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2020年 09月 22日

注目新刊:『ゲンロン11』『ポストトゥルース』『ママ、最後の抱擁』『もっと!』ほか

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★まもなく発売となる新刊4点をまず列記します。

ゲンロン11』ゲンロン、2020年9月、本体2,500円、A5判並製424頁、ISBN978-4-907188-38-2
ポストトゥルース――現代社会の基本問題』リー・マッキンタイア著、大橋完太郎監訳、居村匠/大﨑智史/西橋卓也訳、2020年9月、本体2,400円、4-6判並製270頁、ISBN978-4-409-03110-0
ママ、最後の抱擁』フランス・ドゥ・ヴァール著、柴田裕之訳、紀伊國屋書店、2020年10月、本体2,400円、46判上製408頁、ISBN978-4-314-01178-5
もっと!――愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』ダニエル・Z・リーバーマン/マイケル・E・ロング著、インターシフト発行、合同出版発売、2020年10月、本体2,100円、四六判並製344頁、ISBN978-4-7726-9570-1

★『ゲンロン11』は、10周年を迎えたゲンロンの顔となる季刊誌(年3回発行)の第2期第2弾。巻頭には東浩紀さんによる論考「悪の愚かさについて2、あるいは原発事故と中動態の記憶」と、プラープダー・ユンさんによるSF小説「ベースメント・ムーン」の冒頭部が掲出されています。小特集は「「線の芸術」と現実」では、漫画家3氏(安彦良和、大井昌和、山本直樹)を迎えた3つの座談会が並びます。また本号では、多彩な書き手が「旅」を綴る新コーナー「ゲンロンの目」がスタートし、柳美里、大山顕、巻上公一、小川哲、の4氏が寄稿。コロナ禍で困難が生じている観光のリアルを見つめ続ける「ゲンロン」誌の姿勢に感銘を覚えます。このほか、目次詳細は誌名のリンク作をご覧ください。なお、書店での販売開始となる9月23日(水)いっぱいまでにゲンロンショップで第11号を予約した方には、東浩紀さんの直筆サインを付けて(為書きもOK)、国内送料無料で発送されるとのことです。



★『ポストトゥルース』は『Post-Truth』(MIT Press, 2018)の訳書。「公共の意見を形成する際に、客観的な事実よりも感情や個人的な信念に訴える方が影響力のある状況を、説明ないし表すもの」(20頁、オックスフォード大学出版辞典部門による定義)としてのポストトゥルースを考察した、ベストセラーの邦訳。現代社会を蝕むフェイク・ニュースやオルタナティブ・ファクトととともに、現実を乗っ取ろうとする政治的危険の際たるものであるそのしくみに、鋭く多面的に迫っています。日本でも政治、官庁、企業、マスメディアによる、印象操作や情報操作が横行しつつあるこんにち、現代人必須のリテラシーの書として広く読まれるべき本です。著者のリー・マッキンタイア(Lee McIntyre, 1962-)は米国の科学哲学者。訳書は本書が初めてのもの。



★『ママ、最後の抱擁』は『Mama's Last Hug: Animal Emotions and What They Tell Us about Ourselves』(Norton, 2019)の全訳。『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』(原著:2016年;松沢哲郎監訳、柴田裕之訳、紀伊國屋書店、2017年)の姉妹編で、動物の認知を分析した同書に対し、今回の新刊では動物の情動を扱っています。人間だけでなくすべての動物に感情や情動が存在することを指摘した本書は、米国でベストセラーとなり、22か国で翻訳されているそうです。書名は、40年にわたる「親友」同士だった、アルファメス(コロニー内の最上位のメス)のチンパンジー「ママ」と著者の恩師との、生前最後の挨拶を表したもの。その様子は第一章に詳しく書かれており、読者の胸を揺さぶらずにはおかないでしょう。動画も残されています。



★『もっと!』は『The Molecule of More: How a Single Chemical in Your Brain Drives Love, Sex, and Creativity ― and Will Determine the Fate of the Human Race』(BenBella Books, 2018)の訳書。「私たちを熱愛・冒険・創造・成功に駆り立て、人類の運命をも握る」(帯文より)、神経伝達物質「ドーパミン」の働きをめぐる、たいへん興味深い脳科学読本です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ドーパミンは哺乳類、爬虫類、鳥類、魚類の脳内に例外なく見られるものの、ヒト以上に大量に持つ生物は存在しないとのこと。ドーパミンはヒトの欲望を刺激し、けっして満足させず、創造へも破壊へも導きます。第5章「政治」では、保守とリベラルの脳の違いが論及されていて、人文系の読者にも遡及するのではないかと思います。



★続いて最近出会った新刊について列記します。

スポーツ人類学――グローバリゼーションと身体』ニコ・ベズニエ/スーザン・ブロウネル/トーマス・F・カーター著、川島浩平/石井昌幸/窪田暁/松岡秀明訳、共和国、2020年9月、本体4,500円、菊変型判並製476頁、ISBN978-4-907986-65-0
「維新」的近代の幻想――日本近代150年の歴史を読み直す』子安宣邦著、作品社、本体2,700円、46判上製304頁、ISBN978-4-86182-823-2
現代思想2020年10月臨時増刊号 総特集=ブラック・ライヴズ・マター』青土社、2020年9月、本体1,700円、A5判並製326頁、ISBN978-4-7917-1402-5
恋する少年十字軍』早助よう子著、河出書房新社、2020年9月、本体1,700円、46変形判248頁、ISBN978-4-309-02907-8

