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2019年 02月 26日

ブックツリー「哲学読書室」に早尾貴紀さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、エラ・ショハットさんとロバート・スタムさんの共著『支配と抵抗の映像文化――西洋中心主義と他者を考える』(法政大学出版局、2019年1月)の監訳者、早尾貴紀さんによるコメント付き選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化

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by urag | 2019-02-26 12:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 25日

月曜社2月下旬発売済新刊:『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』

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月曜社2月下旬発売済新刊【現代アート】

毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする
十和田市現代美術館編
月曜社 2019年2月 本体2,200円
A5判(縦210mm×横148mm×束13mm)上製140頁(図版4色32頁、論考及資料108頁) ISBN:978-4-86503-071-6 C0070 340g

[寄稿]エマ・ラヴィーニュ(ポンピドゥ・センター)/畠中実(NTTインターコミュニケーションセンター)/小池一子(十和田市現代美術館)/金澤韻(十和田市現代美術館)
[造本]佐々木暁

レコードをスクラッチするレヴェルの小さな摩擦からも、革命は起こっている――。現代美術の旗手、作家本人へのロング・インタビューを含む初の作品集。十和田市現代美術館展覧会(18年10月27日~19年3月24日)公式図録。

「デュシャン的観者は、毛利悠子の作品を前にしてひとりの見物人となり、世界が示す「濁ってあることの豊かさ」に、立ち会いかつ参与する」(エマ・ラヴィーニュ、ポンピドゥ・センター現代美術担当キュレーター/本文より)

毛利悠子(もうり・ゆうこ)1980年生まれ。美術家。磁力や重力、光など、目に見えず触れられない力をセンシングするインスタレーションを制作。2015年、アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のグランティとして渡米。英国カムデン・アーツ・センターでの個展「Voluta」のほか、「アジア・パシフィック・トライアニュアル2018」(オーストラリア)、「リヨン・ビエンナーレ2017」(フランス)、「コーチ=ムジリス・ビエンナーレ2016」(インド)、「ヨコハマトリエンナーレ2014」など国内外の展覧会に多数参加。2015年に日産アートアワードグランプリ、2016年に神奈川文化賞未来賞、2017年に第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

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★扱い書店(◎印は在庫が潤沢にあるお店です)

◆北海道札幌市中央区

◆青森県八戸市

◆宮城県仙台市青葉区

◆東京都千代田区

◆東京都中央区

◆東京都渋谷区

◆東京都新宿区

◆東京都豊島区

◆東京都世田谷区
蔦屋家電 ※3月上旬入荷予定

◆東京都国分寺市

◆京都府京都市左京区

◆大阪府大阪市北区

◆主要通販

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by urag | 2019-02-25 12:29 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 25日

月曜社2019年3月末新刊:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』

月曜社新刊案内【芸術/批評】2019年3月25日取次搬入予定

視覚的無意識
ロザリンド・E・クラウス著
谷川渥/小西信之訳
月曜社 2019年3月 本体4,500円
46判[天地195mm×左右135mm×束31mm]上製528頁
ISBN:978-4-86503-073-0 C0070 重量:640g

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

モダニズムの眼が抑圧している欲望とはなにか? エルンスト、デュシャン、ジャコメッティ、ベルメール、ピカソ、ポロックらの作品のなかに近代の視を土台から蝕むものたち(「肉体的なもの」、「不定形」、「脈動」、「低さ」、「水平性」、「重力」、「痕跡」……)を、フロイト、ラカン、バタイユらの理論を援用しながら見出す試み。モダニズムの中核をなす「視覚性」概念を、主体の精神分析を採り入れつつ批判的に分析する、現代最重要の美術批評家の主著(1993年)、待望の日本語全訳。

目次:
謝辞
one
two
twoマイナスone
two再び
three
four
five
six
six再び
訳者あとがき(谷川渥)
訳者あとがき+(小西信之)
図版一覧
参考文献一覧
索引

ロザリンド・E・クラウス(Rosalind E. Krauss)1940年生。コロンビア大学教授。美術史・美術批評。著作に1985年『オリジナリティと反復』(リブロポート、1994年)、1993年『視覚的無意識』(本書)、1997年『アンフォルム――無形なるものの事典』(イヴ=アラン・ボワとの共著、月曜社、2011年)、1998年『ピカソ論』(青土社、2000年)、1999年『独身者たち』(平凡社、2018年)など。

