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2018年 08月 09日

マラルメ『詩集』取次搬入日とノベルティについて

ステファヌ・マラルメ『詩集』(柏倉康夫訳)の取次搬入日が決定しました。日販、大阪屋栗田、トーハン、いずれも8月16日(木)です。書店さんの店頭ではおおよそ8月20日(月)以降に並び始める予定です。なお、弊社ツイッターで告知していたノベルティ(購入特典)の、マラルメの名刺のレプリカですが、以下の書店様で『詩集』をご購入いただいたお客様にお配りする予定です。数に限りがございますので、配付終了の場合はご了承ください。

丸善京都本店 文芸書売場(京都市中京区河原町通三条下る山崎町251 電話075-253-1599)
東京堂書店神田神保町店 文芸書売場(千代田区神田神保町1-17 電話03-3291-5181)
フランス図書(新宿区新宿1-11-15 電話03-3226-9011)
三省堂書店神保町本店 文芸書売場(千代田区神田神保町1-1 電話03-3233-3312)【8月28日追加店舗】

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# by urag | 2018-08-09 17:23 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2018年 08月 08日

ブックツリー「哲学読書室」に小倉拓也さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、以下の1本が新たに追加されました。『カオスに抗する闘い――ドゥルーズ・精神分析・現象学 』(人文書院、2018年7月)の著者、小倉拓也さんによるコメント付き選書リスト「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊」です。以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31) 小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊

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# by urag | 2018-08-08 10:33 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 08月 06日

注目新刊:『新約聖書 本文の訳 携帯版』と『サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳』、ほか

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新約聖書 本文の訳 携帯版』田川建三訳、作品社、2018年7月、本体1,800円、A6判並製496頁、ISBN978-4-86182-709-9
サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳』植木雅俊訳・解説、角川ソフィア文庫、2018年7月、本体1,160円、文庫判並製432頁、ISBN:978-4-04-400409-5

★田川建三訳『新約聖書 本文の訳 携帯版』は、A5判の保存版と同時発売。頁割は保存版も携帯版も同様なので、老眼の始まった読者には携帯版は日本聖書協会版に比べてやや辛い文字の小ささですが、巻頭の訳者による「はじめに」からインパクト充分で惹き込まれます。なにせ書き出しは「新約聖書と呼ばれてきた書物は、本当はもちろん「聖書」ではない。こんなことは誰でもよく知っているはずのことである」(3頁)です。聖書を「人間が書いたもの」「あくまでも人間の歴史の記録」として捉える田川訳にふさわしい出だしだと思います。「これは、あなた方〔教会〕の所有物ではないし、あなた方が勝手に私物化してよいものでもない。それはすべての人々に、よけいな粉飾なしに、ありのままの姿で、公開されないといけない。だから我々は、ここで、新約の諸文書を教会の壁の外に解き放って、多くの読者の方々が普通に読み、普通にその実態にふれることのできるような姿で、提供することにした。ここにあるのは、後一世紀、まだキリスト教なるものが固定的な形をなしていなかった時代に、何らかの形でキリスト教にかかわった人々によって書かれたさまざまな文書を集めたものである」(同)。

★本書は、2007年から2017年にかけて田川さんが上梓した『新約聖書 訳と註』の本文訳を「もう少し日本語としてわかり易いように、ある程度」「改め、ないし語を補」ったもので、「どのみち訳文だけでは不十分なので、訳文の流れをひどく邪魔しない程度に、かなり多く註をつけておいた」とのことです。巻末には各文書についての解説が付されています。聖書の新訳自体がひとつの戦いであることを改めて示して下さった途方もない一書です。

★『サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳』の訳者の植木さんは画期的な『梵漢和対照・現代語訳 法華経』(上下巻、岩波書店、2008年)で毎日出版文化賞を受賞され、その後に同訳書の現代語訳のみを取り出して「日本語らしい文章にすることに努めた」という普及版上下巻を岩波書店から2015年に上梓し、さらに今春にはNHK-Eテレ「100分de名著」における法華経の講義で好評を博した方です。その植木さんによる法華経の最新縮訳版が本書。縮訳というのは、「重複した箇所をバッサリと割愛し、過剰な修飾語や形容詞、過剰な述語動詞の羅列は簡略化した」もの。「全27章のストーリー展開をスムーズに読みやすく現代語で縮訳。時代背景も考慮しながら、経典の意味を改めて掘り起こし、詳細な解説と注を章ごとに収録。全体像を的確に理解したい人必携の入門書」(カバー表4紹介文より)と謳われています。法華経のドラマティックな展開の数々が通読しやすくなったのはたいへんに重要です。

★偶然とはいえ、新約聖書の新訳と法華経の縮訳がともに7月に文庫版で発売されたことに強い感銘を覚えます。文庫本が日本で生まれてから約90年、このハンディさが読書を変えてきました。文庫本は取次において正味が単行本より低く設定されたり、月々の定期的な刊行が基本だったりするのですが、第5次ブームからはや20年、いよいよ参入障壁が取り払われるべき時が来たように思います。中小版元が自由に文庫本を作って売ることができるなら、文庫はもっと面白くなりうると個人的には予感しています。

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★また最近では以下の新刊との出会いがありました。

牛たちの知られざる生活』ロザムンド・ヤング著、石崎比呂美訳、アダチプレス、2018年7月、本体1,600円、四六変型判上製176頁、ISBN978-4-908251-08-5
カズオ・イシグロの視線――記憶・想像・郷愁』荘中孝之/三村尚央/森川慎也編、作品社、2018年7月、本体2,800円、四六判上製342頁、ISBN978-4-86182-710-5
エロシマ』ダニー・ラフェリエール著、立花英裕訳、藤原書店、2018年7月、本体1,800円、四六上製200頁、ISBN978-4-86578-182-3
ビーマイベイビー――信藤三雄レトロスペクティブ』信藤三雄著、平凡社、2018年8月、本体3,200円、A5変型判並製328頁、ISBN978-4-582-20713-2

★ヤング『牛たちの知られざる生活』は『The Secret Life of Cows』の訳書。原著初版は2003年にGood Life Pressから刊行され、その後の「農場の状況をより反映するように、一部に加筆と改訂を行って」(巻頭の「著者からのひとこと」)2017年にFaber & Faberより再刊されたとのことです。再刊のきっかけとなったイギリスの作家アラン・ベネットの回想録の一部が序文として掲載されています。「冗談どころか、これはまぎれもなく牛について書かれた本だ、とても楽しい本だが、牛が(そして羊や鶏も)一般に考えられているよりはるかに知恵のある聡明な生き物だと知らされると、多くの牛たちが置かれている境遇を考えて、ちょっともの悲しい気分にもなる。これはそういう本だ。これまでの物の見方をがらりと変えてくれる」(12頁)。帯文の文言をアレンジしつつお借りすると本書は、イギリスのオーガニック農場「カイツ・ネスト・ファーム」で暮らす牛たちの日常と事件を、女性経営者が愛情豊かに描いたエッセイ。イギリス各紙で2017年のベストブックに選ばれています。版元さんのサイトで試し読みができます。

