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2014年 06月 11日

書影公開と搬入日決定:ロイル『デリダと文学』

ジャック・デリダ没後十周年記念出版、「叢書エクリチュールの冒険」第7回配本、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(中井亜佐子・吉田裕訳、46判並製232頁、本体2,800円、ISBN978-4-86503-015-0)の書影を紹介します。取次搬入日は、13日(金)=日販、16日(月)=トーハン、大阪屋、栗田、太洋社です。書店さんの店頭に並び始めるのは、来週18日(水)以降になるかと思われます。

*人文・哲学・批評

デリダと文学
ニコラス・ロイル著 中井亜佐子・吉田裕訳
月曜社 2014年6月 本体2,800円 46判並製232頁 ISBN978-4-86503-015-0

【デリダ没後10周年記念出版、日本語版オリジナル編集】イギリスにおける脱構築批評の第一人者であり作家でもある特異な思想家による卓抜なデリダ論集。文学と哲学の制度的境界を抹消しつつ、クリプト美学的なるものの分析を通じて、亡霊たちのさざめく〈エクリチュールの時間〉を往還する試み。三つの講演論文「詩、動物性、デリダ」「ジョウゼフ・コンラッドを読む――海岸からのエピソード」「ジャック・デリダと小説の未来」に、貴重なオリジナル・インタヴュー「海岸から読むこと――文学、哲学、新しいメディア」を併録。【叢書・エクリチュールの冒険、第7回配本】

目次:
詩、動物性、デリダ 【来日講演:2013年2月28日】
ジョウゼフ・コンラッドを読む――海岸からのエピソード 【来日講演:2013年3月3日】
ジャック・デリダと小説の未来 【海外講演:国際カンファレンス「こんにちのデリダ」2010】
海岸から読むこと――文学、哲学、新しいメディア 【オリジナル・インタヴュー】
訳者あとがき

著者:ニコラス・ロイル(Nicholas William Onslow Royle, 1957-)英国・サセックス大学英文学教授。専門は英米文学。著書に『テレパシーと文学――読書する精神に関する論考』(1990年、未訳)、『不気味なもの』(2003年、未訳)のほか、『ジャック・デリダ』(2003 年;田崎英明訳、青土社、2006年)をはじめとするデリダ論を三冊上梓している。また作家として長編小説『キルト』(2010年、未訳)を発表している。

訳者:中井亜佐子(なかい・あさこ)一橋大学教授。専門は英文学。著書に『他者の自伝――ポストコロニアル文学を読む』(研究社、2007年)、共訳書に『スピヴァク、日本で語る』(鵜飼哲監修、共訳、みすず書房、2009年)などがある。
訳者:吉田裕(よしだ・ゆたか)東京理科大学講師。専門は英文学、ポストコロニアル研究。

◆カバーにはフリードリヒの名画「海辺の修道士」をあしらい、書名はメタリック・ブルーの箔押しを施しました。
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◆クリーム色の本文紙に鮮やかな青紫色のインクで刷り、青い見返しと表紙でくるみました。もう少し細かくご説明しますと、本文の刷色は青紫色に近い紺色に見えるかと思います。見返しはルリ色、表紙はあさぎ色です。
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# by urag | 2014-06-11 09:32 | 近刊情報 | Comments(0)
2014年 06月 08日

注目新刊:レーベンシュテイン『猫の音楽』勁草書房、ほか

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猫の音楽――半音階的幻想曲
ジャン=クロード・レーベンシュテイン著 森元庸介訳
勁草書房 2014年6月 本体2,400円 A5判上製132頁 ISBN978-4-326-10235-8

帯文より:猫オルガン、猫オペラ、猫シンフォニー・・・。ナニソレ? カワイイ! でも、ヤッパリちょっとコワいかも。西洋の想像力は猫を貶め、けれど猫に惹かれた。その声をノイズと嗤い、けれど野生の響きに仄かに憧れた。人と獣の音楽、西洋と東洋の音楽、音楽と音楽ならざるもの。協和と不協和のあわいに音楽=世界の核心を照らし出す、比類なき博覧強記が舞い奏でたミラクル文化史。