谷川渥(たにがわ・あつし)1948年生。美学者。東京大学大学院博士課程修了。文学博士。著書に、『鏡と皮膚――芸術のミュトロギア』(ちくま学芸文庫、2001年)、『シュルレアリスムのアメリカ』(みすず書房、2009年)、『新編 芸術をめぐる言葉』(美術出版社、2012年)、『肉体の迷宮』(ちくま学芸文庫、2013年)、『芸術表層論』(論創社、2017年)など。

小西信之(こにし・のぶゆき)1960年生。美術評論。東京藝術大学大学院美術研究科修了。愛知県立芸術大学教授。共著に、藤枝晃雄/谷川渥編著『芸術論の現在』(東信堂、1999年)、多木浩二/藤枝晃雄監修『日本近現代美術史事典』(東京書籍、2007年)など。

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by urag | 2019-02-25 09:09 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 24日

注目新刊:江川隆男『スピノザ『エチカ』講義』、ブライドッティ『ポストヒューマン』、ほか

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

◆江川隆男さん(訳書:ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』)
『アンチ・モラリア――〈器官なき身体〉の哲学』(河出書房新社、2014年6月)以来、約5年ぶりとなる単独著『スピノザ『エチカ』講義』がまもなく発売となります。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。本書の執筆と並行して、江川さんは朝日カルチャーセンター新宿校で『エチカ』をめぐる講義を4年前から行っておられます。2019年度は6月1日の「スピノザ「エチカ」入門――哲学の名著を読む」です。

スピノザ『エチカ』講義――批判と創造の思考のために
江川隆男著
法政大学出版局 2019年2月 本体5,000円 A5判上製406頁 ISBN978-4-588-15098-2
帯文より:待望のスピノザ論、ついに完成! 独自の読解法で稀代の書『エチカ』を読破に導く、類を見ない圧倒的な講義、ここに開幕――。

★帯表4には序論「批判的で創造的な」からの引用が記載されています。「私は、こうした意味での価値評価の破壊と転換を含むスピノザの『エチカ』を人類にとってもっとも重要な書物だと考える。例えば、今、本書を手に取っている読者諸賢も含めて、ほとんどの人が、実際には「哲学は多様であり、また人間にはいろいろな思考の仕方がある」、と考えているのではないだろうか。それは、たしかに正しい理解である。しかしながら、これに対して私は、あえて次のように言いたい――哲学は、実は二種類しかないのだ、すなわち、スピノザの哲学とそれ以外の哲学である、と」(3頁)。

★帯文の引用はここまでですが、本文ではこの次にフィヒテの言葉が引かれます。「私は、もう少し注意しておこう。「自我はある」を踏み超えるときには、人は必然的にスピノザ主義に至らざるをえないのである。(…)また、完全に徹底した体系は二つしかない、すなわち、この〔自我の〕限界を認める批判的体系〔カント〕と、この限界を踏み超えるスピノザの体系とである」(『フィヒテ全集(4)全知識学の基礎』隈元忠敬訳、晢書房、1997年、102頁)。

★スピノザ哲学とはどのようなものなのでしょうか。江川さんは序論の後段で次のように述べておられます。「人間は、ニヒリズムの本性をもつがゆえにつねに自然から超越しようと努力している(進歩あるいは発展の努力)。〔・・・〕スピノザの哲学は、そうしたニヒリズムの人間精神を解体して、人類そのものがまさに特異な〈地球-球体〉という所産的自然――巨大分子――に内在し直すための諸観念から人間精神を再構成しようとする〔…〕。これは、ニーチェと同様に、もっとも哲学的な思考――つまり、本質的に意味の変形と価値の転換からなる哲学――を最大限に有した、その意味でそれらの強度をもっとも有した人類の生ける産物であり、その限りでまさに未来の遺産(つまり、〈未来を思い出すこと〉)である。スピノザの『エチカ』は、人間によって書かれたあらゆる書物のなかで未来の様態のためにもっとも必要なことが書かれている。それは、科学的理性や宗教的精神に絶対に還元されえない哲学的知性によって書かれている。この意味においてスピノザは、ニーチェと同様に、もっとも哲学者らしい哲学者である」(6頁)。