★『スポーツ人類学』は『The Anthropology of Sport: Bodies, Borders, Biopolitics』(University of California Press, 2017)の訳書。原書副題は「身体、境界、生政治」です。古代から現代まで、ローカルからグローバルまで、植民地主義/帝国主義、健康/環境、階級/人種、ジェンダー/セクシュアリティ、メガイベント/メディアイベント、国民/ナショナリズム、世界システム/国際関係、等々とスポーツとの関わりが、民族誌的に分析されています。オランダ、米国、英国の人類学者であり、競技の現場に関わってきた3氏が、5大陸すべてを対象に数十年の歳月をかけて研究した成果をまとめた、基礎文献であり概説書です。

★『「維新」的近代の幻想』は、巻末のあとがきによれば、2018年4月から2020年2月まで東京と大阪で行われた子安さんの思想史講座「明治維新の近代」での講義をもとにした一冊。「私の「日本近代の読み直し」とは「王政復古」的近代国家日本の制度論的な批判的読み直しです」(292頁)。「維新的近代150年」のこんにち、石田梅岩(いしだ・ばいがん、1685-1744)、横井小楠(よこい・しょうなん、1809-1869)、鈴木雅之(すずき・まさゆき、1837-1871)、中江兆民(なかえ・ちょうみん、1847-1901)、津田左右吉(つだ・そうきち、1873-1961)、尾崎秀実(おざき・ ほつみ、1901-1944)、戦没学徒らとの思想的血脈に希望を見いだす試み。

★『現代思想2020年10月臨時増刊号』は総特集「ブラック・ライヴズ・マター」。酒井直樹×西谷修×新田啓子の3氏による討議「人間解放の連続体としてのBLM」に始まり、アンジェラ・デイヴィス、酒井隆史、大山エンリコイサム、丹生谷貴志、をはじめとする各氏の寄稿、そして、ジュディス・バトラーやジェイミー・スミスへのインタヴューなど充実した内容です。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。巻末には有光道生さんによる年表「ブラック・ライヴズ・マター運動から語り直す第二次世界大戦後の米国史」が配されています。

★『恋する少年十字軍』は作家の早助よう子(はやすけ・ようこ、1982-)さんの小説7篇「少女神曰く、「家の中には何かある」」「恋する少年十字軍」「犬猛る」「ポイントカード」「帰巣本能」「非行少女モニカ」「二つの幸運」を収録。2019年の私家版短編集『ジョン』に続く単行本第二弾です。柴田元幸さんと岸本佐知子さんが推薦文を書いておられます。早助さんの不思議な作品世界の人気については、某版元の編集者Wさんが書いた「期待の小説家・早助よう子『ジョン』の、ささやかでたしかな達成――私家版で出版した初の作品集が話題に」に明らかです。

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by urag | 2020-09-22 23:45 | Comments(0)
2020年 09月 17日

月曜社2020年10月末新刊:ジェイソン・ワイス編『スティーヴ・レイシーとの対話』

■ 2020年10月27日取次搬入予定 *音楽、ジャズ

スティーヴ・レイシーとの対話
スティーヴ・レイシー著 ジェイソン・ワイス編 小田中裕次訳
月曜社 本体3,500円、46判(縦188mm×横130mm)並製448頁 ISBN:978-4-86503-102-7

アマゾン・ジャパンにてご予約受付中

ジャズ・モダニスト第二世代の中でも、ひときわ特異なキャリアと音楽性をもったミュージシャンの音楽哲学と音楽人生! デューク・エリントン、セシル・テイラー、セロニアス・モンクをリスペクトしながら、よりフリーへ、フリーダムへと、「常に深く個人に根差し、常に新たな道筋を模索し」(リー・コニッツ)、「芸術を誠実に追求すべく戦った人物」(ソニー・ロリンズ)を、作家、批評家、ミュージシャン、哲学者、建築家などによるインタビューによって明かされる、日本では未だ知られることの少ないレイシーの全体像! 1959年(25歳)から、亡くなった2004年(69歳)までの45年間に、フランス、米国、イギリス、カナダで受けたインタビューから34編 + 13編の自筆メモ + 3曲の自作曲楽譜を収載。【特別寄稿】大谷能生「「レイシー・ミュージック」の複層性」。

「胸が張り裂けるような、驚くべき本だ。非の打ちどころのない、レイシーが吹くラインのような本。ディキシー、セシル・テイラー、セロニアス・モンク、ギル・エヴァンス、ムジカ・エレットロニカ・ビバ、巡業、ローマ、パリ、ニューヨーク、アジア、ボストン、内面の哲学、画家たち、詩人たち、コーデュロイ――それらで満載になった本。舞台で、路上で、美術館で、自宅で、音楽修業のために歩き回った人生――この本には、負け惜しみも感傷旅行もない。あるのは、まぎれもない真実だけだ」
― Alvin Curran, New York Times

原著:Steve Lacy Conversations, Edited by Jason Weiss, Duke University Press, 2006.

