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2020年 02月 27日

ブックツリー「哲学読書室」で6本の新規リストが公開となりました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」で、6本のリストが公開となりました。

ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン、2019年11月)の著者、後藤護さんによる「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門」
生まれてきたことが苦しいあなたに――最強のペシミスト・シオランの思想』(星海社新書、2019年12月)の著者、大谷崇さんによる「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム」
連続と断絶――ホワイトヘッドの哲学』(人文書院、2020年1月)の著者、飯盛元章さんによる「思考を解き放て!」
近代のはずみ、ひずみーー深田康算と中井正一』(航思社、2020年1月)の著者、長濱一眞さんによる「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊」
火星の旅人――パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史』(青土社、2020年1月)の著者、入江哲朗さんによる「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊」
ディアローグ――デュラス/ゴダール全対話』(読書人、2018年10月)の訳者、福島勲さんによる「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる」

以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために
55)築地正明(つきじ・まさあき:1981-)さん選書「信仰について考える。ベルクソンとドゥルーズと共に
56)浅野俊哉(あさの・としや:1962-)さん選書「〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
57)岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さん/赤羽健(あかはね・けん:1991-)さん選書「贈与論を通してどう資本主義を突き抜けていくか
58)秋元康隆(あきもと・やすたか:1978-)さん選書「「利他」とは何かを学ぶために
59)宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ:1974-)さん選書「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく
60)後藤護(ごとう・まもる:1988-)さん選書「「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門
61)大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さん選書「人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム
62)飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さん選書「思考を解き放て!
63)長濱一眞(ながはま・かずま:1983-)さん選書「「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊
64)入江哲朗(いりえてつろう:1988–)さん選書「アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊
65)福島勲(ふくしま・いさお:1970-)さん選書「眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる

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by urag | 2020-02-27 20:15 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 24日

注目新刊:カーター『SS先史遺産研究所アーネンエルベ』ヒカルランド、ほか

注目新刊:カーター『SS先史遺産研究所アーネンエルベ』ヒカルランド、ほか_a0018105_03363180.jpg


SS先史遺産研究所アーネンエルベ――ナチスのアーリア帝国構想と狂気の学術』ミヒャエル・H・カーター著、森貴史監訳、北原博/溝井裕一/横道誠/舩津景子/福永耕人訳、ヒカルランド、2020年2月、本体9,900円、四六判ハード、ISBN9784864718271
世界史の針が巻き戻るとき――「新しい実在論」は世界をどう見ているか』マルクス・ガブリエル著、大野和基訳、PHP新書、2020年2月、本体960円、232頁、ISBN978-4-569-84594-4
共産党宣言』マルクス/エンゲルス著、森田成也訳、光文社古典新訳文庫、2020年2月、本体1,040円、ISBN:75420-4
今昔物語集 震旦篇 全現代語訳』国東文麿訳、講談社学術文庫、2020年2月、本体1,850円、576頁、ISBN978-4-06-518693-0
柳田國男民主主義論集』柳田國男著、大塚英志編、平凡社ライブラリー、2020年2月、本体1,600円、B6変判並製376頁、ISBN9784582768855

★『SS先史遺産研究所アーネンエルベ』は『Das "Ahnenerbe" der SS 1935-1945. Ein Beitrag zur Kulturpolitik des Dritten Reiches』(4. Aufl., Oldenbourg, 2006)の「著作本文のほぼ全訳」(凡例)。初版は1974年刊ですが長く読み継がれている古典的文献です。まさかヒカルランドさんから学術書版元De Gruyter Oldenbourgの研究書が出るとは夢にも思いませんでしたが、森貴史さんによる監訳者あとがきによれば「翻訳書はヒカルランド最初の専門学術書の翻訳だそうである」とのこと。編集ご担当は小澤祥子さん。森さん曰く「原著にはいっさいない図版の蒐集や難解な組織図の見やすいアレンジはすべて、彼女の孤軍奮闘のおかげ」。凡例にある「ほぼ全訳」というのは、注や参考文献にドイツ語が残っているためそう書かれてあるのだと思われます。こうしたことは学術専門書では通例の範囲内であり、全訳と言い切って問題ないと思われます。カバーソデ紹介文に曰く、アーネンエルベとは「1935年、ナチス親衛隊(SS)全国指導者ハインリヒ・ヒムラーの主導により、ドイツ先史時代の精神史研究を目的として設立された知られざる研究機関。当初はゲルマン民族の歴史・民俗を主な対象としていたが、次第にオカルティックな研究を含め、ユダヤ人を使った人体実験や気象学、化学、軍事研究などの分野にも拡大し、大学への介入も強めながら、ドイツ支配地域に多数の支部を有する巨大機関に発展。1945年のナチス・ドイツ崩壊に至るまで、親衛隊のアーリア=大ゲルマン帝国構想の推進においてきわめて重要な役割を果たした」。目次詳細と本書冒頭は書名のリンク先のPDFで立ち読みすることができます。著者のカーター(Michael Hans Kater, 1937-)はドイツ出身でカナダで教鞭を執ってきた歴史家。トロントのヨーク大学名誉教授。既訳書に『第三帝国と音楽家たち――歪められた音楽』(明石政紀訳、アルファベータ、2003年;著者名表記は英語式に「マイケル・H・ケイター」)があります。