目次:
藁屑栄誦
おどけた優雅
シャリヴァリ
猫のコンサート
不協和な協和
訳註
訳者あとがき
書誌
図版一覧
ディスコグラフィー

★発売済。『セザンヌのエチュード』(浅野春男訳、三元社、2009年)に続く、美術史家レーベンシュテイン(Jean-Claude Lebensztejn, 1942-)の訳書第2弾です。原書は、Miaulique: Fantaisie chromatique(Le Passage, 2002)。訳者あとがきでのご説明をお借りすると「本書は、西洋音楽の伝統が猫の鳴き声をどのように受け止め、取り入れ、締め出してきたのかを論じた書物である。といって純然たる音楽史というわけでもなく、書き手の広汎な関心を映して絵画や版画、あるいはLPジャケットなどの多彩なイメージがちりばめられ、詩や小説や芸術論も忘れられていない」(109頁)。著者はこう書きます、「たしかに猫の叫びは人間の耳を苛み、騒音の典型のようにして響くのだが、しかしまた、音楽を奏でる猫を描いたイメージは膨大な数にのぼり、考えられるかぎりのどんな調べものによっての汲みつくせない」(67-68頁)。「猫の音楽に魅惑されることの核心にある奇妙な結びつき、すなわち協和と不協和、同一性と他性の結びつき〔・・・〕。この結びつきは相互的だ。猫が人間の音楽に向ける興味は、人間が猫の音楽に向ける興味を反映したものであるようなのだ」(68頁)。

★「シャリヴァリ」の章で東西文明の音楽観のあからさまな差異を歴史的に振り返ったのち、著者は西洋文明の内なる他者としての猫を、音楽における人間との奇妙で親密な関係性の内に捉え、猫の音楽を協和する不協和、異種間における連続性のしるしとして分析します。そして「ハーモニーという言葉が古典古代からたどった歴史について、まるまる一冊の本を書くこともできるだろう(この単語の原義は「接合すること」、「集合させること」である)」(81頁)と告白し、次々に古典を引用しつつ、本書を未完の、開かれた調和への問いとして終えています。「ハーモニーとは、それ自体としては異なるもの、不協和なもの、反対のものから生まれるのであって、すっかり心地よいものから生まれるのではない」(ツァルリーノ)。「ハーモニーはすべて対立するものたちに由来する。ハーモニーは混淆されたものの統一化であり、相違するものの一致である」(ピロラオス)。

★本書の著者略歴での情報ですが、レーベンシュテインの訳書続刊には『アネックス』(三浦篤・木俣元一監訳、三元社)が予定されているそうです。

★さらに、勁草書房さんの今月新刊としてはピーター・シンガー『あなたが救える命――世界の貧困を終わらせるために今すぐできること』(児玉聡+石川涼子訳、四六判上製312頁、本体2,500円、ISBN978-4-326-15430-2)や、ジョン・フォン・ノイマン+オスカー・モルゲンシュテルン『ゲーム理論と経済行動 刊行60周年記念版』(武藤滋夫訳、A5判上製1032頁、本体13,000円、ISBN978-4-326-50398-8)などが予定されています。版元紹介文によれば前者は「極度の貧困から抜け出せない人々に対する私たちの責務をわかりやすく論じ、国際的に反響を呼んだ名著の待望の邦訳。読者が自ら考えて行動を起こし、寄付などを通じて有効な貢献をなすための具体的な方法を提案する」ものだそうです。一方後者は「1944年に刊行した『ゲーム理論と経済行動』の刊行60周年記念版として、2004年に刊行されたものの翻訳」とのことです。既訳には、『ゲームの理論と経済行動』(全5巻、銀林浩ほか訳、東京図書、1972-1973年;全3巻、ちくま学芸文庫、2009年)があります。新訳の刊行を記念して、以下のイベントが開催されます。リンク先ではいち早く書影が掲載されています。高額ですがこれは「買い」ですね。

◎武藤滋夫×岡田章×渡辺隆裕講演会「ゲーム理論からのメッセージ――その魅力と可能性

日時:2014年6月27日 (金) 19時00分~(開場:18時30分)
会場:八重洲ブックセンター本店 8F ギャラリー
料金:無料
定員:60名(申し込み先着順)
申込方法:申込書に必要事項をご記入の上、1階サービスカウンターにてお申込み下さい。申込書は同カウンターにご用意してございます。また、お電話によるお申込みも承ります。(電話番号:03-3281-8201)
主催:八重洲ブックセンター
協賛:勁草書房

内容:数学者フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンによってはじまったゲーム理論。現在では、ノーベル経済学賞を幾度も受賞し学界をリードする分野でありながら、単なる理論にとどまらず行動分析やビジネスの現場でも活用されています。そのゲーム理論の端緒となった記念碑的著作『ゲーム理論と経済行動』の刊行60周年記念版がついに翻訳。刊行を記念し、訳者である武藤滋夫さんをはじめ、日本を代表するゲーム理論家たちがゲーム理論の魅力を語ります!

