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2020年 04月 30日

本日取次搬入:クレア・ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー』

月曜社新刊、クレア・ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー ーーつまり現代美術館の「現代」ってなに?』を、本日4月30日取次搬入いたしました。書店さんでの扱い開始は、最速で明日より、平均的にはゴールデンウィーク明け8日以降となるかと思われます。版元在庫は充分にございます。

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by urag | 2020-04-30 10:08 | 販売情報 | Comments(0)
2020年 04月 26日

注目新刊:ルリユール叢書最新刊、レオパルディ『断想集』、アルフィエーリ『フィリッポ/サウル』、ほか

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★不要不急の外出を控える、となると、電車を利用して行くような本屋さんには行きづらくなります。加えてネット書店がパンク気味のため、新刊を入手するのに少し時間がかかるようになっています。図書館も開いていません。仕方ないことですが、この状況が面倒臭くなって紙の本から遠ざかるのか、それとも(それでも)諦めずに本を探し続けるか、というような分かれ道すら生じつつあるのかもしれません。

新版 アリストテレス全集 11 動物の発生について』今井正浩/濱岡剛訳、岩波書店、2020年3月、本体5,600円、A5判上製函入388頁、ISBN978-4-00-092781-9
ホメロス外典/叙事詩逸文集』中務哲郎訳、西洋古典叢書:京都大学学術出版会、2020年3月、本体4,200円、四六変上製492頁、ISBN978-4-8140-0226-9
プラトン『ティマイオス』註解』カルキディウス著、土屋睦廣訳、西洋古典叢書:京都大学学術出版会、2019年11月、本体4,500円、四六変上製496頁、ISBN978-4-8140-0224-5
自由論』J・S・ミル著、関口正司訳、岩波文庫、2020年3月、本体840円、文庫判302頁、ISBN978-4-00-390002-4
公正としての正義 再説』ジョン・ロールズ著、エリン・ケリー編、田中成明/亀本洋/平井亮輔訳、岩波現代文庫、2020年3月、本体1,820円、A6判並製516頁、ISBN978-4-00-600418-7
シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー著、市川恵里訳、河出文庫、2020年4月、本体1,200円、文庫判384頁、ISBN978-4-309-46714-6
フランス怪談集』日影丈吉編、河出文庫、2020年4月、本体1,100円、文庫判480頁、ISBN978-4-309-46715-3

★『動物の発生について』は『新版 アリストテレス全集』の第11巻で、本巻全20巻中の第19回配本。旧版では第9巻『動物運動論/動物進行論/動物発生論』(島崎三郎訳、1969年6月)に収録されていました。新版第11巻に付属する「月報19」では、大塚淳「現代の科学哲学からみたアリストテレス」と、佐藤恵子「ヘッケルのアリストテレス観」が収載されています。同月報の「編集部より」によれば、次回配本は今秋予定、本巻完結となる第14巻『形而上学』とのこと。また、第1巻『カテゴリー論/命題論』(2013年)は第2刷が遠からずできあがるようで、正誤表が同月報に記載されています。訂正は9箇所。第2刷を買うべきか迷うところです。

★『ホメロス外典/叙事詩逸文集』は、第一部「ホメロス外典」、第二部「ホメロス伝」(偽ヘロドトス)、第三部「叙事詩逸文集」の3部構成。収録作品は書名のリンク先でご確認いただけます。第1刷の正誤表もすでにPDFで公開されています。西洋古典叢書ではホメロスの代表作『イリアス』『オデュッセイア』はまだ訳されていませんが、他社の既訳書がありますから、外典の出版が先になったことはたいへんありがたいことです。付属の「月報144」では佐野好則「叙事詩圏とトロイア遺跡と木馬の策略と」と、連載「西洋古典雑録集(18)サッフォー写本の発見」(國方栄二)が掲載されています。

★『プラトン『ティマイオス』註解』は忙しさに紛れて購入できていなかったことに先日気づきました。カルキディウスはプラトンの宇宙論である『ティマイオス』のラテン語訳と註解を手掛けており、生没年や出身ははっきりとは確定されていませんが、その功績によって古代ギリシアと中世を結ぶ懸け橋となった重要人物です。帯文に曰く「異教哲学とキリスト教思想を仲介した註解書」と。「西洋古典叢書」シリーズでもっとも待望していた書目のひとつです。2部全13章の目次詳細は書名のリンク先でご確認下さい。底本はヴァスジンクによる校訂版の第2版(E・J・ブリル、1975年)。原著(校訂版序文、ラテン語訳ティマイオス、註解、各種索引)の寸法の大きさに比べると訳書(注解)はずいぶんコンパクトに見えます。

★岩波文庫と岩波現代文庫の先月新刊からは、ミル『自由論』と、ロールズ『公正としての正義 再説』。『自由論』は、1971年の塩尻公明・木村健康訳以来の新訳です。旧訳は2018年4月までに65刷を数えていました。新訳が出たので旧訳は順次店頭から消える運命。文庫本は酸化しやすいので、旧訳をすでにお持ちの方もこの機会に最終刷も購入されることをお勧めします。個人の自由を論じたこの古典は読み継がれるに値いする名著です。光文社古典新訳文庫のような比較的に新しい文庫レーベルでもすでに二度にわたり新訳が出ていることは周知の通り(山岡洋一訳、2006年;斎藤悦則訳、2012年;山岡訳はその後、日経BPクラシックスの1冊として2011年に再刊)。

★ミルはこう書いています。「私が示そうとしているのは、人間の知性の現状では、意見の多様性を通じてしか真理のあらゆる側面が公平に扱われる可能性はない、という事実の普遍性である。ある問題について世間が一致した意見を持っているように見えるのに、その例外となっている人々がいるとしよう。そういうときはいつでも、たとえ世間の側が正しくても、おそらくは、反対意見を持つ人々の語ることには耳を傾ける価値のある何かがあり、彼らが沈黙すれば、真理から何かが失われるのである」(第二章「思想と討論の自由」より、109~110頁)。民主主義が問われているこんにち、胸に沁みる言葉です。

