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2024年 04月 14日

注目新刊および既刊:『ゲンロン16』は巻頭小特集が「ゲンロンが見たウクライナ」

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★まず、最近出会いのあった新刊を列記します。

ゲンロン16』ゲンロン、2024年4月、本体2,300円、A5判並製280頁、ISBN978-4-907188-54-2
ウクライナの小さな町――ガリツィア地方とあるユダヤ人一家の歴史』バーナード・ワッサースタイン(著)、工藤順(訳)、作品社、2024年4月、本体3,600円、四六判並製376頁、ISBN978-4-86793-025-0

★『ゲンロン16』は、巻頭を飾るのが小特集「ゲンロンが見たウクライナ」。東浩紀さんの論考「ウクライナと新しい戦時下」、上田洋子さんの論考「戦争はどこに「写る」のか──ボリス・ミハイロフとハルキウ派」、さらにキーウ在住の夫妻への上田さんによるインタヴュー「「戦争が始まった朝はどうすればいいのかわからなかった」」、ユダヤ系ロシア人でウクライナとも関わりが深いという映画監督イリヤ・フルジャノフスキーさんへの東さんと上田さんによるインタヴュー「ユダヤとロシアのあいだで──バービン・ヤルの虐殺とソ連という地獄」が掲載されています。また、2023年12月17日にゲンロンカフェで行われた、東さんと加藤文元さん、川上量生さんによる公開座談会「真理とはなにか――数学とアルゴリズムから見た『訂正可能性の哲学』」が、編集され改稿されて「訂正する真理──数学、哲学、エンジニアリング」として掲載されています。同号の目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。

★『ウクライナの小さな町』は、英国生まれの歴史学者でシカゴ大学名誉教授のバーナード・ワッサースタイン(Bernard Wasserstein, 1948-)の近著『A Small Town in Ukraine: The Place we came from, the place we went back to』(Allen Lane, 2023)の訳書。「ガリツィア地方という、国と国のはざま。そしてユダヤ人という、民族と民族のはざま。――二つの「はざま」の視点から、ガリツィア地方、ウクライナ、そして東欧の人びとがくぐり抜けた歴史が照らし出される」(カバー紹介文より)。訳者の工藤順さんによる「『ウクライナの小さな町』に寄せて」がウェブ公開されています。「本書が扱う歴史じたい非常に苦しいものだが、翻訳の作業には歴史とリアルタイムの現実とがシンクロしてしまう苦しさもあった。ウクライナとガザは繫がっているのだ」と工藤さんはお書きになっています。

★続いて注目既刊書を記します。

ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く(上)』ナオミ・クライン(著)、幾島幸子/村上由見子(訳)、岩波現代文庫、2024年3月、本体1,650円、A6判480頁、ISBN978-4-00-603344-6
ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く(下)』ナオミ・クライン(著)、幾島幸子/村上由見子(訳)、岩波現代文庫、2024年3月、本体1,650円、A6判496頁、ISBN978-4-00-603345-3
人類歴史哲学考(三)』ヘルダー(著)、嶋田洋一郎(訳)、岩波文庫、2024年3月、本体1,160円、文庫判408頁、ISBN978-4-00-386034-2
わたしの本はすぐに終る――吉本隆明詩集』吉本隆明(著)、講談社文芸文庫、2024年3月、本体2,900円、A6判300頁、ISBN978-4-06-534882-6
存在と思惟――中世哲学論集』クラウス・リーゼンフーバー(著)、山本芳久(編・解説)、村井則夫/矢玉俊彦(訳)、講談社学術文庫、2024年3月、本体1,100円、A6判256頁、ISBN978-4-06-535262-5
新版 蜻蛉日記 全訳注』上村悦子(訳著)、講談社学術文庫、2024年3月、本体2,700円、A6判848頁、ISBN978-4-06-534804-8
名婦伝[ラテン語原文付]』ジョヴァンニ・ボッカッチョ(著)、日向太郎(訳)、知泉学術叢書〈イタリア・ルネサンス古典シリーズ〉:知泉書館、2024年2月、本体6,400円、新書判上製746頁、ISBN978-4-86285-401-8
デカルト・エリザベト王女等の書簡集』フーシェ・ド・カレイユ(編著)、山田弘明(訳)、知泉学術叢書:知泉書館、2023年12月、本体4,200円、新書判上製328頁、ISBN978-4-86285-397-4

