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2019年 05月 22日

注目新刊:アガンベン『オプス・デイ』、大谷能生『平成日本の音楽の教科書』、ほか

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『瀆神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
「ホモ・サケル」シリーズ第Ⅱ部第5巻の『Opus Dei. Archeologia dell'ufficio. Homo sacer II, 5』(Bollati Boringhieri, 2012)の訳書が以文社さんからまもなく発売となります(5月24日取次搬入予定)。オプス・デイ(神のわざ)は「典礼」を意味するカトリック教会の専門用語です。

オプス・デイ――任務の考古学
ジョルジョ・アガンベン著 杉山博昭訳
以文社 2019年5月 本体3,800円 四六判上製viii+264頁 ISBN978-4-7531-0353-9
帯文より:なぜ、倫理は義務となったのか? カント以来の現代倫理に導入された、負債と徳性に基づく「義務」の無限性。キリスト教における任務=聖務、典礼への考察を通じて、当為(べき)と命令(せよ)から構成される存在の統治を明らかにする、ジョルジョ・アガンベン「ホモ・サケル」シリーズの1冊。

目次:
端書
1 典礼と政治
 閾
2 秘儀から効果へ
 閾
3 任務の系譜学
 閾
4 ふたつの存在論、あるいは、いかに義務は倫理になったのか
 閾

訳者あとがき

端書より:「任務という概念は、存在論のカテゴリーと実践をめぐるカテゴリーの決定的な変換を指し示す。この変換の重要性についてはさらなる評価がまたれる。ただ任務のもとで存在と実践は、言い換えるなら、人間が在ることと人間が為すことは、不分明なひとつの圏域に入る。この圏域のなかで、存在は実際的効果にとって解体されるだけに留まらない。完全なる循環性のもと、存在は在らなければならないものであり、かつ、存在は在るものでなければならなくなる。有為性と実効性が存在論的パラダイムを定義するのは、この意味においてである。世俗的プロセスをかいして、このあらたなパラダイムは古代哲学のパラダイムに取って代わるだろう。つまるところ、在ることについてもはたらくことについても、今日のわたしたちが手にする表象は実効性のほかになにもない。これが本書の提示する考察の主題である。現実とはたんに有効ななにかである。現実とは統治するものである。現実とは効力のあるものである。現実とは任務をして、官僚のつつましい服装や祭司の栄光に満ちた法衣のもとに、倫理学だけでなく形而上学の規則さえも完全に転倒させてしまうほどの効果を上げるものである」(iii-iv頁)。

★大谷能生さん(著書『貧しい音楽』)
新曜社さんより単独著と共著が今月同時発売されました。内容紹介文や目次は書名のリンク先でご確認いただけます。

平成日本の音楽の教科書
大谷能生著
新曜社 2019年5月 本体1,600円 四六判並製288頁 ISBN978-4-7885-1613-7
まえがきより:この本では、おもに平成時代の音楽の教科書をたどりながら、また、随時、文部科学省の「教育指導要領」を参考にしながら、その内容を確認し、わたしたちの「音楽」と「教科書」というものがどのように関係しているのか、そして、それをどのように使えば、つまり、それをどのように教えて、あるいはどのように教われば、「音楽」を自分たちのものとして演奏したり、聴くことができるようになるのか。そんなことについて考えてみることを、ひとつの目標にしました」(6~7頁)。

身体と言葉(ことばとからだ):舞台に立つために──山縣太一の「演劇」メソッド
山縣太一+大谷能生著
新曜社 2019年5月 本体1,500円 四六判並製240頁 ISBN978-4-7885-1612-0
山縣太一(チェルフィッチュ)さんのまえがきより:誰もが身体を使って生きています。言葉の葉っぱも身体から生えます。そして演劇では言葉と身体は音や明かりや舞台美術よりも大事なんです。そんな僕のたどりついた演劇の可能性を本にしました。この本は僕の演劇のパートナー、僕の表現の理解者である大谷能生さんといっしょに作りました」(3~4頁)。

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# by urag | 2019-05-22 12:42 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 21日

ブックツリー「哲学読書室」に斎藤幸平さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『大洪水の前に――マルクスと惑星の物質代謝』(Νυξ叢書、堀之内出版、2019年4月)の著者、斎藤幸平さんによるコメント付き選書リスト「マルクスと環境危機とエコ社会主義」が「哲学読書室」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義

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# by urag | 2019-05-21 14:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 20日

