人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ
2021年 10月 04日

水声社注目新刊および既刊:ブランショ『文学時評1941-1944』など

水声社注目新刊および既刊:ブランショ『文学時評1941-1944』など_a0018105_01253212.jpg



★モーリス・ブランショさん(著書:『問われる知識人』『ブランショ政治論集』『書物の不在【初版朱色本】』『書物の不在【第二版鉄色本】』『謎の男トマ 1941年初版』)
★郷原佳以さん(訳書:『ブランショ政治論集』)
★門間広明さん(訳書:『謎の男トマ 1941年初版』)

文学時評1941-1944』モーリス・ブランショ著、郷原佳以/門間広明/石川学/伊藤亮太/髙山花子訳、水声社、2021年9月、本体8,000円、A5判上製576頁、ISBN978-4-8010-0492-4

先月公刊された、ブランショ『文学時評1941-1944』をようやく購入することができました。帯文に曰く「第二次大戦期に『ジュルナル・デ・デバ』紙に連載された、小説、詩、評伝、比較神話学、歴史言語学、神学、文明論など多岐にわたるジャンルの文学時評。批評家、思想家として本格的に活躍する以前の、ブランショの思想の原点!」。2段組で本文が500頁を超える大冊です。原著は『Chroniques littéraires du « Journal des Débats », avril 1941-août 1944』(Textes choisis et établis par Christophe Bident, Gallimard, coll. Les Cahiers de la N.R.F., 2008)です。

本書のほか、7月から9月までの新刊で以下の3点を購入しました。

美女と野獣』マイケル・タウシグ著、上村淳志/田口陽子/浜田明範訳、水声社、2021年9月、本体3,200円、四六判上製285頁、ISBN978-4-8010-0595-2
わたしの声―― 一人称単数について』アルフォンソ・リンギス著、水野友美子/小林耕二訳、水声社、2021年8月、本体3,200円、46判上製263頁、ISBN978-4-8010-0580-8
残酷物語』ヴィリエ・ド・リラダン著、田上竜也訳、水声社、2021年7月、本体3,500円、四六判上製448頁、ISBN978-4-8010-0585-3

『美女と野獣』『わたしの声』はともに、叢書「人類学の転回」の新刊。前者『美女と野獣』は『Beauty and the Beast』(University of Chicago Press, 2012)の全訳で、同叢書でのタウシグ(Michael Taussig, 1940-)の翻訳は、『ヴァルターベンヤミンの墓標』(金子遊/井上里/水野友美子訳、2016年3月)、『模倣と他者性ーー感覚における特有の歴史』(井村俊義訳、2018年6月)に続く3冊目です。後者『わたしの声』は『The First Person Singular』(Northwestern University Press, 2007)の全訳で、同叢書でのリンギスの翻訳は、『変形する身体』(小林徹訳、2015年12月)、『暴力と輝き』(水野友美子/金子遊/小林耕二訳、2019年5月)に続く3冊目です。同叢書の既刊書はこれで18点になりました。素晴らしいシリーズです。

『残酷物語』は 齋藤磯雄訳『残酷物語』(『残酷物語――こんと・くりゆえる』上下巻、三笠書房、1938年;『こんと・くりゆえる・しゅいっと』三笠書房、1940年;『ヴィリエ・ド・リラダン全集(1・2)残酷物語(上・下)』三笠書房、1949年;『世界文学選書(64)残酷物語』三笠書房、1951年;『残酷物語』新潮文庫、1954年;『残酷物語』筑摩叢書、1965年;『残酷物語』、『ヴィリエ・ド・リラダン全集(1)』所収、東京創元社、1977年)や、辰野隆選『リイルアダン短篇集』(上下巻、岩波文庫、1952年)などの既訳で親しまれてきた作品の待望の新訳です。帯には「ヴィリエ・ド・リラダン・コレクション」として今後、木元豊訳『未来のイヴ』や、鈴木雅生訳『クレール・ルノワール』などが続刊予定だそうです。


