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2019年 09月 29日

注目新刊:チャペック『独裁者のブーツ』共和国、ほか

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ライプニッツ著作集 第I期 新装版[9]後期哲学』G・W・ライプニッツ著、西谷裕作/米山 優/佐々木能章訳、工作舎、2019年9月、本体9,500円、A5判上製456頁+手稿8頁、ISBN978-4-87502-512-2
マクティーグ――サンフランシスコの物語』フランク・ノリス著、高野泰志訳、幻戯書房、2019年9月、本体4,000円、四六変上製502頁、ISBN978-4-86488-178-4
独裁者のブーツ――イラストは抵抗する』ヨゼフ・チャペック著、増田幸弘/増田集編訳、共和国、2019年9月、本体2,500円、菊変型判上製180頁、ISBN978-4-907986-63-6
靖国を問う――遺児集団参拝と強制合祀』松岡勲著、航思社、2019年9月、本体2,200円、四六判上製232頁、ISBN978-4-906738-40-3
時宗年表』髙野修/長澤昌幸編、平凡社、2019年9月、本体4,600円、A5判上製240頁、ISBN978-4-582-70360-3
現代思想2019年10月号 特集=コンプライアンス社会』青土社、2019年9月、本体1,400円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1387-5
フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』ジョン・コルベット著、工藤遥訳、カンパニー社、2019年9月、本体1,600円、小B6判並製168頁、ISBN978-4-910065-00-7
ヴァルター・ベンヤミン――闇を歩く批評』柿木伸之著、岩波新書、2019年9月、本体860円、新書判並製240頁、ISBN978-4-00-431797-5
読書実録』保坂和志著、河出書房新社、2019年9月、本体1,800円、46変形判上製216頁、ISBN978-4-309-02829-3
書くこと 生きること』ダニー・ラフェリエール著、小倉和子訳、藤原書店、2019年9月、本体2,800円、四六判上製400頁、ISBN978-4-86578-234-9
メアリ・ビーアドと女性史――日本女性の真力を発掘した米歴史家』上村千賀子著、藤原書店、2019年9月、本体3,600円、四六上製416頁/口絵8頁、ISBN978-4-86578-241-7
いのちの森づくり――宮脇昭 自伝』宮脇昭著、藤原書店、2019年9月、本体2,600円、四六変判上製424頁、ISBN978-4-86578-230-1
兜太 TOTA vol.3〈特集〉キーンと兜太――俳句の国際性(Sept. 2019)』藤原書店、2019年9月、本体1,800円、A5並製200頁/カラー口絵8頁、ISBN978-4-86578-240-0

★『ライプニッツ著作集 第I期 新装版[9]後期哲学』は第7回配本。「モナドロジー」(1714年、西谷裕作訳)を含む8篇(うち書簡集が3篇)が収められています。解説によれば「モナドロジー」は「ほぼ同時に書かれた「理性に基づく自然と恩寵の原理」〔同じく第9巻所収〕とともに、彼〔ライプニッツ〕の最晩年の思想を全般的かつ簡潔に示したものであり、彼の「哲学的遺著」といわれている」。「ライプニッツは、必要あるときは「予定調和論者」という筆名を使い、自分の学説を「モナドロジー」と読んだことは一度もなく、本書の草稿類も標題をもっていない。この名の由来は、1720年ケーラーがみずから作ったと思われる写本をもとにして、本書のドイツ語訳を『モナドロギーについての教説』という標題のもとに発表したことによる」(242頁)。新装版第Ⅰ期は、あと第1巻『論理学』の配本の残すのみとなりました。

★『マクティーグ』は「ルリユール叢書」の第2回配本。著者のフランク・ノリス(Frank Norris, 1870-1902)はアメリカの小説家で、訳書は何点かありますがいずれも古い書目で品切。『マクティーグ』の原書『McTeague: A Story of San Francisco』は1899年刊で、既訳に『死の谷――マクティーグ』(上下巻、石田英二/井上宗次訳、岩波文庫、1957年) があります。帯文に曰く「ゾラをも凌ぐアメリカ自然主義の最高の宿命小説。怪物シュトロハイムに映画「グリード」〔1922年〕を作らせた、ノアール文学の先駆的作品」。同時代の作家シオドア・ドライサーは本作を「偉大な小説」と讃えています。

★『独裁者のブーツ』は「チャペック(1887-1945)による、反戦/反ナチ/反ファシズムをテーマとしたイラストや諷刺画・戯画を集めた、日本語版オリジナル編集」(凡例より)。表題作の「独裁者のブーツ」(1937年)への序において、詩人であり評論家のヨゼフ・ホラはこう述べています。「いくつかの国では、知性の光があることで安心しきった国民が自分の考えをもつことに臆病になり、なにも考えずにしたがわされてきた。高い台座にある一側の独裁者のブーツを絶えず仰ぎ見てしたがっていれば、国民はなにも考えずにすむ。〔…〕当然だ。無秩序な状況では、どんな世界でも秩序について語る。国民には秩序が必要で、権力に憑依された独裁者の靴が何百万という民衆の靴に催眠術をかけ、壮大な行進を指揮する」(11頁)。「独裁者のブーツは、国民を支配下に置くがために彼らに愛国心と純血主義が欠けていると責めたて、簡単な仕事だとだまして英雄的に活躍したいという本能を食いものにしてきた」(12頁)。「時代を代表するイラストレーターは、独裁者の靴の身振りをとらえるたびに悪夢にさいなまれていたようだ。しかし、そうではない! それはチャペックの悪夢ではなく、私たちすべてに横たわる悪夢なの」だ(同頁)。

★『靖国を問う』は、高槻市の小中学校や京都・大阪の大学で教職を長らく務め、靖国合祀取消訴訟や、安倍首相参拝違憲訴訟の原告団に加わってきた松岡勲(まつおか・いさお:1944-)さんの初めての単独著。「戦争遺児の靖国集団参拝」と「靖国強制合祀と戦争体験の継承」の2部構成。「反天皇制市民1700」誌での連載が元になっているとのことです。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「今回明らかにできたのは、戦前・戦後の遺族援護機構の継続関係、地方組織での連続性(連隊区司令部から民生部世話課への移行)だった。今後はさらに地方の遺族会結成時での戦前の人脈との関係(軍人援護会、軍隊等)について調べたい」とあとがきにあります。

★『時宗年表』は北条時宗(ときむね)の年表ではなく、踊念仏で有名な鎌倉仏教の一派、時宗(じしゅう)についての年表。開祖は一遍(いっぺん:1239-1289)。巻頭の「はしがき」によれば本書は、望月崋山編『時衆年表』(角川書店、1970年)以後の研究成果を反映させた成果とのこと。特徴として以下の3点が帯(表4)に掲出されています。「この半世紀の日本史研究、時宗研究の進展を十全に反映」、「1200年代諸島から2019年4月まで、800年にわたる時宗教団関係記事を収載」、「西暦・和暦・干支・天皇・将軍を記し、浄土教関係に力点を置きつつ災害や世相など日本史関係記事も併載」。

★『現代思想2019年10月号』の特集は「コンプライアンス社会」。石戸諭さんと武田砂鉄さんによる討議「オピニオン/ファクトとどう向き合うのか――メディアとコンプライアンスの過去・現在・未来」をはじめ、20篇の論考を収録。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。デヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ現象について」(芳賀達彦/酒井隆史訳、45~52頁)はグレーバーの単著へと続くその端緒となった論考です。樫村愛子さんは「「あいちトリエンナーレ2019」におけるコンプライアンス」という論考を寄稿されています(70~75頁)。 

★『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』は、アメリカの音楽批評家であり、ミュージシャン、プロデューサー、キュレーターでもあるジョン・コルベット(John Corbett, 1963-)による『A Listener's Guide to Free Improvisation』(University of Chicago Press, 2016)の訳書。附録として、音楽批評家の細田成嗣(ほそだ・なるし:1989-)さんの選書・選盤による「飽き足らない即興音楽の探索者たちのために」が付されています。訳者の工藤遥(くどう・はるか:1986-さんが運営するカンパニー社さんの書籍第一弾で、扱い書店は書名のリンク先に記載されています。リンク先では、本書に対する大友良英さん、佐々木敦さん、毛利嘉孝さんの推薦文も読むことができます。

★『ヴァルター・ベンヤミン』は広島市立大学教授の柿木伸之(かきぎ・のぶゆき:1970-)さんの初めての新書。ベンヤミン論としては『ベンヤミンの言語哲学――翻訳としての言語、想起からの歴史』(平凡社、2014年)に続くものです。「時代と斬り結ぶベンヤミンの批評的な思考は、言語、芸術、そして歴史への根底的な問いに収斂するにちがいない。これらの事柄への問いを掘り下げることは、二十一世紀の今ここにある危機を見通しながら、歴史のなかで言葉に生きる可能性を模索することであり、かつ芸術の美が生きること自体を見つめ直させる力を発揮する回路を、現代における芸術とのかかわりのうちに探ることでもある。ベンヤミンが残した書を読むことによってこそ喚起されうるこうした思考へ読者を誘うのが、本書の狙いとするところである」(20頁)。

