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2018年 09月 30日

注目新刊:『マルセル・デュシャン アフタヌーン・インタヴューズ』、ほか

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マルセル・デュシャン アフタヌーン・インタヴューズ――アート、アーティスト、そして人生について』マルセル・デュシャン/カルヴィン・トムキンズ著、中野勉訳、河出書房新社、2018年9月、本体2,100円、46変形判上製184頁、ISBN978-4-309-25606-1
海の歴史』ジャック・アタリ著、林昌宏訳、プレジデント社、2018年9月、本体2,300円、四六判上製400頁、ISBN978-4-8334-2297-0
自殺論』デュルケーム著、宮島喬訳、中公文庫、2018年9月、本体1,500円、文庫判712頁、ISBN978-4-12-206642-7
機械カニバリズム――人間なきあとの人類学へ』久保明教著、講談社選書メチエ、2018年9月、本体1,650円、四六判並製224頁、ISBN978-4-06-513025-4
ルイ・アルチュセール――行方不明者の哲学』市田良彦著、岩波新書、2018年9月、本体860円、新書判272頁、ISBN978-4-00-431738-8
情報生産者になる』上野千鶴子著、ちくま新書、2018年9月、本体920円、新書判384頁、ISBN978-4-480-07167-5

★『マルセル・デュシャン アフタヌーン・インタヴューズ』は、『Marcel Duchamp: The Afternoon Interviews』(Badlands Unlimited, 2013)の全訳。訳者あとがきによれば、1964年3月頃に収録されたと思しい「録音テープにして七時間ほどにも及ぶというこの対話は、以前からトムキンズのデュシャン伝(原書初版1996年〔『マルセル・デュシャン』木下哲夫訳、みすず書房、2003年〕)で随所に引用されていたとはいえ、その全容が明らかになるのは今回が初めて」だとのことです。デュシャンの語り口は砕けていて親しみやすく、今なお示唆的です。印象的な部分を抜き出します。

トムキンズ「「アートなんて簡単だ」という考え方が拡まってきていると思われますか?」
デュシャン「やるのがもっと簡単になったっていうんじゃあないんです。ただ、発表の場がむかしより増えている。アートをカネと交換するっていうのはあの当時はごく少数のアーティストにとってしか存在してなかった。1915年には、アーティストとして生きるというのは、カネ儲けを目指す提案としては存在していなかった――およそそんなじゃあなかった。現代では惨めな暮らしをしている人がむかしより多いけれども、それは絵画で生計を立てようとして、できないからです。競合がすごいんだ。」
トムキンズ「ですが、新しいアート活動がこれだけ起きているというのは、或る意味で健康なしるしなのでは?」
デュシャン「そういう面はある、社会という観点から考えるんならね。ただ、美学の観点からすればたいへん有害だと思います。わたしの意見では、こんなに生産が活発になっては、凡庸な結果しかでてこない。あんまり繊細な作品を仕上げる時間的余裕がない。生産のペースが猛烈に早くなってしまったんで、また別の種類の競争になるわけだ」(47~48頁)。

デュシャン「人がアートのことを、すごく宗教めいたレベルで喋々したりするときは、自分に対して心の中で、崇め奉るのに値するようなところなんざアートにはろくろくありゃあしないんだ、と説明しようとします。麻薬ですよ。〔…〕」(104頁)。

トムキンズ「〔…〕アートは魔術だと考えたいという立場でいらっしゃいますか?」
デュシャン「続ければ続けるほど、これぽっちも可能性がないという気がしてきます。〔…〕見物人とアーティストのあいだのちょっとしたゲーム。〔…〕だからその魔術の部分――そこのところは、わたしはもう信じていない。言うなれば、アートの不可知論者なんでしょうな、わたしは。お飾りもみんな、神秘主義のお飾りも、崇拝のお飾りもひっくるめて信じない。麻薬としては、たくさんの人たちにとってたいへん役に立つんです。鎮痛剤ですよ」(104~106頁)。

トムキンズ「アートでいっぱいの人生を過ごしてこられました、でもあまりアートを信じてはいらっしゃらないみたいですね。」
デュシャン「わたしはアートってものを信じない。アーティストってものを信じてます」(174頁)。

★本年2018年はデュシャンの没後50年であり、まもなく10月2日より12月9日まで、東京国立博物館で特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」が催されます。本書の帯にはこの展覧会の100円割引券が付いています。

★『海の歴史』は『Histoires de la mer』(Fayard, 2017)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。本書の書き出しはこうです、「海には、富と未来のすべてが凝縮されている。海を破壊し始めた人類は、海によって滅びるだろう」(15頁)。「海と直接関係のない発展モデルも含め、人類が自分たちのモデルを根本的に変化させない限り、海は救われないだろう。/私は本書で「包括的な歴史」を記そうと試みる。それは時空を超える壮大な世界観の歴史書である。私はすでに海以外のテーマでそうした書物を著してきた(音楽、医学、教育、時間、所有、ノマディスム、ユートピア、イデオロギー、ユダヤ、近代性、愛、予測などについてである)」(21頁)。本書のまず最初の6章で、130億年前から西暦2017年までの海の歴史が概観されます。こうした壮大な視点はアタリならではのものです。続く各章で、漁業や海洋経済、海洋地政学、環境問題、自由の象徴としての海、などが論じられ、最終章となる第12章「海を救え」では、アタリの近年の訳書と同じように、個人から社会、そして国際レベルまでの具体的な対応策と政策が提示されます。また、人類を含む生物種の大量絶滅シナリオを予測した第11章「未来:海は死ぬのか?」では、現代人が広く共有すべき海洋環境問題の諸側面を簡潔に整理されています。海に囲まれた島国に住む日本人にとっても本書は重要でしょう。



★『自殺論』は中公文庫プレミアム「知の回廊」シリーズの最新刊。1985年に刊行された文庫版の改版です。巻末に新たに付された訳者による「新装版の刊行にあたって」によれば、「若干の訳の修正と、表記の変更」が施されているとのことです。また、旧版の巻末にあった原注や訳注は各章末に移設されています。帯文には内田樹さんの推薦文が記されています。曰く「社会学的知性とはどのようなものか。それを知るにはデュルケームとヴェーバーを読めばとりあえず十分だと思う。/知性が大胆であると同時に謙抑的であることのみごとな実例に出会うことができる」。シリーズの続刊予定は告知されていませんが、ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』、デカルト『方法序説・情念論』、マルサス『人口論』、ブルトン『超現実主義宣言』、ゲーテ『ファウスト』、キルケゴール『不安の概念』、ケレーニイ『ギリシアの神話』、ミシュレ『愛』、そして『ハディース』『ポポル・ヴフ』といったあたりが思い浮かびます。ニーチェ『悲劇の誕生』や、ホイジンガの『中世の秋』は中公クラシックスでも刊行しているので、文庫での再刊は難しいでしょうか。

★『機械カニバリズム』は『ロボットの人類学――二〇世紀日本の機械と人間』(世界思想社、2015年)に続く、久保明教(くぼ・あきのり:1978-:一橋大学大学院社会学研究科准教授)さんの単独著第二弾。「人類学者エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロは、南米における「カニバリズム(食人)」を「他者の視点から自らを捉え、自己を他者としてつくりあげるための営為」として描きだした。本書では、彼の議論を踏まえて、機械という他者の視点から自己を捉え自己を変化させていく営為を、「機械のカニバリズム」と呼び、その問題点と可能性を探っていく」(5頁)と「はじめに」に記されています。この「はじめに」や本書の目次詳細、第1章「現在のなかの未来」の冒頭部分は、書名のリンク先で立ち読みすることができます。「AIブーム、将棋ソフト開発、現代将棋の変容、SNS、生政治学、計算主義批判、モニタリング社会、さまざまなトピックが濁流のように連なっていく本書の記述は、私たちが自らを同一視している「人間」という形象から離脱する可能性とその困難を探る「人間なきあとの人類学」の構想へと向かう。〔…〕いったい私たちはいかなる存在であり、いかなる存在でありうるだろうか」(同頁)。目下大型書店チェーンの主要店を中心に人文書売場で新設されつつある「ポスト・ヒューマン」棚において欠かせない一冊です。

★『ルイ・アルチュセール』は『アルチュセール ある連結の哲学』(平凡社、2010年)以来となる市田さん入魂のアルチュセール論。「行方不明者の生涯」「偶然性唯物論とスピノザ――問題の「凝固」」「『資本論を読む』またはスピノザを読む」「構造から〈私〉と国家へ」「スピノザから遠く離れて」の五章立て。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。帯文には浅田彰さんの推薦文が載っています。曰く、「「哲学とは理論における階級闘争だ」とアルチュセールは喝破した。退屈な秀才どもの口先だけの哲学ごっこを忘れ、闘争を続行するために、まずはこのアルチュセール論を読まねばならない」。巻末の謝辞の筆頭にはアレクサンドル・マトゥロンの名前が挙がっています。マトゥロンの未訳のスピノザ論2点が「本書のアイデアの根幹」を支えているとのことです。ちなみに市田さんがアレクサンドルの息子であるフランソワ・マトゥロンの近著『もはや書けなかった男』(航思社、2018年4月)の原著および訳書の刊行に多大な貢献を果たしておられることは周知の通りです。

★『情報生産者になる』は帯文に曰く「知的生産の教科書」。「数々の人材を輩出した東大上野ゼミ、だれでもわかるメソッド公開」とあります。巻頭の「はじめに」にはこう書かれています。「わたしの大学での授業の目的は、いつも「情報生産者になる」ことでした」(10頁)。「情報の消費者には「通」から「野暮」までの幅があって、情報通で情報のクォリティにうるさい人を、情報ディレッタントと呼びます」(同頁)。「私は学生にはつねに、情報の消費者になるより、生産者になることを要求してきました。とりわけ、情報ディレッタントになるより、どんなにつたないものでもよい、他の誰のものでもないオリジナルな情報生産者になることを求めました」(11頁)。「何よりも情報生産者になることは、情報消費者になることよりも、何倍も楽しいし、やりがいも手応えもあります。いちど味わったらやみつきになる……それが研究という極道です」(同頁)。誤解を恐れずに比較して言えば、本書は過日発売された川崎昌平さんの『労働者のための漫画の描き方教室』(春秋社)のいわば研究者版と言えると思います。つまり「自分も書いてみよう」という挑戦への勇気をもらえる本なのです。ちなみに本書の終わり付近では、出版社に対する企画提案書類の「四点セット」が説明されています。これは本当に必要なものです。その割には実際には揃っていないことが多いだけに、多くの研究者さんに周知していただいた方がいいと感じました。

