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2023年 08月 09日

保管:月曜社2022年6~7月既刊書

2022年7月29日発売:森崎和江『闘いとエロス』本体2,600円。
2022年7月29日発売:森崎和江『非所有の所有――性と階級覚え書』本体2,400円。
2022年7月1日発売:『ロデーズからの手紙――アルトー・コレクションⅠ』本体3600円。
2022年6月27日発売:マルシアル・ゲルー『ザロモン・マイモンの超越論的哲学』本体4,000円、シリーズ古典転生第27回配本本巻26。
2022年6月21日発売:『表象16:アニソン的思考――オーディオヴィジュアルの可能性』本体2,000円。
2022年6月8日発売:カジャ・シルヴァーマン『アナロジーの奇跡』本体3,600円。


# by urag | 2023-08-09 17:16 | 販売情報 | Comments(0)
2023年 08月 07日

『ヴヴェヂェンスキィ全集』扱い書店一覧

ヴヴェヂェンスキィ全集』扱い書店一覧

★印は比較的に在庫が多い店舗です。
在庫は変動しますので、来店される前に在庫を店舗に確認することをお薦めします。

【北海道】
札幌市中央区 MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店
札幌市北区 北海道大学生協書籍部クラーク店

【岩手】
盛岡市 盛岡蔦屋書店

【宮城】
仙台市青葉区 丸善仙台アエル店

【新潟】
新潟市 ジュンク堂書店新潟店

【千葉】
千葉市中央区 くまざわ書店ペリエ千葉本店

【東京】
千代田区 丸善丸の内本店
千代田区 東京堂書店神田神保町店★
中央区 誠品生活日本橋
豊島区 ジュンク堂書店池袋店★
文京区 東京大学生協本郷書籍部
新宿区 紀伊國屋書店新宿本店
目黒区 東京大学生協駒場書籍部
小金井市 くまざわ書店武蔵小金井北口店
国立市 増田書店
立川市 ジュンク堂書店立川店
多摩市 くまざわ書店桜ケ丘店
八王子市 中央大学生協多摩店

【神奈川】
川崎市幸区 丸善ラゾーナ川崎店

【京都】
京都市中京区 丸善京都本店
京都市上京区 同志社大学生協良心館ブック&ショップ

【大阪】
大阪市浪速区 ジュンク堂書店難波店
大阪市北区 MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店

【兵庫】
神戸市中央区 ジュンク堂書店三宮店

【広島】
広島市中区 丸善広島店

【熊本】
熊本市中央区 長崎書店

【福岡】
福岡市中央区 ジュンク堂書店福岡店

【沖縄】
那覇市 ジュンク堂書店那覇店

【通販】

以上。


# by urag | 2023-08-07 10:40 | 販売情報 | Comments(0)
2023年 08月 06日

注目新刊:ユッシ・パリッカ『メディア考古学とは何か?』東京大学出版会、ほか

注目新刊:ユッシ・パリッカ『メディア考古学とは何か?』東京大学出版会、ほか_a0018105_19520153.jpg



メディア考古学とは何か?――デジタル時代のメディア文化研究』ユッシ・パリッカ(著)、梅田拓也/大久保遼/近藤和都/光岡寿郎(訳)、東京大学出版会、2023年7月、本体3,800円、A5判上製288頁、ISBN978-4-13-050207-8

★『メディア考古学とは何か?』はフィンランド出身のメディア理論家ユッシ・パリッカ(Jussi Parikka, 1976-)の著書『What is Media Archaeology?』(Polity, 2012)の全訳。『メディア地質学: ごみ・鉱物・テクノロジーから人新世のメディア環境を考える』(太田純貴訳、フィルムアート社、2023年2月;原著『A Geology of Media』University of Minnesota Press, 2015)に続く、訳書第2弾です。帯文に曰く「メディア考古学とは、古くなったり忘れ去られたりしたメディア技術(蓄音機、電信、タイプライター、初期のコンピュータなど)に着目し、過去のうちに現代のメディア状況との照応を見出すこと、あるいは、最新の状況に古いメディアの回帰を発見することで、メディアの起源や発展などをより良く理解しようとする試みである」。目次詳細は書名のリンク先をご参照ください。