★『カズオ・イシグロの視線』は12篇のイシグロ論を収録。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。共編者の三村さんによる巻頭の「まえがき」によれば、「はじめの8篇は作品の各論として、これまでに刊行された7つの長編と1つの短編集のそれぞれを出版年順に取り上げて論じて」おり、「後半では個々の作品を超えた作家イシグロの全体像、あるいは日本とイギリスの中間的存在としてのイシグロが双方の文化的文脈の中で持つ意味、そして文学作品を用いた人文学教育の題材としての可能性にも眼を向けている」とのことです。巻末に「カズオ・イシグロ作品紹介」「カズオ・イシグロ年譜」「カズオ・イシグロより深く知るための文献案内」が資料として付されています。なお、各ネット書店に掲出された情報によれば、本書に関わった方々を中心に、『カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読む』という論集が水声社さんより9月に刊行予定のようです。

★ラファリエール『エロシマ』は『EROSHIMA』(VLB éditeur, 1987)の訳書。巻頭に置かれた著者による「一つの季節――日本の読者へ」によれば、本書は1985年のデビュー作『ニグロと疲れないでセックスする方法』(立花英裕訳、藤原書店、2012年)の一部として挟み込まれる予定だった小説の原稿が、編集者のアドバイスにより独立した一冊になったもの、とのことです。編集者のなかなか美しい感想が著者を動かしたわけですが、その一言については店頭で本書をご確認ください。なお目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「午前八時。十五分後に終わりが来るのだ。俺は憤っているわけではない。ただ、思わないではいられない。あの瞬間以後、我々のなすことはことごとく――どんなありきたりの身振りであろうと――原子爆弾の威嚇の下にある。いまこの瞬間、我々がなしていること全て――たとえ、それが読書であろうとも――原子爆弾との関係からまぬがれないのだ」(21頁)。

★『ビーマイベイビー――信藤三雄レトロスペクティブ』は、現在世田谷文学館で開催中の同名展覧会の公式図録(9月17日まで)。アートディレクターの信藤三雄(しんどう・みつお:1948-)さんの手掛けたレコード、CD、ポスター、写真、等々を約1000点掲載しています。横山剣さん、小西康陽さん、リリー・フランキーさんらの特別インタヴューや、スタイリストの伏見京子さんとクリエイティヴディレクターの米津智之さんの対談も併載。日本の音楽業界におけるグラフィックデザイン現代史をひもとくうえで欠かせない資料と言えそうです。

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# by urag | 2018-08-06 01:37 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 30日

非売品小冊子:本棚会議vol.1「月曜社『多様体』と哲学雑誌の系譜」

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ジュンク堂書店池袋本店4F人文書売場で無料配布中の小冊子(A5判中綴1段組28頁)「本棚会議vol.1 月曜社『多様体』と哲学雑誌の系譜」の第二版ができあがったようです(Iさん、Mさん、いつもありがとうございます)。たくさんの方々にお読みいただいているようで光栄です。無料配布の冊子なのに「第二版」というのは本屋さんらしいというか、面白いですね。「第二版」と言っても内容に変更はありません。ふつうの増刷です。ただ、裏表紙に「本棚会議とは?」という紹介文が新たに入っています。

本棚会議は私がお邪魔した4月の第1回から、様々なゲストを招いて毎月開催されてきています。今月21日に行われた洪貴義さんと早尾貴紀さんの「ポストコロニアリズムを再考/再興する」は第3回と発表されていましたが、数え直しで事後的に第5回となったようです。来月末には第6回が開催予定。社会学者の鈴木洋仁さんによる「平成最後の夏に「平成」を振り返る」です。鈴木さんは4年前に『「平成」論』(青弓社ライブラリー、2014年4月)を上梓されています。本当に平成がもうすぐで終わるのですね。感慨深いです。

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ちなみに「多様体」誌関連の非売品小冊子はこれで3点目になります。「多様体第零号 死なない蛸」(文庫判中綴62頁、限定60部、月曜社/八重洲ブックセンター本店、2016年7月)、「編集人小林浩さんインタビュー」(聞き手=宮台由美子、A5判中綴2段組8頁、限定50部、代官山蔦屋書店、2018年2月)、「本棚会議vol.1 月曜社『多様体』と哲学雑誌の系譜」(聞き手=森暁子、ジュンク堂書店池袋本店、2018年7月)です。様々な本屋さんに助けていただいて、本当にありがたいことです。「死なない蛸」と「インタビュー」はそれぞれ店頭で、特別付録として創刊号とセットで販売(在庫の有無は本屋さんにご確認下さい)。「系譜」は店頭で無料配布されています。

ほぼ同時期の今年3月に公開開始となった、首都大「人文学報」の拙文「人文書出版と業界再編:出版社と書店は生き残れるか」は累計2290回もダウンロードしていただいたようで、恐縮するばかりです。

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# by urag | 2018-07-30 11:59 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 29日

注目新刊:新鋭によるドゥルーズが目白押し『眼がスクリーンになるとき』『カオスに抗する闘い』、ほか

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眼がスクリーンになるとき――ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』福尾匠:著、フィルムアート社、2018年7月、本体2,200円、四六版並製304頁、ISBN978-4-8459-1704-4
カオスに抗する闘い――ドゥルーズ・精神分析・現象学』小倉拓也:著、人文書院、2018年7月、本体4,500円、4-6判上製366頁、ISBN978-4-409-03100-1
ドゥルーズ+ガタリ〈アンチ・オイディプス〉入門講義』仲正昌樹:著、作品社、2018年7月、本体2,000円、46判並製448頁、ISBN978-4-86182-703-7

★7月26日発売で3点のドゥルーズ論が刊行されています。そのうち、まず2点のデビュー作から。まず1点めの『眼がスクリーンになるとき』は、ドゥルーズの『シネマ』をめぐる修士論文を大阪大学に昨年提出した福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さんによる書き下ろし。修論の直後に現代美術展「クロニクル、クロニクル!」の関連イベントとして行われたレクチャー「5時間でわかるドゥルーズ『シネマ』」が本書執筆のきっかけとなっているとのことです。帯文には千葉雅也さんの推薦文が記載されています。曰く「目からウロコの超解読」と。

