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2026年 03月 23日
★最近出会いのあった新刊を列記します。まもなく店頭発売開始の本も含みます。 『ゲンロンy 創刊号』植田将暉/五月女颯/森脇透青/栁田詩織(編集委員)、ゲンロン、2026年3月、本体2,800円、A5変形判並製384頁、ISBN978-4-907188-68-9 『文学は割に合う!』アントワーヌ・コンパニョン(著)、本田貴久(訳)、作品社、2026年3月、本体2,700円、四六判並製248頁、ISBN978-4-86793-126-4 『情理論――思想と文芸の基層』伊藤益(著)、法政大学出版局、2026年3月、本体4,000円、四六判並製444頁、ISBN978-4-588-13046-5 『ロンリー・ロンドナーズ』サミュエル・セルヴォン(著)、星野真志(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2026年3月、本体2,900円、四六変型判上製256頁、ISBN978-4-86488-344-3 ★『ゲンロンy 創刊号』は発売済。『ゲンロン』誌の姉妹誌の創刊号です。編集委員4氏は90年代生まれ。執筆陣は80年代生まれからゼロ年代生まれまで。版元紹介文に曰く「世界がツイートとスワイプで動く時代に、雑誌にはなにができるか。わたしたちの文化を再定義する特集1〈令和カルチャー!〉、戦争の時代に「思想」の使命を問う第2特集〈帝国をつくろう〉。そして、瀬戸内海から日本の未来をウォッチする小特集〈瀬戸内海未来主義〉まで。新進気鋭の著者たちによる、21世紀を見通すための総合雑誌をおとどけします」。 ★個人的には、第二特集に掲載された、東京大学東洋文化研究所特任研究員の石橋直樹さんによる「「天球」から「怪物」へ──国学の図像的想像力」に強く惹かれました。創刊号から投稿論文枠があり、4篇が掲載されていますが、応募は63篇あったとのことです。巻末の広告欄「ゲンロンの軽出版」では刊行予定として『ゲンロンy落選論文集(仮)』が予告されています。 ★『文学は割に合う!』はまもなく発売。ベルギー生まれのフランスの文芸批評家でコレ─ジュ・ド・フランス教授のアントワーヌ・コンパニョン(Antoine Compagnon, 1950-)の著書『La littérature, ça paye !』(Les Équateurs, 2024)の全訳。帯文に曰く「世界にはびこる文系不要論に抗し、人間的な豊かさをはぐくむための文学の有用性を説くのみならず、その市場価値にまであえて踏み込み、「長期的投資」「遅れてくる利子」としての意義を強調する。フランス文学界の碩学による、抒情的な思索とアイロニカルな語り口に満ちた唯一無二の書。本を読み、考えるという営みの肯定」。 ★本書から引きます。「私たちの生きる〈現代の世界〉における文学の立場を弁護するために、『文学は割に合う!』という、まるで軍旗をはためかすかのように戦闘的で強気な、そしてややもすると挑発的なタイトルを付けました。今日、文学やその価値、効力、有効性、未来を疑うひとびとが、同僚である大学教員や同志である作家、そしてわたしの読者のなかにも出てきているのだと実感しています。この文學への疑いを端的に要約すると「文学は得にならない、あるいはもう得にならなくなるだろう」ということになります」(5頁)。「「文学は割に合う!」というスローガンにはふたつの意味があると考えています。ひとつは、「作者にどれほどの利益をもたらすのか」、もう一方は「読者にどれほどの利益をもたらすのか」という意味です」(7頁)。 ★「文学・哲学だけでなく、美術、映画、画面上のたくさんのコンテンツも含めた教養は、仕事における目先の作業から距離をとり、自らを客観視し、外部と内部とに同時に存在しながら自らを見つめ、人生を変えるための手助けをしてくれます。もともとのキャリアを超え出るため、方向を変えるため、関連分野へと分化していくため、新しいチャンスをとらえるためには、教養が不可欠なのです。一般教養がもたらすものとは、洞察力とか直感力という別種の知性です。これは優れた犬や狐にみられる勘に近いものなのです。鋭い勘は生まれつきではなく、読書によって養われるものであり、読書は他の経験への入り口となります。読書は勘を養ってくれるのです。