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2020年 03月 12日

本日発売:上村忠男『アガンベン《ホモ・サケル》の思想』講談社選書メチエ、ほか

本日発売:上村忠男『アガンベン《ホモ・サケル》の思想』講談社選書メチエ、ほか_a0018105_18563636.jpg


★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、編訳書:パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
本日発売の講談社選書メチエ3月新刊の1冊として、アガンベンの主著「ホモ・サケル」シリーズの「全容を平明に解説した」(カバー表4紹介文より)一書を上梓されました。全8章をプロローグとエピローグが挟んでいます。プロローグと第V章「オイコノミア」、第VI章「誓言と任務」、さらに巻頭と巻末の「まえがき」「あとがき」が書き下ろしです。「既発表の文章にも多かれ少なかれ補正を施してある」とのことです。巻頭の「まえがき」が書名のリンク先で立ち読みできます。目次も同様にご確認いただけます。

講談社選書メチエ 2020年3月 本体1,500円 四六判並製192頁 ISBN978-4-06-518756-2
帯文より:20年をかけて完結した全4巻計9冊から成る壮大なシリーズ――聖なる人間〔ホモ・サケル〕の全容を第一人者が解き明かす!

まえがきより:「〔アガンベンは《ホモ・サケル》プロジェクトにおいて〕古代ギリシア・ローマから中世の神学、さらには近代の哲学にいたるまで、精緻かつ豊富な文献学的知知識をいかんなく活用しながら、「脱構成的可能態(potenza destituente)」、すなわち、アリストテレスの『形而上学』におけるように現実態へと構成されることがなく、どこまでも可能態のままとどまり続ける可能態――アリストテレスが「アデュナミス(adynamis)」と呼んでいるもの――の理論の構築に向けて問題を深化させていったのである。射程は「生政治」から「政治神学」、さらには「共同体」にまで及んでおり、まことに壮観と呼ぶにふさわしいプロジェクトである」(7頁)。


★カール・ヤスパースさん(著書:『ニーチェ』)
ヤスパースが死去する5年前の1964年に、バイエルン放送の求めに応じ、3か月間合計13回行なったテレビ講義をまとめた『Kleine Schule des philosophischen Denkens』(Piper, 1965)の新訳が久しぶりに刊行されました。松浪信三郎(まつなみ・しんざぶろう、1913-1989)さんによる訳書『哲学の学校』(河出書房新社、1966年;改訂版、1971年;新装版、1980年;改訂版新装、1996年)は幾度となく再刊され親しまれてきましたが、ここしばらく品切でしたので、時宜を得た新訳ではないかと思います。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。カバー装で、帯はありません。訳者の松代和郎(まつしろ・かずお、1931-)さんは、兵庫県立大学(神戸商科大学)や大阪国際大学の名誉教授でいらっしゃいます。マックス・ウェーバー関連の著者と訳書をこれまでに刊行されています。巻末の「訳者後語」では、アーレント宛のヤスパースの手紙(1964年4月)が紹介されています。「この講義はやってみたかったのですが――本質的な論点をもって、大衆のなかの個人々々をつかまえる試み。哲学が秘教的な学問のままでは未来はないし、現在の人びとの真剣さに応えることもできない」(大島かおり訳『アーレント=ヤスパース往復書簡 1926-1969(3)』みすず書房、2004年、105頁)。

カール・ヤスパース[著] 松代和郎[訳]
昭和堂 2020年3月 本体3,500円 4-6判上製308頁 ISBN978-4-8122-1917-1
版元紹介文より:ヤスパースによる13講からなる哲学入門。現代人が向き合わねばならいテーマについて、自分で思考し決断するための古典的入門書。

第XIII講「世界の中の哲学」第3節より:「決定的に重要なことは、哲学は全的な真理を欲するが、世界はそれを欲しない、ということである。哲学は平和攪乱者、すなわち邪魔者なのである。/しかし真理とは何なのか、そのこと自身が問題となる。哲学は、包括者の諸様式における真実存在の多様な意味において真理を確認する。それは一なる真理の意味と内容とを探求するが、それを所有してはいない。何故なら真理はわれわれにとって不動の相在ではなく、閉鎖されえない無限の運動だからである」(253頁)。

第XIII講「世界の中の哲学」第9節より:「そこで哲学は何を為すべきか。/それは少なくとも自己欺瞞に陥らないようにすることを教える。いかなる事実もいかなる可能性も、それは無視しない。それはありうべき禍いを直視することを教える。それは世界の中での安心を妨げる。しかし、それは禍いを不可避と考える無分別をも妨げるのである。何故なら、何が生ずるかは、なおわれわれの責任でもあるからである」(267頁)。

ご参考までに松浪訳の上記引用の該当箇所をそれぞれ引用しておきます。

第XIII講「世界における哲学」第3節より:「決定的なことは、こういうことである。哲学は、全真理を欲するが、世界はかかる全真理を欲していない。哲学は平和をみだすものである。/けれども、真理とは何であるかということが、それ自身問いになる。哲学は、包括者のありかたによる真理存在の多様な意味において、真理を確かめる。哲学は、一つの真理と意味と内容を求めるが、それをもっているわけではない。なぜなら、真理は、われわれにとって不動の本質存在ではなく、完結されえない無限の運動であるからである」(291~292頁)。

第XIII講「世界における哲学」第9節より:「しからば、哲学とは何であるべきか?/哲学は、少なくとも、あざむかれてはならないことを教える。哲学はいかなる事実、いかなる可能性をも、傍らへおしのけることを許さない。哲学は一見禍いと見えるものを平然と直視することを教える。哲学は世界のなかの平穏をみだす。けれども、哲学はまた、禍いを不可避なものとみなすような無分別を拒む。なぜなら、われわれにとって問題なのは、何が生じるかということであるからである」(308頁)。

ヤスパースのこの最晩年の講義はいまなお読者を震撼させる鋭さと深さを有しています。

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# by urag | 2020-03-12 18:37 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 03月 12日

新規取引店情報:月曜社の本を置いてくださる本屋さん

2020年4月24日(金)開店
くまざわ書店横須賀店(450坪中図書410坪)
横須賀市本町2-1-12 コースカベイサイドストアーズ 4F
トーハン帳合。弊社へのご発注は人文書の近年の主要商品と芸術書数点。くまざわ書店さんの新規店への出品は昨年9月20日開店の「くまざわ書店大分明野店」(770坪中図書668坪)以来。今回の横須賀店は、「ショッパーズプラザ横須賀」をフルリノベーションしたショッピングモール「COASKA Bayside Stores(コースカベイサイドストアーズ)」の4Fに出店。京急本線「汐入」駅より徒歩3分で、商圏内最大のショッピングモールとのこと。来月22日にプレオープンで、24日がグランドオープン。

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このほか、3月7日にリニューアルオープンした「六本木蔦屋書店」(日販帳合、旧TSUTAYA TOKYO ROPPONGI)をはじめとする蔦屋/TSUTAYA系の新規店と思しい出荷依頼が電算短冊のみでこのところ届いていますが、挨拶状などがまるでないので(六本木は内覧会の案内のみが届きましたが)、開店後もお付き合いがあるかどうかは今のところ未知数です。

3月20日:TSUTAYA BOOKSTORE HIRORO(日販帳合、弘前駅前「HIRORO」2F)
3月21日:ART LAB KYOTO(日販帳合、京セラ美術館ミュージアムショップ、運営:CCCアートラボ)
3月下旬:蔦屋書店羽田空港第2ターミナル店(日販帳合)
4月04日:奈良蔦屋書店(日販帳合、奈良県コンベンションセンター)

また、無印良品ないしMUJI BOOKSが四条畷市にできるようで、それがイオンモール四条畷の1Fに明日開店する店舗と関係しているのかどうかよく分かりませんが、日販から客注短冊は来ました。日販に詳細を尋ねてもいまだに回答なし。新規開店の概要すら出版社に知らせず客注短冊(!)のみで同一書目を複数冊発注してくる割には、半年後くらいに「売場変更」だのを理由に返品依頼が入る、というのがこの手のパターンなので、正直なところうんざりします。こういうユルい発注の仕方、本当に良くないです。


