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2017年 10月 12日

ブックツリー「哲学読書室」に岡嶋隆佑さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ハーマン『四方対象』(人文書院、2017年9月)の監訳者・岡嶋隆佑さんによる選書リスト「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流」が追加されました。下記リンク先一覧よりご覧ください。


◎哲学読書室

星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流

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by urag | 2017-10-12 11:38 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 11日

ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』刊行記念シンポジウム


日時:2017年 11月12日(日曜日)13:30〜17:00(開場13:00)
場所:神戸市・海外移住と文化の交流センター
参加費:無料(要・事前申し込み→こちらから)

登壇者:酒井隆史(大阪府立大学人間社会システム研究科教授)、鈴木慎一郎(関西学院大学社会学部教授)、田中東子(大妻女子大学文学部准教授)、山本敦久(成城大学社会イノベーション学部准教授)、井上弘貴(神戸大学国際文化学研究科准教授)

主催:神戸大学国際文化学研究推進センター2017年度研究プロジェクト「ポストBrexitの文化状況――身体・都市・メディア・資本へのグローバルな影響と意味」(代表者:小笠原博毅)
後援:カルチュラル・ スタディーズ学会

内容:「ユニオンジャックに黒はない」。1970年代イギリスの極右勢力が移民排斥のスローガンとしたこの文言は同時に、「だからなんだってんだ!」というカルチュラル・スタディーズの立ち位置を鮮明に表す合言葉ともなった。原著出版後30年の時を経てついに邦訳なる! ディアスポラの響きに誰よりも寄り添ってきた鈴木慎一郎氏と、近代資本主義を地べたから検証している酒井隆史氏をゲストに迎え、訳者3名と徹底的に討論する。

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by urag | 2017-10-11 13:05 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 08日

注目新刊:クセナキス『形式化された音楽』筑摩書房、ほか

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アメリカンドリームの終わり――あるいは、富と権力を集中させる10の原理』 ノーム・チョムスキー著、寺島隆吉/寺島美紀子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017年10月、本体1,800円、46判上製304頁、ISBN978-4-7993-2183-6
チョムスキー言語学講義――言語はいかにして進化したか』ノーム・チョムスキー/ロバート・C・バーウィック著、渡会圭子訳、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,000円、256頁、ISBN978-4-480-09827-6
原典訳 原始仏典』上巻、中村元編、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,700円/本体1,400円、656頁/496頁、ISBN978-4-480-09808-5/09809-2
定本 葉隠〔全訳注〕(上)』山本常朝/田代陣基著、佐藤正英校訂、吉田真樹監訳注、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,600円、592頁、ISBN978-4-480-09821-4
記号論』吉田夏彦著、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,000円、224頁、ISBN978-4-480-09824-5
アンチクリストの誕生』レオ・ペルッツ著、垂野創一郎訳、ちくま文庫、2017年10月、本体900円、288頁、ISBN978-4-480-43466-1
形式化された音楽』ヤニス・クセナキス著、野々村禎彦監訳、冨永星訳、筑摩書房、2017年9月、本体6,500円、A5判上製440頁、ISBN978-4-480-87393-4
対称性――不変性の表現』Ian Stewart著、川辺治之訳、サイエンス・パレット;丸善出版、2017年9月、本体1,000円、新書判並製178頁、ISBN978-4-621-30203-3

★『アメリカンドリームの終わり』は『Requiem for the American Dream: The 10 Principles of Concentration of Wealth & Power』(Seven Stories Press, 2017)の翻訳です。本書のもととなった長編インタヴューは2015年に「アメリカン・ドリームへのレクイエム」として映画化されています。4年にわたる聴き取りをまとめたもので、動画はネットで探せばご覧になれます。豊富な資料と注を付け加えた書籍版は原書に倣って墨と緑色の二色刷で美しい本に仕上がっています。緑と言っても昨今の新党のシンボルカラーに合わせてあるわけではありませんが、ちょうど選挙目前ということもあり、例の党首(だけでなく)に向かって本書を振りかざして差し上げるくらいの皮肉は当然たしなんでも構わないと思います。

