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2024年 05月 10日

「サンデー毎日」誌に月曜社3月刊『平岡正明著作集』の紹介記事

「サンデー毎日」5月19/26日号の巻末グラビア連載「五木寛之のボケない名言」第429回で、月曜社3月刊『平岡正明著作集』上下巻が取り上げられました。「頭で読まずに、声に出して、早口で読んでごらんなさい。某製薬のクスリなど飲まずとも全身状態が活性化する。〔…〕いま、あらためて彼の文章を読み返して、彼は一種のバケモノ(天才?)だったのかもしれないと、あらためて思う」と評していただきました。

# by urag | 2024-05-10 18:25 | 書評・催事・広告 | Comments(0)
2024年 05月 05日

注目新刊:インベカヲリ★『伴走者は落ち着けない』ライフサイエンス出版

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◆まもなく発売となるちくま学芸文庫の5月新刊4点を列記します。

『キリスト教美術シンボル事典』ジェニファー・スピーク(著)、中山理(訳)、ちくま学芸文庫、2024年5月、本体1,800円、文庫判656頁、ISBN978-4-480-51233-8
『論文の書きかた』佐藤健二(著)、ちくま学芸文庫、2024年5月、本体1,200円、文庫判304頁、ISBN978-4-480-51239-0
『江戸服飾史談』大槻如電(著)、吉田豊(編)、ちくま学芸文庫、2024年5月、本体1,200円、文庫判256頁、ISBN978-4-480-51242-0
『増補 聖典クルアーンの思想――イスラームの世界観』大川玲子(著)、ちくま学芸文庫、2024年5月、本体1,300円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-51243-7

★『キリスト教美術シンボル事典』は、帯文に曰く「竜、ザクロ、五芒星ほか、全800項目、あらゆる美術作品がこれで読み解ける」と。1997年に大修館書店より刊行されたものの文庫化です。巻末に「文庫版訳者あとがき」が加わっています。原著は『The Dent Dictionary of Symbols in Christian Art』(1994)。ジェニファー・スピーク(Jennifer Speake, 1944-)はカナダ出身で、オックスフォード大学出版局に辞典編集者として従事したとのことです。

★『論文の書きかた』は、2018年に弘文堂の「現代社会学ライブラリー」の1冊として刊行されたものの文庫化。「論文作成において肝心なこととは何か。社会学の視点から掘り下げて解説」(帯文より)と。巻末に「ちくま学芸文庫版あとがき」が加わっており「読み直して、わかりにくいところだけいくつか、わずかに呼吸を整えたが、構成も内容も変えなかった」とのことです。著者の佐藤健二(さとう・けんじ, 1957-)さんは東京大学名誉教授。ご専門は歴史社会学、メディア文化史などです。

★『江戸服飾史談』は2001年に芙蓉書房出版より刊行された『江戸服飾史談――大槻如電講義録』の改題文庫化。巻末特記によれば「文庫化に際し一部ルビを割愛し」たとのことです。大久保尚子さんによる文庫版解説「江戸東京人如電のとらえた大江戸時世粧(はやりのすがた)の沿革」の説明を引くと「本書は、大槻如電(おおつき・じょでん, 1845-1931)による「江戸の風俗衣服のうつりかはり」(1899年)に、吉田豊(よしだ・ゆたか, 1933-)が参考文献引用を含む丁寧な客注と参考図を加えた労作を再録したものである」と。

★『増補 聖典クルアーンの思想』は、2004年に講談社現代新書の1冊として刊行されたものを増補改訂し文庫化したもの。巻頭の「増補版はじめに」によれば、「本書は原著の第一から第四章を加筆修正し、さらに第五章「改宗者ムスリムとクルアーン翻訳」を新たに書き下ろしたものである。/筆者はこの二十年の間に、中東などのムスリム諸国を訪れつつ、在外研究でカンボジアやアメリカに住み、マイノリティのムスリムについて調査研究を行うことができた。今回の増補にはこういった新しい知見も反映させたが、原著の変更はできるだけ少なくした」とのことです。著者の大川玲子(おおかわ・れいこ, 1971-)さんは明治学院大学教授。ご専門はイスラーム学です。