# by urag | 2021-10-04 15:00 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2021年 10月 03日

注目新刊:バック=モース『西暦一年』青土社、ほか

注目新刊:バック=モース『西暦一年』青土社、ほか_a0018105_00313499.jpg


西暦一年――「理性」と「信仰」の分断を問い直す』スーザン・バック=モース著、森夏樹訳、青土社、2021年8月、本体3,800円、46判上製456頁、ISBN978-4-7917-7409-8
『ガラテア書』註解』トマス・アクィナス著、磯部昭子訳、知泉書館、2021年7月、本体4,500円、新書判上製380頁、ISBN978-4-86285-344-8

★『西暦一年』は米国の思想史家スーザン・バック=モース(Susan Buck-Morss, 1942?-)が今春上梓したばかりの最新著『Year 1: A Philosophical Recounting』(MIT Press, 2021)の全訳。『Hegel, Haiti, and Universal History』(University of Pittsburgh Press, 2009;『ヘーゲルとハイチ――普遍史の可能性にむけて』岩崎稔/高橋明史訳、法政大学出版局、2017年)以来の新著です。三人のユダヤ人思想家、フラウィウス・ヨセフス、アレクサンドリアのフィロン、パトモスのヨハネをひもときつつ、理性と信仰の分断の〈起源〉としての西暦一世紀を問い直す、「知識の再配置をめざすプロジェクト」(序、7頁)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★「近代が歴史と呼ぶ認識論的装置は、本来、首尾一貫した物語形式で現在につながる秩序の中で、過去を定位置に置くことで保持されるはずだった。しかし、歴史を書くこと自体が、この秩序化の推定をくつがえす知識を提供して、従来とは違った方法で、過去に自由に語らせることになる。デジタル学習やデータバンクの見出しの下で、静かな革命が進行中だ。学問が知識の構造、つまり人間の経験の記録を分割し、秩序づけている概念的なフレームそのものを変えようとしている。/一世紀――この時点に焦点を当てることがきわめて重要となるのはそのためである――に関しては、歴史的物語のもっとも基本的な三つのカテゴリー――ヘレニズム、キリスト教、ユダヤ教――が物的な証拠を歪めている。宗教と政治、科学と美学、アテネとエルサレム、東洋と西洋の間の概念的な区別は、一世紀の世界では意味をなさない。歴史的資料を古典、神学、現在の世俗的な人文科学という、別々の学問分野に割り当てようとする従来のアプローチは深刻な誤解を招く。異なるグループの起源を探求することは、純粋化された情報源に向かうのではなく、むしろ分離そのものの消失へと向かう」(同頁)。

★「〔本書の主な情報源となる一世紀の三人である〕彼ら自身の言葉を真剣に受け止めてみると、それは、われわれが知っていると思っていたこととは、大きく矛盾する驚くべき方向へと導いてくれ、現在の認識論的な先入観を根本的にくつがえす鍵を提供してくれる。その鍵にとって、時間的に分散していた登場人物たちが、歴史の再編成の渦の中に引き込まれることで、豊富な相互接続が可能になる。アンティゴネとジョン・コルトレーン、プラトンとブルワー=リットン、クーサのニコラス〔ニコラウス・クザーヌス〕とゾラ・ニール・ハーストン、アル=ファーラービーとジャン・アヌイなど、すべてが登場する。デカルト、カント、ヘーゲル、クリステヴァ、デリダはいうまでもない」(8頁)。巻頭の序を読むだけでも鳥肌が立ってきます。

★著者は本書の課題を「最新の研究成果の一部を広く一般の人々と共有すること」と述べるとともに「目的は大衆化ではない」とも書いています。本書が日本でどれくらいの数の読者に出会えるか、想像がつきませんが、図書館にはぜひ架蔵されてほしい一冊です。「私は、歴史の学術研究者とさまざまな宗派の宗教団体によって提供された、信頼性の高いオープンアクセスの情報源について、これら多くの提供者の方々の献身に感謝している。〔…〕しかし私は、コーネル大学の学術図書館の貴重な蔵書を含む、ハードカバーの本に対してさらに大きな依存をしてきた。その継続的なつながりはデジタル時代になっても、いっそう高まっている」(9~10頁)。