※講演会終了後、会場にて書籍をご購入いただいたお客様を対象にサイン会を実施いたします(お持ち込みの本・色紙・グッズ等へのサインはできません)。


ピープスの日記と新科学
M・H・ニコルソン著 浜口稔訳
白水社 2014年5月 本体4,200円 四六判上製316頁 ISBN978-4-560-08304-8

帯文より:ピープス氏、王立協会へ行く。顕微鏡に望遠鏡、初めての輸血、空気の重量測定、双底船・・・新発明や科学実験は人々を魅了し、風刺の標的にもなった。アマチュア科学者ピープスが見た17世紀英国〈新科学〉時代。

推薦文(帯文裏)より:「まさしく事実は小説より奇なり。スウィフトが冷笑したラガード学院のモデル、十七世紀英国王立協会による奇妙奇天烈なプロフェクトの数々、ヴァーチュオーソ(物数寄科学者)と称された趣味人達の頭の中から出てくるものに爆笑しながら、その後喪われたもの、あけられてしまった穴の大きさに、「3・11」後の我々は思い当たって粛然としないわけにはいかない。エピソード語りの名手による語りの面白さは、この本に観念史派史学の名著という以上の輝く魅惑を与えている」(高山宏)。

目次:

Ⅰ アマチュア科学者、サミュエル・ピープス
Ⅱ はじめての輸血
Ⅲ 「狂女マッジ」と「才人たち」
付論 ピープス、サー・ウィリアム・ペティ、双底船
原注
訳者あとがき
索引

★発売済。シリーズ「高山宏セレクション〈異貌の人文学〉」第4弾です。原著は、Pepy's Diary and the New Science(The University Press of Virginia, 1965)です。17世紀イギリスの海軍官僚サミュエル・ピープスが1660年から1669年にかけて暗号で綴った長大な日記(『サミュエル・ピープスの日記』全10巻、国文社、臼田昭訳:第1-7巻1987-1991年、臼田昭・岡照雄・海保眞夫訳:第8巻1995年、海保眞夫訳:第9-10巻2003/2012年)をもとに、新科学時代の熱狂に迫った名著です。とりわけ「ヴァーチュオーソ」(音楽界におけるいわゆるヴィルトゥオーゾ=演奏の達人とは別物)と呼ばれた科学愛好家や特異な科学者たちの活躍やそれを風刺した当時の演劇作品を陰翳豊かに分析しています。

★アメリカの英文学者であり、観念史学派の中心的存在の一人だったマージョリー・ホープ・ニコルソン(Marjorie Hope Nicolson, 1894-1981)の訳書には、『月世界への旅』(原著1948年;高山宏訳、「世界幻想文学大系」第44巻、国書刊行会、1986年)や、『円環の破壊――17世紀英詩と〈新科学〉』(原著1950年;小黒和子訳、みすず書房、1999年)、『暗い山と栄光の山』(原著1959年;小黒和子訳、国書刊行会、1989年)のほか、論考を収めた訳書に『想像の翼――スウィフトの科学と詩』(渡邊孔二編訳、山口書店、1981年;ノーラ・M・モーラとの共著2篇「スウィフト「ラピュタ渡航記」の科学的背景」「スウィフト「ラピュタ渡航記」の「飛島」」を収録)や『美と科学のインターフェイス』(高山宏訳、「叢書ヒストリー・オヴ・アイディアズ」第1巻、平凡社、1986年;4項のテクスト「宇宙旅行」「山に対する文学的態度」「崇高美学」「ニュートンの『光学』と18世紀の想像力」「ヴァーチュオーソ」を収録)などがあります。分けても『月世界への旅』(現在品切)は、杉浦康平さんと鈴木一誌さんによる美麗なシリーズ造本も相まって際立った一冊です。

★「高山宏セレクション〈異貌の人文学〉」の続刊には、高山さんご自身による翻訳、エリザベス・シューエル『オルフェウスの声』が予定されています。


ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義
仲正昌樹著
作品社 2014年5月 本体2,000円 四六判並製480頁 ISBN978-4-86182-479-1

