480-43799-0
変身』フランツ・カフカ著、川島隆訳、角川文庫、2022年2月、本体500円、文庫判176頁、ISBN978-4-04-109236-1
吸血鬼文学名作選』東雅夫編、創元推理文庫、2022年6月、本体1,000円、文庫判410頁、ISBN978-4-488-56411-7
現れる存在──脳と身体と世界の再統合』アンディ・クラーク著、池上高志/森本元太郎訳、ハヤカワ文庫NF、2022年7月、本体1,580円、文庫判644頁、ISBN978-4-15-050591-2
アウトサイダー ――クトゥルー神話傑作選』H・P・ラヴクラフト著、南條竹則編訳、新潮文庫、2022年8月、本体590円、文庫判316頁、ISBN978-4-10-240143-9
無神論』久松真一著、法蔵館文庫、2022年9月、本体1,000円、文庫判272頁、ISBN978-4-8318-2639-8

★『吸血鬼文学名作選』には、南條竹則訳バイロン、佐藤春夫訳ポリドリ、芥川龍之介訳ゴーチエ、矢野目源一訳シュウォッブ、等々が収められていますが、本書の前月に同じ版元から刊行された単行本では、バイロンやポリドリの新訳が読めます。G・G・バイロン/J・W・ポリドリほか『吸血鬼ラスヴァン――英米古典吸血鬼小説傑作集』(夏来健次/平戸懐古編訳、東京創元社、2022年5月)。それぞれの収録作は書名のリンク先でご確認いただけます。

★続いて、平凡社ライブラリー。スコットの30周年版(改訂版)原書は2018年刊。ライブラリー旧版(原著99年;増補新版、2004年)で加わった新しい序文と第10章は、今回の30周年版でさらに新しいテクストに差し換えられているとのことなので、旧版は廃棄してはいけませんね。

30周年版 ジェンダーと歴史学』ジョーン・W・スコット著、荻野美穂訳、平凡社ライブラリー、2022年5月、本体2,200円、B6変型判528頁、ISBN978-4-582-76930-2
天工開物』宋應星著、藪内清訳注、平凡社ライブラリー、2022年8月、B6変型判480頁、ISBN978-4-582-76933-3

★次に、日経ビジネス人文庫。ダイアモンド『第三のチンパンジー』上下巻は完全版。草思社文庫で5年前に出ている『若い読者のための 第三のチンパンジー ――人間という動物の進化と未来』(レベッカ・ステフォフ編、秋山勝訳、草思社文庫、2017年)は再編集された縮約版。

『戦争論』クラウゼヴィッツ語録』加藤秀治郎編訳、日経ビジネス人文庫、2022年6月、本体900円、A6判296頁、ISBN978-4-296-11424-5
第三のチンパンジー ――人類進化の栄光と翳り 完全版(上)』ジャレド・ダイアモンド著、長谷川眞理子/長谷川寿一訳、日経ビジネス人文庫、2022年4月、本体1,000円、A6判344頁、ISBN978-4-296-11300-2
第三のチンパンジー ――人類進化の栄光と翳り 完全版(下)』ジャレド・ダイアモンド著、長谷川眞理子/長谷川寿一訳、日経ビジネス人文庫、2022年4月、本体1,000円、A6判400頁、ISBN978-4-296-11301-9

★次に河出文庫。松田さんの本は小口に仕掛けありでさすがです。『ホモ・デウス』上下巻は『21 Lessons――21世紀の人類のための21の思考』(柴田裕之訳、河出文庫、2021年11月)に続く、ハラリの文庫化第二弾。肝心の『サピエンス全史』上下巻はいつ文庫化されるんだ、という声も聞こえてきそうですね。

