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2022年 11月 20日

注目新刊:ジャコブ・ロゴザンスキー『政治的身体とその〈残りもの〉』法政大学出版局、ほか

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★まもなく発売となる新刊書の中から注目書を列記します。

あなたがたに話す私はモンスター ――精神分析アカデミーへの報告』ポール・B・プレシアド[著]、藤本一勇[訳]、法政大学出版局、2022年11月、本体1,500円、B6変型判並製142頁、ISBN978-4-588-13034-2
政治的身体とその〈残りもの〉』ジャコブ・ロゴザンスキー[著]、松葉祥一[編訳]、本間義啓[訳]、法政大学出版局、2022年11月、本体3,800円、四六判上製300頁、ISBN978-4-588-01151-1
7・8元首相銃撃事件――何が終わり、何が始まったのか?』河出書房新社編集部編、2022年11月、本体1,800円、A5判並製256頁、ISBN978-4-309-22871-6
『灰燼のなかから――20世紀ヨーロッパ史の試み』巻、コンラート・H・ヤーラオシュ[著]、橋本伸也[訳]、人文書院、2022年11月、本体各5,500円、A5判上製410/436頁、ISBN978-4-409-51095-7/978-4-409-51096-4
プラットフォーム資本主義』ニック・スルネック[著]、大橋完太郎/居村匠[訳]、人文書院、2022年11月、本体2,200円、4-6判並製180頁、ISBN978-4-409-03119-3
SNSフェミニズム――現代アメリカの最前線』井口裕紀子[著]、人文書院、2022年11月、本体2,000円、4-6判上製202頁、ISBN978-4-409-24150-9

★法政大学出版局さんの近刊書2点。いずれも著者の2冊目の訳書になります。『あなたがたに話す私はモンスター』は、スペイン出身の哲学者でトランス・クィア活動家のポール・B・プレシアド(Paul B. Preciado, 1970-;出生名Beatriz)が2019年11月17日にパリで開催された〈フロイトの大義〉学派の国際大会における講演の原稿全文『Je suis un monstre qui vous parle : Rapport pour une académie de psychanalystes』(Grasset, 2020)を全訳したもの。当時は聴衆からの反感と主催者の非協力的応対によって4分の1しか発表できなかったそうで、その反響の大きさから海賊版が出ていたと言います。

★「この場で、フロイトの女性嫌いやラカンの人種差別主義やトランス嫌いを告発するつもりもありません。私が非難しているのは、20世紀に作られた精神分析が、いつまでも性差の認識論と西洋の植民地主義的な支配理性に忠実なままであることです。これは個人の善意によって解決できるような問題ではありません。〔…〕けれども、あなたがたには集団的な責任があります」(71~72頁)。

★「私の使命は、精神分析と精神医学の「対象」が、ジェンダーや性や人種について規範の暴力を維持している制度的・臨床的・ミクロ政治的な諸装置に仕返しできるようにすることです。私たちには臨床転換が必要です。これは精神分析を革命的に変異させることとその家父長制的-植民地主義的な諸前提を批判的に乗り越えることによってしかなしえません」(100頁)。

★「今日、私はみなさまの前に糾弾者として現れたのではありません。そうではなく、むしろ性差の認識論的暴力の警報装置として、新しいパラダイムの探究者として現れたのです。/認識転換に賛同する精神分析家のみなさん、私たちに加わってください! 一緒に出口を作りましょう!」(101頁)。

★『政治的身体とその〈残りもの〉』は、フランスの哲学者ジャコブ・ロゴザンスキー(Jakob Rogozinski, 1953-)さんによる身体論をめぐる論文7本を日本語版独自編集でまとめた1冊。書き下ろしの「日本の読者へのメッセージ」も付されています。曰く「この論集を構成しているテクストを通じて見出され、少しずつ錬成されるのがこの〔私-肉の〕現象学であり、私は読者の皆さんに、本書に収録されたさまざまなエスキスのなかに、脱身体化-再身体化のモチーフ、残りもののモチーフ、交差配列の危機のモチーフが浮かび上がっていることを見ていただきたいと思っている」(2頁)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★河出書房新社さんの新刊『7・8元首相銃撃事件』は、大澤真幸さんをはじめとする20名の識者の寄稿と、白石嘉治さんと栗原康さんの対談が掲載された、アンソロジーです。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「この事件の一報を聞いた時に「やった」と思いました。悪いやつは殺られるはずだと思っていたから遅いくらいでした。彼が個人で決起したというのが分かった時に、これをすぐに映画にしたいと考えました」(足立正生「映画で山上を引き継ぎたい――なぜ『REVOLUTION+1』を撮ったのか」252頁)。このストレートな発言には釘付けになりました。