帯文より:今、もっとも必読の思想書を、より深く理解するためのコツとツボ! 本邦初!〈Vita Activa〉『活動的生活』とそもそもタイトルが違う「ドイツ語版」を紹介しつつ、主要概念を、文脈に即して解説。その思想の核心を浮かび上がらせる。

目次:
[講義]第一回 宇宙世紀の「人間の条件」?!――「プロローグ」と「第一章 人間の条件」を読む
[講義]第二回 いかにして「活動」が可能なのか? ポリスという「公的領域」――「第二章 公的領域と私的領域」を読む
[講義]第三回 人間から“労働する”動物へ――「第三章 労働」を読む
[講義]第四回 世界を作る仕事〈work〉/〈Herstellen〉とは?――「第四章 仕事」を読む
[講義]第五回 脱目的論的な「始まり」の輝き――「第五章 活動」を読む
[講義]第六回 世界疎外――「第六章〈活動的生活〉と近代」を読む
[後書きに代えて]アーレント・ブームは、はたして“アーレント的”か?
もっと『人間の条件』を究めたい人のための読書入門

★発売済。昨年2月から7月にかけて、市谷の連合設計社で行われた全6回の講義に大幅な加筆を施したものです。回ごとの質疑応答を収録したほか、巻末に読書案内も載っています。アーレントの代表作『人間の条件』英語版(1958年)を、その訳書(志水速雄訳、ちくま学芸文庫、1994年)や、同書の豊饒なドイツ語版『活動的生活』(1960年)を併用しつつ章ごとにじっくり読み解く講義です。周知の通り仲正さんはアーレントのカント政治哲学講義(明月堂書店、2009年)や、名講演「暗い時代の人間性について」(情況出版、2002年)などの新訳を手掛けられており、2009年には『今こそアーレントを読み直す』(講談社現代新書)を上梓されています。アーレントの再評価と再読解の機運が継続的に高まっているこんにち、いずれ仲正さんによるドイツ語版の完訳が誕生するのではないかと予感させます。

★なお、作品社さんでは今月、『リッツォス詩集』(中井久夫訳、本体予価3,800円)や、『訳解クルアーン』(イスラーム黎明学術協会訳、本体予価4,800円)などの新刊が予定されています。

# by urag | 2014-06-08 23:16 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2014年 06月 07日

パンフレット「書店は劇場である」を配布開始しました

MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店(静鉄清水線「新静岡」駅前「新静岡セノバ」5階、電話054-275-2777)の人文書売場ミニエンド台で今月末まで開催予定の月曜社のミニフェアで、特製パンフレット「書店は劇場である」の無料配布が開始されました。今回のミニフェアのために書き下ろした雑文で、お店にお立ち寄りの際はお持ち帰りいただけると幸いです。現在担当のNさんのお許しを得て、続編を書いているところです。

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今日は、明星大学人文学部のH26年度(2014年)学部共通科目「自己と社会II」「文化を職業にする①」で、「変貌する出版界と独立系出版社の仕事」と題してお話しをさせていただきました。週末の雨の中、熱心な生徒さんたちにご清聴いただき、光栄でした。また、皆さんからお寄せいただいたざっくばらんなご質問やコメントに、深く感謝いたします。出版界を目指しておられる方もいらっしゃると聞きました。今度お目に掛る時には同業者として再会できますように。K先生、今年もお世話になりました。ありがとうございました。

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ちなみに、出版協の来月のイベントで対談させていただく(株)共和国の代表、下平尾直さんが駒澤大学マスコミ研究所で毎週木曜4時限目(14:50~16:10)に「自分と世界が変わる「編集」術」と題した講義を先月より行われています。駒大の学生さんにはぜひ聴講していただきたいです。

◎下平尾直氏講義「自分と世界が変わる「編集」術」@駒澤大学マスコミ研究所(木曜4時限)

内容:本づくりの舞台裏! みなさんがふだん手にしている本/書籍は、著者や訳者がひとりで生みだすものではありません。編集者と著者との打ち合わせから始まり、デザイナーや印刷会社、流通、書店、メディアなどを巻き込みながら、じつに多くの人がかわる「プロジェクト」として進行します。編集者はその統括責任者であり、オーケストラの指揮者のような仕事です。自分で原稿を書くことはあまりありませんが、「編集」というスキルを駆使して、本という形で、いまのこの世界や現実にかかわり、変えていくことができるのです。この講座では、編集者や出版社での仕事について具体的に考えるために、著者やデザイナーをゲストにお招きしたり、課外授業も積極的に入れたりしながら、実践に役立つ本づくりのあれこれを学びます。