★江川さんは本講義での試みについてこう述べておられます。「例えば、無神論的傾向を一般的にもつ現代人の多くは、おそらく『エチカ』を真剣に読むことが不可能になるだろう。しかし、私がここで提案したいのは、『エチカ』のなかの「神」(Deus)という言葉をすべて「自然」(Natura)という言葉に置き換えて読むことである。スピノザ自身がまさに「神あるいは自然」と言っている以上、この置換は完全に正当化されうる。そこで、次のような定理を事例として挙げてみよう。/(a)すべて在るものは神のうちにあり、そして何ものも神なしには在りえず、また考えられない(第1部、定理15)。/(b)何びとも神を憎むことはできない(第5部、定理18)。/一読してわかるように、無神論的な傾向にある現代人にはおそらく違和感のある文章であろう。しかし、これらの定理のなかの「神」に代わって「自然」という言葉を入れると、この文章は次のようになる。/(a´)すべて在るものは自然のうちにあり、そして何ものも自然なしには在りえず、また考えられない(第1部、定理15)。/(b´)何びとも自然を憎むことはできない(第5部、定理18)。/おそらく何の違和感もなく、多くの人々がこの二つの言説を当然の事柄として受け入れることができると思われる――すべては自然のうちにしか存在しえないし、自然がなければ、何ものも存在しえない。自然は自然法則からしか成立しないのであるから、自然をいくら憎いんでも何にもならない、等々」(16~17頁)。

★周知の通りスピノザ『エチカ』をめぐっては昨年暮に國分功一郎さんの『100分 de 名著 スピノザ 『エチカ』(NHKテキスト、2018年11月)が発売され、12月に放映された同番組全4回は好評を博しました。さらに先月は、法政大学出版局さんより秋保亘(あきほ・わたる:1985-)さんの『スピノザ 力の存在論と生の哲学』が刊行されています。『エチカ』の全訳書は、岩波文庫判全2冊と、中公クラシックス版(『エティカ』)などがあります。江川さんの新刊との併売併読をお薦めしたいです。

◆門林岳史さん(共訳:リピット水田堯『原子の光 影の光学』)
イタリアに生まれオーストラリアやフランスで学び、オランダ・ユトレヒト大学で教鞭を執っている哲学者でありフェミニスト理論家、ロージ・ブライドッティ(Rosi Braidotti, 1954-)さんの単独著『ポストヒューマン』(2013年)の本邦初訳に監訳者として関わっておられます。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻末の訳者あとがきは門林さんによるものです。

ポストヒューマン――新しい人文学に向けて
ロージ・ブライドッティ著 門林岳史監訳 大貫菜穂/篠木涼/唄邦弘/福田安佐子/増田展大/松谷容作訳
フィルムアート社 2019年2月 本体3,000円 四六判上製352頁 ISBN978-4-8459-1725-9
帯文より:新時代の人間論。自己・種・死・理論の先にある新たな生のための、ポストヒューマン理論入門の決定版、待望の刊行! 人文主義の根幹にある近代・西洋・白人・男性的な人間像に異議を突きつけ、新しい人文学(ヒューマニティーズ)のかたちを描き出す。

★原著は『The Posthuman』(Polity Press, 2013)。「人間という概念は、現代科学の進展とグローバル経済の利害という二重の圧力のもとで砕け散ってしまった」(序、10頁)と著者は指摘します。「わたしたちの種、わたしたちの政体、そして、わたしたちがこの惑星の他の居住者たちと取り結ぶ関係にとって、共有の参照項となる基本的単位とは厳密にいって何なのか。この論点は、科学・政治・国際関係が現代において複雑化したなかで、わたしたちが――人間として――共有するアイデンティティの構造そのものにかかわる深刻な問いを提起している」(11頁)。「アカデミックな文化において、ポストヒューマンなるものは、批判理論や文化理論の次なるフロンティアとして賞賛されるか、わずらわしい一連の「ポスト」流行りの最新版として敬遠されるかのどちらかである。ポストヒューマンは、かつての万物の尺度であった「人間〔Man〕」が深刻に脱中心化されている可能性に対して、歓喜のみならず不安をも引き起こしているのである。人間主体についての支配的ヴィジョン、そして、それを中心に据えた学問分野、すなわち人文学〔ヒューマニティーズ〕が、重要性や支配力の喪失を被っているという懸念が広まっているのだ」(同頁)。