★岩波書店の先月の文庫新刊より3点。現代文庫ではついに、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』上下巻が待望の文庫化。親本は2011年に上下巻で刊行。文庫化に際し「訳文を若干改訂した」とのことです。下巻巻末に、幾島幸子さんによる「岩波現代文庫版訳者あとがき」と、中山智香子さんによる解説」が加わっています。原著『The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism』は2007年に刊行。同書はNHKEテレの「100分de名著」で2023年6月に取り上げられたこともあり、再び注目が集まっています。

★岩波文庫からはヘルダー『人類歴史哲学考(三)』。全5巻の第3巻。第2部第10巻から第3部第13巻までを収録。帯文に曰く「東・中央アジアから中東、そしてギリシアへ。風土に基づき民族性、言語、国家、文化や道徳を縦横に論じる」と。なお岩波文庫の4月新刊は12日発売ですが、私の立ち寄る書店には未入荷。カントの訳書2点、『道徳形而上学の基礎づけ』大橋容一郎訳、カント『人倫の形而上学 第二部』宮村悠介訳、さらに『孝経・曾子』末永高康訳注、『新編 虚子自伝』岸本尚毅編、と充実しています。

★講談社の先月の文庫新刊より3点。文芸文庫の吉本隆明『わたしの本はすぐに終る』は巻末特記によれば「『吉本隆明初期詩集』(講談社文芸文庫、1992年10月刊)の続巻にあたり、私家版の詩集『転位のための十篇』発行(1953年9月)より後に発表された作品を収録」したとのこと。「吉本隆明がつねに第一に考えていたのは詩作であった。〔…〕言語表現の拡張をめざしつづけた詩人の集大成」(カバー裏紹介文より)。以下の5部構成となっています。1:定本詩集(4、5)+新詩集、2;新詩集以後、3:記号の森の伝説歌、4:言葉からの触手、5:十七歳/わたしの本はすぐに終る。巻末にはハルノ宵子さんによる「佃渡しで――著者に代わって読者へ」、高橋源一郎さんによる解説「そして、ぼくは、吉本隆明の詩を読んだ」が収められています。底本情報は書名のリンク先の「製品情報」に記載されています。

★学術文庫からは2点。リーゼンフーバー『存在と思惟』は巻末特記によれば「1995年に創文社より刊行された『中世哲学の源流』(上智大学中世思想研究所中世研究叢書)所収の論文から精選し、新たな配列で編み直したもの」。以下の6篇を収録。「中世思想における至福の概念」「トマス・アクィナスにおける言葉」「トマス・アクィナスにおける存在理解の展開」「存在と思惟――存在理解の展開の可能性を探って」「トマス・アクィナスにおける神認識の構造」「神の全能と人間の自由――オッカム理解の試み」。巻末解説は東京大学大学院教授の山本芳久さんによるもの。

★『新版 蜻蛉日記 全訳注』は巻末特記に曰く「1978年に講談社学術文庫のために訳し下ろしされた『蜻蛉日記』上中下巻を1冊にまとめ、新版としたもの」。帯文に曰く「藤原道綱母が告白する、貴族たちの愛憎劇。紫式部に影響を与え、数々の小説家が惚れ込んだ、文学史上屈指の日記文学」。「2024年NHK大河ドラマ『光る君へ』をより深く味わう」とも謳われています。なお講談社では、講談社文庫で1980年に川瀬一馬さんによる校注と現代語訳で『蜻蛉日記』上中下巻を刊行しており、こちらは現在、電子版でのみ配信されています。

★知泉書館の「知泉学術叢書」より2点。ボッカッチョ『名婦伝[ラテン語原文付]』は、同叢書第29巻で〈イタリア・ルネサンス古典シリーズ〉と題されたものの第1弾。『De mulieribus Claris』(1375年)の「自筆写本および三種の校訂版を参照し、詳細な注を施した決定訳」(カバー裏紹介文より)。「新約・旧約聖書を始め、ギリシア神話、ホメロス作品、オウィディウスやウェルギリウスなどラテン語の古典、さらには教父やタキトゥスの歴史書などを典拠として、古代から同時代の女王に至る106人の女性のエピソードを諧謔に富んだ筆致で描き出す」(同)。106人の明細は書名のリンク先でご確認いただけます。なお〈イタリア・ルネサンス古典シリーズ〉は、版元紹介文によれば「わが国で未開拓のルネサンス研究の基礎を築く」とのこと。とても楽しみです。