★本書で目を引いたのは例えばこんな箇所です。「あらゆる有形物は劣化するのだが、その劣化こそが、修復プロジェクトがあったとしても回復されることのない根本的な時間性の痕跡である。このことは、モノに関わるキュレーションの実践の中で受け入れられているが、断片性やもろさ、劣化を前提とした考古学的コレクションにおいてはなおさらである。だが、一義的には機械による処理に関連する「モノ」を扱うとき、あるいはその記録装置を扱うときも、劣化はアーカイヴ化における重要な問題となる。というよりも、コンピュータにおける保存が主流になった時代だからこそ問題になるのである」(第6章「アーカイヴの動態性」165頁)。

★パリッカの学問的スタンスが表れていると思われる箇所も引いておきます。「私は、解釈し、理解し、批判するという伝統的な人文学や批判理論の道具にはさほど興味がなく、それらを使い、誤用し、変調することを目指して文化やメディアを分析する新たな形式に関心がある」(第8章「結論」228頁)。「ドゥルーズとガタリ、そして21世紀の物質性とジェンダー重視する人文学に固有のエートスとしてノマド的な文化の分析を洗練させたロージ・ブライドッティのような後続の研究者にとって、地図と地図製作法とは、その知の創造の核心に変容と変化を含む「領域間の関係性」を育成し、新たな地平を立ち上げる実験なのである。ドゥルーズ自身の著作においては、一見歴史を批判しているように見えるが、このエートスは、私にはメディア考古学を今後どう理解していくのかを告げる何かでもある」(229頁)。

★本書刊行から10年後を記念して今春(2023年4月19日)、パリッカ自身が参加するオンラインカンファレンス「メディア考古学とは何か? 10年後」がYouTubeの「Doctorado en Comunicación UFRO-UACH」チャンネルにてライブ配信されましたので、動画を貼り付けておきます。



★まもなく発売となる、ちくま学芸文庫の8月新刊は4点。

『社会思想史講義』城塚登(著)、ちくま学芸文庫、2023年8月、本体1,100円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-51199-7 JANコード 9784480511997
『平賀源内』芳賀徹(著)、ちくま学芸文庫、2023年8月、本体1,600円、文庫判528頁、ISBN 978-4-480-51201-7
『聖トマス・アクィナス』G・K・チェスタトン(著)、生地竹郎(訳)、ちくま学芸文庫、2023年8月、本体1,100円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-51202-4
『奴隷制の歴史』ブレンダ・E・スティーヴンソン(著)、所康弘(訳)、ちくま学芸文庫、2023年8月、本体1,400円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-51203-1

★『社会思想史講義』は、社会思想史家の城塚登(しろつか・のぼる, 1927-2003)さんの生前最後の著書(有斐閣、1998年)の文庫化。もともとは放送大学のテキストとして1985年に刊行されたものの全面的な改訂版でした。「従来の「社会思想史」が、資本主義〈対〉社会主義という対立を基軸にして記述されていたのに対して、本書は、より広い視野に立ち、近代社会の形成から現代社会の変貌までに深く関与した社会思想を考察する」(「はしがき」より、16頁)。巻末解説として、社会思想史家の植村邦彦(うえむら・くにひこ, 1952-)さんによる「社会思想史は何を物語るか」が加えられています。

★『平賀源内』は、日本文学者の芳賀徹(はが・とおる, 1931-2020)さんのサントリー学芸賞受賞作(朝日新聞社、1981年;朝日選書、1989年)の文庫化。帯文に曰く「本草学者、画家、発明家、戯作者、鉱山開発者……江戸の複業家、その「非常」なる生涯」。巻末解説「「大江戸アイディアマン」解䌫始末」は、京都精華大学教授の稲賀繁美(いなが・しげみ, 1957-)さんがお書きになっています。曰く「破天荒な生涯の息遣いを、縦横無尽、領域横断、学際的に跋渉し、「博物学の世紀」1700年代同時代の、欧米世界との合わせ鏡の裡に、眼前に生き生きと蘇らせる。評伝文学の傑作である」。

★『聖トマス・アクィナス』、英国の作家G・K・チェスタトン(Gilbert Keith Chesterton, 1874-1936)による評伝『St. Thomas Aquinas』(1933年)の翻訳『聖トマス・アクィナス』(『G・K・チェスタトン著作集6』所収、春秋社、1976年)の文庫化。巻末特記によれば「文庫化にあたっては、山本芳久氏の協力のもと、明らかな誤りは適宜修正し、〔 〕で補足説明を行った」とのことです。東大教授の山本芳久(やまもと・よしひさ, 1973-)さんは巻末解説「「肯定」の哲学者としてのトマス・アクィナス」を寄せておられます。曰く「チェスタトンは、本書において、トマスの言葉を引用することはせずに、長年かけて徹底的に咀嚼したトマスの思想を自らの言葉で語り明かしており、その手腕は極めて見事なものである」。