★「本書でわたしが取り組みたい主要な問いは以下である。第一に、ポストヒューマンとは何か。より具体的には、わたしたちをポストヒューマンへと導くかもしれない知的および歴史的道程とはどのようなものなのか。第二に、ポストヒューマン的状況において、人間性〔ヒューマニティ〕はどうなってしまうのか。より具体的には、それはどのような新しい主体性のありかたを支持するのか。第三に、ポストヒューマンは、どのようにしてそれ固有の非人間性のありかたを生じさせるのか。より具体的には、わたしたちは自らの時代の非人間的(非人道的)な側面にどのように抵抗しうるのか。そして最後に、ポストヒューマンは今日の人文学の実践にどのような影響を与えるのか。より具体的には、ポストヒューマンの時代において理論が果たす機能とはどのようなものか」(13頁)。

★人文学の未来への展望にとどまらず、本書の知見は書店さんでの人文書の扱いについても様々な示唆をもたらしてくれるはずです。昨年から「ポスト人文学」フェアが複数の書店で開催されてきましたが、ブライドッティの『ポストヒューマン』はフェアの開催後に通常の分野別書棚へと同テーマを落とし込みたい書店さんにとって、鍵となる一冊だと思います。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

絵とはなにか』ジュリアン・ベル著、長谷川宏訳、中央公論新社、2019年2月、本体4,200円、A5判上製280頁、ISBN978-4-12-005167-8
野の花づくし 季節の植物図鑑[春・夏編]』木原浩著、平凡社、2019年2月、本体3,000円、AB判並製192頁、ISBN978-4-582-54255-4
叛徒と隠士 周作人の一九二〇年代』小川利康著、2019年2月、本体4,500円、4-6判上製404頁、ISBN978-4-582-48223-2

★『絵とはなにか』は『What is Painting?』(Thames & Hudson, 1999; New edition, 2017)の訳書。初版のみ副題「Representation and Modern Art」が付されています。著者のジュリアン・ベル(Julien Bell, 1952-)はイギリスの画家であり批評家。単独著の訳書は『アート・ライブラリー(16)ボナール』(島田紀夫/中村みどり訳、西村書店、1999年)以来のもの。帯にはゴンブリッチの言葉「新鮮で独創性に満ちた労作だ」が引かれています。カラー図版多数。目次は以下の通りです。

はじめに
第一章 図像としるし
 原物と図像
 自然の模倣
 絵としるし
 様式と置き換え
 創造と凝視
第二章 見ることと知ること
 人物像と観察
 知のモデルとしての絵
 写真とリアリズム
 感覚
 セザンヌ以後のリアリズム
第三章 形と時間
 形と物体
 時間と物語
 歴史画の歴史
 美と現代性
 モダニズムの時代
 ポストモダンと神話
第四章 表現
 表現の意味
 市場と個人
 色
 心と精神
 体
 伝達
第五章 芸術のもつさまざまな意味
 比較と凝視
 自由としての芸術
 特定の媒体と特定の対象
 お笑い
第六章 再現
 再現のさまざまな段階
 「理論」
 「絵の死」
 絵画へと向かう絵
謝辞
訳者あとがき
図版一覧
参考文献
索引

★著者は「はじめに」でこう書いています。「絵とはなにかという総合的な問いは、たとえば以下のような問いに枝分かれしていく。/「絵」と呼ばれる対象を統一するなにかがあるのか。/近代美術において再現という考えになにが起こったのか。/過去の200年にわたる絵の性質の変化はどんな要因によって引き起こされたのか。/古くからの絵の制作活動は現代世界ではどうなっているのか。/本書の六章は、歴史的な証拠に着目しつつ、身近な経験にもとづく推論によって、右〔=以下〕の問いに答えようとするものだ。/第一章では、絵の性質についての西洋の伝統的な考えと、絵についてのわたしたちの感情の土台となるいくつかの事柄を見ていく。第二章は、絵と写真との歴史的な関係を議論するが、そこには「知識」や「現実」や「感覚」をめぐる問いがふくまれる。第三章は、「近代」の観念と近代人の変わりゆく時間・空間の理解との関係を問題とする。この変化は「近代」の(あるいは「近代後〔ポストモダン〕の」)芸術を定義する助けとなろう。第四章は、個の表現という観念が、西洋文化における絵の制作活動をどう形成していったかについて考える。第五章は、絵と呼ばれる特定の美術と、彫刻その他の美術と、「芸術」そのものの概念との相互関係を考える。最後の第六章では、絵とアカデミズムの絵画理論との関係を議論し、絵の行くすえについて理論的な言及を試みる。各章は独立しているのではなく、章が進むごとに議論が発展していく」(2~3頁)。