注目新刊:チェア/ウィリアムズ『アウシュヴィッツの巻物 証言資料』、ほか

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アウシュヴィッツの巻物 証言資料』ニコラス・チェア/ドミニク・ウィリアムズ著、二階宗人訳、みすず書房、2019年5月、本体6,400円、A5判上製416頁、ISBN978-4-622-08703-8
『現代「液状化社会」を俯瞰する――〈狂気の知者〉の饗宴への誘い』ウンベルト・エコ著、谷口伊兵衛/G・ピアッザ訳、而立書房、2019年5月、本体2,400円、A5判上製224頁、ISBN978-4-88059-413-2 
理性の病理――批判理論の歴史と現在』アクセル・ホネット著、出口剛司/宮本真也/日暮雅夫/片上平二郎/長澤麻子訳、法政大学出版局、2019年5月、本体3,800円、四六判上製326頁、ISBN978-4-588-01093-4
インフラグラム――映像文明の新世紀』港千尋著、講談社選書メチエ、2019年5月、本体1,700円、四六判並製256頁、ISBN978-4-06-516217-0

★『アウシュヴィッツの巻物 証言資料』は『Matters of Testimony: Interpreting the Scrolls of Auschwitz』(Berghahn Books, 2016)の全訳。「本書は、ビルケナウ強制収容所の死体焼却施設の作業に従事したゾンダーコマンド〔特別作業班〕の班員たちが、70年以上前に書き記した一連の手書き文書を取り上げたものである。これらの文書は一般に「アウシュヴィッツの巻物」と呼ばれ、書かれた後、いつの日か堀り出されて日の目を見ることを願って、灰や土の下に入念に埋めて隠された。死体焼却施設〔クレマトリウム〕の敷地はその結果、ほかに類をみない蛮行の記録を保存する最初の現場となった」(まえがきより)。

★「こうした文書を書くことはたんなる一個人の仕事ではなかった。それが書かれるために必要なさまざまな文具、すなわち紙、ペン、インクは、強制収容所内での物々交換や取引のネットワークを通じたいわゆる組織化によって入手しなければならなかった。同時に、埋めた文書を保存する容器、すなわちここで言及されている広口瓶や箱を見つけてくるのは共有された仕事であった」(131~132頁)。ゾンダーコマンドの一人、ザルマン・グラドフスキはこう綴っています。「われわれは自分たちの感受性を麻痺させ、あらゆる悲痛な思いを鈍らせなければならない。われわれは体のいたるところを吹き抜ける暴風のような恐怖心を強い意志で克服しなければならない。われわれはなにも見ず、なにも感じず、なにも理解しないロボットと化さなければならない」(121頁)。2019年に刊行された本の中でももっとも重要な一冊となる予感がします。

★『現代「液状化社会」を俯瞰する』はエコ(エーコとも)の「最後の遺著」(訳者あとがき)である『Pape Satàn Aleppe. Cronache di una società liquida』(La nave di Teseo, 2016)の抄訳。原書は週刊『エスプレッソ』誌の連載コラム「ミネルヴァの知恵袋」をまとめたもので、抄訳では50篇強が収められています。過去に同コラムをまとめた書籍の訳書としては『歴史が後ずさりするとき――熱い戦争とメディア』(リッカルド・アマデイ訳、岩波書店、2013年)がありました。今回の訳書では、『開かれた作品』(篠原資明/和田忠彦訳、青土社、1984年;新新装版2011年)では訳出されていなかった「禅と西欧――アラン・W・ワッツ『禅の精神』への注記」が付論として掲載されており、さらにエコ研究の第一人者トマス・シュタウダーさんによる解説「燦然たる輝き――現代版農学者の独創的な思考実験」が付されています。

★『理性の病理』は『Pathologien der Vernunft: Geschichte und Gegenwart der Kritischen Theorie』(Suhrkamp, 2007)の全訳。巻頭に「日本語版への序文」が置かれています。「フランクフルト学派のアプローチにとって固有なものが、他の理論との差異においていったいどの点にあったのかを、より深い地点から掘り起こし、より正確に詳らかにすること〔…〕このことの探究の成果が、この本に収められている論文の数々なのです。すなわち、私はそこで、フランクフルトのメンバーたちをある考え方が束ねていた、というテーゼを素描しようとしたのです。つまり、歴史が展開していった結果、資本主義的な経済関係が確立するとともに、社会のあり様全体に目をやれば「理性の社会的病理」と言えるような、そうした状態に陥っているという考え方です」(iv頁)。「この社会形式は、ただ道具的な合理性だけ、あるいは機能的合理性だけしか許さないがために、私たちの理性の能力の「病理」を蔓延させてしまうのです」(同頁)。「合理性のこの新しい」形式はただ、私たちの理性を不完全なかたちでのみ、つまり制限された状態でのみ発揮することしか許さない」(v頁)。批判理論の「可能性としてのアクチュアリティ」(序言、1頁)に迫る好著。

