人気ブログランキング |

ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ

<   2019年 10月 ( 13 )   > この月の画像一覧


2019年 10月 31日

月曜社2019年12月新刊:『森山大道写真集成(3)写真よさようなら』

芸術/写真集:2019年12月5日取次搬入予定

森山大道写真集成③ 【第4回配本】
写真よさようなら
森山大道[写真]
月曜社 2019年12月 本体7,500円
A4判変型[天地302mm×左右222mm 背幅33㎜ 重量1.7㎏]上製角背328頁
ISBN:978-4-86503-087-7 C0072

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

伝説的名作の復活(初版1972年写真評論社、2006年パワーショベル、2012年講談社)。中平卓馬との対談全文掲載。「あのころのぼくは、写真に対する過剰な想念の海で溺れる寸前だった。そして、やっとの思いで泳ぎ着いた彼岸が、この写真集だった。写真というものを、果ての果てまで連れて行って無化したかった」(森山大道)。デザイン:町口覚

シリーズ「森山大道写真集成」の特徴……写真家本人が参加する新たなディレクションのもと、初期の名作を初版当時の画像サイズのまま再現し、高精細印刷で新生させる決定版シリーズ。写真家自身による当時の回想、撮影にまつわるエピソード、撮影場所など、掲載全作品についての貴重なコメントを付して、資料的な側面も充実。既刊:①にっぽん劇場写真帖、②狩人、④光と影。続刊:⑤未刊行作品集(1964~1976年撮影、2020年夏配本予定)。

a0018105_11520642.jpg


by urag | 2019-10-31 11:53 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 30日

月曜社2019年11月末発売予定:『KIMI SAKAKI twinkle』

2019年11月29日取次搬入予定:芸術/画集

KIMI SAKAKI twinkle
榊貴美[画]
月曜社 2019年11月 本体価格2,000円
B5判[天地259㎜×左右182㎜ 背幅8㎜]並製96頁(4C=80頁/作品点数58)
ISBN:978-4-86503-089-1 C0071

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

榊貴美、待望の初作品集。私たちの不確かさを映しだす鏡のこどもたち。「榊貴美は、もはや絵画の古いステージに戻ることはできない。彼女は、ファントムの世界から、鏡の中の世界へと移行することに気づいてしまった者なのだから」(後藤繁雄:京都造形芸術大学教授)。テキスト:永方佑樹/立島惠/後藤繁雄。デザイン:中島浩

榊貴美(さかき・きみ)1983年、和歌山県生まれ。2010年、東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業。2012年、東京造形大学大学院造形研究科造形専攻美術研究領域修了。大学在学中より、個展、グループ展を各所で開く。

a0018105_23345418.jpg


by urag | 2019-10-30 23:37 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 28日

注目新刊:ヴィリリオ/ロトランジェ『黄昏の夜明け』新評論、ほか

a0018105_03333233.jpg

黄昏の夜明け――光速度社会の両義的現実と人類史の「今」』ポール・ヴィリリオ/シルヴェール・ロトランジェ著、土屋進訳、新評論、2019年10月、本体2,700円、四六判上製272頁、ISBN978-4-7948-1126-4
道徳について――人間本性論3』ヒューム著、神野慧一郎/林誓雄訳、京都大学学術出版会、2019年10月、本体3,500円、四六上製320頁、ISBN978-4-8140-0244-3
なぜ歴史を学ぶのか』リン・ハント著、長谷川貴彦訳、岩波書店、2019年10月、本体1,600円、B6判並製144頁、ISBN978-4-00-024179-3

★『黄昏の夜明け』は『Crepuscular Dawn』(Semiotext(e), 2002)の全訳。ロトランジェとの対話本の訳書は『純粋戦争』(細川周平訳、UPU、1987年;Pure War, Semiotext(e), 1983)以来のものですが、今回も息の合ったスリリングなやりとりで現代文明の病理を透視し、暗い予感へと読者をいざないます(字が似ていますが、「黄金の夜明け団」とは無関係)。ヴィリリオの警告してきた未来から私たちは今なお脱出できていません。『純粋戦争』の原書はその後、新版が98年と2008年に刊行され、もはや歴史の1頁になっていますが、個人的には『純粋戦争』は最新版を元に増補版が出るべきだと思っています。

★『道徳について』はシリーズ「近代社会思想コレクション」の第27弾で、ヒュームの主著『人間本性論』第3巻の新訳。底本は2007年刊のノートン版。セルビー・ビッグバンの頁数が本文下段の余白に記されています。訳者あとがきによれば、新訳の続刊は別の訳者によって進められているようです。なお今月は、法政大学出版局さんから既訳第3巻の普及版が発売されたばかりです。

★『なぜ歴史を学ぶのか』はアメリカの歴史家リン・ハント(Lynn Hunt, 1945-)による『History: Why It Matters』(Polity Press, 2018)の訳書。訳者あとがきによれば、ポリティの新シリーズ「Why It Matters」の第1回配本だそうで、ハーヴァード大のジル・レポー教授(Jill Lepore, 1966-;レポアとも)は本書を「E・H・カーの『歴史とは何か』の21世紀版である」と評しているとのこと。周知の通り『歴史とは何か』は1962年の訳書刊行以来、岩波新書のロングセラーとなっています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