★チョムスキーは本書で、アメリカの「建国以来の下劣で恥ずべき行動原理」として10項目を挙げています。曰く「民主主義を減らす」「若者を教化・洗脳する」「経済の仕組みを再設計する」「負担は民衆に負わせる」「連帯と団結への攻撃」「企業取締官を操る」「大統領選挙を操作する」「民衆を家畜化して整列させる」「合意を捏造する」「民衆を孤立させ、周辺化させる」。舌鋒鋭いチョムスキーの分析内容は日本人にとっても対岸の火事として放っておけばいいものでは断じてありません。版元さんの力から言って本書は多くの書店さんの店頭に置かれると思いますが、この本はぜひ、かつての『超訳 ニーチェの言葉』と同様に地道に長く店頭に置いて下さることを祈るばかりです。訳者が言う通り、本書は「明日の日本に対する警告の書」だからです。

★『アメリカンドリームの終わり』ではチョムスキーの政治的発言を読むことができますが、今月はチョムスキーの本職である生成文法論関連の邦訳新刊も発売されています。ちくま学芸文庫から出た、コンピュータ科学者バーウィックとの共著で『Why Only Us: Language and Evolution』(MIT Press, 2015)の訳書で、文庫オリジナルの初訳本です。言語の進化が主題であり、「なぜ今なのか?」「進化する生物言語学」「言語の構成原理とその進化に対する意義」「脳の三角形」の全4章立て。「言語は形と形以外の“モジュール”からの違う表現を結合する媒介語(リンガ・フランカ)である〔・・・〕。“心の内的道具”がそうであるように、さまざまな視覚手がかりを統合し、それらについて推論する――動物が岩の上にいるか下にいるか――ことは、間違いなく選択的に有利と思われる。そのような性質が子孫に受け継がれ、ある小さな集団にいきわたるかもしれない。これが私たちの思い描いた進化のシナリオだ」(215~216頁)と二人は結論づけています。

★今月のちくま学芸文庫およびちくま文庫ではこのほか4点5冊に注目したいと思います。まず『原典訳 原始仏典』上下巻は、筑摩書房版『世界古典文学全集(6)仏典I』(1966年;のちに『原始仏典』1974年として新版を刊行)を文庫化したもので、1974年版を底本としているとのことです。1987年に東京書籍より刊行された中村元さんの解説本『原始仏典(1)釈尊の生涯』『原始仏典(2)人生の指針』を合本文庫化した『原始仏典』(ちくま学芸文庫、2011年)とは別物で、今回の上下巻は書名通り仏典(パーリ語およびサンスクリット語)を現代語訳したものです。上巻には仏伝として「仏伝に関する章句」と「偉大なる死(大パリニッバーナ経)」を収め、原始経典として「経典のことば」「シンガーラへの教え」「本生経(ジャータカ)」「長老の詩(テーラ・ガーター)」を収めています。下巻では原始経典として「長老尼の詩(テーリー・ガーター)」を収め、さらに「アヴァダーナ」「百五十讃」「金剛の針」「ラトナーヴァリー」「ナーガナンダ」を収めています。

★次に『定本 葉隠〔全訳注〕』は全3巻で10月から12月にかけて上中下巻と発売されていきます。ちくま学芸文庫のために新たに書き下ろされたものです。先日言及しましたが、講談社学術文庫でも先月より『新校訂 全訳注 葉隠』全3巻が発売開始となっています。講談社版が佐賀県立図書館所蔵の天保本(杉原本)を底本とし、餅木本や小城本などにより校訂したものであるのに対し、ちくま版は同じく佐賀県立図書館所蔵ながら新出だという小山信就本を底本とし、餅木本や山本本を校合したとのことです。講談社版は原文・現代語訳・語注の順の構成で、ちくま版は原文・語注・現代語訳の順番となっています。読み比べれば分かりますが、現代語訳にはそれぞれの味わいがあり、ここは両書とも買い揃えて理解を深めたいところです。