# by urag | 2020-03-12 15:33 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2020年 03月 12日

ブックツリー「哲学読書室」に山本圭さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」で、『アンタゴニズムスーーポピュリズム〈以後〉の民主主義』(共和国、2020年2月)の著者、山本圭さんによるコメント付選書リスト「アンタゴニズム(敵対性)と政治について考えるブックリスト」が公開開始となりました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために
55)築地正明(つきじ・まさあき:1981-)さん選書「信仰について考える。ベルクソンとドゥルーズと共に
56)浅野俊哉(あさの・としや:1962-)さん選書「〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
57)岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さん/赤羽健(あかはね・けん:1991-)さん選書「贈与論を通してどう資本主義を突き抜けていくか
58)秋元康隆(あきもと・やすたか:1978-)さん選書「「利他」とは何かを学ぶために
59)宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ:1974-)さん選書「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく
60)後藤護(ごとう・まもる:1988-)さん選書「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門
61)大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さん選書「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム
62)飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さん選書「思考を解き放て!
63)長濱一眞(ながはま・かずま:1983-)さん選書「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊
64)入江哲朗(いりえてつろう:1988–)さん選書「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊
65)福島勲(ふくしま・いさお:1970-)さん選書「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる
66)山本圭(やまもと:けい:1981-)さん選書「アンタゴニズム(敵対性)と政治について考えるブックリスト

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# by urag | 2020-03-12 14:16 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 03月 08日

注目新刊:ちくま学芸文庫2020年3月新刊4点、ほか

注目新刊:ちくま学芸文庫2020年3月新刊4点、ほか_a0018105_23533015.jpg


『大名庭園――江戸の饗宴』白幡洋三郎著、ちくま学芸文庫、2020年3月、本体1,300円、文庫判 320頁、ISBN978-4-480-09968-6
『類似と思考 改訂版』鈴木宏昭著、ちくま学芸文庫、2020年3月、本体1,200円、文庫判304頁、ISBN978-4-480-09969-3
『戦後日本漢字史』阿辻哲次著、ちくま学芸文庫、2020年3月、本体1,200円、文庫判320頁、ISBN978-4-480-09972-3
『はじめてのオペレーションズ・リサーチ』齊藤芳正著、ちくま学芸文庫、2020年3月、本体1,100円、文庫判208頁、ISBN978-4-480-09975-4

★ちくま学芸文庫のまもなく発売となる3月新刊は4点。『大名庭園』は1997年4月、講談社選書メチエの1冊として刊行されたものの文庫化。新しいあとがきはありませんが、尼﨑博正さんによる解説が加えられています。「『大名庭園』がはじめて世に出た時、庭園史研究の世界に衝撃が走った」と尼﨑さんは書かれています。庭園を、造形のみから評価するのではなく、遊びと儀式の空間であり、生きた総合芸術として論じた研究姿勢について、「庭園史の常識をさらりとくつがえし、日本庭園の本質を鮮明にしたことに大きな意味がある」と評価されています。著者の白幡洋三郎(しらはた・ようざぶろう:1949-)さんは国際日本文化研究センター名誉教授。ご専門は比較文化論、産業技術史です。

★『類似と思考 改訂版』は1996年12月に共立出版より刊行された単行本に大幅な改訂を施して文庫化したもの。巻頭の「はじめに」の末尾で文庫化について触れられており、「書き下ろしとまで言うのは気が引けるが、全面的な書き直しを行なった」とお書きになっています。本書は「思考は規則、ルールに基づいたものではない」、「類似は思考を含めた認知全般を底支えしている」、「類似に基づく思考=類推は、三項関係で成立する」という3点の主張を行うもの。著者の鈴木宏昭(すずき・ひろあき:1958-)さんは青山学院大学教授。ご専門は認知科学です。

★『戦後日本漢字史』は、2010年11月に新潮選書の1冊として刊行されたものの文庫化。帯文に曰く「受難と模索の歴史――それはGHQの漢字廃止案から始まった」。新たに付された「文庫版あとがき」は再刊をめぐる謝辞ではなく、一点シンニョウと二点シンニョウの混在状況について言及したもので、補論に近いです。旧版への加筆修正があったかどうかについては特記がありませんが、巻末の「戦後日本漢字史・年表」が更新されていないので、加筆なしということかと想像します。著者の阿辻哲次(あつじ・てつじ:1951-)さんは京都大学名誉教授。ご専門は漢字文化史。

★『はじめてのオペレーションズ・リサーチ』は2002年5月に講談社ブルーバックスの1冊として刊行された『はじめてのOR』の改題文庫化。内容の一部が改められ、巻末に「文庫化に際してのあとがき」が加えられています。オペレーションズ・リサーチは日本語で言えば「作戦研究」であり、軍事的な問題解決や改善のための方法を追究するもの。「ORとはなんだろう」「実際にORを使ってみよう」「ORのあゆみ」の3章立て。著者の齊藤芳正(さいとう・よしまさ:1948-)さんは陸上自衛隊の研究員や教官を務められ、ORの実務及び教育に長年携わられたとのことです。

★筑摩書房さんは今年2020年、創業80周年とのこと。特設サイトでは、ちくま学芸文庫さんの今後刊行予定の新企画として、「近代日本思想選(仮)」シリーズが予告されています。

邂逅――クンデラ文学・芸術論集』ミラン・クンデラ著、西永良成訳、河出文庫、2020年3月、本体1,400円、文庫判256頁、ISBN978-4-309-46712-2
ドイツ怪談集』種村季弘編、河出文庫、2020年3月、文庫判336頁、ISBN978-4-309-46713-9
超限戦――21世紀の「新しい戦争」』喬良/王湘穂著、坂井臣之助監修、劉琦訳、角川新書、2020年1月、本体1,200円、新書判328頁、ISBN978-4-04-082240-2

★河出文庫さんの発売済3月新刊より2点。『邂逅』は2012年1月に同社より刊行された単行本『出会い』の改題文庫化。原著は『Un rencontre』(Gallimard, 2009)。エピグラフに曰く「わたしの考察と回想との邂逅。わたしの古くからの(実存的および美的)主題と古くからの愛の対象(ラブレー、ヤナーチェク、フェリーニ、マラパルテ……)との邂逅」。「文庫版のための追記」によれば「訳文を全面的に見直し、旧稿の表現の不適切、不親切なところをかなり改めた。さらに注に、2012年以後の新たな情報をいくから加えることができた」とのことです。

★最終部(第九部)「原-小説『皮膚』」では、イタリアの作家クルツィオ・マラパルテ(Curzio Malaparte, 1898-1957)の代表作のひとつ『皮膚』(La pelle, Aria d'Italia, 1949)が論及されています。「『皮膚』の筋立ての時間は短いが、ここには人間のかぎりなく長い歴史がつねに見られる。〔…〕超現代的な戦争の残酷さが、もっとも古めかしい残酷さの後景のまえで演じられるのだ。実に根本的に変わった世界が同時に、悲しくも変わりえないもの、変わりなく人間的なものを見せてくれるのである」(227頁)。「終わりつつある戦時は、根底的であるとともに平凡な、忘却されるがまた永遠の真実を教えてくれる。永遠の真実とは、生者にたいして、死者は圧倒的な数的優位にあるという真実である。〔…〕みずからの優位を確信した死者たちは、わたしたちが生きているこの時間の小島のことを、新しいヨーロッパのこの微小な時間のことを嘲笑い、その無意味さ、その移ろいやすさをそっくりわたしたちに教えてくれるのである」(228頁)。『皮膚』は『皮』(岩村行雄訳、村山書店、1958年)としてかつて翻訳されたことがありますが、現在は入手しにくい部類の古書です。

★『ドイツ怪談集』は1998年12月に河出文庫の1冊として刊行された同名書目を新装復刊したもの。クライスト、ホフマン、ティーク、ケルナー、ホーフマンスタール、エーヴェルス、シュトローブル、シェッファー、ヤーン、パニッツァ、カシュニッツ、ホーラー、等の作品、合計16篇を収録。既訳書から採ったものが大半ですが、種村さんによる新訳も4篇あります。ハウフ「幽霊船の話」、ヘーベル「奇妙な幽霊物語」、マイリンク「こおろぎ遊び」、マイヤー「ものいう髑髏」です。寒い時期に読む怪談もまた格別な趣があります。ヤーンの庭男の正体って何だろう。