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★また、最近では以下の新刊との出会いがありました。

アゲハチョウの世界――その進化と多様性』吉川寛/海野和男著、平凡社、2018年9月、本体3,400円、B5変型判並製152頁、ISBN978-4-582-54256-1
スクリーンの裾をめくってみれば――誰も知らない日本映画の裏面史』木全公彦著、作品社、2018年9月、本体2,000円、四六判並製264頁、ISBN978-4-86182-716-7
現代思想2018年10月号 特集=大学の不条理――力の構造』青土社、2018年9月、本体1,400円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1371-4
現代思想2018年10月臨時増刊号 総特集=仏教を考える』青土社、2018年9月、本体2,600円、A5判並製422頁、ISBN978-4-7917-1372-1

★『アゲハチョウの世界』は、約150種のアゲハチョウを美麗なフルカラー写真とともに紹介。ウスバアゲハ亜科(ウスバアゲハ族、ホソオチョウ族)やアゲハチョウ亜科(ジャコウアゲハ族、アゲハチョウ俗、アオスジアゲハ族)などが、標本ではなく、自然の中で飛んでいたり羽を休めていたりする写真が収められており、図鑑とはまた違う趣きがあります。「世界のアゲハチョウと日本のアゲハチョウ」「生き残るための知恵」「種分化の仕組みを探る」の三章立て。序文に曰く「本書は世界の研究者のDNA研究と海野の美しい生態写真が縦糸と横糸になって紡ぎ出す、アゲハチョウが語るさまざまな物語です」。ごく一部ですが、幼虫や卵が登場するので、苦手な方はお気をつけください。

★『スクリーンの裾をめくってみれば』は、あとがきによればマーメイド・フィルム主宰のウェブサイト「映画の國」での連載コラム(2006年3月~2017年5月)の中から「戦後の日本映画の、主にピンク映画と呼ばれる独立系成人映画周辺の作品や実演について書いた文章をまとめたもの」。単行本化にあたり「初出の間違いを訂正し、加筆改稿」のうえ、書き下ろし一篇を加えたとのことです。「黒澤明のエロ映画?」「ピンク映画と実演――名古屋死闘篇」「日劇ミュージックホールと映画人」「野上正義の遺言」「三國連太郎『台風』顛末記」「テレビ・ディレクターが撮ったピンク映画」「長谷川和彦の幻のデビュー作」の全7章で、最後の「長谷川~」が書き下ろしです。なお連載コラムというのは「日本映画の玉(ギョク)」のことかと思います。

★『現代思想2018年10月号 特集=大学の不条理――力の構造』は巻頭に吉見俊哉さんへのインタヴュー「大学の不条理と未来――単線から複線へ」を置き、続いて4つのセクション――「ハラスメントの構造」「それぞれの不条理」「制度への問い」「人文学と芸術学の行方」――に14篇の論考と1篇の討議(谷口暁彦/ドミニク・チェン「学校内学校を作ることから始める――大学はひとつではない」)を収めています。初見基「日本大学事件の向こうに見えるもの」、大内裕和「奨学金問題の現状と今後の課題」、重田園江「政治と行政について――「官邸」と「官僚」」、岡﨑乾二郎「芸術教育とは何か?」、松浦寿夫「メディウムについて」など。次の11月号は「特集=「多動」の時代」。伊藤亜紗さんと貴戸理恵さんの討議のほか、グレーバーや松本卓也さんのテクストを収録予定とのことです。

★『現代思想2018年10月臨時増刊号 総特集=仏教を考える』は、碧海寿広/大谷栄一/近藤俊太郎/林淳、の4氏による討議「いまなぜ近代仏教なのか」のほか、6つのセクション――「仏教とは何か」「仏教の可能性を考える」「仏教・国家・民衆」「仏教と文学」「仏教と神々」「仏教と/の神秘思想」――に31篇の論考を収録。末木文美士「娯楽か信心か――釈迦伝を通して近世仏教を考える」、大澤真幸「法然、親鸞、そして聖霊へ」、彌永信美「生きている仏教――「生身の仏像」をめぐって」、鎌田東二「日本仏教と神仏習合文化――「日本と申す泥沼」に咲いた蓮の華」などが掲載されています。

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by urag | 2018-09-30 23:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 23日

注目新刊:工作舎版『ライプニッツ著作集 第I期 新装版』刊行開始

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ライプニッツ著作集 第I期 新装版[8]前期哲学』G・W・ライプニッツ著、西谷裕作/竹田篤司/米山優/佐々木能章/酒井潔訳、工作舎、2018年9月、本体9,000円、A5判上製函入448頁+別丁8頁、ISBN978-4-87502-496-5

★今年6月に完結した『ライプニッツ著作集』第Ⅱ期全3巻に続き、第Ⅰ期全10巻が新装版で今月より順次刊行開始となっています。函入本がカバー装に変更され、さらに本文の紙色×刷色が、薄灰色×薄墨色(第8巻ではそう見えたのですが、それ以外では刷色は墨色に見えます)から白色×墨色に変更されています。カバーのデザインは第Ⅱ期と同様ですが、新装版第Ⅰ期では金箔があしらわれており、目にも鮮やかです。新旧どちらのデザインも美しく、第Ⅰ期旧版をお持ちの方も新装版を久しぶりに買い揃えるのが吉かと思います。新装版全巻の特典予約として、旧版月報を冊子にまとめた「発見術への栞」がもらえるとのことです。第1回配本は第8巻「前期哲学」で『形而上学叙説』『アルノーとの往復書簡』などを収録。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。第2回以降の配本予定は以下の通りです。第Ⅰ期旧版と第Ⅱ期の書目も掲出しておきます。また、明日日中に紀伊國屋書店新宿本店にて行われる関連イベントの情報も記しておきます。イベント会場では旧版品切本の販売もあり、『ライプニッツ著作集』のいずれか1点をお買い求めになると特別に小冊子「発見術への栞」が進呈されると聞いています。

第Ⅰ期全10巻新装版(2018年9月~)
第1回配本2018年09月:第8巻前期哲学
第2回配本2018年11月:第4~5巻認識論(人間知性新論 上下巻)
第3回配本2019年01月:第10巻中国学・地質学・普遍学
第4回配本2019年03月:第6~7巻宗教哲学(弁神論 上下巻)
第5回配本2019年05月:第3巻数学・自然学
第6回配本2019年07月:第2巻数学論・数学
第7回配本2019年09月:第9巻後期哲学
第8回配本2019年11月:第1巻論理学

第Ⅰ期全10巻函入旧版(1988年11月~1999年3月)
[1]論理学(澤口昭聿訳、1988年11月、本体10,000円)
[2]数学論・数学(原亨吉ほか訳、1997年4月、本体12,000円)
[3]数学・自然学(原亨吉ほか訳、1999年3月、本体17,000円:函痛有)
[4]認識論:人間知性新論…上(谷川多佳子ほか訳、1993年8月、本体8,500円:品切)
[5]認識論:人間知性新論…下(谷川多佳子ほか訳、1995年7月、本体9,500円:函痛有)
[6]宗教哲学[弁神論…上](佐々木能章訳、1990年1月、本体8,253円)
[7]宗教哲学[弁神論…下](佐々木能章訳、1991年5月、本体8,200円:函痛有)
[8]前期哲学(西谷裕作ほか訳、1990年12月、本体9,000円:品切)
[9]後期哲学(西谷裕作ほか訳、1989年6月、本体9,500円)
[10]中国学・地質学・普遍学(山下正男ほか訳、1991年12月、本体8,500円:函痛有)

第Ⅱ期全3巻(2015年5月~2018年6月)
[1]哲学書簡――知の綺羅星たちとの交歓(山内志朗ほか訳、2015年5月、本体8,000円)
[2]法学・神学・歴史学――共通善を求めて(酒井潔ほか訳、2016年10月、本体8,000円)
[3]技術・医学・社会システム――豊饒な社会の実現にむけて(佐々木能章ほか訳、2018年6月、本体9,000円)


日時:2018年9月24日(月・祝)14:00開演 13:45開場
会場:紀伊國屋書店新宿本店 9階イベントスペース
料金:500円
予約:電話03-3354-0131 新宿本店代表(10:00~21:00)先着50名様

『ライプニッツ著作集』第II期の監修者にして、日本ライプニッツ協会会長の酒井潔さんと、ゲーム作家・文筆家として活躍がめざましい山本貴光さんのスペシャル対談。「実践を伴う理論(theoria cum praxi)」――ライプニッツは私たちに縁遠い天才か? 対談では、1)ライプニッツの書簡術、2)ライプニッツの文章作法、3)壮烈と工夫の仕事人ライプニッツ、4)ライプニッツの普遍学構想、5)ライプニッツ育成計画、等々、ライプニッツの精力的な活動ぶりに迫り、怠惰に流れがちな日常を打破するヒントを探る。

※対談終了後はサイン会を開催。『ライプニッツ著作集』第II期(全3巻)および、発売直後の第I期『第8巻 前期哲学 新装版』はもちろん、旧版第I期の在庫がある巻、酒井さんの著書、山本さんの著書も販売する予定。サインをいただく貴重な機会になると思います。
※『ライプニッツ著作集』第I期新装版全巻予約特典として、旧第I期の月報10巻分をまとめた100頁を超える小冊子「発見術への栞」を進呈。なお本イベントで『ライプニッツ著作集』(第Ⅱ期、新旧第Ⅰ期)をお買い上げの方に限り、この特典をプレゼントします。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