★『インフラグラム』は講談社選書メチエの702番。「本書は地球を覆うにいたった映像の文明を眼差しの歴史として考える試みである」(はじめに、4頁)。「扱う範囲は、およそ写真が発明された19世紀前半から今日までになるが、特に社会の情報化が進みデジタルメディアが日常生活を大きく変えてゆく、1990年代以降に焦点を当てている。2010年代に始まるスマートフォンの爆発的な成長と、映像やメッセージの拡散と共有文化の拡大は、コミュニケーションのありかたを変えてきたが、そこで映像の生産と消費は区別できないほど一体化している。私たちの生活は、かつてアルビン・トフラーが予見した「生産消費者」のそれに近い。/その生活に欠かせないのがカメラである。〔…〕いまや地球全体が無数の「瞬かない眼」に見つめられていると言ってもいい」(同頁)。「情報化社会のインフラとなった写真や映像を、わたしは「インフラグラム」と呼ぶ。〔…〕インフラ化とはすなわちブラックボックス化である。インフラグラムは映像のブラックボックス化を伴う」(70頁)。『映像論』(NHK出版、1998年)から20年、昨年上梓された『風景論――変貌する地球と日本の記憶』(中央公論新社、2018年)とともにひもときたい1冊です。とりわけ出版人や書店人はインフラグラムの時代における書籍編集、書籍販売とは何か、読書とは何か、を考えるために、時代背景を本書から学んでおくべきかと思われます。

★続いて最近の注目新刊を列記します。

パイドン』プラトン著、納富信留訳、光文社古典新訳文庫、2019年5月、本体920円、文庫判330頁、ISBN978-4-334-75402-0
千霊一霊物語』アレクサンドル・デュマ著、前山悠訳、光文社古典新訳文庫、2019年5月、本体1,020円、文庫判404頁、ISBN978-4-334-75400-6
法水麟太郎全短篇』小栗虫太郎著、日下三蔵編、河出文庫、2019年5月、本体1,100円、文庫判456頁、ISBN978-4-309-41672-4
まちの本屋――知を編み、血を継ぎ、地を耕す』田口幹人著、ポプラ文庫、2019年5月、本体660円、文庫判207頁、ISBN978-4-591-16300-9
ファウスト 悲劇第一部』ゲーテ著、手塚富雄訳、中公文庫、2019年5月、本体1,400円、文庫判472頁、ISBN978-4-12-206741-7
ファウスト 悲劇第二部』ゲーテ著、手塚富雄訳、中公文庫、2019年5月、本体1,600円、文庫判640頁、ISBN978-4-12-206742-4
戦後と私・神話の克服』江藤淳著、中公文庫、2019年5月、本体1,000円、文庫判320頁、ISBN978-4-12-206732-5

★まず光文社古典新訳文庫より2点。『パイドン』は古典新訳文庫でのプラトン新訳の6点目。「ソクラテス最期の日、獄中で弟子たちと対話する、プラトン中期の代表作」(カバー表4紹介文より)。ソクラテスが魂の不死について訪問者たちと縦横に語り合い、最後に従容として毒杯を仰いで死ぬという胸打つ場面までを、若い弟子のパイドンが思い出して語るという形式で描かれた、名編です。訳者による側注と補注を合わせると470項目もあり、さらには50頁を超える巻末解説が付されています。文庫で入手可能な『パイドン』の既訳には岩田靖夫訳(岩波文庫、1998年、在庫僅少)があります。

★『千霊一霊物語』は1849年の『Les Mille et Un Fantômes』の初訳。もともとは「コンスティテュショネル」紙での連載で、かの『千夜一夜物語』に倣い、語り手であるデュマによって奇譚の数々が披露されます。語りの中の語り手の語り、さらにその語りの中の語り手の語り、というような入れ子構造が見られるのも『千夜一夜物語』に似ています。そもそも『千夜一夜物語』は幼少期のデュマの愛読書だったそうです。

★『法水麟太郎全短篇』は河出文庫での小栗虫太郎本の5点目。かの『黒死館殺人事件』『二十世紀鉄仮面』(河出文庫でそれぞれ2008年、2017年に刊行済)の名探偵、法水麟太郎(のりみず・りんたろう)が登場する短篇8作をまとめたもの。収録作は以下の通り。「後光殺人事件」「聖アレキセイ寺院の惨劇」「夢殿殺人事件」「失楽園殺人事件」「オフェリヤ殺し」「潜航艇「鷹の城」」「人魚謎お岩殺し」「国なき人々」。巻末の編者解説によれば、河出書房新社のシリーズ「レトロ図書館」より『小栗虫太郎エッセイ集成(仮)』が刊行予定とのことです。

★『まちの本屋』はポプラ社より2015年に刊行された単行本を加筆修正して文庫化したもの。主要目次は以下の通り。

文庫版はじめに
第1章 僕はまちから本屋を消した
第2章 本屋はどこも同じじゃない
第3章 一度やると本屋はもうやめられない
第4章 本屋には、まだまだできることがある
第5章 まちの本屋はどこへ向かうべきなのか
その後の『まちの本屋』
文庫版あとがき

