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2020年 09月 13日

注目新刊:フロム『愛するということ』改訳版、テイラー『荷を引く獣たち』、ほか

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愛するということ』エーリッヒ・フロム著、鈴木晶訳、紀伊國屋書店、2020年8月、本体1,300円、46判上製212頁、ISBN978-4-314-01177-8
マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』丸山俊一+NHK「欲望の時代の哲学」制作班著、NHK出版新書、2020年9月、本体800円、新書判224頁、ISBN978-4-14-088635-9
名著ではじめる哲学入門』萱野稔人著、NHK出版新書、2020年9月、本体950円、新書判312頁、ISBN978-4-14-088633-5
《新装版》ひきこもれ――ひとりの時間をもつということ』吉本隆明著、SB新書、2020年9月、本体860円、新書判176頁、ISBN978-4-8156-0458-5

★『愛するということ』は、フロム生誕120年記念の改訳新装版。「30年ぶりに訳文に大幅に手を入れた」(帯文より)とのことです。本書が懸田克躬訳で紀伊國屋書店より初めて刊行されたのが1959年。原著は1956年の『The Art of Loving』です。心理学者フロム(Erich Seligmann Fromm, 1900-1980)の著書のうちもっとも世界各国で読まれた本ではないでしょうか。日本でもその後80年代まで幾度となく版を重ね、1991年に鈴木晶さんによる新訳が刊行されました。新旧あわせ、こんにちまで日本で累計50万部のロングセラーとのことです。詩人の谷川俊太郎さんが推薦文を寄せておられます。「『愛するということ』を、若いころには観念的にしか読んでいなかった。再読してフロムの言葉が大変具体的に胸に響いてくるのに驚いた。読む者の人生経験が深まるにつれて、この本は真価を発揮すると思う」。

★「もし現代の社会経済組織全体が、自分の利益ばかりを追求する個々人から構成されていて、自己中心主義に支配され、利己主義が公平の倫理によってかろうじて抑えられているのだとしたら、既存の社会の枠組みのなかで商売をし、行動をしながら、愛の習練を積むことなど、はたしてできるのだろうか。愛の習練を積むためには、世俗的な欲求をすべて断念し、もっとも貧しい人びとと生活をともにしなければならないのではないだろうか。この問いは、キリスト教の修道士や、トルストイ、アルベルト・シュヴァイツァー、シモーヌ・ヴェイユらによって根本的な形で提起され、回答を与えられてきた」(194頁)。

★「現代社会は、企業の経営陣と職業的政治家によって運営されており、人びとは大衆操作によって操られている。人びとの目的は、もっと多く生産し、もっと多く消費することだ。それが生きる目的になっている。すべての活動は経済上の目標に奉仕し、手段が目的と化している。いまや人間はロボットである。おいしい物を食べ、しゃれた服を着てはいるが、自分のなかにあるきわめて人間的な資質や社会的役割にたいする究極的な関心をもっていない。/人を愛せるようになるためには、人間はその最高の位置に立たなければならない。経済という機構に奉仕するのではなく、経済機構が人間に奉仕しなければならない。たんに利益を分配するだけでなく、経験や仕事も分配できるようにならなければいけない。人を愛するという社交的な本性と、社会生活とが、分離するのではなく一体化するような、そんな社会をつくりあげなくてはならない」(197頁)。

★愛することは、憎しみと嫉妬と悪意と冷酷さに満ちて細かく分断され断片化したこんにちの社会では、ますます利己的範疇に押しとどめられ、困難になっているようです。しかし、異なる者同士が互いに斬り捨てることなく共に生きていくほかないのが、社会の本当の現実ではないでしょうか。他者なしに誰が生き残れるでしょうか。フロムの『愛するということ』は、比較的に多くの書店さんに配本されているので、今なら店頭で購入しやすいです。ぜひ多くの方が手に取って下さればと念じます。

★『マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』は、NHK-ETVで今春放送された全5回の特番「欲望の時代の哲学2020 NY思索ドキュメント」の書籍化。ガブリエルさんのインタヴュー「コロナ嬉々と新自由主義の終焉」に始まり、ガブリエルさんと5人の知性の対談を収録しています。対談相手はカート・アンダーセン(訳書『ファンタジーランド』東洋経済新報社)、クリスチャン・マスビアウ(訳書『センスメイキング』プレジデント社)、デイヴィッド・チャーマーズ(訳書『意識する心』白揚社)、ダニエル・ケールマン(訳書『世界の測量』三修社)、張旭東(チャン・スートン、ニューヨーク大学教授)、の5氏。ガブリエルさんはさいきん東大の中島隆博さんとの共著『全体主義の克服』(集英社新書、2020年8月)を上梓したばかり。活躍の場はまだまだ広がりそうです。

★『名著ではじめる哲学入門』は、近年テレビメディアでの露出も多い哲学者の萱野稔人(かやの・としひと:1970-)さんが、哲学、人間、自己と他者、道徳、存在、政治、国家、ナショナリズム、暴力、権力、正義、刑罰、自由と平和、資本主義、歴史、といった15の主題をめぐり、アリストテレスからスピノザ、ドゥルーズ/ガタリまで、西洋哲学の古今の名著38点を援用しつつ講じた入門書です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。サイゾーから刊行された既刊2点、『哲学はなぜ役に立つのか? 』(2015年8月)や『社会のしくみが手に取るようにわかる哲学入門』(2018年4月)などに続く、古典を通じての人文知へのいざないです。

★『《新装版》ひきこもれ』は2002年に大和書房より単行本が刊行され、2006年にだいわ文庫で文庫化された、吉本隆明さんの『ひきこもれ』の新装版。巻頭には齋藤孝さんの解説「分断されないひとまとまりの時間をもて」が新たに加えられ、ヨシタケシンスケさんのイラストが添えらえています。齋藤さんはこう書きます。「まとまった時間と対極にあるのが、SNSによって「分」ごと、「秒」ごとに細かく「分断された時間」です。この本はSNSが登場する以前に出版されたものですが、インターネットのコミュニケーションによって自分の時間をバラバラにされるな、まとまった時間をとれ、もっと自分を耕せ、と私たちに警告しているように思えます」(6頁)。吉本さんの語り下ろしの本の中でももっとも読みやすく、また、今こそ読まれるべき〈常識外〉の良書ではないでしょうか。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

荷を引く獣たち――—動物の解放と障害者の解放』スナウラ・テイラー著、今津有梨訳、洛北出版、2020年9月、本体2,800円、46判並製444頁、ISBN978-4-903127-30-9
アレ Vol.8:日常/非日常から〈日常〉へ』アレ★Club、2020年9月、本体1,500円、A5判並製220頁、ISDN278-4-572741-08-7
アウグストゥス』ジョン・ウィリアムズ著、布施由紀子訳、作品社、2020年9月、本体2,600円、46判上製406頁、ISBN978-4-86182-820-1

★『荷を引く獣たち』は『Beasts of Burden: Animal and Disability Liberation』(The New Press, 2017)の全訳。著者のスナウラ・テイラー(Sunaura "Sunny" Taylor, 1982-)さんは米国の画家であり作家、アクティヴィスト。現在のところ唯一の単独著である本書は2018年のアメリカン・ブック・アワードを受賞している話題作です。食肉加工されるために劣悪な状態のまま輸送される大量の鶏を子供の頃から見てきた著者は考えます。「どうやって動物はモノになるのか? どうやってわたしたちは、このモノ化を正常なことだと考えるように教え込まれるのか?」(16頁)。