★『奴隷制の歴史』は、米国の歴史学者ブレンダ・E・スティーヴンソン(Brenda Elaine Stevenson)の著書『What is Slavery?』(Polity Press, 2015)の全訳。親本はなく、文庫オリジナルで、なおかつスティーヴンソンの単独著の本邦初訳です。「奴隷制はほとんどの場所や地域で今なお存在している。〔…〕本書は、奴隷の生活とそれを形づくった奴隷制を詳細に検討することにより、その存在と影響力の展開を記録したものである。〔…〕特に人口統計学、法的構造、アフリカ文化の変化・交流・レジリエンス、物質文化・物質的支援、抵抗と順応、結婚と家族、労働と余暇、そして虐待・処罰・報酬を中心に論じている」(「はじめに」より、12~13頁)。主要目次は以下の通り。

謝辞
はじめに 奴隷制とは何か
1 大西洋奴隷貿易以前の時空を超えた奴隷制
2 アフリカでの起源と大西洋奴隷貿易
3 北アメリカの植民地世界におけるアフリカ人
4 南北戦争以前のアメリカ合衆国における奴隷制と反奴隷制
結論
訳者あとがき

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

新空位時代の政治哲学――クロニクル2015-2023』廣瀬純(著)、共和国、2023年8月、本体3,500円、菊変型判並製368頁、ISBN978-4-907986-97-1
カオズモポリタン文学案内――世俗的リアリズムと本能の美学』大熊昭信(著)、法政大学出版局、2023年8月、本体4,000円、四六判上製380頁、ISBN978-4-588-46022-7
新装版 フロイト著作集第5巻 性欲論/症例研究』ジークムント・フロイト(著)、懸田克躬/高橋義孝/吉村博次/飯田真/細木照敏/田中麻知子/山本巌夫/山本由子/森山公夫/土居健郎(訳)、人文書院、2023年7月、本体6,500円、A5判上製462頁、ISBN978-4-409-34059-2
メディアと自殺――研究・理論・政策の国際的視点』トーマス・ニーダークローテンターラー/スティーブン・スタック(編著)、太刀川弘和/髙橋あすみ(監訳)、人文書院、2023年8月、本体3,600円、A5判並製270頁、ISBN978-4-409-34063-9
マルクス・ガブリエルの哲学――ポスト現代思想の射程』菅原潤(著)、人文書院、2023年8月、本体2,500円、4-6判並製276頁、ISBN978-4-409-03126-1
音楽と政治――ポスト3・11クロニクル』宮入恭平(著)、人文書院、2023年8月、本体2,800円、4-6判並製276頁、ISBN978-4-409-04125-3

★『新空位時代の政治哲学』は、同志社大教授の廣瀬純(ひろせ・じゅん, 1971-)さんの『週刊金曜日』誌での連載「自由と想像のためのレッスン」(2015年5月~2023年6月)に加筆修正したもの。「本書は、いかにして資本主義に絶対的限界を突き付けるかを「状況」の下で思考すること」(L・アルチュセール)へと読者を誘う「政治哲学の書」である。〔…〕世界各地での革命過程の再開とともに、倫理的転回を経験して久しい日本の哲学・思想環境が再び大きく政治化することを期待する」(「あとがき」より、364頁)。目次詳細は書名のリンク先をご覧いただけます。