★2月の新書や文庫新刊から注目書を4点。『世界史の針が巻き戻るとき』は大野和基さんと編集部の大岩央さんによるガブリエル氏への独占ロングインタヴューを全7章+補講にまとめたもの。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。まだガブリエルを読んだことがないという読者には内容的にも値段的にも本書をまずお薦めするのが最適だと思います。第2章「なぜ今、新しい実在論なのか」の末尾では、スティーヴン・ピンカー『21世紀の啓蒙――理性、科学、ヒューマニズム、進歩』(上下巻、草思社、2019年12月)への痛烈な批判が述べられていて、印象的です。曰く「モダニティは人類の自滅を引き起こすのです。近代科学ほど人を殺したものはありません」(62頁)。ピンカーとガブリエルの年齢差は26歳。若い世代はガブリエル氏の議論をより切実に感じるのではないかと創造します。

★『共産党宣言』は近年も幾度となく新訳されてきましたが、今回の森田訳では100通超の関連する手紙を抜粋収録しているのがミソ。『今昔物語集 震旦篇 全現代語訳』は、本朝世俗篇上下巻、天竺編に続く4点目。巻末特記に曰く、1983年から84年に刊行された講談社学術文庫版『今昔物語集』第6巻から第9巻までの中から抜粋し再編集したもの。『柳田國男民主主義論集』は「大正デモクラシー・普通選挙導入期から戦後の社会科・国語教育論までたどり、民主主義の推進者、主権者教育の「運動家」として柳田國男を読み直す」独自編集版の論文集。収録テクストは例えばhontoの単品頁をご覧ください。

★次に、購入が遅れていた12月から1月の新刊のうち、振り返っておくべき重要な書目を3点挙げます。

ユダヤ神話・呪術・神秘思想事典』ジェフリー・W・デニス著、木村光二訳、柏書房、2020年1月、本体15,000円、A5判上製814頁、ISBN9784760151714
騎士道』レオン・ゴーティエ著、武田秀太郎編訳、中央公論新社、2020年1月、本体2,700円、四六判368頁、ISBN978-4-12-005259-0
スピノザ――よく生きるための哲学』フレデリック・ルノワール著、田島葉子訳、ポプラ社、2019年12月、本体2,500円、四六判254頁、ISBN978-4-591-16470-9

★『ユダヤ神話・呪術・神秘思想事典』は『The Encyclopedia of Jewish Myth, Magic and Mysticism』(Second edition, Llewellyn Publications, 2016)の訳書。2007年の原著初版から大幅増補された第二版を訳出し、さらに初版にあって第二版で削除されている項目も復活させているとのことです。値段ゆえに後回しされがちかもしれませんが、美麗な造本で内容も特異なこうした事典類は品切になると厄介なので、今のうちに購読しておくべきです。「本事典は旧約聖書とその人物、歴史、出来事、祭儀、祭具、祝祭日、動物、植物、事物、そして、占い、ディブーク(憑霊)、悪霊祓い、輪廻転生、ゴーレム、マギード(霊的案内人)、習俗、迷信、伝説などのユダヤ人の民間信仰とユダヤ教神秘主義、カバラーの秘教的教義とカバリスト、ハスィディズムとハスィディーム、数秘学、ヘブライ語の言語神秘主義についての事典であり、換言すれば、「ユダヤ民俗宗教事典」とも言うべき事典である」(訳者あとがき、786頁)。訳者の木村光二(きむら・こうじ:1949-)さんはビアールによるショーレム伝『カバラーと反歴史』(晶文社、1984年)などのほか、近年ではエレン・フランケル『図説ユダヤ・シンボル事典』(悠書館、2015年)なども手掛けておられます。

★『騎士道』はフランスの文学史家レオン・ゴーティエ(Émile Théodore Léon Gautier, 1832-1897)の大著『La Chevalerie』(1884年)の英訳版(1891年)からの抄訳。日本語版の「編訳者序」によれば仏語原著は個人出版であり誤記等が目立つため、「丁寧な校正が為されたラウトレッジ社版」を用い、「必要に応じ適宜原著を参照する形を採った」(11頁)とのことです。訳出されたのは、第一章~第四章、第七章、第二十章。本書の第二部として、1270年代に成立した、ラモン・リュイ(Ramon Llull, c.1232-c.1316)の著書『騎士道の書』(カタルーニャ語:Llibre de l'orde de cavalleria)のウィリアム・キャクストンによる英訳(1428年)からの全訳が収められています。言うまでもありませんがリュイというのはかの神学者ライムンドゥス・ルルスのことです。今までに哲学的著作や神秘主義的著作の一部が翻訳されてきましたが、騎士道論が訳出されるのは今回が初めてではないかと思います。なお『騎士道』ではゴーティエとリュイの翻訳に続いて「武勲詩要覧」が付録として収められており、中世の武勲詩の解説とあらすじがまとめられています(シャルルマーニュ詩群、ギヨーム・ドランジュ詩群、ドーン・ド・マイヤンス詩群、ロレーヌ詩群、その他)。編訳者の武田秀太郎(たけだ・しゅうたろう:1989-)さんは現在、京都大学大学院総合生存学館特任助教。もともとは理系のご出身で、略歴によれば「専門はエネルギー政策、発展途上国援助政策、開発哲学(ハイデガー技術論、西洋騎士道)」とのことで、ユニークです。