★周知の通り、河出文庫では類書として、種村さん編纂による『日本怪談集』2点(「奇妙な場所」「取り憑く霊」)のほか、鼓直編『ラテンアメリカ怪談集』、荒俣宏編『アメリカ怪談集』、由良君美編『イギリス怪談集』、中野美代子/武田雅哉編『中国怪談集』、沼野充義編『ロシア怪談集』などがあります。日影丈吉編『フランス怪談集』も来月新装復刊されるようです。

★『超限戦』は2001年12月に共同通信社より刊行されていた単行本の新書化。巻末特記によれば一部加筆修正した、とありますが、新たに加えられたテクストはないようです。旧版の古書価格が一時高騰したことがあってか、新書版が1月に発売されるや、翌月にはたちまち4版を迎えています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★1999年1月17日付の序文にはこう書かれています。「人々が軍事的暴力を抑制して紛争を解決しようとし、またそうした流れを歓迎しているときに、戦争は他の領域では新たな生命を得て、他国あるいは他人をコントロールしようとする者の手中に落ちて、強大な威力を持つ道具と化してしまった。例えばジョージ・ソロスらが東南アジアの金融に与えた攻撃、ウサマ・ビンラディンがアメリカ大使館に対して行った恐るべき攻撃(1998年)、オウム真理教信者が東京の地下鉄で撒いた毒ガス、モーリス・ジュニアらによるインターネットの攪乱は、その破壊力では戦争に見劣りしない。間違いなく準戦争、類似戦争、第二種戦争が誕生したのである。/それにいかなる名前をつけようと、われわれは以前よりも楽観的にはなれない。楽観できるはずがないのだ。正真正銘の戦争の役割が小さくなったとはいえ、それは戦争の終焉を意味しているわけではない。〔…〕戦争の構造は完全に解体されたわけではなく、より複雑で広く、より隠蔽された微妙な形で新たに人類社会に侵入してきたのである」(12~13頁)。

★「現代技術と市場経済体制によって変わりつつある戦争は、戦争らしくない戦争のスタイルで展開されるだろう。言い換えれば、軍事的暴力が相対的に減少する一方で、政治的暴力、経済的暴力、技術的暴力が増大していくに違いない。しかし、いかなる形の暴力であれ、戦争は戦争である。「武力的手段を用いて自分の意志を敵に強制的に受け入れさせる」ものではなくなって、代わりに「武力と非武力、軍事と非軍事、殺傷と非殺傷を含むすべての手段を用いて、自分の利益を敵に強制的に受け入れさせる」ものになったとしても、戦争の原理にしたがうことに変わりはない。/変化したのは戦争の方式である。いったい何が変化をもたらしたのか。またどんな変化が起こり、われわれはどこへ向かい、そしてこうした変化にどう対応していけばよいのか。これこそ本書で明らかにしたいテーマであり、またわれわれが本書を執筆しようとする動機なのである」(14頁)。

★また、第七章「すべてはただ一つに帰する――超限の組み合わせ」ではこうも書かれています。「目的達成のためなら手段を選ばない。〔…〕制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成することは、戦争にも該当する。この思想は〔…〕最も明確な「超限思想」の起源だろう」(252頁)。「今日または明日の戦争に勝ち、勝利を手にしたいならば、把握しているすべての戦争資源、すなわち戦争を行う手段を組み合わせなければならない。〔…〕すべての限界を超え、かつ勝利の法則の要求に合わせて戦争を組み合わせること〔…〕。こうして、われわれは一つの完璧な概念、一つの全く新しい戦法の名称を得た。すなわち「〔…〕超限組み合わせ戦」である」(254頁)。本文では続いて超国家的組み合わせ、超領域的組み合わせ、超手段的組み合わせ、超段階的組み合わせ、この四つが説明されています。帯文には「「ハイブリッド戦」はこの1冊から始まった」と謳われています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

教皇たちのローマ――ルネサンスとバロックの美術と社会』石鍋真澄著、平凡社、2020年3月、本体2,800円、4-6判上製372頁、ISBN978-4-582-65210-9
エレンの日記』エレン・フライス著、林央子訳、アダチプレス、2020年2月、本体2,400円、A5判仮フランス装208ページ(カラー16ページ)、ISBN978-4-908251-12-2
最古の世界地図を読む――『混一疆理歴代国都之図』から見る陸と海』村岡倫編、濱下武志/濱下武志/中村和之/岡田至弘/渡邊久著、法藏館、2020年3月、本体3,200円、A5判並製302頁、ISBN978-4-8318-6385-0

★『教皇たちのローマ』は「マルティヌス五世(1417-31)からアレクサンデル七世(1655-67)までの32代の教皇による、250年間の歴史ドラマの概要を示しながら、主に16世紀と17世紀のローマにおける美術と社会、パトロンと美術家について語ろうとするものである」(序、12頁)。著者の石鍋真澄(いしなべ・ますみ:1949-)さんは成城大学教授で、ご専門は西洋美術史。編集担当は先月急逝した松井純さん。仕掛中の企画が多数あったでしょうから、この先も松井さんの担当書籍が刊行されていくものと思われます。

★『エレンの日記』は「エレン・フライスが2001年から2005年にかけて雑誌『流行通信』に連載していた「Elein's Diary」を1冊にまとめたもの」(林央子「イントロダクション」より)。ファッションカルチャー誌の名編集者として活躍していた彼女の日常と心境が多数の写真とともに率直な言葉で綴られています。エレン・フライス(Elein Fleiss, 1968-)はフランス生まれ。国際哲学コレージュに聴講しに行ったり、哲学者で俳優のメディ・ベラ〔べラージ〕・カセム(Mehdi Belhaj Kacem, 1973-)と交流があったりします。

★『最古の世界地図を読む』は、李氏朝鮮で作成された現存する世界最古の世界地図のひとつである「混一疆理歴代国都之図」(こんいつきょうりれきだいこくとのず:龍谷大学蔵)を詳細に分析した論文集。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭に「混一図」がカラーで掲載されています。そこに描かれた日本は、九州が上で東北が下の、特異な姿をしており、興味をそそります。


# by urag | 2020-03-08 22:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 03月 04日

月曜社2020年3月末発売予定新刊:井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』

月曜社新刊案内【2020年3月:人文書1点:フランス思想】

2020年3月21日受注締切
2020年3月27日取次搬入予定

ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」
井岡詩子[著]
月曜社 2020年3月 本体:3,500円 A5判(217x155x18)上製192頁 ISBN: 978-4-86503-096-9 C1010


【内容】
動物や世界から切り離された人間はいかにして個としてその生を全うするか。バタイユの絵画論と文学論に共通する地平を「幼年期」への志向に見いだす、新鋭による果敢な読解。【シリーズ・古典転生、第22回配本、本巻21】

【本文より】
「エロティスムに捧げられた文学とイメージ(とりわけ絵画)は、ともに意識や理性のはたらきから有用性を奪う、すなわち遊戯化するものである。また、エロティスムはそれ自体「幼年期」の領域に属し、芸術や芸術家たちと至高性を分かち合う。〔…〕「幼年期」の本質は、つぎのようにまとめることができるだろう。/一、「おとな」の世界を前提とする。/一、反抗や破壊を第一義とし、それをとりわけ意識の上でおこなう。/一、マイナーな立場を固持する。/一、近現代的な至高性の場である」。