★「その後の『まちの本屋』」が新規の書き下ろし。「これから僕は、書店が書店として存在し続けられる「仕組み」をつくる仕事をしていきたいと思っています」(201頁)と書いた田口さんは現在、某取次にお勤めです。3月の某「ホワイエ」のツイートにご登場。文庫版あとがきにはこう書かれています。「個人書店がつぶれるのは大型書店やネット書店のせいなどと、誰かのせいにしていても何の解決にもならない。〔…〕それぞれの会社や店の軸がどこにあるのか。〔…〕本の未来に寄り添い続ける、強い本屋がつくりたい」(204頁)。

★『ファウスト』第一部、第二部は、中公文庫プレミアム「知の回廊」の最新刊でまもなく発売。旧版(全3分冊、1974~1975年、第一部全1巻、第二部は全2巻)はしばらく第二部が品切になっていましたが、今般第二部上下巻を合本して、第一部と第二部で全2巻本として新組で再刊されます。第一部には訳者の手塚さんによる「解説――一つの読み方」のほかに、巻末エッセイとして、河盛好蔵さんによる「渾然たる美しい日本語」と、福田宏年さんによる「自然に胸にしみいる翻訳」を新たに掲載。これは親本である1971年の『ファウスト 悲劇(全)』の月報から採ったもの。第二部には巻末エッセイとして中村光夫さんによる「『ファウスト』をめぐって」が収められています。こちらは筑摩書房版『中村光夫全集』第10巻から採ったもの。現在も入手可能な文庫で読めるゲーテ『ファウスト』には、相良守峯訳全2巻(岩波文庫、1958年)、 高橋義孝訳全2巻(新潮文庫、1967年)、柴田翔訳全2巻(講談社文芸文庫、2003年)、池内紀訳全2巻(集英社文庫ヘリテージ、2004年)などがあります。

★『戦後と私・神話の克服』はまもなく発売。没後20年の文庫オリジナル編集で、3部構成に11篇を収めた批評・随筆集です。目次は以下の通り。


文学と私
戦後と私
場所と私
文反古と分別ざかり
批評家のノート

伊藤静雄『反響』
三島由紀夫の家
大江健三郎の問題
神話の克服

現代と漱石と私
小林秀雄と私
解説 江藤淳と「私」(平山周吉)

★「批評家のノート」は、自選著作集『新編 江藤淳文学集成』(全5巻、河出書房新社、1984~85年)の各巻のあとがきである「著者のノート」を改題して同文庫で初めてまとめたもの。中公文庫での江藤さんの単独著は今回が初めての刊行となります。

★なお中公文庫の来月新刊ではマラパルテの『クーデターの技術』(手塚和彰/鈴木純訳、中公選書、2015年)が「註釈を増やして」文庫化される模様です。

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# by urag | 2019-05-20 01:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 16日

保管:2018年3月~2018年5月既刊情報

◎2018年5月22日発売:荒木優太『仮説的偶然文学論』本体2,000円、哲学への扉第1回配本。
 高原到氏書評「偶然のもたらす妙なる僥倖」(「週刊金曜日」2018年7月6日号(1191号)「きんようぶんか」欄)
◎2018年4月24日発売:岡田聡/野内聡編『交域する哲学』本体3,500円
◎2018年4月23日発売:『表象12:展示空間のシアトリカリティ』本体2,000円
◎2018年4月5日発売:ジャン=リュック・ナンシー『ミューズたち』本体2,700円、芸術論叢書第5回配本。
◎2018年3月16日発売:佐藤真理恵『仮象のオリュンポス』本体3,400円、シリーズ・古典転生第17回配本、本巻16。



# by urag | 2019-05-16 12:51 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 15日

2刷出来:甲斐義明編訳『写真の理論』

ジョン・シャーカフスキー、アラン・セクーラ、ロザリンド・クラウス、ジェフ・ウォール、ジェフリー・バッチェンらの写真論を収録したアンソロジー『写真の理論』(甲斐義明編訳、月曜社、2017年10月)の2刷が5月10日にできあがりました。60年代から00年代までの論考5篇を収めています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。どうぞよろしくお願いいたします。

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# by urag | 2019-05-15 15:31 | 芸術書既刊 | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 14日

月曜社全点フェア@早稲田大学生協戸山店、関連イベントあり

早稲田大学文学部キャンパス内の早稲田大学生協戸山店で、昨日よりひとつきほど、「月曜社全点フェア」を開催していただいています。単独の全点フェアは久しぶりのことで、たいへん光栄です(2007年に関西学院大学生協書籍部さんで、2012年に東京堂書店神田神保町店でやっていただいたことがあります)。弊社は人文書や芸術書、文芸書などを手掛けていますが、全点を一望していただく機会はめったにありません。ぜひこの機会をご活用いただけると幸いです。すべて1冊ずつ納品しています。売れた本は補充する予定です。品切本は初回には納品できていませんが、倉庫から見つかれば出荷したいです。