★『スピノザ』はマダガスカル生まれのフランスの作家ルノワール(Frédéric Lenoir, 1962-)による『Le miracle Spinoza〔奇蹟のスピノザ〕』(Fayard, 2017)の全訳。前半では『神学・政治論』、後半では『エチカ』に焦点を当て、スピノザの生涯と思想を「平易に解説」(訳者あとがきより)しています。ルノワールの訳書はすでに単独著だけでも10冊近い既刊書があり、日本でも相応に親しまれてきたと思います。今回のスピノザ論で特筆しておきたいのは、巻末に「付記」として収められた「ロベール・ミスライとの往復書簡」(203~217頁)です。ミスライ(Robert Misrahi, 1926-)は戦後フランスにおけるスピノザ研究の古参で幸福論の大家ですが、訳書がなく、わずかに論文が読めるだけです。ミスライとルノワールは互いのスピノザ解釈の相違点について述べており、ミスライは神について、またアフェクトゥスとアフェクティオの違いについて明快に言及しています。




★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

感身学正記2――西大寺叡尊の自伝』叡尊著、細川涼一訳注、東洋文庫、2020年2月、本体3,400円、B6変判上製函入336頁、ISBN978-4-582-80901-5
イヴの七人の娘たち――遺伝子が語る人類の絆』ブライアン・サイクス著、大野晶子訳、河出文庫 文庫、2020年2月、本体1,200円、400頁、ISBN978-4-309-46707-8
アダムの運命の息子たち――遺伝子が語る人類の盛衰』ブライアン・サイクス著、大野晶子訳、河出文庫、2020年2月、本体1,200円、456頁、ISBN978-4-309-46709-2
』ロマン・ガリ著、永田千奈訳、共和国、2020年2月、本体2,700円、菊変型判並製316頁、ISBN978-4-907986-61-2
アンタゴニズムス――ポピュリズム〈以後〉の民主主義』山本圭著、共和国、2020年2月、本体2,700円、四六判上製280頁、ISBN978-4-907986-68-1
現代思想2020年3月臨時増刊号 総特集=フェミニズムの現在』青土社、2020年2月、本体1,800円、ISBN978-4-7917-1394-3

★平凡社さんの東洋文庫2月新刊は1点。『感身学正記2』は東洋文庫の第901巻。真言律宗の僧侶、叡尊(えいそん:1201-1290)の自伝『金剛仏子叡尊感身学正記』の読み下し文に詳細な注釈を付したもの(底本は西大寺所蔵の「法隆寺五師重懐書写本」1359年)。原文は漢文で巻末にまとめられています。全2巻完結で、第2巻は「71歳から85歳、非人休載から禁酒運動まで、その旺盛な活動が記される」(帯文より)。巻末には「1巻注補遺」「解説」「索引(人名/地名・寺社名)が収められていますが、注釈者の細川涼一さんが同じく東洋文庫で2011年1月に上梓された、性海『関東往還記』の「注補遺」も併録されています。なお『感身学正記1』(1歳から70歳までの記録)は東洋文庫第664巻として、1999年12月に刊行されています。第1巻のあとがきで「十年以上かかって二分冊のうち一冊をようやく刊行〔…〕しかし本書は、これまでの私の仕事の中でも、時間だけは最も多くかけた仕事である」(366頁)とお書きになっています。細川さんは今年度で京都橘大学を定年退職されるとのことで、第2巻解説には「ようやくぎりぎり間に合わせることができた」(312頁)とあります。なお第1巻の紙媒体は版元品切で、電子書籍かオンデマンド版が入手可能です。

★河出文庫2月新刊より2点。『イヴの七人の娘たち』『アダムの運命の息子たち』は、人類遺伝学の国際的権威サイクス(Bryan Sykes, 1947-)のベストセラー2点の再文庫化。『イヴ』は2001年にソニー・マガジンズから単行本が、『アダム』は2004年にソニー・マガジンズから単行本(旧題『アダムの呪い』)がそれぞれ出版されて、ともに2006年に文庫化(ヴィレッジブックス)。再文庫化にあたり、それぞれ副題が加わり、各巻末に「河出文庫版訳者あとがき」が新たに付されています。『イヴ』ではミトコンドリアDNAの解読により西欧の母系の淵源を辿り、『アダム』ではY染色体の分析により戦争と暴力を生む呪いの歴史と男性絶滅の未来を説いています。ちなみにサイクスは昨年、犬の遺伝的進化をめぐる著書『Once a Wolf』を公刊しています。

★共和国さんの2月新刊より2点。『凧』は叢書「世界浪漫派」の第4弾で、フランスの作家ガリ(Roman Gary, 1914-80)がピストル自殺する前に上梓した最後の小説『Les cerfs-volants』(Gallimard, 1980)の訳書。第二次大戦下のフランスに生きる人間像を豊かに描いた一冊。同叢書でのガリの訳書は2017年の『夜明けの約束』に続く2点目です。『夜明けの約束』は自伝的小説ですが、『母との約束、250通の手紙』という題で映画化されて、先月末より日本でも全国ロードショーが始まっています。いっぽう『アンタゴニズムス』は、2017年から2019年にかけて各媒体で発表されてきた論考9本に加筆修正を施して一冊にまとめたもの。『不審者のデモクラシー――ラクラウの政治思想』(岩波書店、2016年)に続く単独著第2弾です。アンタゴニズムスとは敵対性の意。「日常と非日常のあいだ、同質的なものと意識なもののあいだ、あるいは諸制度と異議申し立てのあいだの絶え間ない交渉を可能にする」(18頁)ラディカル・デモクラシーの未来を論じたもの。