目次:
謝辞
PART1  対話
編者まえがき
1 スティーヴ・レイシー紹介(一九五九年)
2 いちばん好きなもの(一九六一年)
3 モンクの国(一九六三年)
4 さよならニューヨーク(一九六五年)ガース・W・ケイラー・ジュニア
5 誠実なるレイシー(一九六五年)フィリップ・カール
6 二十六人の新人ジャズメンへの質問(一九六五年)
7 スティーヴ・レイシーは語る(一九七一年)ポール・グロ=クロード
8 インプロヴィゼーション(一九七四年)デレク・ベイリー
9 証言〔Evidence〕と省察〔Reflections〕(一九七六年)アラン=ルネ・ハーディ/フィリップ・クィンサーキュ
10 演奏とプロセス、音楽的本能について(一九七六年)レイモン・ジェルヴェ/イヴ・ブリアン
11 心の中に(一九七六年)ロベルト・テルリッチ
12 ひらめき、隔たり、跳躍(一九七九年)ブライアン・ケース
13 道を探して(一九八〇年)ジェイソン・ワイス
14 『ソングス』スティーヴ・レイシーとブライオン・ガイシン(一九八一年)ジェイソン・ワイス
15 知られざる巨人?(一九八二年)グザヴィエ・プレヴォ
16 “フューチャリティーズ”(一九八四年)イサベル・ガローニ・ディストリア
17 長距離プレイヤーの孤独(一九八七年)ジェラール・ルイ
18 楽器の練習と探求について(一九八八年)カーク・シルズビー
19 芸術に悩みは尽きず(一九九〇年)クリスチャン・ゴーフル
20 専門的な話〔ソプラノサックス〕(一九九〇年)メル・マーティン
21 生き生きとしていなければ(一九九一年)ベン・ラトリフ
22 声について スティーヴ・レイシーとイレーヌ・エイビ(一九九三年)ジェイソン・ワイス
23 “小さな花”をS・Bへ(一九九四年)フィリップ・カール
24 彫刻とジャズ(一九九四年)アラン・キリリ
25 余計な音はいらない、もう十分だ(一九九五年)フランク・メディオニ
26 “リヴィング”・レイシー(一九九五年)ジェラール・ルイ
27 スクラッチング・ザ・セヴンティーズ(一九九六年)エチエンヌ・ブリュネ
28 パリのことは忘れよう(一九九六年)ジョン・コーベット
29 若かりし日々(一九九七年)リー・フリードランダー/マリア・フリードランダー
30 素晴らしき三十年(二〇〇〇年)フランク・ベルジェロ/アレックス・デュティ
31 パリよさらば(二〇〇二年)ジェラール・ルイ
32 透明ジュークボックス(二〇〇二年)クリストフ・コックス
33 ボストンからの挨拶(二〇〇三年)フランク・メディオニ
34 芸術としての歌曲  スティーヴ・レイシーとイレーヌ・エイビ(二〇〇四年)エド・ヘイゼル

PART2  文章
MEVノート
ローバ
ガーデン・バラエティ
FMP十周年記念
モンクはどうしているだろうか?
彼は飛んでいた
高層大気圏にて アルバート・アイラー
四郎と私
ショート・テイクス
吉沢
メイド・イン・フランス
曲の引用源
合宿研修者の募集

PART3  楽譜
Dreams(一九七五年)
Mind of Heart(一九八二年)
3 Haiku(一九九八年)

訳者解説
大谷能生|「レイシー・ミュージック」の複層性
ディスコグラフィー選/クレジット
索引

スティーヴ・レイシー(Steve Lacy:1934年7月~ 2004年6月)ソプラノサックス奏者。ディキシーランド・ジャズから出発し、セシル・テイラー、ギル・エヴァンス、そしてセロニアス・モンクとの邂逅を経て、60年代フリー・ジャズの世界へと向かい、ヨーロッパへ移住。70年代ポスト・フリー時代以降は、作曲家としてもインプロヴィゼーション音楽の領域で、詩、歌曲、ダンスを融合させた独自の音楽世界を探求し続けた。1975年以降、幾度か来日し、佐藤允彦、富樫雅彦、高橋悠治、小杉武久らと共演している。

ジェイソン・ワイス(Jason Weiss)著書に、アルバート・アイラーなどで知られるフリー・ジャズ、NYアンダーグラウンドの重要レーベルESP-DISKについてのオーラル・ヒストリーや『ブライオン・ガイシン読本』がある。訳書に『危険を冒して書く――異色作家たちへのパリ・インタヴュー』(浅野敏夫訳、法政大学出版局、1993年)。

小田中裕次(おだなか・ゆうじ)翻訳家。訳書に、アンディ・ハミルトン『リー・コニッツ――ジャズ・インプロヴァイザーの軌跡』(DU BOOKS、2015年)、ロビン・ケリー『セロニアス・モンク――独創のジャズ物語』(シンコーミュージック、2017年)、『パノニカ――ジャズ男爵夫人の謎を追う』(月曜社、2019年)がある。


by urag | 2020-09-17 20:19 | Comments(0)
2020年 09月 13日

注目新刊:フロム『愛するということ』改訳版、テイラー『荷を引く獣たち』、ほか

注目新刊:フロム『愛するということ』改訳版、テイラー『荷を引く獣たち』、ほか_a0018105_02315888.jpg

愛するということ』エーリッヒ・フロム著、鈴木晶訳、紀伊國屋書店、2020年8月、本体1,300円、46判上製212頁、ISBN978-4-314-01177-8
マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』丸山俊一+NHK「欲望の時代の哲学」制作班著、NHK出版新書、2020年9月、本体800円、新書判224頁、ISBN978-4-14-088635-9
名著ではじめる哲学入門』萱野稔人著、NHK出版新書、2020年9月、本体950円、新書判312頁、ISBN978-4-14-088633-5
《新装版》ひきこもれ――ひとりの時間をもつということ』吉本隆明著、SB新書、2020年9月、本体860円、新書判176頁、ISBN978-4-8156-0458-5