新しい思考』フランツ・ローゼンツヴァイク著、村岡晋一/田中直美編訳、法政大学出版局、2019年10月、本体4,800円、四六判上製520頁、ISBN978-4-588-01104-7
現代思想2019年11月号 特集=反出生主義を考える――「生まれてこないほうが良かった」という思想』青土社、2019年10月、本体1,400円、ISBN978-4-7917-1388-2
情動はこうしてつくられる――脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』リサ・フェルドマン・バレット著、高橋洋訳、紀伊國屋書店、2019年10月、本体3,200円、四六判上製620頁、ISBN978-4-314-01169-3
聖者のレッスン――東京大学映画講義』四方田犬彦著、河出書房新社、2019年10月、本体4,800円、46変形判上製352頁、ISBN978-4-309-25643-6
北斎 視覚のマジック――小布施・北斎館名品集』北斎館編、平凡社、2019年10月、本体2,800円、A4判並製176頁、ISBN978-4-582-66218-4
生き延びるためのアディクション――嵐の後を生きる「彼女たち」へのソーシャルワーク』大嶋栄子著、金剛出版、2019年10月、本体3,600円、A5判並製288頁、ISBN978-4-7724-1727-3
治療共同体実践ガイド――トラウマティックな共同体から回復の共同体へ』藤岡淳子編著、金剛出版、2019年10月、本体3,400円、A5判並製264頁、ISBN978-4-7724-1722-8
この社会で働くのはなぜ苦しいのか――現代の労働をめぐる社会学/精神分析』樫村愛子著、作品社、2019年10月、本体2,400円、四六判並製260頁、ISBN978-4-86182-776-1
オランダの文豪が見た大正の日本』ルイ・クペールス著、國森由美子訳、作品社、2019年10月、本体2,600円、46判上製360頁、ISBN978-4-86182-769-3
経済的理性の狂気――グローバル経済の行方を〈資本論〉で読み解く』デヴィッド・ハーヴェイ著、大屋定晴監訳、作品社、2019年9月、本体2,800円、四六判上製328頁、ISBN978-4-86182-760-0
全著作〈森繁久彌コレクション〉 第1巻 道――自伝』森繁久彌著、鹿島茂解説、藤原書店、2019年10月、本体2,800円、四六判上製640頁、ISBN978-4-86578-244-8
中村桂子コレクション いのち愛づる生命誌(Ⅳ)はぐくむ――生命誌と子どもたち』中村桂子著、高村薫解説、藤原書店、2019年10月、本体2,800円、四六変判上製296頁+口絵2頁、ISBN978-4-86578-245-5
“フランスかぶれ”ニッポン』橘木俊詔著、藤原書店、2019年10月、本体2,800円、四六判上製336頁+口絵8頁、ISBN978-4-86578-246-2

★『新しい思考』は日本版独自編集の論文集。帯文に曰く「主著『救済の星』刊行後に執筆した主要なテキストを中心に収録」とのこと。共訳者の村岡晋一さんはこれまでも『救済の星』(共訳、みすず書房、2009年)をはじめ、『健康な悟性と病的な悟性』(作品社、2011年)、『ヘーゲルと国家』(共訳、作品社、2015年)など、ローゼンツヴァイクの訳書を手掛けてきた第一人者です。今回の論文集では、「『救済の星』について」「自由ユダヤ学舎と教育について」「翻訳について」「人について」の4部構成で、計20本のテクストが収録されています。

★『現代思想2019年11月号』は反出生主義をめぐる特集号。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。巻頭の森岡正博さんと戸谷洋志さんによる討議「生きることの意味を問う哲学」の最後の方で森岡さんは次のように発言されています。「ベネターはショーペンハウアーの子どもであり、ショーペンハウアーは古代インド、ウパニシャッドとブッダの子どもであるわけです」(19頁)。『生まれてこない方が良かった』(すずさわ書店、2017年)の著者であるベネター(David Benatar, 1966-)の論考「考え得るすべての害悪――反出生主義への更なる擁護」も小島和男さんによって訳出されています(40~83頁)。

★『情動はこうしてつくられる』は、英語圏でベストセラーとなった『How Emotions Are Made: The Secret Life of the Brain』(Houghton Mifflin Harcourt, 2017)の全訳。著者のバレット(Lisa Feldman Barrett, 1963-)はノースイースタン大学心理学部教授。彼女独自の構成主義的情動理論(theory of constructed emotion)が説明されている本書は「身体疾患や精神疾患の治療、人間関係、子育て、そして究極的には人間の本性についての社会的通念の大幅な見直しを求める」(15頁)もの。訳者あとがきによれば、彼女の研究成果はFBIでも活用されているとのことです。



★『聖者のレッスン』は、東京大学文学部宗教学科において2016年度後期に全13回にわたり行われた講義「聖者の表象」をもとに全体を「濃縮」(後書き、343頁)した一冊。カトリックの聖人や東アジアの宗教的指導者、絶滅収容所などの映画的表象を取り上げ、自由で不安な戒律なき時代を生きるヒントを探っておられます。これが「最終講義」だと四方田さんは後書きで述懐されています。

★『北斎 視覚のマジック』は、同名の展覧会(すみだ北斎美術館、2019年11月19日~2020年1月19日)での展示作を中心として編集されたもので、同展図録であり、北斎館の公式図録でもあるとのこと。祭屋台天井絵、肉筆画、摺物、錦絵、版本などの画業を網羅した約150点がオールカラーで収録されています。凡庸な言い方で恐縮ですが、何度見てもやはり圧倒されます。

★金剛出版さんの10月新刊より2点。『生き延びるためのアディクション』は「女性依存症者に共通する四つの嗜癖行動パターンと三つの回復過程モデル」(版元紹介文より)を手がかりにした、「暴力・貧困・スティグマに絡めとられた“彼女たち”の生活を取り戻すための援助論」(帯文より)。著者の大嶋栄子(おおしま・えいこ:1958-)さんはNPO法人リカバリーの代表。『治療共同体実践ガイド』は「長きにわたる治療共同体の歴史・理念を跡づける理論的考察から、〔…〕精神科医療・司法領域・福祉領域の実践レポート、さらに治療共同体をサポートしてきた支援者たちによる回復の物語の記録まで、これまで十分には語られてこなかった治療共同体の方法論と新たな応用可能性を探る」もの(カバーソデ紹介文より)。編著者の藤岡淳子(ふじおか・じゅんこ)さんは大阪大学大学院人間科学研究科教授で一般社団法人もふもふネットの代表です。