★『現代思想』3月臨時増刊号は2点。『総特集=磯崎新』は未見ですが、再録の対談やテクストも含め、保存版となるだろう一冊。『総特集=フェミニズムの現在』は文芸書での継続的注目に比して人文社会系では焦点を絞るのがかえって困難だと思われる当世における一試行として受け止めました。翻訳に言及しておくと、シェリー・バジェオン成功した女性性の矛盾――第三波フェミニズム、ポストフェミニズム、そしてさまざまな「新しい」女性性」(芦部美和子訳、河野真太郎解題、169~183頁)と、アンジェラ・マクロビー「ポストフォーディズムのジェンダー――「やりがいある仕事」、「リスク階級」と「自分自身の人生」」(中條千晴訳、田中東子解題、184~208頁)。前者は2011年に公刊されたアンソロジー『New Femininities: Postfeminism, Neoliberalism and Subjectivity』に収録されたもの。後者は2015年に刊行された単独著『Be Creative: Making a Living in the New Culture Industries』の第4章で論文としての初出は2011年。

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by urag | 2020-02-24 23:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 21日

注目新刊:ダミッシュ『カドミウム・イエローの窓』水声社、ほか

弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆さんの最近のご活躍をご紹介いたします。

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★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』、ガシェ『脱構築の力』)
単独著第二弾を先月上梓されました。2009年から2019年にかけて各媒体で発表されてきた10本のデリダ論に、加筆修正を施し、書き下ろしの序論を付して一冊としたもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。なお同書をめぐっては、宮﨑さんが関連する4冊とともにブックガイド「「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく」をhontoブックツリーに寄稿しておられます。また本書とガシェ『脱構築の力』に対して、星野太さん(著書『崇高の修辞学』)が書評をお書きになっておられます(「artscapeレビュー」2020年2月11日付)。

ジャック・デリダ――死後の生を与える
宮﨑裕助著
岩波書店 2020年1月 本体3,600円 四六判上製カバー装376頁 ISBN978-4-00-061385-9
帯文より:「私は私自身と戦争状態にある」。テクストの徹底的な読解と、現代への透徹した視線。〈デリダを超えてゆくデリダ〉に出会う、新たな時代の入門書。生きることの自由と未来のために。


★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
一橋大学での最終講義が以下の通り行われます。参加自由、入場無料、事前予約不要とのことです。

◎鵜飼哲最終講義「アンティゴネーと絶対知――デリダ『弔鐘』をめぐって」
日時:2020年3月18日(水)18-20時
会場:一橋大学西キャンパス(国立駅南口より徒歩10分)第二講義棟405番教室
司会:西山雄二(首都大学東京)
主催:脱構築研究会
協力:鵜飼ゼミ有志


★入江哲朗さん(共訳:ガシェ『脱構築の力』)
単独著第一弾『火星の旅人』を先月上梓されました。2013年に東京大学大学院総合文化研究科へ提出した修士論文「火星の旅人――パーシヴァル・ローエルと世紀転換期のニューイングランド」を元に、4倍以上の分量に書き直されたもの。目次詳細は書名のリンク先でご覧になれます。なお本書の装丁と組版は、『脱構築の力』と同じ、新進気鋭のデザイナー、北岡誠吾さんが担当されています。また入江さんは、まもなく発売となるブルース・ククリック『アメリカ哲学史―― 一七二〇年から二〇〇〇年まで』(大厩諒/入江哲朗/岩下弘史/岸本智典訳、勁草書房、2020年2月)を共訳しておられます。

火星の旅人――パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史
入江哲朗著
青土社 2020年1月 本体3,200円 四六判並製384+76頁 ISBN978-4-7917-7245-2
帯文より:名門に生まれ、日本を旅した男はなぜ火星に魅せられたのか。ボストン・ブラーミンと称され、ハーアード大学の興隆に大きく寄与した名門ローエル家に生まれたパーシヴァル。詩文をよくし、科学的知性を携えた青年は19世紀末アメルカの知識階級の伝統と逸脱に揺れ動きながら、日本へ渡る。ラフカディオ・ハーンにも読まれたジャパノロジストの足跡と、ラヴクラフトのクトゥルー神話に接続する“観測”という想像力を追う、俊英による新たなるアメリカ思想史。


★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
光文社古典新訳文庫よりフロイト『モーセと一神教』(1939年)の新訳を今月上梓されました。中山さんによる同文庫でのフロイト新訳は、2007年9月刊『幻想の未来/文化への不満――フロイト文明論集1』、2008年2月刊『人はなぜ戦争をするのか――エロスとタナトス:フロイト文明論集2』、2011年2月刊『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの』に続く4冊目です。

モーセと一神教
フロイト著 中山元訳
光文社古典新訳文庫 2020年2月 本体1,060円 文庫判並製344頁 ISBN978-4-334-75419-8
帯文表1より:十戒のモーセを殺したのは誰か? ユダヤ教成立の謎をフロイトが解読する。
帯文表2より:なぜ、モーセはユダヤの民を選んだのか? なぜ、ユダヤ人は迫害されるのか?……ユダヤ教の成立とキリスト教誕生の間に隠された謎を、「原父殺害」「潜伏期」「抑圧されたものの回帰」といった精神分析の理論を援用して解読するフロイト最大の問題作。
カヴァー表4紹介文:ファシズムの脅威のなか書き上げられたフロイトの「遺著」。 猛威をふるっていた反ユダヤ主義の由来について、フロイトは、モーセはエジプト人だったとする仮説からユダヤ教の成立と歴史を考察し、みずからの精神分析の理論を援用してキリスト教の誕生との関係から読み解く。