★本書はいったん初版本で訳し終わったものの、その後新版が刊行されたために訳し直したとのことで、編集者と訳者の多大な労苦の一端が訳者あとがきで言及されています。「新版が出るや、〔編集担当の〕橋爪さんは新旧二版を突き合わせ、コンマや引用符の有無、単語の差しかえ、図版との対応のさせかた、引用文献の変更その他、こまかいところまで丁寧に照合し、異同の一つ一つを旧版に記入して見せてくれた」(249頁)。編集者が実際そこまでケアするのはなかなか大変なことです。本書刊行に賭ける情熱を感じます。

★『野の花づくし 季節の植物図鑑[春・夏編]』は日本の植物を美麗なカラー写真と軽妙なエッセイで紹介する図鑑の春夏編。春は90種、夏は68種の植物を収録。もともとは2003年から2014年にかけて各紙誌で発表してきたもの。眺めているだけで穏やかな気持ちになれる素晴らしい図鑑です。秋冬編の刊行も楽しみ。

★『叛徒と隠士 周作人の一九二〇年代』はかの魯迅の実弟、周作人(1885-1967)の「日本留学時代から始まる二十年弱にわたる〔…〕文学活動の諸相を論じるもの」(はしがき、12頁)。「文学革命(1917年)前後からの十年間にわたる文学理念の変遷を詳細に検討し、五・四運動後の挫折から再生に至る複雑な過程を極力明快に一つの脈絡のなかで描き出すことを目指した。周作人の複雑な思惟のすべてをトレースできたとは言い難いが、主要な問題点は網羅てきたのではないかと思う」(12~13頁)と。主要目次は以下の通りです。

はしがき
序論 内なる「叛徒」と「隠士」の葛藤
第一章 日本文化との邂逅――周作人における「東京」と「江戸」
第二章 人道主義文学の提唱とその破綻
第三章 失われた「バラ色の夢」――『自分の畑』における文学観の転換
第四章 「生活の芸術」と循環史論――エリスの影響

あとがき
主要引用・参考文献一覧
周作人略年譜及び関連事項
人名索引

★なお平凡社さんでは「東洋文庫」で『周作人読書雑記』(全5巻、中島長文訳注、2018年)を刊行しておられます。

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by urag | 2019-02-24 19:15 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 22日

本日取次搬入:ハナ・ロスチャイルド『パノニカ――ジャズ男爵夫人の謎を追う』

弊社2月新刊、ハナ・ロスチャイルド『パノニカ――ジャズ男爵夫人の謎を追う』(小田中裕次訳)を本日取次搬入いたしました。日販、トーハン、大阪屋栗田、ともに本日2月22日搬入です。書店さんの店頭に並び始めるのは、来週中盤以降かと思われます。どうぞよろしくお願いいたします。

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by urag | 2019-02-22 17:33 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 21日

保管:2017年11月~2018年2月既刊情報

弊社にとって初めての自社発行雑誌となる「多様体」の創刊号を刊行したのが1年前でした。目下2号と3号が同時進行しています。

◎2018年2月16日発売:『多様体 第1号:人民/群衆』本体2,500円
 宮﨑裕助氏書評「現代日本の思想誌の最良の命脈を継承」(「週刊読書人」2018年4月13日号)
◎2018年1月31日発売:ヴィンフリート・メニングハウス『生のなかば』本体2,500円、叢書・エクリチュールの冒険第10配本。
 廣川智貴氏書評「すぐれた教師による「精読」の集中講義――ヘルダーリン詩学全体、そして同時代の思想へと開かれた一書」(「図書新聞」2018年7月21日号)
 守中高明氏書評「古典的文学研究の静かな凄み――巨大な問題系への繊細で厳密な通路」(「週刊読書人」2018年8月10日号)
◎2017年11月29日発売:ジャン・ウリ『コレクティフ』本体3,800円
◎2017年11月1日発売:南嶌宏『最後の場所』本体3,500円