★作品社さんの9~10月新刊より3点。『経済的理性の狂気』は『Marx, Capital and the Madness of Economic Reason』(Profile Books, 2017)の全訳。「グローバル資本主義が嘆かわしい状態にあって、理解しづらい軌道をたどっていることを考えると、マルクスが何とかして解明せんとしたものを再検討することは時宜にかなっているように思われる」(11頁)。「マルクスの資本の概念とその運動法則とされるものとを、どのように理解すべきなのか。理解できるとすれば、われわれは現状の窮地をどのように把握できるのか。これらが本書で検討する課題である」(15頁)。『オランダの文豪が見た大正の日本』はオランダの作家クペールス(Louis Couperus, 1863-1923)の紀行文『Nippon』(1925年)の訳書。1922年(大正11年)の春から夏にかけて5か月間、長崎、神戸、京都、箱根、東京、日光を旅行した記録で、ノスタルジックな写真70点も収録されています。箱根では富士屋ホテルに宿泊。『この社会で働くのはなぜ苦しいのか』は2010年から2017年にかけて『現代思想』誌などに寄稿してきた論考に書き落ろしを加えた一冊。単独著としては『臨床社会学ならこう考える――生き延びるための理論と実践』(青土社、2009年)以来の久しぶりのものです。

★藤原書店さんの10月新刊は3点。『道――自伝』は『全著作〈森繁久彌コレクション〉』全5巻の第1回配本となる第1巻。「道」の字はカバー表1の「自伝」の上に大きく空押し加工されています。自伝においては満州でソ連兵と対峙する場面など、読んでいる方も生きた心地がしませんが、歴史の一証言として読む価値があります。付属の「月報1」では、草笛光子、山藤章二、加藤登紀子、西郷輝彦の各氏の談話と寄稿が読めます。草笛さんはこうした著作集がなぜ今までなかったのか、とご立腹のご様子。『はぐくむ』は「中村桂子コレクション」全8巻の第3回配本。収録作品は書名のリンク先でご確認いただけます。付属の「月報3」には米本昌平、樺山紘一、玄侑宗久、上田美佐子の各氏が寄稿。『“フランスかぶれ”ニッポン』は京都大学名誉教授で経済学者の橘木俊詔(たちばなき・としあき:1943-)さんによるフランス論であり、フランス文化が近現代日本に与えたインパクトを分析する一書。

a0018105_03344027.jpg

+++


by urag | 2019-10-28 03:11 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 21日

月曜社2019年11月新刊:カール・ヤスパース『ニーチェ』佐藤真理人訳

2019年11月15日取次搬入予定*人文/ドイツ近現代哲学

ニーチェーー彼の〈哲学すること〉の理解への導き
カール・ヤスパース[著] 佐藤真理人[訳]
月曜社 2019年11月 本体:8,400円 A5判上製840頁 ISBN: 978-4-86503-081-5 C1010

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

内容:後世における数々の誤解に抗し、うわべの姿を払拭してその哲学の内実を浮かび上がらせる、大著の半世紀ぶりの新訳。限界と根源とへと突き進んだ人間存在そのものの一つの運命がここにひもとかれる。ニーチェの引用をグロイター社の新ニーチェ全集と照合させた労作。(既訳:『ニーチェ』上下巻、草薙正夫訳、理想社版『ヤスパース選集』第18~19巻、1966~1967年)【シリーズ・古典転生、第20回配本、本巻19】

主要目次:第一版の序文|第二版と第三版の序文|序論|第一部 ニーチェの生|第二部 ニーチェの根本思想|第三部 実存の全体におけるニーチェの思惟様式|年譜|著作遺稿年表|書誌|訳者あとがき|索引(人名・事項)

原著:Nietzsche: Einführung in das Verständnis seines Philosophierens, De Gruyter, 3te Aufl., 1950 (1936).

カール・ヤスパース(Karl Jaspers, 1883-1969)ドイツの哲学者。精神病理学者として出発し、大きな業績を残す。心理学を経て哲学に転じ、広く深い哲学史的知識を下地として、キルケゴールとニーチェの強い影響の下に、『哲学』(全3巻、1932年)によって実存哲学を大成した。現在、スイス・シュヴァーベ社からヤスパース全集が刊行中である。

佐藤真理人(さとう・まりと、1948-)哲学研究者。早稲田大学名誉教授。主な研究分野は独仏実存哲学。近年の著訳書にミケル・デュフレンヌ/ポール・リクール『カール・ヤスパースと実存哲学』(月曜社、2013年)、『交域する哲学』(共著、月曜社、2018年)がある。

a0018105_12393522.jpg


by urag | 2019-10-21 12:39 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 20日

注目新刊:ユング『分析心理学セミナー ――1925年、チューリッヒ』みすず書房、ほか

a0018105_01114699.jpg


分析心理学セミナー ――1925年、チューリッヒ』カール・グスタフ・ユング著、ソヌ・シャムダサーニ/ウィリアム・マガイアー編、横山博監訳、大塚紳一郎/河合麻衣子/小林泰斗訳、みすず書房、2019年10月、本体3,600円、四六判296頁、ISBN978-4-622-08843-1
人種と歴史/人種と文化』クロード・レヴィ=ストロース著、ミシェル・イザール序文、渡辺公三/三保元/福田素子訳、みすず書房、2019年10月、本体3,600円、四六判上製152頁、ISBN 978-4-622-08850-9
AI以後――変貌するテクノロジーの危機と希望』丸山俊一/NHK取材班編著、NHK出版新書、2019年10月、本体800円、新書判208頁、ISBN978-4-14-088603-8
キリスト教の合理性』ジョン・ロック著、加藤節訳、岩波文庫、2019年10月、本体1,010円、文庫判400頁、ISBN978-4-00-340079-1
柄谷行人浅田彰全対話』柄谷行人/浅田彰著、講談社文芸文庫、2019年10月、本体1,800円、A6判256頁、ISBN978-4-06-517527-9