★岡本源太さん(著書『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』)
フランスの哲学者で美術史家のユベール・ダミッシュ(Hubert Damisch, 1928-2017)による80年代半ばの論文集『Fenêtre jaune cadmium ou les Dessous de la peinture』(Paris, Seuil, 1984)の全訳が昨年末に水声社のシリーズ「言語の政治」第22巻として刊行され、岡本さんは共訳者の一人として第Ⅱ部「定理」の翻訳を担当しておられます(「芸術、今日、註釈」「アンフォルメル」「戦略、1950-1960年」)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

ユベール・ダミッシュ著 岡本源太/桑田光平/坂口周輔/陶山大一郎/松浦寿夫/横山由季子訳
水声社 2019年12月 本体4,000円 A5判上製341頁 ISBN978-4-8010-0445-0
帯文より:デッサンと色彩、抽象と具象、垂直と水平、地と図、見ることと読むこと、有限と無限……。モンドリアン、ポロック、デュビュッフェ、クレー、スタインバーグ、アダミ、ルーアンといった作家たちを導きの糸にしながら、二十世紀の美術が依拠してきた理論と歴史の布置を問い直し、その錯綜とした結び目に光を投げかける。

数十年前に刊行された書籍でもそう簡単に色あせないのは、人文学の営みというものがそもそも文化の歴史的深層へとその視線を果敢に届かせようとしているからでしょう。例えばダミッシュと同じく美術系の哲学者による「現代の古典」の翻訳としては、一年前にイヴ・ミショー(Yves Michaud, 1944-)の90年代の論争的著作『La crise de l'art contemporain : Utopie, démocratie et comédie』(PUF, 1997)の全訳が刊行されています。『現代アートの危機――ユートピア、民主主義、そして喜劇』(島本浣/中西園子訳、三元社、2019年1月、本体3,500円、A5判上製280頁、ISBN978-4-88303-471-0)。底本はカドリージュ版(2005年/2015年)。こうした書籍を意識的に扱っていらっしゃる書店さんは信用に値すると私は思います。

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by urag | 2020-02-21 02:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 18日

ガシェ『脱構築』への星野太さんによる書評(artscapeレビュー)

弊社1月刊、ロドルフ・ガシェ『脱構築の力』への書評を星野太さんが「artscapeレビュー」に投稿されました(2020年2月11日付)。「対象とするテクストの綿密きわまりない解読に支えられた各論文は、読者にもそれなりの粘り強さを要求する。ホメロスやカントの言葉にあるように(第4章「思考の風」)、たしかに思考は「風」に擬えられるほど「迅速」で「非物質的な」ものである。しかしその──アーレントによれば「破壊的な」(187頁)──思考を伝達可能なものとしてくれるのは、「迂遠」で「物質的な」テクスト以外にあるまい。いずれにせよ、そうしたことへの連想をうながすガシェの日本講演が、5年あまりの時を越えて書物のかたちで刊行されたことを喜びたい」。

by urag | 2020-02-18 16:13 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 17日

月曜社3月新刊案内【ドイツ文学・SF】:エルンスト・ユンガー『エウメスヴィル』

月曜社新刊案内【2020年3月:文芸書1点:ドイツ文学・SF】
2020年3月8日書店様受注締切/2020年3月17日取次搬入予定

エウメスヴィル――あるアナークの手記
エルンスト・ユンガー[著] 田尻三千夫[訳]
月曜社 本体3,500円 46判(188x130x28)並製464頁 ISBN978-4-86503-095-2 C0097

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

内容:〈大破壊〉後の架空の都市国家に生きる一青年の任務と日常に仮託して、来たるべき人間と社会の趨勢を描いた、ユンガーの知られざる長篇小説。『大理石の断崖の上で』『ヘリオーポリス』に続く本作で、ユンガーはついに、独裁者たちが巨大な森へと消失する未来を幻視する。稀代の魔術的リアリストが描く、異形のSF世界。【叢書・エクリチュールの冒険、第16回配本】

目次:
師たち
限定と安全
ナイトバー・メモ
カスバの一日
町での一日
森について
エピローグ
訳者あとがき

原著:Eumeswil, Krett-Cotta, 1977.

著者:エルンスト・ユンガー(Ernst Jünger, 1895-1998)20世紀ドイツの作家。近年の訳書に以下のものがある。『ユンガー゠シュミット往復書簡 1930–1983』(山本尤訳、法政大学出版局、2005年)、『労働者――支配と形態』(川合全弘訳、月曜社、2013年)、『ユンガー政治評論選』(川合全弘編訳、月曜社、2016年)、『ガラスの蜂』(阿部重夫/谷本愼介訳、田畑書店、2019年)。

訳者:田尻三千夫(たじり・みちお, 1948-)東京大学名誉教授。ドイツ近現代文学研究・紹介。訳書にエルンスト・ユンガー『ヘリオーポリス』(上下巻、国書刊行会、1985~1986年)、アルトゥール・シュニッツラー『ウィーンの青春――ある自伝的回想』(みすず書房、1989年)、ヴォルフガング・ケッペン『ユーゲント』(同学社、1992年)、インゲボルク・ヴェーバー゠ケラーマン『子ども部屋――心なごむ場所の誕生と風景』(白水社、1996年)、ヨアヒム・ハインリヒ・カンペ『新ロビンソン物語』(鳥影社、2006年)など。

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by urag | 2020-02-17 11:18 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 15日