★『愛するということ』は、フロム生誕120年記念の改訳新装版。「30年ぶりに訳文に大幅に手を入れた」(帯文より)とのことです。本書が懸田克躬訳で紀伊國屋書店より初めて刊行されたのが1959年。原著は1956年の『The Art of Loving』です。心理学者フロム(Erich Seligmann Fromm, 1900-1980)の著書のうちもっとも世界各国で読まれた本ではないでしょうか。日本でもその後80年代まで幾度となく版を重ね、1991年に鈴木晶さんによる新訳が刊行されました。新旧あわせ、こんにちまで日本で累計50万部のロングセラーとのことです。詩人の谷川俊太郎さんが推薦文を寄せておられます。「『愛するということ』を、若いころには観念的にしか読んでいなかった。再読してフロムの言葉が大変具体的に胸に響いてくるのに驚いた。読む者の人生経験が深まるにつれて、この本は真価を発揮すると思う」。

★「もし現代の社会経済組織全体が、自分の利益ばかりを追求する個々人から構成されていて、自己中心主義に支配され、利己主義が公平の倫理によってかろうじて抑えられているのだとしたら、既存の社会の枠組みのなかで商売をし、行動をしながら、愛の習練を積むことなど、はたしてできるのだろうか。愛の習練を積むためには、世俗的な欲求をすべて断念し、もっとも貧しい人びとと生活をともにしなければならないのではないだろうか。この問いは、キリスト教の修道士や、トルストイ、アルベルト・シュヴァイツァー、シモーヌ・ヴェイユらによって根本的な形で提起され、回答を与えられてきた」(194頁)。

★「現代社会は、企業の経営陣と職業的政治家によって運営されており、人びとは大衆操作によって操られている。人びとの目的は、もっと多く生産し、もっと多く消費することだ。それが生きる目的になっている。すべての活動は経済上の目標に奉仕し、手段が目的と化している。いまや人間はロボットである。おいしい物を食べ、しゃれた服を着てはいるが、自分のなかにあるきわめて人間的な資質や社会的役割にたいする究極的な関心をもっていない。/人を愛せるようになるためには、人間はその最高の位置に立たなければならない。経済という機構に奉仕するのではなく、経済機構が人間に奉仕しなければならない。たんに利益を分配するだけでなく、経験や仕事も分配できるようにならなければいけない。人を愛するという社交的な本性と、社会生活とが、分離するのではなく一体化するような、そんな社会をつくりあげなくてはならない」(197頁)。

★愛することは、憎しみと嫉妬と悪意と冷酷さに満ちて細かく分断され断片化したこんにちの社会では、ますます利己的範疇に押しとどめられ、困難になっているようです。しかし、異なる者同士が互いに斬り捨てることなく共に生きていくほかないのが、社会の本当の現実ではないでしょうか。他者なしに誰が生き残れるでしょうか。フロムの『愛するということ』は、比較的に多くの書店さんに配本されているので、今なら店頭で購入しやすいです。ぜひ多くの方が手に取って下さればと念じます。

★『マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』は、NHK-ETVで今春放送された全5回の特番「欲望の時代の哲学2020 NY思索ドキュメント」の書籍化。ガブリエルさんのインタヴュー「コロナ嬉々と新自由主義の終焉」に始まり、ガブリエルさんと5人の知性の対談を収録しています。対談相手はカート・アンダーセン(訳書『ファンタジーランド』東洋経済新報社)、クリスチャン・マスビアウ(訳書『センスメイキング』プレジデント社)、デイヴィッド・チャーマーズ(訳書『意識する心』白揚社)、ダニエル・ケールマン(訳書『世界の測量』三修社)、張旭東(チャン・スートン、ニューヨーク大学教授)、の5氏。ガブリエルさんはさいきん東大の中島隆博さんとの共著『全体主義の克服』(集英社新書、2020年8月)を上梓したばかり。活躍の場はまだまだ広がりそうです。

★『名著ではじめる哲学入門』は、近年テレビメディアでの露出も多い哲学者の萱野稔人(かやの・としひと:1970-)さんが、哲学、人間、自己と他者、道徳、存在、政治、国家、ナショナリズム、暴力、権力、正義、刑罰、自由と平和、資本主義、歴史、といった15の主題をめぐり、アリストテレスからスピノザ、ドゥルーズ/ガタリまで、西洋哲学の古今の名著38点を援用しつつ講じた入門書です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。サイゾーから刊行された既刊2点、『哲学はなぜ役に立つのか? 』(2015年8月)や『社会のしくみが手に取るようにわかる哲学入門』(2018年4月)などに続く、古典を通じての人文知へのいざないです。