★『デカルト・エリザベト王女等の書簡集』は、同叢書第28巻。『Descartes, la princesse Élisabeth et la reine Christine : d'après des lettres inédites』(par A. Foucher de Careil, Frederik Muller, 1879)の訳書。凡例によれば「エリザベト書簡の邦訳は戦前から数種類ある。最近のものでは、拙訳『デカルト=エリザベト往復書簡』(講談社学術文庫、2001年、品切重版未定)、共訳『デカルト全書簡集 第5巻~第8巻』(知泉書館、2013年、2015~2016年)があり、本書はそれらを踏まえ改訂してある」とのこと。

★なお、知泉学術叢書では、山田弘明/吉田健太郎訳で『デカルト小品集』が刊行予定とのことです。また、今月末にはイェーガー『パイデイア――ギリシアにおける人間形成』の中巻がいよいよ発売。上巻は2018年に刊行済です。


# by urag | 2024-04-14 18:31 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2024年 04月 14日

注目新刊および既刊:『ゲンロン16』は巻頭小特集が「ゲンロンが見たウクライナ」

★まず、最近出会いのあった新刊を列記します。

ゲンロン16』ゲンロン、2024年4月、本体2,300円、A5判並製280頁、ISBN978-4-907188-54-2
ウクライナの小さな町――ガリツィア地方とあるユダヤ人一家の歴史』バーナード・ワッサースタイン(著)、工藤順(訳)、作品社、2024年4月、本体3,600円、四六判並製376頁、ISBN978-4-86793-025-0

★『ゲンロン16』は、巻頭を飾るのが小特集「ゲンロンが見たウクライナ」。東浩紀さんの論考「ウクライナと新しい戦時下」、上田洋子さんの論考「戦争はどこに「写る」のか──ボリス・ミハイロフとハルキウ派」、さらにキーウ在住の夫妻への上田さんによるインタヴュー「「戦争が始まった朝はどうすればいいのかわからなかった」」、ユダヤ系ロシア人でウクライナとも関わりが深いという映画監督イリヤ・フルジャノフスキーさんへの東さんと上田さんによるインタヴュー「ユダヤとロシアのあいだで──バービン・ヤルの虐殺とソ連という地獄」が掲載されています。また、2023年12月17日にゲンロンカフェで行われた、東さんと加藤文元さん、川上量生さんによる公開座談会「真理とはなにか――数学とアルゴリズムから見た『訂正可能性の哲学』」が、編集され改稿されて「訂正する真理──数学、哲学、エンジニアリング」として掲載されています。同号の目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。

★『ウクライナの小さな町』は、英国生まれの歴史学者でシカゴ大学名誉教授のバーナード・ワッサースタイン(Bernard Wasserstein, 1948-)の近著『A Small Town in Ukraine: The Place we came from, the place we went back to』(Allen Lane, 2023)の訳書。「ガリツィア地方という、国と国のはざま。そしてユダヤ人という、民族と民族のはざま。――二つの「はざま」の視点から、ガリツィア地方、ウクライナ、そして東欧の人びとがくぐり抜けた歴史が照らし出される」(カバー紹介文より)。訳者の工藤順さんによる「『ウクライナの小さな町』に寄せて」がウェブ公開されています。「本書が扱う歴史じたい非常に苦しいものだが、翻訳の作業には歴史とリアルタイムの現実とがシンクロしてしまう苦しさもあった。ウクライナとガザは繫がっているのだ」と工藤さんはお書きになっています。