「週刊読書人」にブージェドラ『ジブラルタルの征服』の書評

「週刊読書人」2020年2月14日号に、弊社11月刊、ラシード・ブージェドラ『ジブラルタルの征服』(下境真由美訳)に対する福嶋伸洋さんによる書評「救済の隘路を探す〈歴史〉の営み――独立戦争時のアルジェリアを舞台に、奇妙なまでの堂々巡りが展開される螺旋の物語」が掲載されました。「奇妙なまでの堂々巡りが展開されるこの螺旋の物語は、悪夢にも似た繰りかえしのなかでたゆまず、別の可能世界への小さな脱出口を、隠れた救済の隘路を探し続け、正史から漏れる野史、正史を覆す野史を書くことを試みる、〈歴史〉の営みそのものを現出させている」と評していただきました。



by urag | 2020-02-15 15:50 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 12日

「みすず」2020年読書アンケート号に、アガンベン『書斎の自画像』への短評2本

月刊誌「みすず」2020年1/2月合併号「読書アンケート特集」で、弊社10月刊、アガンベン『書斎の自画像』岡田温司訳を、長谷正人さんと田中純さんが取り上げて下さいました。長谷さん曰く「20世紀思想家の生き証人であるアガンベンが、まだ現役として私たちの思考を揺るがせている事実に感動する」。田中さん曰く「読み進むほどに、著者らしい啓示的な細部に満ちている」。たいへん光栄です。ありがとうございます。


by urag | 2020-02-12 11:54 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 10日

「新書大賞2020」に参加しました

本日発売の「中央公論」2020年3月号で「新書大賞2020」が発表。「目利き45人が選ぶ2019年私のオススメ新書」に今年も参加しました。例年はベスト20のランキングと私の選書はほとんど重複しないのですが、今年はさすがに話題書を含むだけあって5冊中2冊がランクインしています。私が選んだ5冊は以下の通り。

【1】木澤佐登志『ニック・ランドと新反動主義』星海社新書(新書大賞第11位)
【2】斎藤幸平編『未来への大分岐』集英社新書(新書大賞第8位)
【3】植村邦彦『隠された奴隷制』集英社新書
【4】大野和基編『未完の資本主義』PHP新書
【5】丸山俊一ほか編『AI以後』NHK出版新書

大野和基さんと丸山俊一さんがそれぞれに継続されている、世界的知性への取材活動は評価されるべきです。読者を学術書へと導く入門編として、どれも重要な役割を果たしていると思います。

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by urag | 2020-02-10 17:00 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 09日

注目新刊:水声社よりデスコラ『自然と文化を越えて』、クラストル『政治人類学研究』が発売

注目新刊:水声社よりデスコラ『自然と文化を越えて』、クラストル『政治人類学研究』が発売_a0018105_02151242.jpg


自然と文化を越えて』フィリップ・デスコラ著、小林徹訳、水声社、2020年1月、本体4,500円、四六判上製637頁、ISBN978-4-8010-0467-2
政治人類学研究』ピエール・クラストル著、原毅彦訳、水声社、2020年1月、本体4,000円、A5判上製314頁、ISBN9978-4-8010-0468-9
ゲーテとドイツ精神史――講義・講演集より』エルンスト・カッシーラー著、田中亮平/森淑仁編訳、知泉書館、2020年1月、本体5,000円、新書判上製472頁、ISBN978-4-86285-308-0
本を売る技術』矢部潤子著、本の雑誌社、2020年1月、本体1,600円、四六判並製240頁、ISBN978-4-86011-438-1
形を読む――生物の形態をめぐって』養老孟司著、講談社学術文庫、2020年1月、本体960円、232頁、ISBN978-4-06-518546-9
荀子』湯浅邦弘著、角川ソフィア文庫、2020年1月、本体840円、208頁、ISBN978-4-04-400546-7
哲学の起源』柄谷行人著、岩波現代文庫、2020年1月、本体1,220円、272頁、ISBN978-4-00-600413-2
養生訓』貝原益軒著、松田道雄訳、中公文庫、2020年1月、本体880円、280頁、ISBN978-4-12-206818-6

★『自然と文化を越えて』は叢書「人類学の転回」の第14弾。フランスの人類学者デスコラ(Philippe Descola, 1949-)の主著『Par-delà la nature et la culture』(Gallimard, 2005)の待望の翻訳であり、デスコラの単独著の初訳本となります。「人類学の最近の潮流における根本的な変化――お望みならパラダイム・シフトと言ってもよい――を提供している」と、かのサーリンズが英訳版の「緒言」で書いていることが訳者あとがきで紹介されています。2段組で本文と注と文献一覧を併せると600頁を超える大冊です。

★デスコラはこう書きます。「人類学は素晴らしい挑戦に直面しているのだ。すなわち、人間主義〔ヒューマニズム〕という擦り切れた形式と共に消え去るか、あるいは形態変化して、まさに人間〔アントロポス〕意外のもの、つまり人間と結びついているのに今のところ周辺的役割に遠ざけられている存在者の集合体を、まるごと研究対象に含めるような仕方で、自らの領域や諸々の道具について再考するかである。あるいは、もっと慣例的な言葉を使うならば、文化の人類学を自然の人類学によって裏打ちせねばならない。自然の人類学は、このような周辺的存在者たちの領分と、人間が現働化している世界に開かれている。自然の人類学を用いて、人間は自らを対象化するのである」(序、21頁)。

★この言葉は叢書「人類学の転回」全体を象徴するものでもあり、新実在論を含む、脱人間中心主義の人文学(ポスト・ヒューマニティーズ)の基軸を示すものでもあります。デスコラの本書はその中心で、文化のコードを揺るがす強烈な磁場を発生させ、新世界への視野を拓いています。