★『《新装版》ひきこもれ』は2002年に大和書房より単行本が刊行され、2006年にだいわ文庫で文庫化された、吉本隆明さんの『ひきこもれ』の新装版。巻頭には齋藤孝さんの解説「分断されないひとまとまりの時間をもて」が新たに加えられ、ヨシタケシンスケさんのイラストが添えらえています。齋藤さんはこう書きます。「まとまった時間と対極にあるのが、SNSによって「分」ごと、「秒」ごとに細かく「分断された時間」です。この本はSNSが登場する以前に出版されたものですが、インターネットのコミュニケーションによって自分の時間をバラバラにされるな、まとまった時間をとれ、もっと自分を耕せ、と私たちに警告しているように思えます」(6頁)。吉本さんの語り下ろしの本の中でももっとも読みやすく、また、今こそ読まれるべき〈常識外〉の良書ではないでしょうか。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

荷を引く獣たち――—動物の解放と障害者の解放』スナウラ・テイラー著、今津有梨訳、洛北出版、2020年9月、本体2,800円、46判並製444頁、ISBN978-4-903127-30-9
アレ Vol.8:日常/非日常から〈日常〉へ』アレ★Club、2020年9月、本体1,500円、A5判並製220頁、ISDN278-4-572741-08-7
アウグストゥス』ジョン・ウィリアムズ著、布施由紀子訳、作品社、2020年9月、本体2,600円、46判上製406頁、ISBN978-4-86182-820-1

★『荷を引く獣たち』は『Beasts of Burden: Animal and Disability Liberation』(The New Press, 2017)の全訳。著者のスナウラ・テイラー(Sunaura "Sunny" Taylor, 1982-)さんは米国の画家であり作家、アクティヴィスト。現在のところ唯一の単独著である本書は2018年のアメリカン・ブック・アワードを受賞している話題作です。食肉加工されるために劣悪な状態のまま輸送される大量の鶏を子供の頃から見てきた著者は考えます。「どうやって動物はモノになるのか? どうやってわたしたちは、このモノ化を正常なことだと考えるように教え込まれるのか?」(16頁)。

★「目を凝らせば凝らすほど、障害化された身体(disabled body)は、動物を利用した産業のいたるところに存在するということに、そして動物の身体は、こんにちのアメリカにおける障害をもった心身の抑圧のされ方と、不可分の関係にあるということに、気づかずにはいられないのである。ある考えが閃いた――もし動物と障害の抑圧がもつれあっているのならば、解放への道のりもまた、結びついているのではないか?」(17頁)。レベッカ・ソルニット(訳書『災害ユートピア』ほか)や、キャロル・J・アダムズ(訳書『肉食という性の政治学――フェミニズム-ベジタリアニズム批評』鶴田静訳、新宿書房、1994年)などから、本書に賛辞が送られています。

★『アレ』第2期(第5~8号)の締め括りだという第8号の特集は、「日常/非日常から〈日常〉へ」。2本のインタヴュー、社会学者の酒井隆史さん「「面白い」時代へ――都市と日常のダイナミズム」と、脳生理学者の北澤茂さん「先生、「時間」って何ですか?――「こころの時間額」から「時間生成学」へ」を柱に、論考3本、エッセイ4本、コラムと創作各1本で構成され、同誌最大の頁数となったとのことです。「ジャンル不定カルチャー」誌を標榜する『アレ』誌はどの商業誌とも似ていません。「「ワークして〔働いて〕、メシを食って、休むという、私たちの日常」について改めて考えること」(編集後記「日は常に、また昇る」より)へのこだわりが光る第2期でした。

★『アウグストゥス』は、『Augustus』(Vintage/Viking Press, 1972)の全訳。米国の作家ジョン・ウィリアムズ(John Edward Williams, 1922-1994)の最後の小説で、73年に全米図書賞(National Book Award)を受賞しています。初代ローマ皇帝のアウグストゥスの生涯を三部構成で描いたもの。第一部では帝国の基礎を築いた時期を、第二部では家族をめぐるドラマを、それぞれ史的資料をもとに描き、第三部では晩年の独白をウィリアムズ自身の想像力と筆致で記します。1965年の小説第3作『ストーナー』(東江一紀訳、作品社、2014年)で近年日本でも再評価された作家の、代表作の初訳です。


by urag | 2020-09-13 23:30 | Comments(0)
2020年 09月 06日

注目新刊:『ジャック・ラカン 精神分析の四基本概念(上)』岩波文庫、ほか

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★まずは先月までの注目既刊書を列記します。

ジャック・ラカン 精神分析の四基本概念(上)』ジャック=アラン・ミレール編、小出浩之/新宮一成/鈴木國文/小川豊昭訳、岩波文庫、2020年8月、本体780円、文庫判258頁、ISBN978-4-00-386016-8
シンボルの哲学――理性、祭礼、芸術のシンボル試論』S・K・ランガー著、塚本明子訳、岩波文庫、2020年8月、本体1,440円、文庫判614頁、ISBN978-4-00-386015-1
フランス革命についての省察』エドマンド・バーク著、二木麻里 訳、光文社古典新訳文庫、2020年8月、本体1,480円、文庫判630頁、ISBN978-4-334-75430-3
新装版 シェリング著作集 1a巻 自我哲学』高山守編、文屋秋栄、2020年4月、本体5,000円、A5判上製262頁、ISBN978-4-906806-08-9
ルネ・シャール全集』ルネ・シャール著、吉本素子訳、青土社、2020年5月、本体12,000円、A5判上製函960頁、ISBN978-4-7917-7263-6