★『分析心理学セミナー ――1925年、チューリッヒ』は『分析心理学セミナー1925――ユング心理学のはじまり』(河合俊雄監訳、猪股剛/小木曽由佳/宮澤淳滋/鹿野友章訳、創元社、2019年6月)と同じ原書(1989/2012年)の新訳。訳者あとがきによれば諸事情があったようで、非独占の形態で版権を取得され、創元社版との共存が果たされました。読者にとってみれば二書を読み比べる中で得るものがあるはずですし、歓迎したいと思います。個人的にはむしろこの二書を併せてご購読いただくことをお薦めしたいです。ここでは出版社の視点から、帯文を比べてみます。目次はそれぞれの書名のリンク先でご確認いただけます。

創元社版:『赤の書』はこうして分析心理学になった! 心理学は、「人生を豊かにする」学問である――ユングが生き生きと語りだしたみずからの心理学の生成過程とは? 世界が待ち望んだユング心理学の新しい入門書。

みすず書房版:無意識との対決から超越機能へ。ユング自らが生き生きと語ったフロイト、『赤の書』、タイプ論。最良の手引きと呼ぶべき、ユング心理学誕生のドキュメンタリ。

★『赤の書』が創元社より、『ユング自伝』や『タイプ論』がみすず書房より、それぞれ刊行されており、二社にとって意義深い出版となっているのが分かります。ユングにはまだ未訳の著作が残っているので、「ユング・コレクション」の人文書院さんを含め、ぜひ各社さんのさらなるご尽力を期待したいと思います。

★『人種と歴史/人種と文化』は『Race et Histoire, Race et Culture』(Albin Michel / UNESCO, 2001)の全訳。『人種と歴史』は、原書がもともと「1952年、ユネスコの依頼で書かれた、人種差別の偏見とたたかう小冊子シリーズの一冊であり、キャンペーンの背景にはナチス・ドイツの人種理論の根絶という戦後の切迫した問題意識があった」(カバー表4紹介文より)と。既訳書としては、荒川幾男訳がみすず書房より1970年に刊行されています(2008年新装版を最後に品切)。今回の新訳は渡辺公三さんの遺稿であり、西成彦さんが校閲されたとのことです。『人種と文化』は既刊書『はるかなる視線(I)』(みすず書房、1986年)の第一章「人種と文化」を、訳者である三保さんの許諾のもとに再録したもの。編集部による巻末特記によれば「表記等を若干改めた箇所がある」そうです。荒川訳『人種と歴史』では巻末に、フランスの民族学者であり哲学者のジャン・プイヨン(Jean Pouillon, 1916-2002)による「クロード・レヴィ=ストロースの業績」が収められていましたが、今回の新訳では巻頭にフランスの人類学者であるミシェル・イザール(Michel Izard, 1931-2012)による「序文」が配されています。

★『AI以後』は帯文に曰く「世界の異能の知性が語る、人類とAIをめぐる最先端のビジョン」。今夏全5回でNHKEテレにて放送された「超AI入門特別編 世界の知性が語るパラダイム転換」の書籍化です。宇宙物理学者マックス・テグマーク、倫理学者ウェンデル・ウォラック、哲学者ダニエル・デネット、「WIRED」元編集長ケヴィン・ケリーへのインタヴューに、NHKのプロデューサー丸山俊一さんによる「終章」と「あとがきにかえて」を加えたもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。興味深い知見に満ちた一冊ですが、中でも印象的だったもののひとつがデネットの次の言葉でした。

★「AIが自律性を持てば、私たちに隠しごとをするようになるでしょう。自立したエージェントは他のエージェントに自分の考えていることを悟られないようにするからです。ですから意識を持った、独自の意識をもって会話することのできるAIをつくろうとするならば、「神が人間に言葉を与えたのは、互いの考えていることを隠すためである」という、かのタレーランの名言を思い出すべきです。この皮肉な言葉には深い示唆があります。意識を持ったAIが非常に率直で、誠実で、全く裏表のないものになることは期待できません。真の意識とは相反する性質だからです。そのため非常に気をつけなければなりません。/私たちは、同じ人間同士でさえ協力や善意を受けるのにずいぶんと苦労しています。そこに自律型エージェントというカテゴリーが加わったら、ますます面倒なことになります。人間より素早く考えることができ、人間との共通点もあまりないからです。それが、人間と同等、またはより賢い知的エージェントをつくることに非常に慎重であるべきだと私が考える主な理由です」(103~104頁)。

★『キリスト教の合理性』は『The Reasonableness of Christianity, as Delivered in the Scriptures』(原題:聖書に述べられたキリスト教の合理性)の新訳。既訳には『キリスト教の合理性・奇跡論』(服部知文訳、岬書房、1970年;改訂版、国文社、1980年)があります。「ロック晩年の重要作。〔…〕理神論への道を開いた、ヨーロッパの宗教思想史を語るうえで不可欠の書」と帯文に謳われています。巻末の訳者解説では「敬虔なキリスト教徒であったロックが、なぜ、晩年になって、キリスト教とは何かを問わなければならなかったか」に焦点があてられ、晩年のロックの思想が整理されています。岩波文庫での加藤さんによるロックの訳書は、2010年の『完訳 統治二論』と2018年の『寛容についての手紙』に続いて3点目となります。