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by urag | 2019-02-21 11:58 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 18日

ブックツリー「哲学読書室」に伊藤嘉高さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ブリュノ・ラトゥール『社会的なものを組み直す――アクターネットワーク理論入門』(法政大学出版局、2019年1月)の訳者、伊藤嘉高さんによるコメント付き選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか

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by urag | 2019-02-18 16:43 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 18日

注目新刊:荒木優太『無責任の新体系』、『現代思想』臨時増刊号「ジュディス・バトラー」

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の方々の最近のご活躍をご紹介します。

★荒木優太さん(著書:『仮説的偶然文学論』)
晶文社さんの読み物サイト「晶文社スクラップブック」での連載「きみはウーティスと言わねばならない」(全23回、2016年12月~2018年10月)を大幅に書き直した『無責任の新体系』が同社より今月発売されました。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。

無責任の新体系――きみはウーティスと言わねばならない
荒木優太著
晶文社 2018年2月 本体1,800円 四六判上製216頁 ISBN978-4-7949-7076-3
帯文より:作戦名は「ウーティス(誰でもない)」。和辻哲郎とハンナ・アレントと悪魔合体した分人日本文化論を斥け、高橋哲哉で歴史的主体にドーピングした結果、ロールズとレヴィナスとテクスト論でテンションマックスに達するフリーター系社会超批評!

★ジュディス・バトラーさん(著書:『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★佐藤嘉幸さん(共訳書:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★廣瀬純さん(著書:『絶望論』、共著:コレクティボ・シトゥアシオネス『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★清水知子さん(著書:『文化と暴力』、共訳書:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
2018年12月のバトラーさんの来日講演を含む「現代思想」誌の臨時増刊号『現代思想 2019年3月臨時増刊号 総特集=ジュディス・バトラー:『ジェンダー・トラブル』から『アセンブリ』へ』(青土社、2019年2月、本体1800円、A5判並製310頁、ISBN978-4-7917-1377-6)が発売されました。ジュディス・バトラーさんのテクストは4本掲載されています。

「この生、この理論」坂本邦暢訳、2018年12月6日、明治大学での講演会の原稿。
「非暴力、哀悼可能性、個人主義批判」本荘至訳、2018年12月11日、明治大学での講演会の原稿。
「メルロ=ポンティと、マルブランシュにおける「触れること」」合田正人訳、『The Cambridge Companio to Merleau-Ponty』2004年所収。 
「恐れなき発言と抵抗」佐藤嘉幸訳、ディスカッション・セミナー「ジュディス・バトラー『アセンブリ』検討会」京都大学人文科学研究所、2018年12月9日での導入講演。

同じくこのセミナーにおけるバトラーに対する三氏のコメントも掲載されています。 

佐藤嘉幸「個人的パレーシアから集団的パレーシアへ――「恐れなき発言と抵抗」へのコメント」
廣瀬純「民主主義の彼方へ――「恐れなき発言と抵抗」へのコメント」
清水知子「「現れの政治」が「忘却の穴」に突き落とされる前に考えるべき三つのこと――「恐れなき発言と抵抗」へのコメント」

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by urag | 2019-02-18 15:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 17日

注目新刊:スカル『狂気――文明の中の系譜』東洋書林、ほか

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★最近購入した文庫新刊はいずれも「老境」ないし「成熟」というものと無縁ではない内容で、時を経て得た光景の、見た目の単純さとはうらはらの曰く言い難いニュアンスを感じさせます。

古今和歌集全評釈(上)』片桐洋一注釈、講談社学術文庫、2019年2月、本体3,000円、1096頁、ISBN978-4-06-514740-5
古今和歌集全評釈(中)』片桐洋一注釈、講談社学術文庫、2019年2月、本体2,950円、992頁、ISBN978-4-06-514741-2
古今和歌集全評釈(下)』片桐洋一注釈、講談社学術文庫、2019年2月、本体2,900円、944頁、ISBN978-4-06-514742-9
老年について 友情について』キケロー著、大西英文訳、講談社学術文庫、2019年2月、本体1,180円、320頁、ISBN978-4-06-514507-4
いまこそ、希望を』サルトル/レヴィ著、海老坂武訳、光文社古典新訳文庫、2019年2月、本体860円、209頁、ISBN978-334-75395-5
夢の本』ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、堀内研二訳、河出文庫、2019年2月、本体1,200円、352頁、ISBN978-4-309-46485-5
老境まんが』山田英生編、ちくま文庫、2019年2月、本体780円、384頁、ISBN:978-4-480-43581-1