★続いて注目既刊書を記します。

ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く(上)』ナオミ・クライン(著)、幾島幸子/村上由見子(訳)、岩波現代文庫、2024年3月、本体1,650円、A6判480頁、ISBN978-4-00-603344-6
ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く(下)』ナオミ・クライン(著)、幾島幸子/村上由見子(訳)、岩波現代文庫、2024年3月、本体1,650円、A6判496頁、ISBN978-4-00-603345-3
人類歴史哲学考(三)』ヘルダー(著)、嶋田洋一郎(訳)、岩波文庫、2024年3月、本体1,160円、文庫判408頁、ISBN978-4-00-386034-2
わたしの本はすぐに終る――吉本隆明詩集』吉本隆明(著)、講談社文芸文庫、2024年3月、本体2,900円、A6判300頁、ISBN978-4-06-534882-6
存在と思惟――中世哲学論集』クラウス・リーゼンフーバー(著)、山本芳久(編・解説)、村井則夫/矢玉俊彦(訳)、講談社学術文庫、2024年3月、本体1,100円、A6判256頁、ISBN978-4-06-535262-5
新版 蜻蛉日記 全訳注』上村悦子(訳著)、講談社学術文庫、2024年3月、本体2,700円、A6判848頁、ISBN978-4-06-534804-8
名婦伝[ラテン語原文付]』ジョヴァンニ・ボッカッチョ(著)、日向太郎(訳)、知泉学術叢書〈イタリア・ルネサンス古典シリーズ〉:知泉書館、2024年2月、本体6,400円、新書判上製746頁、ISBN978-4-86285-401-8
デカルト・エリザベト王女等の書簡集』フーシェ・ド・カレイユ(編著)、山田弘明(訳)、知泉学術叢書:知泉書館、2023年12月、本体4,200円、新書判上製328頁、ISBN978-4-86285-397-4

★岩波書店の先月の文庫新刊より3点。現代文庫ではついに、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』上下巻が待望の文庫化。親本は2011年に上下巻で刊行。文庫化に際し「訳文を若干改訂した」とのことです。下巻巻末に、幾島幸子さんによる「岩波現代文庫版訳者あとがき」と、中山智香子さんによる解説」が加わっています。原著『The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism』は2007年に刊行。同書はNHKEテレの「100分de名著」で2023年6月に取り上げられたこともあり、再び注目が集まっています。

★岩波文庫からはヘルダー『人類歴史哲学考(三)』。全5巻の第3巻。第2部第10巻から第3部第13巻までを収録。帯文に曰く「東・中央アジアから中東、そしてギリシアへ。風土に基づき民族性、言語、国家、文化や道徳を縦横に論じる」と。なお岩波文庫の4月新刊は12日発売ですが、私の立ち寄る書店には未入荷。カントの訳書2点、『道徳形而上学の基礎づけ』大橋容一郎訳、カント『人倫の形而上学 第二部』宮村悠介訳、さらに『孝経・曾子』末永高康訳注、『新編 虚子自伝』岸本尚毅編、と充実しています。

★講談社の先月の文庫新刊より3点。文芸文庫の吉本隆明『わたしの本はすぐに終る』は巻末特記によれば「『吉本隆明初期詩集』(講談社文芸文庫、1992年10月刊)の続巻にあたり、私家版の詩集『転位のための十篇』発行(1953年9月)より後に発表された作品を収録」したとのこと。「吉本隆明がつねに第一に考えていたのは詩作であった。〔…〕言語表現の拡張をめざしつづけた詩人の集大成」(カバー裏紹介文より)。以下の5部構成となっています。1:定本詩集(4、5)+新詩集、2;新詩集以後、3:記号の森の伝説歌、4:言葉からの触手、5:十七歳/わたしの本はすぐに終る。巻末にはハルノ宵子さんによる「佃渡しで――著者に代わって読者へ」、高橋源一郎さんによる解説「そして、ぼくは、吉本隆明の詩を読んだ」が収められています。底本情報は書名のリンク先の「製品情報」に記載されています。

★学術文庫からは2点。リーゼンフーバー『存在と思惟』は巻末特記によれば「1995年に創文社より刊行された『中世哲学の源流』(上智大学中世思想研究所中世研究叢書)所収の論文から精選し、新たな配列で編み直したもの」。以下の6篇を収録。「中世思想における至福の概念」「トマス・アクィナスにおける言葉」「トマス・アクィナスにおける存在理解の展開」「存在と思惟――存在理解の展開の可能性を探って」「トマス・アクィナスにおける神認識の構造」「神の全能と人間の自由――オッカム理解の試み」。巻末解説は東京大学大学院教授の山本芳久さんによるもの。

★『新版 蜻蛉日記 全訳注』は巻末特記に曰く「1978年に講談社学術文庫のために訳し下ろしされた『蜻蛉日記』上中下巻を1冊にまとめ、新版としたもの」。帯文に曰く「藤原道綱母が告白する、貴族たちの愛憎劇。紫式部に影響を与え、数々の小説家が惚れ込んだ、文学史上屈指の日記文学」。「2024年NHK大河ドラマ『光る君へ』をより深く味わう」とも謳われています。なお講談社では、講談社文庫で1980年に川瀬一馬さんによる校注と現代語訳で『蜻蛉日記』上中下巻を刊行しており、こちらは現在、電子版でのみ配信されています。