【目次】
序論
1 先行研究
2 本書の構成
第一章 バタイユにおける芸術の位置づけ――「アンフォルム」から「幼年期」へ
1 『ドキュマン』における「アンフォルム」
1‐1 「アカデミックな馬」
1‐2 「プリミティヴ・アート」
1‐3 「ジョアン・ミロ――最近の絵画」
2 バタイユにおける芸術の位置づけと「アンフォルム」
3 バタイユにおける「幼年期」――絵画、文学、エロティスム
第二章 絵画のインファンティア――ゴヤとマネ
1 絵画の「雄弁」と「沈黙」――近代絵画の条件(1)
2 ゴヤの「叫び声」
3 マネの「操作」
3‐1 マネの操作=遊戯――近代絵画の条件(2)
3‐2 操作=遊戯と自己意識
4 芸術家と承認
第三章 「幼年期」の芸術家と文学――ニーチェからカフカへ
1 ニーチェからカフカへ
2 コミュニスムと至高性
2‐1 ニーチェの「袋小路」
2‐2 聖なる文学の剽窃
3 作家と文学の子どもらしさと至高性
3‐1 カフカの子どもらしさ
3‐2 悲痛な生と至高な死
第四章 悲惨な生とフィクション――モロイ、浮浪者、遊ぶ者
1 モロイと文学の悲惨さ
1‐1 モロイの非従属性
1‐2 作家と「言語の自制なき流出」
2 「主人」のヴァリアントとしてのモロイ
3 悲惨さそれ自体における反抗
3‐1 「頂点」と「凋落」の等価性
3‐2 瞬間性と持続性、芸術の形式について
第五章 性愛文学と遊戯的理性――サド
1 革命的モラルとしてのサド
1‐1 「サドの使用価値」
1‐2 「サドとモラル」
2 文学としてのサド
2‐1 否定と文学
2‐2 「無感覚」における理性のはたらき
3 サドの違反と暴力の事物化
3‐1 違反と明晰な意識
3‐2 事物化された暴力
第六章 性と死のイメージ――エロス
1 エロスと涙
1‐1 「「小さな死」と最終的な死の同一性」
1‐2 「幼稚症」における笑いと涙
2 意識的な行為としてのエロティスムにおけるイメージ
3 イメージと自己意識
むすびに
あとがき
参考文献一覧
索引(人名・事項)

【著者】
井岡詩子(いおか・うたこ)1987年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)留学。京都大学大学院博士後期課程研究指導認定退学。京都大学博士(人間・環境学)。現在、京都造形芸術大学非常勤講師、国際日本文化研究センター技術補佐員。専門は美学・芸術学、表象文化論。

月曜社2020年3月末発売予定新刊:井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』_a0018105_18425787.png


# by urag | 2020-03-04 18:43 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2020年 03月 02日

本日取次搬入しました:土橋茂樹編『存在論の再検討』

土橋茂樹編著『存在論の再検討』が本日取次搬入となりました。書店さんでの店頭発売開始は今週後半より順次となる予定です。扱い書店についてはお気軽にお尋ねください。『存在論の再検討』の目次と寄稿者を以下に再掲します。

序章(土橋茂樹)
第一章 「ある」の愛求としてのプラトン哲学(納富信留)
第二章 アリストテレスは「存在論」を語らない──オントロジーの概念と歴史の再考に向けて(中畑正志)
第三章 「存立」(ὑφιστάναι)について──ストア派とプロティノス(樋笠勝士)
第四章 「ある」を表示する「名の正しさ」をめぐって──プラトン『クラテュロス』篇解釈史を手がかりに(土橋茂樹)
第五章 存在論を超えて(大森正樹)
第六章 『純粋善について』の存在論(一)初期イスラーム哲学のプラトン主義とアリストテレス主義(西村洋平)
第七章 『純粋善について』の存在論(二)AnniyyahとWujūd(小村優太)
第八章 『純粋善について』の存在論(三)esseとyliathim(小林剛)
第九章 〈ある〉の第三領域──アヴィセンナ存在論の影響(山内志朗)
第十章 ドイツ古典哲学の「存在(ある)」と新プラトン主義(山口誠一)
編者あとがき(土橋茂樹)
事項索引
人名索引

大森正樹(おおもり・まさき)1945年生。南山大学・名誉教授。東方キリスト教学、中世哲学。
小林 剛(こばやし・ごう)1967年生。中央大学・兼任講師。西洋およびイスラーム世界の中世哲学。
小村優太(こむら・ゆうた)1980年生。早稲田大学・専任講師。アラビア哲学、魂論。
土橋茂樹(つちはし・しげき)1953年生。中央大学文学部・教授。古代中世哲学、教父学。本書編者。
中畑正志(なかはた・まさし)1957年生。京都大学大学院文学研究科・教授。西洋古代哲学。
西村洋平(にしむら・ようへい)1981年生。兵庫県立大学・准教授。新プラトン主義。
納富信留(のうとみ・のぶる)1965年生。東京大学大学院人文社会系研究科・教授。古代ギリシア哲学。
樋笠勝士(ひかさ・かつし)1954年生。岡山県立大学デザイン学部・教授。古代中世哲学、美学芸術学。
山内志朗(やまうち・しろう)1957年生。慶應義塾大学文学部・教授。西洋中世哲学。
山口誠一(やまぐち・せいいち)1953年生。法政大学文学部・教授。ヘーゲル・ニーチェを中心とするドイツ近現代哲学。

なお、弊社3月新刊の情報を以下にまとめます。

上旬発売【人文・哲学】:土橋茂樹編著『存在論の再検討』(シリーズ・古典転生、第21回配本、本巻20)
下旬発売予定【ドイツ文学・SF】:エルンスト・ユンガー『エウメスヴィル』田尻三千夫訳(叢書・エクリチュールの冒険、第16回配本)
月末発売予定【人文・思想】:井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』(シリーズ・古典転生、第22回配本、本巻21)


# by urag | 2020-03-02 18:09 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2020年 03月 01日

注目新刊:岩波書店版『フロイト全集』がついに完結、ほか

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フロイト全集(別巻)総索引、年表、主要術語訳語対照表ほか』高田珠樹/須藤訓任/新宮一成/道籏泰三編、岩波書店、2020年2月、本体8,000円、A5判上製22+453頁、ISBN978-4-00-092683-6
ドゥルーズ『意味の論理学』の注釈と研究――出来事、運命愛、そして永久革命』鹿野祐嗣著、岩波書店、2020年2月、本体7,500円、A5判上製12+601+147頁、ISBN978-4-00-061392-7
マルク・リシール現象学入門――サシャ・カールソンとの対話から』マルク・リシール/サシャ・カールソン著、澤田哲生監訳、ナカニシヤ出版、2020年2月、本体3,600円、A5反並製392頁、ISBN978-4-7795-1427-2
食の歴史――人類はこれまで何を食べてきたのか』ジャック・アタリ著、林昌宏訳、プレジデント社、2020年2月、本体2,700円、四六判上製392頁、ISBN978-4-8334-2361-8
言葉と物――人文科学の考古学〈新装版〉』ミシェル・フーコー著、渡辺一民/佐々木明訳、新潮社、2020年2月、本体4,700円、四六判上製459+59頁、ISBN978-4-10-506708-3

★『フロイト全集(別巻)』は最終回配本で、本巻22+別巻1の計23冊が完結したことになります。別巻には月報はなし。2006年11月に刊行が開始され、本巻が完結したのが2012年5月。早いものであれから約8年が経過したわけです。別巻出版までの苦難の道のりについては高田珠樹さんが「まえがき」で言及されています。本巻のうち半分の11点がすでに版元品切ですが、全集は基本的に予約出版ですからいずれ将来的に全巻を再発売する時までは重版されないことが予想されます。

★『ドゥルーズ『意味の論理学』の注釈と研究』は、鹿野祐嗣(しかの・ゆうじ:1988-)さんの2016年の博士論文を加筆修正したもの。博論当時の主査は藤本一勇さん、副査は鈴木泉さん、立木康介さん、江川隆男さん、村井翔さん。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。また序文と序論第1節の一部を立ち読みすることができます。「われわれが絶えず訴えていくことになるもの、それはいわば「ドゥルーズに帰れ」というメッセージに他ならない」(xi頁)。

★『マルク・リシール現象学入門』は『L'Écart et le Rien. Conversation avec Sacha Carlson』(Millon, 2015)の全訳。帯文に曰く「フランス現象学最後の巨星が、自身の哲学の全貌を噛み砕いて語る、哲学の愉悦を濃縮した大対談録」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。序論「軌跡――伝記的な標点をいくつか」は戦後フランスの現代思想を彩った群像をめぐる同時代的証言を含むもので興味深いです。ベルギー出身の現象学者リシール(Marc Richir, 1943-2015)の単独著の既訳にはわずかに『身体――内面性についての試論』(和田渡/川瀬雅也/加国尚志訳、ナカニシヤ出版、2001年)があるだけですが、今回の魅力的な対談本をきっかけに再発見されると良いと思います。