★『政治人類学研究』は叢書「言語の政治」の第23弾。『Recherches d'anthropologie politique』(Seuil, 1980)の全訳で、フランスの人類学者クラストル(Pierre Clastres, 1934-1977)による論考12篇をまとめたものです。同叢書では『国家に抗する社会――政治人類学研究』(渡辺公三訳、水声社、1989年)に次ぐ2冊目。副題が今回の新刊の正題と同じですが、別々の書籍です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。第11章「暴力の考古学――未開社会における戦争」は、原著が単行本としても刊行されていたこともあり、既訳が2003年に出版されています(毬藻充訳、現代企画室)。

★『ゲーテとドイツ精神史』は「知泉学術選書」の第11弾。カッシーラー遺稿集でゲーテを論じた講義や講演を収めた第10巻と第11巻から主要なものを訳出したもの。第Ⅰ部「ゲーテと精神史のための論集」と第Ⅱ部「ゲーテ講義集」の2部構成。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「カッシーラーの哲学の基軸が通説とは違い、カントよりむしろゲーテにあったことが本書を通して明らかにされる」(カバー表4紹介文より)。なお、知泉書館さんでは2006年に森淑仁編訳『カッシーラー ゲーテ論集』を出版されています。

★『本を売る技術』は「WEB本の雑誌」で連載されたものに書き下ろしを加えたもの。全7講から成り、本の雑誌社営業部の杉江由次さんとの対談形式で綴られています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「これまでマニュアル化不可能、口承・口伝、見て盗む、あるいは独学で行なわれてきた書店員の多岐にわたる仕事が、今はじめて具体的・論理的に語られる」(帯裏紹介文より)。矢部潤子さんは出版業界人なら知らぬ人はいないヴェテラン書店員。実務概論としてだけでなく、書店人の職能の証言としても後世に残るだろう貴重な一冊です。

★『形を読む』は1986年に培風館より単行された単行本に加筆修正を施し、文庫版まえがきを付したもの。「この本は、私が研究生活で考えたことの大部分を含んでいる」(3頁)。『唯脳論』『バカの壁』、近作の新書『遺言』までがこのまえがきで言及されています。だとすれば、養老さんの思考の螺旋階段を下ったその基底は形態学にある、と言えるのかもしれません。

★そのほか文庫を一挙におさらいしておくと、『荀子』は「ビギナーズ・クラシックス 中国の古典」の一冊。現代語訳、書き下し分、返り点付き原文、解説、コラムで構成。「性悪説にもとづく「礼治」の教え」(帯文より)の現代性に再注目したい必読古典。『哲学の起源』は2012年11月に刊行された単行本の文庫化。もともとは月刊誌「新潮」に連載されたもの。新たに「岩波現代文庫版あとがき」が加えられています。ジジェクの推薦文が帯に刻まれています。『養生訓』は中公文庫プレミアム「知の回廊」の一冊。1977年の中公文庫の改版で、新たに巻末エッセイとして玄侑宗久さんによる「自愛の作法」が加えられています。

★続いてここ一、二か月で重版が掛かった既刊書を2点挙げます。

新しい哲学の教科書――現代実在論入門』岩内章太郎著、講談社選書メチエ、2019年10月、本体1,800円、四六判並製288頁、ISBN978-4-06-517394-7
戦争プロパガンダ10の法則』アンヌ・モレリ著、永田千奈訳、草思社文庫、2015年5月、本体800円、208頁、ISBN978-4-7942-2106-3

★『新しい哲学の教科書』は昨年10月刊行で12月に2刷が出ています。メイヤスー、ハーマン、チャールズ・テイラーとヒューバート・ドレイファス、ガブリエルの思想を、それぞれ一章を割いて解説したもの。副題にある通り、ここしばらく注目を浴び続けている「現代実在論」の関連書籍を書棚でまとめたい場合は中核にできる入門書です。「思弁的実在論、多元的実在論、新しい実在論の中心的な考え方を可能なかぎり簡明に提示」し、「現代の実存感覚に光を当てることで、「実在論」の意義を「実存論」的に取り出す」(「まえがき」3頁)ことを目的とした一冊。

★『戦争プロパガンダ10の法則』は2002年3月刊の単行本が2015年2月に文庫化され、5年後の2020年1月に3刷となっています。フランス語の原著『Principes élémentaires de propagande de guerre』は2001年に刊行。イギリスの貴族出身の政治家でポンソンビー男爵(Arthur Augustus William Harry Ponsonby, 1871-1946)の名著『戦時の嘘』(Falsehood in War-Time, Allen and Unwin1928)が分析した10個のウソを1章ごとに敷衍して論じたもの。曰く「われわれは戦争をしたくはない:We do not want war」「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ:The opposite party alone is guilty of war」「敵の指導者は悪魔のような人間だ:The enemy is inherently evil and resembles the devil」「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う:We defend a noble cause, not our own interests」「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる:The enemy commits atrocities on purpose; our mishaps are involuntar」「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている:The enemy uses forbidden weapons」「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大:We suffer small losses, those of the enemy are enormous」「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」「われわれの大義は神聖なものである:Recognized artists and intellectuals back our cause」「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である:Our cause is sacred」(訳文はモレリ本からで英語原文はポンソンビーのもの)。昔も今もこうした狡猾な言説は変わらないようです。

★なお、ポンソンビーの著書には古い訳書があります。『戦時の嘘――大戦中の各国を翔け回つた嘘のとりどり』(永田進訳、東晃社、1942年)です。一方、ネット書店に書誌情報が今なお残っている『戦時の嘘――戦争プロパガンダが始まった』(東中野修道監修、エドワーズ博美訳、草思社、2015年7月)というのは国会図書館などには登録されておらず、幽霊なのかもしれません。