困難を切り抜け、立て直すのにこれほど必要なものはないのです」(第14章「すべてのひとのための文学」118~119頁)。 ★なお、本書の端緒となる2012年のコンパニョンの来日講演「文学は割に合う」は、月刊誌『群像』2012年9月号に中地義和さんの訳で掲載されています。 ★『情理論』はまもなく発売。筑波大学名誉教授で日本倫理思想がご専門の伊藤益(いとう・すすむ, 1955-)さんによる書き下ろし。帯文に曰く「西洋哲学と東洋的論理の両者に通じる著者が、物語、理性、神話、理念、文芸、性愛、仏法の各主題から、私たちを統べる情と理の働きをいかなる幻想もなしに照らし出す。ものごとに即して思索しうるための必読書」。 ★「国が滅ぶという局面に先駆けて、哲学が滅びようとしているのかもしれない。この国のあらゆる分野における退行現象を踏まえつつ、「日本の哲学」を打ち建てようと努めてきた数少ない研究者の一人として、筆者はこの論考を、至極単純な一言を以て締めくくりたい。すなわり、情性を理路を以て組み立てる情理のはたらきに身を委ねようとする努力を怠れば、いかにロゴスとしての理性を研ぎ澄まそうとも、人間性の本然の態様は見落とされる、という一言を以て」(第七章「仏法論」432頁)。 ★『ロンリー・ロンドナーズ』はまもなく発売。ルリユール叢書第58回配本(77冊目)。トリニダード生まれの英国の黒人作家サミュエル・セルヴォン(Samuel Selvon, 1923–1994)の小説『The Lonely Londoners』(1956年)の訳書。帯文に曰く「クレオール英語の特異な文体で、ロンドン移民の苦境の現実と夢を「都会のブルース」として描き、イギリス社会をユーモラスに風刺する「黒い大西洋(ブラック・アトランティック)」の傑作小説。本邦初訳」。ルリユール叢書次回配本は4月、本田博之訳『シラー戯曲傑作選 群盗――戯曲と悲劇』。「1781年匿名出版の『群盗――戯曲』と、熱狂を生んだ82年改稿版『群盗――悲劇』の両版を収録。本邦初訳の「初版序文」も加え、天才劇作家の原点に迫る決定版」とのことです。 ★最近出会いのあった、平凡社さんの既刊書を列記します。 『文献集――中国学の先人と漢籍のはなし』井上進(著)、平凡社、2026年2月、本体4,300円、4-6判並製344頁、ISBN978-4-582-83998-2 『食の欲望論――生存から快楽、そして情報へ』小林哲/藤本憲一(編)、公益財団法人味の素食の文化センター(企画)、食の文化フォーラム:平凡社、2026年2月、本体3,000円、4-6判並製288頁、ISBN978-4-582-83996-8 『明治の貸本屋さん』松永瑠成(著)、ブックレット〈書物をひらく〉:平凡社、2026年2月、本体1,500円、A5判並製96頁、ISBN978-4-582-36477-4 『「忠臣」創出――戦国武将標葉氏の近代』西村慎太郎(著)、ブックレット〈書物をひらく〉:平凡社、2026年1月、本体1,500円、A5判並製96頁、ISBN978-4-582-36476-7 『調べてみよう! 国際交流(3)SDGs』澤井陽介(監修)、2026年2月、本体3,500円、A4変型判上製32頁、ISBN978-4-582-72413-4 『調べてみよう! 国際交流(2)文化』澤井陽介(監修)、2026年2月、本体3,500円、A4変型判上製32頁、ISBN978-4-582-72412-7 『調べてみよう! 国際交流(1)スポーツ』澤井陽介(監修)、2026年1月、本体3,500円、A4変型判上製32頁、ISBN978-4-582-72411-0 『まいあ Maia―SWAN actⅡ― 完全版 第3巻』有吉京子(著)、平凡社、2026年1月、本体1,400円、4-6判並製264頁、ISBN978-4-582-28887-2 ★『文献集』は、序言に曰く「伝統中国が生み出した書物の数々、いわゆる漢籍に関する話と、漢籍を博く精しく読むことで中国の伝統文化を研究すると同時に、研究対象たる中国の伝統文化に深く魅入られていった浅学の話から」なる、とのこと。名古屋大学名誉教授で東洋史学者の井上進(いのうえ・すすむ, 1955−)さんが各媒体で1998年から2025年にかけて各媒体で発表してきた論文や講演記録、14本をまとめた一書です。 ★『食の欲望論』は論文集。「「食の欲望」をテーマに、人間と食の複雑な関係に迫った2024年度〈食の文化フォーラム〉の記録本」(版元紹介文より)。