★『読書実録』は「すばる」誌に2017年8月号から2019年3月号にかけて計4回掲載されたテクストを単行本化したもの。「筆写のはじまり」「スラム篇」「夢と芸術と現実」「バートルビーと人類の未来」の4部構成。「バートルビーと人類の未来」では弊社刊、ジョルジョ・アガンベン『バートルビー』に掲載した、アガンベンの論考、「バートルビー」の新訳、訳者の高桑和巳さんの解説、さらには私が考案した帯文まで引いていただいており、入念に考察を加えておられます。「スラム篇」でも弊社刊、ジャン・ジュネ『公然たる敵』を取り上げていただいています。写経にも似た書物の筆写は、作家の保坂さん自身の思考と分かちがたく繋がっています。「小説家にとって小説を書くことは、テーマとか思想を書くことでなく何より、日々書くことだ、お坊さんがお経を毎朝読経するのと同じことだ。〔…〕私は「読書実録」を書いたわけだが、中身は私に書き写しをさせた文が次の文を呼び寄せた。/書き写しをしているとかつて読んだ文が活性化するのだ、ただ目と頭だけで読むのより書き写しをする方が文が文を呼び起こす、記憶のどこかに仕舞い込まれていた文が新しい力を得て、出たくてうずうずする。/するとそれは、人間の肯定になった」(208頁)。

★『書くこと 生きること』はハイチに生まれカナダで活躍する作家ダニー・ラフェリエール(Dany Laferrière, 1953-)の自伝的インタヴュー『J'écris comme je vis. Entretien avec Bernard Magnier』(La passe du vent, 2000)の全訳。ジャーナリストのベルナール・マニエとの対談。原題は直訳すると「僕は生きるように書く」。「生いたち」「読書という体験」「書くこと」「「ぼく」って?」といったパートに分かれ、「ラファリエールの著作の全容を的確に把握したうえで、彼の生い立ちに始まり、身内のこと、ハイチ社会について、移民の境遇、豊富な読書体験、作家生活、そして執筆にまつわる逸話にいたるまで、じつに多岐にわたる内容」が語られている、と訳者の小倉さんは評価しておられます。

★『メアリ・ビーアドと女性史』は、アメリカの歴史家であり、「アメリカ女性史研究のパイオニア」(まえがきより)である、メアリ・ビーアド(Mary Ritter Beard, 1876-1958)をめぐる「決定版評伝」(帯文より)。「メアリ・ビーアドの形成」「歴史を書く――女性史研究の先駆者として」「戦後日本とメアリ・ビーアド」の3部構成。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。リンク先では訂正表のPDFも公開中。著者の上村千賀子(うえむら・ちかこ:1942-)さんは群馬大学名誉教授で、『女性解放をめぐる占領政策』(勁草書房、2007年)などの著書があります。

★『いのちの森づくり』は副題にある通り、宮脇昭(みやわき・あきら:1928-)さんの自伝。2013年12月から2014年2月にかけて「神奈川新聞」に全63回にわたり連載された「わが人生」に大幅加筆修正を施して第Ⅰ部として収録し、第Ⅱ部には一志治夫さんによる「詳伝年譜(1980年~)」を配し、第Ⅲ部には2008年9月にパレスホテルで行われた講演の要旨をもとに加筆修正した「日本の森を蘇らせるため、今私たちにできること」が収録されています。「日本全国の植生調査に基づく浩瀚の書『日本植生誌』全10巻〔至文堂〕に至る歩みと、“鎮守の森”の発見、熱帯雨林はじめ世界各国での、土地に根ざした森づくりを成功させた“宮脇方式での森づくり”の軌跡」(帯文より)。

★『兜太 TOTA vol.3』の特集は「キーンと兜太――俳句の国際性」。同誌の編集顧問を務められていたドナルド・キーンさんが、今年2月に他界されたことを受け、キーンさんと金子兜太さんの交流を辿り直しつつ、「俳句を世界に開いていくための手がかりを考え」ようという試み(巻頭言より)。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。

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by urag | 2019-09-29 23:16 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 23日

注目新刊:『未完の資本主義』PHP新書、ほか

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未完の資本主義――テクノロジーが変える経済の形と未来』ポール・クルーグマン/トーマス・フリードマン/トーマス・セドラチェク/タイラー・コーエン/ルトガー・ブレグマン/ヴィクター・マイヤー=ショーンベルガー著、大野和基編、PHP新書、2019年9月、本体900円、新書判並製208頁、ISBN978-4-569-84372-8
アイデア No.387 2019年10月号』誠文堂新光社、2019年9月、本体2,829円、A4変型判並製200頁、ISSN0019-1299
時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ著、冨永星訳、NHK出版、2019年8月、本体2,000円、四六判上製240頁、ISBN978-4-14-081790-2

★『未完の資本主義』は『知の最先端』(PHP新書、2013年)や『未来を読む――AIと格差は世界を滅ぼすか』(PHP新書、2018年)など、著名知識人への数々のインタビューで知られる大野和基さんによる最新対話集。ソデ紹介文に曰く「本書は、「テクノロジーは資本主義をどう変えるか」「我々は資本主義をどう『修正』するべきか」について、国際ジャーナリスト・大野和基氏が、世界の「知の巨人」7人に訊ねた論考集である。経済学、歴史学、人類学……多彩な視座から未来を見通し、「未完」のその先の姿を考える、知的興奮に満ちた1冊」。大野さんによる「プロローグ」には本書の問題意識についてこう述べておられます。「「資本主義の終焉」といわれるが、資本主義は未完であるがゆえに、より善い姿に「進化」することもできるのではないか」。

★特に注目しておきたいのは、グレーバーの言う「BS職(Bullshit jobs:どうでもいい仕事)の5分類」と、ブレグマンの言う「ベーシック・インカム+1日3時間労働」です。前者の5分類は、太鼓持ち、用心棒、落穂拾い、社内官僚、仕事製造人、です(87~90頁)。ネタバレは控えるとして、グレーバーはこう意見を述べています。「我々は、仕事に大切なものは何なのか、考え直すべきなのかもしれません。仕事は苦しいものだ、苦しみは真の大人の勲章だ、責任感のある人間になろう――。現代の労働観は、あまりにもねじれてしまっています。〔…〕あまりにもねじれた人生観であり、そんな考えを続けていたら、自分の体、ひいては社会も壊れてしまいます」(95頁)。グレーバーの『Bullshit Jobs: A Theory』(Simon & Schuster, 2018)は岩波書店から刊行予定と聞いています。

★ブレグマンはこう言います。「私が提案しているのは、我々は働く時間を短くすべきだということです。ベーシックインカムは、人々に豊かな選択肢を与えるという意味で、不可欠なのです。〔…〕そもそも、ベーシックインカムという呼び名自体が最適ではないかもしれません。社会配当金という呼称もあります。これは、ベーシックインカムが手助けではなく人権なんだということを示しています。〔…〕私たちは基本的に、祖先がつくりだした遺産の恩恵を受けて生活しており、ベーシックインカムや社会配当は、それを認めているだけです」(164~165頁)。「多くの人は、ベーシックインカムを導入する財源はないと懸念しています。しかし私はむしろ、ベーシックインカムを導入しなければ先進国は経済的に立ち行かなくなると考えています。/私たちは現在、貧困が存在するゆえの費用を莫大に負担しています。高い医療費や学校の中途退学率、犯罪の増加などがその例です。人間の潜在能力のとんでもない無駄遣いだと思います」(165~166頁)。詳しくは本書と、ブレグマンの著書『隷属なき道――AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(野中香方子訳、文藝春秋、2017年)をご参照ください。

★斎藤幸平さんによるインタビュー集『未来への大分岐』(集英社新書、2019年8月)や、吉成真由美さんによるインタビュー集『知の逆転』(NHK出版新書、2012年)、『知の英断』(NHK出版新書、2014年)、『人類の未来』(NHK出版新書、2017年)など、近年、大野さんのインタビューのほかにも様々な知識人へのインタビュー集が手頃な新書で刊行されているのは周知の通りです。これらはぜひ併売されてほしい書目です。

★『アイデア No.387 2019年10月号』の特集は「現代日本のブックデザイン史1996-2010」。巻頭言から引きます。「1996年を境に縮小を続ける日本の出版産業は、昨年時点ですでに最盛期の2分の1を割り込む経済規模にまで到達した。〔…〕もはやシーン全体を俯瞰して捉えることは困難であるものの、本特集ではその断片を見せるべく、〔…〕1996年から現在に至るブックデザインをスタイル別に並置してみることにした」。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。本号の企画編集担当のお一人、長田年伸さんは「出版の本義へ」(110頁)でこう述べています。「歴史は事後的に振り返ることでしかその成否を判断できない。いまを生きるわれわれにできるのは個々の細い糸を撚り合わせ後世につなぐことしかないのだから、と本書を編んだ」。また長田さんは川名潤さんや水戸部功さん、加藤賢策さんとの座談会「ブックデザインはブックデザインでしかない」でこう発言されています。「ここで記述した歴史は「the history」ではなくて「a history」です」(108頁)。