★続いてちくま学芸文庫の2月新刊4点を列記します。

『企業・市場・法』ロナルド・H・コース著、宮澤健一/後藤晃/藤垣芳文訳、ちくま学芸文庫、2020年2月、本体1,400円、400頁、ISBN978-4-480-09961-7
『折口信夫伝――その思想と学問』岡野弘彦著、ちくま学芸文庫、2020年2月、本体1,600円、514頁、ISBN978-4-480-09963-1
『パワー・エリート』C・ライト・ミルズ著、鵜飼信成/綿貫譲治訳、ちくま学芸文庫、2020年2月、本体1,900円、736頁、ISBN978-4-480-09967-9
『数学と文化』赤攝也著、ちくま学芸文庫、2020年2月、本体1,100円、240頁、ISBN978-4-480-09970-9

★『企業・市場・法』は1992年に東洋経済新報社から刊行された単行本の文庫化。原著は『The Firm, the Market, and the Law』(University of Chicago Press, 1988)。新たに加えられた、共訳者の後藤晃さんによる「ちくま学芸文庫版『企業・市場・法』刊行に寄せて」には「後藤、藤垣の二名で全面的に訳を見直し、修正を加えた。今回の改訂はかなり大幅なものとなっている」とのことです。帯文に曰く「経済を支える「制度」に注目し、現代経済学の礎となった名著」と。

★『折口信夫伝』は2000年に中央公論新社より刊行された単行本の文庫化。もともとは「中央公論」誌上で96年から98年にかけて零細されたもの。巻末特記によれば「文庫化にあたっては、明らかな誤りは訂正し、ルビを加えた」とのことです。帯文に曰く「最後の弟子が描き切る折口の学問と内なる真実」。著者の岡野弘彦(おかの・ひろひこ:1924-)さんは歌人でいらっしゃいます。巻末には文庫判あとがきと、「師と共にありし、若き日――文庫版に寄せて」5首が新たに配されています。

★『パワー・エリート』は、1969年に東京大学出版会より上下巻で刊行されたものの合冊文庫化。原著『The Power Elite』は1956年刊。企業大富豪、政界幹部、軍上層部から成る権力エリート層による大衆支配を綿密に分析した名著。文庫判解説として巻末に伊奈正人さんによる「C・ライト・ミルズと格差社会」が加わっています。伊奈さんはこう本書を評価します。「『パワー・エリート』はなにより、集中した権力の制御不能を直視することを、公衆に訴えた書物である」(713頁)。

★『数学と文化』は1988年に筑摩書房より刊行された単行本の文庫化。もともとは放送大学で著者が行なった、「数学とは何か」をめぐる講義「数学と人間生活」のテキストに「いくらかの手を加えてできたもの」(まえがき、5頁)。「数の形成」から「数学と社会」まで全15章。巻末には逝去される前日にご執筆になったという「文庫化に際して」が新たに付されています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

野蛮の言説』中村隆之著、春陽堂、2020年2月、本体2,600円、四六版並製356頁、ISBN978-4-394-19501-6
離人小説集』鈴木創士著、幻戯書房、2020年2月、本体2,900円、四六判上製248頁、ISBN978-4-86488-190-6
ねむらない樹 vol.4』書肆侃侃房、2020年2月、本体1,500円、A5判並製216頁、ISBN978-4-86385-389-8

★『野蛮の言説』は「春陽堂ライブラリー」の第2弾(第1弾は昨年10月発売の、真銅正宏『匂いと香りの文学誌』)。「21世紀以降、〈文明〉は失墜し、〈野蛮〉と呼びうる状況がむしろ常態化しているように思われます」(まえがき、3頁)。「他者の蔑視や排除という、なるべく避けておきたい人間の負の側面にあえて焦点を当てて考える必要があるのではないか」(同4頁)。主要目次や、帯に載っているブレイディみかこさんの推薦文は、書名のリンク先でご確認いただけます。

★『離人小説集』は「著者初の書き下ろし小説集」「〈分身〉としての世界文学史」(帯文より)。収録作品は以下の7篇です。「既視:芥川龍之介と内田百閒」「丘の上の義足:アルチュール・ランボー」「ガス燈ソナタ:稲垣足穂」「無人の劇場:フェルナンド・ペソア」「アデマの冬:原一馬」「風の狂馬:アントナン・アルトー」「天井の井戸:小野篁」。なお、原一馬は詳細不明の作家。鈴木さんと同年生まれ。カヴァー絵と挿絵は二階堂はなさんによるもの。

★『ねむらない樹 vol.4』は特集1が「第2回笹井宏之賞発表!」、特集2が「短歌とジェンダー」。後者の中核となる座談会「短歌とジェンダー」は川野芽生、黒瀬珂瀾、山階基、佐藤弓生の4氏によるもの。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。なお4号の刊行を記念して、2月21日(金)20時より、下北沢の本屋B&Bにて、大森静佳×佐藤弓生×染野太朗×千葉聡×寺井龍哉×東直子の6氏による「編集委員全員集合!「ねむらない樹」の作り方」が開催されます。

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by urag | 2020-02-09 23:51 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2020年 02月 06日

本日取次搬入:『西野達完全ガイドブック』

『西野達完全ガイドブック』、本日2月6日に取次三社(日販、トーハン、楽天ブックスネットワーク)へ搬入いたしました。リアル書店さんでの店頭発売開始は、おおよそ12日以降となるかと思われます。どうぞよろしくお願いいたします。

by urag | 2020-02-06 19:14 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)