「食の欲望の人類史」「なぜ人は〈食べ過ぎる〉あるいは〈食べることを拒否する〉のか」「食の欲望はどこへ向かうのか」の三部構成で、「人類学・心理学・食品科学・歴史学といった多角的な視点から、食の欲望の起源とその変容を考察する。さらに、健康志向やフードテック、宇宙食、SNSの「映え」文化など、現代から未来へと広がる食のかたちにも目を向ける」(同)。目次詳細は書名のリンク先をご確認ください。 ★ブックレット〈書物をひらく〉の第36巻と第37巻が発売となりました。過去は単なる過去ではなく、未来を見遥かす手がかりとなることを教える、素晴らしいシリーズです。各巻のカバーソデ紹介文によれば、『「忠臣」創出』は、「福島県浪江町の一角に立つ「標葉公忠勲之碑」、南朝顕彰の碑が建っている。しかしその基になったのは、南北朝のはるか後代、十五世紀末に滅亡した戦国武将である。どんな歴史の事実が、いつ、なぜ、どのように、かくも読み替えられたのか。小さい地域の深い歴史」。『明治の貸本屋さん』は、「購入するよりも安価に読み物を楽しむことのできる貸本屋の仕組み、江戸時代に端を発したこの業態は、明治時代にどのように継続し、また変容したのか。実態を示す資料が乏しいなかで、貸本事態に貼られて残る貸本規則や蔵書目録、補強に使われた営業文書の反故紙、また引札や新聞広告、新聞記事、貸本印から起業手引書まで、あらゆる資料・痕跡から、海外在留邦人向けまであった近代貸本業の実像に迫る」。 ★『調べてみよう! 国際交流』は、国際交流を知るためのシリーズ全5巻。版元紹介文に曰く「小学生から身につけておきたい、異なる国の人々や文化の相互理解を育むためのシリーズ」で、各巻のテーマは、第1巻:スポーツ、第2巻:文化、第3巻:SDGs、第4巻:日本の国際貢献、第5巻:共生するまち。第4巻と第5巻はまもなく発売と聞きます。 ★『まいあ Maia―SWAN actⅡ― 完全版 第3巻』は、全4巻の第3巻。帯文に曰く「最上級の第1学年に進級したまいあは、恒例行事の学校祭の準備に忙しい。その後に控えるパリ・オペラ座入団私見のことも気になり始め――」。巻頭はカラー、巻末には書き下ろし番外編8頁のほか、扉絵コレクション、さらに初回出荷分限定でポストカードがついています。第4巻は4月下旬発売予定。
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by urag
| 2026-03-23 02:05
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2026年 03月 13日
月曜社新刊案内【2026年4月新刊:文芸書1点】 取次搬入予定:2026年4月8日 ジャンル:文芸・外国文学・SF 水晶の時代 ウィリアム・ヘンリー・ハドスン[著] 小澤正人[訳] 月曜社 本体3,800円 46判並製284頁(188x128x18mm) 290g ISBN978-4-86503-221-5 C0097 傷のない澄んだ水晶のような未来は、果たして楽園か否か。『ラ・プラタの博物学者』の著者として知られるハドスンによる古典的SF小説A Crystal Age(1887年)の初訳。植物採取中に崖崩れに巻きこまれた主人公は、遠い未来へと飛ばされてしまう。そこでは、大規模なカタストロフの後に築かれたとおぼしい、穏やかな農業共同体が営まれていた。19世紀のユートピア小説の代表作のひとつに数えられる、〈ポスト・アポカリプス〉の異世界を怜悧に描いた先駆的作品。叢書エクリチュールの冒険、第27回配本。 著者:ウィリアム・ヘンリー・ハドスン(William Henry Hudson, 1841-1922)アルゼンチンに生まれ、イギリスで活躍した著述家、博物学者。日本語訳には以下のものがある。エッセイに『ラ・プラタの博物学者』(原著:1892年。訳書:岩田良吉訳、岩波文庫、1934年。長澤純夫ほか訳、講談社学術文庫、1998年)、『鳥たちをめぐる冒険』(原著:1913年。訳書:黒田晶子訳、講談社学術文庫、1992年)、『はるかな国 とおい昔』(原著:1918年。訳書:寿岳しづ訳、岩波文庫、1937年)など。小説に、『緑の館』(原著:1904年。訳書:柏倉俊三訳、岩波文庫、1972年。河野一郎訳、ちくま文庫、1997年)など。 訳者:小澤正人(おざわ・まさと, 1953-)愛知県立大学外国語学部名誉教授。英文学者。著書『ユートピアの誘惑――H・G・ウェルズとユートピア思想』(三恵社、2018年)。翻訳書にダニエル・ピック『戦争の機械――近代における殺戮の合理化』(法政大学出版局、1998年)、エドワード・ブルワー=リットン『来るべき種族』(月曜社、2018年)、H・G・ウェルズ『モダン・ユートピア』(月曜社、2024年)がある。 #