★『食の歴史』は『Histoires de l'alimentation. De quoi manger est-il le nom ?』(Fayard, 2019)の全訳。目次詳細は書名のリンク先で公開されています。「われわれが人類のサバイバル、そして人間らしい満ち足りた自然な暮らしを望むのなら、これまでの世代の食生活、彼らが食に費やした時間、彼らが食と関連づけた社会的なつながり、彼らが食に費やした金、食の上に築かれ、そして食によって滅びた権力を探究してみるべきだろう。/食が全員にとって、快楽、分かち合い、想像、喜び、自己超越の源泉にならなければならない。また、食を地球と生命を救う手段にする必要がある」(はじめに、22頁)。アタリによる数々の歴史研究はこんにち注目されている「グローバル・ヒストリー」とも交差するものではないかと思います。

★『言葉と物〈新装版〉』は函入本からカバー装へのスイッチ。世間的には新訳や改訳が期待されていた節があるものの、その実現は簡単ではなかったということなのでしょう。また、函はお金が掛かるので、軽装にしたということかと想像します。改版を出すなら文庫化を、という期待もあったでしょうけれども、なにせ本文だけでも四六判2段組450頁超の大著ですから、現状では文庫化も難しかったということかと。巻末の広告によれば、『狂気の歴史』『監獄の誕生』(ともに田村淑訳)も今年、新装版が出るようです。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

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『HAPAX 12 香港、ファシズム』HAPAX編、夜光社、2020年3月、本体1,500円、四六判変形並製208頁、ISBN978-4-906944-19-4
現代思想2020年3月号 特集=気候変動』青土社、2020年2月、本体1,400円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1395-0

★ここ最近の人文社会系雑誌で特に注目したいのは、まもなく発売となる『HAPAX 12 香港、ファシズム』です。第1特集「香港」と第2特集「ファシズム」、そして寄稿が3本。版元紹介文に曰く「新たな「ファシズム」の到来は新たな蜂起の到来と並行する。〔…〕〈特集1〉での香港をめぐる一連のレポートは、〈特集2〉の「ファシズム」をめぐる諸考察と表裏をなしているはずだ」。収録作品は以下の通り。

〈特集1 香港〉
香港から放たれた矢/香港蜂起の教え|KID
香港2019――鏡の国の大衆運動あるいは漂移する遊行|Shiu
蜂起の三ヶ月|(CRIMETHINC)
龍脈のピクニック|KID
〈特集2 ファシズム〉
ネオリベラリズムと反復の地獄――ノンセクト的戦争機械のために|酒井隆史インタビュー
ファシズム5・0|友常勉
幼年期への退却|混世博戯党
「文明の死」とファシズム|鼠研究会
セリーヌとファシズム――戦いのあとの風景|原智広
偽ファシズム、あるいは「神化」の失敗について|ウルトラプルースト
〈寄稿〉
よどみと流れ|山本さつき
祈りのアナーキー|彫真悟
アナーキー原理としての「他力」|守中高明

独裁者ティラノ・バンデラス――灼熱の地の小説』バリェ゠インクラン著、大楠栄三訳、幻戯書房、2020年2月、本体4,200円、四六変形判ソフト上製456頁、ISBN978-4-86488-193-7
もう一つ上の日本史――『日本国紀』読書ノート:古代~近世篇』浮世博史著、幻戯書房、2020年2月、本体2,400円、四六判並製448頁、ISBN978-4-86488-191-3

★幻戯書房さんの2月新刊で注目したいのは「ルリユール叢書」の最新刊、スペインの作家バリェ゠インクラン(Ramón María del Valle-Inclán, 1866-1936)による1926年の小説『独裁者ティラノ・バンデラス――灼熱の地の小説』の初訳です。帯文に曰く「独自の小説技法「エスペルペント」で描き出した、いびつで歪んだグロテスクな現実世界――ガルシア゠マルケス、フエンテスら世界文学者に継承される〈独裁者小説〉の先駆的作品」。帯表4に載せられた賛辞の中にはウナムーノによるこんな言葉もあります。「バリェ゠インクランの言語は個性的だ、ゆえに普遍的な言語を生み出した。個性にまさる普遍などないのだから」。なおバリェ゠インクランの作品の既訳書には『ソナタ』四部作があります(『春のソナタ』『夏のソナタ』『秋のソナタ』『冬のソナタ』吉田彩子訳、西和書林、1986~1988年)。

源氏物語=反復と模倣』熊野純彦著、作品社、2020年2月、本体2,400円、46判上製120頁、ISBN978-4-86182-779-2
生命の〈系統樹〉はからみあう――ゲノムに刻まれたまったく新しい進化史』デイヴィッド・クォメン著、的場知之訳、作品社、2020年2月、本体3,600円、A5判並製448頁、ISBN978-4-86182-796-9
いかにアメリカ海兵隊は、最強となったのか――「軍の頭脳」の誕生とその改革者たち』阿部亮子著、作品社、2020年2月、本体2,700円、四六判上製352頁、ISBN978-4-86182-794-5

★作品社さんの2月新刊で特筆しておきたいのは、熊野純彦さんがカントの三批判書の個人新訳を手掛けているさなかに読んでいたという「源氏物語」をめぐる2篇のテクストを1冊にまとめた『源氏物語=反復と模倣』。「反復と模倣――源氏物語・回帰する時間の悲劇によせて」(初出:『季刊日本思想史』第80号、ぺりかん者、2012年)と「源氏物語・小考――和辻・小林、宣長」(初出:『図書』2018年12月号、岩波書店)を収録。前者は「高校生のときから親しんできた源氏物語をめぐって、まとまった文章を書く最初の機会となった」と「あとがき」で振り返っておられます。

『世界の悲惨 Ⅲ』ピエール・ブルデュー編、荒井文雄/櫻本陽一監訳、藤原書店、2020年2月、本体4,800円、A5判並製464頁、ISBN978-4-86578-257-8
『公共論の再構築――時間・空間・主体』中谷真憲/東郷和彦編、藤原書店、2020年2月、本体3,800円、A5判上製344頁、ISBN978-4-86578-254-7
『近代家族の誕生――天皇制・キリスト教・慈善事業』大石茜著、藤原書店、2020年2月、本体2,900円、四六判上製272頁、ISBN978-4-86578-260-8
『大地よ!――アイヌの母神・宇梶静江自伝』宇梶静江著、藤原書店、2020年2月、本体2,700円、四六判上製448頁、ISBN978-4-86578-261-5

★藤原書店さんの2月新刊で特筆しておきたいのは、ブルデュー編『世界の悲惨』全三分冊の完結。第Ⅲ分冊では、第Ⅵ部「遺産相続の矛盾」、第Ⅶ部「理解するとは」、ブルデューによる「あとがき」などを収録。帯文に曰く「国民戦線の活動家、失業中の女優、物理学研究社などの語りに加え、社会学者としての「聞き取り」を成立させるための方法論を明かす」と。

文化大革命――人民の歴史 1962-1976(上)』フランク・ディケーター著、谷川真一監訳、今西康子訳、人文書院、2020年2月、本体3,000円、4-6判並製280頁、ISBN978-4-409-51082-7
文化大革命――人民の歴史 1962-1976(下)』フランク・ディケーター著、谷川真一監訳、今西康子訳、人文書院、2020年2月、本体3,000円、4-6判並製246頁、ISBN978-4-409-51083-4
博物館と文化財の危機』岩城卓二/高木博志編、人文書院、2020年2月、本体2,300円、4-6判並製194頁、ISBN978-4-409-24131-8
現代経済思想史講義』根井雅弘著、人文書院、2020年2月、本体1,800円、4-6判並製190頁、ISBN978-4-409-24130-1
家事労働の国際社会学――ディーセント・ワークを求めて』伊藤るり編著、定松文/小ヶ谷千穂/平野恵子/大橋史恵/巣内尚子/中力えり/宮崎理枝/篠崎香子/小井土彰宏/森千香子著、人文書院、2020年2月、本体6,300円、A5判上製392頁、ISBN978-4-409-24132-5