◆このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

伴走者は落ち着けない――精神科医斎藤学と治っても通いたい患者たち』インベカヲリ★(著)、叢書クロニック:ライフサネンス出版、2024年5月、本体2,000円、四六判並製272頁、ISBN978-4-89775-479-6
ルディ・ドゥチュケと戦後ドイツ』井関正久(著)、共和国、2024年5月、本体3,400円、四六判並製308頁、ISBN978-4-907986-58-2
疾風とそよ風――風の感じ方と思い描き方の歴史』アラン・コルバン(著)、綾部麻美(訳)、藤原書店、2024年4月、本体2,600円、四六変型判上製208頁+カラー口絵4頁、ISBN978-4-86578-419-0
収奪された大地――ラテンアメリカ五百年〈新装新版〉』エドゥアルド・ガレアーノ(著)、大久保光夫(訳)、斎藤幸平(序)、藤原書店、2024年4月、本体3,600円、四六判並製500頁、ISBN978-4-86578-420-6
百歳の遺言――いのちから「教育」を考える〈新版〉』大田堯/中村桂子(著)、中村桂子(序)、藤原書店、2024年4月、本体1,800円、B6変型判上製152頁、ISBN978-4-86578-421-3
石牟礼道子全句集 泣きなが原〈新装版〉』石牟礼道子(著)、黒田杏子(解説)、藤原書店、2024年4月、本体2,500円、B6変型判上製256頁、ISBN978-4-86578-422-0

★『伴走者は落ち着けない』は、まもなく発売となる叢書クロニックの第2回配本(3冊目)。ノンフィクション作家のインベカヲリ★(1980-)さんによる、医療ルポです。精神科医の斎藤学(さいとう・さとる, 1941-)さんと彼のもとに通う、もしくは通っていた依存症の人々を一年半にわたり取材したもの。人々の生々しい人生経験が吐露され、対峙する斎藤さんの特異なアプローチが証言されています。斎藤さんはインベさんにこう語っています。「私がやっていることは、いわゆる精神分析そのものではないですよ。私、独自のもの。そもそも私は、医者と思っていないところもあるし、治療者とも思っていないの。できればそういうのを突き抜けたい。だから私は、精神分析者と言われるのは嫌なんですよ。〔…〕私はあくまで、その人の行動がどういう外傷体験と関係しているのか、ここだけを見ているんです」(263頁)。本書は「生きようとすること」に深くコミットする内容ゆえか、読み手を強く惹きつけます。

★インベさんはこう書きます。「私自身は、アディクションを抱えているわけではない。それでも〔斎藤学さんから〕強く影響を受けた理由は、斎藤が「症状」ではなく、「人間」を見ているからだ。一見すると自分とは関係のない症状も、根っこの部分では人類すべてが抱える共有の問題につながっている。社会病理としてみれば、関係ない人はいないということに気がつくのである」(17頁)。こんにちの保守思想家や保守政治家はしばしば家族を共同体の基礎としてみなしますが、家族ゆえの病理と向き合ってきた斎藤さんの活動をどれくらい知っているでしょうか。麗しい理想にすがる前に本書を読むべきです。

★斎藤さんはこう言います。「私の分類だと、普通の人は「普通病」っていう病気なんだよ。だってさ、アル中の妻なんて、不幸かもしれないけど症状は別にないでしょう。逆に一人の男を背負って生きているんだから、生き生きしちゃってるんだよ。でも、やっぱり病気だと思うんだよ。夫のために何もかも犠牲にして、不幸になるに決まっていることにエネルギーを注ぐって異常だと思うんだよ。そういう普通病という病気もある。まあ、それには共依存という名前がついている。これは、家族をつくっていく時の接着剤としても重要。だから、人が家族をつくったというよりも、共依存的な関係を持ったサルが人になったわけだよ」(76~77頁)。頁ごとに戦慄が待ち受けている本です。書物は鏡だと実感させられます。