講義予定:
01.エディターシップについて――「編集」という仕事
02.出版社とはどんな仕事をするところか――翻訳本を刊行するには?
03.著作権とはなにか1――他人のものは自分のもの?
04.著作権とはなにか2――翻訳本を刊行するには?
05.電子書籍は「本」なのか?――書物の過去/現在/未来
06.書物の「解体」学――本はこうやってできている
07.実際に本を作るためには何が必要か
08.1冊の本を作るのにいくらかかるのか?――原価と定価
09.企画の発想法――本はどこから「やってくる」のか
10.「自分の本」を設計してみよう
11.「版面」とはなにか?――リーダブルな本作り
12.校正の基礎知識1――基本を身につけよう
13.校正の基礎知識2――実際にやってみよう
14.装幀とはなにか?――デザインの基礎知識
15.タイトルと帯文――キャッチコピーの考え方
16.印刷と製本――まさに「本」の歴史と文明の担い手
17.本が読者に届くまで――出版流通の基礎知識
18.本と読者を架橋するメディア――広告/書評の役割と重要性
19.どうすれば編集者になれるのか?

下平尾直(しもひらお・なおし):1968年生まれ。コピーライター、編集者を経て、現在は(株)共和国代表。これまで手がけた本に、『齋藤孝の作文力』(どりむ社)、都甲幸治『偽アメリカ文学の誕生』、藤原辰史『ナチスのキッチン』(第1回河合隼雄学芸賞、以上、水声社)など多数。悪麗之介名義での編著書に、『俗臭――織田作之助〔初出〕作品集』、『天変動く――大震災と作家たち』(以上、インパクト出版会)などがある。

# by urag | 2014-06-07 16:30 | Comments(0)
2014年 06月 06日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2014年6月14日(土)リニューアルオープン
丸善松本店:図書850坪、文具200坪
長野県松本市深志1-3-11 コングロM B1F~2F
大阪屋帳合。JR篠ノ井線松本駅駅前のコングロMビル地下1階から地上2階合計1050坪で、2011年より営業されてきた店舗がリニューアルオープンします。減床ではなく、コミック売場訳150坪を同ビル3Fに新規オープンするアニメ・ホビー特化店「文教堂JOY」380坪に移すためです。これによりむしろコミック以外の売場のボリュームアップを図るというのが今回の肝です。弊社には芸術書主要商品のご発注をいただきました。増強されるのは、芸術、実用、地図、児童書の4分野のようです。芸術書を増やしていただけるというのがとてもありがたいですね。

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一方閉店情報です。旅の本の専門店「BOOK246」(港区南青山1-2-6 Lattice aoyama1F)が老朽化したビルの建て替えに伴い、契約満了ということで4月15日で閉店されました。また、「喜久屋書店熊本店」(熊本市中央区下通1-3-10 ダイエー熊本下通店6F)が、ダイエーの閉店売却に伴い、5月11日に閉店。ここ数年、入居するビルの事情による閉店が増えているように感じます。全国のあちこちで建物やインフラの老朽化が進み、並行して不況による商業施設の閉鎖撤退も進んでいるこんにち、入居するにもリスクが必ず伴うわけです。しかし土地建物が自前の新規書店というのも恐らくは敷居が高い話なのでしょう。

最後に帳合変更です。書籍、文具雑貨、レンタル/セルCD・DVDを扱う滋賀県拠点の複合店チェーン「サンミュージック」さんが3月1日より、帳合を太洋社からトーハンに変更されました。サンミュージックさんのウェブサイトの会社概要ではまだ主要取引先の中に太洋社の記載が残っていますが、完全に全店舗が切り替えになったようです。太洋社さんはここ数年の「帳合戦争」に巻き込まれ、喜久屋書店がトーハン帳合になり、さらには今般、中堅チェーンもトーハン帳合になったわけです。報道されているように、業界第5位の太洋社さんでは「出版社への支払金額を確定する買掛金システムでトラブル」が4月末に発生しました。その後遺症が5月末もまだ残っている御様子です。以前あった本社移転の話も本決まりにはなっていないようですし、今後の動向に注目が集まっています。