★『シネマ』は哲学書であり、映画に喚起された諸概念を発明している、と福尾さんは述べます(287頁)。「理論と実践の分割などでなく、映画も哲学も固有の「思考」をそなえた実践である。できあいの理論を「適用」するのでなく〔…〕、「見たままの〔リテラルな〕イメージしか信じない」という態度が必要とされている」(同)。これは適用主義を避けるための前提であり、「物の知覚」という境位を示している(同)。「このリテラルなイメージの全面化は破局的でもある。身動きが取れず、見ていることしかできず、思考は不可能性に直面し……といった一連の不可能性と切り離せないからだ」(287~288頁)。「われわれが〔…〕考えてきたのは、この破局はいかにして回避されうるのかということだ」(288頁)。「本書は「たんに見る」ことの難しさと創造性をめぐって書かれる」(11頁)。これは現代人にとっても非常にアクチュアルな問題だと思います。

★二つめ。福尾さんのあとがきの謝辞に登場する小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さんも、大阪大学に3年前に提出された博士論文を改稿した『カオスに抗する闘い』を上梓されました(ちなみに福尾さんは『眼がスクリーンになるとき』第五章の注6において小倉さんの博士論文に言及し、参考文献にも掲げています)。小倉さんのあとがきの謝辞には今度は福尾さんが登場するのですが、親愛の情に溢れているという印象です。小倉さんの著書は「ドゥルーズ哲学を、晩年に前景化する「カオスに抗する闘い」という観点から体系的に読解するもの」(20頁)。ドゥルーズ哲学の「秘密の一貫性」を明らかにし、その哲学を新たな相貌のもとに(21頁)捉える試みです。「ドゥルーズ哲学をその総体において捉えるなら、表象=再現前化の批判によって見いだされる下-表象的なものとしてのシステムは、そもそも「カオスに抗する闘い」によってはじめて存立可能となるものなのである」(22頁)。

★「思考は自分自身から逃れ去り、観念は漏出し、感覚は要素を取り逃がし、何ひとつとどまることなくほどけていく。カオスから出来したものたちの、カオスへの不可逆的な崩壊。これが『哲学とは何か』における「老い」の問題である」(26~27頁)。「カオスに抗する闘い」は「私たちが生まれて、生きて、死んでいく存在であるかぎり、敗北を余儀なくされた、勝ち目のない闘いなのである。だからこそドゥルーズは、カオスを切り抜け、崩壊を乗り越える、「「来るべき民衆」の影」――それは「影」でしかない――を幻視することで、『哲学とは何か』を閉じることになる」(27~28頁)。「カオスに抗する闘いとは、経験を構成しうる諸要素が、現れると同時に消えていき、いかなる形態もなすことがない、そんな空虚から、様々な程度の一貫性――局所的なもの、大域的なもの、開かれたもの――を構築し、それらをシステムと呼ばれるものへと総合すること、そして、そのような構築や総合が破綻し、空虚へと落下する危機には、それに反発し、最小限の一貫性を保持することである」(355頁)。老いて疲労していくドゥルーズに果敢に向き合いつつ、そこから生々しい力を引き出した労作ではないでしょうか。

★最後に、仲正昌樹『ドゥルーズ+ガタリ〈アンチ・オイディプス〉入門講義』は、2016年9月から2017年2月に読書人スタジオで行われた全6回の連続講義に大幅加筆したもの。主要目次は以下の通りです。

はじめに
講義第一回 新たなる哲学のマニフェスト――第一章
講義第二回 精神分析批判と家族――第二章第一節~第六節
講義第三回 エディプス・コンプレックスの起源――第二章第七節~第三章第三節
講義第四回 資本主義機械――第三章第三節後半~第一〇節
講義第五回 「分裂分析」と「新たな大地」への序章――第三章第一一節~第四章第三節
講義第六回 分裂しつつ自己再生し続ける、その果て――第四章第四節~第五節
あとがき
わけのわからない『アンチ・オイディプス』をよりディープに理解するための読書案内
『アンチ・オイディプス』関連年表

★『アンチ・オイディプス』の分かりにくさをめぐって、400頁を超えるヴォリュームで丁寧に解説を加えた本書は、1頁あたりの文字数も多いのでかなり読み応えがあります。『千のプラトー』に比べても『アンチ・オイディプス』が難解である理由の一端を、仲正さんは次のように説明されています。「恐らくドゥルーズ+ガタリの認識では、「エディプス」言説は、西洋の知識人、特に精神分析や構造主義、現象学などを学び、そのスタイルを取り入れた、エリート知識人たちの思考・表現様式を――本人たちが自覚しないうちに――かなり深いところまで規定しており、彼らにとっていつの間にか半ば常識化している。教科書的にきれいに記述すると、彼らの“常識”に揺さぶりをかけることができず、素通りされてしまう可能性がある。あまりに文学的、場合によっては、(私たちが生きる社会で)“狂気”と見なされるような言葉でないと、響かないかもしれない。それらの効果を計算に入れて、全体の流れが構成され、文体が選択されているように思える」(3頁)。

★仲正さんの講義は昨年末に発売された、佐藤嘉幸さんと廣瀬純さんのお二人による『三つの革命――ドゥルーズ=ガタリの政治哲学』(講談社選書メチエ、2017年)とは対照的で、ドゥルーズとガタリのコンビを「革命」の方向性では読んではいません。そうした読解は、後半の第四回から第六回の講義と質疑応答から窺えると思います。

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★また最近では以下の新刊との出会いがありました。

誰のために法は生まれた』木庭顕:著、朝日出版社、2018年7月、本体1,850円、四六判並製400頁、ISBN978-4-255-01077-9
労働者のための漫画の描き方教室』川崎昌平:著、春秋社、2018年7月、本体1,800円、四六判並製472頁、ISBN978-4-393-33363-1
暴力とエロスの現代史――戦争の記憶をめぐるエッセイ』イアン・ブルマ:著、堀田江理:訳、人文書院、2018年7月、本体3,400円、4-6判上製360頁、ISBN978-4-409-51078-0
原発事故後の子ども保養支援――「避難」と「復興」とともに』疋田香澄:著、人文書院、2018年8月、本体2,000円、4-6判並製276頁、ISBN978-4-409-24121-9
現代思想2018年8月号 特集=朝鮮半島のリアル』青土社、2018年7月、本体1,400円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1368-4