★岩波文庫の8月新刊から2点。『精神分析の四基本概念』は、ラカンの「セミネール」シリーズの第11巻で1964年の講義を収録したもの。国際精神分析家協会から「破門」されて講義の場を失ったラカンが、レヴィ=ストロースやフェルナン・ブローデルらの助けにより、テーマを「父の諸名」から「精神分析の四基本概念」に変更して再開することとなった、節目となる講義です。四基本概念というのは無意識、反復、転移、欲動の4つ。上巻では9回分の講義が収められています。

★親本は2000年刊の全1巻でしたが、文庫化にあたり改訳のうえ、上下2巻で刊行されます。翻訳改訂協力者として目次裏にクレジットされているのは、菅原誠一、深尾琢、古橋忠晃の3氏。セミネールでは初の文庫化で、ラカンの文庫化としても講談社学術文庫の2点、『二人であることの病い』2011年、『テレヴィジオン』2016年に継ぐ、貴重な3点目。なぜ全1巻にしてくれないのか、という本音はさておき、値段を抑えることによって購読者層を増やす戦略が功を奏したのか、私が購入した某大型書店では確か直近のベストセラー第6位に食い込む快挙でした。おそらくすべてのセミネール既刊を文庫化するのはなかなか困難なのかもしれませんが、10月発売だという下巻で予告されている「文庫版 訳者覚え書き」で文庫化の経緯と今後の計画が明かされるのかどうか、注視したいと思います。

★『シンボルの哲学』はアメリカの哲学者スザンヌ・ランガー(Susanne Katherina (Knauth) Langer, 1895–1985)の初期の主著『新しい基調の哲学』(Philosophy in a New Key: A Study in the Symbolism of Reason, Rite, and Art, Harvard University Press, 1942/1951/1957)の新訳。底本は57年の第3版。「アメリカにおける記号論の礎を築き、これを芸術の哲学に発展させた古典的名著」(カバー紹介文より)。師匠のホワイトヘッドに捧げられた一書です。

★ランガーの訳書には本書の旧訳(矢野萬里/池上保太/貴志謙二/近藤洋逸訳、岩波現代叢書、1960年;新装版、1981年)のほかに、『芸術とは何か』(『Problems of Art: Ten Philosophical Lectures』1957年;池上保太/矢野萬里訳、岩波新書、1967年)、『感情と形式――続「シンボルの哲学」』(『Feeling and form: a theory of art developed from philosophy in a new key』1953年;大久保直幹ほか訳、太陽社、初版第1巻1970年/初版第2巻1971年;合本再版、1987年;第3版、1999年)、『哲学的素描』(『Philosophical Sketches』1962年;塚本利明/星野徹訳、法政大学出版局、1974年)などがありますが、いずれも品切。特に『感情と形式』は古書価が高く品薄なので、ぜひともこちらも文庫になって欲しいですね。

★『フランス革命についての省察』は、18世紀英国の政治思想家エドマンド・バーク(Edmund Burke, 1729-1797)の主著『Reflections on the Revolution in France』(1790年)の新訳。フランス革命を痛烈に批判した古典で、これまでに幾度となく訳されており、現在でも水田洋訳(「フランス革命についての省察」、『世界の名著34』所収、中央公論社、1969年;『世界の名著41』所収、中公バックス、1980年;『フランス革命についての省察ほか』所収、全2巻、中公クラシックス、2002年)、半澤孝麿訳(『フランス革命の省察』みすず書房、1978年;新装版1997年)、中野好之訳(上下巻、岩波文庫、2000年)、佐藤健志編訳(抄訳、『[新訳]フランス革命の省察――「保守主義の父」かく語りき』PHP新書、2011年)などが入手可能です。そんななか、全1巻で新たな全訳が出たのはありがたいです。

★「フランスで起きたことはイングランドの実例に学んだのだと、そちらの人びとはときどき語っているそうですね。しかし断言させていただきますが、フランスで起きているできごとのうち、ほぼいかなるものもイングランドの民の習慣や多数意見から生まれたものではありません。できごとのなかでなされた行為も、その精神も異なります。またわたしたちはそこから学ぶつもりもありませんし、逆にみなさんに教示したこともいっさいないと言い添えておきたいと思います」(192頁)。「わたしたちは宗教こそが市民社会の基礎であり、あらゆる善の源泉であり、あらゆる慰めの源泉だと知っています。さらにさいわいなことに、心のなかでもそう感じているのです」(196頁)。「わたしたちが知っているのは、人間はその根本において宗教的動物だということ、無神論はわたしたちの理性にもとるだけではなく、本能にももとるということ、したがって無神論は長くその優位を維持できるものではないということです。わたしたちはこの知識を誇りに思っています」(197頁)。「国家と結びついた宗教、そして国家への義務と結びついた宗教は、自由な市民としてはるかに重要な意味を持ちます」(201頁)。現代の日本の政治を分析する上でも示唆を得られる古典ではないか、と感じます。