★人文書院さんの新刊より3点。『灰燼のなかから』は、ドイツ出身で米国ノースカロライナ大学にて教鞭を執っている歴史学者コンラート・H・ヤーラオシュ(Konrad H. Jarausch, 1941-)さんの著書『Out of Ashes: A New History of Europe in the Twentieth Century』(Princeton University Press, 2015)の全訳。「繁栄の輝きと破壊の悲惨を往還する20世紀ヨーロッパ〔をめぐる〕トランスナショナルな歴史の試み」(上巻帯文より)であり、「複数形のモダニティが競合する20世紀ヨーロッパ、その像を生き生きとした描写で描く」(下巻帯文より)大著です。ヤーラオシュさんの初めての訳書となります。巻頭には2021年11月1日付の「日本語版へのはしがき」と、2022年4月12日付の「「日本語版へのはしがき」へのポストスクリプト」が付されています。後者ではロシアによるウクライナ侵攻が言及されています。

★『プラットフォーム資本主義』は、英国で教鞭を執るカナダ出身の哲学者ニック・スルネック(Nick Srnicek, 1982-)さんの初の単独著『Platform Capitalism』(Polity, 2016)の訳書。アレックス・ウィリアムズ(Alex Williams)さんとの2013年の共作論考「加速派政治宣言」(『現代思想』2018年1月号所収、著者名はスルニチェクと表記)で知られる、注目の若手の注目書です。「本書の力点は、メジャーなテック企業を、資本主義的な生産様式の枠内における経済的なアクターとして考えることによって、そうした企業について多くのことを理解できるようにする点にある」(11頁)。「本書の目的は、これらのプラットフォームをより広範な経済学の歴史の文脈に位置づけることであり、利益を生み出す手段としてそれらを理解し、それらが結果的に作り出したいくつかの傾向の概略を述べることにある」(15頁)。

★『SNSフェミニズム』は、米国のフェミニズム研究がご専門の井口裕紀子(いのくち・ゆきこ, 1991-)さんの初の単独著。博士論文「現代アメリカにおけるソーシャルメディアから広がるフェミニスト・ムーブメント」が本書のベースになっているとのことです。「アメリカで活動する300のグループを調査した、現代フェミニズムの熱気を伝える最新の研究」(帯文より)。巻末には各グループの名称と活動テーマが一覧になっています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

バッサ・モデネーゼの悪魔たち』パブロ・トリンチャ[著]、栗原俊秀[訳]、共和国、2022年11月、本体2,800円、菊変型判並製352頁、ISBN978-4-907986-92-6
統一教会と改憲・自民党』佐高信[著]、作品社、2022年11月、本体2,000円、四六判並製270頁、ISBN978-4-86182-945-1
曙食堂』東野光生[著]、作品社、2022年11月、本体1800円、46判上製308頁、ISBN978-4-86182-938-3
あの日々』高木國雄[著]、作品社、2022年11月、本体1800円、46判上製316頁、ISBN978-4-86182-944-4

★『バッサ・モデネーゼの悪魔たち』は、ドイツに生まれイタリアで活躍するジャーナリスト、パブロ・トリンチャ(Pablo Trincia, 1977-)の著書『Veleno. Una storia vera』(Einaudi, 2019)の訳書です。原題をそのまま訳すと『毒――ある実話』。1997~8年に北イタリアのバッサ・モデネーゼで起きたカルト犯罪の真実に迫ったノンフィクションです。子供たちに対する性的虐待や悪魔的儀式の疑いで複数の両親たちが逮捕され、子供たちは家族から引き離されたものの、事件の裏には若い女性カウンセラーやソーシャルワーカーによる、子供たちへの長時間にわたる過剰に誘導的な聴き取りと恣意的な分析があった、というとても怖い話。カウンセラーは再調査の折に逮捕されず、マスコミに対しても自己弁護を繰り返しているとのことで、後世が教訓とすべき貴重な歴史ドキュメントとなっています。