独裁者のデザイン――ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法』松田行正著、河出文庫、2022年6月、本体1,500円、文庫判402頁、ISBN978-4-309-41894-0
不思議の国のアリス ヴィジュアル・詳註つき』ルイス・キャロル著、高橋康也/高橋迪訳、河出文庫、2022年8月、本体800円、文庫判254頁、ISBN978-4-309-46757-3
ホモ・デウス――テクノロジーとサピエンスの未来(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳、河出文庫、2022年9月、本体900円、文庫判360頁、ISBN978-4-309-46758-0
ホモ・デウス――テクノロジーとサピエンスの未来(下)』ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳、河出文庫、2022年9月、本体900円、文庫判384頁、ISBN978-4-309-46759-7

★次に光文社古典新訳文庫。プラトン新訳はこれで7点目。カフカは3点目。

スッタニパータ ブッダの言葉』今枝由郎訳、光文社古典新訳文庫、2022年3月、本体1,180円、文庫判416頁、ISBN978-4-334-75459-4
ゴルギアス』プラトン著、中澤務訳、光文社古典新訳文庫、2022年5月、本体1,120円、文庫判416頁、ISBN978-4-334-75462-4
田舎医者/断食芸人/流刑地で』カフカ著、丘沢静也訳、光文社古典新訳文庫、2022年7月、本体860円、文庫判340頁、ISBN978-4-334-75465-5
毛皮を着たヴィーナス』ザッハー=マゾッホ著、許光俊訳、光文社古典新訳文庫、2022年8月、本体960頁、ISBN978-4-334-75466-2

★次に講談社学術文庫。ルナン『国民とは何か』が新訳。こういう薄い文庫を出して下さるのは好ましいですね。

リズムの生物学』柳澤桂子著、講談社学術文庫、2022年3月、本体860円、A6判200頁、ISBN978-4-06-527067-7
国民とは何か』エルネスト・ルナン著、長谷川一年訳、講談社学術文庫、2022年4月、本体600円、A6判88頁、ISBN978-4-06-527857-4
荘子の哲学』中島隆博著、講談社学術文庫、2022年6月、本体960円、A6判240頁、ISBN978-4-06-528342-4
中国戦乱詩』鈴木虎雄著、講談社学術文庫、2022年8月、本体1,070円、A6判272頁、ISBN978-4-06-529007-1
異常の構造』木村敏著、講談社学術文庫、2022年8月、本体860円、A6判200頁、ISBN978-4-06-528945-7
韓非子 全現代語訳』本田済訳、講談社学術文庫、2022年9月、本体2,110円、A6判704頁、ISBN978-4-06-528946-4

★最後に岩波文庫および岩波現代文庫。『日常生活の精神病理』は岩波版フロイト全集からの改訂版ですが、全集を復刊しないなら順次文庫化して下さるとありがたいですね。『サラゴサ手稿』は初の全訳、全3巻予定。国書刊行会の既訳書は入手困難なので、嬉しいニュースです。

マキアヴェッリの独創性 他三篇』バーリン著、川出良枝編、岩波文庫、2022年2月、本体900円、文庫判330頁、ISBN978-4-00-336843-5
ロシア・インテリゲンツィヤの誕生 他五篇』バーリン著、桑野隆編、岩波文庫、2022年5月、本体1,010円、文庫判392頁、ISBN978-4-00-336844-2
日常生活の精神病理』フロイト著、高田珠樹訳、岩波文庫、2022年6月、本体1,440円、文庫判606頁、ISBN978-4-00-336429-1
終戦日記一九四五』エーリヒ・ケストナー著、酒寄進一訳、岩波文庫、2022年6月、本体970円、文庫判368頁、ISBN978-4-00-324712-9
史的システムとしての資本主義』ウォーラーステイン著、川北稔訳、岩波文庫、2022年7月、本体900円、文庫判270頁、ISBN978-4-00-384001-6
20世紀科学論文集 現代宇宙論の誕生』須藤靖編、岩波文庫、2022年8月、本体780円、文庫判268頁、ISBN978-4-00-339511-0
政治的なものの概念』カール・シュミット著、権左武志訳、岩波文庫、2022年8月、本体840円、文庫判298頁、ISBN978-4-00-340302-0
サラゴサ手稿(上)』ヤン・ポトツキ著、畑浩一郎訳、岩波文庫、2022年9月、本体1,140円、ISBN978-4-00-375133-6
正義への責任』アイリス・マリオン・ヤング著、岡野八代/池田直子訳、岩波現代文庫、2022年4月、本体1,620円、A6判422頁、ISBN978-4-00-600447-7