★長田さんはさらに序文で「管見の限りでは、現代日本のブックデザインを総覧した書籍や図録の類は1995年までで記述が止まっている」(8頁)とも書いておられます。実はこの歴史記述の不在は、デザインの現場だけに留まりません。出版業界の各種団体の公式文書はここ10年以上の途絶しています。出版社の団体がまとめたものでは『日本雑誌協会 日本書籍出版協会 50年史』が2007年11月発行。書店では『日書連五十五年史』は2001年7月発行。取次では『日本出版取次協会五十年史』は2001年9月発行。拙論「再販制再論」(『ユリイカ2019年6月臨時増刊号 総特集=書店の未来』2019年5月)の準備で様々な資料に目を通しましたが、各種団体ともに「予算が計上されておらず、最新版刊行の予定はない」との回答でした。

★歴史記述の衰退と改竄と抹消はポストトゥルース時代における負の特性であり、社会工学としての悪辣な編集技術の台頭と並行関係にあります。編集は人心や感官に働きかけるサイキックなテクノロジーとして、すでに自覚され運用され始めています。情報戦や諜報戦、広報戦の危険な領域へマスコミや出版界が長い間入り込んでいることが、それゆえに改めて注目されているわけです。1996年以後のブックデザインを考える際にもう一度考慮しなければならないものがあるとしたら、それはプロパガンダ(ナショナリズムであれ、排外主義であれ、ポピュリズムであれ、流行であれ、娯楽であれ)なのだろうと思います。

★『時間は存在しない』は『L'ordine del tempo』(Adelphi, 2017)の全訳。原題は「時間の順序」ですが、邦題をあえて「時間は存在しない」としたところに本書の成功の鍵があるように思われます。ロヴェッリ(Carlo Rovelli, 1956-)はイタリアの理論物理学者で現在はフランスで活躍しています。既訳書には『世の中ががらりと変わって見える物理の本』(関口英子訳、河出書房新社、2015年;Sette brevi lezioni di fisica, Adelphi, 2014)と、『すごい物理学講義』(栗原俊秀訳、河出書房新社、2017年;La realtà non è come ci appare - La struttura elementare delle cose, Raffaello Cortina Editore, 2014)があります。

★「この本は長短三つのパートからなっている。第一部〔「時間の崩壊」〕では現代物理学が時間について知り得たことを手短かに紹介する。〔…〕わたしたちの知識が増えたことにより、時間の概念は徐々に崩壊していった。わたしたちが「時間」と読んでいるものは、さまざまな層や構造の複雑な集合体なのだ。そのうえさらに深く調べていくと、それらの層も一枚また一枚と剥がれ落ち、かけらも次々に消えていった。この本の第一部では、このような時間という概念の崩壊について述べる」(11~12頁)。「第二部〔「時間のない世界」〕では、その結果残されたものについて述べていく。〔…〕本質だけが残された世界は美しくも不毛で、曇りなくも薄気味悪く輝いている。わたしが取り組んでいる量子重力理論と呼ばれる物理学は、この極端で美しい風景、時間のない世界を理解し、筋の通った意味を与えようとする試みなのだ」(12頁)。

★「第三部〔「時間の源へ」〕はもっとも難しく、それでいていちばん生き生きしており、わたしたち自身と深く関わっている。〔…〕これは、第一部でこの世界の基本的な原理を追い求めるうちに失われた「時間」へと立ち戻る帰還の旅である。〔…〕結局のところ時間の謎は、宇宙に関する問題ではなく、私自身についての問題なのだ」(12~13頁)。日本語版解説をお書きになった吉田伸夫さんは第三部中盤での議論についてこう紹介されています。「ロヴェッリは、アウグスティヌスやフッサールの主張を引用しながら、時間が経過するという内的な感覚が、未来によらず過去だけに関わる記憶の時間的非対称性に由来することを指摘する。その上で、記憶とは、中枢神経系におけるシナプス結合の形成と消滅という物質的なプロセスが生み出したものであり、過去の記憶だけが存在するのは、このプロセスがエントロピー増大の法則にしたがうことの直接的な帰結であると論じる」(214頁)。

★本書はおそらく理工学書売場で展開されるものかと思いますが(ちなみに分類コード上では「外国文学、その他」で、版元さんとしては海外エッセイという位置づけなのかもしれません。推薦文は作家の円城塔さんが書かれています)、吉田さんの解説にもある通り、時間論は哲学思想でも扱いますから、人文書でもおそらく本書は売れるのではないかと思います。「ガーディアン」紙では「スティーヴン・ホーキングの『ホーキング、宇宙を語る』以来、これほどみごとに物理学と哲学とを融合した著作はない」と評されています。



★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

身体を引き受ける――トランスジェンダーと物質性のレトリック』ゲイル・サラモン著、藤高和輝訳、以文社、2019年9月、本体3,600円、四六判上製365頁、ISBN978-4-7531-0355-3
菅原道真――学者政治家の栄光と没落』滝川幸司著、中公文庫、2019年9月、本体860円、新書判280頁、ISBN978-4-12-102559-3
暦川』公文健太郎写真、平凡社、2019年9月、本体5,800円、A4変型判上製160頁、ISBN978-4-582-27831-6
浮きよばなれ――島国の彼岸へと漕ぎ出す日本文学芸術論』栗原明志著、作品社、2019年9月、本体2400円、46判並製376頁、ISBN978-4-86182-775-4

★『身体を引き受ける』は、『Assuming a Body: Transgender and Rhetorics of Materiality』(Columbia University Press, 2010)の全訳。サラモン(Gayle Salamon)はプリンストン大学教授。本書は彼女の博士論文を元にした第一作で、日本語に翻訳されるのは今回が初めてです。謝辞の筆頭にはジュディス・バトラーが挙がっています。帯にはそのバトラーによる論評が載っています。曰く「サラモンの著書は、文化理論にはめったにみられない非凡な洞察力と哲学的なエレガンスを備えており、身体そのものの物質性に関してトランスジェンダーが含意しているものに鋭敏な哲学的省察を加えている」。目次詳細は版元ドットコムの単品ページで掲出されています。

★「本書『身体を引き受ける』は、現象学(主としてメルロ=ポンティの研究)と精神分析(フロイトとポール・シルダーの研究)、そしてクィア理論を通して、身体性(embodiment)の問いを探究する試みであり、これら各々の分野において身体がどのように理解されているのかを考察することを通してこの問いに取り組むものである」(序論、3頁)。「本書で、私は身体の存在についての記述における「物質的なもの」と「幻想的なもの」とのあいだの関係を考察する。そして、この関係が両立不可能な関係である必要はないこと、むしろ、身体の物質性が意識に現れる仕方、そして同様に重要なことに、それが意識から消える仕方を説明することを可能にする生産的な緊張によってその関係が特徴づけられることを示したい。メルロ=ポンティ、ジグムント・フロイト、ポール・シルダー、ジュディス・バトラーらによって提示された身体性の理論を読むのは、これらの理論に含まれる幻想的なものと物質的なものとの関係がトランスの身体に関するより良い理解にいかに資するのかを考えるためである」(4頁)。「私が望んでいること、それは、トランスジェンダリズムやトランスセクシュアリティに関する諸議論が「本当らしさ」にいたずらに訴えなくても済むようになることである」(6頁)。

★訳者解説ではこう紹介されています。「本書『身体を引き受ける』はきわめて学問領域横断的なスタイルで書かれたものである。精神分析、現象学、フェミニズム、クィア理論、トランスジェンダー・スタディーズなどの様々な学問分野を横断しながら、本書は執筆されている。とりわけ注目に値するのは、、精神分析と現象学をトランスジェンダー理論として読み直している点だろう。〔…〕彼女が主張しているのは、身体とは単なる「物質的なもの」ではなく、むしろ、物質的な身体とは「身体イメージ」の媒介によってはじめて生きられるのであり、そして、このような「感じられた身体」と「物質的な身体」とのあいだのズレや不一致は決して病理学的なものではないということである。/本書はまた大変バランスのとれた著作であり、理論的なだけでなく、きわめて実践的な著作でもある」(341~342頁)。

★『菅原道真』は、京都女子大学文学部教授で平安文学がご専門の滝川幸司(たきがわ・こうじ:1969-)さんが、道真の人生を四期に分けて紹介するもの。「第一期は、誕生から、大学寮紀伝道入学、対策(官僚登用のための国家試験)に合格して官僚としての道を歩み、文章博士として紀伝統の頂点に立った時期である。/第二期は、文章博士を離任し、讃岐守として統治に赴任した時期である。〔…〕/第三期は、都へ戻り、宇多天皇に抜擢され、蔵人頭として天皇の側近となり、以後右大臣に至る時期である。〔…〕/第四期は大宰権帥として都から左遷され、九州の地で過ごす時期である」(「はじめに」iii頁)。「それぞれの時期の心情がこれほどまでに残り、自分の手で編纂した史料が現存している官僚は、平安時代には他にいない」(iv頁)。道真は藤原氏の策謀により失脚したと言います。「道真の生涯の、いわば骨格を記したのが本書である。今後、血肉を加える作業を続けたい」と著者はあとがきで記しています。滝川さんには『菅原道真論』(塙書房、2014年)という研究書もあります。