★『『ガラテア書』註解』は「知泉学術叢書」の第16弾。「ガラテア書」は新約聖書において使徒パウロによる書簡とされるもののひとつ。訳者解説によればこの註解(Super Epistolam ad Galatas Lectura)は「9年間のイタリア時代〔1259~1268年:34~43歳〕のあいだのある時期に、トマスの講義を弟子のレギナルドゥスが口述筆記して成立したものであるということができる」とのこと。底本は『S. Thomae Aquinatis: Super Epistolas S. Pauli Lectura (Vol. 1)』(Marietti, 1953)所収のテクスト。版元紹介文に曰く「ガラテア書の章節に関わるトマス『神学大全』の関連箇所を示して、いっそう深い理解への手引きとしている」と。

★続いて、まもなく発売となるちくま学芸文庫10月新刊4点を列記します。

『フーコー文学講義――大いなる異邦のもの』ミシェル・フーコー著、柵瀬宏平訳、ちくま学芸文庫、2021年10月、本体1,300円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-51079-2
『着眼と考え方 現代文解釈の基礎〔新訂版〕』遠藤嘉基/渡辺実著、ちくま学芸文庫、2021年10月、本体1,500円、文庫判480頁、ISBN978-4-480-51073-0
『レストランの誕生――パリと現代グルメ文化』レベッカ・L・スパング著、小林正巳訳、ちくま学芸文庫、2021年10月、本体1,900円、文庫判592頁、ISBN978-4-480-51076-1
『〈日本美術〉誕生――近代日本の「ことば」と戦略』佐藤道信著、ちくま学芸文庫、2021年10月、本体1,200円、文庫判304頁、ISBN978-4-480-51077-8

★『フーコー文学講義』は学芸文庫オリジナルの初訳本。『La grande étrangère : À propos de literature』(Éditions de l'EHESS, 2013)の全訳です。フーコーの60年代から70年代の講演をまとめたもの。目次は以下の通り。

解題
緒言
狂気の言語
 編者の注
 狂人たちの沈黙
 狂える言語
文学と言語
 編者の注
 第一回講演
 第二回講演
サドに関する講演
 編者の注
 第一回講演
 第二回講演
文学に関するミシェル・フーコーの研究業績と発言
ミシェル・フーコー略年譜
訳者解題

★巻頭の「解題」は編者4氏(フィリップ・アルティエール、ジャン=フランソワ・ベール、マチュー・ポット=ボンヌヴィル、ジュディット・ルヴェル)によるもの。この4氏は、訳者解題によれば、ミシェル・フーコー・センターの中核を担う、中堅のフーコー研究者たち」とのこと。ジュディット・ルヴェルはアントニオ・ネグリのフランス語訳者も務めていた方ですね。「狂気の言語」は1963年にフランス国営放送「フランス3」のラジオ番組「言葉の用法」で全5回にわたって放送されたものから、第二回と最終回を収録。「文学と言語」は1964年12月にブリュッセルのサン=ルイ大学で行われた二回にわたる講演の記録。「サドに関する講演」は、1970年3月にニューヨーク州立大学バッファロー校での2本の講演のうち、2本目のタイプ原稿や3つの手稿をもとに校訂したもの。

★『現代文解釈の基礎〔新訂版〕』は、中央図書出版社から1963年に初版が刊行され、新訂版が1991年刊行されたロングセラーの文庫化。文庫化にあたり、読書猿さんによる巻末解説「よみがえる至高の現代文教本」が加えられています。読書猿さん曰く「本書は、現役の学生たちが国語(現代文)のテストで良い点を取ろうという目的を遥かに超えている。これまで自分が読むことに十分な注意を払い、訓練を積んできた読み手さえも、日本語文の読み書き能力について格段に高めることができる教本である」(475頁)。なお、著者はお二人とも逝去されています。