★『公正としての正義 再説』は2004年に岩波書店から刊行された単行本の文庫化。文庫化にあたり、「訳文を改訂し、「訳者解説」を新たに付した」と巻末特記にあります。「本書は、包括的教説の一種としての『正義論』における「公正としての正義」が、「包括的リベラリズム」から「政治的リベラリズム」への転回を経て、どう変わり、またどう変わっていないのかを解説しようとするものである」(亀本洋氏による訳者解説より、461頁)。ロールズの著作が文庫になるのは本書が初めて。今月にはサミュエル・フリーマン編『ロールズ政治哲学史講義』2巻本も岩波現代文庫で発売になっています。発注済ですが、コロナの影響で一度キャンセル、再発注したのが届くのをのんびり待っているところです。

★ロールズはこう言います。「たしかなことだが、われわれは、人々が自分の善を実現するために、自分の諸々の自由と機会を気に欠けることを期待するし、また実際、そうであってほしいと思う。人々がもしそうしなければ、われわれは、それを彼らの自尊心の欠如と性格の弱さの現れと考える」(169頁)。「宗教的・道徳的な深刻な対立というものが、正義の主観的環境を特徴づけるものである。そうした対立に関わる人々はたしかに、一般的に自己利益的というわけではなく、むしろ、自分は、みずからの正統で根本的な利益を保証する基本的な諸権利と諸自由を守っているのだと考えている。しかも、そうした対立は、きわめて扱いにくいものになりうるし、また、深刻な分裂をもたらすようなものになりうる。社会的・経済的対立に比べると、そうなる頻度が高い」(170頁)。

★河出文庫の4月新刊から2点。『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』は2010年刊の単行本からのスイッチ。原著は2005年刊。文庫版訳者あとがきによれば「文庫化にあたり、訳文の一部を手直しした」とのことです。「故ジョージ・ホイットマンが店主であった時代のシェイクスピア・アンド・カンパニーを鮮やかに描き出した貴重なドキュメントとして本書がもつ大きな価値と、若さのきらめきを結晶化したような、青春小説風の普遍的な魅力とおもしろさは、いまもなお色あせることはない」(文庫版訳者あとがきより、379頁)。「うれしいことに、シェイクスピア・アンド・カンパニーは、物書き(とその志望者)向けの「流れ者ホテル」としての機能を含む店の伝統の多くを守りつつ、新たな要素をうまく取り入れ、現在も同じ場所で営業している」(同、380頁)。コロナ禍により書店が困難な状況にある今だからこそ味読したい一冊です。

★『フランス怪談集』は1989年刊の文庫を新装復刊したもの。収録作品は以下の通り。初版当時新訳として収録されたものには※印を付しておきます。すべて編者の日影さんによる新訳。

魔法の手|ネルヴァル;入沢康夫訳
死霊の恋|ゴーティエ;田辺貞之助訳
イールのヴィーナス|メリメ;杉捷夫訳
深紅のカーテン|ドールヴィイ;秋山和夫訳
木乃伊〔ミイラ〕つくる女|シュオッブ;日影丈吉訳※
水いろの目|グウルモン;堀口大學訳
聖母の保証|フランス;日影丈吉訳※
或る精神異常者|ルヴェル;田中早苗訳
死の鍵|グリーン;日影丈吉訳※
壁をぬける男|エーメ;山崎庸一郎訳
死の劇場|マンディアルグ;澁澤龍彦訳
代書人|ゲルドロード;酒井三喜訳
編者あとがき フランス怪奇小説瞥見|日影丈吉

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

アルフィエーリ悲劇選 フィリッポ サウル』ヴィットーリオ・アルフィエーリ著、菅野類訳、幻戯書房、2020年4月、本体3,600円、四六変形ソフト上製324頁、ISBN978-4-86488-195-1
断想集』ジャコモ・レオパルディ著、國司航佑訳、幻戯書房、2020年4月、本体2,900円、四六変形ソフト上製232頁、ISBN978-4-86488-196-8
五・一五事件――海軍青年将校たちの「昭和維新」』小山俊樹著、中公新書、2020年4月、本体900円、新書判304頁、ISBN978-4-12-102587-6
Banksy's Bristol:Home Sweet Home fourth edition』スティーヴ・ライト/リチャード・ジョーンズ著、鈴木沓子訳、毛利嘉孝/小倉利丸監修、作品社、2020年3月、本体2,800円、B5判並製158頁、ISBN978-4-86182-798-3

★幻戯書房さんの「ルリユール叢書」の今月新刊は2点。18世紀イタリアの劇作家アルフィエーリ(Vittorio Alfieri, 1749-1803)による悲劇作品2編を収録した『アルフィエーリ悲劇選 フィリッポ サウル』と、19世紀イタリアの詩人で哲学者のレオパルディ(Giacomo Leopardi, 1798–1837)の死後出版となる哲学的散文集『断想集』(1845年)です。いずれも原典からの本邦初訳(『断想集』は100年近く前に英訳版からの重訳あり)。前者には附論として、アルフィエーリを評した2篇、デ・サンクティス『イタリア文学の歴史』の抄訳と、クローチェ『詩と詩にあらざるもの』の抄訳が併載されています。後者の附録は夏目漱石『虞美人草』からの抜粋です。

★レオパルディの『断想集』から4つの印象的な断片を引用します。現代人の胸にも刺さるものがあるのではないかと思います。

【3】現代の経済に関する知恵は、書物の判型の小型化の流れから推し量ることができる。小型版においては、紙の消費が少ないかわりに視力の消耗は無限に大きいものとなる。書物に使用される紙の節約のことを擁護するにしても、同時にたくさん印刷して何も読まないというのが現代の習慣だと付言しなければならない。丸文字は過ぎ去りし時代の欧州において一般的に使用されていた字体であるが、これはもはや使用されなくなり、代わりに長文字が使用され、加えて紙に光沢が施されるようになった。これらは、見る分には美しいが、それ以上に読書の際に目に負担がかかる。しかし、読まれるためではなく見られるために本が印刷される現代にあって、こうした事柄はたいへん理にかなっているとも言える。

【11】他のことについて言わないまでも、芸術と学問に関して述べておきたい。すべてを作り直せるとうぬぼれている時代が続いているが、これは何も作ることができない時代だからである。

【59】これまで幾度も指摘されてきたことだが、諸国家において、確固たる美徳が減退していくにつれて、見かけ上の美徳は拡大していくものだ。私には、文学にも同様の運命が待っているように思われる。我々の時代になって、文体の美徳はその実践はおろかその記憶まで失われてきているが、それとは対照的に印刷技術が洗練されてきているではないか。今日、一日しか必要とされない新聞やその他の政治の戯言は、過去に出版されたいかなる古典作品よりも洗練された印刷技術を用いて刊行されている。しかし、文章術については、もはや知られていないし、その名が呼ばれることすらほとんどない。私が考えるに、優れた人間は皆、現代の書物を開き読んだとき、あれほどおぞましい言葉と大部分において無意味な思想とを表現するために、これほど洗練された紙と文字が用いられていることに哀れみを感じるだろう。