★『カオズモポリタン文学案内』は、英文学者の大熊昭信(おおくま・あきのぶ, 1944-)さんによる世界文学論。「今日のグローバルな文学状況を一言で言い表すには、世界文学では漠然としている。〔…〕生きのいい文学を、その生きのよさに似つかわしい新品の造語を用いてカオズモポリタン文学と命名しよう。〔…〕それは世界文学、コスモポリタン文学、クレオール文学、エクソフォン文学などで提示された価値観や今日的な思想・感情・行動を包含するにもってこいだ」(「はじめに」より、7頁)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★人文書院さんの新刊3点と近刊1点。『新装版 フロイト著作集第5巻』は、4月刊行済の『新装版 フロイト著作集第4巻 日常生活における精神病理学 他』に続く『新装版 フロイト著作集』の第2回配本。旧著作集から今のところ第4巻から第7巻までが再刊予定の、新組新装版です。収録作は「性欲論三篇」「幼児期の性理論」「ナルシシズム入門」「性格と肛門愛」「女性の性愛について」「リビドー的類型について」「解剖学的な性の差別の心的帰結の二、三について」「ある五歳男児の恐怖症分析」「あるヒステリー患者の分析の断片」「子供のうその二例」「児童の性教育について」「強迫行為と宗教的礼拝」「欲動転換、とくに肛門愛の欲動転換について」「呪物崇拝」「戦争と死に関する時評」。それぞれの訳者名については書名のリンク先でご確認いただけます。「知識というものはすべて断片的であり、そして知識のどの段階にも未解決の部分が残る」(「ある五歳男児の恐怖症の分析」より、257頁)。

★『メディアと自殺』は研究論集『Media and Suicide: International Perspectives on Research, Theory, and Policy』(Routledge, 2017)の全訳。「本書は、メディアと自殺に関する多様なテーマを、世界の自殺予防研究者、ならびに自殺予防活動家が執筆している〔…〕一級の学術書」(訳者あとがきより)。「メディアが自殺に与える影響」「メディアの影響に関する理論」「自殺対策」の3部構成で、8か国より34名が寄稿しています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。編著者のトーマス・ニーダークローテンターラーはオーストリアの自殺予防学者で、「パパゲーノ効果」の提唱者。スティーブン・スタックは米国の社会学者。「映画を含む多様なメディアの自殺への影響を長年研究している」(訳者あとがき)とのことです。

★『マルクス・ガブリエルの哲学』は、丸々一冊をガブリエル哲学紹介にあてた日本初の研究書。未邦訳の主著三冊『意義の諸領野』(2015年)、『諸々のフィクション』(2020年)、『暗黒時代における道徳的進歩』(2020年)の概要を説明し、その「「ポスト現代思想」とでもいうべき射程」(16頁)を論じたものです。著者の菅原潤(すがわら・じゅん, 1963-)さんは日本大学工学部教授。近年の著書に『実在論的転回と人新世――ポスト・シェリング哲学の行方』(知泉書館、2021年)、『梅原猛と仏教の思想』(法藏館、2022年)などがあります。

★『音楽と政治』は今月下旬発売。「サウンドデモや愛国ソングなど、東日本大震災以後に起きた音楽をめぐる数々の出来事をたどり直し、多様な社会学的枠組みを使い、この問いに迫っていく」(帯文より)。「この問い」というのは、ポピュラー音楽と政治的言説との関係性が3.11以降にどう変わったのか、をめぐるもの。著者の宮入恭平(みやいり・きょうへい, 1968-)さんは大学非常勤講師。ご専門は社会学、ポピュラー文化研究、カルチュラル・スタディーズとのことです。

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【雑記22】

出版人の日常において些細なことのようで本当はそうではないもの。そのひとつとして著者などの略歴問題がある。どう自己紹介をするかは自身の自由のはずだ、というのは実は真実ではない。名乗りというのは自分自身のためではなく、他者のためであるからだ。存命中は気にしていなくても、自意識過剰になると死後には伝わらない。これは存外に重要なことである。しかしことさらに話題にされることは少ないように思う。

肩書と生年の記載が後世のためには有効である。同姓同名同漢字の人名の場合、次にはヨミが問題になる。ヨミまで同じの場合、同一人物なのか他人なのかを区別しうるのは、生年と肩書だ。生年を記載するのはエイジズムに資するためではない。固有名というのは割とありふれているものだということを理解しなければならない。

肩書については積極的に名乗るものがない、あるいはあえて名乗りたくないとしても、何かしらの記載があった方が、本人以外にとっては便宜に適っている。ある人物が何者であるかを誰かに伝えるとき、その説明は端的である方がいい。自身の心情ないし信条よりも、他人からどう見えるか、客観視する必要がある。むろんこれは見栄えの話ではないし、定職にこだわれという意味でもない。

いささか逆説的ではあるが、固有名は我有化しえない。一方で、ただ一人自分のものではないからといって、自由に別名を名乗れるか、といえばそうでもない。例えば極端に記号化されたり単純化された名前は厄介である。わざわざ検索に引っかかりにくくするようなものだ。また、通常はそのようには読めないというような特異すぎるヨミも同様に厄介である。個性の追求はそこでなくていい。名乗りとはこのように難しいものだ。