本を贈る』若松英輔/島田潤一郎/牟田都子/矢萩多聞/橋本亮二/笠井瑠美子/川人寧幸/藤原隆充/三田修平/久禮亮太著、三輪舎、2018年9月、本体1,800円、四六判上製304頁、ISBN978-4-9908116-3-1
文学はおいしい。』小山鉄郎著、ハルノ宵子画、作品社、本体1,800円、46判上製212頁、ISBN978-4-86182-719-8
古本的思考――講演敗者学』山口昌男著、晶文社、2018年9月、本体2,700円、四六判上製344頁、ISBN978-4-7949-7059-6
四苦八苦の哲学――生老病死を考える』永江朗著、晶文社、2018年9月、本体1,700円、四六判並製292頁、ISBN978-4-7949-7055-8
不妊、当事者の経験――日本におけるその変化20年』竹田恵子著、洛北出版、2018年9月、本体2,700円、四六判並製589頁、ISBN978-4-903127-27-9

★『本を贈る』は、批評家、編集者、校正者、装丁家、印刷業者、製本業者、版元営業マン、取次人、書店員、移動式本屋店主、といった本に携わる様々な関係者10名が書いたエッセイをまとめたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。この1冊で本を「贈る」職人たちの横顔を知ることができるので、本にかかわる仕事に関心がある方、ないし目指している方にお薦めできる新刊です。ちなみに本書の奥付の対向頁には本書の製作にかかわった印刷所と製本所のスタッフのお名前が細かい部門ごとに掲出されていて、紙媒体の書籍を作るという作業にいかに多くの人手がかかっているかが一目瞭然となっています。本の重みを感じることのできる本です。ほとんどの本ではこうした関係者の個人名は記載されていませんが、製作段階だけでもこれだけの人数がかかわり、さらに流通・販売段階においても多数の人々の手を借りていることを忘れたくないと思います。

★『文学はおいしい。』は、共同通信配信の新聞連載「文学を食べる」を改訂して書籍化したもの。カツ丼からネギ弁当まで、近代以降の日本文学における食の風景の歴史を、ハルノ宵子さんによる料理のカラーイラストとともに、見開き読み切りで紹介しています。読んでいるだけでお腹が空いてくる「おいしい本」で、夜中に開こうものなら「読む飯テロ」になる魅力的な一冊。取り上げられている100種類の料理と文学作品名のうち、書名のリンク先で主要な30種が掲出されています。内容から察して、作品社さんの公式twitterの「中の人」が担当者かと思いきや、カント、ヘーゲル、ハイデガー、アドルノなど数多くの訳書を手掛け、最近では熊野純彦さんの『本居宣長』を担当されたヴェテランのTさんでした。ちなみに1品目のカツ丼で取り上げられるのが吉本ばななさんの小説『キッチン』で、100品目のネギ弁当で言及されるのが吉本隆明さんのエッセイ「わたしが料理を作るとき」です。ほかならぬハルノさんの思い出話も紹介されているネギ弁当が何なのかについては、ぜひ書籍現物を店頭でご確認下さい。

★『古本的思考』はまもなく発売。単行本未収録の講演、インタヴュー、論考、紀行文など13篇を川村伸秀さんが3部構成にして編んだ一冊です。未公刊の講演録「近代日本における“知のネットワーク” の源流」(南部支部古書懇話会発足記念講話、1992年11月7日)と「吉野作造と街角のアカデミー」(吉野作造記念館主催講演、1997年3月16日)を含みます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。インタビュー「雑本から始まる長い旅」で山口さんはこう語っています。「古本屋はなんでもかんでも、もうゴミまで集めてくるみたいなものだけど、そこでは偶然性によってどんな本が集まってくるのか分からないんだから、とても仮説的なものだと言える」(296頁)。「その仮設性のなかから何を読むのか。〔…〕パラダイム・チェンジの可能性は、〔新刊よりも〕古本の持つ仮設性の側に遥かにあるんだって言える。〔…〕古本屋さんは、そういうものと最初に出会う現場にいる」(319頁)。「古本的というのはね、古本を通じて人脈を全部取り戻す、そういう過程を通じて枠組み〔パラダイム〕を作りながらまた古本を探し、探した古本のなかからまた新しい枠組みが出てくる、そういう関係そのものだよね」(同頁)。また「近代日本における“知のネットワーク” の源流」では、「古本のほうが遥かに進んだメディア」(257頁)だとも指摘されています。古本の楽しみは、過ぎ去った時代のタイムカプセルの解読にある、と山口さんは見ておられるようです。

★『四苦八苦の哲学』は、生老病死をめぐり、哲学者たちの考察に寄り添いつつ人生の四苦八苦に思いを寄せる一冊。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「ひとりで哲学の勉強をすること」と「四苦(生老病死)について考えること」をテーマに読み解かれるのは、プラトン『パイドン』、キェルケゴール『死に至る病』、ジャンケレヴィッチ『死』、スーザン・ソンタグ『隠喩としての病』、フーコー『臨床医学の誕生』、キケロー『老年について』、ボーヴォワール『老い』、ハイデガー『存在と時間』、九鬼周造『時間論』、レヴィナス『時間と他なるもの』、バタイユ『エロティシズム』など。本書ご執筆中に還暦をお迎えになったという永江さんは、法政大学文学部哲学かのご出身で、鷲田清一さんとの共著『哲学個人授業』(バジリコ、2008年;ちくま文庫、2011年)があります。

★『不妊、当事者の経験』は、臨床検査技師だった著者が働くかたわら大学で学んで執筆した博士論文と、不妊治療を受ける当事者たち60名への聞き取り調査等をもとにして、一般読者向けに全面的に改稿した長編力作。当事者たちが不妊治療に対して覚える躊躇と、その時代背景や変化、さらに当事者による躊躇への対処法と、不妊治療の未来が論及されています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。漢字の随所に丁寧にフリガナが振られており、版元さんの手厚い配慮が感じられます。著者自身も当事者だった経験がおありだとのことです。ちなみに洛北出版さんでは、現代の日本人の妊娠経験を研究した、柘植あづみ/菅野摂子/石黒眞里『妊娠――あなたの妊娠と出生前検査の経験をおしえてください』という本を2009年に刊行されています。

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by urag | 2018-09-23 20:40 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 19日

保管:2017年7月~10月季刊情報

◎2017年10月16日発売:甲斐義明編訳『写真の理論』本体2,500円
◎2017年10月6日発売:森山大道『』本体2,500円
◎2017年8月4日発売:ポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』本体3,800円
 酒井隆史氏書評「不変と変化、この30年――レイシズムとナショナリズムの不可分な力関係」(「図書新聞」2017年11月4日号)
 石田昌隆氏書評(「ミュージックマガジン」2017年11月号「RANDOM ACCESS BOOK」欄)
 野田努氏書評(「ele-king」WEB版2017年10月4日付「Book Reviews」欄)
 無記名氏書評(「河北新報」10月1日付読書欄「新刊抄」)
◎2017年7月4発売:ジャコブ・ロゴザンスキー『我と肉』本体4,800円、シリーズ・古典転生第16回配本。
 廣瀬浩司氏書評「あらたな思考の出発点をうちたてる――現象学的身体論の刷新へと波及する潜在性」(「週刊読書人」2017年9月8日号)

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by urag | 2018-09-19 17:55 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 19日

「週刊読書人」に、岡田温司『アガンベンの身振り』の書評

「週刊読書人」2018年9月14日号に、弊社6月刊、岡田温司『アガンベンの身振り』の書評記事「「エピゴーネンの流儀」とは何か――哲学者の思考に寄り添いながら、ともに思索を紡ぐ」が掲載されました。評者は岡本源太さんです。曰く「本書で注目されるアガンベンの「エピゴーネンの流儀」とは、「他者から出発してのみ生まれ、この依存関係を決して否定しない」ものだという。幼児期のわたしたちがはじめて言葉を習い覚えたとき、身近な人々の語る内容を理解するよりもまえに、その口調、声音、表情、身振り手振りをなぞって、いつしかそれを自分固有のものにした。エピゴーネンの身振りとは、言ってみればパラダイム――かたわらで示すもの――をなぞる身振りだ。身振りはしばしば自己のかたわらで手本を示してくれる他者の身振りをなぞる。そうして身振りは、自己を示すのみならず他者との関係を築き、自己と他者の境界をかぎりなく不分明にしながら特異性と共同性を同時に打ち立てる。アガンベンはそれを「生の形式」として繰り返し語ってきたのだった」と。
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by urag | 2018-09-19 17:47 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 19日

注目新刊:『現代思想』2018年10月臨時増刊号「総特集=マルクス・ガブリエル」

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★飯田賢穂さん(共訳:ルソー『化学教程』ウェブ連載中)
★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』)
★清水一浩さん(共訳:ガルシア・デュットマン『友と敵』)
★岡本源太さん(著書:『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』)
『現代思想』2018年10月臨時増刊号「総特集=マルクス・ガブリエル――新しい実在論」や『nyx』第5号「小特集=マルクス・ガブリエル」に寄稿されています。それぞれの目次詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。

飯田賢穂さんは『nyx』第5号に、レポート「なぜ、哲学なのか? 発言する哲学、越境する哲学」を寄せておられます。これは明治大学文学部に今春新設された哲学専攻を記念して行われた同名のシンポジウムの様子を写真とともに報告したものです。 

宮﨑裕助さんは『現代思想』10月臨時増刊号で、大河内泰樹さんおよび斎藤幸平三との討議「多元化する世界の狭間で――マルクス・ガブリエルの哲学を検証する」に参加されています。

清水一浩さんは同号に掲載されたマウリツィオ・フェラーリスの論文「新しい実在論――ショート・イントロダクション」の翻訳を担当されています。

岡本源太さんは同号に論考「マルクス・ガブリエルと芸術の問題――絶対者のもとに休らう芸術作品」を寄せておられます。

なお『nyx』第5号ではガブリエルと千葉雅也さんの2018年の対談「「新実在論」「思弁的実在論」の動向をめぐって」と、京都大学での2018年来日講演「なぜ世界は存在しないのか――〈意味の場の存在論〉の〈無世界観〉」が掲載されています。