業界第3位の大阪屋さんも今春「講談社、小学館、集英社、大日本印刷、楽天、KADOKAWAの計6社の出資」を受け、新社長に講談社出身の大竹深夫さんが就任されたほか、小学館や集英社から相談役が選任され、現在「適正な決算の実行と収益改善を踏まえた新生・大阪屋」を目指しておられる最中です。大阪本社は移転が完了済。想像をたくましくすれば、こうした版元からのテコ入れによって、取次業界の再編が起こりうるのでしょうか。帝国データバンクが昨年10月に発表した「出版業界2012年度決算調査」を元にして計算すると、第1位の日販に拮抗しうるのは、第2位のトーハンと第3位の大阪屋の売上をあわせた場合です。ここにさらに、大阪屋と流通面で提携している業界第4位の栗田や、トーハンの元副社長が現在社長を務める業界第8位の中央社が加われば、単純計算では日販を凌ぐ売上になります。むろんこのような統合が起こりうるなどとは考えにくいですけれども、生き残りを考えるならばどんな組み合わせにせよ、上位全社を巻き込んだ再編は必至かもしれません。

鍵となりうるのは帝国データバンクのリポート上では取次に分類されているTRC(第5位)の今後でしょうか。現在はDNP傘下であり、日販や太洋社帳合で商品を調達しています。太洋社は業界第6位。かつてはTRCはトーハンと付き合っていましたが、帳合戦争の発端のひとつであったトーハンの後継人事問題が影響し、日販に帳合変更。ギクシャクしていたトーハンには現在、講談社の野間省伸社長が相談役に復帰。入り組んだ関係が再編へと解きほぐされていくことはあるのでしょうか。

# by urag | 2014-06-06 14:45 | Comments(0)
2014年 06月 05日

国際カンファレンス「デリダ・トゥデイ」第4回の様子

★西山雄二さん(訳書:デリダ『条件なき大学』、共訳:『ブランショ政治論集』)
★宮﨑裕助さん(訳書:ド・マン『盲目と洞察』)
2014年5月28日~31日に、ニューヨークのフォーダム大学にて開催された国際カンファレンス「Derrida Today」第4回の様子を、参加された四名の研究者の皆さんが報告されています。西山雄二(首都大学東京)、宮﨑裕助(新潟大学)、亀井大輔(立命館大学)、吉松覚(京都大学大学院・日本学術振興会)の四氏がそれぞれリポートを書かれており、脱構築研究会のウェブサイトで公開されています。西山さんと宮崎さんはカンファレンスの掉尾を飾る講演、ドゥポール大学(De Paul University)の哲学教授マイケル・ナース(Michael Naas)さんによる「デリダ最盛期(Derrida Floruit)」が素晴らしかったと特記されています。ナースは周知の通りデリダの著書の数々の英訳やデリダ論などで国際的に知られている研究者ですが、日本ではまだ訳書はありません。デリダが死去した10月8日の一週間後に最新著『The End of the World and Other Teachable Moments: Jacques Derrida's Final Seminar』がフォーダム大学出版から刊行される予定です。

なお、フォーダム大学出版の編集長を務められていたヘレン・ターター(Helen Tartar, 1951-2014)さんが今年3月3日にコロラド州デンバーの交通事故により62歳で亡くなられたことは、英米の多くの人文系編集者や研究者にとって大きな衝撃を与えたようです。ターターさんの名前をスタンフォード大学出版やフォーダム大学出版が刊行する人文社会系(特に批評理論系)書籍の謝辞で見かけたことのある日本の読者は、それなりの人数がいらっしゃることでしょう。スタンフォードからフォーダムに十年ほど前に移籍されたのは私はてっきりヘンドハントだと当時思っていたのですが、スタンフォードの組織改変によるものだったらしいことを今さら知って驚きました。人員整理による人文系編集者の退職は、90年代以降日本でもアメリカでも顕著になっていた現象かもしれません。フォーダム大学出版のディレクターFred Nachbaurさんによる3月5日の記事「Fordham University Press Mourns Loss of Editorial Director」や、スタンフォード大学に現在在籍されている評論家Cynthia Havenさんによる3月15日付の記事「“A profound intellectual joy”: In memoriam, legendary editor Helen Tartar」、イェール大学ドイツ文学客員教授のHenry Sussmanさんによる3月7日付記事「Helen Tartar, Editorial Director, Fordham University Press, 1951-2014」(コメント欄でヘイドン・ホワイトさんが「彼女の死は大きな損失」等と書き込んでおられます)などをご参照いただけたらと思います。

# by urag | 2014-06-05 14:13 | 書評・催事・広告 | Comments(0)