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ウラゲツ☆ブログ

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2021年 09月 20日

注目新刊:『ゲンロン12』、トリスタン・ガルシア『激しい生』、ほか

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ゲンロン12』genron、2021年9月、本体2,600円、A5判並製492頁、ISBN978-4-907188-42-9

★『ゲンロン12』は3連休前の9月17日に発売開始。既刊号と比べて最厚となった第12号の特集は「無料とはなにか」。それに先立ち、政治学者の宇野重規さんと東浩紀さんの対談「観光客の民主主義は可能か」が巻頭に置かれ、続いて東浩紀さんの「ゲンロン0 観光客の哲学」の続編となる8万字の論考「訂正可能性の哲学、あるいは新しい公共性について」が掲出されています。この論考は部分をウェブで読むことができます。「同書〔『観光客の哲学』〕には大きな欠落がある。「観光客の哲学」と題する第1部と「家族の哲学」と題する第2部が接続されておらず、観光客について考えることと家族について考えることがどう関係するのか、きちんと説明できていないのだ。〔…〕それゆえ、欠落を埋める論考を書くことにした。以下に掲載するのは、そのために書かれた8万字ほどの長い原稿である。この原稿は、もうひとつこれから書き下ろす論文とともに、2022年前半に出版される『観光客の哲学』増補版の第3部(新しい部)に収められる。『観光客の哲学』では章番号は部の区別にかかわらず連番なので、この論文は第8章となる」。

★特集頁では、飯田泰之、井上智洋、東浩紀の3氏による座談会「無料は世界をよくするのか」(部分の立ち読み)を中心に、楠木建、鹿島茂、桜井英治、飯田泰之、井上智洋、小川さやか、の各氏による論考が並んでいます。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。なお次号13号は、約1年後の2022年夏に刊行される予定とのことです。

★まもなく発売となる新刊4点を掲出します。

激しい生――近代の強迫観念』トリスタン・ガルシア著、栗脇永翔訳、人文書院、2021年9月、本体2,500円、4-6判並製230頁、ISBN978-4-409-03112-4
格差の自動化――デジタル化がどのように貧困者をプロファイルし、取締り、処罰するか』ヴァージニア・ユーバンクス著、ウォルシュ・あゆみ訳、堤未果解説、人文書院、2021年9月、本体2,800円、4-6判並製326頁、ISBN978-4-409-24138-7
沖縄観光産業の近現代史』櫻澤誠著、人文書院、2021年9月、本体4,500円、4-6判上製300頁、ISBN978-4-409-52088-8
みんな政治でバカになる』綿野恵太著、晶文社、2021年9月、本体1,700円、四六判並製256頁、ISBN978-4-7949-7275-0

★人文書院さんの新刊3点は今月末発売。『激しい生』はフランスの哲学者トリスタン・ガルシア(Tristan Garcia, 1981-)の著書の初紹介となる訳書。『La vie intense : Une obsession moderne』(Autrement, 2016)の全訳。訳者解説に曰く「小著ながらガルシアの哲学の中心に位置する示唆的な著作」と。帯文の文言を借りると、強さ=激しさに憑りつかれた時代としての近代における、刺激を求め続ける人間の生と思考を分析する書。「新しい世界の強さ=激しさは新しい主体の形成を必要としたのです。すなわち、強い=激しい人間の形成を」(82頁)。「実存の領域の大部分における強さ=激しさのルーチーン。私たちの倫理的な状況にとってその帰結は絶対的に悲惨なものです。〔…〕人間の文化においては叡智と救済の形式の下で、あらゆる強さ=激しさからの最終的な解放の表象が定期的に現れ続けるのです」(141頁)。

★『格差の自動化』は米国の政治学者ヴァージニア・ユーバンクス(Virginia Eubanks, 1972-)の初訳本で、『Automating Inequality: How High-tech Tools Profile, Police, and Punish the Poor』(St. Martin's Press, 2018)の全訳。デジタル化・自動化行政の技術が、ハイテクな監視システムとして貧困層を追い詰めている米国の実情を暴いた問題作。ナオミ・クラインが推薦し、堤未果さんが短めの解説を寄せています。