【89】人間とあまり関わらない者が人間嫌いであることは稀である。真の人間嫌いは、孤独の中ではなく人混みの中にいる。[以下略]

★『五・一五事件』は、1932年(昭和7年)5月15日に、海軍青年将校たちが内閣総理大臣犬養毅を殺害するなどした事件をめぐり、6年弱の長期にわたって史料を読み解き真相を探った力作。あとがきの文言を借りると、本書はまず事件当日の様子を描き(第1章)、続いて「どのように事件は起きたのか(第2章・第3章)」「なぜ政党政治はほろびたか(第4章)」「どうして被告たちは減刑されたのか(第5章)」「釈放された被告たちはその後どうしたのか(第6章)」を解説しています。著者の小山俊樹(こやま・としき:1976-)さんは帝京大学文学部史学科教授。ご専門は基本近現代史です。

★『Banksy's Bristol:Home Sweet Home fourth edition』は、2014年に刊行された訳書の新版。原著初版は2007年にTangent Booksより刊行。その後、版を重ね、2016年に原著第4版が発行。「バンクシー本人の発言、友人・仲間たちの証言+消失した初期作から代表作・最新作まで176作品+作品解説+年表を収録」(帯文より)。バンクシーの活動と作品を知るうえで欠くことのできない基本図書です。訳注は別刷栞4頁にまとまっています。なお旧版に付属していた付録冊子が版元ウェブサイトで無料公開されています。毛利嘉孝、鈴木沓子、飯島直樹、小倉利丸、の4氏による解説が読めます。



by urag | 2020-04-26 23:21 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 04月 19日

注目新刊:『ハリー・スミスは語る』カンパニー社、ほか

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ハリー・スミスは語る――音楽/映画/人類学/魔術』ラニ・シン編、湯田賢司訳、カンパニー社、2020年4月、本体2,800円、四六判並製304頁(カラー16頁)、ISBN978-4-910065-01-4
みんなのコミュニズム』ビニ・アダムザック著、橋本紘樹訳、斎藤幸平企画・翻訳協力、榎本俊二イラスト、堀之内出版、2020年3月、本体1,600円、B6変型判並製144頁、ISBN978-4-909237-46-0

★『ハリー・スミスは語る』は『Think of the Self Speaking: Selected Interviews』(Elbow Press/Cityful Press, 1998)の訳書。1960年代から1980年代にかけて収録された、ハリー。スミス(Harry Everett Smith, 1923-1991)に対する7つのユニークなインタヴューに、アレン・ギンズバークのインタヴュー「ハリー・スミスを語る」を加えたもの。巻頭ではスミスによる美しいヴィジュアルアートの数々がカラーで掲載され、巻末には「フィルモグラフィー+ディスコグラフィー」が配されています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★編者のラニ・シンは「はじめに」でこう述べています。「ハリー・スミスは宇宙論の大家、映像作家、画家、人類学者、言語学者、オカルト研究家に収まりきらない存在だった。スミスは錬金術的な関係性の壮大な枠組みを通して世界を見渡していた。ハリーはサイケデリック時代を先取りしていた。包括的な美意識により、どのように「すべてのものが繋がっている」かを表現することが、人間存在の基本的な構造を明らかにする最善の方法だと彼は考えていた」(8頁)。

★「「ハリーとウダウダ過ごす」という単純な観点から飛び立った読者は、共感、複雑性、広大なスケール、精神的にハイになったことによるアイディアの奔流、比喩と暗示と暗喩による知的な煙幕がないまぜになった会話によってさまざまなハーモニーが一箇所に合流し、奇妙な高揚感を味わう」(9頁)。対談はいずれも興味深く、時にはまったく筋が追えなくなるほど、ぶっ飛んでいます。おそらく本書は奇書に類するものと言ってよいのかもしれません。本書はカンパニー社さんの書籍第2弾です。出品されている某ネット書店を通じて購入したところ、このご時世に休日にもかかわらずすぐに出荷して下さいました。ありがたいことです。

★『みんなのコミュニズム』は『Kommunismus : kleine Geschichte, wie endlich alles anders wird』(Unrast Verlag, 2018)の訳書。著者のビニ・アダムザック(Bini Adamczak, 1979-)はベルリンを拠点に活動するドイツのアクティヴィスト。政治理論、クイア・ポリティクス、などに関する論考があります。本書は世界各国で訳されてきた話題書です。日本語版では橋本さんによる柔らかな訳文と、榎本さんによるキュートなイラスト、デザイン事務所nipponiaのお二人による親しみやすい装丁(専用の栞付き!)で、若い世代にも手に取りやすい一冊となっています。目次は以下の通りです。

コミュニズムってなに?
資本主義ってなに?
どんなふうに資本主義は生まれたの?
労働ってなに?
恐慌ってなに?
どうすべきか? 1つめのトライ
2つめのトライ
3つめのトライ
4つめのトライ
5つめのトライ
6つめのトライ
エピローグ
日本語版付録インタビュー『みんなのコミュニズム』の著者、ビニ・アダムザックに聞く

★本書冒頭で著者はこう明確に断言します。「コミュニズムっていうのは、現在の社会――資本主義社会――でみんなを悩ませている苦しみを全部なくしてしまう社会のこと。〔…〕もう苦しまなくてもいいような社会をイメージしてみるといいんじゃないかな?」(6頁)。「コミュニズムはたしかにとってもよく効く薬だけど、万能薬じゃなくて、資本主義の苦しみにしか効かない」(7頁)。「人間の歴史のなかで、正しい形のコミュニズムなんてものはまだ一度もないから、そもそもコミュニズムってなんなのか、だれも正しいイメージをもてないんだ」(46~47頁)。帯文にはこうあります、本書は「力強く「ラディカルな夢を見ることは可能で、価値があること」を教えてくれます」と。