また『現代思想』の臨時増刊号では、ガブリエルの2016年のインタビュー2本:アーニャ・シュタインバウアー聞き手「『なぜ世界は存在しないのか』入門」、グレアム・ハーマン聞き手「『意味の場』刊行記念インタビュー、2018年の対談1本:野村泰紀×ガブリエル「宇宙×世界」、2017年の論文の翻訳1本:「意味、存在、超限」のほか、主要著作ガイドが掲載されています。第Ⅰ期:2006年『神話における人間――シェリングの『神話の哲学』における存在神論・人間学・自己意識の歴史に関する諸探求』、第Ⅱ期:2009年『古代における懐疑論と観念論』、第Ⅲ期:2011年『超越論的存在論――ドイツ観念論についての試論』、第Ⅳ期:2012~2013年『世界の認識――認識論入門』『なぜ世界は存在しないのか』、第Ⅴ期:2016年『意味と存在――実在論的存在論』『私は脳ではない――21世紀のための精神哲学』。

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by urag | 2018-09-19 17:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 17日

注目新刊:『nyx 第5号』堀之内出版、ほか

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nyx 第5号』堀之内出版、2018年9月、本体2,000円、A5判並製344頁、ISBN978-4-906708-72-7
未来のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン著、高野優訳、光文社古典新訳文庫、2018年9月、本体1,800円、828頁、ISBN978-4-334-75384-9
方丈記』鴨長明著、蜂飼耳訳、光文社古典新訳文庫、2018年9月、本体640円、152頁、ISBN978-4-334-75386-3

★『nyx 第5号』は、第一特集は「聖なるもの」(主幹:江川純一×佐々木雄大)で、第二特集が「革命」(主幹:斎藤幸平)です。目次詳細は版元ドットコムに掲出されています。さらに3本目の柱は小特集「マルクス・ガブリエル」で、千葉雅也さんとガブリエルさんの対談「「新実在論」「思弁的実在論」の動向をめぐって」と、ガブリエルさんの京都大学講演「なぜ世界は存在しないのか――〈意味の場の存在論〉の〈無世界観〉」が収載されています。また、特集には属していませんが飯田賢穂さんによるレポート「なぜ、哲学なのか? 発言する哲学、越境する哲学」も掲載されています。これは、明治大学文学部に新設された哲学専攻を記念して今春行われたシンポジウムの様子を写真とともに報告したものです。プログラム内容についてはプレスリリースをご覧ください。また、簡単なイベントレポートが大学ウェブサイトに掲出されています。

★第5号はまばゆい金色の表紙がまず目を惹きますが、ここまで全体に金色を使いながらあざとくもしつこくもないというのは稀ではないでしょうか。また内容面でも、今回の二大特集は「聖なるもの」と「革命」で、一見相反する主題のようにも見えますけれども、いずれも規範を超えた力の収斂と放射を伴なう特異点として現われる事象であるという意味では議論の回路が相互に開かれているわけで、この二つが双子として頁を分け合っているのは故なきことではないと言えそうです。一方、ガブリエルをめぐってはまもなく青土社の月刊誌『現代思想』の2018年10月臨時増刊号として「総特集=マルクス・ガブリエル――新しい実在論」が発売になりますので、『nyx 第5号』のほか、ガブリエルの既訳書『神話・狂気・哄笑』(ジジェクとの共著、堀之内出版、2015年)や『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ、2018年)、「資本主義はショウ(見世物)だ」(セドラチェクとの対話、『欲望の資本主義2』所収、東洋経済新報社、2018年)などと併せ、売場が再び盛り上がるのではないかと思われます。

★千葉さんとガブリエルさんの対談は、千葉さんが東浩紀さんと行った対談「モノに魂は宿るか──実在論の最前線」での『なぜ世界は存在しないのか』批判を踏まえてガブリエルに切り込んでおり、哲学者自身の応答を聞く良い機会となっています。千葉さんと東さんの対談は改稿のうえ、「実在論化する相対主義――マルクス・ガブリエルと思弁的実在論をめぐって」として「ゲンロンβ28」に前編が掲載されています。また、千葉さんは来月下旬に河出書房新社より新著『意味がない無意味』を上梓される予定ですし、ガブリエルさんの著書は洋書でも店頭で着実に売れていると聞いていますので(例えば『私は脳ではない(I am Not a Brain: Philosophy of Mind for the 21st Century)』や『意味の場(Fields of Sense: A New Realist Ontology )』など)、『nyx 第5号』はしばらく参照され続けるのではないでしょうか。

★次に創刊12周年だという光文社古典新訳文庫の9月新刊より2点。『未来のイヴ』(1886年)は今までに文庫では渡辺一夫訳(岩波文庫、1938年)や、斎藤磯雄訳(創元ライブラリ、1996年)で読むことができましたが、斎藤訳は『ヴィリエ・ド・リラダン全集』第2巻(東京創元社、1977年)が底本ですから、新訳というのはとても久しぶりのことです。巻末解説をお書きになった海老根龍介さんは本作について「時代に背を向けた、ときに鼻白むような反動的精神が、未来をも見とおすかのような広い射程を備えた鋭い批評精神と結びついているさまもまた、『未来のイヴ』を特徴づける両義性のひとつといえるだろう」と評価しておられます。なお、押井守監督作品『イノセンス』(2004年)の冒頭で『未来のイヴ』第5巻第16章での科白が引用されているのは周知の通りですが、これは渡辺訳(下巻157頁)でも斎藤訳(339頁)でもありません。今回の高橋訳では578頁で読むことができます。曰く「現代の〈神〉や〈希望〉がもはや科学的なものでしかないのであれば、どうして現代の〈愛〉が科学的になってはいけないのだろう〔…〕。いけないことはあるまい」。

★『方丈記』は、現代語訳と原典の間に訳者の書き下ろしエッセイ「移動の可能性と鴨長明」を挟み、さらに原典の後には付録として『新古今和歌集』所収の鴨長明の和歌10首と、『発心集』巻五の一三「貧男、差図を好む事(貧しい男、〔自宅の〕設計図を描くのが好きだった)」の現代語訳と原文を収めています。巻末には、鴨長明が記述した安元の大火や治承の竜巻などの災害地図や「方丈の庵」想像図などをまとめた図版集や、鴨長明年譜、そして訳者による解説とあとがきが付されています。元暦二年(1185年)の大地震の頃、作者は数え年で31歳。「地震こそは、あらゆる恐ろしいものの中でもとりわけ恐ろしいと実感した」(32頁)と書き、その惨状や3か月ほど続いた余震について言及しています。さらに「地震の当初は、人々はみんなこの世の虚しさを口にして、少しは心の濁りも薄くなったかと見えたが、月日が過ぎ、年数が経つと、もうだれもなにもいわなくなる」(32~33頁)とも書き記した晩年の鴨長明は、人間のさがを冷静に見つめていたように思います。800年以上経過しても人間の本質がおおよそ変わらなかったと言うべきか、『方丈記』のメッセージは現代人の心に今なお沁みてくるものです。

★「世界というものは、心の持ち方一つで変わる。もし、心が安らかな状態でないなら、象や馬や七つの宝があっても、なんの意味もないし、立派な宮殿や楼閣があっても、希望はない。いま、私は寂しい住まい、この一間だけの庵にいるけれど、自分ではここを気に入っている。都に出かけることがあって、そんなときは自分が落ちぶれたと恥じるとはいえ、帰宅し、ほっとして落ち着くと、他人が俗塵の中を走り回っていることが気の毒になる」(48頁)。非常に滑らかな現代語訳だと思います。蜂飼さんによる古典の現代語訳は『虫めづる姫君 堤中納言物語』(2015年)に続く2点目です。

★なお光文社古典新訳文庫では、11月に、サルトル最晩年の、ベニ・レヴィとの対談『いま、希望とは(L'espoir maintenant)』が海老坂武さんの訳で刊行される予定とのことです。かつて「朝日ジャーナル」に翻訳が掲載されたものの改訂版でしょうか。何かと問題視されたこともあった対談を、ようやく冷静に読める機会が訪れるのでしょう。

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★続いてまもなく発売となる新刊注目書を列記します。

吉本隆明全集17[1976-1980]』吉本隆明著、晶文社、2018年9月、本体6,700円、A5判変型上製656頁、ISBN978-4-7949-7117-3
脱近代宣言』落合陽一/清水高志/上妻世海著、水声社、本体2,000円、四六判並製304頁、ISBN978−4−8010−0350−7
評伝 小室直樹(上)学問と酒と猫を愛した過激な天才』村上篤直著、ミネルヴァ書房、2018年9月、本体2,400円、4-6判上製762頁、ISBN978-4-623-08384-8
評伝 小室直樹(下)現実はやがて私に追いつくであろう』村上篤直著、ミネルヴァ書房、2018年9月、本体2,400円、4-6判上製744頁、ISBN978-4-623-08385-5
イエズス会の歴史(上)』ウィリアム・V・バンガート著、上智大学中世思想研究所 監修、中公文庫、2018年9月、本体1,500円、576頁、ISBN978-4-12-206643-4
イエズス会の歴史(下)』ウィリアム・V・バンガート著、上智大学中世思想研究所 監修、2018年9月、本体1,500円、576頁、ISBN978-4-12-206644-1

★『吉本隆明全集17[1976-1980]』は第18回配本。『悲劇の解読』(筑摩書房、1979年)と『世界認識の方法』(中央公論社、1980年)を中心に、1980年に発表された詩、評論、講演、エッセイ、アンケート、推薦文、あとがき、等を収録しています。さらに、未発表だったミシェル・フーコー宛の書簡を初収録。『悲劇の解読』は作家論集。歴史の停滞と空虚さの只中で批評の持続を引き受けようとする、五十路を越えた批評家の境地を看取できる見事な名篇です。吉本と作家の生が交差する深度から発せられる、色褪せようのない痛烈な太宰論にはこう綴られています。「気がかりな読者だけは作品や作家の跡から見え隠れに尾行をつづけ、ついに行き倒れて朽ちてしまう姿を見とどけなければならない。かれにはみすみす死地の方へ歩んでゆく作品や作者を、こちら側におしとどめる能力はないが、他人事でない気がかりさえあれば、その死にざまを見とどけることだけはできる。文学の周辺にはそういう悲劇的な関係の仕方も、ときにあるのではないか。わたしは青年のある時期、太宰治の作品にそういう関係に仕方をしたことがあった」(17頁)。人間失格という人ならざるものの地平へと滑り落ち、孤独な暗い水際に座した太宰と、その目の前に佇む亡霊のような吉本の時を超えた対峙には、呪われた葬列へと読者を否応なく引きずり込む禍々しさを感じます。