by urag
| 2026-03-13 15:00
| 近刊情報
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2026年 03月 09日
★まず、まもなく発売となるちくま学芸文庫3月新刊5点を列記します。 『現代世界における日常生活』アンリ・ルフェーヴル(著)、森本和夫(訳)、ちくま学芸文庫、2026年3月、本体1,500円、文庫判400頁、ISBN978-4-480-51348-9 『社会学の技法』ハワード・S・ベッカー(著)、進藤雄三/宝月誠(訳)、ちくま学芸文庫、2026年3月、本体1,700円、文庫判480頁、ISBN978-4-480-51352-6 『ファシズムの解剖学』ロバート・パクストン(著)、瀬戸岡紘(訳)、ちくま学芸文庫、2026年3月、本体1,900円、文庫判608頁、ISBN978-4-480-51350-2 『虚偽論入門』アレックス・C・マイクロス(著)、須原一秀(訳)、ちくま学芸文庫、2026年3月、本体1,300円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-51347-2 『ウィトゲンシュタイン〔増補新版〕――言語の限界』飯田隆(著)、ちくま学芸文庫、2026年3月、本体1,600円、文庫判480頁、ISBN978-4-480-51349-6 ★『現代世界における日常生活』は、現代思潮社より1970年に刊行された、フランスの社会学者アンリ・ルフェーヴル(Henri Lefebvre, 1901-1991)の『La Vie quotidienne dans le monde moderne』(Gallimard, 1968)の訳書の文庫化。訳者はすでに逝去しており、「文庫化にあたり、明らかな誤りは適宜訂正した」(巻末編集部特記)とのことです。文庫版解説として山本千寛さんによる「ユートピアン、現代社会を定義する」が加えられています。学芸文庫でのルフェーヴルの既刊書には、今回の新刊と同じ訳者による『都市への権利』(2011年)があります。 ★『社会学の技法』は、恒星社厚生閣より2011年刊行された、米国の社会学者ハワード・S・ベッカー(Howard S. Becker, 1928-2023)の『Tricks of the Trade: How to Think about Your Research While You're Doing It』(University of Chicago Press, 1998)の全訳の文庫化。宝月さんによる「文庫版訳者あとがき」には「訳文の見直しや人名などの表記の統一や修正をおこない、できるだけ読みやすくなるように努めた」とのことです。ベッカーの訳書は複数ありますが、文庫化されるのは本書が初めてです。 ★『ファシズムの解剖学』は、桜井書店より2008年に刊行された、米国の政治学者で歴史家のロバート・パクストン(Robert O. Paxton, 1932-)の『The Anatomy of Fascism』(Knopf, 2004)の訳書の文庫化。親本と同様に、原著附録の文献案内である「Bibliographical Essay」は割愛されています。ごく短い「文庫版訳者あとがき」が付されています。巻末編集部特記によれば「文庫化にあたり、明らかな誤りは適宜訂正した」とのことです。 ★『虚偽論入門』は、昭和堂より1983年に刊行された、カナダの政治学者アレックス・C・マイクロス(Alex C. Michalos, 1935-)の『Improving Your Reasoning』(1st edition, 1970; 2nd edition, 1980)の訳書の文庫化。訳者はすでに逝去しており、「文庫化にあたり、明らかな誤りは適宜訂正し、固有名詞など一部表記を現代的なものに改めたほか、各章・節の見出しに原語の表記を付記した」(巻末編集部特記)とのことです。東京大学大学院准教授の植原亮さんによる「解説と読書案内」が加えられています。 ★『ウィトゲンシュタイン〔増補新版〕』は、「ちくま学芸文庫版あとがき」によれば「1997年にシリーズ「現代思想の冒険者たち」の1冊として講談社から出版され、そのあと2005年に新装版が出たものに、わずかの改訂を加え、補章「21世紀のウィトゲンシュタイン」を付け加えたものである。ただし、「読書案内」は、現在簡単に手に入るものを中心にして、完全に書き直した」と。同シリーズからは複数の書目が各社で文庫化されてきたのは、周知の通りです。 ★次に、最近出会いのあった新刊を列記します。共和国さんの久しぶりの新刊、東洋文庫の既刊、作品社さんの新刊および復刊、月刊「現代思想」3月号です。 『わたしはどこに』片山郷子(著)、共和国、2026年2月、本体1,800円、四六判並製208頁、ISBN978-4-911729-03-8 『クレムスの曲がりくねる時間』クラウディオ・マグリス(著)、二宮大輔(訳)、共和国、2026年1月、本体2,200円、四六変形判上製144頁、ISBN978-4-907986-28-5 『尹致昊日記(9上)1925-1929年』尹致昊(著)、木下隆男(訳注)、東洋文庫:平凡社、2026年1月、本体4,500円、B6変型判上製函入364頁、ISBN978-4-582-80931-2 『尹致昊日記(9下)1930-1931年』尹致昊(著)、木下隆男(訳注)、東洋文庫:平凡社、2026年1月、本体4,300円、B6変型判上製函入272頁、ISBN978-4-582-80932-9 『かたちのない民藝をもとめて』表萌々花(著)、作品社、2026年3月、本体2,700円、四六変型判並製232頁、ISBN 978-4-86793-131-8 『私たちが刈り取った男たち』ジェスミン・ウォード(著)、石川由美子(訳)、作品社、2026年2月、本体2,700円、四六判並製288頁、ISBN978-4-86793-134-9 『李箱作品集成 増補新版』李箱(著)、崔真碩(編訳)、作品社、2026年2月、本体5,400円、46判上製432頁、ISBN978-4-86793-132-5 『川辺の風景 新装版』朴泰遠(著)、牧瀬暁子(訳)、作品社、2026年1月、本体5,400円、46判上製440頁、ISBN978-4-86793-129-5 『現代思想2026年3月号 特集=〈野生〉とのつきあい方――狩猟文化、家畜化の歴史から現代のクマ問題まで』青土社、2026年2月、本体1,800円、A5判230頁、ISBN978-4-7917-1494-0 ★『わたしはどこに』は、小説家で詩人の片山郷子(かたやま・きょうこ, 1937-)さんの作品集。帯文に曰く「完全に視力を喪失した作者自身の不安な日常を描く最新作「わたしはどこに」のほか、代表作「ガーデナの家族」、出色の短篇「柿の木」を併録。「網膜色素変性症」という困難に翻弄されつつ、失明者として文字をつむぐ稀有な作品集」。『クレムスの曲がりくねる時間』はシリーズ「境界の文学」の最新刊。イタリアの作家で文学研究者のクラウディオ・マグリス(Claudio Magris, 1939-)の短篇集『Tempo curvo a Krems』(Garzanti, 2019)の全訳。トリエステを舞台にした5作品「管理人」「音楽のレッスン」「クレムスの曲がりくねる時間」「文学賞」「ロザンドラ谿谷――外・日中」を収録。 ★『尹致昊日記(9上)1925-1929年』『尹致昊日記(9下)1930-1931年』は、平凡社「東洋文庫」の第931番と第932番。全11巻予定の、第9分冊上下巻です。帯文によれば、上巻は「1926年6月の李朝最後の皇帝純宗の御第葬以後、総督府の支配体制は固まり、朝鮮の日本化が進む。朝鮮YMCAは太平洋問題調査会を通じて朝鮮の独自性を維持する道を模索するが……」。下巻は「世界恐慌下の1930年、朝鮮は空前の豊作飢饉に喘ぐ。朝鮮YMCAの農村改良運動は破綻し南北地域対立へ発展。翌31年、満州事変が勃発すると日本の軍国主義の渦に巻き込まれていく」。次回配本は今月3月発売予定、柿沼陽平訳注『岳麓書院蔵秦簡 「為吏治官及黔首」訳注――秦の官吏かくあるべし』。 ★作品社さんの新刊既刊4点。『かたちのない民藝をもとめて』は、まもなく発売。写真家の表萌々花(おもて・ももか, 1998-)さんによる、「訪れた土地の民藝品や手しごとの源流をたどるなかで触れた人々の祈りや想いを綴った、約十年の旅の記録」。メキシコ、ベトナム、モロッコ、エチオピア、ケニア、アイスランド、スペインなど。カラー写真多数。