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# by urag | 2022-10-10 23:59 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2022年 10月 02日

注目新刊:アッピア『コスモポリタニズム』みすず書房、ほか

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コスモポリタニズム――「違いを越えた交流と対話」の倫理』クワメ・アンソニー・アッピア著、三谷尚澄訳、みすず書房、2022年9月、本体3,600円、四六判上製312頁、ISBN978-4-622-09533-0
ホラーの哲学――フィクションと感情をめぐるパラドックス』ノエル・キャロル著、高田敦史訳、フィルムアート社、2022年9月、本体3,200円、四六判並製500頁、ISBN978-4-8459-1920-8

★『コスモポリタニズム』は、英国生まれで米国で教鞭を執る文化理論家クワメ・アンソニー・アッピア(Kwame Anthony Appiah, 1954-)の著書『Cosmopolitanism』(Allen Lane, 2006)の訳書。カルチュラル・スタディーズを学んでいる者にとってはつとに著名な研究者ですが、本書が初の訳書となります。カバー裏紹介文に曰く「本書は、ともすれば安易な理想主義に陥りかねないコスモポリタニズムの思想を、さまざまな文化や習慣に触れてきた著者の経験を交えつつ、現代に通用する形で鍛え直すことをねらいとしている。「過去の遺物」ではない、「新しい可能性」をもった倫理として」。待望の翻訳です。

★「世の中に存在する諸価値の間にランク付けを導入し、優先順位をつけようとしても、最終的な合意が得られる望みはないだろうと思う。それゆえ、価値の問題をめぐる私の論述は、「共に暮らし/言葉を交わす」というモデルへと――とりわけ、生活様式の異なる人々の間での対話と交流というモデルへと立ち戻ることになるだろう。私たちは、これから、これまで以上に混み合った世界の中で生きていくことになる。半世紀後には、狩猟採集に日々過ごしていた人類という種族の総数は90億に迫っていることだろう。国境を越えた対話や交流は、状況に応じて、楽しいものにもなれば、ただ煩わしいだけのものになることもあるだろう。しかし、「私たちはそれらを避けることができない」という点に、対話や交流の中心的性質は見いだされるのである」(はじめに、xvi頁)。

★「自分とは違った土地に暮らす人々の声に耳を傾けてみること。つまり、異国の小説を読み、異国の映画を鑑賞し、異国の芸術作品と向き合ってみること。その営みを通じて、私たちは異質な他者たちと付き合うとはどのようなことであるかを、想像上の世界において経験することができる。そして、国家であれ、宗教であれ、何か他のものであれ、何らかの要素に裏打ちされたアイデンティティの境界を超えて、その向こう側の世界に暮らす他者たちと会話し、交流することの第一歩は、この種の想像上の他者との付き合いから始まる。要するに、「対話/交流」(conversation)という言葉を用いることで、実際に言葉を用いて話をすることだけでなく、自分とは異なる考え方を詩、自分とは異なる仕方で世界を経験している他者たちと関わってみることのメタファーをも意味させてみたい。それが私の考えなのでる。また、このことは、私が想像力の役割を強調していることの理由にもなっている。想像上の出会いは何であれ、適切な仕方で他者に出会ってみるということ。そういった経験ができれば、その経験はそれ自体において価値をもつだろうからだ。交流がなされたからといって、何がしかの問題に関して――とりわけ、価値をめぐることがらに関して――人々の意見が一致するに至る、などということはないだろう。でも、それでよいのではないか。お互い、そこにいるのが当たり前。「交わってみること」を通じて、そのような感覚を得る助けとすることができるのなら、それで十分なのである」(124頁)。