★最後の2点はコロナ禍の最中の新刊ということもあり、簡単に入手できなかったり懐が寂しかったりで、ようやく言及できるものです。

★『新装版 シェリング著作集 1a巻 自我哲学』は、新装版とは謳われているものの、燈影舎版では刊行されなかった新しいパートです。「哲学の原理としての自我について(1795年)」田村恭一訳、「独断主義と批判主義に関する哲学的書簡(1795-1796年)」古川周賢訳、の2篇を収録。新装版著作集は全6巻11分冊を予定し、今のところ4分冊を刊行。シェリングが、かのマルクス・ガブリエルによって近年再評価されているのは周知の通りです。

★『ルネ・シャール全集』は、吉本素子さんによる翻訳『ルネ・シャール全詩集』(青土社、 1999年;新装版2002年)に続く、驚嘆すべき一冊。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。A5判2段組で1000頁近い大冊が美麗な化粧函に入っています。間違いなく書棚で存在感を放つ1冊です。このたびの『全集』は『全詩集』のいわば発展形で、詩作品以外の評論や戯曲なども訳出して加えたもの。すでに『全詩集』をお持ちの方もおられるかと思いますが、『全集』も買って損なしです。

★このほか最近では、まもなく発売となる以下の新刊との出会いがありました。

『精選 シーニュ』モーリス・メルロ=ポンティ著、廣瀬浩司編訳、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,400円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-51002-0
『朝鮮銀行――ある円通貨圏の興亡』多田井喜生著、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,200円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-51003-7
『明の太祖 朱元璋』檀上寛著、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,200円、文庫判320頁、ISBN978-4-480-51005-1
『インドの数学――ゼロの発明』林隆夫著、ちくま学芸文庫、2020年9月、本体1,300円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-51004-4
現実界に向かって――ジャック=アラン・ミレール入門』ニコラ・フルリー著、松本卓也訳、人文書院、2020年9月、本体2,400円、4-6判並製220頁、ISBN978-4-409-34055-4
美術手帖2020年10月号「ポスト資本主義とアート」』美術出版社、2020年9月、本体1,600円、A5判並製208頁+巻末別冊18頁、雑誌07611-10
人のつながりと世界の行方――コロナ後の縁を考える』山田孝子編著、英明企画編集、2020年9月、本体1,000円、A5判並製192頁、ISBN978-4-909151-06-3

★ちくま学芸文庫の9月新刊は4点でまもなく発売。『精選 シーニュ』は論文集『Signes』(Gallimard, 1960)の抄訳。原著は長い「序」のほか11篇が収められており、全訳には『シーニュ』全2巻(竹内芳郎監訳、みすず書房、1969~1970年)がありますが、現在は品切。今回の新訳「精選」では、「序」「間接的言語と沈黙の声」「モースからレヴィ=ストロースへ」「哲学者とその影」「生成しつつあるベルクソン」「マキアヴェッリについての覚書」を収録。近年再評価著しい哲学者の、時宜を得た出版だと思います。

★『朝鮮銀行』は2002年にPHP新書の1冊として刊行されたものの文庫化。著者の多田井喜生(たたい・よしお:1939-2018)さんは財団法人日本総合研究所の元参与。巻末の文庫版解説「空気中より軍資金を作る」は作家の板谷敏彦さんがお書きになっています。曰く「本書は明治44(1911)年8月15日、日本による韓国併合の際に中央銀行として設立され日本の第二次世界大戦敗戦とともに終焉を迎えた朝鮮銀行の歴史である」。著者は本書に先行して、大著『朝鮮銀行史』(東洋経済新報社、1987年)の編纂実務に関わっています。

★『明の太祖 朱元璋』は、白帝社版『中国歴史人物選』第9巻の文庫化。後世に「聖賢と豪傑と盗賊の性格を兼ね備えていた」と評された、明の初代皇帝・朱元璋(しゅ・げんしょう:1328-1398)を考察しています。「文庫版あとがき」によれば、原著をチェックし直した修正版となっているとのことです。著者の檀上寛(だんじょう・ひろし:1950-)さんは京都女子大学名誉教授。ご専門は明代政治史。直近の著書に『陸海の交錯 明朝の興亡(シリーズ「中国の歴史」第4巻)』(岩波新書、2020年5月)があります。

★『インドの数学』はちくま学芸文庫のMath&Scienceシリーズの1冊。1993年に中公新書の1冊として刊行されたものの文庫化。帯文に曰く「古代から16世紀までを原典に則して概観」と。巻末の「文庫版あとがき」によれば、誤記誤植を修正し、27年間の研究の進展に照らして修正が必要と思われる箇所も修正し、文献リストを増補したとのことです。著者の林隆夫(はやし・たかお:1949-)さんは同志社大学名誉教授。ご専門は、数学史、科学史、インド学でいらっしゃいます。

★『現実界に向かって』はまもなく発売。『Le réel insensé - Introduction à la pensée de Jacques-Alain Miller』(Germania, 2010)の全訳。ラカンの娘婿であり継承者のミレール(Jacques-Alain Miller, 1944-)をめぐる「初めての入門書」であり「現代ラカン派の良質な見取り図となる一冊」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻末にはミレールの著作目録もありますが、翻訳がないことに改めて驚きます。著者のフルリー(Nicolas Floury, 1978-)はフランスの学者で、哲学と精神分析の関係を研究しているとのこと。先に紹介した『精神分析の四基本概念』の質疑応答でもミレールが印象的に登場しますので、ぜひ併読をお薦めしたいです。