美しい造本設計は山口日和さんによるものです。 ★『私たちが刈り取った男たち』は、米国の作家ジェスミン・ウォード(Jesmyn Ward, 1977-)の回想録『Men We Reaped』(2013年)の訳書。「最愛の弟をはじめとする、五人の親しい男たちの相次ぐ早世。自身と家族たち、仲間たちの苦悩と苦闘。そして、アメリカ南部で黒人として生きていくことの困難。全米図書賞を二度受賞した、現代アメリカ文学最重要の作家による、痛切なメモワール」(帯文より)。別刷附録として、青木耕平さんによる解説「未来と過去が交わるところ――ジェスミン・ウォードの幽霊たち」がPDFで公開されています。 ★『李箱作品集成 増補新版』は、2006年刊の訳書の増補復刊。巻末に加わった「増補新版への訳者あとがき」によれば、「復刊するに当たり、訳文と訳註と解説を改めて見直して加筆・修正したが、李箱の代表作である朝鮮語詩「烏瞰図」(1934年)を新たに翻訳・収録した」とのこと。帯文はこうです。「朝鮮を代表するモダニズム文学者にして、京城のモダンボーイ。難解、天才、異常……謎多き作家・李箱(イ・サン)の全貌を明らかにする作品集、待望の復刊」。李箱(イ・サン, 1910-1937)はソウル生まれの作家。1936年に渡日、翌年に思想犯の嫌疑で警察に拘禁。釈放後に病没、26歳の若さでした。 ★『川辺の風景 新装版』は、2005年刊の訳書の新装復刊。巻末には「新装版のための訳者あとがき」が加わっています。「植民地朝鮮・ソウルの下町、清渓川(チョンゲチョン)の川辺に生きる市井の人々を活写する、全五十章の壮大なパノラマ。精緻な描写で庶民の哀歓を綴った韓国近代文学の金字塔、待望の新装復刊」。著者の朴泰遠(パク・テウォン, 1909-1986)はソウルに生まれ、日本に留学し、朝鮮戦争の折に北朝鮮に渡った作家。来月(2026年4月)には、平凡社より自伝的小説『小説家仇甫氏の一日』(山田佳子訳)が発売予定。挿絵は李箱によるもの。 ★『現代思想2026年3月号 特集=〈野生〉とのつきあい方』は、「「野生」をキーワードに、生態学、人類学から倫理、文学まで多様な視点からこの思想的課題への応答を模索する」(版元紹介文より)。中沢新一さんのインタヴューや、奥野克巳さんと渡邉悟史さんによる討議のほか、15篇の論考を収録。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。今月3月末発売予定の4月号の特集は「教育は誰のためか――特別支援教育・いじめ問題・子どものメンタルヘルス…」と予告されています。
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by urag
| 2026-03-09 03:48
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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2026年 03月 02日
★まず、文庫化されていた現代思想のベストセラーが、著者の生誕100年および没後30年で再単行本化された件です。 『千のプラトー ――資本主義と分裂症』ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ(著)、宇野邦一/小沢秋広/田中敏彦/豊崎光一/宮林寛/守中高明(訳)、河出書房新社、2026年2月、本体8,800円、A5判上製712頁、ISBN978-4-309-23176-1 『アンチ・オイディプス――資本主義と分裂症』ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ(著)、宇野邦一(訳)、河出書房新社、2025年12月、本体6,500円、A5判上製472頁、ISBN978-4-309-22983-6 ★ドゥルーズ+ガタリ『資本主義と分裂症』の第1巻と第2巻は河出書房新社ではまず単行本として刊行されました。第1巻『アンチ・オイディプス』は市倉宏祐訳が1986年に全1巻の単行本で発売され、2006年に宇野邦市さんの新訳で文庫上下巻が刊行されました。昨年12月に、宇野版が愛蔵版全1巻で単行本化。巻末の「一巻本への訳者あとがき――半世紀後の『アンチ・オイディプス』」によれば、「この機会に改めて全文を読みなおし、改訳というほどではないが、訳文を推敲することにした」とのこと。 ★宇野さんはこうお書きになっています。「『アンチ・オイディプス』の提案は、きわめてつつましく細心にして、きわめて野心的だ。あらゆる(内部の)抑圧、(外部の)抑制を厳密に批判しようとしたからだ。ここには正義も信条も方針も示されていないので、〈左翼〉の本としてはあまりにアナーキーに見える。仕方なく〈右翼〉の本として扱う人々も現れた。この本の〈扱い〉は難しいが、ごく単純でもある。最初のページから現れる数々の〈叫び〉や〈兆し〉に敏感であることだけが必要だ。(他にも数々ある)このような本に誰も反応しなくなり、その思考がただ無意味として葬り去られるとき、無世界・砂漠化の完成のときだろう」(462~463頁)。 ★第2巻『千のプラトー』は6氏による共訳で全1巻の単行本が1996年に発売され、2010年に上中下巻で文庫化されました。文庫化に際して訳文を推敲したことが「文庫版への訳者あとがき」に書かれています。今般愛蔵版全1巻が刊行され、宇野さんによる「一巻本への訳者あとがき――内容と表現、アレンジメント」によれば「訳文の細部を推敲し」、「序――リゾーム」での訳文の脱落を補い、第2章「1914年――狼はただ一匹か数匹か」と第3章「BC10000万年――道徳の地質学(地球はおのれを何と心得るか)」の冒頭が改稿されているとのことです。 ★宇野さん曰く「人類の叡智の成果だったかもしれない政権、市場、企業、技術は、ますます制御不可能な愚かさや暴力を生産し続ける。しかしアレンジメントという特異で凡庸な「連合」の数々、その果てしない「系譜」、それによる永久革命も絶えることがない。革命でも反革命でもない永久革命は、決して死語ではなく、ユートピアでもない。『千のプラトー』は『アンチ・オイディプス』とともに、そのための過剰に開かれた本であり続ける」(703頁)。 ★さいきん出会いのあった2月新刊を列記します。 『生きることを忘れるなかれ――ゲーテと精神的修練の伝統』ピエール・アド(著)、村松正隆(訳)、叢書ウニベルシタス:法政大学出版局、2026年2月、本体3,500円、四六判上製264頁、ISBN978-4-588-01195-5 『季刊 農業と経済 2025年秋号(91巻4号)』英明企画編集、2025年11月、本体1,700円、A5判並製270頁、ISBN978-4-909151-67-4 『グリーンランド〈増補新版〉――人文社会科学から照らす極北の島』高橋美野梨(編)、井上光子/小澤実/ウルリック・プラム・ガド/須藤孝也/高橋美野梨/中丸禎子/本多俊和(スチュアートヘンリ)/イーリャ・ムスリン/ソアン・ルド(著)、藤原書店、2026年2月、本体3,300円、四六判並製432頁、ISBN978-4-86578-489-3 『後藤新平の処世訓〈現代語訳〉』後藤新平(述)、平木白星(編)、楠木賢道(編・解説)、藤原書店、2026年2月、本体2,600円、A5判上製232頁、ISBN978-4-86578-490-9 『反メリトクラシー ――新自由主義と平等の神話』ジョー・リトラー(著)、河野真太郎(訳)、人文書院、2026年2月、本体3,800円、四六判並製366頁、ISBN978-4-409-24177-6 『トランスインペリアル・ヒストリー ――植民地主義への新たな視座』水谷智/馬路智仁/山田智輝(編)、人文書院、2026年2月、本体7,500円、A5判上製400頁、ISBN978-4-409-51123-7 『新自由主義権力と抵抗』佐藤嘉幸(著)、人文書院、2026年2月、本体2,800円、四六判並製240頁、ISBN978-4-409-04135-2 ★『生きることを忘れるなかれ』は、フランスの哲学者、歴史家、文献学者のピエール・アド(Pierre Hadot, 1922-2010)の著書『N'oublie pas de vivre : Goethe et la tradition des exercices spirituels』(Albin Michel, 2008)の全訳。帯文に曰く「ギリシャの哲学からニーチェへと受け継がれる系譜にゲーテを位置づけ、〈現在〉の瞬間への集中、〈高みからの眼差し〉を通じた世界の俯瞰、詩篇「始源の言葉」の〈希望〉、〈運命への愛〉という四つの主題から鮮やかに読解する」と。 ◎ピエール・アド既訳書 2020年01月『イシスのヴェール――自然概念の歴史をめぐるエッセー』小黒和子訳、叢書ウニベルシタス:法政大学出版局;原著2004年刊。 