★『沖縄観光産業の近現代史』は、大阪教育大学准教授の櫻澤誠(さくらざわ・まこと, 1978-)さんの4冊目の単著。前著『沖縄の保守勢力と「島ぐるみ」の系譜――政治結合・基地認識・経済構想』(有志舎、2016年)以降の、沖縄観光産業史に関わる論考4本に加筆修正を施し書き下ろし3本を加えた一冊。

★『みんな政治でバカになる』は、批評家の綿野恵太(わたの・けいた, 1988-)さんの、「晶文社スクラップブック」でのウェブ連載「オルタナレフト論」(2019~2021年)をもとに、「ほとんど最初から」書き直したという一書。フェイクニュースや陰謀論に騙される現代人の政治的無知と認知バイアスの実例の数々を最新科学の知見にもとづきつつ分析し解剖しています。橘玲さんと千葉雅也さんが推薦文を寄せています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

書物と貨幣の五千年史』永田希著、集英社新書、2021年9月、本体900円、新書判並製280頁、ISBN978-4-08-721183-2
尼将軍』三田誠広著、作品社、2021年9月、本体2,000円、46判上製296頁、ISBN978-4-86182-867-6
小説集 北条義時』海音寺潮五郎/高橋直樹/岡本綺堂/近松秋江/永井路子著、三田誠広解説、作品社、2021年9月、本体1,800円、46判上製304頁、
ISBN978-4-86182-862-1

★『書物と貨幣の五千年史』は永田希(ながた・のぞみ, 1979-)さんによる、『積読こそが完全な読書術である』(イースト・プレス、2020年4月)以来となる意欲的な新著。ウェブサイト「集英社新書プラス」での連載(2020年11月~2021年3月)に加筆修正したもの。「すべてがブラックボックスになる」「情報革命の諸段階、情報濁流の生成過程」「人間は印字されたページの束である」「物語と時間」の全4章立て。岩井克人さんと松岡正剛さんが推薦文を寄せておられます。

★作品社の発売済新刊2点は歴史小説。『尼将軍』は三田誠広さんによる書き下ろし長編作。源頼朝の正妻で頼朝没後は尼将軍として鎌倉幕府で権勢を揮った北条政子をめぐる物語。『小説集 北条義時』は同じく三田さんによる解説付きで、北条政子の弟、北条義時をめぐる6篇の作品を収録したもの。海音寺潮五郎「梶原景時」、高橋直樹「悲命に斃る」、岡本綺堂「修禅寺物語」、近松秋江「北条泰時」、永井路子「執念の家譜」、同「承久の嵐 北条義時の場合」。


# by urag | 2021-09-20 23:08 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2021年 09月 12日

注目新刊:レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』新潮文庫、ほか

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センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン著、上遠恵子訳、新潮文庫、2021年9月、本体590円、文庫判並製142頁、ISBN978-4-10-207402-2

★『センス・オブ・ワンダー』は初の文庫化。親本は1996年に新潮社より刊行。それに先立つ単行本は、佑学社より1991年に刊行。原著は1965年の『The Sence of Wonder』です。カーソンの遺著であり、未完のエッセイ。新潮文庫では『沈黙の春』(青樹簗一訳、1974年)に続く久しぶりの文庫となります。まだ入手可能な親本では森本二太郎さんによる写真が添えられていましたが、文庫版では川内倫子さんの写真に変更されています。さらに文庫版では巻末に「私のセンス・オブ・ワンダー」として4氏によるエッセイがまとめられています。福岡伸一「きみに教えてくれたこと」、若松英輔「詩人科学者の遺言」、大隅典子「私たちの脳はアナログな刺激を求めている」、角野栄子「見えない世界からの贈りもの」。

★写真を除くとカーソン自身のわずか本文は40頁。読み終えるのに手間がかかる本ではりません。しかし本書を読むには、心を落ち着けることと、静かに一人で読む場所と時間が必要かもしれません。赤ん坊(姪の息子)を抱えて風雨の激しい夜の海辺へと降りていく著者自身の回想から書き起こすので、人によっては「そんな危ないことを」と眉をひそめられてしまうかもしれません。安心できない現代社会で神経をすり減らしている人々には最初の数頁は存外に「入りにくい」ものかも。しかし、一呼吸おいてカーソンの語りをありのままに受け止め、読み進めれば、童心に帰って自然と向き合うことの素晴らしさと、自然と触れ合って活力を得ることの大切さを率直に綴った本だということが分かるはずです。