★『ルディ・ドゥチュケと戦後ドイツ』は、戦後ドイツの社会運動家ルディ・ドゥチュケ(Rudi Dutschke, 1940-1979)をめぐる書き下ろし本格評伝です。1968年の学生運動のリーダーであり、極右グループの青年の襲撃により頭部に2発、肩に1発の銃弾を受けながらも奇跡的に回復し、その後は反原子力と環境保護の活動に尽力したと言います。驚くべきことに彼は襲撃犯と手紙のやりとりをして心を通わせようとしたのみならず、襲撃犯が自殺した際には泣いて悲しんだとのこと。銃撃の後遺症により39歳の若さで死去した彼の生涯と思想を紹介する貴重な一冊です。著者の井関正久(いぜき・ただひさ, 1969-)さんは中央大学法学部教授。ご専門はドイツ現代史で、近年の著書に『戦後ドイツの抗議運動──「成熟した市民社会」への模索』(岩波書店、2016年、現在品切)などがあります。

★藤原書店の4月新刊は4点。『疾風とそよ風』は、フランスの歴史家アラン・コルバン(Alain Corbin, 1936-)の著書『La Rafale et le zéphyr : histoire des manières d'éprouver et de rêver le vent』(Fayard, 2021)の全訳。帯文に曰く「“感性の歴史家”による唯一無二の、風の歴史」。「風は不変の特徴を備えており、歴史的変遷をもたない、と考えたくなる。が、まったくそうではない。19世紀初頭から、風を理解すること、その遠い起源を突き止めること、その動きの仕組みと経路を把握すること、すべてが歴史に刻まれるべき出来事だった。山頂や砂漠、広大な森林での、とりわけ空中における新しい風の体験もそうである」(序章、8頁)。「18世紀最末期に展開した科学的転換、とくに空気の組成の発見を振り返ることから始めよう。それから大気循環の理解の進展と風の新たな体験をみていく」(同、9頁)。「芸術家、作家、旅行家が古代以来どのようにこの比類なき力、風という解き難い謎を読み解き、また、とくどのようにあこがれてきたか、大筋をたどっていこう」(同頁)。

★残る3点は再刊です。『収奪された大地』(新評論、1986年;新版、藤原書店、1991年;新装版、藤原書店、1997年;新装新版、2024年)、『百歳の遺言』(藤原書店、2018年;新版、藤原書店、2024年)、『石牟礼道子全句集』(藤原書店、2015年;新装版、藤原書店、2024年)。『百歳の遺言』は、今回の新版で中村桂子さんによる「人間の可能性を信じて――新版へのまえがきにかえて」が巻頭に加わっています。『石牟礼道子全句集』は新装版なので、特に内容変更はないようです。

★『収奪された大地』は、今回の新装新版で、斎藤幸平さんによる推薦文「搾取か、収奪か――新装新版によせて」が巻頭(i~iv頁)に置かれています。「ガレアーノ『収奪された大地』は資本主義の収奪の歴史を告発する。先進国で暮らす私たちが享受する資本主義の豊かな生活の裏には、別の場所で暮らす人々の犠牲がある事実を告発するのだ。本書が描くのは、暴力と抑圧によって豊かな土地から資源が略奪され、先住民が殺され、奴隷となり、貧困と飢餓が蔓延した歴史である。/この植民地支配の構造は本書の刊行から50年経った今も変わらない」(i頁)。『収奪された大地』は藤原書店社主の藤原良雄さんが新評論の編集者だった時代に手掛けたのが最初です。爾来40年近く1冊の書物を大切にし続けて来られたその足跡の遥かさを思います。