★『レストランの誕生』は2001年に青土社から刊行されたものの文庫化。『The Invention of the Restaurant: Paris and Modern Gastronomic Culture』(Harvard University Press, 2000)の全訳で、文庫化にあたり、原著の「2020年版まえがき」を、2019年に逝去された訳者に代わって成田あゆみさんが新たに訳しおろし、パリ在住の翻訳家の関口涼子さんによる解説「人はどうしてレストランに行くのか」が加えられています。著者のレベッカ・L・スパング(Rebecca L. Spang, 1961-)は、米国の歴史家で、インディアナ大学教授。訳書は本書のみです。

★『〈日本美術〉誕生』は講談社選書メチエより1996年に刊行されたものの文庫化。文庫化にあたり、「文庫版著者あとがき」と、『眼の神殿』の著者、北澤憲昭(きたざわ・のりあき, 1951-)さんによる文庫版解説「「ことば」と「機構」――自己探求としての日本近代美術史論」が加えられています。著者の佐藤道信(さとう・どうしん, 1956-)さんは美術史家で、現在、東京藝術大学教授。99年の著書『明治国家と近代美術――美の政治学』(吉川弘文館)でサントリー学芸賞を受賞されています。佐藤さんと北澤さんは友人同士とのことです。

注目新刊:バック=モース『西暦一年』青土社、ほか_a0018105_00323640.jpg


★また、単行本でまもなく発売となる新刊と、発売されたばかりの新刊をで注目の書目を1点ずつ特記します。

白い壁、デザイナードレス――近代建築のファッション化』マーク・ウィグリー著、坂牛卓/邉見浩久/岩下暢男/天内大樹/岸佑/呉鴻逸訳、鹿島出版会、2021年10月、本体4,300円、A5判上製480頁、ISBN978-4-306-04687-0
デカルトはそんなこと言ってない』ドゥニ・カンブシュネル著、津崎良典訳、晶文社、2021年9月、本体1,800円、四六判並製320頁、ISBN978-4-7949-7268-2

★『白い壁、デザイナードレス』はまもなく発売。『White Walls, Designer Dresses: The Fashioning of Modern Architecture』(MIT Press, 1995/2001)の全訳。近代建築とファッションの密接な関係性を分析した記念碑的研究書です。著者のマーク・ウィグリー(Mark Antony Wigley, 1956-)はニュージーランド出身の建築家、建築史家。著書が翻訳されるのは今回が初めてです。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。建築史家の加藤耕一さん曰く「伝統的なモダニズム理解を全面的に塗り替える、真っ白な必読書である」。

★「序文」より引きます。「近代建築の長所を伝えるにあたって衣服のイメージを引き合いに出すことは、実際には近代建築を生み出した考え方の根幹に触れている。〔…〕ル・コルビュジエとその仲間たちが提示した白漆喰に関する議論は、十九世紀の建築と衣服の関係に関する議論を大々的に活用したことが分かる。一見相いれないこの二つの議論を繋ぎ合わせる脈絡の紆余曲折を辿ることは、現代の言説に対して何らかの貢献が期待できる。それは多くの議論に付きまとい続けてきた建築とファッションの関係を解放することである」(21頁)。「白い壁が典型的に拒絶しているとされる流行のドレスの世界そのものの痕跡を、白い壁の表面を抜け目なく観察して見つけなくてはならない」(24頁)。