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# by urag | 2023-08-06 19:36 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2023年 07月 31日

月曜社8月末新刊:『挑発関係=中平卓馬×森山大道』

2023年8月24日取次搬入予定 *写真・芸術

挑発関係=中平卓馬×森山大道
(ヨミ:ちょうはつかんけい・なかひらたくま・もりやまだいどう)

月曜社 A5判変型(タテ210ミリ×ヨコ145ミリ×16ミリ、450g)、ソフトカバー、288頁、本体2,400円(税込価格2,640円)ISBN:978-4-86503-172-0 C0072

神奈川県立近代美術館葉山館「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展公式カタログ(展覧会会期:2023年7月15日~9月24日)。現代写真史に大きな独自の足跡を残す二人の写真家の、若き日にともに過ごした葉山、逗子(神奈川)を起点に、世界のアートに越境的に影響を与えてきた二人の、その出発点と現在を貫く「挑発関係」の共振と発信を跡づける、初めての貴重な試み。「27歳になったばかりの中平卓馬とぼくが、逗子の海で、葉山の海で日々を過ごしていた頃の遠い夏の記憶は、ぼくとしてはまさに「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」ということになろうか。つまり、写真家・中平卓馬と写真家・森山大道の二人は、現在も終わることなき〈挑発関係〉を続けているのかもしれない」(森山大道〔あとがき〕より)。

【本書の特徴】
◆初の二人展にもとづき、デビュー作から近作まで同時期に発表した作品が並べられている。
◆膨大な活動の中から、葉山や逗子をはじめ、横浜や川崎など神奈川県内で撮影した写真を中心に掲載。
◆雑誌や写真集が主たる発表の場であった二人の、それぞれが発表した当時の雑誌や写真集を紹介。

中平卓馬(なかひら・たくま, 1938-2015)写真集に『来るべき言葉のために』(1970/2010)、『原点復帰-横浜』(2003)、批評集に『なぜ、植物図鑑か』(1973/2007)などがある。

森山大道(もりやま・だいどう, 1938-)最近の作品集に『Nへの手紙』(2021)、『森山大道写真集成』全5巻(2018~2021)、著作に『犬の記憶』(1984/2022)などがある。


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# by urag | 2023-07-31 19:33 | 近刊情報 | Comments(0)
2023年 07月 30日

注目文庫新刊および既刊:岩波文庫、ほか

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★まず注目文庫新刊および既刊。岩波文庫が分冊ものが多いので続刊を待ちつつようやく取り上げる次第です。

天球回転論――付 レティクス『第一解説』』ニコラウス・コペルニクス(著)、高橋憲一(訳)、講談社学術文庫、2023年7月、本体1,330円、A6判392頁、ISBN978-4-06-532635-0
精選 神学大全 1 徳論』トマス・アクィナス(著)、稲垣良典/山本芳久(編)、稲垣良典(訳)、岩波文庫、2023年7月、本体1,500円、文庫判538頁、ISBN978-4-00-336213-6
開かれた社会とその敵 第1巻 プラトンの呪縛(上)』カール・ポパー(著)、小河原誠(訳)、岩波文庫、2023年2月、本体1,370円、文庫判514頁、ISBN978-4-00-386025-0
開かれた社会とその敵 第1巻 プラトンの呪縛(下)』カール・ポパー(著)小河原誠(訳)、岩波文庫、2023年4月、本体1,300円、文庫判448頁、ISBN978-4-00-386026-7
開かれた社会とその敵 第2巻 にせ予言者――ヘーゲル、マルクスそして追随者(上)』カール・ポパー(著)、小河原誠(訳)、岩波文庫、2023年7月、本体1,430円、文庫判552頁、ISBN978-4-00-386027-4
精神の生態学へ(上)』グレゴリー・ベイトソン(著)、佐藤良明(訳)、岩波文庫、2023年4月、本体1,050円、文庫判364頁、ISBN978-4-00-386029-8
精神の生態学へ(中)』グレゴリー・ベイトソン(著)、佐藤良明(訳)、岩波文庫、2023年6月、本体1,100円、文庫判398頁、ISBN978-4-00-386030-4
人間の知的能力に関する試論(上)』トマス・リード(著)、戸田剛文(訳)、岩波文庫、2022年12月、本体1,500円、文庫判632頁、ISBN978-4-00-386023-6
人間の知的能力に関する試論(下)』トマス・リード(著)、戸田剛文(訳)、岩波文庫、2023年3月、本体1,680円、文庫判662頁、ISBN978-4-00-386024-3
我々はどのような生き物なのか――言語と政治をめぐる二講演』ノーム・チョムスキー(著)、福井直樹/辻子美保子(編訳)、岩波現代文庫、2023年5月、本体1,260円、A6判254頁、ISBN978-4-00-600465-1
越境を生きる――ベネディクト・アンダーソン回想録』ベネディクト・アンダーソン(著)、加藤剛(訳)、岩波現代文庫、2023年4月、本体1,670円、A6判382頁、ISBN978-4-00-600464-4