# by urag | 2024-05-05 00:25 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2024年 04月 29日

注目新刊:互盛央『連合の系譜』作品社、ほか

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★最近出会いのあった新刊を列記します。

吉本隆明全集34[1990-2004]』吉本隆明(著)、晶文社、2024年4月、本体7,100円、A5判変型上製704頁、ISBN978-4-7949-7134-0 C0395
連合の系譜』互盛央(著)、作品社、2024年4月、本体15,000円、A5判上製1286+127頁、ISBN978-4-86793-028-1
現代思想2024年5月号 特集=民俗学の現在』青土社、2024年4月、本体1,600円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1463-6
現代思想2024年5月臨時増刊号 総特集=アントニオ・ネグリ――1933-2023』青土社、2024年4月、本体2,000円、A5判並製294頁、ISBN978-4-7917-1464-3
第三の無意識――ウイルス時代の精神空間』フランコ・ベラルディ(ビフォ)(著)、杉村昌昭(訳)、航思社、2024年4月、本体2,800円、四六判上製256頁、ISBN978-4-906738-49-6
縫い目のほつれた世界――小氷期から現代の気候変動にいたる文明の歴史』フィリップ・ブローム(著)、佐藤正樹(訳)、法政大学出版局、2024年4月、本体3,600円、四六判並製414頁、ISBN978-4-588-35237-9
二匹のけだもの/なけなしの財産 他五篇』デル・ニステル/ドヴィド・ベルゲルソン(著)、赤尾光春/田中壮泰(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2024年4月、本体3,600円、四六判変上製400頁、ISBN978-4-86488-297-2
政党政治家と近代日本――前田米蔵の軌跡』古川隆久(著)、人文書院、2024年4月、本体4,500円、4-6判上製404頁、ISBN978-4-409-52092-5
戦後期渡米芸能人のメディア史――ナンシー梅木とその時代』大場吾郎(著)、人文書院、2024年4月、本体4,800円、4-6判並製420頁、ISBN978-4-409-24160-8

★『吉本隆明全集34[1990-2004]』は、晶文社版全集第35回配本。版元紹介文によれば「『吾輩は猫である』『夢十夜』などの漱石の12作品を論じた『夏目漱石を読む』(小林秀雄賞受賞作)、英国留学と満韓の旅を論じた『漱石の巨きな旅』、新聞雑誌の社会・政治時評を再構成した『吉本隆明のメディアを疑え』などを収める。単行本未収録47篇」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。付属の「月報35」は、上村武男さんによる「『隆明だもの』の読後に」と、清岡智比古さんによる「ひとつの街があそこで住んでいた」を収録。次回配本は2024年9月、第35巻「[2004-2007]思想のアンソロジー・中学生のための社会科」。

★『連合の系譜』は、思想史家で編集者の互盛央(たがい・もりお, 1972-)さんによる書き下ろし4500枚、本文だけでも2段組1300頁近い大作。後記によれば本書は『エスの系譜――沈黙の西洋思想史』(講談社、2010年;講談社学術文庫、2016年)と『言語起源論の系譜』(講談社、2014年)に続くもので、「三冊は一体をなしている。この構想は『フェルディナン・ド・ソシュール――〈言語学〉の孤独、「一般言語学」の夢』(作品社、2009年)の基となった博士論文の第一稿に含まれていたものである」とのこと。帯文に曰く「古代ギリシア・ローマから近現代に至る精神史を追跡し、限りなき連合の姿を甦らせつつ人間的営為の根源に迫る」と。章立てを転記しておきます。

プロローグ 残されたアリア
第一部 プネウマのラプソディ
 第Ⅰ章 ラプソディの時間
 第Ⅱ章 グラウンド・バスの歌――古代~12世紀
 第Ⅲ章 ムスカ・ムンダーナの声――13~16世紀
 第Ⅳ章 デタシェの技法――17世紀
第二部 無限の連合
 第Ⅴ章 ハーモニーの場所――18世紀
 第Ⅵ章 ポリフォニーの共同体――19世紀
 第Ⅶ章 クオドリベットの残響――20世紀へ
エピローグ アリア・ダ・カーポ
後記
書誌
人名・作品名索引

★『現代思想2024年5月号 特集=民俗学の現在』と『現代思想2024年5月臨時増刊号 総特集=アントニオ・ネグリ』は同時発売。通常号の「民俗学の現在」特集は「現代民俗学の最前線を、アメリカなど国外の動向にも目を向けつつ多彩なトピックを通じて一望する」(版元紹介文より)。臨時増刊号の「ネグリ」特集は「活動の原点から近代政治思想史家としての事績、その理論と実践が遺した広範な足跡と応答の数々に至るまで、ネグリ思想の全体像を改めて見つめ直すとともに、未来へと継ぐ。昨年12月に惜しくも逝去した現代の「闘士」に捧ぐ追悼特集」(同)。海外からの追悼文はエティエンヌ・バリバールとサンドロ・メッザードラによる各1篇。ネグリの最晩年のインタヴューも収録されています。各号の目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。