★また、最近では以下の新刊との出会いがありました。

民主主義の非西洋起源について──「あいだ」の空間の民主主義』デヴィッド・グレーバー著、片岡大右訳、以文社、2020年4月、本体2,400円、四六判上製192頁、ISBN978-4-7531-0357-7
吉本隆明全集22[1985-1989]』吉本隆明著、晶文社、2020年4月、本体6,800円、A5判変型上製594頁、ISBN978-4-7949-7122-7
積読こそが完全な読書術である』永田希著、イースト・プレス、2020年4月、本体1,700円、本体1,700円、四六判並製240頁、ISBN978-4-7816-1864-7
ele-king臨時増刊号 山本太郎から見える日本』ele-king編集部編、ele-king books:Pヴァイン発行、日販IPS発売、2020年4月、本体1,620円、菊判並製240頁、ISBN978-4-909483-52-2

★『民主主義の非西洋起源について』はまもなく発売。2005年に発表され、2007年にAK Pressより刊行されたグレーバーの論文集『Possibilities: Essays on Hierarchy, Rebellion, and Desire』の第11章として収録された論考「There Never Was a West: Or, Democracy Emerges From the Spaces in Between」を中核に、その仏語訳版『La démocratie aux marges』(Flammarion, 2018)で掲載されたアラン・カイエによる「まえがき」と、ウェブマガジン「In These Times」でグレーバーが2000年に発表した論考「惜しみなく与えよ」を併録。目次詳細は書名のリンク先をご覧下さい。

★グレーバーはこう論じます。「民主主義的国家とはつねに一個の矛盾でしかなかった。グローバル化は単に、もともと腐っていた基盤をあらわに示したにすぎない」(122頁)。「サパティスタの出した答え――革命とは国家の強制的装置を奪い取ることだと考えるのをやめて、自律的コミュニティの自己組織化を通して民主主義を基礎づけなおそうという提案――は、完璧に有効である」(123頁)。「重要なのは、普通の人びとが討議の場に集まって座り込み、自分たちの課題に自分たちで――武力によって決定を支えられつつ課題に対処するエリートたちに劣らず――対処できるということを、さらにまた、無理だったということになるとしても、彼らには試してみる権利があるのだということを、私たちが心から信じることだ」(123~124頁)。

★訳者あとがきで片岡さんはこう書いています。「本論考を貫くのは、「アナキズムと民主主義はおおむね同じものである」という仮説、「あるいはそうあるべきだ」という信念にほかならない」(167頁)。グレーバーの訳書は今後、以文社より2001年の『人類学的価値理論の構築へ向けて』が、岩波書店より2019年の『ブルシット・ジョブズ』が出版予定となっています。

★『吉本隆明全集22[1985-1989]』はまもなく発売。円熟期の批評的到達点である『ハイ・イメージ論』の第Ⅰ巻、諸概念が極度に凝縮された最後の長篇散文詩『言葉からの触手』、そして国内外の様々な思想と対峙し続けた1985年から1988年までの書評集を収録しています。この第22巻は本全集において、時代と激しく斬り結んだ絶対的ピークのひとつです。付属の「月報23」には、先崎彰容さんによる「吉本隆明と言論の不在」と、ハルノ宵子さんによる「Tの悲劇」を収載。先崎さん曰く「吉本の著作は、やせ細った現代を相対化する縁を与えてくれる」と。次回配本は8月刊行予定、第23巻。

★『積読こそが完全な読書術である』は発売済。私家版『サイコパスの読書術――暗闇で本を読む方法』(時間銀行書店、2017年11月)を全面改稿した、書評家の永田希(ながた・のぞみ:1979-)さんのメジャーデビュー作です。千葉雅也さんによる推薦文や目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。現代人に必要な「ビオトープ的積読環境の構築と運用を提案」(はじめに、6頁)する、卓抜な読書論です。総合カルチャーサイト「Real Sound」では刊行を記念し、著者へのインタヴュー記事「本は読まずに積んでおくだけでいい?」が4月18日に公開されています。

★『ele-king臨時増刊号 山本太郎から見える日本』は発売済。山本太郎さんへのインタヴュー「政治家・山本太郎はどこから来て、どこへと向かうのか」をはじめ、内田樹、宇都宮健児、宮台真司、望月衣塑子、松尾匡、渡辺照子、の各氏へのインタヴューと、斎藤幸平、高島鈴、白石嘉治、の各氏によるコラム、として、松本哉、Mars89、沖野修也、マシュー・チョジック、の各氏の談話を掲載。目次詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。遅かれ早かれ訪れる現長期政権以後において民主政治を奪還するために大いに参考にしたい、充実した一冊。

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by urag | 2020-04-19 23:55 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 04月 17日

新規取引店情報:月曜社の本を置いてくださる本屋さん

2020年5月22日(金)開店
横浜市戸塚区品濃町536-1 西部東戸塚S.C. アネックス館7F
トーハン帳合。弊社へのご発注は芸術書主要商品。紀伊國屋書店の取締役副会長・市川晶裕さんの記名がある、出版社への挨拶状によれば、西武東戸塚S.C.は「JR東戸塚駅から歩道橋を介して接続した利便性の高い場所に立地し、西武館、オーロラモール館、アネックス館を有した大型商業施設」。「東戸塚エリアは横浜・東京都心へのアクセスも良いため居住区としての人気も高く、今後も発展が期待できる地域」とのことです。

開店に先駆けて3月9日から同SC内の西武館5F特設売場で営業を行ってきたそうですが、現在は緊急事態宣言を受けてSCは当面のあいだ「一部の食品売場を除き臨時休業」。この先いつ営業再開となるか不透明であり、予定通り開店できるのかどうかはまだはっきりしていないところかと思います。営業時間は、10:00~21:00の予定。

ちなみに今回の選書は先の挨拶状によれば「トーハン様による市場調査をもとに、弊社の持つ豊富なデータを元に、親和性の高い同規模店舗の在庫データ等を活用し、ファミリーから学生、シニアまで、幅広い層のお客様に応えられる品揃えを意識」したとのことです。弊社は芸術書より人文書の方をより多く出版してきたものの、今回は人文書のご発注はなし。弊社の芸術書が評価されるのは嬉しい反面、これで良し、とは自認しにくいところです。