★「目を凝らせば凝らすほど、障害化された身体(disabled body)は、動物を利用した産業のいたるところに存在するということに、そして動物の身体は、こんにちのアメリカにおける障害をもった心身の抑圧のされ方と、不可分の関係にあるということに、気づかずにはいられないのである。ある考えが閃いた――もし動物と障害の抑圧がもつれあっているのならば、解放への道のりもまた、結びついているのではないか?」(17頁)。レベッカ・ソルニット(訳書『災害ユートピア』ほか)や、キャロル・J・アダムズ(訳書『肉食という性の政治学――フェミニズム-ベジタリアニズム批評』鶴田静訳、新宿書房、1994年)などから、本書に賛辞が送られています。

★『アレ』第2期(第5~8号)の締め括りだという第8号の特集は、「日常/非日常から〈日常〉へ」。2本のインタヴュー、社会学者の酒井隆史さん「「面白い」時代へ――都市と日常のダイナミズム」と、脳生理学者の北澤茂さん「先生、「時間」って何ですか?――「こころの時間額」から「時間生成学」へ」を柱に、論考3本、エッセイ4本、コラムと創作各1本で構成され、同誌最大の頁数となったとのことです。「ジャンル不定カルチャー」誌を標榜する『アレ』誌はどの商業誌とも似ていません。「「ワークして〔働いて〕、メシを食って、休むという、私たちの日常」について改めて考えること」(編集後記「日は常に、また昇る」より)へのこだわりが光る第2期でした。

★『アウグストゥス』は、『Augustus』(Vintage/Viking Press, 1972)の全訳。米国の作家ジョン・ウィリアムズ(John Edward Williams, 1922-1994)の最後の小説で、73年に全米図書賞(National Book Award)を受賞しています。初代ローマ皇帝のアウグストゥスの生涯を三部構成で描いたもの。第一部では帝国の基礎を築いた時期を、第二部では家族をめぐるドラマを、それぞれ史的資料をもとに描き、第三部では晩年の独白をウィリアムズ自身の想像力と筆致で記します。1965年の小説第3作『ストーナー』(東江一紀訳、作品社、2014年)で近年日本でも再評価された作家の、代表作の初訳です。


# by urag | 2020-09-13 23:30 | Comments(0)
2020年 09月 06日

注目新刊:『ジャック・ラカン 精神分析の四基本概念(上)』岩波文庫、ほか

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★まずは先月までの注目既刊書を列記します。

ジャック・ラカン 精神分析の四基本概念(上)』ジャック=アラン・ミレール編、小出浩之/新宮一成/鈴木國文/小川豊昭訳、岩波文庫、2020年8月、本体780円、文庫判258頁、ISBN978-4-00-386016-8
シンボルの哲学――理性、祭礼、芸術のシンボル試論』S・K・ランガー著、塚本明子訳、岩波文庫、2020年8月、本体1,440円、文庫判614頁、ISBN978-4-00-386015-1
フランス革命についての省察』エドマンド・バーク著、二木麻里 訳、光文社古典新訳文庫、2020年8月、本体1,480円、文庫判630頁、ISBN978-4-334-75430-3
新装版 シェリング著作集 1a巻 自我哲学』高山守編、文屋秋栄、2020年4月、本体5,000円、A5判上製262頁、ISBN978-4-906806-08-9
ルネ・シャール全集』ルネ・シャール著、吉本素子訳、青土社、2020年5月、本体12,000円、A5判上製函960頁、ISBN978-4-7917-7263-6

★岩波文庫の8月新刊から2点。『精神分析の四基本概念』は、ラカンの「セミネール」シリーズの第11巻で1964年の講義を収録したもの。国際精神分析家協会から「破門」されて講義の場を失ったラカンが、レヴィ=ストロースやフェルナン・ブローデルらの助けにより、テーマを「父の諸名」から「精神分析の四基本概念」に変更して再開することとなった、節目となる講義です。四基本概念というのは無意識、反復、転移、欲動の4つ。上巻では9回分の講義が収められています。

★親本は2000年刊の全1巻でしたが、文庫化にあたり改訳のうえ、上下2巻で刊行されます。翻訳改訂協力者として目次裏にクレジットされているのは、菅原誠一、深尾琢、古橋忠晃の3氏。セミネールでは初の文庫化で、ラカンの文庫化としても講談社学術文庫の2点、『二人であることの病い』2011年、『テレヴィジオン』2016年に継ぐ、貴重な3点目。なぜ全1巻にしてくれないのか、という本音はさておき、値段を抑えることによって購読者層を増やす戦略が功を奏したのか、私が購入した某大型書店では確か直近のベストセラー第6位に食い込む快挙でした。おそらくすべてのセミネール既刊を文庫化するのはなかなか困難なのかもしれませんが、10月発売だという下巻で予告されている「文庫版 訳者覚え書き」で文庫化の経緯と今後の計画が明かされるのかどうか、注視したいと思います。

★『シンボルの哲学』はアメリカの哲学者スザンヌ・ランガー(Susanne Katherina (Knauth) Langer, 1895–1985)の初期の主著『新しい基調の哲学』(Philosophy in a New Key: A Study in the Symbolism of Reason, Rite, and Art, Harvard University Press, 1942/1951/1957)の新訳。底本は57年の第3版。「アメリカにおける記号論の礎を築き、これを芸術の哲学に発展させた古典的名著」(カバー紹介文より)。師匠のホワイトヘッドに捧げられた一書です。

★ランガーの訳書には本書の旧訳(矢野萬里/池上保太/貴志謙二/近藤洋逸訳、岩波現代叢書、1960年;新装版、1981年)のほかに、『芸術とは何か』(『Problems of Art: Ten Philosophical Lectures』1957年;池上保太/矢野萬里訳、岩波新書、1967年)、『感情と形式――続「シンボルの哲学」』(『Feeling and form: a theory of art developed from philosophy in a new key』1953年;大久保直幹ほか訳、太陽社、初版第1巻1970年/初版第2巻1971年;合本再版、1987年;第3版、1999年)、『哲学的素描』(『Philosophical Sketches』1962年;塚本利明/星野徹訳、法政大学出版局、1974年)などがありますが、いずれも品切。特に『感情と形式』は古書価が高く品薄なので、ぜひともこちらも文庫になって欲しいですね。

★『フランス革命についての省察』は、18世紀英国の政治思想家エドマンド・バーク(Edmund Burke, 1729-1797)の主著『Reflections on the Revolution in France』(1790年)の新訳。フランス革命を痛烈に批判した古典で、これまでに幾度となく訳されており、現在でも水田洋訳(「フランス革命についての省察」、『世界の名著34』所収、中央公論社、1969年;『世界の名著41』所収、中公バックス、1980年;『フランス革命についての省察ほか』所収、全2巻、中公クラシックス、2002年)、半澤孝麿訳(『フランス革命の省察』みすず書房、1978年;新装版1997年)、中野好之訳(上下巻、岩波文庫、2000年)、佐藤健志編訳(抄訳、『[新訳]フランス革命の省察――「保守主義の父」かく語りき』PHP新書、2011年)などが入手可能です。そんななか、全1巻で新たな全訳が出たのはありがたいです。