★『第三の無意識』は、イタリア出身で欧米で活躍するフランコ・ベラルディ(Franco BIFO Berardi, 1949-)の著書『The Third Unconscious: The Psycho-sphere in the Viral Age』(Verso, 2021)の全訳。「私が本書で描いたのは、ウイルスによるトラウマのもたらす集合的無意識の変化である。社会生活の加速的活動の突然の停止とその持続による集合的無意識の変化である」(日本語版序文より、3頁)。「21世紀という新世紀の第三の十年期〔2020年代〕に入った今日、〈第二の無意識〉の段階は閉じつつあるように思われる。われわれは、〈第三の無意識〉が形を現しつつある新たな精神空間に入りつつあるのである」(序文より、18頁)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。リンク先では日本語版序文と原著版序文がためし読みできます。

★『縫い目のほつれた世界』は、ドイツの歴史家で作家のフィリップ・ブローム(Philipp Blom, 1970-;現在はオーストリア在住)の著書『Die Welt aus den Angeln. Eine Geschichte der Kleinen Eiszeit von 1570 bis 1700 sowie der Entstehung der modernen Welt, verbunden mit einigen Überlegungen zum Klima der Gegenwart』(Hanser, 2017)の訳書。帯文に曰く「16~17世紀に世界を襲った寒冷化と、それに伴う飢饉、疫病、戦争。近代への転換点となった〈氷の時代〉を描く一大歴史絵巻」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「この本のはじめにあるのは、打ち消しようもない現代の課題をはらんだ一個の単純な問いである。もし気候が変化したら、社会の何が変わるのか。〔…〕長い17世紀は、気候変動が人間生活のすべての局面に及ぼす影響を探究し、さらにはそれを理解する姿勢を身につけるのにうってつけの時代である」(プロローグ、15~16頁)。

★『二匹のけだもの/なけなしの財産 他五篇』は、〈ルリユール叢書〉第39回配本(53冊目)。ウクライナに生まれ、スターリン時代に粛清されたユダヤ人作家2氏の短篇7篇を収めています。収録作は、ドヴィド・ベルゲルソン(Dovid Bergelson, 1884–1952)による「改宗者」「二匹のけだもの」「盲目」「生き証人」、デル・ニステル(Der Nister, 1885–1950)による「酔いどれ」「堀のそばで(レヴュー)」「なけなしの財産」。ロシアのイディッシュ文学に親しむことのできる貴重な一冊です。なお、西成彦編訳『世界イディッシュ短篇選』(岩波文庫、2018年)には、ベルゲルソン「逃亡者」と、ニステル「塀のそばで(レヴュー)」が収められています。後者の訳者は赤尾光春さんで、今回の新刊にも再録されました。

★人文書院の新刊2点。『政党政治家と近代日本』は帯文に曰く「原敬の政党政治に影響を受けた、保守系の政党政治家・前田米蔵(1882-1954)はなぜ戦時協力をしたのか? 〔…〕戦後は不遇な政治家とされるも、戦後自民党の保守合同のさきがけともなった前田の初の本格的研究」。著者の古川隆久(ふるかわ・たかひさ, 1962-)さんは日本大学文理学部教授。『昭和天皇』(中公新書、2011年)でサントリー学芸賞を受賞されています。

★『戦後期渡米芸能人のメディア史』は帯文によれば「日本とアメリカにおいて音楽、映画、舞台、テレビなど、ジャンルとメディアをまたいで活躍し、日本人女優で初のアカデミー受賞者となったナンシー梅木の知られざる生涯を初めて丹念に描き出す労作」。ナンシー梅木ことミヨシ・ウメキ(Miyoshi Umeki, 1929-2007;本名=梅木美代志)さんは、ジャズ歌手で女優。著者の大場吾郎(おおば・ごろう)さんは佛教大学社会学部教授。


# by urag | 2024-04-29 00:50 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2024年 04月 22日

「AERA」2024年4月29日-5月6日合併増大号

本日4月22日発売「AERA」2024年4月29日-5月6日合併増大号の巻頭特集「人生を潤す本170冊」内の記事「ビジネス書から社会が見える」にわずかばかり協力しました。90年代以降の30年間でビジネスマンにも訴求した人文書10点を掲げ、西洋モダニズムの特徴と日本でのその受容と対峙についてごく簡単に言及しました。お目に留まれば幸いです。