★『デカルトはそんなこと言ってない』は『Descartes n'a pas dit : Un répertoire des fausses idées sur l'auteur du Discours de la méthode, avec les éléments utiles et une esquisse d'apologie』(Belles Lettres, 2015)の全訳。帯文に曰く「世界的権威が21の「誤解」を提示、デカルトにかけられた嫌疑をひとつひとつ晴らしていく」と。著者のドゥニ・カンブシュネル(Denis Kambouchner, 1953-)はパリ第1大学パンテオン=ソルボンヌ校名誉教授。デカルト研究の世界的権威です。既訳書に『人がいじわるをする理由はなに?』(伏見操訳、岩崎書店、2016年;著者名は書籍現物ではカンブシュネと表記、版元ウェブサイトではカンブクネ)があります。

★「日本語版への序文」より引きます。「近代性〔モデルニテ〕と呼ばれているもの――あまりに漠然と粗雑にそう呼ばれることが多い――が抱えるあらゆる欠点の責めをこれ以上、負わされることもない書き手はおそらく彼以外にはいないと思われるかぎりで、デカルトと関わりと持つことは、いっそう意義深い経験となる。デカルトを丁寧に読むこと、しかもその思想の最も優れたところを摑み取ろうと努めながら読むこと、それは、〔彼のおかげで〕私たちが(諸物体、自分の精神、あるいは神の本性について)もはや持つことのなくなった先入観から、というよりはむしろ、私たちの文化の歴史をあまりに単純化して「物語ること」から解放されることを意味する」(10頁)。

★このほか最近では以下の新刊との出会いもありました。

胡適文選 1』胡適著、佐藤公彦訳、東洋文庫、2021年9月、本体3,400円、B6変判上製函入352頁、ISBN978-4-582-80905-3
図説マルマ――ヨーガとアーユルヴェーダをつなぐインド秘伝の身体論』伊藤武著、めるくまーる、2021年08月、本体3,600円、A5判並製228頁+カラー口絵8頁、ISBN978-4-8397-0181-9
国家とは何か』後藤新平著、楠木賢道編、藤原書店、2021年9月、本体2,500円、四六変上製208頁、ISBN978-4-86578-325-4
「かもじや」のよしこちゃん――忘れられた戦後浅草界隈』西舘好子著、藤原書店、2021年9月、本体2,400円、A5判上製288頁、ISBN978-4-86578-321-6
パリ日記――特派員が見た現代史記録1990-2021(I)ミッテランの時代 1990.5-1995.4』山口昌子著、藤原書店、2021年9月、本体4,800円、A5判並製592頁+口絵2頁、ISBN978-4-86578-324-7

★中でも特記しておきたいのは、久しぶりの刊行となる東洋文庫の新刊、第905巻『胡適文選 1』(全2巻予定)です。昨年10月の『ケブラ・ナガスト』以来の約1年ぶりとなるもの。また、『図説マルマ』の刊行記念として、紀伊國屋書店新宿本店3F人文書売場では、「めるくまーる50周年フェア《不滅の探究》&伊藤武選書フェア《伊藤武の宇宙》」が今月21日まで開催中です。伊藤さん全著作と関連書が掲載された無料リーフレットが配布され、さらに伊藤さんのイラストを使用した特製エコバッグを限定販売しているとのことです。また50周年フェアでは、めるくまーるの僅少本を扱っているのだとか。50周年記念リーフレットの無料配布も予定しておられるそうで、楽しみです。

# by urag | 2021-10-03 23:57 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2021年 09月 28日

本日取次搬入:長崎浩『叛乱を解放する――体験と普遍史』

長崎浩『叛乱を解放する――体験と普遍史』の新刊配本分を、本日取次(日販、トーハン)に搬入いたしました。事前にご発注いただいた書店様へ委託条件にてお届けいたします。書店様の店頭にはおおよそ10月1日以降順次並び始めるものと思われます。写真は9月の弊社新刊および重版です。合計4点でした。