紀伊國屋書店は横浜市内では現在2店舗を運営。西区のそごう横浜店7Fに横浜店、都筑区のららぽーと横浜3Fにららぽーと横浜店があります。中区のコレットマーレ5Fの横浜みなとみらい店は3月31日で10年間の営業に終止符を打ったばかりです。このみなとみらい店にかわり、西部東戸塚S.C.店が市内3店舗目となります。


by urag | 2020-04-17 00:01 | 販売情報 | Comments(0)
2020年 04月 16日

ブックツリー「哲学読書室」で3本の新規リストが公開となりました

オンライン書店「honto」のブックツリーにて、新たに3件が公開開始となりました。

ミカエル・フッセル『世界の終わりの後で――黙示録的理性批判』(法政大学出版局、2020年3月)の共訳者、伊藤潤一郎さんによる「世界の終わりにおいて人間には何ができるのか?」
ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』(月曜社、2020年3月)の著者、井岡詩子さんによる「おとなの内に残存する子ども/わたしと再び出会う」
弁証法、戦争、解読――前期デリダ思想の展開史』(法政大学出版局、2020年3月)の著者、松田智裕さんによる「読み、抵抗し、問う」

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために
55)築地正明(つきじ・まさあき:1981-)さん選書「信仰について考える。ベルクソンとドゥルーズと共に
56)浅野俊哉(あさの・としや:1962-)さん選書「〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
57)岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さん/赤羽健(あかはね・けん:1991-)さん選書「贈与論を通してどう資本主義を突き抜けていくか
58)秋元康隆(あきもと・やすたか:1978-)さん選書「「利他」とは何かを学ぶために
59)宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ:1974-)さん選書「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく
60)後藤護(ごとう・まもる:1988-)さん選書「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門
61)大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さん選書「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム
62)飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さん選書「思考を解き放て!
63)長濱一眞(ながはま・かずま:1983-)さん選書「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊
64)入江哲朗(いりえてつろう:1988–)さん選書「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊
65)福島勲(ふくしま・いさお:1970-)さん選書「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる
66)山本圭(やまもと・けい:1981-)さん選書「アンタゴニズム(敵対性)と政治について考えるブックリスト
67)横田祐美子(よこた・ゆみこ:1987-)さん選書「「思考すること」をたえず思考しつづけるために
68)伊藤潤一郎(いとう・じゅんいちろう:1989-)さん選書「世界の終わりにおいて人間には何ができるのか?
69)井岡詩子(いおか・うたこ:1987‐)さん選書「おとなの内に残存する子ども/わたしと再び出会う
70)松田智裕(まつだ・ともひろ:1986-)さん選書「読み、抵抗し、問う

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by urag | 2020-04-16 11:27 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 04月 12日

注目新刊:ちくま学芸文庫2020年4月新刊、ほか

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近代日本思想選 西田幾多郎』小林敏明編、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,600円、文庫判592頁、ISBN978-4-480-09981-5
メソポタミアの神話』矢島文夫著、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,000円、文庫判224頁、ISBN978-4-480-09987-7
中国禅宗史――「禅の語録」導読』小川隆著、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,300円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-09964-8
米陸軍日本語学校』ハーバート・パッシン著、加瀬英明訳、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,100円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-09973-0

★ちくま学芸文庫の4月新刊は4点。『近代日本思想選 西田幾多郎』は新シリーズ「近代日本思想選」の第1弾。西田幾多郎(1870-1945)の著作7本、「善の研究」(第一編・第二編)、「場所」、「永遠の今の自己限定」、「私と汝」、「行為的直観」、「日本文化の問題」、「生命」を収録。さらに、西田論を複数上梓している小林敏明さんによる解題と解説を付し、巻末に年譜を配しています。帯文には「『日本文化の問題』と未完の論考「生命」、文庫初収録」とあります。筑摩書房創業80周年記念出版のひとつである「近代日本思想選」は、特設サイトによれば「テーマ別ではなく人物別とし、ある思想家について、その重要論考、ないしは今日的意義の深い論考を精選」するとのこと。続刊予定には、『福沢諭吉』宇野重規編、『大杉栄』梅森直之編、『九鬼周造』田中久文編、が挙がっています。

★『メソポタミアの神話』は筑摩書房のシリーズ「世界の神話」の1冊として1982年に刊行されたものの文庫化。文庫化に際して、沖田瑞穂さんによる解説「世界とつながる、メソポタミア神話」が付され、巻末特記によれば書誌情報等を補った箇所があるとのこと。「天地創造の神話」「タンムーズ神話」「ギルガメシュ神話」「神々と人間の物語」の四部構成。いわゆる解説本ではなく再説本で、15本の神話を物語として蘇らせています。

★『中国禅宗史』は筑摩書房のシリーズ「禅の語録」(全20巻22冊、1969~2016年)の第20巻として2016年に刊行された『「禅の語録」導読』を文庫化したもの。同シリーズ完結の経緯はいささかややこしいようで、巻頭の「はじめに」によれば全20巻のうち第5巻『神会語録』、第12巻『洞山録』、第20巻『語録の歴史(総説)』を除く17点までは1969年から1981年にかけてまず刊行され、2016年の復刊の際に、84~99年代に禅文化研究所が刊行した2点の「事実上の続編」を編入して第5巻『馬祖の語録』と第12巻3分冊『玄沙広録』とし、第20巻も併せて刊行したそうです。このかん、第1巻である柳田聖山『達磨の語録――二入四行論』は96年に学芸文庫として刊行されていますが、現在は品切です。「禅の語録」全20巻22冊は現在もセットで販売中。独立の概論として読めるということでその中からいわばシングルカットされた『「禅の語録」導読』改め『中国禅宗史』は、巻末に加えられた「ちくま学芸文庫版あとがき」によれば、「単純な軸の誤脱を補正し、ふりがなの追加や表記・体裁上の修整などを施しはしましたが、文脈・論旨は一切変えていません」とのことです。「「禅」とは」「伝灯の系譜」「問答・公案・看話」「唐宋禅宗史略」「二十世紀の中国禅研究」の5章立て。

★『米陸軍日本語学校』は、1981年にTBSブリタニカより刊行された単行本の文庫化。英語版は『Encounter with Japan』(講談社インターナショナル、1983年)として日本語訳より後に公刊されていますが、「ちくま学芸文庫版訳者あとがき」によれば「本書はパッシン教授と相談しながら、翻訳を進めた。そのために本書の英語版とは必ずしも精確に対応しないことを、お断りしたい」と説明されています。著者のハーバート・パッシン(Herbert Passin, 1916-2003)はアメリカの文化人類学者で日本研究家。1946年にGHQ職員として来日し、民間情報局に配属。1951年に帰国されています。「この本は、ひとりの外国人の日本との出会いの記録である」(「序にかえて」9頁)。「日本語学校は、私にとっては一つの経験であった」(13頁)。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