★『美術手帖2020年10月号』は明日発売。特集は「コロナ禍に考える、ポスト資本主義とアート――作品は商品か? 制作は労働か? 社会は不変か?」。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。マルクス・ガブリエルへのインタヴュー「アートは資本主義よりも巨大なもの」(聞き手=かないみき)に始まり、レンゾ・マルテンス、丹羽良徳、アマリア・ウルマン、アイザック・ジュリアン、ヨアー・ナンゴ、といった各氏へのインタヴューが収められ、昨今思いがけない形で注目を浴びた白井聡さんも「マルクスからおさらいするアートと資本主義の関係」という一文と、白川昌生さんとの対話「「贈与」から考える美術と社会」というかたちで参加されています。

★『人のつながりと世界の行方』はまもなく発売。シリーズ「比較文化学への誘い」の第6弾です。帯文に曰く「血縁、地縁、信仰縁、職縁、嗜好縁など世界各地の「つながり」をめぐる諸相の比較からコロナ後の世界において安全かつ豊かに生きる方途を探る」と。山極寿一、藤本透子、小西賢吾、和崎聖日、山田孝子の各氏が論考を寄せ、彼らに小河久志、桑野萌、坂井紀公子の各氏が加わった座談会2篇「「つながり」の変容から考える日本の未来――AI時代にも変わらない共有・共感の必要性」「「つながり」を取り戻す比較文化力の可能性――ネットから離れて未知のフィールドへ」が収められています。



by urag | 2020-09-06 23:47 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 09月 02日

月曜社2020年10月新刊:『多様体』第2号:総特集「ジャン=リュック・ナンシー」

2020年09月22日受注締切
2020年10月01日取次搬入予定

多様体 第2号 総特集:ジャン=リュック・ナンシー
月曜社 本体3,200円 A5判並製360頁 ISBN978-4-86503-101-0

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

フランス哲学界の重鎮ナンシーをめぐる総頁特集。2017年4月に開催された、ジョルジュ・バタイユ生誕120年国際シンポジウム「神話・共同体・虚構――ジョルジュ・バタイユからジャン=リュック・ナンシーへ」で発表された国内研究者による力作論考を収めるとともに、ナンシーによる講演や各種メッセージ、慶應大セミナー、来日時のアクシデントによる入院体験をめぐる随想など、関連テクストを集成。日本滞在から着想を得た伴侶エレーヌ・ナンシーによる考察や、ハーマッハーによる長篇のナンシー論、ナンシーによるハーマッハー追悼文、今夏80歳を迎えたナンシーへのデュットマンによる祝辞も併載。気鋭の若手デザイナー大倉真一郎による新たな誌面と造本設計で贈る。

目次:総特集ジャン=リュック・ナンシー
はじめに ジョルジュ・バタイユからジャン=リュック・ナンシーへ|市川崇
心からバタイユを|ジャン=リュック・ナンシー|中川真知子・市川崇訳
日本のみなさんへのメッセージ|ジャン=リュック・ナンシー|乙幡亮・柿並良佑訳
だれが「虚構」を悦ぶのか?――アンフォルム再論|井岡詩子
神話の不在、文学の不在――ジョルジュ・バタイユと消滅の力をめぐって|石川学
時間、エクリチュール、政治――ジョルジュ・バタイユとジャン=リュック・ナンシー|市川崇
「内的経験」における他者の場所|大池惣太郎
人間なきオマージュ――バタイユ&ナンシー、思考の身振りと力|柿並良佑
神話の二つの相――ニーチェ、バタイユ、ナンシーとともに|酒井健
エロス、文学、災厄――バタイユ、レヴィナス、ナンシー|渡名喜庸哲
ジョルジュ・バタイユの『死者』について――キリスト教・愛・物語|中川真知子
「恋人たちの共同体」再考――バタイユの物語作品とナンシーの思考から|福島勲
「個体」をめぐる一九四〇年代のキリスト教哲学 ――J.-L.ナンシーの脱キリスト教的視点から|松本鉄平
ジャン=リュック・ナンシーからの応答|ジャン=リュック・ナンシー|柿並良佑ほか訳
星々の遺りもの?|ジャン=リュック・ナンシー|時田圭輔・松本鉄平・市川崇訳
『性存』をめぐるセミナー――二〇一七年四月一八日 慶應義塾大学|ジャン=リュック・ナンシー|市川崇訳
Nippospitalité 日本で受けた歓待|ジャン=リュック・ナンシー|渡名喜庸哲・市川崇訳
龍安寺|エレーヌ・ナンシー|福島勲訳
《共に》について/から離れて――ジャン=リュック・ナンシーにおける複数の変異と沈黙|ヴェルナー・ハーマッハー|西尾宇広・針貝真理子訳
私は言葉もない|ジャン=リュック・ナンシー|西尾宇広・針貝真理子訳
恐れるところを知らず――八〇歳を迎えるジャン=リュック・ナンシーに|アレクサンダー・ガルシア・デュットマン|柿並良佑訳
著訳者一覧
編集後記

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by urag | 2020-09-02 12:27 | 近刊情報 | Comments(2)