また、関連イベントとして今月末、「店頭にお邪魔します会」を開催します。一文92年卒の取締役小林浩が戸山店さんにお邪魔し、フェアを企画して下さったMさんと一時間ほど棚前で立ち話をするという無料イベントです。出版社への就職をお考えになっておられる学生さんにとって参考にしていただけるようなお話しができればと思っています。ご参加いただいた方全員とぜひお話ししたいので、どうぞよろしくお願いいたします。

◉月曜社全点フェア
日時:2019年5月13日(月)~6月21日(金)
場所:早稲田大学生協戸山店

◉店頭にお邪魔します会
日時:2019年5月31日14時30分(3限目終わり)~
場所:早稲田大学生協戸山店「月曜社全点フェア」棚前
出演:小林浩(月曜社取締役)

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# by urag | 2019-05-14 16:35 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 14日

「美術手帖」2019年6月号に筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究』の書評

5月7日発売の「美術手帖」2019年6月号のBOOK欄に、弊社3月刊、筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究ー―その作品における形象と装飾性』の短評が掲載されました。評者は中島水緒さんです。「作品と言説をとらえ直すための新たな視座をもたらす」と評していただきました。なお同書は「月刊美術」5月号(サン・アート発行、実業之日本社発売)や「美術の窓」5月号(主婦の友社)の新刊案内欄でも紹介されています。

# by urag | 2019-05-14 16:06 | 芸術書既刊 | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 13日

取次搬入日確定:ラミング『私の肌の砦のなかで』

弊社5月新刊、ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』吉田裕訳、の取次搬入日が確定いたしました。日販、トーハン、大阪屋栗田、いずれも明日14日です。弊社はパターン配本(見計らい送品)は行っておらず、事前にご発注いただいた書店様にのみ配本しております(弊社からの新刊案内は、FAXやEメールでお送りしております。ご入用の書店様は弊社までお申し付けください)。叢書・エクリチュールの冒険の第13回配本です。着店は17日(金)以降、順次となるかと思われます。造本設計は北田雄一郎さん。カバー表1の書名は金箔をあしらっています。ジョージ・ラミング(Geroge Lamming, 1927-)はバルバドスの作家。『私の肌の砦のなかで』は1953年に刊行されたデビュー作の小説で、カリブ文学の古典的作品です。

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# by urag | 2019-05-13 16:12 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 13日

注目新刊:バルファキス『黒い匣』、ライアン『監視文化の誕生』、王力雄『セレモニー』

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★まず最初に5月の文庫新刊の中から注目書をいくつか。

中世思想原典集成 精選4 ラテン中世の興隆2』上智大学中世思想研究所編訳・監修、平凡社ライブラリー、2019年5月、本体2,400円、B6変判624頁、ISBN978-4-582-76881-7
日本の偽書』藤原明著、河出文庫、2019年5月、本体760円、文庫判200頁、ISBN978-4-309-41684-7
物質と記憶』アンリ・ベルクソン著、杉山直樹訳、講談社学術文庫、2019年5月、本体1,330円、A6判392頁、ISBN978-4-06-515637-7
元号通覧』森鴎外著、講談社学術文庫、2019年5月、本体1,230円、A6判336頁、ISBN978-4-06-515740-4
崖の上のポニョ』宮崎駿原作・脚本・監督、文春ジブリ文庫シネマ・コミック15、2019年5月、本体1,600円、文庫判456頁、ISBN978-4-16-812114-2

★『中世思想原典集成 精選4』は第4回配本。親本の第7巻「前期スコラ学」、第8巻「シャルトル学派」、第9巻「サン=ヴィクトル学派」、第11巻「イスラーム哲学」から9篇を収録したもの。佐藤直子さんによる巻頭解説、各作品解題、水野千依さんによる巻末エッセイ「心のなかに「絵」を描く――魂の階梯と形象の彼方」は新たに追加されたものです。9篇の収録作品はhontoの単品紹介ページにて公開されています。来月の平凡社ライブラリー新刊はキルケゴール『新訳 不安の概念』村上恭一訳、とのことです。デンマーク語原典からの新訳。

★『日本の偽書』は2004年に刊行された文春新書版に「若干の訂正を加え」て文庫化したもの。『上記』『竹内文献』『東日流外三郡誌』『秀真伝』『先代旧事本紀』『先代旧事本紀大成経』などを取り上げ、なぜそれらが人を惹きつけてやまないのかに迫っています。できればこれらの偽書自体も文庫版で入手できるようになるといいなと念願しています。今月の河出文庫新刊では小栗虫太郎『法水麟太郎全短篇』や、喜田貞吉『被差別部落とは何か』なども気になったのですが、店頭になく他日を期したいと思います。

★講談社学術文庫の今月新刊からは2点。『物質と記憶』は文庫オリジナルの新訳。巻末の訳者解説によれば、底本は諸版を検討した結果、1982年の旧カドリージュ版と、1959年の生誕百周年著作集を用いるべきだと判断したとのことです。既訳は多数ありますがすべて参照し、「明確なヴァージョンアップ」を目指して翻訳に取り組まれたとのことです。