# by urag | 2024-04-22 16:50 | ご挨拶 | Comments(0)
2024年 04月 22日

注目新刊:グリッサン/シャモワゾー『マニフェスト』以文社、ほか

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★文庫および新書の注目新刊と既刊を列記します。

崇高と美の起源』エドマンド・バーク(著)、大河内昌(訳)、平凡社ライブラリー、2024年4月、本体1,700円、B6変型判272頁、ISBN978-4-582-76965-4
原子力は誰のものか』ロバート・オッペンハイマー(著)、美作太郎/矢島敬二(訳)、中公文庫、2024年4月、本体1,000円、文庫判256頁、ISBN978-4-12-207512-2
哲学史入門(Ⅰ)古代ギリシアからルネサンスまで』斎藤哲也(編)、千葉雅也/納富信留/山内志朗/伊藤博明(著)、NHK出版新書、2024年4月、本体1,000円、新書判272頁、ISBN978-4-14-088718-9
民主主義の危機――AI・戦争・災害・パンデミック:世界の知性が語る地球規模の未来予測』イアン・ブレマー/フランシス・フクヤマ/ニ―アル・ファーガソン/ジョセフ・ナイ/ダロン・アセモグル/シーナ・アイエンガ―/ジェイソン・ブレナン(著)、大野和基(聞き手・訳)、朝日新書、2024年3月、870円、新書判224頁、ISBN978-4-02-295262-2

★『崇高と美の起源』は、研究社より2012年に刊行された「英国十八世紀文学叢書」第4巻に収録された『崇高と美の起源』を再刊したもの(第4巻にはホレス・ウォルポール『オトラント城』千葉康樹訳が併録)。「平凡社ライブラリー版訳者あとがき」によれば「いくつかのミスや誤記を訂正」とのことです。大河内さんはこう述べておられます。「人間が私的利害を「無関心」という括弧に入れて公共性を実現する可能性を探求する知的プロジェクトが美学なのである。つまり、「美」は人間が人間に対して狼であることをやめて、強制されることなくお互いの意見を一致させる可能性を垣間見せてくれるのだ。〔…〕美学は骨董趣味のための学問ではなく、未来を切り拓くための学問なのである」(259頁)。解説は美学研究者の井奥陽子さんがお書きになっています。

★英国の政治思想家エドマンド・バーク(Edmund Burke, 1729-1797)の著書では『フランス革命についての省察』(1790年)が有名で、複数の日本語訳があります。それに先立つ著作である『崇高と美の起源』(原著『A Philosophical Enquiry into the Origin of Our Ideas of the Sublime and Beautifu』初版1757年、第2版1759年)も、上記の大河内を含め、既訳が以下の通り複数あります。

『美と崇高』村山勇三訳、「泰西隨筆選集」第2巻、人文會、1926年5月
『崇高と美の起原』鍋島能正訳、理想社、1973年6月
崇高と美の観念の起原』中野好之訳、『エドマンド・バーク著作集(I)現代の不満の原因/崇高と美の観念の起原』所収、みすず書房、1973年6月;みすずライブラリー、1999年6月
『崇高と美の起源』大河内昌訳、「英国十八世紀文学叢書」第4巻『オトラント城/崇高と美の起源』所収、研究社、2012年;平凡社ライブラリー、2024年4月

★『原子力は誰のものか』は、中央公論社より1957年に刊行され、2002年に中公文庫「BIBLIO20世紀」で再刊された日本語版独自編集の講演集の、改版による再々刊。カバー表4紹介文と帯文から文言を借りると、「原爆の父はなぜ水爆に反対したのか?」「公職を追放された物理学者が語る「水爆反対」の真相」。今回の改版では、「BIBLIO20世紀」版に付された作家の松下竜一さんによる解説「パンドラの箱をあけた人」が再録され、さらに新たに名古屋大学名誉教授の池内了さんによる「オッペンハイマーの三つの転機」が加わっています。クリストファー・ノーラン監督映画作品『オッペンハイマー』の日本公開が再刊のきっかけかと思いますが、一部の通販サイトで異様な高額化が進んでいたので、再び新刊で入手可能になったのはとても喜ばしいことです。