★講談社学術文庫より1点。『天球回転論』は「全6巻のうち、地球の運動について記した第1巻と、コペルニクスの説〔地動説〕を初めて世に知らしめた弟子レティクスの『第一解説』の本邦初訳を収録」(カバー表4紹介文より)。第1巻は『完訳 天球回転論――コペルニクス天文学集成』(みすず書房 2017年)からの採録。文庫化にあたり訳者による「学術文庫版まえがき」が巻頭に付されています。

★岩波文庫より4点8冊。『精選 神学大全』は全4巻。第1巻は「人間論の中核「徳」論を収める」(カバーソデ紹介文より)。第2巻は法論(稲垣良典訳)、第3巻は人間論(山本芳久訳)、第4巻は神論とキリスト論(山本芳久訳)となります。凡例によれば第1巻と第2巻は創文社版『神学大全』第11冊、第13冊、第14冊からの転載で、「文庫化にあたっては稲垣が一部改訂を行った」とあります。第3巻と第4巻は山本さんによる新訳とのことです。なお、創文社版『神学大全』全45巻セットはオンデマンド版で現在も入手可能です。

★『人間の知的能力に関する試論』全2巻は、18世紀スコットランドの哲学者トマス・リード(Thomas Reid, 1710-1796)が1785年に刊行した『Essays on the intellectual power of man』の翻訳。帯文に曰く「ヒューム、バークリらが陥る懐疑主義的傾向を「常識」に基づいて批判する」。リードの既訳書には『心の哲学』(朝広謙次郎訳、知泉書館、2004年;原著1764年『Inquiry into the human mind on the principles of common sense』)があります。

★『開かれた社会とその敵』は全4冊。既刊は7月時点で第1巻上下巻と第2巻上巻。「全面新訳」(版元紹介文より)による文庫化。未來社版全2巻(小河原誠/内田詔夫訳、1980年)は英語版からの翻訳だったかと記憶しますが、今回の新訳はドイツ語版からのもの。文庫化の経緯については続刊となる第4分冊の「訳者あとがき」で明らかになるかと思われますが、ドイツ語版についての説明は凡例に書かれています。「本訳書が底本としてドイツ語版は、ポパー自身が監修したドイツ語訳に、かれがみずから加えた変更(これは、1992年までおよんだ)を反映させ、さらに各種の引用文献についてドイツ語版の編者キーゼヴェッターが再調査し、誤りなどを訂正し、文献的に遺漏がなく正確であることを期して修正した版である。このドイツ語版が事実上の最終確定版であると考えられる」。ドイツ語訳は高名な科学哲学者ポール・ファイヤーアーベント(Paul Karl Feyerabend, 1924-1994;岩波文庫版では「パウル」と表記)によるもの。

★『精神の生態学へ』は全3冊。既刊は6月時点で上中巻。来月8月に下巻発売と聞いています。本書はベイトソンの主要論文を集成したもので、原著は1972年刊。親本である訳書は『精神の生態学』で、思索社版上下巻(上巻:佐伯泰樹/佐藤良明/高橋和久訳、1986年;下巻:佐藤良明/高橋和久訳、1987年)、思索社合本改訂版(佐藤良明訳、1990年)、新思索社改訂第2版(佐藤良明訳、2000年)と、幾度となく再刊されてきました。新思索社の廃業に伴い入手不可能となっていましたが、同じく佐藤さん訳で思索社刊行の『精神と自然』に続き、岩波文庫で読めるようになりました。

★岩波現代文庫から2点。『我々はどのような生き物なのか』は、チョムスキーが2014年3月に上智大学で行なった来日講演2本「言語の構成原理再考」「資本主義的民主制の下で人類は生き残れるか」をまとめ、編訳者によるインタヴューを付した単行本(岩波書店、2015年)の文庫化。巻末特記によれば「改めて本文を検討し、相当量の加筆修正を行」い、「岩波現代文庫版編訳者あとがき」を付したとのことです。