★『元号通覧』は巻末の特記によれば「1953年に岩波書店より刊行された、『鷗外全集』第13巻に収録された『元号考』を改題して文庫化したもの」。「元号の出典から改元理由、不採用の候補に至るまで1300年分の元号が一望できる」(カヴァー表4紹介分より)、学術文庫らしい一冊。巻末解説は猪瀬直樹さんが書かれています。

★『崖の上のポニョ』は文春ジブリ文庫シネマ・コミックの第15巻目。すべてのセリフを確認できるのがいいです。何度見ても、終わり近くのフジモトの悲哀をあっさりと描いた部分が胸に刺さります。シネマコミックの続刊予定は6月に「ホルスの大冒険」、7月に「風立ちぬ」とのこと。

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★続いて最近注目している新刊単行本を列記します。

不道徳的倫理学講義――人生にとって運とは何か』古田徹也著、ちくま新書、2019年5月、本体1,000円、新書判368頁、ISBN978-4-480-07213-9
ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考』古田徹也著、角川選書、2019年4月、本体1,800円、四六変形判360頁、ISBN978-4-04-703631-4
楽園をめぐる闘い――災害資本主義者に立ち向かうプエルトリコ』ナオミ・クライン著、星野真志訳、堀之内出版、2019年4月、本体1,600円、B6変型判144頁、ISBN978-4-909237-39-2
大洪水の前に――マルクスと惑星の物質代謝』斎藤幸平著、堀之内出版、2019年4月、本体3,500円、四六判上製356頁、ISBN978-4-909237-40-8
黒い匣 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命――元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層』ヤニス・バルファキス著、朴勝俊/山崎一郎/加志村拓/青木嵩/長谷川羽衣子/松尾匡訳、明石書店、2019年4月、本体2,700円、A5判並製592頁、ISBN978-4-7503-4821-6
監視文化の誕生――社会に監視される時代から、ひとびとが進んで監視する時代へ』デイヴィッド・ライアン著、田畑暁生訳、青土社、2019年4月、本体2,600円、四六判並製283+viii頁、ISBN978-4-7917-7162-2

★『不道徳的倫理学講義』と『ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考』は、東大大学院准教授の古田徹也(ふるた・てつや:1979-)さんの書き下ろし。『不道徳的倫理学講義』は「「運」の意味を探る」「「運」をめぐる倫理学史――古代から近代までの一断面」「道徳と実存――現代の問題圏」の3部構成(全10章)で、「古代から現代に至る倫理学の歴史に遺された、運にまつわる思考の痕跡を探っていく」(13頁)もの。「正当な倫理学史ではあまり案内されない裏通りにむしろ足繁く通うツアー」(同頁)となっているとのことです。

★『ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考』は『論理哲学論考』の抜萃と解説。「『論考』読解のために最低限理解する必要がある箇所を具体的に取り上げ、それを一から解きほぐしていくこと」(5頁)が試みられています。昨夏からスタートした、角川選書創刊50周年記念企画である「シリーズ世界の思想」の第3弾です。これまでに佐々木隆治さんの『マルクス 資本論』と、岸見一郎さんの『プラトン スクラテスの弁明』が刊行済みです。

★堀之内出版さんの新刊2点はいずれも話題書。『楽園をめぐる闘い』は『The Battle For Paradise: Puerto Rico Takes on the Disaster Capitalists』(Haymarket Books, 2018)の全訳。クラインの著書の中でもっともコンパクトな本ですが、「過去の著作でのさまざまな論点がプエルトリコという小さな島国において一点に集まることを示している点で、彼女の活動のエッセンスを凝縮した著作であるとも言える」(124頁)と訳者解説にあります。新書より少し左右幅がある手になじみやすいサイズと、プラスティックのカバーが美しい1冊。

★『大洪水の前に』は、昨年のドイッチャー記念賞を日本人で初めて、しかも最年少で受賞した斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さんのデビュー作。あとがきによれば、博士論文『Natur gegen Kapital』(Campus, 2017)とその英語版でドイッチャー賞受賞作『Karl Marx's Ecosocialism』(Monthly Review Press, 2017)を下敷きにし、「その後に刊行された論文も加えて、日本の読者に合わせて全体の流れを整えるための加筆・修正を行なった日本語版オリジナル版」とのことです。長きにわたり過小評価されてきたマルクスのエコロジーに光を当てた快作。版元さんの販売サイトではウェブ限定で、4種類の瀟洒な函入クロス装の特装版やサイン本が販売されています。