★『暦川』は、写真家の公文健太郎(くもん・けんたろう:1981-)さんによる、2016年刊の『耕す人』に続く平凡社では2作目となる写真集。帯文に曰く「東北を代表する大河・北上川。源流から河口まで250kmの四季折々の営みを気鋭の写真家が活写」。ノスタルジーを誘う美しい川辺の風景に魅了されます。個人的にはっとしたのは48番の写真。川岸を進む蛇と目が合って、蛇(青大将でしょうか)もフレームのこちら側の写真家をじっと見つめています。思いがけない交感。今年刊行された公文さんの写真集は冬青社から2月に刊行された『地が紡ぐ』に続いて2冊目です。

★『浮きよばなれ』は作家・演出家・プロデューサーの栗原明志(くりはら・あかし:1971-)さんが20代後半から40代後半のこんにちまで、20年間にわたり書き溜めたエッセイ24篇をまとめたもの。第一作である特異な小説『』(現代思潮新社、2007年)以来の新刊です。「「とりあえず」現在を先送りにする運動のただ中で、人は金銭に埋没する。「とりあえず」は錬金術の合言葉に他ならない。「とりあえず」の対極に文学と芸術が存在し、ますます迫害され、黙殺され、表面から撤去され、倉庫で眠らされ、見下され、勝ち誇ったせせら笑いに晒されながら、幾重にも迂回された奇妙な方法で人々が背を向けた現在を拾っている、「ポスト真実」の時代は、「ポストイメージ」の時代でもあり得るのだ」(「二〇一七年の京都」367頁)。

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by urag | 2019-09-23 20:16 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 23日

注目文庫新刊:2019年9月:平凡社ライブラリー、光文社古典新訳文庫、ほか

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★点数が多いため、今回も2回に分けてご紹介します。

中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2』上智大学中世思想研究所編訳監修、平凡社ライブラリー、2019年9月、本体2,400円、B6変型判664頁、ISBN978-4-582-76887-9
われら』ザミャーチン著、松下隆志訳、光文社古典新訳文庫、2019年9月、本体1,060円、文庫判392頁、ISBN:978-4334-75409-9
西洋占星術史――科学と魔術のあいだ』中山茂著、講談社学術文庫、2019年9月、本体920円、A6判208頁、ISBN978-4-06-517132-5
平治物語 全訳注』谷口耕一/小番達訳、講談社学術文庫、2019年9月、本体2,030円、A6判656頁、ISBN978-4-06-517181-3
後拾遺和歌集』久保田淳/平田喜信校注、岩波文庫、2019年9月、本体1,680円、文庫判752頁、ISBN978-4-00-300299-5
伊藤野枝集』森まゆみ編、岩波文庫、2019年9月、本体1,130円、文庫判448頁、ISBN978-4-00-381281-5
臨済録』柳田聖山訳、中公文庫、2019年9月、文庫判264頁、本体720円、ISBN978-4-12-206783-7
ポー傑作集――江戸川乱歩名義訳』エドガー・アラン・ポー著、渡辺温/渡辺啓助訳、中公文庫、2019年9月、本体1,200円、文庫判480頁、ISBN978-4-12-206784-4
ジャンヌ・ダルク』ジュール・ミシュレ著、森井真/田代葆訳、中公文庫、2019年9月、本体1,000円、文庫判320頁、ISBN978-4-12-206785-1
古事記の研究』折口信夫著、中公文庫、2019年9月、本体1,000円、文庫判352頁、ISBN978-4-12-206778-3

★平凡社ライブラリーの9月新刊は1点。『中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2』は精選版全7巻の第6回配本。親本の第13巻「盛期スコラ学」、第14巻「トマス・アクィナス」、第18巻「後期スコラ学」より10篇を選び、佐藤直子さんによる巻頭解説と、赤江雄一さんによる巻末エッセイ「スコラ学と中世の説教」が加えられています。収録作品は以下の通り。

ディオニュシウス神秘神学註解(アルベルトゥス・マグヌス|須藤和夫訳)
聖書の勧めとその区分(トマス・アクィナス|竹島幸一訳)
聖書の勧め(トマス・アクィナス|竹島幸一訳)
知性の単一性について――アヴェロエス主義者たちに対する論駁(トマス・アクィナス|水田英実訳)
最高善について(シュトラスブルクのウルリヒ|須藤和夫/渡部菊郎訳)
一二七〇年の非難宣言(エティエンヌ・タンピエ|八木雄二/矢玉俊彦訳)
一二七七年の禁令(エティエンヌ・タンピエ|八木雄二/矢玉俊彦訳)
哲学者たちの誤謬(アエギディウス・ロマヌス|箕輪秀二訳)
第一原理についての論考(ヨハネス・ドゥンス・スコトゥス|小川量子訳)
未来の偶然事に関する神の予定と予知についての論考(ウィリアム・オッカム|清水哲郎訳)

★光文社古典新訳文庫の9月新刊より1点。光文社古典新訳文庫でのロシア文学の新訳にはドストエフスキーやトルストイ、チェーホフ等々が刊行されていますが、ザミャーチンの翻訳は今回の『われら』で初めて。帯文に曰く「ディストピアSFの先駆け、待望の新訳」。「ザミャーチンが「私のもっとも滑稽でもっとも真剣な作品」(「自伝」、1922年)と述べる『われら』は、創作にもっとも勢いがあった1920~21年にかけて書かれた。作家が存命中に完成させた唯一の長編にして最高傑作である」(訳者解説より)。底本は1988年刊のクニーガ社版作品集。さらに、「妻リュドミーラによる校正が加えられた唯一現存する『われら』のタイプライター原稿(2011年刊)を参照しつつ、訳者の判断で適宜修正を加えた」とのことです。現在も入手可能な、文庫で読める既訳には、川端香男里訳『われら』(岩波文庫、1992年)、小笠原豊樹訳『われら』(集英社文庫、2018年)があります。川端訳は1975年に講談社文庫でも刊行されたことがあります。岩波文庫版はその改訂版です。

★講談社学術文庫の9月新刊より2点。『西洋占星術史』は、1992年に講談社現代新書の一冊として刊行された『西洋占星術――科学と魔術のあいだ』の改題文庫化。鏡リュウジさんによる巻末解説が加えられています。科学史家の中山茂(なかやま・しげる:1928-2014)さんの著書で講談社学術文庫にて文庫化されているのは本書のほかにこれまで、『近世日本の科学思想』(1993年、品切;『日本人の科学観』〔創元新書、1977年〕増補改題)、『天の科学史』(2011年;『天の科学史』〔朝日選書、1984年〕改訂)、『パラダイムと科学革命の歴史』(2013年;『歴史としての学問』〔中央公論社、1974年〕増補改題)があります。

★『平治物語 全訳注』は講談社学術文庫オリジナルの新訳。「敗れゆく源氏の悲哀と再興の予兆を描いた物語を、伝本の中でも個性豊かな登場人物と起伏に富んだストーリーで知られる四類本から現代語訳した決定版」(カバー裏紹介文より)。本文、現代語訳、語釈、校訂注、解説で構成。補注と地図、谷口耕一さんによる解説「四類本系統の『平治物語』について」は巻末にまとめられています。「『平治物語』は平治の乱を題材にした物語である。〔…〕この物語は、おおまかにいって三部構成になっている。前半では合戦までの経緯、中心部は合戦の様子、後半では戦後処理と後日譚が描かれる。そしてそのような歴史的流れのなかに、笑話や哀話などのエピソードがちりばめられ、全体として、非常におもしろい物語となっている」(解説より)。現在も入手可能な、文庫で読める『平治物語』には、日下力訳注『平治物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫、2016年)があります。

★岩波書店9月新刊より2点。『後拾遺和歌集』は岩波文庫では1940年刊の西下経一校訂版以来の新版。「新日本古典文学大系」シリーズで1994年刊に刊行された第8巻に所収の『後拾遺和歌集』に基づき、「注などを改変して文庫化した」もの。注は、現代語による大意、出典、語釈、参考事項の順で記されています。講談社学術文庫より刊行されていた藤本一恵訳注本全4巻は品切のため、文庫本で読める『後拾遺和歌集』は今回の岩波文庫版のみとなります。

★『伊藤野枝集』は、創作、評論・随筆・書簡、大杉栄との往復書簡、の三部構成で編まれたもの。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。底本は、堀切利高/井手文子編『定本 伊藤野枝全集』(全4巻、學藝書林、2000年)、堀切利高編著『野枝さんをさがして』(學藝書林、2013年)、大杉栄研究会編『大杉栄書簡集』(海燕書房、1974年)などを使用。巻末には編者による解説「嵐の中で夢を見た人――伊藤野枝小伝」と、「伊藤野枝略年譜」を収めています。今月の岩波文庫新刊5点のうち、本書のみが帯が掛かっていて、瀬戸内寂聴さんの推薦文が掲げられています。曰く「恋と革命の天才先駆者、伊藤野枝の若き命をかけた切実華麗な名文のすべて!」。