★フーコーとの対談「世界認識の方法――マルクス主義をどう始末するか」を中心に編まれた『世界認識の方法』に対しては、付属する「月報18」に収められた竹田青嗣さんによる「新しい世代が受け継ぐべきもの」が、興味深い位置づけを与えています。竹田さんは昨今日本でも輸入され話題を呼んでいる、メイヤスー、ガブリエル、ハーマンらの哲学の意義を簡潔に解説しつつ、それに先立つフーコーと吉本の対決を「世界の普遍認識の可能性をめぐる認識論上の根本的対立」と捉え、さらに吉本の「思想家としての最大の業績」が何なのかについて銘記しておられます。詳しくは現物にてご確認下さい。次回配本は12月下旬発売予定、第18巻とのことです。

★『脱近代宣言』は、メディア・アーティストの落合陽一(おちあい・よういち:1989-)さん、哲学者の清水高志(しみず・たかし:1967-)さん、キュレーターの上妻世海(こうづま・せかい:1989-)さんの三氏による鼎談集。お三方にとっても初めての鼎談本となるようです。目次詳細は書名のリンク先でご覧になれます。落合さんは「はじめに」でこう書いています。「近代的な成長社会から成熟社会に臨んだ今、われわれはヒューマニズムの枠組みのなかの成長とは違った解釈を取りうるのではないだろうか。テクノロジーによるアプローチや、芸術的な美意識や価値の勃興に基づいたわれわれの文化的側面の再考は、平成の時代が終わろうとしている今、必要なことに思える」(12頁)。これまでは芸術書売場に置かれることが多かったはずの落合さんの本は本書の登場によって人文書売場まで越境してくることになるのかもしれません。

★脱近代を掲げる落合さんは例えば「人文系は、その〔=変革の〕速度を遅くするために働く、ダンパなので。本当にあれはよくないですね。なんとかしたいとは思っています」(131~132頁)と発言したりもします。ただし、こうした言質から彼を例えば加速主義者の枠組みで捉えるというのは単純すぎる割り切り方かもしれません。部分を切り取るような読み方は特に本書ではあまり有効ではないと思われます。新しい人類学や哲学――新実在論やオブジェクト指向哲学など――の動向へと参照項を開く清水さんと、「デジタルネイチャー」へと向かうアートとテクノロジーの可能性を追求する落合さん、そしてそれらを架橋する新しい批評とキュレーションの展望を与える上妻さんの、それぞれの議論のレイヤーが重なり合うさまを、読者は目撃することになります。論及されるのが仏教思想にせよ福沢諭吉にせよ、容赦なく侵犯していく本なので、各方面から様々なリアクションが生まれるだろうと想像します。

★『評伝 小室直樹』上下巻は書名が表す通り、高名な社会学者、小室直樹(こむろ・なおき:1932-2010)をめぐる大部の評伝です。ミネルヴァ書房さんの創業70周年記念出版だそうで、「橋爪大三郎編著『小室直樹の世界』から5年。もう一つの日本戦後史がここにある!「小室直樹博士著作目録/略年譜」の著者・村上篤直が、関係者の証言を元に、学問と酒と猫をこよなく愛した過激な天才の生涯に迫る」と宣伝しておられます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。オビやカバーソデには弟子である橋爪大三郎、副島隆彦、宮台真司、大澤真幸の各氏の推薦の言葉が並んでいます。著者の村上篤直(むらかみ・あつなお:1972-)さんは現役の弁護士。小室さんの弟子ではなく、生前に面識もなかったものの、人生の苦闘の中で小室さんの著書と出会い、ウェブサイト「小室直樹文献目録」を2000年に開設されています。村上さんは本書のはしがきで、小室さんのことを次のように端的に評しておられます。「内から湧き上がる情熱のままに、西洋近代文明の精華を学び尽くした天才。/練り上げられた方法論と研ぎ澄まされた霊感。/これによって洞察された過去・現在・未来の世界を、惜しげもなくわれわれの眼前に広げて見せてくれた」(iii頁)と。なお来月には本書の刊行を記念し、以下のイベントが行われます。

◎ミネルヴァ書房創業70周年企画『評伝 小室直樹 上・下』刊行記念 村上篤直先生×橋爪大三郎先生 トークショー&サイン会

日時:2018年10月23日(火)19:00~
場所:丸善・丸の内本店 3F日経セミナールーム
定員:100名様、要整理券(電話予約可)
参加方法:丸善・丸の内本店和書売場各階カウンターにて、『評伝 小室直樹』(上下巻いずれかでも可)をご購入でイベント参加ご希望の先着100名様に整理券を配布いたします。発売前はご予約にて承り、書籍ご購入時に整理券をお渡しいたします。ご予約およびお取り置きいただいた方には、3Fインフォメーションカウンターにて書籍と整理券をお渡し致します。
整理券がなくなり次第、配布終了といたします。
注意事項:整理券はお一人様1枚までとさせていただきます。
ご予約およびお問い合わせ:丸善・丸の内本店 和書グループ 03-5288-8881(営業時間 9:00~21:00)

★『イエズス会の歴史』上下巻は、原書房より2004年に刊行された書籍を改訳し、文献を追補して文庫化したもの。原書は1986年の『A History of the Society of Jesus』第2版です。上巻には、はしがき、第1章「創立者とその遺産」、第2章「地平の絶え間なき拡大(1556~1580年)」、第3章「急速な発展と新たな取り組み(1580~1615年)」、第4章「政治・文化の新たな覇権国家からの挑戦(1615~1687年)」と文献表Ⅰを収め、「イグナティウス・デ・ヨロラによるパリでの会の発足から17世紀後半まで、西洋諸国の歩みと深く関わる会の展開」(カバー裏紹介文より)を描いています。下巻では第5章「理性の時代との対峙(1687~1757年)」、第6章「追放、弾圧、復興(1757~1814年)」、第7章「新たな政治的・社会的環境と植民地世界への適応(1814~1914年)」、第8章「20世紀」、そしてクラウス・リーゼンフーバーさんによる追補「最近の発展(1985~2000年)」を収め、文献表Ⅱのほか新たに文献表Ⅲが加わっています。下巻では17世紀後半以降における教会と啓蒙主義の対立や、その後の展開を解説。文庫でイエズス会の通史が読めるようになるのは初めてのことです。

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★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。

維新と敗戦――学びなおし近代日本思想史』先崎彰容著、晶文社、2018年8月、本体2,000円、四六判上製316頁、ISBN978-4-7949-7053-4
比較から世界文学へ』張隆溪(チャン・ロンシー)著、鈴木章能訳、水声社、2018年9月、本体4,000円、A5判上製261頁、ISBN978-4-8010-0360-6
ロシア革命――ペトログラード1917年2月』和田春樹著、2018年9月、本体3,600円、46判上製584頁、ISBN978-4-86182-672-6
男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け!――男の健康と老化は、女とどう違うのか』リチャード・ブリビエスカス著、寺町朋子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2018年9月、本体2,200円、四六判並製272頁、ISBN978-4-7726-9561-9
デカルト』ロランス・ドヴィレール著、津崎良典訳、文庫クセジュ:白水社、2018年9月、本体1,200円、新書判220頁、ISBN978-4-560-51022-3
『確率微分方程式』渡辺信三著、ちくま学芸文庫Math&Science、2018年8月、本体1,200円、316頁、ISBN978-4-480-09882-5

★『維新と敗戦』は、産経新聞の二つの連載「『戦後日本』を診る」(2014年4月~2015年3月)および「『近代日本』を診る」(2015年4月~2016年3月)に加筆訂正した第Ⅰ部が全体の半分以上を占めます。福澤諭吉から高坂正堯まで23人の日本の思想家を取り上げ、彼等の言葉から現代を照射すべく試みておられます。第Ⅱ部は2011年から2018年にかけて各媒体に掲載された思想家論をまとめたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。東日本大震災の被災者の一人として著者はこう書いています。「あらゆる言葉が、「速すぎる」ように思えた。天災による激変に即応し、時宜にかなった説明が、すぐに手に入る状況はどうみても異常であった。新聞・出版をにぎわせる老若男女の知識人の手際のよさに、正直、戸惑ってしまったのである。/思想や文学を論じ生活の糧にする者には、もう少し謙虚さが求められるように思う。謙虚さとは、時代の変化に応じるよりは立ち止まり、言葉を発することに躊躇するというほどの意味である」(10頁)。第Ⅰ部では各思想家に3冊ずつ関連書が掲げられており、日本思想の棚を整理したい書店員さんにとって参考になるのではないかと思われます。なお以下のイベントが今週後半に予定されています。


日時:2018年9月21日(金)19:00開演 18:45開場
会場:紀伊國屋書店新宿本店9階イベントスペース
料金:500円
受付:電話にてご予約を受付(先着50名様)。電話番号:03-3354-0131(紀伊國屋書店新宿本店代表番号/10:00~21:00)
内容:1990年代後半、大学に入学した先崎、大澤の二氏が目の当たりにした教養の崩壊。2018年の今、私たちは何を指針に、現代社会を評価すればよいのか。両氏の答えは「過去のことば」の復活。福澤諭吉から丸山真男まで、日本思想を読む醍醐味を、ぞんぶんに語り合う、本格派トークセッション。

★『比較から世界文学へ』は、英語圏で長らく活躍してきた比較文学研究者の張隆溪(チャン・ロンシー:Zhang Longxi, 1941-)による『From Comparison to World Literature』(SUNY Press, 2015)の全訳。『アレゴレシス――東洋と西洋の文学と文学理論の翻訳可能性』(鈴木章能/鳥飼真人訳、水声社、2016年)に続く、2冊目の訳書です。目次は書名のリンク先をご覧ください。序にはこう書かれています。「中国と西洋の文化的通約不可能性や根源的な差異を主張する意見について検証し、中国と西洋は通約可能であり、あらゆる面で違いがあるとしても、あらゆる困難を乗り越えて異文化を理解する必要があることを本書の目的として論じていく」(13頁)。「世界文学における「世界」という言葉を真摯に考えれば、そのような〔世界文学の首都がパリであると考えるような〕ヨーロッパ中心の視野の限界を超えて、世界には驚くべき豊かさと多様性があると我々が日頃認識しているとおりに世界を考える必要がある。だからこそ、世界文学の研究アプローチがもっている包括性、異なる観点や意見の融合、より広い新たな地平の可能性が重視されなければならない」(19頁)。これは他の人文学においても試みうる挑戦かもしれません。