★『黒い匣』は『Adults In The Room: My Battle with Europe's Deep Establishment』(Vintage, 2017)の訳書。ギリシアの元財務大臣で経済学者のヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis, 1961-)のベストセラー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(関美和訳、ダイヤモンド社、2019年3月;『Talking to My Daughter about the Economy』Vintage, 2017)に続く、単独著の2冊目の訳書です。日本語版序文で彼はこう書いています。「本書に綴られたのは〔…〕終わりなき悪夢の物語であり、何より、ギリシャの人々が債務の束縛に対して2015年の1月から7月にかけて抵抗の声を上げた、半年間の反乱の実録である。〔…〕本書で私は、この反乱の物語をありのままに綴った。〔…〕すべてを余すところなく、ゾッとするほどの詳細さをもって記述した。/残念ながら、本書の結末はハッピーエンドではない。結局、ギリシャの人びとの果敢な反乱は、多国籍の寡頭支配層(オリガルヒ)と、あろうことか相手方に寝返った戦友たちによって鎮圧されたからだ。本書が読者のみなさんに提供できるものは、現在の世界で権力がいかに(おぞましい仕方で)行使されるのかについての洞察と、苦々しい結末にもかかわらず傷つくことなく残された希望であろう」(10頁)。大著ですがドラマティックな展開に読者を強く惹きつけ、飽きさせません。

★なお今月下旬には、バルファキスの論考「ヨーロッパを救うひとつのニューディール」を掲載したアンソロジー『「反緊縮! 」宣言』(松尾匡編、亜紀書房、2019年5月)が発売されます。また、3月に発売された『ele-king臨時増刊号 黄色いベスト運動』の巻末ブックガイドによれば、バルファキスの『And the Weak Suffer What They Must?』(Vintage, 2016)の訳書がele-king booksより刊行予定です。

★『監視文化の誕生』は『The Culture of Surveillance: Watching as a Way of Life』(Polity, 2018)の全訳。「文脈における文化」「文化の潮流」「共創――文化、倫理、政治」の3部6章+序章構成。序章「「監視文化」の形成」でライアンはこう書いています。「観察されることだけでなく観察自体が生活様式となったのだ。オーウェルの小説〔『一九八四年』〕の登場人物たちは、いつ見られているのか、なぜ見られているのかが定かでない中で、びくつきながら辛く生きている。しかし今日の監視を可能にしているのは、私たちがウェブ上のクリックであったり、メッセージや写真のやりとりであったりするのだ。かつてないほど、普通の人々が、監視に貢献している。利用者自らが作り出すコンテンツ(UGC = User-generated Content)が、日々観察されるデータを生みだしている。このように「監視文化」が形作られている」(8~9頁)。

★「「監視文化」という概念で私は、人類学者が研究対象にするような物事を想定している。例えば、慣習やふるまい、物の見方、世界の解釈の仕方なのだ。焦点を当てたいのは、国際諜報機関の蛸のような触手や、捜査ネットワークや、企業マーケティングの微妙でそそる呼び声よりもむしろ、日常生活の中の監視である。その意味で「監視文化」は、監視がいかに想像され経験されるか、散歩やドライブ、メッセージのチェック、買物や音楽鑑賞といった日常行為がいかに監視によって影響を受け、逆に監視に影響を与えているか、といったことに関わる。さらに、監視に親しんでいる人や、監視に慣れた人が、いかに監視を開始しそれに関与しているのか、といったことも」(9頁)。ライアンは「今日出現しつつある「監視文化」は、空前のものである」と指摘します。ポスト・オーウェル時代のこの社会のありようについて、現代人はもっと知るべきであると強く思います。

★最後に藤原書店さんの4月新刊4点をご紹介します。

セレモニー』王力雄著、金谷譲訳、藤原書店、2019年4月、本体2,800円、四六上製448頁、ISBN978-4-86578-222-6
中国が世界を動かした「1968」』楊海英編、梅﨑透/金野純/西田慎/馬場公彦/楊海英/劉燕子著、藤原書店、2019年4月、本体3,000円、四六判上製328頁、ISBN978-4-86578-218-9
開かれた移民社会へ――別冊『環』24』宮島喬/藤巻秀樹/石原進/鈴木江理子編、藤原書店、2019年4月、本体2,800円、菊大判並製312頁、ISBN978-4-86578-221-9
石牟礼道子と芸能』石牟礼道子/赤坂憲雄/赤坂真理/池澤夏樹/いとうせいこう/今福龍太/宇梶静江/笠井賢一/鎌田慧/姜信子/金大偉/栗原彬/最首悟/坂本直充/佐々木愛/高橋源一郎/田口ランディ/田中優子/塚原史/ブルース・アレン/町田康/真野響子/三砂ちづる/米良美一著、藤原書店、2019年4月、本体2,600円、四六判上製304頁、ISBN978-4-86578-215-8