女性ホルモンは賢い――感情・行動・愛・選択を導く「隠れた知性」』マーティー・ヘイゼルトン著、西田未緒子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2020年4月、本体2,300円、四六判並製320頁、ISBN978-4-7726-9568-8
文藝 2020年夏季号』河出書房新社、2020年4月、本体1,350円、A5判並製520頁、ISBN978-4-309-98007-2
耽酒妄言――枯骨閑人文酒閑話』沓掛良彦著、大和プレス発行、平凡社発売、2020年4月、本体4,500円、A5変判上製函入 272頁、ISBN978-4-582-83836-7

★『女性ホルモンは賢い』は『Hormonal: The Hidden Intelligence of Hormones. How They Drive Desire, Shape Relationships, Influence Our Choices, and Make Us Wiser』(Little, Brown and Company, 2018)の訳書。誌名のリンク先で目次詳細と「はじめに:女性を導くホルモン」を閲覧することができます。帯文に曰く「女性ホルモン研究の第一人者が、進化によって育まれた女性の複雑な感情・行動の秘密を解き明かします」と。著者のマーティー・ヘイゼルトン(Martie G. Haselton)は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学教授および、社会・遺伝学研究所教授。

★「私は自分たちが手にした興味深い研究の成果を伝えたくて、この本を書いている。私たちのホルモンはとても賢い。交際相手をほしいと感じる欲求(第2章「発情期って何?」および第4章「進化した欲求――セクシー、安定性、どちらを選ぶ?」)から、競争したい衝動(第5章「パートナーを探す――競争とリスク」)、妊娠中や出産直後の体や行動の変化(第7章「卵子経済――女性の人生を脳とホルモンから見る」)、さらには人生の「次章」である更年期になると繁殖とは無関係に新しい経験を自由に味わえる可能性をもたらすなど(同章)、ホルモンが影響を与える範囲は広大だ。/この本を書いている理由には、女性の脳と体に関する情報を増やしたいという気持ちもある」(7~8頁)。

★「私は、新しい系統のフェミニズム、新たなダーウィン的フェミニズムを主張したい。/この種のフェミニズムは、私たちの生きものとしての側面を尊重し、それを十分に調べる。女性には、自分たちの体と心が形成されてきた歴史を――進化の歴史をも含めて――理解する権利がある。私たちには自分たちの生物としての――そしてホルモンの――性質に関するもっと上質な情報が必要だ」(13~14頁)。「私たちはホルモンからの指令の源と働きをよく理解すればするほど、それをきちんと発揮できる(あるいは無視したいなら無視できる)と、私は確信している。それがこの本で(特に第7章、第8章「ホルモンは賢い」で)最も伝えたいメッセージになる」(14頁)。



★『文藝 2020年夏季号』は、特集1が「源氏!源氏!源氏!」、特集2が「「日本文学全集」完結」、さらに緊急特集として「アジアの作家は新型コロナ禍にどう向き合うのか」、そして古井由吉さんの追悼頁が設けられており、盛りだくさんの内容。源氏特集ではユルスナールの短篇「源氏の君の最後の恋」の野崎歓さんによる新訳や、ヴァージニア・ウルフによる書評のほか、「夢浮橋」の現代語訳を十種並べたりと興味深いです。目次詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。次号(秋季号)は7月7日発売予定で、特集が「もうシスターフッドしか愛せない」と予告されています。

★『耽酒妄言(たんしゅもうげん)』は『文酒閑話』(平凡社、2000年)を大幅に増補改訂した新版。旧版は著者が還暦を迎える時節に上梓されたもので、「勝手に師友を評したり、その酒境・酒態を綴ったり、本をめぐっての書簡や書評を収めたりした気ままな内容の本だった」と今回の新版のあとがきで回想されています。旧版の編集担当は二宮隆洋さん。新版の担当者は大和プレスの鈴木美和さん。「人」「本」「酒」「耄碌漫語」の五部構成。副題にある枯骨閑人(ここつかんじん)は著者の戯号とのことです。巻末には著者の最新の著訳書一覧があります。

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by urag | 2020-04-12 23:14 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 04月 11日

注目新刊:『知のトポス15』『文学理論』『舞台芸術23』

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★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』、ガシェ『脱構築の力』)
宮﨑さんが編集長兼発行責任者をお務めの『知のトポス』誌の第15号(新潟大学大学院現代社会文化研究科、同人文学部哲学・人間学研究会発行)が刊行されました。今号より、カバーデザインが一新され、誌名も『知のトポス――世界の視点』から『知のトポス』とよりシンプルになっています。宮﨑さんはこの号で、ジャコブ・ロゴザンスキーの論考「真理がなければならない──デリダの真理論について」の共訳も手掛けておられます。

訳者解題(桐谷さんのパート)によれば、同論文は1999年に『デカルト通り』誌に掲載され、2005年にロゴザンスキーのデリダ論『Faire part. Crypte de Derrida』に収録されています。同書は2014年に改題増補版『Crypte de Derrida』が出ており、今回の翻訳はこの2014年収録版を底本としているとのことです。また同解題の宮﨑さんパートでは本論考について次のように紹介されています。

「本論は、デリダの著作のなかで、「真理という主題が消極的な扱いを受けてきたのはなぜかについて、ハイデガーとの対決、とりわけアレーテイアというハイデガーの真理概念との関係にその理由を見出している。〔…〕本論は、脱構築の真理を「脱クリプト化」と定義することを通じて、デリダが明示的に述べていることを超えて、「真理」にかんして脱構築が成し遂げたこと、ないし成し遂げようとしていることを新たに解明している」。

このほか同号では、アレクサンドル・コイレ「イエーナのヘーゲル(近年出版の「イエーナ体系構想」について)」、ゲルハルト・クリューガー「カントの批判における哲学と道徳(六)」、ヨハネス・ローマン「西洋人と言語の関係(言述における意識と無意識的形式)〔二〕」が掲載されており、ロゴザンスキーの論考と同様にすべてPDFで読むことができます。