★人文書院さんの2月新刊で特に注目したいのはまもなく発売となる、香港大学教授のディケーター(Frank Dikötter, 1961-)による『文化大革命』上下巻。原著は2016年刊。監訳者の谷川さんによれば「毛沢東時代の中国についての三部作の最後の一作」。三部作の第一部は『毛沢東の大飢饉――史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962』(原著2010年;中川治子訳、草思社、2011年;草思社文庫、2019年)。未訳の第二部は2013年刊の『解放の悲劇――中国革命史 1945-1957』。

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# by urag | 2020-03-01 23:55 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 27日

ブックツリー「哲学読書室」で6本の新規リストが公開となりました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」で、6本のリストが公開となりました。

ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン、2019年11月)の著者、後藤護さんによる「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門」
生まれてきたことが苦しいあなたに――最強のペシミスト・シオランの思想』(星海社新書、2019年12月)の著者、大谷崇さんによる「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム」
連続と断絶――ホワイトヘッドの哲学』(人文書院、2020年1月)の著者、飯盛元章さんによる「思考を解き放て!」
近代のはずみ、ひずみーー深田康算と中井正一』(航思社、2020年1月)の著者、長濱一眞さんによる「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊」
火星の旅人――パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史』(青土社、2020年1月)の著者、入江哲朗さんによる「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊」
ディアローグ――デュラス/ゴダール全対話』(読書人、2018年10月)の訳者、福島勲さんによる「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる」

以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために
55)築地正明(つきじ・まさあき:1981-)さん選書「信仰について考える。ベルクソンとドゥルーズと共に
56)浅野俊哉(あさの・としや:1962-)さん選書「〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
57)岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さん/赤羽健(あかはね・けん:1991-)さん選書「贈与論を通してどう資本主義を突き抜けていくか
58)秋元康隆(あきもと・やすたか:1978-)さん選書「「利他」とは何かを学ぶために
59)宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ:1974-)さん選書「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく
60)後藤護(ごとう・まもる:1988-)さん選書「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門
61)大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さん選書「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム
62)飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さん選書「思考を解き放て!
63)長濱一眞(ながはま・かずま:1983-)さん選書「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊
64)入江哲朗(いりえてつろう:1988–)さん選書「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊
65)福島勲(ふくしま・いさお:1970-)さん選書「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる

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# by urag | 2020-02-27 20:15 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 24日

注目新刊:カーター『SS先史遺産研究所アーネンエルベ』ヒカルランド、ほか

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SS先史遺産研究所アーネンエルベ――ナチスのアーリア帝国構想と狂気の学術』ミヒャエル・H・カーター著、森貴史監訳、北原博/溝井裕一/横道誠/舩津景子/福永耕人訳、ヒカルランド、2020年2月、本体9,900円、四六判ハード、ISBN9784864718271
世界史の針が巻き戻るとき――「新しい実在論」は世界をどう見ているか』マルクス・ガブリエル著、大野和基訳、PHP新書、2020年2月、本体960円、232頁、ISBN978-4-569-84594-4
共産党宣言』マルクス/エンゲルス著、森田成也訳、光文社古典新訳文庫、2020年2月、本体1,040円、ISBN:75420-4
今昔物語集 震旦篇 全現代語訳』国東文麿訳、講談社学術文庫、2020年2月、本体1,850円、576頁、ISBN978-4-06-518693-0
柳田國男民主主義論集』柳田國男著、大塚英志編、平凡社ライブラリー、2020年2月、本体1,600円、B6変判並製376頁、ISBN9784582768855

★『SS先史遺産研究所アーネンエルベ』は『Das "Ahnenerbe" der SS 1935-1945. Ein Beitrag zur Kulturpolitik des Dritten Reiches』(4. Aufl., Oldenbourg, 2006)の「著作本文のほぼ全訳」(凡例)。初版は1974年刊ですが長く読み継がれている古典的文献です。まさかヒカルランドさんから学術書版元De Gruyter Oldenbourgの研究書が出るとは夢にも思いませんでしたが、森貴史さんによる監訳者あとがきによれば「翻訳書はヒカルランド最初の専門学術書の翻訳だそうである」とのこと。編集ご担当は小澤祥子さん。森さん曰く「原著にはいっさいない図版の蒐集や難解な組織図の見やすいアレンジはすべて、彼女の孤軍奮闘のおかげ」。凡例にある「ほぼ全訳」というのは、注や参考文献にドイツ語が残っているためそう書かれてあるのだと思われます。こうしたことは学術専門書では通例の範囲内であり、全訳と言い切って問題ないと思われます。カバーソデ紹介文に曰く、アーネンエルベとは「1935年、ナチス親衛隊(SS)全国指導者ハインリヒ・ヒムラーの主導により、ドイツ先史時代の精神史研究を目的として設立された知られざる研究機関。当初はゲルマン民族の歴史・民俗を主な対象としていたが、次第にオカルティックな研究を含め、ユダヤ人を使った人体実験や気象学、化学、軍事研究などの分野にも拡大し、大学への介入も強めながら、ドイツ支配地域に多数の支部を有する巨大機関に発展。1945年のナチス・ドイツ崩壊に至るまで、親衛隊のアーリア=大ゲルマン帝国構想の推進においてきわめて重要な役割を果たした」。目次詳細と本書冒頭は書名のリンク先のPDFで立ち読みすることができます。著者のカーター(Michael Hans Kater, 1937-)はドイツ出身でカナダで教鞭を執ってきた歴史家。トロントのヨーク大学名誉教授。既訳書に『第三帝国と音楽家たち――歪められた音楽』(明石政紀訳、アルファベータ、2003年;著者名表記は英語式に「マイケル・H・ケイター」)があります。

★2月の新書や文庫新刊から注目書を4点。『世界史の針が巻き戻るとき』は大野和基さんと編集部の大岩央さんによるガブリエル氏への独占ロングインタヴューを全7章+補講にまとめたもの。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。まだガブリエルを読んだことがないという読者には内容的にも値段的にも本書をまずお薦めするのが最適だと思います。第2章「なぜ今、新しい実在論なのか」の末尾では、スティーヴン・ピンカー『21世紀の啓蒙――理性、科学、ヒューマニズム、進歩』(上下巻、草思社、2019年12月)への痛烈な批判が述べられていて、印象的です。曰く「モダニティは人類の自滅を引き起こすのです。近代科学ほど人を殺したものはありません」(62頁)。ピンカーとガブリエルの年齢差は26歳。若い世代はガブリエル氏の議論をより切実に感じるのではないかと創造します。

★『共産党宣言』は近年も幾度となく新訳されてきましたが、今回の森田訳では100通超の関連する手紙を抜粋収録しているのがミソ。『今昔物語集 震旦篇 全現代語訳』は、本朝世俗篇上下巻、天竺編に続く4点目。巻末特記に曰く、1983年から84年に刊行された講談社学術文庫版『今昔物語集』第6巻から第9巻までの中から抜粋し再編集したもの。『柳田國男民主主義論集』は「大正デモクラシー・普通選挙導入期から戦後の社会科・国語教育論までたどり、民主主義の推進者、主権者教育の「運動家」として柳田國男を読み直す」独自編集版の論文集。収録テクストは例えばhontoの単品頁をご覧ください。

★次に、購入が遅れていた12月から1月の新刊のうち、振り返っておくべき重要な書目を3点挙げます。

ユダヤ神話・呪術・神秘思想事典』ジェフリー・W・デニス著、木村光二訳、柏書房、2020年1月、本体15,000円、A5判上製814頁、ISBN9784760151714
騎士道』レオン・ゴーティエ著、武田秀太郎編訳、中央公論新社、2020年1月、本体2,700円、四六判368頁、ISBN978-4-12-005259-0
スピノザ――よく生きるための哲学』フレデリック・ルノワール著、田島葉子訳、ポプラ社、2019年12月、本体2,500円、四六判254頁、ISBN978-4-591-16470-9