★「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激に満ちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。/もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」を授けてほしいとたのむでしょう。/この感性はやがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです」(33, 35頁)。

★本書は遺作であるためか、いささか唐突な終わり方をします。しかしそこから先はまさに読者が歩き出すべき旅です。この小著が読者に長く愛されてきたのは、カーソンからの私信であるかのような親密さを読者と分かち、断片的ではあれ、世界が輝いて見えた遠い日の記憶を思い出せてくれるからでしょう。本書を読むと、舞台となっているメイン州の海辺の別荘を訪れたくなります。旅行には行けなくても、植物や昆虫、鳥、貝殻など固有名詞が色々出てくるので、図鑑やスマホなどで調べることができればいっそう楽しみが増すかと思います。読了後には、道端や公園に咲く花にもあらためて発見があることに気づくようになれるのではないでしょうか。

★最近の注目新刊、既刊についても列記します。大型書店を訪問する機会が極端に減っているため、購入できるのは新書までで、専門書は通販に頼ることになります。

東京古書組合百年史』東京都古書籍商業協同組合、2021年8月、本体7,273円、A5上製本696頁+巻頭カラー16頁、ISBNなし
自由の奪還――全体主義、非科学の暴走を止められるか』アンデシュ・ハンセン/ロルフ・ドべリ/ジャック・アタリ/ほか著、大野和基インタビュー・編、PHP新書、2021年8月、本体920円、新書判並製224頁、ISBN978-4-569-85037-5
私たちはどう生きるか――コロナ後の世界を語る2』マルクス・ガブリエル/東浩紀/ほか著、朝日新聞社編、朝日新書、2021年8月、本体750円、新書判並製200頁、ISBN978-4-02-295135-9
対訳 武士道』新渡戸稲造著、山本史郎訳、朝日新書、2021年7月、本体900円、新書判並製376頁、ISBN978-4-02-295132-8
ラストエンペラー習近平』エドワード・ルトワック著、奥山真司訳、文春新書、2021年7月、本体800円、新書判並製200頁、ISBN978-4-16-661320-5

★予約を入れていた記念出版、『東京古書組合百年史』が届きました。編集責任者は佐古田亮介さん。目次詳細は書名のリンク先で公開されています。近年の業界関係の史誌では、『日本雑誌協会 日本書籍出版協会 50年史――1956→2007』(『50年史』編集委員会編、2007年11月)、『日本出版取次協会五十年史』(五十年史編集委員会編、2001年9月)、『日書連五十五年史』(日書連五十五年史刊行委員会編、日本書店商業組合連合会、2001年7月)などがありますが、その後はこうした記念出版が新刊業界では途絶えており、各団体とも予算がないと聞いているので、そんな困難な時代に古書業界が百年史を刊行するというのは、非常に意義深いことです。編纂委員による編集後記のひとつには「記録が残っていることの有難さ」という声があり、強く強く共感します。東京古書組合では1974年12月に『東京古書組合五十年史』を刊行されています。(いつも書いていることですが)歴史に学んでこそ未来があるのだと思います。

★7~8月の新書では、4点を購入。『自由の奪還』は、直近2年間に『Voice』誌に掲載された9氏へのインタヴューが大幅加筆されて1冊にまとめられたもの。アンデシュ・ハンセン、ロルフ・ドべリ、ジャック・アタリ、ネイサン・シュナイダー、ダニエル・コーエン、ダグラス・マレー、サミュエル・ウーリー、ターリ・シャーロット、スティーヴン・マーフィ重松。『私たちはどう生きるか』は、ここ2年間に朝日新聞デジタルで配信された特集「コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線」の論考やインタヴューから20氏分をまとめたもの。阿川佐和子、東浩紀、岩田健太郎、宇佐見りん、オードリー・タン、カーメン・ラインハート、金原ひとみ、桐野夏生、金田一秀穂、クラウス・シュワブ、グレン・ワイル、瀬戸内寂聴、多和田葉子、筒井康隆、出口康夫、西浦博、パオロ・ジョルダーノ、マルクス・ガブリエル、柳田邦男、ロバート・キャンベル。どちらのアンソロジーにもガブリエルが登場しているのが共通点。