★『セレモニー』は中国の反体制作家、王力雄(ワン・リーション:Wang Lixiong, 1953-)さんの「政治ファンタジー小説」だという『大典』の全訳。台湾では2017年に出版されたものの、中国での発売は「現状ではできない」(訳者あとがき)とのこと。巻頭の推薦文「インターネット、I‌T技術と独裁体制」を寄せた神戸大学教授の王柯(おう・か:1956-)さんは本作を「リアルなドラマであり、今日の中国を彷彿させる」(2頁)と評価しています。「最新のIT技術によって武装されている警察国家はたとえ長く続いても、いずれ本書が予言したように崩壊するであろう」(6頁)とも。帯文には「インターネット時代の『一九八四年』」と謳われています。

★『中国が世界を動かした「1968」』は、「“世界史における1968年”と文革を考察する」(帯文より)論文集。2018年7月14日に静岡大学人文社会科学部アジア研究センターと学習院女子大学国際学研究所が合同開催した国際シンポジウムでの成果をまとめたもの。「中国の文化大革命」と「世界革命」の2部構成。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。編者の楊海英(よう・かいえい:1964-)さんは序章「我が宗主国・日本の「1968年」と世界――植民地出身者の視点」と、第4章「文化大革命中のモンゴル人ジェノサイド――中国政府の善後処理まで」を担当されています。

★『開かれた移民社会へ』は2014年に『別冊『環』20』として刊行された『なぜ今、移民問題か』に続くアンソロジー。藤原良雄さんの編集後記によれば「〔20号は〕移民問題の本質を問うたものだったが、今回は、現状を分析した上で、これからの移民社会をどう構築してゆけばいいのか、研究者をはじめ、移民の一世、二世、又ペルーの日系移民の帰国者など多様な方々の生の声を反映させた」とのことです。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。先月から施行された改正入管法に関して、本書のほかに人文書院より論文集『移民政策とは何か――日本の現実から考える』が刊行されています。併せて読むべきかと思われます。

★『石牟礼道子と芸能』はアンソロジー。『環』誌などに寄稿されてきた石牟礼さん自身のエッセイ6篇や、石牟礼さんへの著名人15名の追悼文、田中優子さん、町田康さん、高橋源一郎さん、田口ランディさんらの講演録(2013~2018年)、シンポジウム2本「石牟礼道子の宇宙」(2017年)、「今、なぜ石牟礼道子か」(2015年)などの記録を収録。目次詳細は書名のリンク先にてご確認いただけます。

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# by urag | 2019-05-13 02:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 05月 10日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2019年6月27日(木)開店
HMV&BOOKS OKINAWA
沖縄県浦添市西洲3丁目

日販帳合。弊社へのご発注は人文書少々。沖縄県浦添市に今夏(2019年6月27日)オープン予定である、地上6階建ての商業施設「サンエー浦添西海岸 PARCO CITY」の3階に入居。同PARCO CITYは、那覇空港から車で15分に誕生するというシティリゾート開発エリアに立地する、沖縄県最大級の商業施設となり、入居する250店舗のうち94店舗が沖縄初登場とのことです。沖縄の小売流通企業サンエーとパルコが協業して開発する大型商業施設であり、「浦添市の湾岸道路に面したウォーターフロントの開発エリアに新たな複合交流施設が誕生」と謳われています。

「CINRA.NET」の2018年12月4日付ニュース「HMV&BOOKSが沖縄初出店、サンエー浦添西海岸 PARCO CITY内に来夏オープン」によれば、同店は「音楽と書籍の複合ショップ」であり、「東京・渋谷、日比谷、福岡・博多、大阪・心斎橋に続く、HMV&BOOKSの5店舗目、HMV店舗としては初の沖縄出店となる」とのこと。また「書籍を中心に音楽、映像ソフト、雑貨、チケットなど約14万点を取り揃えるほか、店内に常設されるイベントステージでは、ミニライブ、サイン会、トークイベント、HMV&BOOKS SHIBUYAでのイベントのライブビューイングなどを開催。さらにサンエー浦添西海岸 PARCO CITYへのユナイテッド・シネマの出店にあわせて映画コーナーを設け、ユナイテッド・シネマとの連携企画も予定」とも紹介されています。記事には同店のイメージビジュアルも添えられています。

公式サイトの告知は以下の通りです。「「HMV&BOOKS OKINAWA」は、提案型の売り場と店内でのイベントなどを通じて、ユーザー360°エンタメサービスを実現し、お客さまに“出会い”や“発見”、そして、“体験”を提供する、新たな“情報発信地”を目指してまいります。/さらに、イベントステージを店内に常設し、ミニライブ、サイン会、トークショーなどのイベント開催をはじめ、国内ではトップクラスの開催件数を誇る HMV&BOOKS SHIBUYAで開催される店内イベントのライブビューイングなども予定しており、お客さまにリアル店舗ならではの“体験”も提供してまいります。/また、ユナイテッド・シネマの同時出店にあわせ、映画の歴史等も紹介する映画コーナーの充実を図り、ユナイテッド・シネマと連携した企画なども行ってまいります」と。

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# by urag | 2019-05-10 16:19 | 販売情報 | Trackback | Comments(2)