★「フランスで起きたことはイングランドの実例に学んだのだと、そちらの人びとはときどき語っているそうですね。しかし断言させていただきますが、フランスで起きているできごとのうち、ほぼいかなるものもイングランドの民の習慣や多数意見から生まれたものではありません。できごとのなかでなされた行為も、その精神も異なります。またわたしたちはそこから学ぶつもりもありませんし、逆にみなさんに教示したこともいっさいないと言い添えておきたいと思います」(192頁)。「わたしたちは宗教こそが市民社会の基礎であり、あらゆる善の源泉であり、あらゆる慰めの源泉だと知っています。さらにさいわいなことに、心のなかでもそう感じているのです」(196頁)。「わたしたちが知っているのは、人間はその根本において宗教的動物だということ、無神論はわたしたちの理性にもとるだけではなく、本能にももとるということ、したがって無神論は長くその優位を維持できるものではないということです。わたしたちはこの知識を誇りに思っています」(197頁)。「国家と結びついた宗教、そして国家への義務と結びついた宗教は、自由な市民としてはるかに重要な意味を持ちます」(201頁)。現代の日本の政治を分析する上でも示唆を得られる古典ではないか、と感じます。

★最後の2点はコロナ禍の最中の新刊ということもあり、簡単に入手できなかったり懐が寂しかったりで、ようやく言及できるものです。

★『新装版 シェリング著作集 1a巻 自我哲学』は、新装版とは謳われているものの、燈影舎版では刊行されなかった新しいパートです。「哲学の原理としての自我について(1795年)」田村恭一訳、「独断主義と批判主義に関する哲学的書簡(1795-1796年)」古川周賢訳、の2篇を収録。新装版著作集は全6巻11分冊を予定し、今のところ4分冊を刊行。シェリングが、かのマルクス・ガブリエルによって近年再評価されているのは周知の通りです。

★『ルネ・シャール全集』は、吉本素子さんによる翻訳『ルネ・シャール全詩集』(青土社、 1999年;新装版2002年)に続く、驚嘆すべき一冊。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。A5判2段組で1000頁近い大冊が美麗な化粧函に入っています。間違いなく書棚で存在感を放つ1冊です。このたびの『全集』は『全詩集』のいわば発展形で、詩作品以外の評論や戯曲なども訳出して加えたもの。すでに『全詩集』をお持ちの方もおられるかと思いますが、『全集』も買って損なしです。

★このほか最近では、まもなく発売となる以下の新刊との出会いがありました。

『精選 シーニュ』モーリス・メルロ=ポンティ著、廣瀬浩司編訳、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,400円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-51002-0
『朝鮮銀行――ある円通貨圏の興亡』多田井喜生著、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,200円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-51003-7
『明の太祖 朱元璋』檀上寛著、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,200円、文庫判320頁、ISBN978-4-480-51005-1
『インドの数学――ゼロの発明』林隆夫著、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,300円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-51004-4
現実界に向かって――ジャック=アラン・ミレール入門』ニコラ・フルリー著、松本卓也訳、人文書院、2020年9月、本体2,400円、4-6判並製220頁、ISBN978-4-409-34055-4
美術手帖2020年10月号「ポスト資本主義とアート」』美術出版社、2020年9月、本体1,600円、A5判並製208頁+巻末別冊18頁、雑誌07611-10
人のつながりと世界の行方――コロナ後の縁を考える』山田孝子編著、英明企画編集、2020年9月、本体1,000円、A5判並製192頁、ISBN978-4-909151-06-3

★ちくま学芸文庫の9月新刊は4点でまもなく発売。『精選 シーニュ』は論文集『Signes』(Gallimard, 1960)の抄訳。原著は長い「序」のほか11篇が収められており、全訳には『シーニュ』全2巻(竹内芳郎監訳、みすず書房、1969~1970年)がありますが、現在は品切。今回の新訳「精選」では、「序」「間接的言語と沈黙の声」「モースからレヴィ=ストロースへ」「哲学者とその影」「生成しつつあるベルクソン」「マキアヴェッリについての覚書」を収録。近年再評価著しい哲学者の、時宜を得た出版だと思います。

★『朝鮮銀行』は2002年にPHP新書の1冊として刊行されたものの文庫化。著者の多田井喜生(たたい・よしお:1939-2018)さんは財団法人日本総合研究所の元参与。巻末の文庫版解説「空気中より軍資金を作る」は作家の板谷敏彦さんがお書きになっています。曰く「本書は明治44(1911)年8月15日、日本による韓国併合の際に中央銀行として設立され日本の第二次世界大戦敗戦とともに終焉を迎えた朝鮮銀行の歴史である」。著者は本書に先行して、大著『朝鮮銀行史』(東洋経済新報社、1987年)の編纂実務に関わっています。

★『明の太祖 朱元璋』は、白帝社版『中国歴史人物選』第9巻の文庫化。後世に「聖賢と豪傑と盗賊の性格を兼ね備えていた」と評された、明の初代皇帝・朱元璋(しゅ・げんしょう:1328-1398)を考察しています。「文庫版あとがき」によれば、原著をチェックし直した修正版となっているとのことです。著者の檀上寛(だんじょう・ひろし:1950-)さんは京都女子大学名誉教授。ご専門は明代政治史。直近の著書に『陸海の交錯 明朝の興亡(シリーズ「中国の歴史」第4巻)』(岩波新書、2020年5月)があります。

★『インドの数学』はちくま学芸文庫のMath&Scienceシリーズの1冊。1993年に中公新書の1冊として刊行されたものの文庫化。帯文に曰く「古代から16世紀までを原典に則して概観」と。巻末の「文庫版あとがき」によれば、誤記誤植を修正し、27年間の研究の進展に照らして修正が必要と思われる箇所も修正し、文献リストを増補したとのことです。著者の林隆夫(はやし・たかお:1949-)さんは同志社大学名誉教授。ご専門は、数学史、科学史、インド学でいらっしゃいます。

★『現実界に向かって』はまもなく発売。『Le réel insensé - Introduction à la pensée de Jacques-Alain Miller』(Germania, 2010)の全訳。ラカンの娘婿であり継承者のミレール(Jacques-Alain Miller, 1944-)をめぐる「初めての入門書」であり「現代ラカン派の良質な見取り図となる一冊」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻末にはミレールの著作目録もありますが、翻訳がないことに改めて驚きます。著者のフルリー(Nicolas Floury, 1978-)はフランスの学者で、哲学と精神分析の関係を研究しているとのこと。先に紹介した『精神分析の四基本概念』の質疑応答でもミレールが印象的に登場しますので、ぜひ併読をお薦めしたいです。

★『美術手帖2020年10月号』は明日発売。特集は「コロナ禍に考える、ポスト資本主義とアート――作品は商品か? 制作は労働か? 社会は不変か?」。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。マルクス・ガブリエルへのインタヴュー「アートは資本主義よりも巨大なもの」(聞き手=かないみき)に始まり、レンゾ・マルテンス、丹羽良徳、アマリア・ウルマン、アイザック・ジュリアン、ヨアー・ナンゴ、といった各氏へのインタヴューが収められ、昨今思いがけない形で注目を浴びた白井聡さんも「マルクスからおさらいするアートと資本主義の関係」という一文と、白川昌生さんとの対話「「贈与」から考える美術と社会」というかたちで参加されています。

★『人のつながりと世界の行方』はまもなく発売。シリーズ「比較文化学への誘い」の第6弾です。帯文に曰く「血縁、地縁、信仰縁、職縁、嗜好縁など世界各地の「つながり」をめぐる諸相の比較からコロナ後の世界において安全かつ豊かに生きる方途を探る」と。山極寿一、藤本透子、小西賢吾、和崎聖日、山田孝子の各氏が論考を寄せ、彼らに小河久志、桑野萌、坂井紀公子の各氏が加わった座談会2篇「「つながり」の変容から考える日本の未来――AI時代にも変わらない共有・共感の必要性」「「つながり」を取り戻す比較文化力の可能性――ネットから離れて未知のフィールドへ」が収められています。