★『対訳 武士道』は横組で日英対訳になっているのが良いです。なにせ100年以上まえの本(底本は1905年刊の改訂版)ですから、説かれる価値観は現代人にとっては古風という以上に古臭いもの(特に女性観など)もありますが、逆に言えば失われてしまったものも多いということかと思われます。「武士道は「みかえり」の論理を峻烈に拒否するが、これはとは対照的に、目ざとい商人はもろ手をひろげてこれを歓迎する〔If Bushido rejects a doctrine of quid pro quo rewards, the shrewder tradesman will readily accept it〕」(146頁)。新渡戸から見て現代の日本の政治はどのように見えるでしょうか。

★『ラストエンペラー習近平』は、国防アドバイザーで戦略研究家ルトワックの一連の文春新書『中国4.0――暴発する中華帝国』(2016年3月)、『戦争にチャンスを与えよ』(2017年4月)、『日本4.0――国家戦略の新しいリアル』(2018年9月)に続く、奥山真司さん訳による新しい1冊。奥山さんが2019年から21年にかけて行ったインタヴューや講演録などをまとめたものです。アマゾン・ジャパンでは5年前の『中国4.0』に迫る130件以上のカスタマー・レヴューがすでに付いています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

ぼくのがっかりした話』セルジョ・トーファノ著、橋本勝雄訳、英明企画編集、2021年8月、本体1,400円、新書判上製160頁、ISBN978-4-909151-31-5
ユリイカ2021年10月臨時増刊号 総特集=須永朝彦――1946-2021』青土社、2021年9月、本体2,000円、A5判並製314頁、ISBN978-4-7917-0406-4
現代思想2021年10月臨時増刊号 総特集=小松左京――生誕九〇年/没後一〇年』青土社、2021年9月、本体1,800円、A5判並製290頁、ISBN978-4-7917-1419-3

★『ぼくのがっかりした話』は英明企画編集さんの新シリーズ「再生の文学」の第1回配本。イタリアの俳優で映画監督のセルジョ・トーファノ(Sergio Tofano, 1886-1973)による小説『Il romanzo delle mie delusioni. Racconto piuttosto lungo』(1917/1925/1977/2018)の初訳。アラジン、赤ずきん、眠れる森の美女、シンデレラ、等々の御伽噺の世界に足を踏み入れた少年の、皮肉に満ちた冒険譚です。

★「信じるって? 何を信じるの? あんたが約束した魔法はどこにあるのさ? あんなに魅力的だったあの輝きはどこに行ったの? あんたは見たの? 力は失われて、財産は消えて、偉大さも野心もなくなって、有名人は落ちぶれた。どこもがっかりすることばかり! 幻滅して、がっかりすることばっかりだ! どこも貧乏だし、真実はねじまげられているし、みじめな現実と、こけおどしや見せかけ、つまらないことだらけじゃないか! あらゆるところで失敗ばっかりだ!」(123~124頁)。主人公の少年の嘆きは、作品が発表された第一次世界大戦下の世情への痛烈な批判ともなっているように思われます。

★青土社さんは先週発売の『現代思想』と『ユリイカ』の臨時増刊号で、二人の作家をそれぞれ特集しています。充実の目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。さる五月に逝去された須永朝彦さんの特集号では、未発表作品として、短篇「彼の最期」、片歌「蠱業」そして未刊行短歌などが収録されています。


# by urag | 2021-09-12 18:48 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2021年 09月 10日

「図書新聞」にガシェ『地理哲学』の書評掲載

「図書新聞」2021年9月18日付3面「学術・思想」欄に、弊社4月刊、ロドルフ・ガシェ『地理哲学――ドゥルーズ&ガタリ『哲学とは何か』について』の書評「地理哲学が開く「哲学とは何か」という問いの必要性――ギリシア古典研究から、古代ギリシアの歴史的・政治的状況を詳述し、これによって地理哲学のなかに、アナール学派の歴史地理学の転用以上の含意を読み込む」が掲載されました。評者は小林卓也さんです。「なぜ彼ら〔ドゥルーズとガタリ〕は、最後の共著に至り、「哲学とは何か」というきわめて素朴な問いを必要としたのか。ロドルフ・ガシェが『哲学とは何か』から引き出す「地理哲学」という論点は、この疑問にある見通しを与えるように思われる」と評していただきました。