★『哲学史入門(Ⅰ)古代ギリシアからルネサンスまで』は、「哲学史入門」全3巻の第1巻。同様の主題では、ちくま新書より2020年に『世界哲学史』が全8巻別巻1が刊行されているのは周知の通りです。こちらは伊藤邦武、山内志朗、中島隆博、納富信留、の4氏による責任編集で第一線の研究者が論考を寄稿するというスタイルでした。今回のNHK出版新書版では、数々のヒット作で知られる人文ライターで編集者の斎藤哲也(さいとう・てつや, 1971-)さんによる全篇聞き書きとのこと。興味深い差別化が図られています。第Ⅰ巻の目次は以下の通りです。また、第Ⅱ巻と第Ⅲ巻の概要も転記しておきます。

『哲学史入門(Ⅰ)古代ギリシアからルネサンスまで』2024年4月刊
はじめに|斎藤哲也
序章 哲学史をいかに学ぶか|千葉雅也
第1章 「哲学の起源」を問う:古代ギリシア・ローマの哲学|納富信留
第2章 哲学と神学はいかに結びついたか:中世哲学の世界|山内志朗
第3章 ルネサンス哲学の核心:新しい人間観へ|伊藤博明

『哲学史入門(Ⅱ)デカルトからカント、ヘーゲルまで』2024年5月刊
近代という時代のうねりのなかで、人間の知性の働きを突き詰めた哲学者たちの思索に迫る「目からウロコ」の内容。上野修、戸田剛文、御子柴善之、大河内泰樹、山本貴光/吉川浩満。

『哲学史入門(Ⅲ)現象学・分析哲学から現代思想まで』2024年6月刊
近代哲学を乗り越え、未来へと向かう哲学史の流れを一挙につかむ。19世紀以降の西洋哲学をジャンル別に網羅。谷徹、飯田隆、清家竜介、宮崎裕助、國分功一郎。

★『民主主義の危機』は、ジャーナリストの大野和基(おおの・かずもと, 1955-)さんによる米国の知識人7氏へのインタヴュー集。目次を転記しておきます。

Chapter1 第3次世界大戦への危機――ウクライナ戦争から見る民主主義|イアン・ブレマー
Chapter2 「寛容」が損なわれる世界――リベラリズムの危機|フランシス・フクヤマ
Chapter3 衰退期に差し掛かるアメリカ――岐路に立つ民主主義の二面性|ニーアル・ファーガソン
Chapter4 「文明の衝突」は終わらない――歴史を進歩させるダイナミズム|ジョセフ・ナイ
Chapter5 社会規範に根ざしたバランス感覚――国家権力と社会のあり方を浮き彫りにしたパンデミック|ダロン・アセモグル
Chapter6 日本人にイノベーションは起こせるか――“Think Bigger”:誰もが使える体系的アプローチ|シーナ・アイエンガー
Chapter7 民主主義の後退はなぜ起きているのか――自らの失敗を忘れたアメリカ|ジェイソン・ブレナン
あとがき

★続いて、最近出会いがあった新刊を列記します。

マニフェスト――政治の詩学』エドゥアール・グリッサン/パトリック・シャモワゾー(著)、中村隆之(訳)、以文社、2023年4月、本体2,700円、四六判上製216頁、ISBN978-4-7531-0363-6​
グレーバー+ウェングロウ『万物の黎明』を読む――人類史と文明の新たなヴィジョン』酒井隆史(責任編集)、河出書房新社、2024年4月、本体2,300円、A5判並製192頁、ISBN978-4-309-22916-4
尹致昊日記(5)1897–1902年』尹致昊(著)、木下隆男(訳注)、東洋文庫:平凡社、2024年4月、本体4,200円、B6変型判上製函入496頁、ISBN978-4-582-80917-6
アダルトグッズの文化史――大人のおもちゃの刺激的な物語』ハリー・リーバーマン(著)、福井昌子(訳)、作品社、2024年4月、本体3,400円、四六判並製384頁、ISBN978-4-86182-822-5
戦後フランス思想――サルトル、カミュからバタイユまで』伊藤直(著)、中公新書、2024年4月、本体900円、新書判288頁、ISBN978-4-12-102799-3