# by urag | 2020-09-06 23:47 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 09月 02日

月曜社2020年10月新刊:『多様体』第2号:総特集「ジャン=リュック・ナンシー」

2020年09月22日受注締切
2020年10月01日取次搬入予定

多様体 第2号 総特集:ジャン=リュック・ナンシー
月曜社 本体3,200円 A5判並製360頁 ISBN978-4-86503-101-0

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

フランス哲学界の重鎮ナンシーをめぐる総頁特集。2017年4月に開催された、ジョルジュ・バタイユ生誕120年国際シンポジウム「神話・共同体・虚構――ジョルジュ・バタイユからジャン=リュック・ナンシーへ」で発表された国内研究者による力作論考を収めるとともに、ナンシーによる講演や各種メッセージ、慶應大セミナー、来日時のアクシデントによる入院体験をめぐる随想など、関連テクストを集成。日本滞在から着想を得た伴侶エレーヌ・ナンシーによる考察や、ハーマッハーによる長篇のナンシー論、ナンシーによるハーマッハー追悼文、今夏80歳を迎えたナンシーへのデュットマンによる祝辞も併載。気鋭の若手デザイナー大倉真一郎による新たな誌面と造本設計で贈る。

目次:総特集ジャン=リュック・ナンシー
はじめに ジョルジュ・バタイユからジャン=リュック・ナンシーへ|市川崇
心からバタイユを|ジャン=リュック・ナンシー|中川真知子・市川崇訳
日本のみなさんへのメッセージ|ジャン=リュック・ナンシー|乙幡亮・柿並良佑訳
だれが「虚構」を悦ぶのか?――アンフォルム再論|井岡詩子
神話の不在、文学の不在――ジョルジュ・バタイユと消滅の力をめぐって|石川学
時間、エクリチュール、政治――ジョルジュ・バタイユとジャン=リュック・ナンシー|市川崇
「内的経験」における他者の場所|大池惣太郎
人間なきオマージュ――バタイユ&ナンシー、思考の身振りと力|柿並良佑
神話の二つの相――ニーチェ、バタイユ、ナンシーとともに|酒井健
エロス、文学、災厄――バタイユ、レヴィナス、ナンシー|渡名喜庸哲
ジョルジュ・バタイユの『死者』について――キリスト教・愛・物語|中川真知子
「恋人たちの共同体」再考――バタイユの物語作品とナンシーの思考から|福島勲
「個体」をめぐる一九四〇年代のキリスト教哲学 ――J.-L.ナンシーの脱キリスト教的視点から|松本鉄平
ジャン=リュック・ナンシーからの応答|ジャン=リュック・ナンシー|柿並良佑ほか訳
星々の遺りもの?|ジャン=リュック・ナンシー|時田圭輔・松本鉄平・市川崇訳
『性存』をめぐるセミナー――二〇一七年四月一八日 慶應義塾大学|ジャン=リュック・ナンシー|市川崇訳
Nippospitalité 日本で受けた歓待|ジャン=リュック・ナンシー|渡名喜庸哲・市川崇訳
龍安寺|エレーヌ・ナンシー|福島勲訳
《共に》について/から離れて――ジャン=リュック・ナンシーにおける複数の変異と沈黙|ヴェルナー・ハーマッハー|西尾宇広・針貝真理子訳
私は言葉もない|ジャン=リュック・ナンシー|西尾宇広・針貝真理子訳
恐れるところを知らず――八〇歳を迎えるジャン=リュック・ナンシーに|アレクサンダー・ガルシア・デュットマン|柿並良佑訳
著訳者一覧
編集後記

月曜社2020年10月新刊:『多様体』第2号:総特集「ジャン=リュック・ナンシー」_a0018105_12272039.png


# by urag | 2020-09-02 12:27 | 近刊情報 | Comments(2)
2020年 08月 30日

注目新刊:マイケル・フリード『没入と演劇性』水声社、ほか

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★コロナ禍による外出自粛以後、新刊を購入するルートを確保するのがなかなか難しかった水声社さんの注目既刊書を列記します。

ケアのロジック――選択は患者のためになるか』アネマリー・モル著、田口陽子/浜田明範訳、水声社、2020年8月、本体3,200円、46判上製281頁、ISBN978-4-8010-0504-4
反政治機械――レソトにおける「開発」・脱政治化・官僚支配』ジェームズ・ファーガソン著、石原美奈子/松浦由美子/吉田早悠里訳、水声社、2020年4月、本体5,000円、四六判上製464頁、ISBN978-4-8010-0451-1
哲学詩集』トンマーゾ・カンパネッラ著、澤井繁男訳、水声社、2020年4月、本体6,000円、A5判上製536頁、ISBN978-4-8010-0403-0
没入と演劇性――ディドロの時代の絵画と観者』マイケル・フリード著、伊藤亜紗訳、水声社、2020年7月、本体5,000円、A5判上製374頁、ISBN978-4-8010-0506-8

★叢書「人類学の転回」では4月にファーガソン『反政治機械』、8月にモル『ケアのロジック』が配本されました。「反政治」に取消線が引かれている『反政治機械』は、アメリカの人類学者ジェームズ・ファーガソン(James Ferguson, 1959-)が、自身の1985年の博士論文「『開発』産業の言説、知、構造の生成」に加筆修正して出版した、『The Anti-Politics Machine: 'Development,' Depoliticization, and Bureaucratic Power in Lesotho』(Cambridge University Press, 1990)の訳書。帯文に曰く「技術的支援にみせかけて、国家機構を拡張する装置――開発。〔…〕「開発の人類学」の古典的名著」と。ファーガソンの訳書は本書が初めてのものです。

★『ケアのロジック』は、オランダの人類学者アネマリー・モル(Annemarie Mol, 1958-)の著書『The logic of care: health and the problem of patient choice』(Routledge, 2008)の全訳。叢書「人類学の転回」で刊行された『多としての身体――医療実践における存在論』(原著2002年;浜田明範/田口陽子訳、水声社、2016年)に続く訳書第2弾です。帯文に曰く「オランダの大学病院における糖尿病外来の調査を軸に、予測や制御が不可能な事象に向かい合う方法である「ケアのロジック」を抽出し、医療の現場を超えた私たちの生の指針を描き出す、現代人類学における新たな実践の書」と。

★カンパネッラ『哲学詩集』はシリーズ「イタリアルネサンス文学・哲学コレクション」の第3巻。1622年にドイツで刊行された『幾篇かの哲学詩の選集』(Scelta di alcune poesie filosofiche)の訳書。「四半世紀にも及んだ獄中生活において綴った89篇の詩」(帯文より)が収められています。イタリアの聖職者トンマーゾ・カンパネッラ(Tommaso Campanella, 1568-1639)の訳書は、本書の訳者でもある澤井繁男さんがお訳しになった『ガリレオの弁明』(工作舎、1991年;ちくま学芸文庫、2002年)以来のこと。

★『没入と演劇性』は、米国の美術史家マイケル・フリード(Michael Fried, 1939-)の主著のひとつ『Absorption and Theatricality: Painting and Beholder in the Age of Diderot』(University of California Press, 1980)の全訳。論文単位の翻訳はあったものの、高名な割には著書の翻訳は今回が初めて。しかも訳者は著書『どもる体』(医学書院、2018年)などで注目を集め続けている伊藤亜紗(いとう・あさ、1979-)さん。伊藤さんの言葉を借りると、『没入と演劇性』は、『クールベのリアリズム』(1990年)、『マネのモダニズム』(1996年)と続く、18世紀とミニマリズムの間を埋める重厚な3部作の1冊。人文系・美術系の訳書で今年もっとも注目しておくべき書目です。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