★『古今和歌集全評釈』は1998年に講談社で刊行された単行本全3巻の文庫化です。「万物すべてが歌を歌う」(「真名序」第二節ノ一、上巻283頁)と説いた日本最初の勅撰和歌集を、一首ごとに原文、要旨、通釈、語釈、校異、他出、鑑賞と評論、注釈史・享受史などを加えて読者に提供する決定版。講談社学術文庫ではかつて久曽神昇さんによる全訳注書4巻本を1979年から1983年にかけて刊行していましたが、こちらは品切。今回の片桐版はそれぞれ1000頁近い大冊で、3巻揃えて買うと10000円近い最重量級の文庫本。講談社の気概を感じます。

★『老年について 友情について』は文庫オリジナルの新訳。「最晩年の著作のうち、最も人気のある二つの対話篇」(カバー裏紹介文より)を収録。入手しやすい既訳では「老年について」「友情について」はともに中務哲郎訳を岩波文庫で読むことができます。今回の新訳の底本はJ・G・F・パウエル編Oxford Classical Texts(2006年)版です。巻末解説はキケローの人となりの紹介にも頁を割いており、共和政ローマ末期における政治家にして哲学者の生きざまへの理解を助けてくれます。

★『いまこそ、希望を』はサルトルの最晩年のインタビュー(1980年)。元「毛沢東」派の秘書による「尋問調」が多くの関係者を怒らせた問題作です。訳者による解説ⅠとⅡは「朝日ジャーナル」初出時(「いま 希望とは」1980年4月)のもの。巻頭の「はじめに」と解説Ⅲ、年譜、訳者あとがきは文庫化において追加されたものです。サルトルが自省とともに語る最後の境地が文庫で読めるようになったのは非常に有益なことです。

★なお光文社古典新訳文庫の来月刊行予定では、アリストテレス『詩学』三浦洋訳、ジッド『ソヴィエト旅行紀』國分俊宏訳、などが予告されていて非常に楽しみです。

★『夢の本』は国書刊行会の「世界幻想文学大系」の第43巻(1983年、新装版1992年)を文庫化したもの。古今東西の文献から「夢」めぐる断片を集めたもので、ボルヘス自身の作品も含む113篇が編まれています。巻末解説は作家の谷崎由依さんによる「秩序と混沌」。帯文にも引かれた「夢は現実の影なんかではない。蔑ろにしていると、いつかきっと痛い目に遭う」という谷崎さんの言葉の重みが沁みる一冊。

★『老境まんが』は『ビブリオ漫画文庫』『貧乏まんが』に続く山田英生さん編のマンガアンソロジー。個人的には今回の新刊が一番味わい深く感じました。一編ずつをゆっくり読みたい本です。特にかの高名な、「ペコロスの母に会いに行く(抄)」はほのぼのとした空気感の中にも涙をこらえがたい名作で、自宅以外では絶対にひもとけません。

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★続いて最近の注目新刊を2点。

左派ポピュリズムのために』シャンタル・ムフ著、山本圭/塩田潤訳、明石書店、2019年2月、本体本体2,400円、4-6判上製152頁、ISBN978-4-750-34772-1
クルアーン――やさしい和訳』水谷周監訳著、杉本恭一郎訳補完、国書刊行会、2019年2月、本体2,700円、四六判並製644頁、ISBN978-4-336-06338-0

★『左派ポピュリズムのために』は『For a Left Populism』(Verso, 2018)の全訳。単独著としては4冊目の日本語訳となります。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「左派ポピュリズムとは、新自由主義的なヘゲモニー編成のなかで、制度からこぼれ落ち、あるいは資本によるむき出しの暴力によって傷つけられた人々が、制度外の闘争から制度内へと政治的介入を行う戦略なのだ。この介入がめざすのは、権力の掌握ではない。そうではなく、国家の政治的、社会‐経済的役割の回復と深化、そしてそれらを実現するための民主的な国家運営こそが重要なのだ」(訳者解題、139頁)。同解題によれば、先だって同版元から刊行されたラクラウ『ポピュリズムの理性』が理論篇であるとすれば本書は実践篇であるとのことです。「〈少数者支配(オリガーキー)〉に立ち向かう」という帯文が力強いです。