★作品社さんの今月新刊から3点。『統一教会と改憲・自民党』は発売済。『創』『社会新報』『社会民主』『フォーラム21』など各媒体に2021年から2022年にかけて発表してきた時評をまとめ、書き下ろしをいくつか加えたもの。小説2作、『曙食堂』『あの日々』は先週金曜日18日に取次搬入済。書店店頭に並ぶのは今週からになるかと思われます。『曙食堂』は水墨画家・作家が描く「昭和への鎮魂」(帯文より)。『あの日々』は「ベテラン弁護士が活写する迫真の法廷小説」(帯文より)。


# by urag | 2022-11-20 23:22 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2022年 11月 15日

月曜社12月新刊:築地正明『古井由吉――永劫回帰の倫理』

2022年12月13日取次搬入予定 *文学・批評

古井由吉――永劫回帰の倫理
築地正明[著]
本体価格3,000円 46判(縦188×横125×束18mm)並製304頁 重量:275g
ISBN:978-4-86503-156-0 C0095

古井由吉はなぜ厄災と戦争と病を書きつづけたのか。その文学の深みに迫り、批評史の新展開へ挑む、新鋭による作家論の決定版。

目次:
聖、民俗と記憶
折り重なる厄災の記憶
病者の光学と「私」の消失――『山躁賦』について
完全過去の精神と永遠の現在 
言葉の音律に耳を澄ます――翻訳と創作の関係について
反復する「永遠の今」 
エッセイズムとは何か
見者という現象――既視感と予言について
見者と聖耳――視覚と聴覚の関係について
先祖になること
永劫回帰の倫理
出典
あとがき

安藤礼二氏推薦「滑稽にして厳粛、遊行者にして予言者、無縁となった無数の死者たちの「墓守」……。繰り返される厄災の記憶のなかで、表現の聖なる主体が立ち上がる。そこでは、《永遠の現在》と歴史が、見ることと聞くことが、現実と虚構が、生と死が一つに入り混じり、あらゆる時間、あらゆる「私」の共生が可能になる。論理と情熱が共振する、未曾有の作家論にして文学論がここに生まれた。」

築地正明(つきじ・まさあき, 1981-):福岡生まれ。立教大学、武蔵野美術大学、京都芸術大学ほか非常勤講師。2019年に刊行された『わたしたちがこの世界を信じる理由――『シネマ』からのドゥルーズ入門』(河出書房新社)で注目される。共著に『古井由吉――文学の奇蹟』(同前、2020年)、共編書に古井由吉『私のエッセイズム』(同前、2021年)など。

アマゾン・ジャパンで予約受付中

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# by urag | 2022-11-15 00:45 | 近刊情報 | Comments(0)
2022年 11月 13日

注目新刊:『中世思想原典集成(第Ⅱ期第3巻)アンセルムス著作集・書簡集』平凡社、ほか

中世思想原典集成(第Ⅱ期第3巻)アンセルムス著作集・書簡集』アンセルムス[著]、矢内義顕[訳]、上智大学中世思想研究所[編訳・監修]、平凡社、2022年11月、本体16,000円、A5判上製936頁、ISBN978-4-582-73436-2
今鳴いた烏がもう笑った――鬼頭智子作品集』鬼頭智子[著]、平凡社、2022年11月、本体3,600円、A4変型判並製144頁、ISBN978-4-582-27336-6
『Cosmos of Silence』宇平剛史[著]、ORDINARY BOOKS、2022年10月、本体5,400円、A4判上製136頁、978-4-600-01055-3

★『アンセルムス著作集・書簡集』は、「中世思想原典集成」の第Ⅱ期第3巻。帯文に曰く「〈スコラ学の父〉の著作・書簡・伝記――動乱のヨーロッパ11世紀を生きたカンタベリー大司教アンセルムス。盛期中世の神学への先駆とされる碩学の思考の全貌と、霊性の核心。主著『モノロギオン』『プロスロギオン』(本集成第Ⅰ期『前期スコラ学』所収)に続く生涯の著作を全新訳により網羅」と。毎回の大冊にはただただ圧倒されるばかり。品切後の古書価は例外なく高額になるので買い逃し注意です。目次は以下の通り。