聖伝』シュテファン・ツヴァイク著、宇和川雄/籠碧訳、幻戯書房、2020年8月、本体3,000円、四六変形判ソフト上製304頁、ISBN978-4-86488-205-7 
『後藤新平の劇曲 平和』後藤新平案、平木白星稿、藤原書店、2020年8月、本体2,700円、B5変上製200頁、ISBN978-4-86578-281-3
『楕円の日本――日本国家の構造』山折哲雄/川勝平太著、藤原書店、2020年8月、本体3,600円、四六判上製528頁、ISBN978-4-86578-277-6
経済人類学入門――理論的基礎』鈴木康治著、作品社、2020年8月、本体2,400円、46判並製272頁、ISBN978-4-86182-819-5
太平洋島嶼戦――第二次大戦、日米の死闘と水陸両用作戦』瀬戸利春著、作品社、2020年8月、本体2,800円、A5判並製336頁、ISBN978-4-86182-818-8
トラウマにふれる――心的外傷の身体論的転回』宮地尚子著、金剛出版、2020年9月、本体3,400円、4-6判上製320頁、ISBN978-4-7724-1770-9
治療は文化である(臨床心理学 増刊12号)――治癒と臨床の民族誌』森岡正芳編、金剛出版、2020年8月、本体2,400円、B5判並製200頁、ISBN978-4-7724-1778-5
現代思想2020年9月号 特集=統計学/データサイエンス』青土社、2020年8月、本体1,600円、A5判並製262頁、ISBN978-4-7917-1403-2
中古典のすすめ』斎藤美奈子著、紀伊國屋書店、2020年9月、本体1,700円、46判並製320頁、ISBN978-4-314-01152-5

★『聖伝』は「ルリユール叢書」第11回配本、13点目の新刊。オーストリア生まれのユダヤ系作家シュテファン・ツヴァイク(Stefan Zweig, 1881–1942)が聖書や聖典を題材に「生涯にわたって折に触れて、ぽつぽつと」(訳者解説より)書き続けた聖伝5篇のうち、ノアの方舟伝説を素材とした「第三の鳩の伝説」1916年、『バガヴァッド・ギーター』から着想を得た「永遠の兄の目」1921年、古代ローマを舞台にした「埋められた燭台」1936年、の3篇を訳出し、さらに未訳のエッセイ「バベルの塔」を加えたもの。「戦争と平和」がそれぞれのテーマになっているとのことです。なお、聖伝の既訳には西義之訳で5篇すべてを収めている『ツヴァイク全集(4)レゲンデ』(みすず書房、1961年;1974年)があります。なお来月下旬発売となる「ルリユール叢書」第12回配本は、マルティン・ルイス・グスマン『ボスの影』寺尾隆吉訳、とのことです。

★藤原書店さんの8月新刊は2点。『後藤新平の劇曲 平和』は、後藤新平が、逓信大臣時代の部下で詩人の平木白星に語り下ろした、戯曲作品。巻頭に出久根達郎さんによる特別寄稿「香水郵便の考案者――後藤新平が共感した詩魂」、さらに加藤陽子さんによる解説「『劇曲 平和』を読む――日本と日本人をいかに世界に表象するかという問い」が配されています。加藤さんはこう評しています。「日露戦争後の後藤の世界戦略として散られる東西文明融和論、大アジア主義、新旧大陸対峙論等の真髄が、より豊かに展開されている」(28頁)。

★『楕円の日本』は二部構成。第Ⅰ部「楕円の日本」では、山折哲雄さんと川勝平太さんの2本の対談「日本国家の構造」「日本の「知」の課題」を収録。山折さんはこう述べます。「日本には二つの中心がある」(32頁)。「国家の中心は東京の皇居、霞が関〔…〕国土の中心は富士だ〔…〕。日本は、この二つの中心にもとづく楕円でできている」(同)。さらに全国に富士と呼ばれる山があることから、多元的な日本国家像に言及されています(42頁)。第Ⅱ部「十三世紀日本の軸の思想――親鸞を中心に」は川勝さんによる書き下ろし論考で、浄土思想と精神革命を論じています。

★作品社さんの8月新刊は2点。『経済人類学入門』は帯文に曰く「本邦初の初学者向けテキスト」で「図表を多用し、視覚的な分かりやすさにも配慮」と。「人間の経済」「経済行為の基盤」「経済行為の再編成」の3部構成。経済人類学(economic anthropology)とは「市場経済、自然環境と経済活動、農村や狩猟採集社会の在り方、さらに贈与交換といった非市場型の経済システムなど、人間の経済の全般をフィールドワーク等の人類学的な手法を用いて研究する学問」(帯表4より)。『太平洋島嶼戦』は、副題にある通り、第二次世界大戦における日米の戦闘を論じたもの。「「島嶼防衛」の歴史を紐解くとき、現在の安全保障へと結びつく教訓が甦る」と帯文に謳われています。

★金剛出版さんの新刊より2点。いずれも目次詳細は書名誌名のリンク先をご覧ください。『トラウマにふれる』はまもなく発売。一橋大学教授で精神科医の宮地尚子さんが2002年から2020年にかけて各媒体で発表されてきた論考15本とエッセイ3本に大幅な加筆修正を施し、まえがきとあとがきを加えて1冊としたもの。『治療は文化である』は「臨床心理学」増刊号。巻頭の論文で編者の森岡さんは「この増刊号では、人々が培ってきた文化の根底にあるものを見直し、文化と癒しに関わる現代課題を抽出する」と述べます。同号の刊行を記念して、9月6日と12日にトークセッションが開催されるとのことです。

★『現代思想2020年9月号 特集=統計学/データサイエンス』は版元紹介文に曰く「統計的なるものの歴史と現状をコロナ以後の地点から改めて一望し、それらが私たちの生存といかにかかわるのか、哲学的視座も交え多角的に検討」とのこと。新連載に成田龍一さんによる「「戦後知」の超克」。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。次号の通常号(2020年10月号)は9月末発売、特集「コロナ時代の大学――リモート授業・9月入学制議論・授業料問題」。楽しみです。

★『中古典のすすめ』は、紀伊國屋書店出版部のPR誌「scripta」で2006年10月の第1号から2020年4月の第55号まで連載されていた「中古典ノスゝメ」から47本を選んで大幅に加筆修正したもの。別媒体に掲載された、橋本修『桃尻娘』をめぐる1本を足して、合計で48点の中古典を紹介しています。中古典(ちゅうこてん)というのは、著者による造語で、比較的近年の本で歴史的評価が定まっておらず、まだ古典とは呼びにくいかつてのベストセラーのこと。本書では小説やルポ、エッセイ、人文書等々、60年代から80年代まで各15冊、90年代から3冊が取り上げられ、「名作度」や「使える度」を星の数で表すとともに、辛口に評価されています。
注目新刊:マイケル・フリード『没入と演劇性』水声社、ほか_a0018105_00023763.jpg


# by urag | 2020-08-30 23:37 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 08月 24日

本日搬入:今福龍太『サッカー批評原論』コトニ社、ほか注目新刊

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★今福龍太さん(著書『ブラジルのホモ・ルーデンス』)
2008年に弊社より上梓された『ブラジルのホモ・ルーデンス――サッカー批評原論』の改訂版『サッカー批評原論――ブラジルのホモ・ルーデンス』としてコトニ社さんより発行されました。本日、八木書店搬入&トランスビューより発送です。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

今福龍太著
コトニ社 2020年8月 本体1,900円 46変形判240頁 ISBN978-4-910108-03-2
帯文より:ゲームの刹那への愛が、厳格な批評へと並び立つ。政治・経済・テクノロジーの激流にのみこまれ自閉した「スポーツ」を救済する、闘争的・情熱的スポーツ文化批評。遊戯的なサッカーの未踏の領野へ、不可視の祝祭のスタジアムへ!