★知泉書館の「知泉学術叢書」より2点。ボッカッチョ『名婦伝[ラテン語原文付]』は、同叢書第29巻で〈イタリア・ルネサンス古典シリーズ〉と題されたものの第1弾。『De mulieribus Claris』(1375年)の「自筆写本および三種の校訂版を参照し、詳細な注を施した決定訳」(カバー裏紹介文より)。「新約・旧約聖書を始め、ギリシア神話、ホメロス作品、オウィディウスやウェルギリウスなどラテン語の古典、さらには教父やタキトゥスの歴史書などを典拠として、古代から同時代の女王に至る106人の女性のエピソードを諧謔に富んだ筆致で描き出す」(同)。106人の明細は書名のリンク先でご確認いただけます。なお〈イタリア・ルネサンス古典シリーズ〉は、版元紹介文によれば「わが国で未開拓のルネサンス研究の基礎を築く」とのこと。とても楽しみです。

★『デカルト・エリザベト王女等の書簡集』は、同叢書第28巻。『Descartes, la princesse Élisabeth et la reine Christine : d'après des lettres inédites』(par A. Foucher de Careil, Frederik Muller, 1879)の訳書。凡例によれば「エリザベト書簡の邦訳は戦前から数種類ある。最近のものでは、拙訳『デカルト=エリザベト往復書簡』(講談社学術文庫、2001年、品切重版未定)、共訳『デカルト全書簡集 第5巻~第8巻』(知泉書館、2013年、2015~2016年)があり、本書はそれらを踏まえ改訂してある」とのこと。

★なお、知泉学術叢書では、山田弘明/吉田健太郎訳で『デカルト小品集』が刊行予定とのことです。また、今月末にはイェーガー『パイデイア――ギリシアにおける人間形成』の中巻がいよいよ発売。上巻は2018年に刊行済です。


# by urag | 2024-04-14 18:30 | Comments(0)
2024年 04月 07日

注目新刊:デリダ講義録第6弾『時を与えるⅡ』白水社、ほか

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★まずは発売済の新刊で最近出会いのあった書目を並べます。

ジャック・デリダ講義録 時を与えるⅡ』ジャック・デリダ(著)、藤本一勇(訳)、白水社、2024年3月、本体7,500円、A5判上製350頁、ISBN978-4-560-09806-6
見ることの塩(上)イスラエル/パレスチナ紀行』四方田犬彦(著)、河出文庫、2024年3月、本体1,200円、文庫判320頁、ISBN978-4-309-42090-5
見ることの塩(下)セルビア/コソヴォ紀行』四方田犬彦(著)、河出文庫、2024年3月、本体1,200円、文庫判328頁、ISBN978-4-309-42091-2
文藝 2024年夏季号』河出書房新社、2024年4月、本体1,400円、A5判並製520頁、雑誌07821-05

★『ジャック・デリダ講義録 時を与えるⅡ』は「ジャック・デリダ講義録」第6弾。原著『Donner le temps II』(Seuil, 2021)の全訳。1978年から79年にかけて行なわれた講義のうち、9回分(第7回から第15回まで)を収録。帯文に曰く「社会学や人類学における交換様式としてではなく、哲学における「存在と時間」の問題として追究してゆく、脱構築的贈与論」。冒頭には編者のロドリゴ・テレゾによる「序言」と、同じく編者のローラ・オデッロ、ピーター・スゼンディ(サンディもしくはセンディと表記される場合もあります)、そしてテレゾの三氏による「編者による覚書」が置かれています。

★デリダはこう述べます。「贈与は、それなくしてはもはや存在を思考することができなくなるようなものである。贈与なしでは、存在の思考が思考できなくなり、存在と存在者とのあいだの存在者的-存在論的差異が思考できなくなるのである。まず贈与を思考しなくては、すなわち思考すべきものを与えるものの贈与から出発して思考しなくては、思考を思考することができず、思考とはどういうことか、何がわれわれに思考するように呼びかけるのかについて、思考することができないのである。したがって贈与以上に根源的なもの、さらに先-根源的なものはない。はじめに贈与がなければ、いかなる意味も、いかなる真理も、いかなる存在者も、それらが思考されるべきものとして、存在すべきものとして、与えられない」(第9回、89~90頁)。