◎2021年9月21日発売新刊:ロドルフ・ガシェ『読むことのワイルド・カード――ポール・ド・マンについて』本体5,400円、シリーズ・古典転生第25回配本(本巻24)
◎2021年9月22日発売新刊:谷川渥『孤独な窃視者の夢想――日本近代文学のぞきからくり』本体2,600円
◎2021年9月27日重版出来:ロザリンド・E・クラウス『アヴァンギャルドのオリジナリティーーモダニズムの神話』2刷
◎2021年9月28日発売新刊:長崎浩『叛乱を解放する――体験と普遍史』本体3,200円
本日取次搬入:長崎浩『叛乱を解放する――体験と普遍史』_a0018105_19200803.jpg


# by urag | 2021-09-28 19:23 | 販売情報 | Comments(0)
2021年 09月 27日

本日重版出来:クラウス『アヴァンギャルドのオリジナリティーーモダニズムの神話』2刷

ロザリンド・E・クラウス『アヴァンギャルドのオリジナリティーーモダニズムの神話』の2刷ができあがりました。ご好評に御礼申し上げます。初刷を買いたかった、というお客様は、申し訳ございませんが、書店さんの店頭在庫をお探しいただけると幸いです。

# by urag | 2021-09-27 10:14 | 芸術書既刊 | Comments(0)
2021年 09月 26日

注目新刊:エリュール『アナキズムとキリスト教』新教出版社

注目新刊:エリュール『アナキズムとキリスト教』新教出版社_a0018105_23381662.jpg


アナキズムとキリスト教』ジャック・エリュール著、新教出版社編集部訳、新教出版社、2021年9月、本体2,500円、四六判上製220頁、ISBN978-4-400-40755-3

★『アナキズムとキリスト教』は、フランスの社会思想家ジャック・エリュール(Jacques Ellul, 1912-1994)の晩年作『Anarchie et Christianisme』(Atelier de Création Libertaire, 1988 ; La Table Ronde, 1998 [Nouvelle édition, 2018])を歴史神学者のジェフリー・ブロミリー(Geoffrey W. Bromiley, 1915–2009)が英訳した版『Anarchy and Christianity』(Eerdmans, 1991 ; réédition, Wipf & Stock, 2011)から訳出したもの。底本は2011年版。新教出版社編集部による巻末解説「ジャック・エリュール、信仰のアナーキー」によれば、90年代にさる大学教授が翻訳した原稿を新教出版社編集部が見直して出版。帯文に曰く「信仰とアナキズムの出会うべき地点を開示する。主人の軛を砕く解放の神、支配の根拠を切り崩すイエス、政治権力を退ける預言書や黙示録など、キリスト教に内在するアナーキーなポテンシャルを覚醒させる」と。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★巻頭には、ジャック・エリュール国際学会会長でキリスト教神学者、倫理学者のデイヴィッド・W・ギル(David W. Gill, 1946-;本訳書では「デヴィッド・W・ジル」と表記)による「英語版への序文」が訳されています。エリュールの著作が翻訳されるのは日本では伊藤晃訳『現代人は何を信ずべきか――「技術環境」時代と進行』(春秋社、1989年)以来で、30数年ぶりです。70年代にはすぐ書房より著作集も刊行されていたものの、未完結。しかしながらエリュールは、ジョルジュ・フリードマン(Georges Philippe Friedmann, 1902-1977)や、ポール・ヴィリリオ(Paul Virilio, 1932-2018)、ベルナール・スティグレール(Bernard Stiegler, 1952-2020)らと並び、フランスにおける鋭利な技術社会批判を展開した思想家として、今なおキーパーソンの一人であることに変わりありません。

★エリュールはこう述べます。「真の問題は、ある者が他の者を支配する権力を持つという点にある。不幸なことに、先に述べた通り、これを真に防げるとは思わない。しかし、それに対して戦うことはできる。社会の主流とは違った仕方で組織化することができる。単に権力の乱用だけではなく、権力そのものを糾弾することもできる。このように語り、またそのことを望むのはアナーキーだけなのだ。/したがって私は、アナキストの運動を促進して拡大することがいままで以上に必要だと考えている。一般に考えられているのとは逆に、この運動の主張はこれまで以上に広範に耳目を集めうる。〔…〕国家や官僚の権力が増殖すればするほど、個人を、つまりは人間性を擁護する唯一にして最後の防衛手段として、アナーキーを肯定することが必要となってくるのだ。アナーキーには、辛辣さと勇敢さが取り戻されねばならない。そうすれば、明るい将来が眼前に開ける。このようなわけで、私はアナーキーな立場を取る」(53~54頁)。