★『ロシア革命』は帯文に曰く「和田ロシア史学のライフワーク、遂に完成」と。ロシア革命100年であった昨年に、50年前の論文「二月革命」(江口朴郎編『ロシア革命の研究』(中央公論社、1968年所収)を書き直し、新たな資料や研究、新たな構想を加えて執筆され、「二月革命からはじまり、一〇月革命、そして第三のレーニンの革命にいたる、三段階のロシア革命像に行きついた」(493頁)のが本書だそうで、「八〇歳となった私の生涯最後の本の一冊である」(494頁)と述懐されています。主要目次は以下の通り。

序章 世界戦争に抗する革命――ロシア革命・ペトログラード1917年2月
第1章 ロシア帝国と世界戦争
第2章 革命の序幕
第3章 首都ペトログラードの民衆
第4章 首都の民主党派
第5章 首都の革命
第6章 国会臨時委員会とソヴィエト
第7章 二つの革命――さまざまな路線
第8章 軍部と皇帝
第9章 臨時政府の成立と帝政の廃止
第10章 革命勝利の日々
あとがきにかえて 私は二月革命をどのように研究してきたか
ペトログラード市街地地図(1917年)
ロシア革命年表
参考文献一覧
出典一覧
人物解説・索引

★『男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け!』は『How Men Age: What Evolution Reveals about Male Health and Mortality』(Princeton University Press, 2016)の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。リンク先では第1章「男の老化と進化」と巻末解説も試し読みができます。本書によれば「オスの老化には、メスの老化にはない特徴」があり、それは「オスとメスでは生殖や代謝の生物学的基盤が異なり、そこから生じる制約条件も異なるから」だと言います(11頁)。この前提を踏まえ、本書は男性の老化を進化論から説明してくれます。「前立腺がんや筋肉量の低下、体重管理の難しさなど、男性が年を取るにつれて直面するさまざまな健康問題についての有益な観点」(21頁)が提示され、さらには「高年齢男性における〔成長や生殖に関わる〕形質の進化が人類全体の進化にどんな影響を及ぼしてきたか」(22頁)についても解説されます。父親と独身の違いや、贅肉が付いたり、老いて変わっていくことの進化医学的な意味というのは、男性にとってだけでなく女性にとっても興味深い話ではないかと思います。

★『デカルト』は2013年に刊行された『René Descartes』の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ロランス・ドヴィレール(Laurence Devillairs, 1969-)は西洋近世哲学、とりわけデカルトが専門の研究者で、文庫クセジュではこの先、彼の『思想家たちの100の名言』(2015年刊)も来年翻訳出版予定だそうです。また、訳者の津崎良典さんは今年年頭に魅力的な啓発書『デカルトの憂鬱』を扶桑社から上梓されています。ドヴィレールの初訳本となる今回のデカルト論は「神の「無限な」という在り方に焦点をあてることで、デカルト哲学を構成する代表的な論点のすべて(自我論、存在論、認識論、道徳論、生理学と機械論を含む自然学など)をそれに関連づけ、目配りのきいた豊富なデカルトからの引用文とともに統一的な視座から再解釈する試み」(訳者あとがきより)です。「デカルト形而上学の重心が、私は在る、私は存在すると主張することよりも、無限なものの観念を知解することのほうにかかっている」(64頁)とする著者の切り口を、訳者は特異なものとして評価しておられます。本書の論点は著者の2004年に公刊された博士論文『デカルトと神の認識』(未訳)でも展開されているとのことです。

★『確率微分方程式』は、1975年に産業図書から刊行された書籍の文庫化。著者の師である伊藤清が確立した「伊藤積分」をふまえ、「マルチンゲール的手法に重点」(5頁)を置きつつ確率微分方程式を解説したもので、カバー裏紹介文の文言を借りると「自然界や社会における偶然性を伴う現象」の定式化や、「物理学・数理ファイナンスなど幅広い応用をもつ理論の基礎」をめぐる、基本的文献です。著者の弟子にあたる重川一郎さんによる解説が付されています。主要目次は以下の通り。

はじめに
記号その他
第1章 ブラウン運動
第2章 確率積分
第3章 確率積分の応用
第4章 確率微分方程式
付録Ⅰ 連続確率過程に関する基本定理
附録Ⅱ 連続時間マルチンゲールのまとめ
各章に対する補足と注意
文献
解説(重川一郎)
索引

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by urag | 2018-09-17 23:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 12日

10月上旬刊行予定新刊:東琢磨/川本隆史/仙波希望編『忘却の記憶 広島』

月曜社新刊案内【2018年10月:人文/歴史/社会】
9月28日受注締切◆10月4日取次搬入予定※
※目下、取次が業量の平準化と分散化を強力に推進しているため、通常の発売予定が数週間ほど延期になる状況下に置かれております。正確な取次搬入日は後日あらためてお知らせいたします。→【9月28日追記】10月5日取次搬入となりました。書店さんでの店頭発売開始は10月10日以降となる予定です。

忘却の記憶 広島
東琢磨・川本隆史・仙波希望編
月曜社 2018年10月 本体価格2,400円
46判変型[天地180mm×左右120mm×束24mm]並製432頁 
ISBN:978-4-86503-065-5 C0020 重量:340g

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

広島学を起動する――被害地でも加害地でもある錯綜した場に立つ者は、いかに記憶を語り、あるいは忘却するのか。なぜそれは忘却されなければならなかったのかを問うことを通して、はじめて現在の広島を揺り動かすことができる。幾度も物語られるこの場所をもう一度語り直すために、批評家、研究者、労働者、アーティストなど13人が、街、島、路地……の記憶を織り上げる新たな試み=広島学の出発!

目次
忘却の記憶:編者まえがきあるいは解題的なものとして|東琢磨

◆忘却と記憶の時空
記憶のケアから記憶の共有へ:エノラ・ゲイ展示論争の教訓|川本隆史
「記憶のケア」を織り上げる:〈脱集計化〉を縦糸、〈脱中心化〉を横糸に|川本隆史インタビュー;聞き手=仙波希望/東琢磨
忘却の口:他なる記憶の避難所として|東琢磨

◆歴史と都市
軍都=学都としての広島|小田智敏
〈平和都市〉空間の系譜学|仙波希望
〈そこにいてはならないもの〉たちの声:広島・「復興」を生きる技法の社会史|西井麻里奈
原爆資料館の人形展示を考える|鍋島唯衣

◆ことば・映像
記憶する言葉へ:忘却と暴力の歴史に抗して|柿木伸之
占領の表象としての原爆映画におけるマリア像:熊井啓『地の群れ』を中心に|片岡佑介
結晶たちの「ヒロシマ」:諏訪敦彦の『H Story』と『A Letter from Hiroshima』|井上間従文

恨と飯:パフォーマンスの記録|ガタロ+ハルミ

◆文化実践と「ジモト学」
ジモトへのだらしない越境:哲学カフェとエルカップの試み|上村崇
「ジモト」を旅する/旅に落ち着く|峰崎真弥

ブックガイド
それぞれの〈ヒロシマ〉をとおって 編者むすび|東琢磨
あとがきにかえて|東琢磨
年表
編者・執筆者紹介

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東琢磨(ひがし・たくま:1964-)音楽・文化批評家。広島に関する本に『ヒロシマ独立論』(青土社、2007年)・『ヒロシマ・ノワール』(インパクト出版、2014年) がある。広島県生まれ・在住。

川本隆史(かわもと・たかし:1951-)国際基督教大学教員。主著は『現代倫理学の冒険』(創文社、1995年)、『ロールズ』(講談社、1997年)、『共生から』(岩波書店、2008年)。広島市生まれ。

仙波希望(せんば・のぞむ:1987-)東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程在籍。専攻は都市研究、メディア研究、歴史社会学。第7回日本都市社会学会若手奨励賞(論文の部)受賞。

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by urag | 2018-09-12 20:02 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 09日

注目新刊:オスカル・パニッツァ『犯罪精神病』平凡社、ほか

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犯罪精神病』オスカル・パニッツァ著、種村季弘/多賀健太郎訳、平凡社、2018年9月、本体3,600円、4-6判上製340頁、ISBN978-4-582-83524-3
『個人空間の誕生――食卓・家屋・劇場・世界』イーフー・トゥアン著、阿部一訳、ちくま学芸文庫、2018年9月、本体1,300円、368頁、ISBN978-4-480-09886-3
『独立自尊――福沢諭吉と明治維新』北岡伸一著、ちくま学芸文庫、2018年9月、本体1,300円、400頁、ISBN978-4-480-09877-1
『日本人の死生観』立川昭二著、ちくま学芸文庫、本体1,200円、320頁、ISBN9781-4-480-09888-7
呪文』星野智幸著、河出文庫、2018年9月、本体640円、256頁、ISBN978-4-309-41632-8
おとうさんとぼく』e.o.プラウエン作、岩波少年文庫、2018年7月、本体760円、B6変型判並製320頁、ISBN978-4-00-114245-7

★『犯罪精神病』はドイツの作家パニッツァ(Oskar Panizza, 1853-1921)の日本語版独自編集となる作品集。種村季弘(たねむら・すえひろ:1933-2004)さんの遺稿を多賀健太郎(たが・けんたろう:1974-)さんが補訳したものです。周知の通り種村さんは個人全訳版『パニッツァ全集』全3巻(筑摩書房、1991年)を手掛けておられました。全集の「落穂拾い」と多賀さんは「訳者あとがき」に書いておられますが、本書だけでも充分に読み応えがありますし、内容的にも重要です。パニッツァはその最晩年を心の病による入院生活で過ごしたのですが、本書に収録されている作品群は、すべて入院前のもので、表題作を含め8篇中5篇は自ら設立した出版社「チューリヒ討論社」および『チューリヒ討論』誌で公刊されたもの。帯文には「梅毒としての文学」とあります。これは種村さんの著書『愚者の機械学』(青土社、1991年)に収められたパニッツァ論の題名でもあります。『犯罪精神病』の目次は以下の通りです。