★郷原佳以さん(共訳『ブランショ政治論集』)
★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★大竹弘二さん(訳書:デュットマン『思惟の記憶』、共訳:デュットマン『友愛と敵対』)
「パンデミック時代を生きるための読書案内」を謳う、『現代思想2020年9月臨時増刊号 総特集=コロナ時代を生きるための60冊』に寄稿されています。郷原さんはデリダの論考「テレパシー」(『プシュケーⅠ』所収、岩波書店、2014年)を取り上げた「テレパシーの試練」をお寄せになり、鵜飼さんは深沢七郎『笛吹川』(講談社文芸文庫、2011年)を取り上げた「殺生をまなざす」、大竹さんはシュミット「ライヒ大統領の独裁」(『大統領の独裁』所収、未來社、1974年)を取り上げた「非常事態を宣言する主権者はまだ存在するのか」を執筆されています。同特集では複数の書店員さんも寄稿されていて、注目です。

青土社 2020年8月 本体1,600円 A5判並製294頁 ISBN978-4-7917-1401-8
編集後記より:COVID-19感染者も、非感染者も、もちろんそうした「カテゴリー」に帰属するだけではない生を生きている。こうした危機の時代において、メディウムのインターセクショナリティも思考しながら、本も傍らにある空間を、わたしたちはともに生きているのだ。

+++

 


# by urag | 2020-08-24 14:36 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 08月 23日

注目新刊:マルクス・ガブリエル/中島隆博『全体主義の克服』集英社新書、ほか

注目新刊:マルクス・ガブリエル/中島隆博『全体主義の克服』集英社新書、ほか_a0018105_02461001.jpg


全体主義の克服』マルクス・ガブリエル/中島隆博著、集英社新書、2020年8月、本体860円、253頁、ISBN978-4-08-721132-0
コロナ後の世界を語る――現代の知性たちの視線』養老孟司/ユヴァル・ノア・ハラリ/福岡伸一/ブレイディみかこ/イアン・ブレマー/磯野真穂/伊藤隆敏/大澤真幸/荻上チキ/ 角幡唯介/鎌田實/五味太郎/斎藤環/坂本龍一/ジャレド・ダイアモンド/東畑開人/中島岳志/藤原辰史/藻谷浩介/山本太郎/柚木麻子/横尾忠則著、朝日新聞社編、朝日新書、2020年8月、本体790円、208頁、ISBN978-4-02-295094-9
近代心理学の歴史――ETHレクチャー 第1巻 1933-1934』C・G・ユング著、E・ファルツェーダー編、河合俊雄監修、猪股剛/小木曽由佳/宮澤淳滋/鹿野友章訳、創元社、2020年8月、本体3,800円、A5並製360頁、ISBN978-4-422-11733-1
テレビジョン――テクノロジーと文化の形成』レイモンド・ウィリアムズ著、木村茂雄/山田雄三訳、ミネルヴァ書房、2020年7月、本体3,500円、4-6判上製290頁、ISBN978-4-623-08848-5
来訪神事典』平辰彦著、新紀元社、2020年8月、本体3,000円、A5判並製304頁、ISBN978-4-7753-1834-8
エレホン』サミュエル・バトラー著、武藤浩史訳、新潮社、2020年7月、本体2200円、四六判上製319頁、ISBN978-4-10-507151-6

★『全体主義の克服』は2019年9月、2日間にわたってガブリエルさんと中島さんが英語で対話したものの一部を翻訳し活字化したものとのこと。巻頭の「はじめに」に中島さんの「哲学の使命」とガブリエルさんの「精神の毒にワクチンを」が置かれ、そこから対話が全7章に整理されて収録されています。巻末の「おわりに」では中島さんによる「「一なる全体」に抗するために」が配されています。書名のリンク先では、章立ての確認と、第一章「全体主義を解剖する」の冒頭7頁の立ち読みができます。ガブリエルさんの本格的な対談本は、日本では本書が初めてです。

★『コロナ後の世界を語る』は「朝日新聞デジタル」で4月末に開設された「コロナ後の世界を語る――現代の知性たちの視線」の一部を新書としてまとめたもの。先月から今月にかけて新書で刊行された類書には、『変質する世界――ウィズコロナの経済と社会』PHP新書、『コロナ後の世界』文春新書、『コロナ後の世界を生きる――私たちの提言』岩波新書、などがあります。養老さんやダイアモンドさん、藤原さん、藻谷さんらは類書でも寄稿されていますが、それはやむを得ません。類書すべてを比べ読みする楽しみというのもあります。養老さんの言う自立と不要不急の話が個人的には非常に印象的でした。

★『近代心理学の歴史』は、「ETH(エーテーハー)レクチャー」の第1巻(1933-1934年)。帯文に曰く「専門家にではなく一般の聴衆に、新たな時代に向かう心理学について語りかけたシリーズ第1巻」と。ETHとはEidgenössische Technische Hochschule、すなわちスイス連邦工科大学のこと。そのチューリッヒ校で行われた講義につき、完成原稿が存在していないために何人かのノートを照合して決定稿を作成しつつあるシリーズで、複雑な著作権事情により現時点では英訳のみの出版となっているそうです。原著は『History of Modern Psychology』(Princeton University Press, 2019)。第1巻では16講を収録。かのジョン・ロックフェラー(John Davison Rockefeller Sr., 1839-1937)に対する人物評や彼とのやりとりが第15講の末尾で紹介されますが、実に興味深いです。

★『テレビジョン』は、英国のマルクス主義理論家レイモンド・ウィリアムズ(Raymond Henry Williams, 1921-1988)の『Television: Technology and Cultural form』(Fontana, 1974; 2nd edition, Routledge, 1990)の全訳。子息のエデリンによる「第二版への序文」と註釈も訳出されています。カルチュラル・スタディーズの古典であり、訳者によれば「ウィリアムズの唯一まとまったテレビ論」(229頁)。テレビは民主主義実現への長い革命の道具でもあり、市民の日常を浸食する反革命の道具でもある(223~224頁参照)との本書の分析は、今なお傾聴に値します。

★『来訪神事典』は「時を定めて人々を訪れ、幸いを与えて災厄を祓う神」(5頁)をめぐり、「日本及び世界各国の仮面・仮装の来訪神行事の開催時期、起源・伝承、仮装の姿、仮面の形態、素材、地域の信仰、風土、行事の内容を理解する上で必要な用語について解説」(27頁)したもの。ユネスコ無形文化遺産である国内の10の行事が中心的に扱われています。甑島のトシドン、男鹿のナマハゲ、能登のアマメハギ、宮古島のパーントゥ、遊佐のアマハゲ、米川の水かぶり、見島のカセドリ、吉浜のスネカ、薩摩硫黄島のメンドン、悪石島のボゼ。