目次
総序|矢内義顕
真理について
選択の自由について
悪魔の堕落について
グラマティクスについて――どのようにグラマティクスは実体でありまた性質であるか
言〔ことば〕の受肉に関する書簡
神はなぜ人間となったか
処女の懐胎と原罪について
聖霊の発出について
無酵母のパンと酵母入りパンの犠牲に関する書簡
司教ウァレラムヌスからアンセルムス宛の書簡
教会のサクラメントに関する書簡
自由選択と神の予知、予定および恩恵との調和について
書簡集
アンセルムス伝|カンタベリーのエアドメルス
索引(聖句引照・人名/固有名)

★これまでに同集成第Ⅱ期では、『トマス・アクィナス 真理論』上下巻(山本耕平訳、2018年)が刊行されていますが、続刊として『ニコラウス・クザーヌス著作集』上下巻(八巻和彦監修)が予定されています。同集成第Ⅰ期第17巻『中世末期の神秘思想』未収録の著作約20篇を全新訳で収録とのことです。すごいですね。

★『今鳴いた烏がもう笑った』は、画家の鬼頭智子(きとう・ともこ, 1974-)さんの初期作品から最新作まで約120点を収録した初めての作品集。鬼頭さん自身が問答をあつらえたインタヴュー形式の「ちょっと抜けてる上に、いつも怠けたいなあと思ってる人たち」のほか、2本の解説、高橋睦郎さんによる「夢児たち 鬼頭智子讃」、宇野亞喜良さんによる「えび娘の一人遊び 鬼頭智子」を併録。擬古典調の日本画を背景にした童子たちの姿はさながら異世界の一幕を垣間見るような不思議な感覚を与えます。

★『Cosmos of Silence』は、現代美術家でデザイナーの宇平剛史(うひら・ごうし, 1988-)さんのアートワークとデザインワークをまとめた初めての作品集です。ORDINARY BOOKSの代表者・三條陽平さんによる宇平さんへのインタビュー「静かで遅いイメージ──繊細な領域を知覚する」、美学者・星野太さんによるエッセイ「愛の設計」、美術批評家・沢山遼さんによる「肌理の倫理」を収録。巻末には、デザインワークで採用した様々な用紙の仕様データを掲載。月曜社でお世話になった、リピット水田堯『原子の光(影の光学)』、B・シュティーグラー『写真の映像』も掲出されています。

注目新刊:『中世思想原典集成(第Ⅱ期第3巻)アンセルムス著作集・書簡集』平凡社、ほか_a0018105_00235823.jpg


# by urag | 2022-11-13 23:18 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2022年 11月 11日

本日取次搬入:ウィリアム・モリス『小さな芸術』川端康雄編訳

ウィリアム・モリス『小さな芸術――社会・芸術論集Ⅰ』(川端康雄編訳)の新刊配本分を本日11月11日(金)取次搬入いたしました。事前に御発注のあった書店様にのみ配本させていただいています。店頭には16日以降、順次並び始めるのではないかと思われます。どの書店様に扱いがあるかは、お気軽にお問い合わせください。

# by urag | 2022-11-11 14:42 | 販売情報 | Comments(0)
2022年 11月 06日

注目新刊:ちくま学芸文庫11月新刊、ほか

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★まもなく発売となる、ちくま学芸文庫11月新刊4点5冊を列記します。

『ブラッドランド――ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実(上・下)』ティモシー・スナイダー[著]、布施由紀子[訳]、ちくま学芸文庫、2022年11月、本体各1,600円、文庫判478頁/528頁、ISBN978-4-480-51144-7/51145-4
『言語学を学ぶ』千野栄一[著]、ちくま学芸文庫、2022年11月、本体1,000円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-51134-8
『病気と治療の文化人類学』波平恵美子[著]、ちくま学芸文庫、2022年11月、本体1,200円、文庫判352頁、ISBN978-4-48-051152-2
『沖縄の食文化』外間守善[著]、ちくま学芸文庫、2022年11月、本体1,000円、文庫判228頁、ISBN978-4-480-51154-6

★『ブラッドランド』は、2015年に筑摩書房より刊行された単行本上下巻の文庫化。原著は2010年刊で、2022年に新版が刊行。これに付された新しいあとがきが、今回の文庫版では新たに訳出されています。訳者あとがきも新しく書き直されています。帯文に曰く「惨劇の全貌・・・ウクライナ、ポーランド、ベラルーシ、バルト三国。ロシアと西欧諸国に挟まれた地で起きた知られざる歴史」。「封印された歴史・・・都合な真実を隠蔽したのは誰か――空前の国家権力の犯罪を暴く歴史書の金字塔」。ブラッドランド=流血地帯とはすなわち、ナチスとソ連の暴虐によって第二次大戦と大祖国戦争で1400万人の市民が命を落としたウクライナ、ポーランド、ベラルーシ、バルト三国を指します。