★『マニフェスト』はまもなく発売。カリブ海マルティニック島出身のフランス語作家エドゥアール・グリッサン(Édouard Glissant, 1928-2011)とパトリック・シャモワゾー(Patlick Chamoiseau, 1953-)の共著『Manifestes』(La Découverte, 2021)の全訳です。グリッサンの没後十周忌を記念して刊行されたもので、2000年から2009年にかけて発表された政治的声明6篇を収め、巻頭にはシャモワゾーによる「はじめに それでもなお」、巻末にはジャーナリストのエドウィー・プレネル(Edwy Plenel, 1952-)による「あとがき 政治の詩学」と、中村隆之(なかむら・たかゆき, 1975-)さんによる訳者あとがき「唯一のリアリズムとしてのユートピア」が配されています。プレネルはこう評します。「言語はここでは革命である。言語が反転させ、覆し、移動させ、いくつもの軛を壊すことでさまざまな可能を切りひらくという意味においてそうである」(175頁)。

★『グレーバー+ウェングロウ『万物の黎明』を読む』はまもなく発売。その名の通りグレーバーとウェングロウの共著『万物の黎明――人類史を根本からくつがえす』(酒井隆史訳、光文社、2023年9月)の副読本とも言うべき1冊。訳者の酒井隆史(さかい・たかし, 1965-)さん自身による責任編集で、酒井さんへのインタヴュー形式の『万物の黎明』入門や、酒井さんが参加する2本の徹底討議をはじめ、ウェングロウへのインタヴュー、『万物の黎明』に対する海外の書評2本のほか、論考、エッセイ、詩など15篇が収められています。

★入門編への注にはグレーバー関連の2本の近刊書が記載されています。ひとつはマーシャル・サーリンズとの共著『On Kings』(Hau Books, 2017)の訳書『王権論』が以文社近刊とあり、もうひとつはグレーバーの単独著『Possibilities: Essays on Hierarchy, Rebellion, and Desire』(AK Press, 2007)が『ポッシビリティーズ』河出書房新社近刊と記されています。後者は『資本主義後の世界のために──新しいアナーキズムの視座』(高祖岩三郎訳、以文社、2009年)としてすでに刊行済ですが、現在品切。以文社さんのウェブサイトでは「2024年秋「増補版」出版予定」と予告されているものなので、あるいは河出さんの近刊ではない可能性もあるかもしれません。

★『尹致昊日記(5)1897–1902年』は発売済。東洋文庫の第917巻。尹致昊(ユン・チホ, 1865-1945)の日記全11巻の第5巻。帯文に曰く「韓国近代史上初の市民運動、独立協会の指導者となった尹致昊。過激化した運動が一年足らずで挫折すると一転して元山・鎮南浦等の地方官吏となり大韓帝国初期の地方政治の実態を記す」と。東洋文庫次回配本は2024年6月発売予定の『岳麓書院蔵秦簡「為獄等状四種」』と予告されています。秦朝の司法文書と聞きます。

★『アダルトグッズの文化史』は、米国の作家でセックス史やジェンダー史がご専門のハリー・リーバーマン(Hallie Lieberman)の著書『Buzz: The Stimulating History of the Sex Toy』(Pegasus Books, 2017)の全訳。帯文に曰く「世界で初めて、「性玩具の歴史」で博士号を取得した著者による話題作。古代から現代までの歴史をたどり、女性の性の自立の観点から、主に20世紀アメリカを舞台に繰り広げられた快楽と規制の攻防と緊張関係を描き出す」と。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★『戦後フランス思想』は、サルトル、カミュ、ボーヴォワール、メルロ=ポンティ、バタイユの著書を解説し、彼らの緊張関係も紹介した一冊。まえがきに曰く「第二次世界大戦が終結した1945年から、構造主義が台頭してくる60年代初頭にかけてのフランスで、旺盛な執筆活動や言論活動を展開した作家や思想家たちの紹介を目的としている」と。著者の伊藤直(いとう・ただし, 1977-)さんは松山大学教授。先月に紀伊國屋書店より刊行されたサラ・ベイクウェルの『実存主義者のカフェにて』と一緒にひもとくとさらに理解が深まると思います。


# by urag | 2024-04-22 00:22 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)