★木庭顕『誰のために法は生まれた』は、4月にみすず書房から『憲法9条へのカタバシス』を上梓し、遠からず『現代日本法へのカタバシス』(羽鳥書店、2011年)の新版を同じくみすず書房から刊行予定だというローマ法研究者による、親しみやすい一冊。2017年9月~11月にかけて横浜市の桐蔭学園で中高生を相手に行われた全5回の授業を記録したものだそうです。映画の「近松物語」(溝口健二監督、1954年)や「自転車泥棒」(ヴィットーリオ・デ・シーカ監督、1948年)、ローマ喜劇のプラウトゥス「カシーナ」および「ルデンス」、ギリシア悲劇のソフォクレス「アンティゴネー」および「フィロクテーテース」、さらには日本の最高裁の判例集などを題材に、中高生と「老教授」がざっくばらんな議論を交わします。ともすると現実離れしてしまいがちな法律をめぐる話を、人生に関わる視点で捉え直す、非常にしなやかな対話篇です。なお本書は同社の「高校生講義シリーズ」の最新刊とのことです。

★川崎昌平『労働者のための漫画の描き方教室』は、これまでの川崎さんの執筆活動や編集者としての生きざまのエッセンスをすべて投入して昇華させた、入魂の一書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「はじめに」に曰く「本書の目標は、毎日を懸命に働く労働者に、漫画という表現手法を手にしてもらうという、その一点に尽きる。そのための思考を、全霊を賭して伝えるのが、本書の役割である」(3頁)。「別に私は「表現者になれ!」と主張しているのではない。そうではなく、労働者としてあり続けるためにも表現をしよう、表現者としての側面を自分に築いて、疲れた心身を蘇らせようと呼びかけたいのである」(5頁)。「忙しいという理由で、あなたは表現を放棄してはいけない。なぜならば、表現をしなければ、あなたは忙しい日々に漫然と殺されてしまうかもしれないからだ」(4頁)。試し読み小冊子で、本書の位置づけを「過酷な現代を生き延びるための「哲学書」」としているのは、なるほどなと思いました。

★イアン・ブルマ『暴力とエロスの現代史』は、2014年に刊行されたブルマの評論集『Theater of Cruelty: Art, Film, and the Shadows of War〔残酷の劇場――芸術、映画、そして戦争の影〕』に収録された全28篇から序文を含む15篇を選び、さらに各紙誌に寄稿した2篇を加えて一冊とした、日本版オリジナル編集本です。「戦争、その歴史と記憶」「芸術と映画」「政治と旅」の三部構成。ここ20年の間に発表されたものばかりです。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。ブルマの鋭い批評精神は本書のもっとも初期のテクスト「被害者意識、その喜びと危険性」(1999年)にも如実に表れています。東アジア研究や中国現代史研究で著名なシュワルツ(Vera Schwarcz, 1947-)の著書『Bridge across Broken Time』(Yale University Press, 1998)に対して「これは非歴史的な本だ。犠牲者の歴史的な経験が、一種の「苦しみのスープ」に混ぜ合わされて調理されている」(33頁)と厳しく指摘しています。このテクストの末尾でブルマは「癒し」を求める言説や感傷主義に注意を喚起しつつ、真実とフィクションの区別を曖昧にすることの危険性に警告を発しており、こんにちの「ポスト・トゥルース」の議論を先どりしているように感じました。

★疋田香澄『原発事故後の子ども保養支援』はまもなく発売。福島原発事故以後の、保護者や子供たちへの支援活動のひとつである「保養」をめぐる本。保養とは転地療養であり「心身の健康回復を目的として汚染が少ない地域へ移動するプログラム」(11頁)である、自然体験やリフレッシュキャンプなどの活動。誰もが被ばくのリスクを不当に押し付けられない権利を持っているはずだ、という著者の信念のもと、参加者や支援者など様々な関係者らの肉声を紹介し、危険に常にさらされている人々とその社会が抱える様々な問題を取り上げています。カバーに使用されている写真の、橋の上でリュックを背に走り出す子供たちの背中が印象的です。

★『現代思想2018年8月号 特集=朝鮮半島のリアル』は、李鍾元+梅林宏道+鵜飼哲の三氏による討議「南北の平和共存と北東アジアの未来――南北首脳会談・米朝首脳会談はいかなる可能性を拓いたのか」にはじまり、北朝鮮、米朝交渉、核問題、脱北者、離散家族、ろうそく革命、フェミニズムなどの切り口から主題に接近する論考が並んでいます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。『現代思想』9月号は特集「考古学の思想」、10月臨時増刊号は総特集「マルクス・ガブリエル(仮)」とのことです。

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# by urag | 2018-07-29 23:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 27日

注目新刊:『レヴィナス著作集』全三巻完結、シャマユー『ドローンの哲学』

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★渡名喜庸哲さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
訳書と共訳書を立て続けに2点上梓されます。

レヴィナス著作集 3 エロス・文学・哲学
E・レヴィナス:著 ジャン=リュック・ナンシー/ダニエル・コーエン=レヴィナス:監修 渡名喜庸哲/三浦直希/藤岡俊博:訳
法政大学出版局 2018年7月 本体5,000円 A5判上製460頁 ISBN978-4-588-12123-4

ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争
グレゴワール・シャマユー:著 渡名喜庸哲:訳
明石書店 2018年8月 本体2,400円 4-6判並製352頁 ISBN978-4-7503-4692-2

まず『レヴィナス著作集 3 エロス・文学・哲学』は発売済。未刊行テクストを集成した著作集全3巻の完結編です。原著は『Oeuvres complètes, Tome 3:Eros, littérature et philosophie』(Grasset, 2013)。ナンシーによる序「序 レヴィナスの文学的な〈筋立て〉」のほか、哲学的小説の試みである「エロス(あるいは「悲しき豪奢」)」「ヴェプラー家の奥方」をはじめ、「エロスについての哲学ノート」や、青年期のロシア語著作など、注目すべきテクストばかりです。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。渡名喜さんはナンシーの序と「エロス」の翻訳を担当され、訳者あとがきも担当されています。なお、原著は全7巻予定で、4巻以後は既刊著作の最新校訂版が続いてゆくものと思われます。

一方、シャマユー『ドローンの哲学』はまもなく発売(7月31日頃)。『Théorie du drone』(La fabrique, 2013)の全訳です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。渡名喜さんによる懇切な訳者解題「〈無人化〉時代の倫理に向けて」シャマユー(Grégoire Chamayou, 1976-)はフランスの哲学者で、CNRS(フランス国立科学研究所)の研究員。指導教官はドミニク・ルクールだったそうです。著書に『卑しい身体――18世紀から19世紀にいたる人体実験』(2008年)、『人間狩り』(2010年)などがあり、日本語訳が出るのは今回が初めてです。「本書が対象にしているのは、ドローン全般ではなく、2000年代以降とりわけアメリカにおいて本格的に活用されている軍事兵器としてのドローンである。軍関係者や研究開発に携わる「推進派」の研究者たちの発言から、マスコミや批判的な立場の言説まで、幅広いリサーチに基づいて、遠隔テクノロジーによる殺害がどのような問題をはらんでいるのか、そしてそれが社会や人々に対して、さらにこれまで当然だと思われていたいくつもの考え方に対してどのような影響を及ぼすのかについて、根本的な考察を加える著作である」(266頁)と渡名喜さんは紹介しておられます。2018年下半期の必読書となるのではないでしょうか。