# by urag | 2021-09-10 15:18 | 広告・書評 | Comments(0)
2021年 09月 05日

注目新刊:アルノー/ニコル『ポール・ロワイヤル論理学』法政大学出版局、ほか

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★まず、法政大学出版局さんの新刊2点について記します。

哲学の25年――体系的な再構成』エッカート・フェルスター著、三重野清顕/佐々木雄大/池松辰男/岡崎秀二郎/岩田健佑訳、法政大学出版局、2021年9月、本体5,600円、四六判上製654頁、ISBN978-4-588-01131-3
ポール・ロワイヤル論理学』アントワーヌ・アルノー/ピエール・ニコル著、山田弘明/小沢明也訳、法政大学出版局、2021年9月、本体5,000円、A5判上製500頁、ISBN978-4-588-15120-0

★『哲学の25年』はドイツの哲学者でベルリン・フンボルト大学名誉教授のエッカート・フェルスター(Eckart Förster, 1952-)による『Die 25 Jahre der Philosophie: Eine Systematische Rekonstruktion』(Klostermann, 2011)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。18世紀末から19世紀初頭におけるドイツ観念論の展開をつぶさに追った研究書。フェルスターはカントの『オプス・ポストゥムム』の英訳者として知られています。論文の翻訳はありましたが、単行本の日本語訳は初めてです。

★『ポール・ロワイヤル論理学』は17世紀フランスの論理学教科書『La logique, ou l'art de penser』(1662年)を1683年の第5版から全訳したもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者のアントワーヌ・アルノー(Antoine Arnauld, 1612–1694)とピエール・ニコル(Pierre Nicole, 1625–1695)はジャンセニズムの拠点ポール・ロワイヤル修道院の教師で、デカルトやパスカルら当時の最新哲学の成果を本書に採り入れています。ミシェル・フーコー『言葉と物』でも論及されている古典です。

★まもなく発売となるちくま学芸文庫5点を列記します。

『近代世界の公共宗教』ホセ・カサノヴァ著、津城寛文訳、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,700円、文庫判608頁、ISBN978-4-480-51066-2
『インド洋海域世界の歴史――人の移動と交流のクロス・ロード』家島彦一著、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,800円、文庫判672頁、ISBN978-4-480-51069-3
『増補 現代美術逸脱史――1945-1985』千葉成夫著、ちくま学芸文庫 文庫判 496頁 刊行 09/09 ISBN 9784480510709 JANコード 9784480510709
『日本資本主義の群像――人物財界史』栂井義雄著、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,100円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-51072-3
『記憶の切繪図――七十五年の回想』志村五郎著、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,500円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-51075-4

★『近代世界の公共宗教』はスペイン生まれで米国で活躍する宗教社会学者ホセ・カサノヴァ(José Casanova, born 1951-)の代表作『Public Religions in the Modern World』(University of Chicago Press, 1994)の訳書。親本は1997年に玉川大学出版部より刊行。文庫化にあたり、著者自身による「改訂日本語版への序文」と、訳者による「ちくま学芸文庫版への訳者あとがき」が加えられています。後者の記述から推察するに訳文は改訂されています。

★『インド洋海域世界の歴史』は東京外国語大学名誉教授の家島彦一(やじま・ひこいち、1939-)さんによる東西交易をめぐる海域史研究で、親本は1993年に朝日新聞社より刊行された『海が創る文明――インド洋海域世界の歴史』。文庫化にあたり著者自身による「文庫版あとがき」が付されています。「新版を上梓するにあたって、原本にある地名や人名の一部の表記を改めた」とのことです。

★『日本資本主義の群像』は経営史家の栂井義雄(とがい・よしお, 1906-1983)さんによる代表的財界人10名の研究で、親本は1980年に教育社より刊行。文庫化にあたり、東京大学名誉教授の武田晴人さんによる解説「戦前財界を彩った企業人たち」が付されています。