★『越境を生きる』は副題にある通り、米国の比較政治学者ベネディクト・アンダーソン(Benedict Richard O'Gorman Anderson, 1936-2015)の回想録。2009年にNTT出版より刊行された『ヤシガラ椀の外へ』の改題文庫化です。もともとアンダーソン自身に執筆依頼したオリジナル原稿の翻訳書で、英語版はその後2016年に刊行されています。文庫化にあたり、新しい訳者まえがきと追悼文を兼ねた訳者あとがきが加えられています。訳文は見直され、「一部の訳語や記述の誤りを修正」したとのことです。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

見知らぬ日本』グリゴーリー・ガウズネル(著)、伊藤愉(訳)、境界の文学:共和国、本体2,600円、四六変型判上製228頁、ISBN978-4-907986-87-2
現代語訳 源氏物語 三』紫式部(著)、窪田空穂(訳)、作品社、2023年7月、本体2,700円、46判並製376頁、ISBN978-4-86182-965-9
現代思想2023年8月号 特集=裁判官とは何か――家庭から国家まで…法と社会のはざまから問う』青土社、2023年7月、本体1,600円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1449-0
芸能の力――言霊の芸能史』笠井賢一(著)、藤原書店、2023年7月、本体3,000円、四六判上製368頁、ISBN978-4-86578-391-9
存在を抱く』村田喜代子/木下晋(著)、藤原書店、2023年7月、本体1,800円、四六上製280頁+口絵4頁、ISBN978-4-86578-393-3

★『見知らぬ日本』は「20歳のロシア青年による、100年前の日露文化交流。メイエルホリド劇場から派遣された若き演劇人は、およそ半年間の日本滞在で、何を見て、何を体験したのか。幻の日本紀行、本邦初訳」(帯文より)。原著は1929年刊。

★『現代語訳 源氏物語 三』は全4巻の第3巻目。「藤裏葉」から「竹河」までを収録。第4巻は9月刊行予定とのことです。

★『現代思想2023年8月号 特集=裁判官とは何か』は版元紹介文に曰く「人が人を裁くとはどういうことか。〔…〕裁判官という存在を通じて〈裁き〉をめぐる問いに臨みたい」。木庭顕「裁判官の良心」をはじめ、論文17本、討議1本を収録。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★藤原書店さんの7月新刊は2点。『芸能の力』は演出家の笠井賢一(かさい・けんいち, 1949-)さんが「伝統芸能と現代演劇を繋ぐ実践の中で掘り下げてきた、“いのちの根源にあるもの”としての芸能を描く」(帯文より)。『存在を抱く』は芥川賞作家の村田喜代子(むらた・きよこ, 1945-)さんと画家の木下晋(きのした・すすむ, 1947-)さんが2022年10月と2023年1月に計3回対談したその記録をまとめた、味わい深い一冊。

注目文庫新刊および既刊:岩波文庫、ほか_a0018105_23530503.jpg


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【雑記21】

日販グループホールディングスが7月24日に「日販グループESGレポート2023」を発表した。レポートはリンク先からPDFをダウンロードできる。「出版流通改革レポート」と併せて、出版人も書店人もお目を通されたい。同グループの経営理念を読み解くうえで「ESGレポート」は参考になる。

内閣府によればESGとは「Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス:企業統治、を考慮した投資活動や経営・事業活動を指す」。総論としてはその意義について理解できないわけではない。しかしレポートにはどうも曖昧かつ茫洋とした表現に感じる部分がある。3つ指摘しておきたい。今日は長々とは書かず、要点のみにしておく。

最初の2つは、グループの代表取締役社長の吉川英作氏の「トップメッセージ すべての人の心に豊かさを届ける―“やさしいみらい”を新たな文化に―」に関してである。同グループの経営理念は「人と文化のつながりを大切にして、すべての人の心に豊かさを届ける」というもので、トップメッセージもこれに則っているが、この「豊かさ」という文言があまりにもぼんやりしすぎている。心に届ける豊かさとはいったい何だろうか。しかも「すべての人の」と言うけれど「すべての人」とは誰のことなのか。「やさしいみらい」のやさしさとは。