★『エレホン』は19世紀英国の作家サミュエル・バトラー(Samuel Butler, 1835-1902)の小説『Erewhon』(1872年)の新訳。理想郷に見えた未知の国が実はディストピアだったことを描いて、英国社会の風刺画とした名作です。既訳には、山本政喜訳『エレホン――山脈を越えて』(岩波文庫、1952年)、富川昭義訳『エレホン――連峰の彼方に』(清文堂、1975年;『概説『エレホン』『エレホン再遊記』』所収、勁草出版サービスセンター発行、勁草書房発売、1992年)、石原文雄訳『エレホン――倒錯したユートピア』(音羽書房、1979年)など。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

BLACK LIVES MATTER――黒人たちの叛乱は何を問うのか』河出書房新社編集部編、河出書房新社、2020年8月、本体1,800円、A5判並製208頁、ISBN978-4-309-24973-5
政治の展覧会:世界大戦と前衛芸術』引込線/放射線パブリケーションズ企画制作、EOS ART BOOKS発行、2020年8月、本体1,500円、A5判並製160頁、ISBN978-4-9907403-1-3
ねむらない樹 vol.5』書肆侃侃房、2020年8月、本体1,300円、A5判並製176頁、ISBN978-4-86385-408-6

★『BLACK LIVES MATTER』はまもなく発売となる緊急出版のアンソロジー。前半部は、マニュエル・ヤン「ブラック・ライヴズ・マターとは何か」に始まり、アンジェラ・デイヴィス、中村隆之、酒井隆史、木澤佐登志ら16名の各氏による14本の論考で構成。後半部は、高祖岩三郎+マット・ピーターソンの2氏監修による「蜂起するアメリカ――連続インタヴュー&現地報告」であり、4本のインタヴュー(マット・ピーターソン/シュリン・ロドリゲス/マリア・ヘロン/イドリス・アツ・ロビンソン)と7本の現地報告から成ります。圧倒的な熱量です。

★『政治の展覧会:世界大戦と前衛芸術』は、アートプロジェクト「引込線/放射線」から派生した批評誌「政治の展覧会」の第一弾。企画・制作が引込線/放射線パブリケーションズで、EOS ART BOOKSが発行、ツバメ出版流通の扱いです。目次詳細と内容見本は書名のリンク先をご覧ください。2本の翻訳(マリネッティ「未来派文学技術宣言+未来派文学技術宣言補遺」池野絢子訳、リシツキー「生産における芸術家」関貴尚訳)を含むテクスト9本と、図版と解説で誌上展示される19本の作品カタログがフルカラーで掲載された、意欲的な試みです。

★短歌ムック『ねむらない樹』の第5号は「リニューアル号」と銘打たれています。編集委員体制から編集人体制に移行したようです。メイン特集は短歌の私性を問う「短歌における「わたし」とは何か?」。山内志朗さんが「内臓と鬼火と星空と――短歌における〈私〉ということ」と題した論考を寄せているのが新鮮です。第2特集は「学生短歌会からはじまった」で学生短歌会アンソロジーを収録。第3特集は「くどうれいん/工藤玲音」で新作エッセイ、短歌、俳句、対談を掲載。詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。次号は来年2月刊行予定。


# by urag | 2020-08-23 23:24 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 08月 19日

ブックツリー「哲学読書室」に澤田哲生さんの選書リストが追加されました

幼年期の現象学――ソルボンヌのメルロ=ポンティ』(人文書院、2020年8月)の著者、澤田哲生さんによるコメント付き選書リスト「P4CからC4Pへ」が、オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」にて公開開始となりました。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために
55)築地正明(つきじ・まさあき:1981-)さん選書「信仰について考える。ベルクソンとドゥルーズと共に
56)浅野俊哉(あさの・としや:1962-)さん選書「〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
57)岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さん/赤羽健(あかはね・けん:1991-)さん選書「贈与論を通してどう資本主義を突き抜けていくか
58)秋元康隆(あきもと・やすたか:1978-)さん選書「「利他」とは何かを学ぶために
59)宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ:1974-)さん選書「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく
60)後藤護(ごとう・まもる:1988-)さん選書「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門
61)大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さん選書「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム
62)飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さん選書「思考を解き放て!
63)長濱一眞(ながはま・かずま:1983-)さん選書「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊
64)入江哲朗(いりえてつろう:1988–)さん選書「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊
65)福島勲(ふくしま・いさお:1970-)さん選書「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる
66)山本圭(やまもと・けい:1981-)さん選書「アンタゴニズム(敵対性)と政治について考えるブックリスト
67)横田祐美子(よこた・ゆみこ:1987-)さん選書「「思考すること」をたえず思考しつづけるために
68)伊藤潤一郎(いとう・じゅんいちろう:1989-)さん選書「世界の終わりにおいて人間には何ができるのか?
69)井岡詩子(いおか・うたこ:1987‐)さん選書「おとなの内に残存する子ども/わたしと再び出会う
70)松田智裕(まつだ・ともひろ:1986-)さん選書「読み、抵抗し、問う
71)篠森ゆりこ(しのもり・ゆりこ:1967-)さん選書「紙幣の肖像に選ばれたハリエット・タブマンて誰?
72)三浦隆宏(みうら・たかひろ:1975-)さん選書「哲学カフェには考えるに値する論点があるか?
73)中井亜佐子(なかい・あさこ:1966-)さん選書「女たちの英文学――個と、集合性と
74)澤田哲生(さわだ・てつお:1979-)さん選書「P4CからC4Pへ

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# by urag | 2020-08-19 18:02 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 08月 16日

注目新刊:グレーバー『ブルシット・ジョブ』岩波書店、ほか

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ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史/芳賀達彦/森田和樹訳、岩波書店、2020年7月、本体3,700円、A5判並製442頁、ISBN978-4-00-061413-9
国道3号線――抵抗の民衆史』森元斎著、共和国、2020年8月、本体2,500円、四六変型判上製272頁、ISBN978-4-907986-73-5
民衆暴力―― 一揆・暴動・虐殺の日本近代』藤野裕子著、中公新書、2020年8月、本体820円、新書判240頁、ISBN978-4-12-102605-7

★『ブルシット・ジョブ』は『Bullshit Jobs: A theory』(Simon & Schuster, 2018)の訳書。巻頭には「なにか有益なことをしたいと望んでいるすべてのひとに捧げる」という言葉が掲げられています。米国の人類学者グレーバー(David Graeber, 1961-)の単独著の邦訳はこれで7冊目。『負債論――貨幣と暴力の5000年』(酒井隆史監訳、高祖岩三郎/佐々木夏子訳、以文社、2016年;原著『Debt: The First 5000 Years』Melville House, 2011)に並ぶグレーバーの代表作の待望の刊行です。コロナ禍により「新しい生活様式」なるものが政府によって唱導される昨今、現代人の働き方や生き方、考え方を見つめ直すうえで重要な一書ではないでしょうか。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。巻頭10頁の立ち読みも可能。訳者あとがきが本書の解説となっているので時間の余裕がない方には特に有益かと思います。グレーバーは序章「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)現象について」の末尾で次のように記しています。