★続いて吉田夏彦『記号論』は放送大学の教材として執筆され1989年に公刊されたものの文庫化。帯文に曰く「世界は巨大な記号の体系だ。その構造を読み解く最強の技術、論理学への誘い」と。文庫版あとがきによれば、「今度読み返してみて、放送とは独立に読めることを確かめたので、大筋はそのままにし、字句を多少修正して復刊することにした」とのことです。章立ては、「変項」「形式と抽象」「そのほかの論理記号」「計算と証明」「形式化」「記号の濫用」「ものごと」「話」「記号の役割」「環境としての記号」「記号としての環境」「かたち」「楽譜と音楽」「自然と記号」「終に」の全15章。

★ペルッツ『アンチクリストの誕生』は1930年に刊行された中短編集『Herr, erbarme dich meiner』の全訳で文庫版オリジナルの新刊。収録作は全8編で、原書名である「「主よ、われを憐れみたまえ」」のほか、「一九一六年十月十二日火曜日」「アンチクリストの誕生」「月は笑う」「霰弾亭」「ボタンを押すだけで」「夜のない日」「ある兵士との会話」。巻末解説「レオ・ペルッツの綺想世界」は皆川博子さんがお書きになっておられます。

★筑摩書房さんでは先月末、クセナキスの『Formalized Music: Thought and Mathematics in Composition』(Revised edition, Pendragon Press, 1992)の全訳である『形式化された音楽』を発売されています。たいへんに美麗な装丁は工藤強勝さんと勝田亜加里さんによるもの。目次を以下に列記しておきます。

序文
フランス語原版の序文
英語版(ペンドラゴン版)の序文
第1章 拘束のない推計学的音楽全般について
第2章 マルコフ連鎖を用いた推計学的音楽――その理論
第3章 マルコフ連鎖を用いた推計学的音楽――その応用
第4章 音楽における戦略――戦略、線型計画法、そして作曲
第5章 計算機を用いた拘束のない推計学的音楽
第6章 記号論的音楽
第1章から第6章までの結論と拡張
第7章 メタ音楽に向けて
第8章 音楽の哲学に向けて
第9章 微細音響構造に関する新たな提案
第10章 時間と空間と音楽について
第11章 ふるい
第12章 「ふるい」のユーザーズガイド
第13章 ダイナミックな推計学的合成
第14章 さらに徹底した推計学的音楽
補遺Ⅰ 連続確率の二つの法則
補遺Ⅱ
補遺Ⅲ 新しいUPICシステム
参考文献
監訳者解説
訳者あとがき
索引

★監訳者解説に本書の書誌情報が詳しく書かれています。「本書は彼〔クセナキス〕自身による作曲技法の解説書だが、元々は独立な論文をほぼ執筆年代順に並べて一冊にまとめたものであり、刊行年代に応じて複数の版が存在する」。以下に、本書の先行する版についての監訳者による解説を図式的に転記しておきます。

1)仏語版初版『Musiques formelles』(Richard-Masse, 1963)・・・当訳書の底本(英語版増補版)との対応:第1章~第6章(第2章と第3章は分割されていない)、補遺ⅠおよびⅡ、あとがき(底本では「第1章から第6章までの結論と拡張」)。

2)英語版初版『Formalized Music』(Indiana University Press, 1971)・・・当訳書の底本との対応:第1章~第6章および、第7章と第8章の仏語論文の英訳、そして第9章(書き下ろし)。

★留意点として、今回の訳書では、英訳の読みにくさのために、仏語原文があるものは仏語から訳したとのことです。なお『音楽と建築』(高橋悠治訳、全音楽譜出版社、1975年;新編新訳版、河出書房新社、2017年7月)との違いについては次のように書かれています。『形式化された音楽』英語版増補版の「第1章から第6章の要約(に相当する短い論文や講演原稿)及び第7章・第8章原文と若干の建築に関するメモ(現行版〔すなわち英語版増補版〕第1章に含まれるフィリップス・パビリオンのプランの説明など)からなり、英語版初版の仏語による簡易版とみなせる。刊行時点では〔・・・〕内容が重複しないように配慮したのだろう」。