★「思考可能なものは、思考されうるものの全体を思考可能にするのであるから、思考可能なものそれ自体は、その元来性から言って、思考可能ではない。思考可能なものは、存在する何ものでもなく、規定可能なつまり思考可能な何ものでもない。思考可能なものは思考不可能性であり、思考不可能なものとして思考可能なもの、不可能なものとして可能なもの、それが贈与なのだ。それこそが、私がこのセミネール〔第1回〕の冒頭から早くも、「不可能なものから始めなくてはならない」と言ったときに近づこうと試みていた事柄だった」(91頁)。

★「訳者あとがき」によれば、本書の「最後の二回分に至っては、作者本人の原稿がなく(あったがなくなった、あるいは最初からない)、録音テープという記録メディアから書き起こしテクストしかなく、しかもその録音テープも発見されず、そんな痕跡の痕跡が書籍として交換され、私たちに「贈与」され「配送」されているのだ」(295頁)。また、同講義の第1回から第5回までは加筆修正されて、単行本『時を与えるⅠ――贋金』としてガリレ社より1991年に刊行されたものの、未訳です。さらに言えば、もともとの講義原稿の第1回から第6回までが講義録としてスイユ社から刊行されるかどうかは現時点では不明とのことです。

★『見ることの塩』上下巻は、巻末特記によれば、作品社より2005年に刊行された『見ることの塩――パレスチナ・セルビア紀行』を二分冊して文庫化したもの。上下巻の各巻末に書き下ろしのテクストが加わっています。上巻には「見ることの蜜は可能か――二〇二四年版のための追補」(263~310頁)、下巻には「書かれざる「最後の旅」への序文」(285~310頁)と、いずれも長めのものです。帯文には「「ガザ虐殺」を問うための緊急出版」とあります。

★『文藝 2024年夏季号』は、特集1が「世界はマッチングで回っている」、特集2が「さよなら渋谷区千駄ヶ谷2-32-2」で、緊急企画「ガザへの言葉#CeasefireNOW」。特集2は来月の大型連休明けから河出書房新社が新宿区東五軒町に移転することを記念したもので、個人的にはあの方この方、あの場所この場所、色々なことを思い出して感慨深くなります。あのビルに出る幽霊話は本当らしく、特集頁だけでなく「文藝後記」にもエピソードが。ぜひ解体前に動画を終夜撮影してくださるといいのですが。

★まもなく刊行となる新刊書籍、PR誌、新刊文庫を列記します。

大邱の敵産家屋――地域コミュニティと市民運動』松井理恵(著)、共和国、2024年4月、本体2,700円、四六判上製248頁、ISBN978-4-907986-86-5
現代コリア、乱気流下の変容――2008-2023』A・V・トルクノフ/G・D・トロラヤ/I・V・ディヤチコフ(著)、下斗米伸夫(監訳)、江口満(訳)、作品社、2024年4月、本体2,700円、四六判並製352頁、ISBN978-4-86793-029-8
世界思想 51号 2024春』世界思想社編集部(編)、世界思想社、2024年4月、A5判並製88頁
『中国古典小説史――漢初から清末にいたる小説概念の変遷』大塚秀高(著)、ちくま学芸文庫、2024年4月、本体1,300円、文庫判304頁、ISBN978-4-480-51236-9
『ことばの学習のパラドックス』今井むつみ(著)、ちくま学芸文庫、2024年4月、本体1,200円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-51237-6
『江戸の都市計画』鈴木理生(著)、ちくま学芸文庫、2024年4月、本体1,300円、文庫判 352頁、ISBN978-4-480-51238-3
『古代技術』ヘルマン・ディールス(著)、平田寛(訳)、ちくま学芸文庫、2024年4月、本体1,400円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-51240-6

★『大邱の敵産家屋』は、跡見学園女子大学准教授の松井理恵(まつい・りえ, 1979-)さんが2008年から2022年にかけてか各媒体に発表してきた論考6本に大幅な加筆修正を施して1冊にまとめたもの。敵産家屋(てきさんかおく)とは、日本による植民地時代に朝鮮半島で建てられた日本式住宅のこと。本書は「韓国第三の拠点都市・大邱(テグ)」に残る敵産家屋を「コミュニティや市民運動の拠点として利用しつづける人びとの肉声を拾いあげ、韓国現代史に位置づける試み」(帯文より)とのことです。