★「いつ、どのようにして、創造性〔クリエイティヴィティ〕とは苦痛を伴うものだと想定されるようになったのか。あるいは、どのようにして、人間の時間の売却が可能であるという考えが生まれたのか。〔…〕わたしは、本書がわたしたちの文明の心臓部を射抜く矢となることをねがっている。わたしたちがみずからつくりだしてきたもののなかには、なにかとてもおかしなところがある。わたしたちは、仕事を基盤とした文明をつくりだしてきた――ここでの仕事とは「生産的な仕事」というよりも、それ自体が目的でありそれ自体に意味のあるような仕事である。さらにわたしたちは、自分にとってもとくに愉しくない仕事なのに、その仕事を勤勉にこなしていない人間をみると、悪人とみなし、愛情にも、ケアにも、支援にも値しないと考えるようになった。まるで、わたしたちがこぞって自分自身の隷属化を黙認しているかのようなのである。わたしたちが大半の時間を完全に無意味で反生産的ですらある活動――たいてい、自分の好きでもない人間からの命令下でおこなわれる――に従事しているという自覚に対する、主な政治的反応は、この同じ罠にはまっていない人間も世の中には存在するという事態への、反感をともなった怒りである。結果として、嫌悪と反感と疑念が、わたしたちの社会をまとめあげる接着剤となった。これは悲惨な状態である。ねがわくば終わらせたい」(16頁)。

★『国道3号線』は森元斎(もり・もとなお、1983-:長崎大学多文化社会学部准教授)さんの『具体性の哲学――ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考』(以文社、2015年)および『アナキズム入門』(ちくま新書、2017年)に続く、3冊目の単独著。国道3号線沿いの九州の歴史を掘り起こし、歪んだ近代化の過程における民衆の抵抗史を見つめつつ、「日本の「原基」を垣間見る」(15頁)試み。西南戦争、山鹿コミューン、水俣病、三池炭鉱、サークル村、米騒動などが論及されています。「あわいに生きるからこそ、私たちは立ちすくむ。と同時に加勢することができる。そして大きく行動することもできる。あわいに、つまり悶え加勢する水準に私たちは生きることができる。〔…〕放射性物質が拡散し、COVID-19が蔓延し、なすすべもなく立ちすくむ。私たちは何もできない。と同時に私たちは何でもできる。これらのあわいに私たちは悶え加勢しながら生きている」(99~100頁)。悶え加勢する、とは石牟礼道子さんの言葉です。

★『民衆暴力』はまもなく発売。藤野裕子(ふじの・ゆうこ、1976-:東京女子大学現代教養学部准教授)さんによる『都市と暴動の民衆史』(有志舎、2015年)に続く単独著第2弾。はしがきによれば、序章では「近世の百姓一揆とその変遷を概観し」、本論前半では「明治元年に起きた新政反対一揆と、自由民権運動期に起きた秩父事件〔…〕を題材に、近代国家の樹立にともなって、どのような民衆暴動が起こり、それがどのように変化したのかを確認」する。後半では「明治後期から大正期にかけて起きた民衆暴力」の二例、「日露戦争の終結に際して巻き起こった日比谷焼き打ち事件」と「関東大震災時の朝鮮人虐殺」を取り上げる。前者では「対外戦争の経験や近代都市での生活をとおして、それまでとは異なる都市暴動という独特の民衆暴力の形態が生まれたことを確認し」、後者では「植民地支配と関わってどのような民衆暴力が生まれたのか、また軍隊や警察といった国家の暴力装置が民衆暴力を正当化した際にどのような事態が起きたのかを明らかにしたい」と。現代におけるSNSでの炎上や匿名暴力を考える上でも示唆的ではないでしょうか。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

吉本隆明全集23[1987-1989]』吉本隆明著、晶文社、2020年8月、本体6,800円、A5判変型判上製634頁、ISBN978-4-7949-7123-4
伊東豊雄 自選作品集――身体で建築を考える』伊東豊雄著、平凡社、2020年8月、本体12,000円、A4判上製408頁、ISBN978-4-582-54467-1
アウグストゥス――虚像と実像』バーバラ・レヴィック著、マクリン富佐訳、法政大学出版局、2020年8月、本体6,300円、四六判上製596頁、ISBN978-4-588-01120-7
マルジナリアでつかまえて――書かずば読めぬの巻』山本貴光著、本の雑誌社、2020年7月、本体2,200円、四六判並製320頁(巻頭カラー32頁)、ISBN978-4-86011-445-9

★『吉本隆明全集23[1987-1989]』はまもなく発売。『ハイ・イメージ論Ⅱ』と『宮沢賢治』が収められています。月報24は、川村湊「“終わりをまっとうする”批評家」、金子遊「マクロネシアの渚へ」、ハルノ宵子「孤独のリング」を収録。『ハイ・イメージ論Ⅱ』のあとがきに記された言葉が印象的です。「どんな緊急で突発的にみえる主題も、永続的な根本的な主題のすがたをはらんでいるかとおもうと、どんな永続的な悠久の貌をした主題も、かならず緊急で、突発的なすがたをはらんであらわれる」(303頁)。

★『伊東豊雄 自選作品集』は建築家の伊東豊雄(いとう・とよお、1941-)さんが1976年から2020年までに手掛けた建築物から伊藤さん自身が選んだ27作品を取り上げるほか、展覧会および舞台、製品など諸々のデザインの紹介、さらに自らの半生を振り返る長めの序文を収めたもの。巻頭には中沢新一さんによるエッセイ「伊東豊雄の建築哲学」が配されています。A4サイズの大型本で存在感抜群。大きな本が好き、という方にはぜひ手にとっていただきたいです。

★『アウグストゥス』は英国の歴史家バーバラ・レヴィック(Barbara Levick, 1931-)による『Augustus: Image and Substance』(Longman, 2010)を全訳したもの。著者は二度来日しているとのことですが、訳書の刊行は今回が初めて。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。初代ローマ皇帝アウグストゥスによる、共和政から元首政への移行は、彼がオクタウィアヌスだった当初から有していた権力志向に発するものだ、と鋭く分析されています。

★『マルジナリアでつかまえて』は文筆家でゲーム作家の山本貴光(やまもと・たかみつ、1971-)さんの8冊目となる単独著。『本の雑誌』での連載「マルジナリアでつかまえて」の第1回から第25回(2017年10月号~2019年10月号)までをまとめたもの。連載は現在も継続中です。「著名人から無名の痕跡、プログラミングのコメントまで」(カバーソデ紹介文より)、マルジナリア(余白の書き込み)を長年追い続けてきた著者ならではの魅力的なエッセイ集です。

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# by urag | 2020-08-16 20:50 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 08月 14日

「週刊読書人」に井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』の書評

「週刊読書人」2020年8月14日号に、弊社3月刊、井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』の書評記事「長きにわたる思索を俯瞰する試み――初期の『ドキュマン』から最晩年の『エロスの涙』まで」が掲載されました。評者は日本大学准教授の安原伸一朗さんです。「これまでしばしば「アンフォルム(不定形)」という限概念を通じて分析され、バタイユ自身の思想を超えて展開されることもあるその芸術論に対して、「幼年期」という字句を設定することで、あらためて「バタイユの造形芸術論と文学論に共通の地平を見出すこと」を目指した試みである。それはまた、初期の『ドキュマン』から『マネ』や『エロティシズム』などを経由しつつ最晩年の『エロスの涙』にいたるまで、バタイユの長きにわたる思索を俯瞰する試みでもある」と評していただきました。

# by urag | 2020-08-14 11:43 | 広告・書評 | Comments(0)
2020年 08月 12日

本日取次搬入:デリダ『スクリッブル』

弊社新刊、ジャック・デリダ『スクリッブル 付:パトリック・トール「形象変化」』が本日取次搬入となりました。「叢書エクリチュールの冒険」第17回配本です。70年代後半に発表された、グラマトロジーを引き継ぐ重要論考です。どの書店さんで扱いがあるかについては弊社営業部へお気軽にお問い合わせください。


# by urag | 2020-08-12 01:32 | Comments(0)