目次|発表年:
犯罪精神病〔プシコパテイア・クリミナリス〕|1898年
天才と狂気|1891年
幻影主義と人格の救出――ある世界観のスケッチ|1895年
キリスト教の精神病理学的解明|1898年
フッテンの精神による対話(抄)|1897年
 第四対話 無神論者と検事のあいだで交わされる三位一体論
 第五対話 エラとルイのあいだで交わされるあらゆる時代の精神による愛の対話
壁の内側でも外側でも〔イントラ・ムロス・エト・エクストラ〕|1899年
パリからの手紙 七月十四日〔カトルズ・ジュイエ〕|1900年
進歩的無政府主義狂〔マニア・アナルヒスティカ・プログレッシウァ〕|1900年
原註
訳註
解題
訳者あとがき――オスカル・パニッツァと種村季弘

★戯曲『性愛公会議』の内容を咎められて実刑判決を受け、投獄されたその収監中に書いたという対話篇「フッテンの精神による対話」の第一対話から第三対話は、『性愛公会議』とともに『パニッツァ全集』第Ⅲ巻で読むことができます。

★表題作の「犯罪精神病」では「犯罪的な理性の形態であり、一種の思考のインフルエンザ」(65頁)で、「すこぶる感染力が強いもの」(67頁)としての犯罪精神病について論じており、症例としてパニッツァは革命家や宗教活動家だけでなく哲学者にも言及します。その一方で「幻影主義と人格の救出」では「幻影を吐き出せば吐き出すほど、豊穣な歴史を刻むのだ」(192頁)と書いています。どちらのエッセイにおいてもサヴォナローラや幾人かの思想家たちが出てくるのは偶然ではないと思います。「天才と狂気」の末尾ではハイネの詩「想像の歌」からの一節が引かれています。曰く「病いこそはおそらく/創造衝動すべての究極因。/創造によって私は癒され、/創造によって私は健康を取り戻した。――」。

★パニッツァは「幻影主義と人格の救出」でこうも書きます。「この世界をもみ消してしまったってかまいはしない。自分の五感でこの世界を生み出したからには、おまえがふたたび世界を思考によって破壊するのは、不可避であるばかりでなく、このような状況下では、不可欠でもある。だから、おまえが背後に抱えている悩みの種をぶちまけて前向きに取り組むことだ」(184頁)。「おまえの五感にとっては幻覚は現実のものなのだ。〔…〕おまえは幻影をいつでも消し去り、幻影を解消させることができるのだ」(185頁)。「われわれが思想を破壊しなければ、思想がわれわれを破壊する。われわれが思想を行動に移さず思想を手放さなければ、思想が行動し、われわれの身を滅ぼすことになる」(189頁)。パニッツァの思索は、自らの内面に兆す狂気と常に対峙していた当事者のそれであるような濃密な迫力があります。この機会に『パニッツァ全集』がちくま文庫か平凡社ライブラリーで文庫化されることを期待したいです。

★続いてちくま学芸文庫のまもなく発売となる(10日発売予定)の9月新刊より3点。『個人空間の誕生』は、『空間の経験――身体から都市へ』(山本浩訳、1993年)、『トポフィリア――人間と環境』(小野有五/阿部一訳、2008年)に続く、ちくま学芸文庫でのイーフー・トゥアン(Yi-Fu Tuan: 段義孚, 1930-)の文庫本第3弾。原書は『Segmented Worlds and Self: Group Life and Individual Consciousness』(University of Minnesota Press, 1982)であり、訳書親本はせりか書房より1993年に刊行されています。文庫版あとがきによれば、「わずかに存在した誤字・誤訳個所や、一部の固有名詞等の表記を修正し、また日本語として意味の取りにくい訳文にも手を加えた。さらに、引用文献のうち邦訳のあるものについて、いくつかを注につけ加えた」とのことです。訳者の阿部さんはこの新たなあとがきで、「個室に引きこもってスマホをチェックする個人が、SNSを通じて誰かとつながろうとしている現代社会において、本書の考察は絶えず振り返るべき価値を持ち続けているものと思われる」と綴っておられます。

★『独立自尊』は講談社単行本(2002年)、中公文庫(2011年)を経て再度文庫化されたもの。副題が「福沢諭吉の挑戦」から「福沢諭吉と明治維新」に改められています。著者の北岡さんによる「ちくま学芸文庫版へのあとがき」によれば、中公文庫版へのあとがきや猪木武徳さんによる解説は再録されておらず、巻末文献リストには重要文献が数点追加されているとのことです。そのかわり、新たに細谷雄一さんによる解説が付されています。北岡さんは今回の最新のあとがきで、「こういう時代にこそ、福沢諭吉に学んでほしいと思う。福澤が独立自尊の精神でもって、いかなるタブーにもとらわれることなく、因習に挑戦し続けたことを知ってほしいと思う」としたためておられます。なお本書は昨年に英訳版も刊行されているとのことです。

★『日本人の死生観』の親本は1998年に筑摩書房より刊行された単行本。昨年お亡くなりになった日本文化史家・立川昭二さんの著書のちくま学芸文庫での文庫化は『江戸人の生と死』(1993年)、『江戸病草紙』(1998年)に続いて本書で3冊目になります。本書では、西行、鴨長明、吉田兼好、松尾芭蕉、井原西鶴、近松門左衛門、貝原益軒、神沢杜口、千代女、小林一茶、滝沢馬琴、良寛ら12名の死生観が取り上げられています。「十二人が語ってくれたことばのなかに日本人の死生観を読み解き、彼らの生き方死に方にふれながら、できるだけ現代の私たちが直面している問題にむすびつけ、今日の日本人のメンタリティ(心性)の基層に生きている死生観を照らし出してみることを意図したものである」と親本から再録されたあとがきに記されています。解説「古典文学から日本人の死生観を辿る」は、島内裕子さんによるもの。

★『呪文』は2015年に河出書房新社より刊行された単行本の文庫化。解説は窪美澄さんがお書きになっています。シャッター商店街を舞台にした胸が締め付けられる恐ろしい小説が早くも文庫になりました。「まさに古い時代は終わり、新しい時代が作られようとしてる。人類は少しずつ滅亡しようとしていると、私は実感してる。それで、方舟がどこにあるのかは知らないが、少なくとも私はその乗客ではないことは自覚している。本能的に知ってるというかね。おまえらもそうだろ?〔…〕大切なのは、滅びるほうだろ? 滅びるべき者たちがその使命を悟って死んでいくから、世の中を新しく変えることができるわけだ。つまり、世を変えているのは、死んでいく側なんだよ」(173頁)。「強い意志を持って率先して消えることで」(同頁)新しい世界を創るという選民たちの冷ややかな決意が、フィクションという以上に現実に起こりうることのヴィジョンのように響くのはなぜでしょうか。本当に怖いです。

★『おとうさんとぼく』は先々月の既刊書ですが、なかなか入手する機会に恵まれませんでした。愛読していた旧版(2巻本、1985年)が手元にあるので急ぐことはなかったものの、岩波少年文庫が近所で購入できないどころか、電車に乗ってターミナル駅まで出ないと買えないというのは、色々と考えさせられるものがあります。新版全1巻を手にとってみて、登場する親子の相変わらずの他愛ない愛情と日常に胸を優しく締め付けられながら、どこか昔のようには読んでいないかもしれない自分も発見しました。それでもなお本書は名作であり、これからもずっと名作として読み継がれていくだろうと感じます。名作が残されていく世界であってほしいと心から思います。本書は児童書売場に置かれるのもいいですが、世の中の「おとうさん」たちにもっと読んでもらっていいはずです。その意味で『おとうさんとぼく』はビジネス書の新刊台に半年間は積まれていい本です。ビジネスパーソンが読むべき本がビジネス書なのだと私は思います。

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by urag | 2018-09-09 21:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 05日

ブックツリー「哲学読書室」に渡名喜庸哲さん、真柴隆弘さん、福尾匠さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、以下の3本が新たに追加されました。


グレゴワール・シャマユー『ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』(明石書店、2018年7月)の訳者、渡名喜庸哲さんによるコメント付き選書リスト「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために」。


キャシー・オニール『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』(インターシフト、2018年6月)の日本語版出版プロデューサー、真柴隆弘さんによるコメント付き選書リスト「AIの危うさと不可能性について考察する5冊」。


眼がスクリーンになるとき――ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社、2018年7月)の著者、福尾匠さんによるコメント付き選書リスト「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊」。


以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊

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by urag | 2018-09-05 14:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 05日

注目新刊と注目イベント:シュミット『陸と海』、プリンチーペ『錬金術の秘密』、ほか

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★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
必読の名著シリーズ「日経BPクラシックス」から、シュミットの訳書を上梓されました。

陸と海――世界史的な考察
カール・シュミット著 中山元訳
日経BP社 2018年8月 本体2,000円 4-6変型判上製284頁 ISBN978-4-8222-5580-0
帯文より:海〔リヴァイアサン〕と陸〔ビヒモス〕の戦いとしての世界史を描いた、シュミット地政学の傑作。ヴェネチア共和国、オランダ、イギリス、米国――海の国の系譜に連なる〈海洋国家〉である日本の進路を考えるための必読書。

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★ヒロ・ヒライさん(編著書:『ミクロコスモス 第1号』)
ヒライさんが監修されている「bibliotheca hermetica叢書」より、ジョンズ・ホプキンス大学教授プリンチーペ(Lawrence M. Principe, 1962-)さんの著書『The Secrets of Alchemy』(The University of Chicago Press, 2013)の訳書を上梓されました。刊行記念のトークイベントも行われる予定です。

錬金術の秘密
ローレンス・M・プリンチーペ著 ヒロ・ヒライ訳
勁草書房 2018年8月 本体4,500円 A5判上製344頁 ISBN978-4-326-14830-1
帯文より:魔術? 詐欺? オカルト? ファンタジー? 古代ギリシア・エジプトから現代まで、歴史学によって「高貴なる技」が科学史、医学史、文化史に占めた地位を示すとともに、再現実験によって錬金術師たちの実際の操作を検証する。理論と実践の両面から炙りだされる錬金術の本当の姿。決定的研究書、ついに邦訳。