★『柄谷行人浅田彰全対話』は、柄谷さんの『ダイアローグⅢ』(第三文明社、1987年)や『ダイアローグⅣ』(第三文明社、1991年)、浅田彰さんの『「歴史の終わり」を超えて』(小学館、1994年;中公文庫、1999年)に収録されたもののほか、単行本未収録の雑誌対談を加え、全6本を1冊にまとめたもの。お二人の他に鼎談者がいるような座談会は収録していません。巻末に、柄谷さんによる「浅田彰と私」という一文が添えられています。末尾に次のような印象的な言葉が刻まれています。「彼は私にとって最高のパートナーであった。漫才でいえば、私はボケで、彼はツッコミである。あらゆる面で助けられた。私が思いついた、いい加減な、あやふやでしかない考えが、彼の整理によって、見違えるようになったことも何度もある。また、アメリカでもフランスでも、彼の言語能力と当意即妙の判断力にどれだけ助けられたことだろう。/「批評空間」をやめて以後、私はまた、対談や座談会が苦手になった。その意味では、元の自分に戻ったといえるかもしれない」(243頁)。

★講談社文芸文庫での柄谷さんの「全対話」には、2011年の『柄谷行人中上健次全対話』、2013年の『柄谷行人蓮實重彦全対話』があり、講談社さんの単行本では2018年の『大江健三郎 柄谷行人 全対話――世界と日本と日本人』があります。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

現代思想からの動物論――戦争・主権・生政治』ディネシュ・J・ワディウェル著、井上太一訳、人文書院、2019年10月、本体3,500円、4-6判並製410頁、ISBN978-4-409-03105-6
多田尋子小説集 体温』多田尋子著、書誌汽水域、2019年10月、本体1,800円、四六判上製224頁、ISBN978-4-9908899-2-0

★『現代思想からの動物論』は、オランダの出版社Brillのシリーズ「Critical Animal Studies」で2015年に刊行された『The War against Animals』の全訳。ワディウェル(Dinesh Joseph Wadiwel)はオーストラリアの人権・社会法学者で、今回の訳書が日本初訳となります。帯文に曰く「あらゆる権力支配の基盤に、人間による動物支配をみる力作。人文学の動物論的転回」。「生政治」「征服」「私的支配」「主権」の4部構成。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「本書の中で筆者は、人間と人外の力関係を規定する合理性を組織的次元で捉え、この関係を形づくる支配の様態と率直に向き合うことを試みる。人間と動物の政治関係を筆者は慎重に見取り図の形で示すが、この記述は私たち人間がみずからをどう見たがるかを離れ、私たちが自身らの支配する動物たちからどう見られているかを想像しようと努める。畢竟、暴力はそれを行使する者の視点からではなく、その威力を被る者の主体性を通してのみ理解しうる。〔…本書の原題〕『動物たちとの戦争』は最低でも、人間動物関係を親切、自然、ないし互恵的とみる主流言説の中和剤となる」(「日本語版まえがき」、2頁)。「世界規模でみれば、私たちの主要な動物利用の形態は、根深い敵意、暴力、支配の様態を映し出している」(同、3頁)。

★「本書の狙いは、理論的角度から人間動物関係をめぐる私たちの理解を揺さぶり問うた上で、この関係を彩る暴力の認識と克服へ向けた枠組みを示すことにあった。筆者が試みたのは以下のこととなる。/一、人間動物関係を戦争という観点から捉える。〔…〕二、動物たちとの戦争を目立って生政治的色彩の濃いものと理解する。〔…〕三、対動物戦争が継続的な日々の征服行為を伴うと認識する。〔…〕四、動物に対する人間の主権を概念化し、動物の主権に向けて考察を始める」(終章「停戦」、357~359頁)。「多くの人々は人間が動物たちに振るう暴力の広がりを直視または論評せず、大勢が楽しむ伴侶動物らとの関係は、愛と互恵と無支配に彩られているとみえる。が、本書は違う見方を示す」(「日本語版まえがき」、2頁)。日本においても本書の議論は様々な反響を呼ぶのではないかと予想できます。

★『多田尋子小説集 体温』は、書誌汽水域さんによる書籍第3弾。作家の多田尋子(ただ・ひろこ:1932-)さんの小説3編を収めた「ままならない大人の恋を描いた恋愛小説集」(カバー紹介文より)。「体温」(「群像」1991年6月号)、「秘密」(「群像」1992年10月号)、「単身者たち」(「海燕」1988年11月号)を収録(ちなみに講談社より1992年に刊行された作品集『体温』では「やさしい男」「焚火」「オンドルのある家」「体温」が収録されています)。新たに付された「あとがき」には自著の久しぶりの復刊に驚きを隠せない著者の心情が綴られています。投げ込みで「あなたの温もり、あなたとの距離」という11頁の冊子があり、大塚真祐子さん(三省堂書店成城店)、八木寧子さん(湘南蔦屋書店)と、発行者で書店員の北田博充さんのお三方による、本書をめぐるエッセイ3編が掲載されています。また、同名のチラシ(二子玉川・蔦屋家電にて無料配布中)では、多田作品との併読をお薦めする恋愛小説8作品を北田さんが紹介されています。多田さんは54歳から63歳までの活動期間中、芥川賞に歴代最多となる6度ノミネートされています。それから約4半世紀、書店員さんの努力によって名編が甦ったことは特筆に値すると思います。

+++


by urag | 2019-10-20 23:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 17日