★『ユダヤ神話・呪術・神秘思想事典』は『The Encyclopedia of Jewish Myth, Magic and Mysticism』(Second edition, Llewellyn Publications, 2016)の訳書。2007年の原著初版から大幅増補された第二版を訳出し、さらに初版にあって第二版で削除されている項目も復活させているとのことです。値段ゆえに後回しされがちかもしれませんが、美麗な造本で内容も特異なこうした事典類は品切になると厄介なので、今のうちに購読しておくべきです。「本事典は旧約聖書とその人物、歴史、出来事、祭儀、祭具、祝祭日、動物、植物、事物、そして、占い、ディブーク(憑霊)、悪霊祓い、輪廻転生、ゴーレム、マギード(霊的案内人)、習俗、迷信、伝説などのユダヤ人の民間信仰とユダヤ教神秘主義、カバラーの秘教的教義とカバリスト、ハスィディズムとハスィディーム、数秘学、ヘブライ語の言語神秘主義についての事典であり、換言すれば、「ユダヤ民俗宗教事典」とも言うべき事典である」(訳者あとがき、786頁)。訳者の木村光二(きむら・こうじ:1949-)さんはビアールによるショーレム伝『カバラーと反歴史』(晶文社、1984年)などのほか、近年ではエレン・フランケル『図説ユダヤ・シンボル事典』(悠書館、2015年)なども手掛けておられます。

★『騎士道』はフランスの文学史家レオン・ゴーティエ(Émile Théodore Léon Gautier, 1832-1897)の大著『La Chevalerie』(1884年)の英訳版(1891年)からの抄訳。日本語版の「編訳者序」によれば仏語原著は個人出版であり誤記等が目立つため、「丁寧な校正が為されたラウトレッジ社版」を用い、「必要に応じ適宜原著を参照する形を採った」(11頁)とのことです。訳出されたのは、第一章~第四章、第七章、第二十章。本書の第二部として、1270年代に成立した、ラモン・リュイ(Ramon Llull, c.1232-c.1316)の著書『騎士道の書』(カタルーニャ語:Llibre de l'orde de cavalleria)のウィリアム・キャクストンによる英訳(1428年)からの全訳が収められています。言うまでもありませんがリュイというのはかの神学者ライムンドゥス・ルルスのことです。今までに哲学的著作や神秘主義的著作の一部が翻訳されてきましたが、騎士道論が訳出されるのは今回が初めてではないかと思います。なお『騎士道』ではゴーティエとリュイの翻訳に続いて「武勲詩要覧」が付録として収められており、中世の武勲詩の解説とあらすじがまとめられています(シャルルマーニュ詩群、ギヨーム・ドランジュ詩群、ドーン・ド・マイヤンス詩群、ロレーヌ詩群、その他)。編訳者の武田秀太郎(たけだ・しゅうたろう:1989-)さんは現在、京都大学大学院総合生存学館特任助教。もともとは理系のご出身で、略歴によれば「専門はエネルギー政策、発展途上国援助政策、開発哲学(ハイデガー技術論、西洋騎士道)」とのことで、ユニークです。

★『スピノザ』はマダガスカル生まれのフランスの作家ルノワール(Frédéric Lenoir, 1962-)による『Le miracle Spinoza〔奇蹟のスピノザ〕』(Fayard, 2017)の全訳。前半では『神学・政治論』、後半では『エチカ』に焦点を当て、スピノザの生涯と思想を「平易に解説」(訳者あとがきより)しています。ルノワールの訳書はすでに単独著だけでも10冊近い既刊書があり、日本でも相応に親しまれてきたと思います。今回のスピノザ論で特筆しておきたいのは、巻末に「付記」として収められた「ロベール・ミスライとの往復書簡」(203~217頁)です。ミスライ(Robert Misrahi, 1926-)は戦後フランスにおけるスピノザ研究の古参で幸福論の大家ですが、訳書がなく、わずかに論文が読めるだけです。ミスライとルノワールは互いのスピノザ解釈の相違点について述べており、ミスライは神について、またアフェクトゥスとアフェクティオの違いについて明快に言及しています。




★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

感身学正記2――西大寺叡尊の自伝』叡尊著、細川涼一訳注、東洋文庫、2020年2月、本体3,400円、B6変判上製函入336頁、ISBN978-4-582-80901-5
イヴの七人の娘たち――遺伝子が語る人類の絆』ブライアン・サイクス著、大野晶子訳、河出文庫 文庫、2020年2月、本体1,200円、400頁、ISBN978-4-309-46707-8
アダムの運命の息子たち――遺伝子が語る人類の盛衰』ブライアン・サイクス著、大野晶子訳、河出文庫、2020年2月、本体1,200円、456頁、ISBN978-4-309-46709-2
』ロマン・ガリ著、永田千奈訳、共和国、2020年2月、本体2,700円、菊変型判並製316頁、ISBN978-4-907986-61-2
アンタゴニズムス――ポピュリズム〈以後〉の民主主義』山本圭著、共和国、2020年2月、本体2,700円、四六判上製280頁、ISBN978-4-907986-68-1
現代思想2020年3月臨時増刊号 総特集=フェミニズムの現在』青土社、2020年2月、本体1,800円、ISBN978-4-7917-1394-3

★平凡社さんの東洋文庫2月新刊は1点。『感身学正記2』は東洋文庫の第901巻。真言律宗の僧侶、叡尊(えいそん:1201-1290)の自伝『金剛仏子叡尊感身学正記』の読み下し文に詳細な注釈を付したもの(底本は西大寺所蔵の「法隆寺五師重懐書写本」1359年)。原文は漢文で巻末にまとめられています。全2巻完結で、第2巻は「71歳から85歳、非人休載から禁酒運動まで、その旺盛な活動が記される」(帯文より)。巻末には「1巻注補遺」「解説」「索引(人名/地名・寺社名)が収められていますが、注釈者の細川涼一さんが同じく東洋文庫で2011年1月に上梓された、性海『関東往還記』の「注補遺」も併録されています。なお『感身学正記1』(1歳から70歳までの記録)は東洋文庫第664巻として、1999年12月に刊行されています。第1巻のあとがきで「十年以上かかって二分冊のうち一冊をようやく刊行〔…〕しかし本書は、これまでの私の仕事の中でも、時間だけは最も多くかけた仕事である」(366頁)とお書きになっています。細川さんは今年度で京都橘大学を定年退職されるとのことで、第2巻解説には「ようやくぎりぎり間に合わせることができた」(312頁)とあります。なお第1巻の紙媒体は版元品切で、電子書籍かオンデマンド版が入手可能です。

★河出文庫2月新刊より2点。『イヴの七人の娘たち』『アダムの運命の息子たち』は、人類遺伝学の国際的権威サイクス(Bryan Sykes, 1947-)のベストセラー2点の再文庫化。『イヴ』は2001年にソニー・マガジンズから単行本が、『アダム』は2004年にソニー・マガジンズから単行本(旧題『アダムの呪い』)がそれぞれ出版されて、ともに2006年に文庫化(ヴィレッジブックス)。再文庫化にあたり、それぞれ副題が加わり、各巻末に「河出文庫版訳者あとがき」が新たに付されています。『イヴ』ではミトコンドリアDNAの解読により西欧の母系の淵源を辿り、『アダム』ではY染色体の分析により戦争と暴力を生む呪いの歴史と男性絶滅の未来を説いています。ちなみにサイクスは昨年、犬の遺伝的進化をめぐる著書『Once a Wolf』を公刊しています。

★共和国さんの2月新刊より2点。『凧』は叢書「世界浪漫派」の第4弾で、フランスの作家ガリ(Roman Gary, 1914-80)がピストル自殺する前に上梓した最後の小説『Les cerfs-volants』(Gallimard, 1980)の訳書。第二次大戦下のフランスに生きる人間像を豊かに描いた一冊。同叢書でのガリの訳書は2017年の『夜明けの約束』に続く2点目です。『夜明けの約束』は自伝的小説ですが、『母との約束、250通の手紙』という題で映画化されて、先月末より日本でも全国ロードショーが始まっています。いっぽう『アンタゴニズムス』は、2017年から2019年にかけて各媒体で発表されてきた論考9本に加筆修正を施して一冊にまとめたもの。『不審者のデモクラシー――ラクラウの政治思想』(岩波書店、2016年)に続く単独著第2弾です。アンタゴニズムスとは敵対性の意。「日常と非日常のあいだ、同質的なものと意識なもののあいだ、あるいは諸制度と異議申し立てのあいだの絶え間ない交渉を可能にする」(18頁)ラディカル・デモクラシーの未来を論じたもの。