★イアン・スチュアート『対称性――不変性の表現』は、Oxford University Pressの「A Very Short Introduction」シリーズより刊行された『Symmetry』(2013年)の全訳。カバーソデ紹介文は以下の通り。「「対称性」は現代科学の重要語の一つです。対称性といえば、虹、雪の結晶、貝殻などの線対称や回転対称な図形を連想し、その規則正しく並んだ模様に私たちは魅了されてきました。この対称性を現代科学で扱われているように抽象化するきっかけとなったのは、対称な図形・模様の分析・研究ではなく、方程式の解の探求といわれています。本書では対称性についての素朴なイメージからはじめ、対称性の抽象的定義、その性質の広がり、魅力をイアン・スチュアートが描きます」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者は本書の末尾でこう述べています。「対称性の物語、そこから導かれる数学、そしてその結果得られた理論に基づく利用は、単純だが深遠な概念がいかにして途方もなく強力な理論と大きな科学的発展になりうるかを示している。〔・・・〕対称性を理解するための探求は、いかに自然界の美が美しい科学と美しい数学につながるかという見事な例になっている」(160~161頁)。著者自身による紹介動画を以下に貼り付けておきます。


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★数々の本がかたちづくる宇宙との出会いは、書店にあります。当たり前のことが忘れられてしまいがちなこんにち、何度でも強調しなければなりません。しばらく寄っていなかった外国文学棚に行くと、美しい本たちが待っていました。澁澤龍彦没後30年記念で再刊された3点と、基本的に熊本県下でしか買えなかった本を手に取りました。いずれも既刊書ですが、特記しておきたい書目です。

超男性(愛蔵版)』アルフレッド・ジャリ著、澁澤龍彦訳、白水社、2017年8月、本体3,600円、4-6判上製244頁、ISBN978-4-560-09570-6
大胯びらき(愛蔵版)』ジャン・コクトオ著、澁澤龍彦訳、白水社、2017年8月、本体3,600円、4-6判上製187頁、ISBN978-4-560-09579-9
城の中のイギリス人(愛蔵版)』アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ著、澁澤龍彦訳、白水社、2017年8月、本体3,600円、4-6判上製202頁、ISBN978-4-560-09569-0
抄訳 アフリカの印象』レーモン・ルーセル著、坂口恭平画、國分俊宏訳、いとうせいこう解説、伽鹿舎、2016年8月、本体926円、ライブラリー判並製306頁
ISBN:978-4-908543-04-3

★『超男性』『大胯びらき』『城の中のイギリス人』は原条令子さんによるほれぼれするような美しい装幀に誘われて、軽装版を持っているにもかかわらずまんまと購入。それぞれ中身は、1975年版、1954年版、1982年版の復刻で、書体や組版に当時の雰囲気があります。3点とも手元に揃えるのが正解かと。いっぽう、『抄訳 アフリカの印象』は坂口さんの独特な挿画がとてもいいです。伽鹿舎(かじかしゃ)は熊本市の版元さん。「スタッフ全員が本業を別にもっている非営利の文藝出版社」で週末出版社とも自身を位置づけておられます。編集、造本、販売のそれぞれのこだわりに共感を覚える素敵なチームだと思います。ルーセルの新訳本は同舎のシリーズ「伽鹿舎QUINOAZ(キノアス)」の一冊。文庫より少し大きなライブラリーサイズのシリーズです。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