★『増補 現代美術逸脱史』は美術批評家の千葉成夫(ちば・しげお, 1946-)さんによる日本戦後美術の通史で、親本は1986年に晶文社より刊行。文庫化にあたり、「この先へ」と題された約100頁もの補章、文庫版あとがき、そして多摩美術大学教授の光田由里さんによる「文庫版解説にかえて」が加えられています。

★『記憶の切繪図』は「Math&Science」シリーズの新刊。プリンストン大学名誉教授の数学者、志村五郎(しむら・ごろう, 1930-2019)さんの回想録で、親本は2008年に筑摩書房より刊行。文庫化にあたり、スタンフォード大学数学科教授の時枝正さんによる解説「きれぎれのおもいで」が付されています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

口に入れるな、感染する!――危ない微生物による健康リスクを科学が明かす』ポール・ドーソン/ブライアン・シェルドン著、久保尚子訳、インターシフト発行/合同出版発売、2021年9月、本体1,800円、A5変型判並製240頁、ISBN978-4-7726-9573-2
演劇で〈世界〉を変える――鈴木忠志論』菅孝行著、航思社、2021年9月、本体2,700円、四六判上製304頁、ISBN978-4-906738-45-8
骨を引き上げろ』ジェスミン・ウォード著、石川由美子訳、青木耕平附録解説、作品社、2021年9月、本体2,600円、46判上製320頁、ISBN978-4-86182-865-2

★『口に入れるな、感染する!』は米国の食品化学の研究者二氏による『Did You Just Eat That?: Two Scientists Explore Double-Dipping, the Five-Second Rule, and Other Food Myths in the Lab』(Norton, 2018)の訳書。家の中や外出先での飲食や日常生活における危険な微生物による健康リスクを具体的に教える一冊。目次とプロローグ、解説は、書名のリンク先で公開されています。

★『演劇で〈世界〉を変える』はまもなく発売。評論家で劇作家の菅孝行(かん・たかゆき, 1939-)さんによる、演出家鈴木忠志(すずき・ただし, 1939-)さんをめぐる論考です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。菅さんは航思社からは2019年に『天皇制と闘うとはどういうことか』を上梓されています。

★『骨を引き上げろ』は米国の作家ジェスミン・ウォード(Jesmyn Ward, 1977-)による2冊目の長篇小説で全米図書賞受賞作『Salvage the Bones』(Bloomsbury Publishing, 2011)の訳書。2005年にハリケーン・カトリーナが米国南部沿岸地域を襲った前後12日間を、とある一家を中心にして描いた作品。目次詳細と青木耕平さんの附録解説PDFが書名のリンク先で公開されています。

# by urag | 2021-09-05 23:30 | Comments(0)
2021年 09月 03日

「週刊読書人」にマラブー『真ん中の部屋』の書評が掲載

2021年9月3日付「週刊読書人」に弊社3月刊、カトリーヌ・マラブー『真ん中の部屋――ヘーゲルから脳科学まで』に対する、門林岳史さんによる書評「その仕事の全体像を概略的につかむために――哲学者マラブーの方法そのものを提示」が掲載されました。「本書は、マラブーの仕事の全体像を概略的につかむことができる書物であるが、それと同時に各部五本ずつ、計一五本の章は完全に独立した論考として読むことができるので、各自の関心にあわせてつまみ食いするのもよいだろう。〔…〕マクルーハンのメディア論に触発されながら、ヘーゲルのなかにありえたメディアをめぐる思想を探る第一章「ヘーゲルと電気の発明」、精神分析理論と格闘するジュディス・バトラーの論述のなかに、性的アイデンティティの構成における根源的契機としての喪失を摘出する第一〇章「性的アイデンティティの構成において何が失われるのか」など、著者の中心的な主題からやや離れたところに位置するテーマにおいても本書は読みどころが多い。また、第一一章「神経の可塑性をめぐるイデオロギー的な争点」と第一二章「神経生物学的理性批判のために」は、心を脳の機能に還元する神経科学的還元主義との対話を通じて、還元主義に追従するのでもそれを否認するのでもない哲学や批判理論の新たな課題を明確にしている。これは、一九九〇年代の「サイエンス・ウォーズ」――あるいは「「知」の欺瞞」論争――以来、ポスト構造主義に突きつけられてきた疑義に対する最良の応答のひとつである」と評していただきました。

# by urag | 2021-09-03 16:34 | Comments(0)