★中公文庫の9月新刊より4点。『臨済録』は2004年の中公クラシックス版から文庫へのスイッチ。さらに遡ると柳田訳は『世界の名著』続編第3巻(1974年)に収められていたものです。かの有名な「仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷を殺して、始めて解脱することを得ん。物に拘せられず、透脱自在なり」は「四七」の一節(読み下し154頁;原文162頁:逢佛殺佛、逢祖殺祖、逢羅漢殺羅漢、逢父母殺父母、逢親眷殺親眷、始得解脱、不与物拘、透脱自在)。現代語訳を前段を含めて引いてみます。「仲間よ、君たちが堅気を望むなら、けっして世間の誘いに引っかかってはならぬ。内でも外でも、出会ったら、すぐに斬ってすてよ。仏に出会ったら、仏を斬りすて、祖師に出会ったら祖師を切りすて、羅漢に出会ったら羅漢を斬りすて、父母に出会ったら父母を斬りすて、親族に出会ったら、親族を斬りすてて、君ははじめて解放される。物に拘束せられることなく、思いのままに斬りぬけるのだ」(170~171頁)。カバー裏紹介文では「既成概念に縛られず、あえて斬り捨てて自由を得よ」と説明されています。

★『ポー傑作集』はカバー裏紹介文に曰く「本書は刊行当時「江戸川乱歩訳」で発売され、後日、全集から削除された幻のベストセラーである。実際の訳者は27歳で事故死した作家・渡辺温、共訳はその兄でミステリ作家となった渡辺啓助である」と。目次は以下の通り。

序文
黄金虫(渡辺温訳)
モルグ街の殺人(渡辺温訳)
マリイ・ロオジェ事件の謎(渡辺温訳)
窃まれた手紙(渡辺啓助訳)
メヱルストロウム(渡辺啓助訳)
壜の中に見出された手記(渡辺温訳)
長方形の箱(渡辺温訳)
早過ぎた埋葬(渡辺啓助訳)
陥穽と振子(渡辺啓助訳)
赤き死の仮面(渡辺温訳)
黒猫譚(渡辺啓助訳)
跛蛙(渡辺啓助訳)
物言ふ心臓(渡辺温訳)
アッシャア館の崩壊(渡辺啓助訳)
ウィリアム・ウィルスン(渡辺温訳)
附録
 渡辺温(江戸川乱歩著)
 春寒(谷崎潤一郎著)
温と啓助と鴉(渡辺東著)
解説(浜田雄介著)

★底本は『世界大衆文学全集(30)ポー、ホフマン』(改造社、1929年)。附録の「渡辺温」は『探偵小説三十年』(岩谷書店、1954年)、「春寒」は『谷崎潤一郎全集(22)』(愛読愛蔵版、中央公論社、1983年)が底本。渡辺さんのエッセイと浜田さんの解説は書き下ろしです。

★『ジャンヌ・ダルク』は中公文庫プレミアム「知の回廊」の最新弾。1987年刊の中公文庫の改版。文庫版の親本は1983年刊の中央公論社の単行本。改版にあたり、巻末に佐藤賢一さんによる解説が付されています。佐藤さんはこう書いておられます。「ジャンヌ・ダルクについて書かれた本は、それでもすでに五百冊を超えていたというが、史料も満足に整わない段階で、どれだけ史実に基づけたのかは疑わしい。ミシュレの『ジャンヌ・ダルク』こそは正統な歴史として書かれた、最初のジャンヌ・ダルクなのだ。著者は信頼に足る歴史家、十九世紀フランスを代表する大歴史家なのだ」(304~305頁)。

★『古事記の研究』は中公文庫プレミアム「日本再見」の最新弾。「昭和九年と十年に長野県下伊那郡教育会で行われた三つの講義「古事記の研究」(一・二)と「万葉人の生活」を収める。「古事記研究の初歩」と著者自身が呼ぶ一般向けの入門講義を初めて文庫化する」(カバー裏紹介文より)。三浦佑之さんによる巻末解説が付されています。「折口信夫が古事記という作品そのものに向き合うことは、あまり多くないのではないか。その点で本書は貴重な一冊だと思う」。「本書で論じられている古事記は、戦前に凡百が講じたであろう古事記とは一線を画しているというのもまた明らかである。本書に収められた講演のなかで、折口信夫がこだわるのは音声によることばの問題であって、歴史書としての古事記の文字表記にはほとんどこだわっていない。〔…〕折口にとって、そこに残されている神話や歌謡の表現こそがだいじであったというのは、かれの古代研究の方法をみれば説明するまでもなかろう」。

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by urag | 2019-09-23 02:03 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 18日

ブックフェア「『ブルーノ・ラトゥールの取説』をより深く読むために」

ブックフェア「『ブルーノ・ラトゥールの取説』をより深く読むために」

期間:2019年9月17日(火)~2019年10月15日(月)
展開場所:ブックファースト新宿店地下1階、Bゾーン人文書売場

概要:「私たちはいまだかって近代的であったことはない」。ノンモダンの地平に立ちアクターネットワーク理論を構想したブルーノ・ラトゥール。その難解な議論を解きほぐしたと話題の書『ブルーノ・ラトゥールの取説』。より深く横断的に読み込むために本書で言及されている書籍を中心にブルーノ・ラトゥールと久保明教さんの著書も集めました。フェア期間中、第二弾としてあわせて読むのにおすすめの関連書を久保明教さんにお選びいただき追加で展開いたします。

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by urag | 2019-09-18 14:04 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 17日

取次搬入日決定:『森山大道写真集成(2)狩人』

『森山大道写真集成(2)狩人』の取次搬入日が決定しました。日販と大阪屋栗田は9月19日(木)、トーハンは9月20日(金)です。

by urag | 2019-09-17 11:25 | 森山大道 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 16日

注目新刊:ガブリエル『「私」は脳ではない』講談社選書メチエ、ほか

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「私」は脳ではない――21世紀のための精神の哲学』マルクス・ガブリエル著、姫田多佳子訳、講談社選書メチエ、2019年9月、本体2,100円、四六判並製392頁、ISBN978-4-06-517079-3
開かれた対話と未来――今この瞬間に他者を思いやる』ヤーコ・セイックラ/トム・アーンキル著、斎藤環監訳、医学書院、2019年9月、本体2,700円、A5判並製376頁、ISBN978-4-260-03956-7
植物の生の哲学――混合の形而上学』エマヌエーレ・コッチャ著、嶋崎正樹訳、山内志朗解説、勁草書房、2019年8月、本体3,200円、四六判上製228頁、ISBN978-4-326-15461-6
神経美学――美と芸術の脳科学』石津智大著、共立出版、2019年8月、本体2,000円、B6判並製198頁、ISBN978-4-320-00930-1

★『「私」は脳ではない』はドイツの哲学者マルクス・ガブリエル(Markus Gabriel, 1980-)による『Ich ist nicht Gehirn: Philosophie des Geistes fuer das 21. Jahrhundert』(Ullstein, 2017)の全訳。世界的なベストセラー『なぜ世界は存在しないのか』(清水一浩訳、講談社選書メチエ、2018年1月;『Warum es die Welt nicht gibt』Ullstein, 2013)に続く、待望の単独著翻訳第2弾です。版元紹介文に曰く「『なぜ世界は存在しないのか』の続編にして、一般向け哲学書「3部作」の第2巻」と。3作目は『思考の意味』(『Der Sinn des Denkens』Ullstein, 2018)で、これもいずれ翻訳されるようです。

★著者による「日本語版の出版に寄せて」にはこう書いてあります。「本書のテーマになっているのは、人間を一つの総体として、すなわち自らの自己決定において自由な、精神をもつ生き物として認識することです。〔…〕本書で名を明示し、その克服に努めることになる病とは、神経中心主義です。神経中心主義とは、私たちの精神生活は脳と同一視することができ、したがって人間を神経ネットワークに置き換えることができる、という考え方のことです。これは根本的に誤った考え方です。神経中心主義は人間をおかしくします。なぜなら、神経中心主義に侵されると、もはや私たちは自分自身を認識できなるなるからです。/本書のクライマックスは、自己決定という精神の自由を擁護することです。これはフランス革命に始まった近代民主主義の基本であり、これからもそうであり続けます」(11~12頁)。

★「人間にとって最も危険な敵は、自分自身や他者について誤ったイメージを作り上げる人間であることを、私たちは認識しなければなりません。今日広まっている危険なイデオロギーは、実は私たちとは同一視できないものを私たちと同一視することで、人間を自己決定のレベルで台無しにしています」(12頁)。「人間を機械とみなすようなイメージから私たちを解き放ち、啓蒙の精神を再び鼓舞するため、私たち皆が――生まれた土地や文化に関係なく――分かち合い、共同で活用できるような、人間の精神の自由の防衛策が今や必要です。どれほど文化の違いがあっても、私たちには共有するものがあるのです」(13頁)。

★「『「私」は脳ではない』では自由の理論が展開されます。私たちは世界から――すべてを内包する決定論的な地平線から――解放されています。つまり、徹底的に自由なのです。ですから、私たちは人間についての自然科学的研究と精神科学的研究のあいだの対話を新たなレベルに高める必要があります。なぜなら精神科学はテクノロジーや自然科学の進歩で代替できる、という誤った考えは直接的または間接的にサイバー独裁制をもたらすからです。人間が自分は何者であるかを知らないかぎり、技術をその人間のために使う理由はないからです。これを研究するのは、ですから、英語圏で言うところのヒューマニティーズ〔人文科学〕の仕事です。ヒューマニズム〔人文主義〕を攻撃する者は、人間たる自分自身を攻撃しているのです」(14~15頁)。