◎ヒロ・ヒライ×山本貴光「歴史学と科学から読みとく錬金術
日時:2018年9月8日(土)15:00~17:00(14:30開場)
場所:下北沢 本屋B&B(http://bookandbeer.com/map/)電話03-6450-8272
料金:前売1,500円 + 1 drink order 当日店頭2,000円 + 1 drink order

内容:哲学と歴史を架橋し、テクスト成立の背景にあった「知のコスモス」に迫るインテレクチュアル・ヒストリー。その魅力を紹介する「bibliotheca hermetica(ヘルメスの図書館)」叢書の第5回配本は、『錬金術の秘密:再現実験と歴史学から解きあかされる「高貴なる技」』(8月末刊行)です。/「錬金術」と聞いて、どんなイメージをもちますか? 魔術? 偽科学? オカルト? ファンタジー? 本書では、怪しげなイメージがつきまとう錬金術について、そもそもの基礎にある化学・医薬的な技術とその発展過程、ある時代に詐欺や魔術と誤解・断罪されていく経緯、暗号化されたテクストの読解、錬金術師たちの社会的な評価、文学や演劇、宗教との関係、背景となる自然観や人間観などを通し、科学史と文化史に占めている重要な地位を示します。また実験を再現し、実際にはどんな操作が行われていたのかを解明しています。/イベントでは、ゲーム作家で『「百学連環」を読む』の山本貴光さんをお相手に迎え、本書の訳者でありBH叢書監修のヒロ・ヒライさんと、錬金術について、たっぷり語っていただきます。

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★荒木優太さん(著書:『仮説的偶然文学論』)
以下のイベントに登壇されます。さる7月7日にご著書『仮説的偶然文学論』の刊行を記念して下北沢の本屋B&Bnite行われた荒木さんと吉川さんのイベント「クリナメンズ作戦会議」に続き、今回は吉川さんの新著『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』(河出書房新社)の刊行記念で催されるイベントで、荒木さんと山本貴光さんを交えて同書店にて行われます。

◎吉川浩満×荒木優太×山本貴光「人間問題(F+f)+、あるいは科学・文学・人間の運命
日時:2018年9月22日(土)19:00~21:00 (18:30開場)
場所:本屋B&B(世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)
料金:前売1,500円 + 1 drink order 当日店頭2,000円 + 1 drink order

内容:7月、吉川浩満さんの新刊『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』が刊行されました。発展をつづける認知と進化にかんするサイエンスとテクノロジーがもたらす人間観の変容についての中間報告書です。人工知能、ゲノム編集、ナッジ、認知バイアス、人新世、利己的遺伝子……我々はどこへ行こうとしているのでしょうか?/著者の吉川さんは、人間の情動(と理性の関係)、偶然性(と運命の関係)に着目することが大事だと考えています。認知科学の展開は、我々の思考や行動に情動が大きな役割をはたすことを実証してきました。また、ヒトもまたその一員であるところの生物の進化は、偶然の積み重ねが運命のごとき轍となるような仕方で進んでいくからです。/そこでゲストにお呼びしたのが、山本貴光さんと荒木優太さんのおふたりです。山本さんは近著『文学問題(F+f)+』において、文学をF(認識、理性)とf(情緒、情動)の組み合わせと考えた夏目漱石の『文学論』を現代によみがえらせました。また、荒木さんは『仮説的偶然文学論』において、日本近代文学にあらわれた偶然性という主題の諸相を見事に析出しています。おふたり以上にふさわしいゲストがいるでしょうか(いや、いないでしょう!)。/今回のイベントでは、偶然と運命、情動と理性、文学と科学という複眼的な視点から、我々の本性と運命について存分に語り合っていただきます。

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★渡名喜庸哲さん(共訳書:サラ-モランス『ソドム』)
明石書店さんより先般上梓された訳書、シャマユー『ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』の刊行を記念し、吉川浩満さんとのトークイベントが以下の通り行われます。

◎渡名喜庸哲×吉川浩満「ドローンと人間の未来
日時:2018年10月5日(金)20:00~22:00 (19:30開場)
場所:本屋B&B(世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)
料金:前売1,500円 + 1 drink 当日店頭2,000円 + 1 drink

内容:7月に、フランスの哲学者グレゴワール・シャマユー『ドローンの哲学』(明石書店)が発売されました。/同書は、ドローンの登場によって、戦争や私たちの社会がどう変わっていくのか、軍用ドローンの現状について考察を展開した一冊です。/この刊行を記念して、トークイベントを開催します。/出演は、同書を翻訳した、慶應義塾大学商学部准教授で、フランス現代思想を専門とする渡名喜庸哲さん。ゲストに、哲学・科学・芸術、ロック、映画など幅広い関心をもち、『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』『理不尽な進化』の著者である吉川浩満さん。/ドローンは、「便利な世の中」をもたらすだけではなく、軍事、法律、政治、心理、倫理、地理などさまざまな分野に影響し、そして、わたしたち人間自身をも変えることになります。/そもそも、現代では、技術を操作するのが人間なのか機械なのか、分かりにくくなってきていますが、期待と同時に悩ましさをもつこの新しい技術をどのように考えたらよいのでしょうか。/シャマユーの話題の本『ドローンの哲学』を通じて考える人間の未来。そして、これからの戦争とは?/お二人に存分に語っていただきます。お楽しみに!

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★宮﨑裕助さん(共訳書:ド・マン『盲目と洞察』)
以下の二つの催事に登壇されます。

第17回アーレント研究大会(2018年度)シンポジウム「アーレントvs カント――政治・自由・判断力」宮﨑裕助×齋藤宜之×網谷壮介×小谷英生(司会)
日時:2018年9月8日(土) 15:00~18:00
場所:中央大学 後楽園キャンパス 3号館(3300教室)
大会参加費:一律1000円(高校生以下無料)

日時:2018年9月16日(日)13:00-16:15
場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
受講料(税込):会員6,480円、一般7,776円

内容:ここ数年、「ポスト・トゥルース(脱真実)」や「オルタナティヴ・ファクト(代替的事実)」といった言葉が世間を騒がせています。SNSの情報拡散にせよ公文書の改竄にせよ、真理/虚偽、事実/虚構といった二項対立が崩れ去り、まさに脱構築されつつある現実を私たちは目の当たりにしています。脱構築をキーワードとしてきたフランスの哲学者ジャック・デリダであれば、こうした事態をどう考えるでしょうか。本講座では、昨年翻訳が出たデリダの『嘘の歴史』(未來社刊)を読み解くことを通じて「嘘の哲学」を試みるとともに、私たちの時代のポスト・トゥルース的な現実にいかに向き合うべきかについて考えてみたいと思います。(講師・記)

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★星野太さん(著書:『崇高の修辞学』)
福尾匠さんの著書の刊行を記念した以下のイベントに登壇されます。


日時:2018年9月8日(土) at 18:00~20:00
場所:芸宿 ge-Shuku(石川県金沢市小立野4-2-1 すみれ台ハウス)
料金:1000円(1ドリンク付)※予約不要

内容:福尾匠『眼がスクリーンになるとき:ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社)が刊行された。本書は哲学と映画の正面衝突を記録したドゥルーズの『シネマ』の解説書だが、そこにはとおりいっぺんの解説におさまらない探求がたしかにある。今回のトークでは『シネマ』とその拡張可能性だけでなく、『眼がスク』の「新しさ」について、著者を含む3人によって活発な議論が交わされるだろう。/高橋明彦は近世文学研究者でありながら大著『楳図かずお論』(青弓社、2015年)を刊行しており、昨年福尾がおこなった「5時間でわかるドゥルーズ『シネマ』」を聴講したうえ、芸宿で独自に「補講」を組織していた。/星野太は『崇高の修辞学』(月曜社、2017年)で高密度な学術的な達成をマークする一方で、旺盛に批評を執筆し続けている。哲学と批評の相互的な生成という『シネマ』的な方法を地で行く彼に本書はどう見えるのだろうか。/なお当日会場では特別に『眼がスクリーンになるとき』を税抜価格(2200円)で販売する。

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★森山大道さん(写真集:『新宿』『新宿+』『ニュー新宿』『大阪+』『Osaka』『ハワイ』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『オン・ザ・ロード』『カラー』『モノクローム』『パリ+』『犬と網タイツ』『K』、フォト・ボックス:『NOVEMBRE』、エッセイ集:『通過者の視線』、共著:『鉄砲百合の射程距離』『絶対平面都市』)
bookshop Mより今年1月に刊行された写真集『Daido Moriyama: Ango』を記念し、先月末から写真展が行なわれています。

◎森山大道写真展「Ango
会期:2018年8月31日(金)~9月30日(日)13:00~19:00
場所:gallery 176(阪急宝塚線「服部天神駅」下車徒歩1分)
※会期終わりの曜日が通常と異なります
※休廊日:9月5日(水)、6日(木)、12日(水)、13日(木) 、19日(水)、20日(木)、 26日(水)、27日(木)
※一部雑誌等で土曜、日祝日の開廊時間が11:00~と紹介されていますが、開廊時間は全日13:00~19:00となります。ご注意ください。
内容:数多く発表されている坂口安吾の著作の中でも傑作とされる『桜の森の満開の下』と、森山大道が撮りおろした漆黒の桜の写真を、デザイナーの町口覚が “交配” させ一冊の書物を生み出しました。その出版記念として、同書に収録された森山大道の写真作品を展示いたします。

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★川田喜久治さん(写真集:『地図』)
先月末より以下の通り写真展が行なわれています。

日時:2018年8月31日(金)~2018年10月11日(木)
場所:キヤノンギャラリー S(品川)
内容:川田氏の作品群の中から「ロス・カプリチョス」と「ラスト・コスモロジー」を再編し、タイトル「百幻影-100 Illusions」のもと50点ずつ計100点を展示致します。また、グラフィックデザイナー田中義久氏が本展のために制作したポスターを川田氏の作品と合わせて展示します。

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by urag | 2018-09-05 11:32 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)