★『言語学を学ぶ』は、2002年に三省堂より刊行された『言語学 私のラブストーリー』を改題文庫化したもの。第Ⅰ部「言語学へのいざない」では、音声学、音韻論、比較言語学など、16のキーワードを解説し、第Ⅱ部「近代言語学を築いた人々」ではクルトネ、ソシュール、マテジウス、カルツェフスキー、マルティネ、メシチャニーノフ、サピア、ヤコブソン、メイエ、河野六郎が、簡潔に紹介されています。著者は2002年に逝去されています。巻末には、千野亜矢子さんによる「あとがき」と、東京大学准教授の阿部賢一さんによる解説「言葉をこよなく愛した言語学者」が加わっています。

★『病気と治療の文化人類学』は、1984年に海鳴社より刊行された単行本の文庫化。文庫化にあたり加筆修正を行ったとのことです。「原著の文章のわかりにくい箇所を手直しし、文脈上必要な情報を加筆し、最小限であるが、新しい研究成果も加えている」と「文庫版著者あとがき」に記されています。巻末には東京大学の浜田明範さんによる文庫版解説「パイオニアの凄み」が加わっています。

★『沖縄の食文化』は、2010年に沖縄製粉株式会社が刊行した単行本の文庫化。文庫化に際し、大幅な加筆修正が施されているとのこと(著者は2012年に没しているため、文庫編集部と著作権継承者との間で合議のもと行ったと巻末に特記されています)。巻末解説「偉大なるガチマヤー」は斎藤真理子さんが寄せられています。ガチマヤーとは食いしん坊のこと。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

ゲンロン13』ゲンロン、2022年11月、本体2,800円、A5判並製500頁、ISBN978-4-907188-47-4
野生の教養――飼いならされず、学び続ける』岩野卓司/丸川哲史[編]、法政大学出版局、2022年11月、本体2,800円、四六判並製378頁、ISBN978-4-588-13033-5

★『ゲンロン13』は、いわゆるメイン特集はなく、東さんの巻頭論文「訂正可能性の哲学2、あるいは新しい一般意志について」、東さんと梶谷懐さん、山本龍彦さんの座談会「情報時代の民主主義と権威主義」などを中心とし、小特集「ロシア的なものとその運命」では、座談会や翻訳論考のほか、「ポストソ連思想史関連年表(2)2018-2022」が掲載されています。目次詳細や、東さんのメッセージは誌名のリンク先をご覧ください。編集後記によれば、来春には「別冊ゲンロン」が出版されるとのこと。

★東さんの巻頭論文の冒頭より引用します。「民主主義の危機が世界中で叫ばれている。本論は、その状況に呼応しつつ、2011年に刊行した『一般意志2.0』という著作の主題を論じなおし、民主主義と政治の未来について考えるために書かれた論文である。民主主義と政治の未来について考えるとは、すなわち人間の未来について考えるということでもある。/ここに掲載されるのはその論文の三分の二ほどである。残りは2023年の春に刊行予定の書籍で発表される。同書には、本論文と1年前に『ゲンロン12』に発表した論文「訂正可能性の哲学」が併せて収録される予定である」(40頁)。

★『野生の教養』は、明治大学大学院教養デザイン研究科の教員による教養入門の書。「私たちが本書で提案したい教養は「野生の教養」というものである。野生とはまずは「飼いならされていない」ということである。現代社会では私たちは飼いならされた思考にあまりに慣れてしまっている。だからこそ、野生が見直されている。野生というのは、単に原始時代やアフリカのジャングルに特有なものではない。実は私たちの日常に潜んでいるのだ。身近な自然に触れたときはもちろんのこと、ポケモンなどのアニメのキャラクターやゲームなどにも野生を感じることはできる。慣れ親しんだ日常をちょっと違った角度から眺めてみただけで、私たちは野生に出会う驚きを体験する。教養のなかで無意識のうちに眠っている野生を暴き出すのが本書の目的である」(「はじめに」より)。