★ガブリエルの議論と分析は、その表題に表れているように一見するとトリッキーな部分がありますが、その内実は衒学的細部へのこだわりではなく、常識(コモンセンス)に立脚しており、それゆえに説得的です。本書の詳細目次と巻頭部分の閲覧は、書名のリンク先の「試し読み」でできるようになっています。

★『開かれた対話と未来』は、フィンランドの臨床心理士ヤーコ・セイックラ(Jaakko Seikkula)とトム・エーリク・アーンキル(Tom Erik Arnkil)による共著『Open Dialogues and Anticipations: Respecting Otherness in the Present Moment』(National Institute for Health and Welfare, 2014)の訳書です。巻頭には斎藤環さんによる「日本語版解説」が置かれ、巻末には付録として、ODNJP(オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン)作成による「オープンダイアローグ 対話実践のガイドライン」が収められています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。著者による「はじめに――本書のテーマと目指すもの」もリンク先で読むことができます。帯文には「オープンダイアローグ、これが決定版! フィンランドの創始者ふたりによるガイド、待望の翻訳」と謳われています。

★「本書ではこれから、対話について、「対話性」について、ポリフォニー(多声性)について、間主観性について、そして社交ネットワーク〔=人間関係のネットワークのこと〕について検討しようと思います。対話性とは、技法のことではありません。それはある種の立場や態度、あるいは人間関係のあり方を指す言葉です。その核心にあるのは、「他者性」というものとの根源的な関係です」(36頁)。「本書の目的は、対人援助における「対話性」の地位を高めることです。そうすることで、心理療法、精神医学、ソーシャルワーク、教育、保育、経営管理、その他多くの関連分野に、なんらかの変革がもたらされることになるでしょう」(38頁)。

★セイックラとアーンキルの共著書の訳書には、『オープンダイアローグ』(高木俊介/岡田愛訳、日本評論社、2016年3月;『Dialogical Meetings in Social Networks』Karnac Books, 2006)があるほか、共著論文や関連書なども翻訳され、人気を博しています。今後ますます読者層が広がっていく機運を感じます。

★『植物の生の哲学』は、ジョルジョ・アガンベンの弟子筋にあたるイタリアの哲学者で現在はフランスで活躍するエマヌエーレ・コッチャ(Emanuele Coccia, 1976-)による『La vie des plantes : Une métaphysique du mélange』(Rivage, 2016)の全訳です。2001年に早逝した双子の兄弟マッテオに捧げられた本書は、「植物の本性、文化と称されるものへの植物の沈黙、そのあからさまな無関心について考察しつづけたその5年間〔14歳から19歳までイタリア中部の農業高校に在籍した時期〕に生まれた思想を、よみがえらせようという試みである」(vii頁)とのこと。帯文(表4)に曰く「動物の哲学も存在論的転回もやすやすと超えて、植物の在り方から存在論を問い直す哲学エッセイ」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★山内志朗さんは巻末解説で本書から引用しつつこう評価を記されています。「植物の存在においては、世界に在るとは、必然的に〈世界を創り上げる〉ことを意味する(55頁、第7章「空気のただ中で──大気の存在論」)。そして、「植物が世界に在ること、それは空気を(再)創造する能力のうちに見いだされる」(65頁、第7章)。/「世界のうちに存在するとは、アイデンティティを共有するのでなく、常に同じ〈息吹〉(プネウマ)を共有することだ」(74頁、第7章)。〈息吹としての世界〉というイメージが現れている。「身を浸す体験」(immersion)こそ、世界に存在する実存形式なのである。私はここに、この『植物の生の哲学』の核心を見出した」(209~210頁)。

★『神経美学』は共立出版さんのシリーズ「共立スマートセレクション」の第30弾。著者の石津智大(いしづ・ともひろ)さんはロンドン大学ユニバーシティ校シニアリサーチフェロー。単独著は本書が初めてのものです。「神経美学〔neuroaesthetics〕とは、認知神経科学の新しい一分野であり、脳のはたらきと美学的経験(美醜、感動、崇高など)との関係や、認知プロセスや脳機能と芸術的活動(作品の知覚・認知、芸術的創造性、美術批評など)との関係を研究する学問です。神経科学者や心理学者だけでなく、哲学者、芸術家、美術史学者などが参画する学際領域です」(まえがき、v頁)。

★「神経美学の誕生から今日までのおよそ20年弱の成果をまとめ」た入門書である本書は、おそらく本屋さんでは理工書売場に並べられるでしょうけれど、人文書でも併売されると刺激的だと思います。今春刊行された雑誌『思想 2016年4月号:神経系人文学――イメージ研究の挑戦』(岩波書店、2019年3月)や、アンソロジー『イメージ学の現在――ヴァールブルクから神経系イメージ学へ』(東京大学出版会、2019年4月)には、石津さんの論文「神経美学の功績――神経美学はニューロトラッシュか」が収録、再録されています。『神経美学』の目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。リンク先では本書の「まえがき」などもPDFで閲覧することができます。

★また、最近では以下の新刊との出会いが出会いがありました。

吉本隆明全集20[1983-1986]』吉本隆明著、晶文社、2019年9月、本体6,800円、A5判変型上製660頁、ISBN978-4-7949-7120-3
戦争と資本――グローバルな内戦と統合された世界資本主義』エリック・アリエズ/マウリツィオ・ラッツァラート著、杉村昌昭/信友建志訳、作品社、2019年8月、本体3,800円、46判上製428頁、ISBN978-4-86182-772-3
戦下の淡き光』マイケル・オンダーチェ著、田栗美奈子訳、作品社、2019年9月、本体2,600円、46判上製294頁、ISBN978-4-86182-770-9
モーガン夫人の秘密』リディアン・ブルック著、下隆全訳、作品社、2019年9月、本体3,200円、46判上製402頁、ISBN978-4-86182-686-3

★『吉本隆明全集20[1983-1986]』は第21回配本。1983年から1986年という時期はニューアカデミズムの流行期と重なっており、戦後日本の資本主義社会がもっとも特異な輝きを見せていたかもしれない時節でした。吉本も、中沢新一、フーコー、ドゥルーズ/ガタリ、坂本龍一、ビートたけし、糸井重里、高橋留美子、コム・デ・ギャルソン、原子力エネルギーといった同時代文化のシンボルたちと本書収録の諸テクストで向き合っています。第20巻には単行本未収録が32篇もあるとのことです。その中でも、出版人として特に興味深いのは、1986年の「編集者としての安原顯」(481~492頁;初出は安原顯『まだ死ねずにいる文学のために』筑摩書房、綴じ込み栞)です。ここでは、物書きと編集者との間の緊張関係についてかなり率直な見解が述べられていますし、編集者の器量や優秀な編集者のタイプについてもはっきりと書かれています。編集者という人種がよく分からないと感じる物書きの方には、このエッセイが理解の一助となるかもしれません。

★月報21は、中島岳志さんの「「和讃」について」、岩阪恵子さんの「書く習慣」、ハルノ宵子さんの「'96夏・狂想曲」を収録。次回配本についての記載は今回は何もありませんでした。

★『戦争と資本』は、フランスの哲学者エリック・アリエズ(Éric Alliez, 1957-)と、イタリア出身でパリで活躍する社会学者マウリツィオ・ラッツァラート(Maurizio Lazzarato, 1955-)の共著『Guerres et Capital』(Éditions Amsterdam, 2016)の全訳です。主要目次は以下の通りです。

謝辞
序文 統合された世界資本主義とグローバルな内戦――われわれの敵たちへ
第1章 国家、戦争機械、通貨
第2章 本源的蓄積は続いている
第3章 戦争機械の領有化
第4章 フランス革命の二つの歴史
第5章 恒常的内戦の生政治
第6章 新たな植民地戦争
第7章 フーコーのリベラリズムの限界
第8章 シュミットからレーニンに至る収奪の優先性
第9章 総力戦
第10章 冷戦の戦略ゲーム
第11章 クラウゼヴィッツと六八年の思想
第12章 資本のフラクタル戦争
訳者あとがき 「戦争と平和」ではなく「戦争と資本」という認識への転換――資本主義とは、資本が民衆に対して永久戦争を仕掛ける体制運動である。

★序文には30項目にわたり本書の主張が先どりされており、その主文は書名のリンク先で確認することができます。そこからいくつか拾ってみます。「現在、金融資本主義が、“グローバルな内戦”を引き起こしている。経済とは、戦争の目的を別の手段により追求することである。資本主義のすべての岐路には「創造的破壊」ではなく“内戦”がある。「総力戦」体制によって、社会とその生産力の戦争経済への全面的従属が始まった。「戦争」と「平和」は、いかなる相違もなくなった。技術革新はすべて、冷戦-総力戦の「破壊のための生産」から/のなかで生まれた。民衆のなかの民衆に対する戦争は、ネオリベラリズムと負債経済のもとに開始された。資本は構造やシステムではなく“戦争機械”であり、経済・政治・技術などすべてが含まれる。資本は「エコロジー危機」を利用して、地球全体の商品化を完遂しようとしている。資本の論理とは、無限の価値化のロジスティクスであり、経済にとどまらない権力を蓄積していく。資本の権力の第一の機能は、“内戦”の存在をその記憶にまで遡って否定することである。本書の目的は、多数多様な形で進行中の本当の戦争の「うなり声」を聞かせることである。対抗しうるのは「抵抗」という現象でしかありえない」。