空間へ』磯崎新著、河出文庫、2017年10月、本体1,400円、584頁、ISBN978-4-309-41573-4
改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』――演出家としてのベケット』堀真理子著、藤原書店、2017年9月、本体3,800円、四六上製288頁、ISBN978-4-86578-138-0
いのち愛づる生命誌(バイオヒストリー)――38億年から学ぶ新しい知の探求』中村桂子著、藤原書店、2017年9月、本体2,600円、四六並製304頁、ISBN978-4-86578-141-0
夜の光に追われて』津島佑子著、津島佑子コレクション;人文書院、2017年9月、本体3,000円、4-6判上製372頁、ISBN978-4-409-15030-6
ジェンダー研究を継承する』佐藤文香/伊藤るり編、人文書院、2017年10月、本体4,800円、A5判上製524頁、ISBN978-4-409-24119-6
貧困と自己責任の近世日本史』木下光生著、人文書院、2017年10月、本体3,800円、4-6判上製330頁、ISBN978-4-409-52067-3
海の民のハワイ――ハワイの水産業を開拓した日本人の社会史』小川真和子著、人文書院、2017年10月、本体4,000円、4-6判上製288頁、ISBN978-4-409-53051-1

★河出文庫さんの新刊『空間へ』は建築家の磯崎新さんの初めての単独著(初版は美術出版社より1971年刊)の文庫化で、磯崎さんの文庫本としては「へるめす」誌での連載をまとめた『建築家捜し』(岩波現代文庫、2005年、品切)以来の新刊です。1960年から68年にかけて各媒体で発表された論考やエッセイを集成したもので、再刊にあたり文庫版あとがきと松井茂さんによる解説が加えられています。初版本の函に印刷されていた瀧口修造さんの推薦文は文庫版あとがきの末尾に全文が転載されています。

★藤原書店さんの9月新刊より2点を挙げます。『改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』』はベケット研究の第一人者が、戯曲『ゴドーを待ちながら』のおびただしい台本改訂と演出ノートの細部に迫る解読本です。「本書のねらいは『ゴドー』の舞台を楽しむために、またその戯曲を味わうための指針となるよう、この作品に秘められた未曾有の仕掛けを明かし、筆者なりに紐解いていくことである」(10頁)。いっぽう、『いのち愛づる生命誌(バイオヒストリー)』は90年代後半から今日に至るまでの間に各媒体で発表されてきた生命誌関連の文章に書き下ろしを加えてまとめたものです。「私が知りたいのは、バクテリアもキノコもミミズもチョウもタンポポも、それぞれがみごとに生きていることであり、みんなでつくる歴史物語です。〔勝者の目線で書かれた〕「史」よりも「誌」にしたいと思ったのはそのためであり、それが思いがけずヒストリーの本来の意味と重なったのでした」(6頁)。2点の目次詳細は書名のリンク先にてご確認いただけます。

★人文書院さんの新刊では発売済2点とまもなく発売の2点を挙げます。まずは発売済み2点。『夜の光に追われて』は「津島佑子コレクション」第Ⅰ期第2回配本。80年代半ばの東京新聞(北海道新聞、中日新聞)での連載小説で、再刊にあたっての底本は講談社文芸文庫版(1989年)とのことです。「生きることの核心」という解説を木村朗子さんがお寄せになっています。『ジェンダー研究を継承する』は現代日本におけるジェンダー研究の先達21名のインタヴューを収めた意義深い大冊。「一橋大学大学院社会学研究科先端課題研究叢書」の一冊と銘打たれています。続いてまもなく発売の2点。『貧困と自己責任の近世日本史』は奈良県田原村(現在の奈良市東部)に残る「片岡家文書」に記された近世農村の家計のありようから江戸時代の貧困について精密に分析したもの。『海の民のハワイ』は「日本人と海の結びつきに着目した上で、海がもたらす資源に生活の糧を求める人々を海の民と総称し、20世紀におけるハワイの水産業の発展に貢献した日本の海の民の軌跡を、主に社会史的側面から追究」(9頁)したもの。4点の目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

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by urag | 2017-10-08 20:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 06日