★郷原佳以さん(共訳:『ブランショ政治論集』)
先月末、フィルムアート社さんから刊行されたアンソロジー『クリティカル・ワード 文学理論――読み方を学び文学と出会いなおす』の第1部「基礎講義編――文学理論のエッセンス Fundamentals」、第1章「テクスト」(16~44頁)の執筆を担当されています。同書の目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。版元紹介文によれば同書は「文学理論の基礎的な知識を解説しつつ、最新の文学理論の潮流を初学者にも分かりやすく解説」したもので、シリーズ「クリティカル・ワード」の一冊。同シリーズは「現代社会や文化および芸術に関わるさまざまな領域を、[重要用語]から読み解き学ぶことを目指したコンパクトな入門シリーズ」とのことです。その第一弾となる『文学理論』は、懇切な解説とブックガイドで、初学者だけでなく書店での棚づくりに最適な参考書となっています。

三原芳秋/渡邊英理/鵜戸聡編著、郷原佳以/新田啓子/橋本智弘/井沼香保里/磯部理美/森田和磨/諸岡友真著
フィルムアート社 2020年3月 本体2,200円 四六判並製276頁 ISBN978-4-8459-1932-1

帯文より:読むことの基礎と批評理論の現在が学べるキーワード集。フェミニズム、環境批評、ポストヒューマン、精神分析、ポストコロニアリズム……多彩なトピックから文学の可能性に飛び込もう!


★舞台芸術研究センターさん(発行:『舞台芸術』第一期)
機関誌『舞台芸術』の最新号、第23号が出版されました。第1特集は「ドラマトゥルクの未来」、第2特集は「豊島重之追悼――モレキュラーシアターの軌跡」。版元紹介文に曰く「渡辺保・木ノ下裕一による木ノ下歌舞伎をめぐる対談、ドラマトゥルクに関するシンポジウム(長島確・滝口健・森山直人・長澤慶太)、前衛の騎手・豊島重之の追悼(八角聡仁・倉石信乃・内野儀の論考)ほかを収載」。

京都造形芸術大学・舞台芸術研究センター企画編集
角川文化振興財団発行 KODOKAWA発売 2020年4月 本体1,500円 B5判並製184頁 ISBN978-4-04-876506-0

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by urag | 2020-04-11 00:30 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 04月 07日

ブックツリー「哲学読書室」に横田祐美子さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリーにて、『脱ぎ去りの思考――バタイユにおける思考のエロティシズム』(人文書院、2020年3月)の著者、横田祐美子さんによるコメント付選書リスト「「思考すること」をたえず思考しつづけるために」が公開開始となりました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために
55)築地正明(つきじ・まさあき:1981-)さん選書「信仰について考える。ベルクソンとドゥルーズと共に
56)浅野俊哉(あさの・としや:1962-)さん選書「〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
57)岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さん/赤羽健(あかはね・けん:1991-)さん選書「贈与論を通してどう資本主義を突き抜けていくか
58)秋元康隆(あきもと・やすたか:1978-)さん選書「「利他」とは何かを学ぶために
59)宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ:1974-)さん選書「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく
60)後藤護(ごとう・まもる:1988-)さん選書「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門
61)大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さん選書「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム
62)飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さん選書「思考を解き放て!
63)長濱一眞(ながはま・かずま:1983-)さん選書「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊
64)入江哲朗(いりえてつろう:1988–)さん選書「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊
65)福島勲(ふくしま・いさお:1970-)さん選書「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる
66)山本圭(やまもと・けい:1981-)さん選書「アンタゴニズム(敵対性)と政治について考えるブックリスト
67)横田祐美子(よこた・ゆみこ:1987-)さん選書「「思考すること」をたえず思考しつづけるために

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by urag | 2020-04-07 17:33 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 04月 05日

注目新刊:『岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』ナナロク社、ほか

注目新刊:『岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』ナナロク社、ほか_a0018105_00315940.jpg


★最近出会った新刊を列記します。

岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』岡﨑乾二郎/林道郎/岡田温司/中井悠/松浦寿夫/千葉真智子著、ナナロク社、2020年3月、本体6,000円、A4変形上製405頁、ISBN978-4-904292-93-8
杉本博司 瑠璃の浄土』京都市京セラ美術館編、平凡社、2020年4月、本体3,182円、B4判上製240頁、ISBN978-4-582-20719-4
約束の地、アンダルシア――スペインの歴史・風土・芸術を旅する』濱田滋郎著、高瀬友孝写真、アルテス・パブリッシング、2020年4月、本体2,800円、A5判並製256頁(カラー112頁)、ISBN978-4-86559-221-4
世界思想 第47号 2020春 特集:科学技術の倫理』世界思想社編集部編、世界思想社、2020年4月、A5判並製96頁
アンドレ・バザン研究 第4号』堀潤之/伊津野知多/角井誠編、アンドレ・バザン研究会、2020年3月、A5判116頁、ISSN2432-9002

★『岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』は、2019年11月から2020年2月まで豊田市美術館で開催された同名展覧会を記念して製作された大型カタログ。「初期作品から最新作までを網羅した決定版。絵画、彫刻、建築、批評と縦横無尽に活動する、造形作家・岡﨑乾二郎の全貌」(シュリンクに貼られたシールに記載された文言)。圧倒的な大冊が強烈な存在感を放ちます。キャプションやテクストはすべて英文併記。Book1と別冊のBook2に分かれており、Book1の目次は下段に転記します。Book2は凡例に曰く「全絵画および一部の彫刻・タイルの作品タイトルを収載した」。タイトルと言ってもそれはほとんど文章です。岡﨑さんはほとんど変幻自在とも思える様々な作品を制作されてきましたが、一冊の書物として通しで見ると、執拗な探求にも似た何かしらの一貫性のようなものすら感じます。このカタログを見るまでほとんど気づかずにいたことです。

ごあいさつ|豊田市美術館
まえがき/あとがき(誰かに教わったこと)|岡﨑乾二郎
Part 1:作品
 Chapter 1:かたちの単独性――〈あかさかみつけ〉とその周辺
  1:かたがみのかたち
  2:たてもののきもち
  3:裂きおこし
  4:よせ裂れ
  5:ポンチ絵
  6:解体構築
 Chapter 2:プレートテクトニクスセオリー
  1:初期絵画
  2:彫刻
 Chapter 3:反省的形式――知覚、現象の生起、想起/転回
  1:連作のレリーフ
  2:ディプティック、トリプティック
  3:ドローイング
 Chapter 4:部分と全体
  1:ゼロサムネール
  2:焼成練土
  3:釉彩タイル
  4:建築
  5:パネル絵画
  6:ブロックタイル
Part 2:エッセイ
 複数世界/どこにもない場所――マイナー・アーツから考える|千葉真智子
 岡﨑乾二郎という「謎」|岡田温司
 造形作家としての岡﨑乾二郎|林道郎
 訳者解題|中井悠
 四つの四重奏|松浦寿夫
Part 3:ドキュメント
 Chapter 1:マルチプルアクティビティ――多数の活動の広がりとその編み目
  1:灰塚アースワークプロジェクト
  2:生産の場としての学校――四谷アート・ステュディウム
  3:キュレーション――アトピックサイト
  4:C系列の美術館
  5:Bulbous Plants
  6:ブランカッチ礼拝堂壁画分析
  7:ダンス
  8:描画の内的過程を伝達するT.T.T.bot
 Chapter 2:年表
 Chapter 3:文献目録
  1:文献目録(作家による)
  2:文献目録(作家について)
Appendix:作品リスト