★「この本の目的は、経済と「民主主義」のもとで、そしてテクノロジー革命と“一般知性”という「大衆的知性」の背後において、多数多様なかたちで進行中の本当の戦争の「うなり声」を聞かせることにほかならない」(29頁)。訳者あとがきによれば「本書は、「本源的蓄積」(マルクス)、「生政治」(フーコー)、「戦争機械」(ドゥルーズ=ガタリ)といったキイ概念に依拠しながら、リベラリズムと結びついた資本が、いかに世界を「植民地化」し続け、“ネオリベラリズム”と呼ばれる現在の姿に至っているかを、豊富な文献資料を援用しながら解明した一種の「唯物論的歴史哲学」の書であると言えるだろう」(421頁)。日本では一昨年に佐藤嘉幸さんと廣瀬純さんによる『三つの革命――ドゥルーズ=ガタリの政治哲学』(講談社選書メチエ、2017年12月)というすばらしい本が出ていますが、アリエズとラッツァラートの『戦争と資本』は、フランスにおけるドゥルーズ=ガタリの思想的後継者たちによる成果と言えるのではないかと思います。

★本書に続き、原書では第二巻『資本と戦争(仮)』が続刊予定であり、そこでは「68年の奇妙な革命ならびにその革命のその後についての調査をするつもりだ」(31頁)とのことです。そこでは加速主義や思弁的実在論などの「「症候的読解」を大胆に試みることになるだろう」と予告されています。この続篇はまだ未刊ですが、関連書としてラッツァラートは今春『資本はすべての人びとを嫌悪する――ファシズムか革命か』(Le Capital déteste tout le monde: Fascisme ou Révolution, Éditions Amsterdam, 2019)という新著を上梓していることが訳者あとがきの追記で言及されています。

★『戦下の淡き光』はスリランカ生まれのカナダの作家マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje, 1943-)の長編小説『Warlight』(Jonathan Cape, 2018)の全訳。前作『名もなき人たちのテーブル』(田栗美奈子訳、作品社、2013年;『The Cat's Table』2011年)より原書では7年ぶり、訳書では6年ぶりの新刊です。出だしはこうです。「1945年、うちの両親は、犯罪者かもしれない男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消した」(6頁)。「そのころ僕は14歳、レイチェル〔主人公「僕」の姉〕はもうじき16歳だった。休暇のあいだは、母が後見人と呼ぶ人物が面倒を見てくれるという。両親による同僚だそうだ。僕らもすでに面識があった――“蛾”という名前を思いつき、そう呼んでいた。うちの家族にはあだ名をつける習慣があって、それはつまり隠しごとの多い家庭ということでもあった。すでにレイチェルは彼が犯罪者ではないかと疑い、僕にもそんなふうに話していた」(7頁)。目次は以下の通りです。

第一部
 見知らぬ人だらけのテーブル
第二部
 受け継ぐこと
 母との暮らし
 屋根の上の少年
 堀に囲まれた庭
謝辞
訳者あとがき

★「原題のwarlightは、戦時中の灯火管制の際、緊急車両が安全に走行できるように灯された薄明かりを指している。この物語全体もまた、そうしたほのかな明かりに照らされるかのように、真実がおぼろにかすみ、なかなか姿を現さない。登場人物の多くがニックネームで呼ばれ、それぞれに謎を秘めて、意外な役割を担っていたりする。主人公は、自分にとってもっとも難解な謎である母の秘密を突きとめようとするが、淡く射す光のなかを手探りで進むしかない。/著者の話によると、本書の執筆を始めたときは、冒頭の一行しか頭になかったそうだ」(訳者あとがき、293頁)。

★『モーガン夫人の秘密』はイギリスの作家リディアン・ブルック(Rhidian Brook, 1964-)の小説『The Aftermath』(Random House, 2013)の全訳。帯文に曰く「リドリー・スコット製作総指揮、キーラ・ナイトレイ主演、映画原作小説! 1946年、破壊された街、ハンブルク。男と女の、少年と少女の、そして失われた家族の、真実の愛への物語」。


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by urag | 2019-09-16 19:47 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 15日

注目新刊:ロッコ/ジェンティーレ/ムッソリーニ『ファシズムの原理』紫洲書院、ほか

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★本日と明日の2回に分けて注目新刊について記します。まず本日は7~8月までの新刊の拾遺から。

ファシズムの原理 他三篇』アルフレード・ロッコ/ジョヴァンニ・ジェンティーレ/ベニート・ムッソリーニ著、竹本智志/下位春吉訳、紫洲書院、2019年8月、本体1,270円、B6判並製132頁、ISBN978-4-909896-02-5
ヨーロッパ憲法論』ユルゲン・ハーバーマス著、三島憲一/速水淑子訳、法政大学出版局、2019年7月、本体2,800円、四六判上製238頁、ISBN978-4-588-01097-2
神性と経験――ディンカ人の宗教』ゴドフリー・リーンハート著、出口顯監訳、坂井信三/佐々木重洋訳、法政大学出版局、2019年7月、本体7,300円、四六判上製534頁、ISBN978-4-588-01095-8
プリンシピア 自然哲学の数学的原理 第Ⅲ編 世界体系』アイザック・ニュートン著、中野猿人訳、ブルーバックス:講談社、2019年8月、本体1,500円、新書判並製368頁、ISBN978-4-06-516657-4
インスマスの影――クトゥルー神話傑作選』H・P・ラヴクラフト著、南條竹則編訳、新潮文庫、2019年8月、本体750円、文庫判542頁、ISBN978-4-240141-5
小泉八雲東大講義録――日本文学の未来のために』ラフカディオ・ハーン著、池田雅之編訳、角川ソフィア文庫、2019年8月、本体1,080円、文庫判400頁、ISBN978-4-04-400486-6
あなたと原爆――オーウェル評論集』ジョージ・オーウェル著、秋元孝文訳、光文社古典新訳文庫、2019年8月、本体880円、文庫判312頁、ISBN978-4-334-75408-2

★『ファシズムの原理』は紫洲書院のシリーズ「紫洲古典」の第3弾。ファシズムの原理をめぐる3本の論考、アルフレード・ロッコ「ファシズムの原理――ペルージャの夏季学校開会に寄せた演説(La dottrina del fascismo e il suo posto nella storia del pensiero politico)」(1925年)、ジョヴァンニ・ジェンティーレ「思想の根本原理(Idee fondamentali)」(1933年)、ベニート・ムッソリーニ「社会的・政治的原理(Dottrina politica e sociale)」(1933年)の翻訳に加え、付録として、ベニート・ムッソリーニ「組閣直後の臨時議会における就任演説」(初出:下位春吉訳『ムッソリニの獅子吼』〔大日本雄辯會講談社、1929年〕所収「登閣直後の臨時議会における第一獅子吼」)、巻末には「用語・人名索引辞書」が配されています。

★ムッソリーニの「社会的・政治的原理」から引きます。「ファシスト国家は、国民公会においてロベスピエール率いる過激派がそうしたように、自らの「神」を作り出そうなどとはしない。あるいはボリシェビズムがそうしたように、無闇にそれを人々の精神から消し去ろうとしないはしない。ファシズムは禁欲者、聖者、英雄、そして未開の人びとが素朴な心をして思い描き、祈る神そのものに敬意を払う」(81頁)。「ファシスト国家とは、力と帝国への意志である。この国におけるローマの伝統は、力という概念そのものである。ファシズムの原理において帝国とは、単に領土・軍事・貿易に関する概念ではなく、むしろ精神と道徳に関しての意味を持つものである」(同)。

★シリーズ「紫洲古典」では2019年5月に、第一弾として田辺元『歴史的現実』、第二弾として三木清『技術哲学』が刊行されています。紫洲書院(しずしょいん、と読むようです)さんの社名の由来は公式ウェブサイトによれば「洲は何者にも囚われない領域、紫という高貴な色、この二つより、紫洲書院は作られました」とのことです。目下のところアマゾン・ジャパンでの販売のみのようです。

★『ヨーロッパ憲法論』は『Zur Verfassung Europas. Ein Essay』(Suhrkamp, 2011)の全訳。「人間の尊厳というコンセプトおよび人権という現実的なユートピア」と「国際法の憲法化の光に照らしてみたEUの危機──ヨーロッパ憲法論」という2本の論考を中心に編まれたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。補遺として収められた論考3本のうち、「破綻のあとで」と「ヨーロッパ連合の運命はユーロで決まる」の2本は、初出版の翻訳が先ごろ発売された『デモクラシーか資本主義か』(三島憲一編訳、岩波現代文庫、2019年6月)にも収録されています。後者の論考の初出版タイトルは「我々にはヨーロッパが必要だ」です。