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# by urag | 2018-07-27 12:44 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 26日

月曜社8月近刊案内:ブルワー=リットン『来るべき種族』

2018年8月21日取次搬入予定:イギリス文学/SF

来るべき種族[きたるべきしゅぞく]
エドワード・ブルワーリットン著 小澤正人訳
月曜社 2018年8月 本体:2,400円 46判並製304頁 ISBN: 978-4-86503-063-1

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

地球内部に住む地底人の先進的な文明社会ヴリル=ヤとの接触をつぶさに描いた19世紀後半の古典的小説。卓越した道徳と科学力、超エネルギー「ヴリル」と自動人形の活用により、格差と差別だけでなく、労働や戦争からも解放された未知の種族をめぐるこの異世界譚は、後世の作家やオカルティストたちに影響を与え続けている。神秘思想、心霊主義、ユートピア思想、SFなどの系譜に本作を位置づける訳者解説を付す。2007年刊行の私家版に改訂を加えた決定版。【叢書・エクリチュールの冒険:第12回配本】

エドワード・ブルワー゠リットン(Edward Bulwer-Lytton, 1803–1873):イギリスの政治家・小説家・劇作家。初代リットン男爵。ダービー内閣での植民地大臣(1858-1859)。社交界小説、政治小説、犯罪小説、オカルト小説など多様な分野で活躍したヴィクトリア朝の流行作家。日本でも明治時代に多くの作品が翻訳された。著書に、『ペラム』(1828年)、『ポール・クリフォード』(1830年)、『ポンペイ最後の日』(1832年)、『アーネスト・マルトラヴァーズ』(1837年)、『ザノーニ』(1842年)、『不思議な物語』(1862年)、そして本作『来るべき種族(The Coming Race)』(1871年)など。

小澤正人(おざわ・まさと、1953-):東京学芸大学大学院修士課程修了。現在、愛知県立大学外国語学部英米学科教授。論文に「『ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』と『透明人間』」、「H. G. Wells のSFとユートピア批判」、「H・G・ウェルズの『モダン・ユートピア』とユートピア思想」など。翻訳に、ダニエル・ピック『戦争の機械――近代における殺戮の合理化』(法政大学出版局、1998年)がある。

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# by urag | 2018-07-26 09:41 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 22日

注目新刊:吉川浩満『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』河出書房新社、ほか

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人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』吉川浩満:著、河出書房新社、2018年7月、本体2,200円、46判並製360頁、ISBN978-4-309-02708-1
パンセ』パスカル:著、前田陽一/由木康:訳、中公文庫、2018年7月、本体1,400円、752頁、ISBN978-4-12-206621-2
白井晟一の原爆堂 四つの対話』岡﨑乾二郎/五十嵐太郎/鈴木了二/加藤典洋:著、白井昱磨:聞き手、晶文社、2018年7月、本体2,000円、四六判変型上製252頁、ISBN978-4-7949-7028-2

★『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』は、吉川浩満 (よしかわ・ひろみつ:1972-)さんが2012年、そして2015年から2018年にかけて各媒体で発表してきたエッセイ、インタヴュー、討議、評論、解説などに加筆訂正し、書き下ろしを加えて一冊にまとめたもの。書名はカール・マルクスの『資本論草稿』からの借用。「本書は、現在生じている人間観の変容にかんする調査報告書である〔…〕人間にかかわる新しい科学と技術についての要約と評論を集めた一冊になった」と、まえがきにあります。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。本書は著者がここ三年ほど執筆をつづけておられる『人間本性論』の副産物だそうです。

★「なぜいまさら人間(再)入門なのか? これから述べるように、近代の幕開けとともにかたちづくられた人間観が陰りをみせるとともに、最新の科学と技術が従来の人間観に改訂を迫りつつあるからである。/最新の科学として、本書はおもに進化と認知にかんする諸科学に注目する」(序章、12頁)。吉川さんが昨年編纂された『atプラス』第32号「特集:人間の未来」は本書とカップリングの関係にあると言っていいと思います。

★さらに吉川さんはこうも述べます。「フーコーは〔『言葉と物――人文科学の考古学』において〕、人間の終焉を告げる(当時の)新しい学問として、フロイトにはじまる精神分析とレヴィ=ストロースらの文化人類学とを挙げた。これらは近代における人間の定義であった合理性と主体性を切り崩す。〔…〕なにが起きているのか。人間についての経験論的な探究が、そうした探究の前提となっていた超越論的な想定を疑わしいものにする事態である。〔…〕フーコーの予言は的中しただろうか。見方にとって、そうともいえるし、そうでないともいえる。本稿の立場は、フーコーの予言はおおむね正しかったが、近代の人間観を終わらせるうえで大きな役割を演じたのは別のものである、というものだ。/では別のものとはなにか。20世紀なかばに科学技術の世界で起こった生命科学の発展と認知革命の進行という出来事である」(17~18頁)。これは、近代に発する人文学が知の革新において現代に生まれた科学にその主役の座を譲ったという単純な話では実はありません。

★「新しい人間本性論を考えることは、とりもなおさず、我々はどうありたいのか、どうあるべきかという課題を再設定することでもあるのである。/では19世紀に生まれた人間像の終焉後、21世紀の科学技術文明における人間本性論はどのようなものになるだろうか。/じつはすでにだいたいできあがっている。それは、人間とは不合理なロボットである、というものだ。これが進化と認知にかんする諸科学が与える人間定義である」(22頁)。帯文には「従来の人間観がくつがえされるポストヒューマン状況の調査報告書」とあります。人間観は実際のところ時代とともに変化し続けており、神学や哲学、そして科学はその都度、知の枠組みを更新してきました。哲学も科学もそのありようを変容させてきたわけで、そうした大きなうねりには文理の区別はありません。吉川さんの来たるべき『人間本性論』は科学にとってだけでなく哲学にとっても新たな基礎づけの条件を透視するものとなるのでしょう。『人間の解剖~』はそのプロレゴメナ、序説であると言えそうです。