2021年12月『生き方としての哲学――J・カルリエ、A・I・デイヴィッドソンとの対話』小黒和子訳、叢書ウニベルシタス:法政大学出版局;原著2002年刊。 2022年06月『ウィトゲンシュタインと言語の限界』合田正人訳、古田徹也解説、講談社選書メチエ:講談社;原著2004年刊。 ★『季刊 農業と経済 2025年秋号(91巻4号)』の特集は「食料価格「危機」をいかに乗り越えるか──安定した生産・供給・消費のために」で、「価格高騰で逼迫する食と暮らし」「「令和の米騒動」の生産・流通裏事情」「「農業者適正価格」と「消費者適正価格」とを近づける」の三部構成です。扉に掲出された紹介文に曰く「なぜ食料価格が上がったのか、どうすれば下がるのか」という消費者の疑問に答えることをめざし、食料価格「危機」の要因と対策について解説する」と。 ★藤原書店さんの2月新刊2点。『グリーンランド〈増補新版〉』は、2023年に刊行された論文集の増補新版。帯文によれば「トランプが執拗に狙う「グリーンランド」とは?「東と西」、「自然と人間」の混淆する極北の島を多角的に描いた画期的論集に、デンマーク/グリーンランドの未来を問う特別論考を緊急増補」とのこと。『後藤新平の処世訓〈現代語訳〉』は、帯文に曰く「台湾・満洲での活躍を経て初入閣、注目を集めていた1911年、54歳の後藤新平の言行からピックアップしてまとめられた100篇余の処世訓・人生訓を、全面的に現代語訳し注を付して刊行」。 ★人文書院さんの2月新刊3点。『反メリトクラシー』は英国の社会学者で文化理論家、ロンドン大学ゴールドスミス校教授のジョー・リトラー(Jo Littler, 1972-)の著書『Against Meritocracy: Culture, Power and Myths of Mobility』(Routledge 2018)の全訳。表4帯文に曰く「メリトクラシー〔能力主義〕という言葉の来歴を概観した上で、歴代の英国首相のスピーチからセレブたちの言動まで、多岐にわたるメディア・文化を分析。私たちの日常や社会制度がいかに新自由主義的メリトクラシーの論理に浸されているのかを鮮やかに捉えた、第一級のカルチュラル・スタディーズ」。リトラーの既訳書には、「ケア・コレクティヴ」名義の共著書『ケア宣言──相互依存の政治へ』(岡野八代/冨岡薫/武田宏子訳、大月書店、2021年)があります。 ★『トランスインペリアル・ヒストリー』は論文集。帯文に曰く「帝国の〈はざま〉から植民地主義の歴史を再考する。〔…〕支配と抵抗をめぐる協力や競合、連関――複数の帝国の同時代的な関係性を立体的に捉えなおす画期的研究」。「異民族統治をめぐる〈比較のポリティクス〉」「帝国の〈はざま〉における経験――移動・帰属・入植」「トランスインペリアルな被支配経験――もつれあう抵抗と連帯」の三部構成。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。『新自由主義権力と抵抗』は、版元ウェブサイトでの特記によれば「『新自由主義と権力』(2009年)の内容を大幅に変更し、題名を改めたもの」。序論が公開されています。
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by urag
| 2026-03-02 01:04
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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2026年 02月 27日
「週刊読書人」2026年2月27日号の6面、学術文化欄に、月曜社10月刊、ヴェルナー・ハーマッハー『ベンヤミン読解』(清水一浩編訳)に対する書評「ベンヤミンの思考を明晰に理解する――繰り返し立ち止まり反芻する「読む」という行為」が掲載されました。評者は京都大学准教授の小林哲也さんです。「「読む」という行為が、出来合いの情報をインプットすることではなく、「理解しようとする」ために繰り返し立ち止まりながら反芻する行為であることを、ハーマッハーは思い出させてくれる」と評していただきました。 #
by urag
| 2026-02-27 16:04
| 書評・催事・広告
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