★「新自由主義の幻想が打ち砕かれたのち、誰の目にもあきらかになったのは、金融市場によって、さらにいえば国民国家の境界を越える世界社会の機能システム全般によって作りだされている問題的状況である。個々の国家――あるいは国家連合――では、もはやこれに取り組むことができない。しかし取り組む必要はあり、そこからいわば単数形の政治を求める挑戦が生じる。諸国家からなる国際的な共同体を、諸国家と世界市民からなる世界市民的な共同体へと発展させなければならないのである」(序文、7頁)。「何びとにも等しい権利をグローバルに実現せよという要求」(同、8頁)をめぐる粘り強い考察です。

★『神性と経験』は、『Divinity and Experience: The Religion of the Dinka』(Clarendon Press, 1961)の全訳。「生涯でわずか2冊しか本を残さなかったリーンハートのあの名著が、刊行から約60年を経ていよいよ邦訳なる!」と帯文に記されています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。謝辞にはこうあります。「私がエヴァンズ=プリチャード教授のナイロート研究に、とりわけヌアーの宗教についての彼の業績に恩恵を受けていることはきわめて明白だろう。しかし個人的に彼に負うことの方が大であり、その指導と友情に感謝を込めて、本書を彼に捧げる」(2頁)。監訳者の出口さんによる巻末解説では、本書への歴史学者ダクラス・ジョンソンによる評価を引用しています。曰く「その時代の流行に決して完全に拘束されることなく、後に流行となる話題やアプローチへの道を、それは指し示している。そのような本が『神性と経験』であ〔る。…〕多くの学者が、他の分野における実り豊かな研究に彼らを導いた示唆を、そこに見いだしてきた」。リーンハート(Godfrey Lienhardt, 1921-1993)はイギリスの人類学者。もう一冊の著書は翻訳されています。現在品切ですが『社会人類学』(増田義郎/長島信弘訳、岩波書店、1967年;Social Anthropology, Oxford University Press, 1964)がそれです。

★『プリンシピア 第Ⅲ編 世界体系』は、1977年版単行本の3分冊新書化の完結編。第Ⅲ編「世界体系」を収録。目次は書名のリンク先をご覧ください。「ここに「万有引力の法則」が普遍化され、確立されることになる」(カバー裏紹介文より)。全巻の結びとして書かれたという「一般注」ではニュートンの「神」観が表明されています。曰く「神は永遠にして無限、全能にして全知である。すなわち、永劫より永劫にわたって持続し、無窮より無窮にわたって偏在する。万物を統治し、ありとあらゆるもの、あるいはなされうるすべてのことがらを知っている。神は永遠や無限そのものではないが、永遠なもの、無限なものである。持続や空間が神ではなくて、神は持続し、かつ存在する。いつまでも変わらず、いたるところに存在し、かつ常住普遍の存在によって時間と空間とを構成する」(226頁)。「神はいずれの時、いずれの所においても同一の神である。神は仮想的にだけ偏在するのではなくて、実体的にも偏在するのである。なぜならば、実体なしでは効能は保てないからである。万物は神の中に含まれ、かつ動かされている〔…〕神は物体の運動から何の損害をもこうむることはないし、物体は神の遍在から何も抵抗をも受けない」(227頁)。「彼〔神〕はすべて相似たものであって、すべて眼であり、すべて耳であり、すべて頭脳であり、すべて腕であり、すべてこれ知覚し、理解し、行動する力である」(228頁)。

★『インスマスの影』はチェスタトンやブラックウッド、マッケンなど数多くの翻訳を手掛けてこられた南條竹則さんによる文庫オリジナル新訳。「異次元の色彩」「ダンウィッチの怪」「クトゥルーの呼び声」「ニャルラトホテプ」「闇にささやくもの」「暗闇の出没者」「インスマスの影」の7篇を収録。「ヨグ・ソトホートこそは、天球と天球が出会う門への鍵である。人が今支配する場所を、“かれら”はかつて支配した。“かれら”はまもなく支配するであろう――人が今支配する場所を。夏のあとに冬が来て、冬のあとに夏が来る。“かれら”は忍耐強く、力強く待っている。ここはふたたび“かれら”が統治するのだから」(「ダンウィッチの怪」91頁)、そう『ネクロノミコン』には書いてあります。

★『小泉八雲東大講義録』はちくま文庫版『小泉八雲コレクション』の一冊として2004年に刊行された池田雅之編訳『さまよえる魂の歌』から「ハーンが東京帝国大学で行った講義録16篇を選び、大幅に改訳・修正のうえ新編集したもの」とのこと。目次は書名のリンク先をご覧ください。「文章作法の心得」と題された講義ではこんなことが書かれています。「みなさんに注意を促したい最初の誤りは、創作に関することである。〔…〕教育は〔詩人や物語作家となるための〕何の助けにもならない。〔…〕創作に関する書物を読んでみても、創作の方法は学ぶことはできない。実作によってのみ習得されるという意味では、文学はまさに職人の手仕事なのである」(214頁)。

★『あなたと原爆』は文庫オリジナル評論集。1945年の表題作「あなたと原爆」や、名編として知られる「象を撃つ」など、全16篇を収録。詳細は書名のリンク先をご覧ください。「『一九八四年』に繋がる先見性に富む評論集」とカバー裏紹介文にあります。表題作は「原爆投下のわずかふた月後、その後の核をめぐる米ソの対立を予見し「冷戦」と名付けた」(カバー裏紹介文より)ものとのこと。このエッセイの最後の方にはこんな分析があります。「世界を全体として眺めれば、ここ何十年の趨勢は、無政府状態ではなく奴隷制の復活へと向かっている。我々が向かう先にあるのは、全般的な崩壊ではなく、奴隷制のあった古代帝国と同じように恐ろしくも安定した時代なのかもしれない」(16~17頁)。

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by urag | 2019-09-15 23:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 12日

ブックツリー「哲学読書室」に久保明教さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『ブルーノ・ラトゥールの取説』(月曜社、2019年8月)の著者、久保明教さんによるコメント付き選書リスト「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために」が掲載されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために

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by urag | 2019-09-12 10:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 11日

新規取引店情報:月曜社の本を置いてくださっている本屋さん

2019年9月20日(金)開店
くまざわ書店大分明野店:図書668坪
大分県大分市明野東1丁目1番1号 あけのアクロスタウン二番館(新館)2F
トーハン帳合。弊社へのご発注は芸術書と人文書の主要商品。あけのアクロスタウンはJR大分駅から東に約5キロ、車で約15分のショッピングセンター。1971年にトキハインダストリー明野センターとして開業し、幾度かの増床と改装を経て現在に至ります。紀伊國屋書店大分店(トーハン帳合、2006年4月~2019年4月7日)の閉店跡に出店です。取次さんの7月下旬時点での開店予定日は27日(金)でしたが、一週間早まったようです。開店記念キャンペーンとして、Kポイントキャンペーン、文具セール、ロゴ入りボールペンプレゼント、風船フレゼント、などが実施予定とのことです。

2019年9月27日(金)開店
誠品生活日本橋:約877坪(書籍、文具・雑貨、レストラン、食物販ほか)
東京都中央区日本橋室町3-2-1 COREDO室町テラス 2F
日販帳合。弊社へのご発注は芸術書と人文書の主要商品。台湾のチェーン複合店「誠品生活」が今月27日に開業するCOREDO室町テラス内に日本初出店。注文短冊のみで挨拶状や出品依頼書が一切来ないので、三井不動産と誠品生活と有隣堂の連盟による6月11日更新済のプレスリリースを頼ると、誠品生活は「「Books, and Everything in Between. (本とくらしの間に)」のコンセプトのもと、書店からスタートし、読書と文化の交流を育む場づくりに注力し発展してきた台湾発の文化情報発信拠点」。日本初進出となる「誠品生活日本橋」は「「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」をコンセプトに出店」。店舗設計は台湾の建築家・姚仁喜(クリス・ヤオ)氏が担当。フロアは「誠品書店(書籍)」「文具」「セレクト物販・ワークショップ」「レストラン・食物販」の4ゾーン構成。「日本初進出5ブランドを含む約50の台湾ブランドや、日本をはじめ世界中から洗練されたアイテム、フード、ワークショップなどをセレクト」とのことです。

店舗運営を担当するのは、「HIBIYA CENTRAL MARKET」(東京ミッドタウン日比谷内)などの出店で、従来の書店像を大胆にぶっ壊して賛否を集めてきた有隣堂。「文学の香りただよう書籍ゾーンから「誠品書店」独自の読書文化を提案」し、「最大の特徴である体験型イベントについては、文化人によるトークセッション、音楽イベント、アート展、料理実演など、バラエティに富んだコンテンツを定期的に展開」するとのことです。

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by urag | 2019-09-11 12:25 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 10日

取次搬入日決定:『西洋演劇論アンソロジー』

山下純照/西洋比較演劇研究会編『西洋演劇論アンソロジー』の取次搬入日が決定しました。日販と大阪屋栗田は9月12日(木)、トーハンは9月13日(金)です。

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by urag | 2019-09-10 16:52 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)