★『クルアーン』は2014年に日亜対訳の新訳本が作品社から刊行されたばかりですが、今般また新たな新訳が上梓されました。「はじめに」によれば「本書の狙いは、タイトルの『クルアーン――やさしい和訳』にすべてが込められている。従来よく聞かれたことだが、頑張って読んでも分からないという強い訴えの声に背中を押された格好だ」とのこと。巻末資料は、「イスラーム信仰について」「各章見出し一覧」「繰り返し論法と同心円構造」「予言者一覧」「クルアーン関係年表」「参考文献」「索引」。値段も税込で3000円以内と求めやすい価格です。

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★また、最近では以下の2冊との出会いがありました。

狂気――文明の中の系譜』アンドルー・スカル著、三谷武司訳、東洋書林、2019年2月、本体5,400円、A5判上製460頁、ISBN978-4-88721-826-0
これからの本の話をしよう』萩野正昭著、晶文社、2019年2月、本体1,700円、四六判並製304頁、ISBN978-4-7949-7075-6

★『狂気』は『Madness in Civilization: A Cultural History of Insanity, from the Bible to Freud, from the Madhouse to Modern Medicine』(Thames & Hudson, 2015)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「狂気は芸術家、劇作家、小説家、作曲家、聖職者、それに医師や科学者の関心の中心を占め続けてきた〔…〕狂気は文明の外部に位置づけられるようなものではない。それは否応なくすでにして文明の一部なのである」(6頁)。「文明と狂気の関係を、複雑で多義的な両社の相互作用を〔…〕追究し解明」(7頁)する、と。古代から現代まで、文明の内部に狂気を位置づけ直す文化史。著者スカル(Andrew Scull, 1947-)は英国出身で米国カリフォルニア大学サンディエゴ校で教鞭を執っているとのことです。

★『これからの本の話をしよう』は日本におけるデジタル出版事業を牽引してきた株式会社ボイジャーの創業者で現在は取締役の萩野正昭(はぎの・まさあき:1946-)さんの四半世紀にわたる活動とこれからの展望をめぐる書き下ろし。第1章「メディアは私たちのもの」は萩野さんの現在の仕事と将来への課題について。第2章「なぜ出版、どうしてデジタル」は米国ボイジャーの創業者ボブ・スタインについて。第3章「本はどこに向かっていくのか」は「誰かに与えられるコンテンツから、自分が発信する道をどうやったら開いていけるのか」(17頁)を問うもの。第4章は鈴木一誌さんによるインタヴュー記事の再録(『d/SIGN』第18号、2010年)。出版人必読の一書。

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by urag | 2019-02-17 22:51 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 15日

「みすず」誌読書アンケート特集号に弊社刊『仮象のオリュンポス』評

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月刊誌「みすず」の毎年恒例の「読書アンケート特集」(2019年1/2月678号)で、弊社の昨春の既刊書、佐藤真理恵『仮象のオリュンポス――古代ギリシアにおけるプロソポンの概念とイメージ変奏』を、岡田温司さんと上村忠男さんが取り上げて下さいました。

「顔=仮面」とは何かという永遠のテーマについて、テクストとイメージの両面から挑んだ意欲作である。(岡田さん)
古代ギリシアにおいては、プロソポンという一語のなかに、「顔」と「仮面」という、近代人の共通理解からすると相反するかにみえる二つの意味が同じ地平に位置づけられ、矛盾することなく共存しえていた。これはどうしてであったのかという疑問に端を発して、その概念系とイメージ変奏の諸相を古典文献や陶器画などのアナクロニックな比較分析をつうじて解明しようとした、新鋭による刮目すべき試み。(上村さん)

なお、同誌では弊社出版物の著訳者である星野太さんや、郷原佳以さんも寄稿されています。

『仮象のオリュンポス』は「シリーズ・古典転生」の本巻16です。同シリーズでは今月と来月、以下の新刊を発売いたします。
2月下旬:第18回配本、本巻18:須藤温子『エリアス・カネッティ――生涯と著作』
3月上旬:第19回配本、本館19::筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究――その作品における形象と装飾性』

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by urag | 2019-02-15 19:45 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)