★ちなみに版元サイトの単品頁では本書に対する東浩紀さんの推薦文が掲載されています。「ひとの定義が変わりつつあるいま、よきひととして生きることはいかに可能なのか。その指針を与えてくれる、当代屈指の読書家による細密で浩瀚なキーコンセプトガイド。必読!」。

★吉川さんが示唆された、生命科学と認知革命を知の分水嶺と捉える見方は、理論物理学者のデイヴィッド・ドイッチュ(David Deutsch, 1953-)が『実在の織物』(原著1997年、訳書『世界の究極理論は存在するか――多宇宙論から見た生命、進化、時間』林一訳、朝日新聞社、1999年、絶版)との関係においても、非常に興味深いのではないかと感じます。ドイッチュは多宇宙論を理解するための「四本の撚糸」として、エヴェレットの量子論、チューリングの計算理論、ダーウィン/ドーキンスの進化論、ポパーの知識/認識論、これらのハイブリッドを提示したわけですが、吉川さんがフォローされている諸領域と重なっていると感じます。吉川さんの言う二者の説明は以下の通りです。「ここで生命科学とは、進化学、遺伝学や医学など、進化と生命にかかわる科学と技術の複合領域を指す。認知革命とは、認知心理学、認知神経科学、行動経済学、人工知能研究など、人間・動物・機械の認知にかかわる諸科学を生んだ知的運動である」(18頁)。ドイッチュは世界像の探究、かたや吉川さんは人間像の探究、という違いはあれ、それらは深く関係し合っているのではないかと思われます。

★参考までにドイッチュの『実在の織物〔The Fabric of Reality〕』の目次を掲出しておきます。

まえがき
1 万物の理論
2 影の宇宙
3 問題と解決
4 実在の基準
5 仮想実在〔ヴァーチャル・リアリティ〕
6 計算の普遍性と限界
7 正しさの根拠(あるいは「デイヴィッド対隠れ帰納主義者」)
8 生命の宇宙的意義
9 量子コンピュータ
10 数学の本性
11 量子的な時間
12 タイムトラベル
13 四本の撚り糸
14 宇宙の終わり
訳者あとがき
参考文献

★同書は新刊では入手できませんが、2009年の『The Beginning of Infinity』の訳書『無限の始まり――ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』(熊谷玲美/田沢恭子/松井信彦訳、インターシフト、2013年)は好評発売中です。

★パルカル『パンセ』は中公文庫プレミアムの最新刊。「知の回廊」と銘打たれたシリーズは「定評あるロングセラーを厳選し読みやすくした新版」で、手塚富雄訳のニーチェ『ツァラトゥストラ』がすでに発売されています。今回の新版では、1966年刊『世界の名著24』より年譜と索引(人名、重要語句)を加え、さらに巻末エッセイとして小林秀雄の「パルカルの「パンセ」について」(初出『文學界』1941年8月号)が掲載されています。帯文にある「人間とはいったい何という怪物だろう」というのは、第七章「道徳と教義」の断章434からの引用。当該段落の全文を引いておくと、「では、人間とはいったい何という怪物だろう。何という新奇なもの、何という妖怪、何という混沌、何という矛盾の主体、 何という驚異であろう。あらゆるものの審判者であり、愚かなみみず。真理の保管者であり、不確実と誤謬の掃きだめ。宇宙の栄光であり、屑」(307頁)。

★同断章の後段にはこうも書いてあります。「尊大な人間よ、君は君自身にとって何という逆説であるかを知れ。へりくだれ、無力な理性よ。だまれ、愚かな本性よ。人間は人間を無限に超えるものであるということを知れ。そして、君の知らない君の真の状態を、君の主から学べ。/神に聞け」(308頁)。「神は死んだ」(手塚訳『ツァラトゥストラ』17頁)と記した文献学者ニーチェと、「人は、神がなんであるかを知らないでも、神があるということは知ることができる」(断章233、175頁)と書いた科学者パスカル――この振幅のうちに思いを馳せるよう促されるこの時に、先に挙げた吉川さんの『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』が同じく新刊として書棚に並んでいるのを目撃するのは、何やら因縁めいたものを感じます。

★なお、中公文庫プレミアム「知の回廊」の続刊は、9月発売予定のデュルケーム『自殺論』宮島喬訳、です。

★『白井晟一の原爆堂 四つの対話』はまもなく発売(26日頃)。建築家・白井晟一(しらい・せいいち:1905-1983)さんが1955年に立案し、実際は建設されていない「原爆堂」をめぐる一冊。白井さん自身のテクストや図面、白井さんのご子息・白井昱磨(しらい・いくま:1944-)さんによる序、そして昱磨さんが聞き手となって、造形作家、建築史家、建築家、評論家の4氏とそれぞれ行った対話が収録されています。昱磨さんによるあとがきによれば本書は『白井晟一の建築』(全5巻、めるくまーる、2013~2016年)の別巻として当初構想されていたものが4氏の対話本へと発展したもの。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。帯文はこうです。「核の問題と対峙するアンビルトの傑作は3・11以後の世界に何を問うのか――。日本の戦後が抱えた欺瞞、福島第一原発の行方、新国立競技場問題、社会における建築家の役割、これからの建築について……。「原爆堂」をめぐり、知の領域を広げる新しい対話の試み」。先月には約1か月間、表参道のギャラリー「Gallery 5610」で、「白井晟一の『原爆堂』店 新たな対話にむけて INVITATION to TEMPLE ATOMIC CATASTROPHES」が開催されていました。

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★さらに本日以降発売予定の新刊の注目書はほかにもあります。すべてを購読するのは無理でしょうけれども、要チェックであることには変わりありません。▼は発売済。※は押さえておきたい関連書です。

7月23日
スラヴォイ・ジジェク『絶望する勇気――グローバル資本主義・原理主義・ポピュリズム』中山徹/鈴木英明:訳、青土社▼
稲垣諭『壊れながら立ち上がり続ける――個の変容の哲学』青土社▼
前田專學『インド的思考〈新版〉』春秋社▼

7月24日
川崎昌平『労働者のための漫画の描き方教室』春秋社▼
堀越英美『不道徳お母さん講座――私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか』河出書房新社
千葉雅也対談集『思弁的実在論と現代について』青土社
ダグラス・ホフスタッター『わたしは不思議の環』片桐恭弘/寺西のぶ子:訳、白揚社
ゴウリ・ヴィシュワナータン『異議申し立てとしての宗教』三原芳秋/田辺明生/常田夕美子/新部亨子:訳、みすず書房
田川建三『新約聖書 本文の訳 携帯版』作品社
小松和彦『鬼と日本人』角川ソフィア文庫
植木雅俊訳/解説『サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳』角川ソフィア文庫
中村元編著『続 仏教語源散策』角川ソフィア文庫
 ※中村元編著『仏教語源散策』角川ソフィア文庫、2018年1月
 ※中村元編著『仏教経典散策』角川ソフィア文庫、2018年2月