★「今日、いかなる体制のもとであれ国家によって個人が圧殺されているという事態に直面している私たちは、この巨獣〔ベヒモス〕に異議を唱えねばならないし、それゆえ聖書を別の方法で読む必要がある。後に見るように、聖書のテクストのなかには権威を認めるように思える箇所があるのもたしかに事実だ。他方、聖書は概してアナーキーを指し示す傾向があり、権威に好意的なテキストは例外的だと思われるのだ。そのことを以下では述べていきたい」(98頁)。周知の通り近年からここ最近まで、アナキズムにかんする新刊は増えていますし、読まれてもいます。人文書売場がない本屋さんでも、アナキズム関連書をまとめた棚があれば、注目されるのではないかと思います。

★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。

部屋をめぐる旅 他二篇』グザヴィエ・ド・メーストル著、加藤一輝訳、幻戯書房、2021年9月、本体2,900円、四六変形判ソフト上製296頁、ISBN978-4-86488-231-6
修繕屋マルゴ 他二篇』フジュレ・ド・モンブロン著、福井寧訳、幻戯書房、2021年9月、本体3,200円、四六変形判ソフト上製320頁、ISBN978-4-86488-232-3 
感覚のエデン――岡崎乾二郎批評選集 vol.1』岡﨑乾二郎著、亜紀書房、2021年9月、本体3,600円、A5判上製488頁、ISBN978-4-7505-1711-7
モア・ザン・ヒューマン──マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』奥野克巳/近藤祉秋/N・ファイン編、以文社、2021年9月、本体3,200円、A5判並製320頁、ISBN 978-4-7531-0364-5
フェイクとの闘い――暗号学者が見た大戦からコロナ禍まで』辻井重男著、コトニ社、2021年10月、本体2,500円、四六判上製320頁、ISBN978-4-910108-06-3

★幻戯書房さんの好評シリーズ「ルリユール叢書」第17回配本は、24点目と25点目の2冊同時発売。『部屋をめぐる旅 他二篇』は、フランスとイタリアにまたがる領地を有したサルデーニャ王国に生まれた軍人であり作家のド・メーストル(Xavier de Maistre, 1763–1852)の代表作随筆『部屋をめぐる旅』に、その続編『部屋をめぐる夜の遠征』、さらに小説「アオスタ市の癩病者」と、批評家サント゠ブーヴによる「グザヴィエ・ド・メーストル伯爵略伝」を収録。表題作『部屋をめぐる旅』は帯文に曰く「フランス革命の只中、18世紀末のトリノで、世界周游の向こうを張って42日間の室内旅行を敢行、蟄居文学の嚆矢となった」と。26歳の折に決闘騒ぎで自宅謹慎となった際に書かれたもので、32歳になった1795年に匿名出版されました。

★本書の出だしはこうです。「新しい道を開き、さまざまな発見を盛り込んだ本を手に、予期せぬ彗星が空に煌めくように、ふいに学者の世界に現われるのは、何と光栄なことだろう!/いや、もう自分の本を秘めておくのはやめよう。これがそうだ、諸君、読んでくれ。わたしは部屋をめぐる42日間の旅を企画し、実行した。興味深い観察記録をつけ、道中いつも楽しく感じていたから、それを公刊したくなったのだ。役に立つという確信が、わたしを決意させた。数多の不幸なひとたちに、憂鬱に打ち克つ確かな力や、のしかかる苦難の慰めを提供できると思うと、言いようのない満足感を覚える。自分の部屋を旅することで得られる楽しみは、他人の飽くなき嫉妬を受けないし、境遇にも左右されない」(9頁)。