★『現代コリア、乱気流下の変容』は、帯文によれば「危ういバランスで“休戦”状態が続く朝鮮半島──大国による「操作可能な混沌」の舞台となった南北両国家を、ロシアの碩学がパラレルに分析する。核と紛争の時代を読み解く鍵がここに」。原著は2021年に刊行。「二つのコリア――分岐する発展経路(二〇〇七~二〇二〇)」「朝鮮半島の核・ミサイル問題、外交的解決の試み」「ロシア外交と朝鮮」の三部構成。各章題や各節題など詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「未来を予測することは、過去をよく知ることによって「容易となる」。このような期待を込めて読者に本書を読んでいただきたいと願っている」(日本語版序文、26頁)。

★世界思想社のPR誌『世界思想』第51号(2024春)の特集は「スポーツ」。「スポーツとは何か」「多様性と社会」「現場から考える」の三部構成で14篇が寄稿されています。執筆者は、玉木正之、為末大、武田砂鉄、金井真紀、溝内克之、稲見昌彦、磯野真穂、平尾剛、中澤篤史、石岡丈昇、町田樹、関めぐみ、若菜晃子、柏野牧夫、の各氏。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。巻末には寄稿者14氏が選書したブックリストも掲載されています。『世界思想』誌は書店で無料配布されます。

★まもなく発売となる、ちくま学芸文庫の4月新刊は4点。まず『中国古典小説史』は、埼玉大学名誉教授の大塚秀高(おおつか・ひでたか, 1949-)さんによる放送大学テキスト『漢文古典Ⅱ』(1987年)の改訂改題文庫化。親本の「まえがき」は新しく加えられた「あとがき」の一部として移設されています。帯文に曰く「『荘子』から『水滸伝』『紅楼夢』まで、独特の展開を遂げた歴史を知るための概説書」。「あとがき」によれば「本文に補注をいくつかいれ、評も一部に修正と増補を加えている。もちろん「てにをは」や誤字脱字についても修正した」とのことです。

★『ことばの学習のパラドックス』は、中公新書の共著書『言語の本質』が昨年大きな話題を呼んだ慶応義塾大学教授の今井むつみ(いまい・むつみ, 1958-)さんの初の単独著(共立出版、1997年)の文庫化。著者自身による「ちくま学芸文庫版あとがき」と、早稲田大学准教授の佐治伸郎さんによる文庫版解説「ことばの習得研究はどこからきてどこへいくのか」が加えられています。帯文に「著者独自の画期的な研究はここから始まった」とありますが、今井さんご自身も新しいあとがきで「本書は私の初の著作であり、研究の原点である」と述べられています。

★『江戸の都市計画』は、都市史がご専門の鈴木理生(すずき・まさお, 1926-2015)さんの同名著書(三省堂、1988年)の文庫化。帯文に曰く「東京の〈原形〉はどのようなものだったのか。水辺の地理と歴史から読む運河都市の成立」。文庫版解説「いくつもの「原形」の上に――鈴木理生の隠れた代表作」は、金沢工業大学講師の髙橋元貴さんによるもの。

★『古代技術』は、ドイツの古典文献学者ヘルマン・ディールス(Hermann Diels, 1848-1922)による講演録『Antike Technik』第3版(Teubner, 1924)の訳書(SD選書:鹿島出版会、1970年)の文庫化。「ギリシア人の科学と技術」「古代の戸と錠」「蒸気機械、自動装置、賃金表示機」「古代の通信術」「古代の飛び道具」「古代の化学」「古代の時計」の全七講です。巻末解説は、東京大学大学院准教授の三村太郎さんによる「古代ギリシア科学技術史の始まり」。言うまでもありませんが、ディールズはクランツとともに『ソクラテス以前哲学者断片集』(岩波書店)の共編者として高名です。


# by urag | 2024-04-07 23:24 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2024年 04月 05日

「週刊金曜日」に石川義正『存在論的中絶』の書評掲載

「週刊金曜日」2024年4月5日号に、月曜社12月刊、石川義正『存在論的中絶』の書評「「考える」営みの衝撃に向き合う思想エッセイ」が掲載されました。評者は批評家の高原到さんです。「著者が、自らの実存と深い哲学的思考の交差点に見出す「存在論的中絶」という概念は、既成の思考を鋭く批判しつつ、生をラディカルに肯定する。〔…〕本書の凄みに圧倒された」と評していただきました。