7月25日
和氣正幸『日本の小さな本屋さん』エクスナレッジ
クラウス・フォン・シュトッシュ『神がいるなら、なぜ悪があるのか』加納和寛:訳、関西学院大学出版会
小倉拓也『カオスに抗する闘い』人文書院
木庭顕『誰のために法は生まれた』朝日出版社
 ※木庭顕『憲法9条へのカタバシス』みすず書房、2018年4月

7月26日
福尾匠『眼がスクリーンになるとき――ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』フィルムアート社
松中完二『ソシュール言語学の意味論的再検討』ひつじ書房:ひつじ研究叢書(言語編)

7月27日
田中かの子『3・11――〈絆〉からの解放と自由を求めて』北樹出版

7月30日
時枝誠記『時枝言語学入門 国語学への道――附 現代の国語学 ほか』書誌心水

7月31日
伊藤龍平『何かが後をついてくる』青弓社
大橋良介『共生のパトス』こぶし書房
グレゴワール・シャマユー『ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』渡名喜庸哲:訳、明石書店
池田善昭『西田幾多郎の実在論――AI、アンドロイドはなぜ人間を超えられないのか』明石書店
 ※池田善昭/福岡伸一『福岡伸一、西田哲学を読む――生命をめぐる思索の旅 動的平衡と絶対矛盾的自己同一』明石書店、2017年7月

◆8月発売予定
1日:『パウリ=ユング往復書簡集 1932-1958』湯浅泰雄ほか:監修、太田恵ほか:訳、ビイングネットプレス
 ※ユング/パウリ『自然現象と心の構造――非因果的連関の原理』海鳴社、1976年
4日:ジョージ・クブラー『時のかたち――事物の歴史をめぐって』中谷礼仁/田中伸幸:訳、加藤哲弘:翻訳協力、鹿島出版会:SD選書
7日:ニコラス・スカウ『驚くべきCIAの世論操作』伊藤真:訳、集英社:インターナショナル新書
9日:黒川正剛『魔女・怪物・天変地異――近代的精神はどこから生まれたか』筑摩選書
12日:源信『往生要集 全現代語訳』川崎庸之/秋山虔/土田直鎮:訳、講談社学術文庫
12日:渡辺哲夫『創造の星 天才の人類史』講談社選書メチエ
16日:ウィリアム・ピーツ『フェティッシュとは何か――その問いの系譜』杉本隆司:訳、以文社
17日:ユング『心理療法の実践』横山博:監訳、大塚紳一郎:訳、みすず書房
17日:アン・ブレア『情報爆発――初期近代ヨーロッパの情報管理術』住本規子/廣田篤彦/正岡和恵:訳、中央公論新社
17日:永井均『世界の独在論的存在構造――哲学探究2』春秋社
 ※永井均『存在と時間――哲学探究1』文藝春秋、2016年3月
21日:中井久夫/村澤真保呂/村澤和多里『中井久夫との対話――生命、こころ、世界』河出書房新社
24日:稲葉振一郎『「新自由主義」の妖怪――資本主義史論の試み』亜紀書房
 ※稲葉振一郎『政治の理論』中央公論新社:中公叢書、2017年1月
31日:冨田恭彦『カント批判――『純粋理性批判』の論理を問う』勁草書房
31日:リチャード・ローティ『ローティ論集――「紫の言葉たち」/今問われるアメリカの知性』冨田恭彦:編、勁草書房
31日:ジョン・R・ サール『社会的世界の制作――人間文明の構造』三谷武司訳、勁草書房

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# by urag | 2018-07-22 11:34 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 18日

注目新刊:アガンベン『実在とは何か』、シモンドン『個体化の哲学』、ほか

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、編訳:パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
アガンベンさんの近著『Che cos'è reale?: La scomparsa di Majorana』(Neri Pozza, 2016)が上村忠男さんによって翻訳されました。附録の二篇、エットレ・マヨラナ「物理学と社会科学における統計的法則の価値」、ジェロラモ・カルダーノ『偶然ゲームについての書』は、前者が原著でも収録されていますが、後者は訳書において新たに付されたものです。アガンベンさんの論及があった重要テクストなので、全訳での収録はたいへん参考になります。

版元さんの内容紹介文によれば本書は「マヨラナの論文を手がかりにして、アガンベンは失踪の原因が「不安」や「恐怖」といった心理に還元されるべきものではなく、《科学は、もはや実在界を認識しようとはしておらず──社会科学における統計学と同様──実在界に介入してそれを統治することだけをめざしている》という認識にマヨラナが至ったことと関係している、という地点に到達する。その果てに見出されるのは、「実在とは何か」という問いを放つにはどうすればよいか、ということにほかならなかった」と。メイヤスーやガブリエル、マラブーらの新刊と併せてひもときたい本です。同書の議論との交差については、同じく講談社選書メチエで『AI原論――神の支配と人間の自由』を4月に上梓された西垣通さんと、メイヤスー本の訳者・千葉雅也さんの対談「AIは人間を超える」なんて、本気で信じているんですか?」「AIが絶対に人間を超えられない「根本的な理由」を知ってますか」「AIが「人間より正しい判断ができる」という思想、やめませんか?」(「現代ビジネス」7月16~18日)が参考になります。アガンベンへの言及はないものの、問題圏は重なっています。

アガンベンさんは本書の末尾をこう結んでおられます。「ここでわたしたちが示唆しようと思う仮説は、もし量子論力学を支配している約束事が、実在は姿を消して確立に場を譲らなければならないということだとするなら、そのときには、失踪は実在が断固としてみずからを実在であると主張し、計算の餌食になることから逃れる唯一のやり方である、というものである。〔…〕1938年3月の夜、無のなかに消え去り、彼の失踪の実験的に明らかにしうるあらゆる痕跡を見分けがつかなくさせる決断をすることによって、彼は科学に、実在とは何か、という未済の、しかしまた避けて通るわけにはいかない回答をいまもなお期待している問いを提起したのだった」(45~46頁)。

実在とは何か マヨラナの失踪
ジョルジョ・アガンベン著 上村忠男訳
講談社選書メチエ 2018年7月 本体1,350円 四六判並製176頁 ISBN978-4-06-512220-4