★『ホラーの哲学』は、米国の哲学者・美学者ノエル・キャロル(Noël Carroll, 1947-)の著書『The Philosophy of Horror, or Paradoxes of the Heart』(Routledge, 1990)の全訳。帯文に曰く「分析美学の第一人者である著者が、フィクションの哲学、感情の哲学、ポピュラーカルチャー批評を駆使して、その不思議と魅力の解明に挑む」と。キャロルの訳書は、『批評について――芸術批評の哲学』(原著2009年;森功次訳、勁草書房、2017年)に続く2冊目。

★「ホラー小説と啓蒙思想の間には、経験的な考察ではなく概念的な考察に基づく関係があるかもしれない。わたしはこれまでの議論を通じて、アートホラーの感情には、モンスター ――アートホラーの感情が集中する対象――が侵害する自然という概念が含まれていることを強調してきた。モンスターは超自然的であるか、SF的な空想から生み出されたものであったとしても、少なくともわたしたちが知っているような自然に公然と反抗する。ホラーのモンスターは、つまり自然の侵犯という概念を具体化したものだ。しかし、自然を侵犯するには、自然についての捉え方が必要だ。この捉え方によって、問題の対象が自然に反する領域に追いやられる。この点で、啓蒙思想はもらー小説が正しい種類のモンスターを生み出すために必要となる自然の規範を与えたと提案したくなるかもしれない」(120頁)。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。作業時間が足りず、書名のみ掲出いたします。

ストロング・ポイズン』ドロシー・L・セイヤーズ著、大西寿明訳、幻戯書房、本体3,600円、四六判上製384頁、ISBN978-4-86488-255-2
しかし語らねばならない――女・底辺・社会運動』郡山吉江著、共和国、2022年9月、本体2,600円、四六変型判328頁、ISBN978-4-907986-90-2
レヴィナス読本』レヴィナス協会編、法政大学出版局、2022年9月、本体3,100円、A5判並製352頁、ISBN978-4-588-15128-6
現代思想2022年10月号 特集=大学は誰のものか――国際卓越研究大学・教職員労働問題・就活のリアル…』青土社、2022年9月、本体1,500円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1436-0
日本を旅する大旅行地図帳 歴史編』平凡社編、平凡社、2022年9月、本体2,400円、A4判並製192頁、ISBN978-4-582-41815-6

★作品社さんの9月新刊より3点。

ドゥルーズ=ガタリ『アンチ・オイディプス』を読む』森田裕之著、作品社、2022年9月、本体2,400円、46判並製224頁、ISBN978-4-86182-932-1
神と霊魂――本居宣長・平田篤胤の〈神〉論アンソロジー』子安宣邦著、作品社、2022年9月、本体2,400円、46判上製208頁、ISBN978-4-86182-928-4
小説集 徳川家康』鷲尾雨工/岡本綺堂/近松秋江/坂口安吾著、三田誠広解説、作品社、2022年9月、本体1,800円、46判上製336頁、ISBN978-4-86182-931-4

★藤原書店さんの9月新刊より4点。

経済学の認識論――理論は歴史の娘である』ロベール・ボワイエ著、山田鋭夫訳、藤原書店、2022年9月、本体2,800円、四六判上製208頁、ISBN978-4-86578-359-9
1937年の世界史――別冊『環』27』倉山満/宮脇淳子編、藤原書店、2022年9月、本体2,800円、菊変判並製208頁、ISBN978-4-86578-349-0
加賀百万石の侯爵――陸軍大将・前田利為 1885-1942』村上紀史郎著、藤原書店、2022年9月、本体4,800円、四六判上製528頁、ISBN978-4-86578-356-8
東アジア国境紛争の歴史と論理』石井明/朱建栄編、藤原書店、2022年9月、本体4,800円、A5判上製408頁、ISBN978-4-86578-360-5

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# by urag | 2022-10-02 23:02 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)