11月初旬発売予定新刊:南嶌宏美術評論集『最後の場所』

2017年11月1日取次搬入予定 *芸術/美術

最後の場所 現代美術、真に歓喜に値するもの
南嶌宏美術評論集
月曜社 2017年11月 本体3,500円 46判(縦188mm×横128mm×束33mm)上製592頁 ISBN:978-4-86503-052-5

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

いわき市立美術館、広島市現代美術館、熊本市現代美術館など、国内の主要な現代美術館の設立に参画し、同時代のアーティストたちと火花を散らすように共闘し、「私たちが回復すべきもの――複数の視覚、複数の言語、複数の貨幣、複数の記憶が響き合う世界」へ向けての実践=〈美術の現場〉からつむぎあげた類のない美術評論集(遺稿)。本書編集委員:倉森京子(NHK)・日沼禎子(女子美術大学)・保坂健二朗(東京国立近代美術館)。

【本書で取り上げた主な作家たち】草間彌生、横尾忠則、舟越桂、森村泰昌、宮島達男、日比野克彦、やなぎみわ、岡本太郎、塩田千春、八谷和彦、遠藤彰子、殿敷侃、崔在銀、マリーナ・アブラモヴィッチ、アン・ハミルトン……。

南嶌宏(みなみしま・ひろし:1957~2016)。長野県生まれ。元・女子美術大学芸術学部芸術学科教授。キュレーターとして「生人形」(2004年)、「ATTITUDE2007 人間の家」(2007年)など話題となる展覧会を多数企画。2009年第3回西洋美術振興財団学術賞受賞。プラハ国際芸術トリエンナーレ2008国際キュレーター、第53回ベネチア・ビエンナーレ日本館コミッショナー(2009年)を歴任。著書に『ベアト・アンジェロ 天使のはこぶもの』(トレヴィル、1992年)、『サンタ・マリア』(トレヴィル、1993年)、『豚と福音』(七賢出版、1997年)がある。美術を通したハンセン病への社会的偏見に対する活動や、生人形や見世物文化の価値を再発見する取り組みを行ってきた。

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by urag | 2017-10-06 09:56 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 02日

明後日開催:トークイベント「いま、出版社に求められているものとは」@ゲンロンカフェ

ゲンロンカフェでのトークイベント、いよいよ明後日です。席にたっぷりと余裕がありますので、フロアの皆さんとのやりとりも前回以上にできるのではないかと思います。皆様のお越しをお待ちしております!

◎内沼晋太郎(本屋B&B)×工藤秀之(トランスビュー)×小林浩(月曜社)「いま、出版社に求められているものとはーー「本」をめぐる新たな視点

日時:2017年10月4日(水)19:00 - 21:30 JST
会場:ゲンロンカフェ(五反田駅西口から徒歩3分)
チケット:前売券 1ドリンク付 ¥2,600 ※当日、友の会会員証/学生証提示で500円キャッシュバック
友の会会員限定最前列席 前売分 1ドリンク付、共有サイドテーブル・電源あり ¥2,600 ※ キャッシュバックはありません ※複数予約される場合はお連れの方が会員でなくても結構です

内容:出版ベンチャーとして成長を続けるゲンロンが、出版業界・書店業界のこれからについて考えるイベント、第2弾!! 今回のテーマは、「出版社の新しい可能性を探る」!! ご登壇いただくのは、NUMABOOKS代表として、本屋B&Bの運営や、出版レーベルの立ち上げなど、本と人をさまざまな形でつなぐ内沼晋太郎さん。「トランスビュー方式」と呼ばれる新しい出版流通の仕組みをつくり、多くの小規模出版社をつなぐ協業の取り組みも行なっているトランスビュー工藤さん。そして、出版業界の状況について積極的な情報発信を行っている月曜社の小林浩さんの三名に、本を作り、本を売り続けるために必要なことは何か、さまざまな視点から考え、語り合っていただきます! 出版、書籍、流通。私たちがいま、「本」に求めているものは何なのか、売る側も買う側も必見のイベントです!