# by urag | 2024-04-05 11:42 | 書評・催事・広告 | Comments(0)
2024年 04月 04日

月曜社5月新刊:谷川雁『筑豊からの報告――大正行動隊から退職者同盟へ』坂口博解説解題

2024年5月17日取次搬入予定 *人文・思想

筑豊からの報告――大正行動隊から退職者同盟へ
谷川雁[著] 坂口博[解説・解題]
月曜社 本体3,600円 46判(縦188mm×横130mm×束幅23mm、重量365g)並製392頁
ISBN:978-4-86503-189-8 C0010

奇妙な村(サークル村)から奇妙な労働運動へ。大正行動隊と退職者同盟(退職者の労働組合という奇妙な逆説)は現在に何を問うのか。谷川雁と大正炭鉱闘争による60年代の鮮烈な戦闘の思想と軌跡、そして激しい内的葛藤をよみがえらせる。単行本未収録作多数。「生命の保障さえない炭鉱労働の現場に対して、会社をつぶすことも厭わなかった。つまり、資本主義の論理ではなく、労働者の論理・モラルで、炭鉱資本の退場を促していったのだ。この「奇妙な労働運動」には、また、さまざまな事件・出来事が付帯している」(解説より)。

目次(★印は単行本未収録;ただし、八木俊樹氏編集による限定私家版『無(プラズマ)の造形』1976年は単行本に数えていない)
 奇妙な醜悪さ
 アピール 大正炭坑の闘争について ★
 ここに酒あり
 北九州労働者「手をにぎる家」 建設案 ★
 戦闘の思想的土台
 大正炭鉱の概況――筑豊のヤマの発火点 ★
 百時間――大正行動隊の手記
 前線からの報告――山崎里枝殺害事件と山崎一男の死など ★
 地獄のヤマでは働かない――大正炭鉱闘争の現況
 労働者生活の根底を探求し 変革するために――「手をにぎる家」建設の思想 ★
 死神の目と乱視の目――九州からの報告と訴え ★
 大正からの報告(文=森崎和江) ★
 大正からの報告
 退職主義ともいうべき闘いの思想――大正炭鉱からの報告 ★
 報告・大正闘争――完全に倒立させられた三池が、ここにある
 〝退職主義〟の発火――筑豊・大正からの報告
 大正からの報告
 九州報告/闘いの総括――総括会議の討論 ★
 文学の階級性 ★
 巨人伝説の城のまえで――八幡製鉄 ★
 熱い泥の激突――三池で感じること
 反暴力
 ミイケはどこへいったか
 私のなかの〝死〟――三池の死者は我々のなかに孕まれていた ★
 原基体としての労働者組織――三池の死者たちを撃つために
 暗黒を知る者のゆたかさを――土門拳写真集「筑豊のこどもたち」から ★
 鉱害模様――筑豊に生きる 1 ★
 川筋けんか仕法――筑豊に生きる 2 ★
 若者以前――筑豊に生きる 3 ★
 釜一つ、鍋一つ――筑豊に生きる 4 ★
 『はたらくひと』の春――筑豊に生きる 5 ★
 奇妙な試み ★
解説「奇妙な労働運動」(坂口博)
解題(坂口博)

谷川雁(たにがわ・がん)1923年熊本県水俣市生まれ。95年没。45年、東京大学文学部社会学科卒業。8カ月の従軍。58年、森崎和江、上野英信、石牟礼道子らと「サークル村」を福岡県中間市で創刊。60年、中間市の大正炭坑を拠点に大正行動隊を組織。初期重要作『原点が存在する』『工作者宣言』『戦闘への招待』『影の越境を越えて』は月曜社より復刊(解説・解題 坂口博)。

坂口博(さかぐち・ひろし)1953年佐賀県伊万里生まれ。滝沢克己、キェルケゴールなどの哲学および文学書の出版に携わる。著書に『校書掃塵』(花書院)、共編著に『「サークルの時代」を読む』(影書房)、共著『〈原爆〉を読む文化事典』(青弓社)など。

アマゾン・ジャパンHMV&BOOKSonline、にて予約受付中。

月曜社5月新刊:谷川雁『筑豊からの報告――大正行動隊から退職者同盟へ』坂口博解説解題_a0018105_16595816.jpg


# by urag | 2024-04-04 17:01 | 近刊情報 | Comments(0)