★『現代思想』3月臨時増刊号は2点。『総特集=磯崎新』は未見ですが、再録の対談やテクストも含め、保存版となるだろう一冊。『総特集=フェミニズムの現在』は文芸書での継続的注目に比して人文社会系では焦点を絞るのがかえって困難だと思われる当世における一試行として受け止めました。翻訳に言及しておくと、シェリー・バジェオン成功した女性性の矛盾――第三波フェミニズム、ポストフェミニズム、そしてさまざまな「新しい」女性性」(芦部美和子訳、河野真太郎解題、169~183頁)と、アンジェラ・マクロビー「ポストフォーディズムのジェンダー――「やりがいある仕事」、「リスク階級」と「自分自身の人生」」(中條千晴訳、田中東子解題、184~208頁)。前者は2011年に公刊されたアンソロジー『New Femininities: Postfeminism, Neoliberalism and Subjectivity』に収録されたもの。後者は2015年に刊行された単独著『Be Creative: Making a Living in the New Culture Industries』の第4章で論文としての初出は2011年。

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# by urag | 2020-02-24 23:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 21日

注目新刊:ダミッシュ『カドミウム・イエローの窓』水声社、ほか

弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆さんの最近のご活躍をご紹介いたします。

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★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』、ガシェ『脱構築の力』)
単独著第二弾を先月上梓されました。2009年から2019年にかけて各媒体で発表されてきた10本のデリダ論に、加筆修正を施し、書き下ろしの序論を付して一冊としたもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。なお同書をめぐっては、宮﨑さんが関連する4冊とともにブックガイド「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく」をhontoブックツリーに寄稿しておられます。また本書とガシェ『脱構築の力』に対して、星野太さん(著書『崇高の修辞学』)が書評をお書きになっておられます(「artscapeレビュー」2020年2月11日付)。

ジャック・デリダ――死後の生を与える
宮﨑裕助著
岩波書店 2020年1月 本体3,600円 四六判上製カバー装376頁 ISBN978-4-00-061385-9
帯文より:「私は私自身と戦争状態にある」。テクストの徹底的な読解と、現代への透徹した視線。〈デリダを超えてゆくデリダ〉に出会う、新たな時代の入門書。生きることの自由と未来のために。


★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
一橋大学での最終講義が以下の通り行われます。参加自由、入場無料、事前予約不要とのことです。

◎鵜飼哲最終講義「アンティゴネーと絶対知――デリダ『弔鐘』をめぐって」
日時:2020年3月18日(水)18-20時
会場:一橋大学西キャンパス(国立駅南口より徒歩10分)第二講義棟405番教室
司会:西山雄二(首都大学東京)
主催:脱構築研究会
協力:鵜飼ゼミ有志


★入江哲朗さん(共訳:ガシェ『脱構築の力』)
単独著第一弾『火星の旅人』を先月上梓されました。2013年に東京大学大学院総合文化研究科へ提出した修士論文「火星の旅人――パーシヴァル・ローエルと世紀転換期のニューイングランド」を元に、4倍以上の分量に書き直されたもの。目次詳細は書名のリンク先でご覧になれます。なお本書の装丁と組版は、『脱構築の力』と同じ、新進気鋭のデザイナー、北岡誠吾さんが担当されています。また入江さんは、まもなく発売となるブルース・ククリック『アメリカ哲学史―― 一七二〇年から二〇〇〇年まで』(大厩諒/入江哲朗/岩下弘史/岸本智典訳、勁草書房、2020年2月)を共訳しておられます。

火星の旅人――パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史
入江哲朗著
青土社 2020年1月 本体3,200円 四六判並製384+76頁 ISBN978-4-7917-7245-2
帯文より:名門に生まれ、日本を旅した男はなぜ火星に魅せられたのか。ボストン・ブラーミンと称され、ハーアード大学の興隆に大きく寄与した名門ローエル家に生まれたパーシヴァル。詩文をよくし、科学的知性を携えた青年は19世紀末アメルカの知識階級の伝統と逸脱に揺れ動きながら、日本へ渡る。ラフカディオ・ハーンにも読まれたジャパノロジストの足跡と、ラヴクラフトのクトゥルー神話に接続する“観測”という想像力を追う、俊英による新たなるアメリカ思想史。


★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
光文社古典新訳文庫よりフロイト『モーセと一神教』(1939年)の新訳を今月上梓されました。中山さんによる同文庫でのフロイト新訳は、2007年9月刊『幻想の未来/文化への不満――フロイト文明論集1』、2008年2月刊『人はなぜ戦争をするのか――エロスとタナトス:フロイト文明論集2』、2011年2月刊『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの』に続く4冊目です。

モーセと一神教
フロイト著 中山元訳
光文社古典新訳文庫 2020年2月 本体1,060円 文庫判並製344頁 ISBN978-4-334-75419-8
帯文表1より:十戒のモーセを殺したのは誰か? ユダヤ教成立の謎をフロイトが解読する。
帯文表2より:なぜ、モーセはユダヤの民を選んだのか? なぜ、ユダヤ人は迫害されるのか?……ユダヤ教の成立とキリスト教誕生の間に隠された謎を、「原父殺害」「潜伏期」「抑圧されたものの回帰」といった精神分析の理論を援用して解読するフロイト最大の問題作。
カヴァー表4紹介文:ファシズムの脅威のなか書き上げられたフロイトの「遺著」。 猛威をふるっていた反ユダヤ主義の由来について、フロイトは、モーセはエジプト人だったとする仮説からユダヤ教の成立と歴史を考察し、みずからの精神分析の理論を援用してキリスト教の誕生との関係から読み解く。


★岡本源太さん(著書『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』)
フランスの哲学者で美術史家のユベール・ダミッシュ(Hubert Damisch, 1928-2017)による80年代半ばの論文集『Fenêtre jaune cadmium ou les Dessous de la peinture』(Paris, Seuil, 1984)の全訳が昨年末に水声社のシリーズ「言語の政治」第22巻として刊行され、岡本さんは共訳者の一人として第Ⅱ部「定理」の翻訳を担当しておられます(「芸術、今日、註釈」「アンフォルメル」「戦略、1950-1960年」)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

ユベール・ダミッシュ著 岡本源太/桑田光平/坂口周輔/陶山大一郎/松浦寿夫/横山由季子訳
水声社 2019年12月 本体4,000円 A5判上製341頁 ISBN978-4-8010-0445-0
帯文より:デッサンと色彩、抽象と具象、垂直と水平、地と図、見ることと読むこと、有限と無限……。モンドリアン、ポロック、デュビュッフェ、クレー、スタインバーグ、アダミ、ルーアンといった作家たちを導きの糸にしながら、二十世紀の美術が依拠してきた理論と歴史の布置を問い直し、その錯綜とした結び目に光を投げかける。

数十年前に刊行された書籍でもそう簡単に色あせないのは、人文学の営みというものがそもそも文化の歴史的深層へとその視線を果敢に届かせようとしているからでしょう。例えばダミッシュと同じく美術系の哲学者による「現代の古典」の翻訳としては、一年前にイヴ・ミショー(Yves Michaud, 1944-)の90年代の論争的著作『La crise de l'art contemporain : Utopie, démocratie et comédie』(PUF, 1997)の全訳が刊行されています。『現代アートの危機――ユートピア、民主主義、そして喜劇』(島本浣/中西園子訳、三元社、2019年1月、本体3,500円、A5判上製280頁、ISBN978-4-88303-471-0)。底本はカドリージュ版(2005年/2015年)。こうした書籍を意識的に扱っていらっしゃる書店さんは信用に値すると私は思います。

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# by urag | 2020-02-21 02:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)