★近藤和敬さん(著書:『カヴァイエス研究』、訳書:カヴァイエス『論理学と学知の理論について』)
フランスの哲学者ジルベール・シモンドン(Gilbert Simondon, 1924-1989)による1958年の博士論文『L'Individuation à la lumière des notions de forme et d'information』がついに全訳されました。底本は2013年のMillon版の本論ですが(附録※は分量の都合で訳出されていません)、2017年版での変更箇所も反映されているとのことです。近藤さんは第一部「物理的個体化」の訳出と、結論の共訳、訳注の整理と調整を担当されたそうです。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。これを契機に副論文『技術的諸対象の実在様態について』の翻訳も期待したいところです。※附録・・・「個体化概念から帰結する事柄についての補足的な覚え書き」「個体概念の歴史」「個体性の基準の分析」「アラグマティック」「形、情報、ポテンシャル」の5篇で、それぞれ本論から割愛された部分や草稿や準備稿ですが、最後の「形~」のみ1960年の講演録。

個体化の哲学――形相と情報の概念を手がかりに
ジルベール・シモンドン著 藤井千佳世監訳 近藤和敬/中村大介/ローラン・ステリン/橘真一/米田翼訳
法政大学出版局 2018年7月 本体6,200円 四六判上製638頁 ISBN978-4-588-01083-5

★竹峰義和さん(訳書:メニングハウス『生のなかば』、共訳:シュティーグラー『写真の映像』)
先月末発売された岩波書店の月刊誌「思想 2018年7月号:ヴァルター・ベンヤミン」において、論文「サンチョ・パンサの歩き方――ベンヤミンの叙事演劇論における自己反省的モティーフ」を寄稿されるとともに、ベンヤミンの「技術的複製可能性の時代における芸術作品――第一稿」の翻訳を手掛けておられます。ほとんどが抹消線で埋め尽くされた第一稿は、『新批判版全集』(2008年~)で活字化された新たな草稿で、『旧全集』(1972~1999年)の第一稿はこんにちでは第二稿とされています。ちなみに岩波現代文庫の『パサージュ論』全5巻(2003年;単行本版は93~95年)は第5巻を除いて現在品切で、岩波文庫の『ベンヤミンの仕事』2巻本(1994年)も品切。新全集に基づく新訳がいずれ刊行されることになるのでしょうか。

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# by urag | 2018-07-18 15:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 17日

8月上旬発売予定→同月下旬発売済新刊:マラルメ『詩集』柏倉康夫訳

2018年8月10日取次搬入予定→16日取次搬入済 *外国文学・フランス詩

詩集
ステファヌ・マラルメ著 柏倉康夫訳
月曜社 2018年8月 本体:2,200円 B6変型判並製176頁 ISBN: 978-4-86503-056-3

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ステファヌ・マラルメの死の一年後に刊行された『詩集』(エドモン・ドゥマン書店、1899年刊)収録の全49篇の詩と、マラルメ自身による書誌解題の新訳。「ユリイカ」誌連載、青土社電子版、限定私家版を経て、最新改訂普及版がここに成る。『詩集』の初版本や石版刷、組見本、マラルメの肖像、名刺や封筒に書かれた四行詩など、訳者秘蔵品を含む貴重な写真8点を併載。多年に及ぶ研究の画期を為す「理解可能なマラルメ」の提示。【叢書・エクリチュールの冒険:第11回配本】


ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé, 1842-1898):19世紀のフランス象徴詩を代表する詩人。若くしてボードレールとエドガー・アラン・ポーに魅せられて詩作をはじめ、地方の高等中学校の英語教師をしながら創作に没頭するが、「詩とは何か」という根源的な問いに苦しみ、精神的・肉体的な危機に見舞われた。1871年パリに出て以後は交友関係も広がり、「牧神の午後」や「エロディアード」など代表作となる絶唱を生み出した。ローマ通りのアパルトマンの食堂兼サロンに、毎週火曜日に内外の文学者、画家、音楽家たちが集うようになり、マラルメの談話は彼らに多大な感銘を与えた。その芸術論は今日なお広い分野で影響を及ぼしている。


柏倉康夫(かしわくら・やすお、1939-):東京大学文学部フランス文学科卒業。NHKパリ特派員、解説主幹の後、京都大学文学研究科教授を経て、放送大学教授、副学長、図書館長、現在同大学名誉教授。京都大学博士(文学)。フランス国家功労勲章叙勲。ジャーナリズムでの仕事のかたわら、原典批判に基づくマラルメ研究を続けてきた。マラルメに関する著訳書に、『マラルメ探し』、『生成するマラルメ』(以上、青土社)、『マラルメの火曜会』(丸善出版)、ネクトゥ編『牧神の午後~マラルメ、ドビュッシー、ニジンスキー~』(平凡社)、J・L・ステンメッツ『マラルメ伝』(共訳、筑摩書房)、『マラルメの「大鴉」』(臨川書店)、モレル編『S・マラルメ:賽の一振りは断じて偶然を廃することはないだろう』、G・ミラン『マラルメの火曜会~神話と現実~』(以上、行路社)など。

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【2018年8月20日追記】

正誤表:
104頁2行目
誤)さまざまな百合の茎が私たちの理性とっては
正)さまざまな百合の茎が私たちの理性にとっては


目次:
挨拶  
不運  
あらわれ  
たわいない願い  
懲らしめられた道化  
窓  
花々  
春の訪れ  
不安  
――苦い休息には飽きた……  
鐘つき男  
夏の悲しみ  
青空  
海からの風  
ため息  
施し物  
詩の贈り物  
エロディアード 舞台  
牧神の午後  
――髪 炎の飛翔は欲望の……  
聖女  
喪の乾杯  
プローズ(デ・ゼッサントのために)  
扇 マラルメ夫人の  
もう一つの扇 マラルメ嬢の  
アルバムの一枚  
ベルギーの友たちの思い出  
俗な歌  
 Ⅰ(靴直し)  
 Ⅱ(香草売りの女)  
短信  
小曲 Ⅰ  
小曲 Ⅱ  
いくつかのソネ  
 ――闇が宿命の定めにより脅かしたとき……  
 ――汚れなく、生気にあふれ、美しい今日は……  
 ――勝利のうちに美しい自殺から逃れた……  
 ――純らかな爪はその縞瑪瑙を高々とかかげ、……  
エドガー・ポーの墓  
シャルル・ボードレールの墓  
墓 一周忌――一八九七年一月  
礼讃  
礼讃  
――船旅のたった一つの気掛りに……  
三幅対をなすソネ
 Ⅰ  
 Ⅱ  
 Ⅲ  
――時の香りが染みこみ……  
――君の歴史に入りこむのは……  
――重く垂れこめた雲に沈黙し……  
――パフォスの名に至って私は本を閉じ、……  
書誌  
訳者あとがき


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# by urag | 2018-07-17 10:41 | 近刊情報 | Trackback | Comments(7)