★『杉本博司 瑠璃の浄土』は、京都市京セラ美術館(旧:京都市美術館)のリニューアル開館記念展の公式図録。新型コロナウイルス感染予防と拡散防止のため、新館の東山キューブで3月21日に開幕するはずだった展示は4月4日に延期され、さらに11日(土)に再延期されています。会期は6月14日まで。挨拶文によれば「杉本の京都での美術館における初の本格的な企画となる本展では、新たに制作された京都蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)中尊の大判写真を含む「仏の海」や、世界初公開となる大判カラー作品「OPTICKS」シリーズといった写真作品の大規模な展示を試みます。また、「京都」「浄土」「瑠璃ー硝子」にまつわる様々な作品や考古遺物に加え、屋外の日本庭園には《硝子の茶室 聞鳥庵〔モンドリアン〕》も設置され、写真を起点に宗教的、科学的、芸術的探求心が交差しつつ発展する杉本の創造活動の現在について改めて考えるとともに、長きにわたり浄土を希求してきた日本人の心の在り様を見つめ直します」と。美しい写真の数々に心奪われる思いがします。収録テクストは、杉本さんによる「「浄土」―「再生」」、三木あき子さんによる「「瑠璃の浄土」考―― 一切法は因縁生なり」、清水穣さんによる「空即是色――杉本博司の現在」、磯崎新・浅田彰・杉本博司の三氏による対談「文明の軸線」、そして青木淳さんによるインタヴュー「杉本博司経歴聞き取り調書」が収められています。

★『約束の地、アンダルシア』は、巻頭の著者による「刊行によせて」によれば、フラメンコ専門の月刊誌『パセオフラメンコ』に1999年4月から2001年8月まで連載された文章に基づいているとのこと。「この著作は、私の観るスペイン、アンダルシア、そしてフラメンコを含む人びとのアルテについて、思うところ、感じるところを、ひとまず充分に書き記す機会となった」(3頁)とあります。第1部「歴史――大航海時代まで」、第2部「スペイン統一後の文化」、第3部「ヒターノとフラメンコ」の三部構成で全27話から成ります。高瀬友孝さんによるカラー写真を多数収録。アンダルシア地図、スペイン氏年表、参考文献一覧のほか、美術史家の川瀬佑介さんによる「解説」が付されています。帯にはギタリストの村治佳織さんの推薦文が掲載されており、書名のリンク先でもご確認いただけます。

★『世界思想 第47号 2020春 特集:科学技術の倫理』は、「科学者の倫理」「歴史と想像力」「来たるべき世界」の三部構成で18本のテクストを収録。目次は誌名のリンク先でご確認いただけます。真っ先に目を惹いたのは若林恵さんの「さよなら現金。さよなら民主主義」。信用スコアの出現をめぐって曰く「ポスト近代的なテクノロジーを、近代的な管理システムとして用いた先に、村落共同体の相互監視システムのようなやり方で運営される中世的な社会が出来する、というわけのわからない状況が、おそらくわたしたちがこれから迎え入れようとしている未来だ。〔…〕「人を信用する代わりにお金を信用する」という、あっと驚くような店頭を通じてつくりあげられたいまの社会の先に、どんな社会がいったい待っていて、そこでわたしたちは、いったいこんどはなにを信用して生きていくことになるのだろうか。/もう一回「人」に戻るなんてことはあるのだろうか」(64頁)。若林さんの寄稿は第三部「来たるべき世界」の一篇ですが、同部ではこのほか、宇宙進出時代の倫理を問うた橳島次郎さんの「楽園前夜または「中間世代」を生きる――文明論としての科学技術の倫理」、人工培養脳をめぐる澤井努さんの「体外で作製される脳は意識を持つのか――ヒト脳オルガノイド研究の倫理」など、人文関係者も銘記しておきたい議論です。毎回驚きますが、『世界思想』は無料の冊子。大型書店の店頭などで配布されています。

★『アンドレ・バザン研究 第4号』ではバザンのテクスト3本と、ダドリー・アンドルー、角井誠、谷昌親、の各氏のテクストを収録。目次と、堀潤之さんによる巻頭言「『バザン全集』からの再出発――第四号イントロダクション」、伊津野知多さんによる「編集後記」は、誌名のリンク先でご覧いただけます。堀さん曰く「バザン自身がある程度まで構想したはずの『映画とは何か』四巻の構成という括りすらいったん解体するこの『全集』〔André Bazin, Écrits complets, édition établie par Hervé Joubert-Laurencin, Éditions Macula, 2018〕という装置は、そのささやかな偶像破壊的身振りによって、先入観なしにバザンを読むことへと読者を改めて誘っているのだ。/本号に収められているのは、各執筆者がおそらくはその誘いにも乗って、それぞれの仕方で、新しいバザン読解を模索した試みの成果である」と。なお『映画とは何か』は上下巻で新訳が岩波文庫より2015年に刊行されていることは周知の通りです。

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by urag | 2020-04-05 23:02 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 04月 03日

「週刊読書人」にガシェ『脱構築の力』の書評

「週刊読書人」2020年4月3日号に、弊社1月刊、ロドルフ・ガシェ『脱構築の力――来日講演と論文』(宮﨑裕助編訳、入江哲朗/串田純一/島田貴史/清水一浩訳)に対する、岩野卓司さんによる書評「デリダの思想を継承するために――「脱構築」から解放し、その本質をつかむ」が掲載されました。「ガシェの思想は、デリダの思想の本質に徹底的に忠実になることによって、デリダが見過ごしていたことやデリダが考えようとしたことまで含めて考えていこうとするものである」と評していただきました。



by urag | 2020-04-03 20:51 | 広告・書評 | Comments(0)