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【10月5日追記】昨日は多数のご来場、ご視聴ありがとうございました。イベントの様子がtogetter上でまとめられています。タイムシフト視聴は2017/10/11(水) 23:59まで有料にてご覧になれます。

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by urag | 2017-10-02 17:19 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 01日

注目新刊:ホワイト『メタヒストリー』ついに刊行、ほか

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メタヒストリー ―― 一九世紀ヨーロッパにおける歴史的想像力
ヘイドン・ホワイト著 岩崎稔監訳
作品社 2017年10月 本体6,800円 A5判上製705頁 ISBN978-4-86182-298-8
訳者:岩崎稔、大澤俊朗、小田原琳、柏崎正憲、高橋明史、トリスタン・ブルネ、橋爪大輝、馬場智一、福田雅之、山本裕子、吉田耕太郎。
帯文より:歴史学に衝撃をもたらした伝説の名著。翻訳不可能と言われた問題作が43年を経て遂に邦訳完成!

目次:
[日本語版序文]ようやく! そして、メタヒストリーを再考することの意味について 
[四〇周年記念版への前書き]「きみが手にしているすべてが歴史だ」(マイケル・S・ロス)
四〇周年記念版への序文 
一九七三年版への序文 
序論 歴史の詩学 
 歴史学的作品の理論/プロット化による説明/形式的論証による説明/イデオロギー的意味による説明/歴史叙述のスタイルという問題/喩法の理論/一九世紀の歴史意識の諸段階
第Ⅰ部 受け入れられた伝統――啓蒙と歴史意識の問題
第1章 隠喩とアイロニーのはざまの歴史的想像力
 はじめに/啓蒙の歴史叙述の弁証法/歴史叙述の伝統的な概念/歴史、言語、プロット/懐疑主義とアイロニー/啓蒙以前の歴史叙述の主要形式/ライプニッツと啓蒙/歴史の場/啓蒙の歴史叙述の到達点/啓蒙の歴史叙述に対するヘルダーの叛乱/ヘルダーの歴史理念/ヘルダーからロマン主義と観念論へ
第2章 ヘーゲル――歴史の詩学とアイロニーを超える方法
 はじめに/言語、芸術、歴史意識/歴史、詩、レトリック/可能なプロットの構造/包摂的なプロット構造としての悲劇と喜劇/即自的歴史と対自的歴史/即自かつ対自的歴史
構造としての《歴史の場》/国家、個人、悲劇的歴史観/過程としての《歴史の場》/悲劇から喜劇へ/世界史というプロット 
第Ⅱ部 一九世紀の歴史記述における四種類の「リアリズム」
第3章 ミシュレ─―ロマンスとしての歴史的リアリズム
 はじめに/一九世紀における歴史学の古典/歴史哲学に抗する/歴史叙述/隠喩的様式における「リアリズム」としてのロマン主義的歴史学/「存在の混沌」としての歴史の場/ミシュレ─―隠喩として説明され、ロマンスとしてプロット化された歴史叙述
第4章 ランケ─―喜劇としての歴史的リアリズム
 はじめに/ランケの歴史学的方法の認識論的基礎/喜劇としての歴史過程/歴史的分析の「文法」/歴史的事件の「構文論」/歴史解釈の「意味論」/ランケにおける歴史的理念(イデー)の保守的含意/喜劇としてプロット化された歴史/歴史的方法として有機体論を本格的に弁護すること/小括
第5章 トクヴィル――悲劇としての歴史的リアリズム
 はじめに/弁証法に抗って/二つの様式における詩と歴史/自由主義の仮面/社会的調停の歴史叙述/歴史過程の「構文論」/アメリカの歴史の「意味論」/ヨーロッパ史というドラマ/リベラルな視点、保守的な語調/アイロニーの視座から見る悲劇的対立/革命というドラマのアイロニー的解決/アイロニー的視点がもつイデオロギー的意味に抵抗する試み/ゴビノー批判/アイロニーへの転落/小括 
第6章 ブルクハルト――風刺劇としての歴史的リアリズム
 はじめに/ブルクハルト――アイロニー的世界観/世界観としてのペシミズム――ショーペンハウアーの哲学/歴史意識の基盤としてのペシミズム/風刺劇的スタイル/歴史過程の「構文論」/歴史の「意味論」/「風刺(サトゥーラ)」のプロット構造/隠喩に抗って/アイロニーとしてのリアリズム/歴史と詩/小括
第Ⅲ部 一九世紀後期の歴史哲学における「リアリズム」の拒否
第7章 歴史意識と歴史哲学の再生
第8章 マルクス――換喩の様式における歴史の哲学的弁護
 はじめに/マルクスについて研究するという問題/歴史をめぐるマルクスの思想の核心/分析の基礎モデル/歴史的実存の「文法」/歴史過程の「構文論」/歴史の「意味論」/具体的な歴史的出来事に適用されたマルクスの方法/茶番劇としての歴史/小括
第9章 ニーチェ――隠喩の様式における歴史の詩的弁護
 はじめに/神話と歴史/記憶と歴史/道徳と歴史/真理と歴史/小括
第10章 クローチェ――アイロニーの様式における歴史の哲学的弁護
 はじめに/批評としての歴史哲学/「芸術の一般概念のもとに包摂される歴史」という試論について/歴史意識の美学/歴史的知の本性――共通感覚が与える正当化/歴史学的知の逆説的な本性/クローチェの歴史観念のイデオロギー的意味/適用された批評の方法――アイロニーの馴致効果/クローチェ対マルクス/クローチェ対ヘーゲル/クローチェ対ヴィーコ/ブルジョア・イデオロギーとしての歴史学
結論
[日本語版解説]メタヒストリーとは、いかなる問いなのか? (岩崎稔) 
 本書とヘイドン・ホワイトについて/四つの基本形式について/四つの喩法の意味/相対主義という非難/『メタヒストリー』とホロコースト/翻訳にあたって
参考文献一覧
 1.本文内で分析された著作/2.歴史学・歴史哲学・批判理論に関する本文内で言及した著作/3.ヘイドン・ホワイトの著作(単著、共著、共編著)/4.ヘイドン・ホワイトの著作・論文の翻訳/5.ヘイドン・ホワイト論
索引