★旧訳には永井順訳「わが部屋をめぐる旅」「わが部屋をめぐる夜の旅」(『部屋をめぐつての随想』所収、白水社、1940年)があります。加藤一輝(かとう・かずき, 1990-)さんによる新訳は、1866年にガルニエから出版された全集を底本とし、2015年に翻訳同人誌として発表されたものの改訳版です。加藤さんは同誌で『グザヴィエ・ド・メーストル伯爵全集』(上下巻、Cato Triptyque、文庫判195/187頁、2017~2018年)を上梓されており、この上巻に「部屋をめぐる旅」と「部屋をめぐる夜の遠征」が収録されているので、今回は二度目の改訳にして三度目の発表となります。コロナ禍に図らずも再注目を浴びるであろう古典的名作の復活です。

★『修繕屋マルゴ 他二篇』は、18世紀フランスのリベルタン作家フジュレ・ド・モンブロン(Louis-Charles Fougeret de Monbron, 1706–1760)の作品3篇を収録。帯文によれば「エロティックな妖精物語『深紅のソファー』〔1741年〕と遊女の成り上がりの物語『修繕屋マルゴ』〔1750年〕、奔放不羈な旅人の紀行文学『コスモポリット(世界市民)』〔1750年〕を収録」と。小説2作はかつてフランス国立図書館の禁書保管庫「地獄〔ランフェール〕」に収蔵されていたもの。訳者の福井寧さんは同じく「地獄」に登録されていたネルシア『フェリシア、私の愚行録』の翻訳を同じく「ルリユール叢書」から2019年6月に上梓されています。

★『感覚のエデン』は、新シリーズ「岡﨑乾二郎批評選集」(全2巻予定)の第1巻。帯文に曰く「稀代の批評家・造形作家による美術史の解体=再構築。デビュー以来紡いできた膨大な批評文を精選した、その思想の精髄。シリーズ第1弾」とのこと。「捲土重来――再開する時間」「天体は抵抗する――確率論的抵抗」「感覚のエデン――約束としての了解可能性」「経験のインフラストラクチャー」の4部構成で、主に2000年頃から現在までの20年間に執筆されたという29篇が収められています。初出は各テクスト末に明記されており、編集部による注記や著者からの短い聞き書きが添えられています。収録作品の明細は書名のリンク先でご覧いただけます。美しい装丁は、著者自身と中山雄一朗さんによるもの。

★『モア・ザン・ヒューマン』は、人文学の新たな可能性を探るという新シリーズ「人間を超える」の第1弾。「人間と動物、一から多への視点」「人間的なるものを超えた人類学の未来」「モア・ザン・ヒューマンの人類学から文学、哲学へ」の3部構成で9本のインタヴューと総論となる3本の鼎談、共編者の奥野克巳さんによる序論などが収められています。インタヴュイーはラディカ・ゴヴィンドラジャン、アレックス・ブランシェット、ジョン・ナイト、ナターシャ・ファイン、エドゥアルド・コーン、アナンド・パンディアン、石倉敏明、結城正美、清水高志、の9氏。シリーズ続刊予定には『マンガ版マルチスピーシーズ人類学』や、ゴヴィンドラジャン『アニマル・インティマシーズ』が挙がっています。

★『フェイクとの闘い』はまもなく発売。取引代行のトランスビューより9月28日から出荷開始とのこと。情報通信システムと暗号理論がご専門の辻井重男(つじい・じげお, 1933-)さんによる書き下ろしで、自伝的回想録と、サイバーセキュリティをめぐる論考、戦中知識人の戦争協力と現実認識に対する分析、疑似対話篇、資料編などで構成されています。巻頭の但し書きには「本書は、中央大学研究開発機構ユニット「新常態環境下の情報セキュリティに関する総合的研究」の発展に向けて記述したものである」とあります。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。コトニ社さんでは初めての上製本です。


# by urag | 2021-09-26 19:14 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)