「図書新聞」にラミング『私の肌の砦の中で』の書評

弊社5月刊、ジョージ・ラミング『私の肌の砦の中で』(吉田裕訳)の書評「作家が育った二十世紀前半のバルバドスの社会状況が反映――今年はカリブ海の翻訳小説の当たり年だ」が「図書新聞」2019年10月19日号1面に掲載されました。評者は大辻都さんです。「本書はポストコロニアル批評で知られるジョージ・ラミングの小説第一作である。自伝的要素も多く、作品には作家が育った二十世紀前半のバルバドスの社会状況が反映しているようだ。今年は本書のほか、ジョゼフ・ベル『黒人小屋通り』、マーロン・ジェイムズの『七つの殺人に関する簡素な記憶』、そしてエドゥアール・グリッサンの『第四世紀』など新旧取り混ぜ、久しぶりにカリブ海の翻訳小説の当たり年だと言える。未体験の読者はこの機会に手にとり、カリブ世界を体感してみてはどうだろうか」とご紹介いただきました。

by urag | 2019-10-17 22:47 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 14日

注目新刊:安藤礼二『列島祝祭論』作品社、ほか

a0018105_03070385.jpg


★まず最初にここ最近で出会った新刊を列記します。

列島祝祭論』安藤礼二著、作品社、2019年10月、本体2,600円、46判上製364頁、ISBN978-4-86182-773-0
ともがら(朋輩)』中原文夫著、作品社、2019年10月、本体1,100円 46判上製104頁、ISBN978-4-86182-780-8
東洋/西洋を越境する――金森修科学論翻訳集』金森修著、小松美彦/坂野徹/隠岐さや香編、読書人、2019年10月、本体3,800円、四六判上製272頁、ISBN978-4-924671-41-6
贈与論――資本主義を突き抜けるための哲学』岩野卓司著、青土社、2019年9月、本体2,800円、四六判並製340頁、ISBN978-4-7917-7213-1

★『列島祝祭論』は、文芸評論家で多摩美術大学准教授の安藤礼二(あんどう・れいじ:1967-)さんが集英社の月刊文芸誌「すばる」に連載した「列島祝祭論」(全25回、2016年7月号~2018年9月号)が元になっており、それに加筆修正を加えて一冊としたものです。主要目次は以下の通り。

翁の変容
翁の発生
国栖
小角
修験
空海
天台
一遍
後醍醐
後記 後醍醐から現在へ
古典作品からの引用および謝辞
人名索引

★「現在を知り、現在を根本から変革していくためには政治の革命、現実の革命のみならず宗教の革命、解釈の革命こそが必要なのである。その系譜を知り、理論においても実践においても、引き継ぐことが必要なのである。そのために列島の祝祭の起源、その原型にさかのぼる必要がある。近代的な天皇の起源である中世的な天皇にさかのぼり、さらには天皇という概念そのものをいったん解体してしまう必要がある。再構築は、あるいは脱構築は、そうした徹底的な解体、解釈の――批評の――徹底からしか生まれないであろう」(348頁)。

★『ともがら』は、小説家・中原文夫(なかはら・ふみお:1949-)さんによる書き下ろし小説。「熟年で緊迫する生の葛藤、迷走する二人の奇妙な交感」と帯文にはあります。二人というのは、主人公の男性「水野」と、その学生時代の友人で、病院で偶然主人公と再会したもう一人の男性のことです。人生の黄昏時の風景が淡々と描かれています。「周りから侮られているような気がして、しばらく体を強張らせていた水野は、ここは開き直る時だと思い立ち、背に浴びる視線を弾いてにらみ返すつもりで勢い込んで後ろに振り向いた。だが、彼の独り相撲をあざ笑うかのように、すでに誰の視野にも水野は入っておらず、何事もなかったような談笑の渦が目の前にあった。拍子抜けした水野は前に向き直って目をつむり、腕を組んでうなだれた」(90頁)。

★『東洋/西洋を越境する』は、科学思想史家の金森修(かなもり・おさむ:1954-2016)さんが1995年から2013年にかけてフランス語で公刊してきた8つの論考を、隠岐さや香、近藤和敬、山口裕之、東慎一郎、田中祐理子、香川知晶、田口卓臣、の各氏が日本語訳して1冊としたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭には東京大学名誉教授・芳賀徹さんによる「推薦の辞――越境のスリル、そして輝き」と、編者代表の小松美彦さんによる「まえがき」が配され、巻末に全業績一覧と略年譜が掲出されています。科学史の偉大な先達である伊東俊太郎さんは「若くしてフランスに留学し、かの地の科学思想を研究し、それを我が国に本格的に紹介し発展させた夭折の英才は、また日本の思想にも鋭い考察の眼を向けていた。東西にまたがる注目すべき学究の力技の成果を、広く世に推したい」と帯に推薦文を寄せておられます。

★『贈与論』は、『ジョルジュ・バタイユ――神秘経験をめぐる思想の限界と新たな可能性』(水声社、2010年)、『贈与の哲学――ジャン=リュック・マリオンの思想』(明治大学出版会、2014年)に続く、明治大学教授・岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さんの3冊目の単独著。白水社の月刊誌「ふらんす」での連載「新・呪われた部分――贈与に憑かれた思想家たち」(全12回、2015年4月号~2016年3月号)を全面的に加筆改稿し、書き下ろしを加えたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「商取引としての交換、互酬的な贈与交換、返礼なき贈与は、これからの世の中で、ひとつに還元されることなく、お互いに関係をもちながら、それぞれの役割を果たしていくことになる。これらの多様な交換と贈与の現象を、僕らは交換、贈与と返礼、貸し借りといった解釈の次元にとどまらず、もっと根本から考えていくべきである。そしてその根本は、動物や人間の動物性とも深くかかわっており、人間と動物の関係の問い直しにもつながってくるのだ」(273頁)。「来るべき世紀は贈与の思想から始まることになるだろう」(276頁)。中沢新一さんは本書への推薦文のなかで「贈与は一貫してフランス思想の通奏低音であった。〔…〕現代フランス思想を読み解く鍵は実に贈与の中にある」と記されています。