★「「野生」による教養の問い直しは、従来の教養が基盤にしている西欧中心の歴史の問い直しにもつながる。〔…〕「未開」の人たちに固有な歴史は無視されており、西欧との関係においてしか彼らの歴史は普遍的な歴史に登録されえないのだ。こういった歴史観に抗して、「野生の教養」は「野生」を歴史の原点に据えながら、「未開」の人たちに固有な歴史を解放することで歴史を再解釈していく。ここに今までの教養とは違う教養の新たな姿が見えてくるだろう」(同)。「“野生”の思考」「“野生”の政治」「“野生”の人類史」の三部構成。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★続いて金剛出版さんの11月新刊より3点。

精神分析のゆくえ――臨床知と人文知の閾』十川幸司/藤山直樹[編著]、金剛出版、2022年11月、本体3,400円、4-6判上製256頁、ISBN978-4-7724-19321
はじめてのメラニー・クライン グラフィックガイド』ロバート・ヒンシェルウッド/スーザン・ロビンソン[著]、オスカー・サーラティ[絵]、松木邦裕[監訳]、北岡征毅[訳]、金剛出版、2022年11月、本体2,400円、A5判並製192頁、ISBN978-4-7724-1915-4
精神分析のパラダイム・シフト――アンドレ・グリーンの精神分析』ロジーヌ・ジョゼフ・ペレルバーグ/グレゴリオ・コホン[編]、館直彦/増尾徳行[監訳]、加茂聡子/工藤晋平/鈴木菜実子/吉村聡 [訳]、金剛出版、2022年11月、本体4,000円、A5判上製208頁、ISBN978-4-7724-1931-4

★『精神分析のゆくえ』は、「2016年から始められた、小寺記念精神分析研究財団主催「学際ワークショップ」の第1回から第5回までの発表を、1冊の書物にしたもの」(「はじめに」より)。「精神分析を人文学との関係で捉え直すという試み」であり、「この試みは、今後も継続して行う予定である」(同)とのことです。寄稿者は、國分功一郎、藤山直樹、原和之、佐藤淳二、妙木浩之、立木康介、松木邦裕、十川幸司、久保田泰考、岡田温司、宮﨑裕助、村上靖彦、の各氏。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。特に岡田さんの「ジョルジョ・アガンベンと精神分析」、宮﨑さんの「共感の共同体論再考――来たるべきテレパシー民主主義のために」は、本書が心理学書売場だけでなく哲学書売場で同時展開されても充分に読者の興味を惹くものではないかと思われます。

★『はじめてのメラニー・クライン グラフィックガイド』は、『Introducing Melanie Klein: A Graphic Guide』(Icon Books, 1997)の全訳。イラストを多用した概説書シリーズ「FOR BEGINNERS」の1冊。現代書館から翻訳出版された同シリーズでは、『フロイト』1980年、『ユング』1993年、『ラカン』1997年などの既刊書があります。いっぽう、『精神分析のパラダイム・シフト』は、『The Greening of Psychoanalysis: Andre Green's New Paradigm in Contemporary Theory and Practice』(Routledge, 2017)の訳書。リツァ・グティエレス-グリーン、ロジーヌ・ジョゼフ・ペレルバーグ、ジェド・セコフ、グレゴリオ・コホン、マイケル・パーソンズらが寄稿しています。

★最後に作品社さんの10~11月の新刊より3点。

パゾリーニ』四方田犬彦[著]、作品社、2022年11月、本体12,000円、A5判上製1088頁、ISBN978-4-86182-943-7
新海誠論』藤田直哉[著]、作品社、2022年10月、本体2,000円、四六判並製224頁、ISBN978-4-86182-934-5
Forget it Not』阿部大樹[著]、作品社、2022年10月、本体2,200円、四六判変型上製208頁、ISBN978-4-86182-937-6

★特筆すべきは、四方田さんの書き下ろし3000枚のライフワーク『パゾリーニ』。全24章と補論2篇。「本書の意図はきわめて単純なものである。パゾリーニの側に立って人生を見つめること。パゾリーニが芸術創造にあたって抱いていた情熱の諸相を見定めること。この二点につきる」(「後書き」より)。A5判2段組で1000頁を超える大作です。

★藤田さんの『新海誠論』は「映像作品、関連書籍、本人インタビューなど網羅、『すすめの戸締まり』への軌跡を完全解明」(帯文より)。阿部さんの『Forget it Not』は精神科医で翻訳家の著者による初めての論文およびエッセイ集とのこと。

# by urag | 2022-11-06 23:13 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)