吉川氏がCCCとの合弁会社MPDに関わってきた経歴が影響しているのだろうか。近年の日販はCCCと同様にやけにふんわりした言葉遣いをすることがある。そのひとつが「ライフスタイルの提案」だ。より良い社会を目指して貢献していこうという意図なのかもしれない。そうであるにせよ「ライフスタイル」という言葉が往々にして便利すぎる働きをすることに留意すべきだろう。より良い社会をめざしながらその実、手っ取り早い自己満足と政治的現状追認という要素をそれは秘めている。羊の群れを愛撫するためにはもってこいである。

ふたつめ。吉川氏はメッセージ内で「業界一丸となって取り組むべき最大の課題は、返品問題ではないでしょうか。送品を100としたときに、その内40近くが返品されるというのは明らかなムダであり、そのムダをなくすことは、プロフィットを生み出すだけでなく、地球環境への配慮、労働環境改善、どちらにも資するものです。これはきっと、業界共通のパーパスになると思います」と書いている。レポート全体を覆うカタカナ言葉の多用にはいささか過剰なものを感じる。しかし言葉遣いはこの際、脇に置こう。

気になるのは「明らかなムダ」と言われている返品率についてである。他人事のように響くし、十把一絡げにすぎる。「明らかなムダ」と言う割には「なぜ売れなかったのか」をめぐる事例分析を省略してしまってもいる。一方で出版社や書店にとっても、取次に対して「ムダ」と思っていることは色々とある。残念ながら、「共通のパーパス」というにはまだ遠く、三者間では意識がいまなおすれ違っているというのが現実ではないだろうか。経営陣は取引書店や取引出版社をすべて回って、まずは現場の肉声に真摯に耳を傾けてみたらどうか。「人とのつながりを大切にする」ならそうした方がいい。「共通のパーパス」とまでは単純化できないだろう。

みっつめ。2023年4月25日付「文化通信」記事「トリプルウィンから20年余 出版流通改革とESG」が、レポートのデータ集のひとつとして転載されている。これは吉川氏へのインタヴューである。そもそもこうしたざっくばらんな内容を業界紙のみに語ったというのは、取引先にとっては噴飯物でしかない。それでも遅まきながら有料記事だったものを読めるようにしたのは評価したい。ついでに、今日配信されたばかりの有料記事である、7月30日付「日本経済新聞」記事「日本出版販売社長「裸の対話、会社変革の一歩」――リーダーの肖像 奥村景二社長」もデータ集に加えてもらいたい。

吉川氏は聞き手の星野渉記者の質問「書店の今後についてはいかがでしょうか」にこう答えている。「書店はコミュニティー化するしかないと思います。〔…〕イートインやトイレなどのインフラが整っているコンビニに本の売り場を作ることで、地域コミュニティーとして老若男女の憩いの場になります。〔…〕コミュニティーの主役は書店ではないかと考えています。憩いとか潤いとか、生きていく楽しみということでいうと、まだまだ本には魅力があると思うので、書店が地域コミュニティーセンターになるべきなのです」。

この「コミュニティー化」や「憩いの場」は今のところ願望に留まらざるをえない。若者がコンビニの駐車場でたむろしたり、老人が友人たちと公園のベンチで雑談して過ごしたり、消費行動とは別の過ごし方をできる場所こそが「憩いの場」だ。コンビニはそうした長時間滞在だったり「買わない」過ごし方にはなじまない。吉川氏は「日販グループの書店も、地域密着型にして、地域を支えていく方向を目指しています」とも言うが、今のところ「地産地消」や「地域の行政とか学校と絡んだ品揃え」という標語は、コニュニティという名の仮面をかぶったビジネスの域を出そうもない。

心に豊かさを届けたいならば「豊かさとは何か」についていったん自分の仕事から切り離して自問した方がいい。自分自身が本当にコンビニ一体型書店にいたいと思うかどうか、そしてそこで憩いと潤いを得られそうかどうか、想像してみればいい。少なくとも私には無理だ。そこは私にとって居場所ではないし、「生きている楽しみ」を感じる空間でもなく、交流を楽しめるような豊かな場所でもない。ただの「買い物をする場所」だ。そもそも「人と文化とのつながりを大切にする」という経営理念は何のため、誰のためにあるのか。提供者の側からではなく受益者の側から捉え直す必要がある。外側から眺め、スタートラインよりもさらに一歩下がって、各人が素顔の自分に問うてみることだ。

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# by urag | 2023-07-30 23:37 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)