★続いて、しばらく言及できていなかったここ数か月の注目既刊書から何点か列記します。

ジョン・ケージ 作曲家の告白』ジョン・ケージ著、大西穣訳、アルテスパブリッシング、2019年7月、本体1,600円、小B6判上製128頁、ISBN978-4-86559-206-1 
シュタイナーの瞑想法 秘教講義3』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳、春秋社、2019年6月、本体2,400円、四六判上製216頁、ISBN978-4-393-32549-0
シュタイナーの瞑想・修行論 秘教講義4』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳、春秋社、2019年7月、本体4,800円、四六判上製576頁、ISBN978-4-393-32550-6
インテグラル理論』ケン・ウィルバー著、加藤洋平監訳、門林奨訳、日本能率協会マネジメントセンター、2019年6月、本体2,800円、A5判変型並製408頁、ISBN978-4-8207-2734-7

★『ジョン・ケージ 作曲家の告白』は、ナショナル・インターカレジエイト・アーツ・カンファレンスでの講演「作曲家の告白」(1948年)と、京都賞受賞講演「自叙伝」(1989年)の2本を収めた日本版オリジナルの自伝的講演集。前者から印象的な言葉を引きます。

★「パーソナリティには二つの主要な部分があります。私たちのほとんどは、無数の方法と方向性によって意識と無意識が分け隔てられています。音楽の機能は、他のあらゆる健康的な時間の使用と同様に、分離されたそれらを、もう一度繋げ合わせようよすることにあります。時空間への意識が喪失するとき、個人を作る複数の要素が統合され、音楽が人を一つにする瞬間を提供するのです。これは、音楽があり、怠惰で注意散漫にならないように気をつけてさえいれば、生じることです。/今日、多くの人々の時間の使用は、健康的でないどころか、実践することで病気になってしまうような代物です。なぜならそれは、個人の一部分を発展はさせますが、他の部分には害を与えるからです。もたらされた不調は、当初は心理的なものであり、人は仕事から離れ、休暇をとることによってそれを除去しようとします。しかし結局は上手くいかず、しまいに病気は全体の組織を攻撃するようになるのです」(48頁)。

★「神経症は、作曲を制止させ、阻止する振る舞いをします。作曲が可能であるということ、それはこの障害が克服されたことを意味します。/東洋世界で言われているように、無私に、つまり金や名誉を気にかけることなく、単純に作ること自体を愛することから作曲を始めるならば、それは統合的な活動であり、人はその一生の瞬間に、完璧で満たされていると感じるでしょう。ときに作曲することによって、ときに楽器を演奏することによって、ときに単純に聴くことによって、これが生じるのです」(49頁)。

★『シュタイナーの瞑想法 秘教講義3』は帯文に曰く「1903年から09年までの、神智学協会での秘教講義と、個人的な瞑想指導の記録」。「朝と夜の主要練習」より、「朝」のパートを引きます。「目が覚めたら、できるだけすぐに、一切の外から来る感覚印象と一切の日常生活の記憶とから注意を引き離す。この空になった魂の中をまず「しずけさ」(Ruhe)という思いで充たす。この「しずけさ」の思いがからだ中に浸透するようでなければならない。/しかし、これはごくわずかな間(二秒から五秒まで)に生じる。次に、ほぼ五分間、魂を次の七行のマントラで充たす。/光を放射するすがたかたち/霊の輝く波立つ海/魂はあなたたちから離れた/魂は神性の下にいた/魂の本性がそこにやすらいでいた/生存の外皮の領界へ/私の「自我」は意識して歩み入る」(73~74頁)。さらにこの先にも重要なインストラクションがありますが、それは本書の現物をご確認下さい。

★『シュタイナーの瞑想・修行論 秘教講義4』は帯文に曰く「4つの重要な著作と講演を収録」。『人間の自己認識へのひとつの道――八つの瞑想』(1912年刊)、『オカルト上の進歩の意味 全十講』(1913年連続講義)、『霊界の境域――格言風の考察』(1913年刊)、『人智学 21年後の総括――同時に世界の前でそれを代表するときのための指針 全九講』(1924年連続講義)。シュタイナーは人智学を「現代の人間賛歌」なのだと説きます(「人智学 21年後の総括」第一講、376頁)。「人智学協会は人びとの心のもっとも深い憧れを人びとに語らしめる道を見出さなければなりません。そのときこそ、人びとの心は、この上なく深い憧れと共に答えを求め続けることでしょう」(同頁)。付録として訳者の高橋巖さんの講演「人智学とは」(2018年12月23日、京都)が収められています。『秘教講義』第3巻と第4巻の巻末解説はそもに飯塚立人さんがお書きになっています。

★『インテグラル理論』は『A Theory of Everything: An Integral Vision for Business, Politics, Science and Spirituality』(Shambhala Publications, 2000)の訳書で、『万物の理論――ビジネス・政治・科学からスピリチュアリティまで』(トランスビュー、2002年)の全面的改訳版です。発売2か月となる8月末時点で3刷を数えています。数多くあるウィルバー(Kenneth Earl "Ken" Wilber Junior, 1949-)の著書の中でも代表的な主著と言っていいと思います。帯文に曰く「「ティール組織」のベースにもなった未来型パラダイムの入門書」と。かのフレデリック・ラルーによるベストセラー『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版、2018年)に、ウィルバーによる「本書に寄せて」という一文が収録されているのは、周知の通りです。

★今回の改訳版の第5章「インテグラル理論を活用する」から引きます。「私の見解では、人々が苦しむ原因として、リベラル派は外面的な要因を重視しがちであり、保守派は内面的な要因を重視しがちなのだ。言い換えれば、誰かが苦しんでいるとき、典型的なリベラル派は外面的な社会制度を非難する傾向にあり(「あなたが貧乏な生活を送っているのは、社会によって不公平な扱いを受けているからだ」)、それに対して、典型的な保守派は、内面的な要因を非難する傾向にある(「あなたが貧乏な生活を送っているのは、あなたが怠け者だからだ」)」(208頁)。「大事な点はこうだ。統合的な政治、リベラル派の最良の部分と保守派の最良をひとつに結びつける政治を実現するための第一歩は、内面象限の原因と外面象限の原因の両方が、等しく現実のものであり、等しく重要であるということを認識することなのである。〔…〕要するに、真に統合的な政治は、内面領域の発達と外面領域の発達の両方を重視するものになるはずなのである」(209頁)。

★これは『エデンから――超意識への道』(松尾弌之訳、講談社、1986年、絶版;原著『Up from Eden: A Transpersonal View of Human Evolution』初版1981年、新版1996年)の最終章でも論及されていたことですが、残念ながら訳書はとうの昔に絶版になっており、古書価が高止まりしているように見受けます。ちなみにウィルバーの訳書は一度も文庫化されていません。分断と断片化の時代においてウィルバーの思索と探求は忘却すべきではないもののひとつです。

+++


by urag | 2019-10-14 23:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 10日

重版情報:3刷出来、森山大道『犬と網タイツ』月曜社

森山大道写真集『犬と網タイツ』(月曜社、2015年10月)の3刷が10月10日にできあがりました。
a0018105_16132479.jpg


by urag | 2019-10-10 16:08 | 重版情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 07日

月曜社11月新刊:ラシード・ブージェドラ『ジブラルタルの征服』

2018年11月1日取次搬入予定 *文芸/外国文学・マグレブ文学

ジブラルタルの征服
ラシード・ブージェドラ[著] 下境真由美[訳]
月曜社 2019年11月 本体:3,000円 46判並製292頁 ISBN: 978-4-86503-086-0

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

黄色、それから黄色っぽい色、そしてまた黄色……アルジェリアを舞台に過去と現在、歴史と虚構が交錯し、再説されるたびに差異を孕み、ズレが生じていく。真偽をめぐる境界の曖昧さのアレゴリーと、フィクションによる史実の征服。精密かつ流麗な仕掛けが動き出す。小説とはつまり挑発であり挑戦なのだ。冒険は読者とともに始まるだろう。複数の言語が入り乱れるマグレブ文学の快作。【叢書・エクリチュールの冒険、第14回配本】

冒頭部分より:
黄色、それから黄色っぽい色、そしてまた黄色。クレーン、というよりむしろもっと具体的には、まるで空と―― 一般に――呼ばれているものからおおよそなりたっている青い物質の中を突進する矢のように往来をやめない、等距離間を駆けめぐるのをやめないアームが空中に飛び出す。空をかき回し、掃き出し、まるで――クレーンのアームは――押しのけられた翼のように――いずれにせよ――台座の先で動き回っているのだが、その台座をなしているもう一方の翼からは、完全に独立して勝手に動いている。台座は地面に固定されているというか、それよりも――むしろ――つながれているかのようだ。そのせいでクレーンの腕は、もつれた紺碧の一種の天の布地の中にもろに浸っているかのように見える。そして、いわば正方形、長方形、菱形、円形等々にこの布地を分断し、ゆったりと、機械的で、反復的で、同一の大きな動きを見せている。そして何といっても黄色。それから黄色っぽい色。そしてまた黄色! 太陽の前を通るたびに、影の中を通るたびに。絶え間なく繰り返される往来は、金槌の一撃でへこまされたかのように、多少いびつだったり多少平板だったりする楕円形をした一種の円形に沿っている。この楕円は変形し、平らにされ、幾分押しつぶされたように、少々膨張している。その一方で、クレーンの固定された部分は足かせをはめられたかのように、永久に不動でいることを強制されているかのように、縛りつけられ、ロープでくくりつけられ、紐で結わえつけられ、ケーブル、平衡錘、留め具によって重くなり、地面に奥深く埋め込まれた根のように見える。・・・

原著:La prise de Gibraltar, Denoël, 1987 (MAARAKAT AZZOUKAK, ENAL, 1986).

ラシード・ブージェドラ(Rachid Boudjedra)1941年、アルジェリア東部のアイン・バイダに生まれる。1969 年、小説第一作『離縁』がフランスで「恐るべき子供たち賞」を獲得し、一躍注目を集めるが、アルジェリアで発禁となり、パリに亡命。1972年から1975年までをモロッコのラバトで過ごしたのち、アルジェリアに帰国。小説の他、詩、戯曲、エッセーと幅広い活動を繰り広げ、現在アルジェリアを代表する作家の1 人である。訳書に『離縁』(福田育弘訳、国書刊行会、1999年)がある。

下境真由美(しもさかい・まゆみ)セルジー・ポントワーズ大学にて博士号取得(比較文学)。現在、オルレアン大学准教授。フランス語圏マグレブ文学、ポスト・コロニアル文学、比較文学専攻。訳書にラシード・ミムニ『部族の誇り』(水声社、2018年)がある。

a0018105_23563251.png




by urag | 2019-10-07 23:59 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 10月 07日

続報:ブックフェア「『ブルーノ・ラトゥールの取説』をより深く読むために」

ブックファースト新宿店地下1階Bゾーン人文書売場にて好評開催中のブックフェア「『ブルーノ・ラトゥールの取説』をより深く読むために」に、久保明教さん選書による10点が加わっています。フェアは10月15日(月)まで開催予定です。

a0018105_23475626.jpg

a0018105_23490746.jpg
a0018105_23501533.jpg

by urag | 2019-10-07 23:50 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)