★まもなく発売(9月28日トーハン搬入済、10月2日日販および大阪屋栗田搬入予定)。この翻訳は、おそらく2017年における人文書における最大の事件の一つとなるでしょう。アメリカの歴史家ホワイト(Hayden White, 1928-)の主著であり、歴史を記述することそのものの《歴史》、すなわちメタヒストリーを精緻に分析したあまりにも高名な本書は、現代の古典として長らく翻訳が待望されていましたし、その昔、別の版元から近刊予告が出たこともありました。そうした過去を知っている方々にとっては今回の刊行はまさに夢のような出来事であり、私自身、現物を手に取りながら「これは本当のことなのか」とただただ震えるばかりです。原著は『Metahistory: The Historical Imagination in Nineteenth-Century Europe』(Baltimore: Johns Hopkins University Press, 1973)で、2014年に刊行された40周年記念版で追加された新たな序文や思想史家ロスの前書き、さらに日本語版のために2010年3月に書き下ろされた序文などが訳載されています。2段組700頁を超える大冊(監訳者解説や参考文献、索引を含む)にはずっしりとした重みがあります。

★日本語版序文でホワイトはこう説明しています。「わたしは、歴史叙述に関わりをもつ言説それ自体がいったい何であるのかということに取り組んだのであり、「歴史学」を発明、研究、記述し、そこに意味を与えている文化的生産の様態と方法を問題にしたのです。もっと言うなら、記録に残っている過去の出来事は後のひとびとの営みを通して、その発生時点ではけっしてもちえなかった意味を帯びるように変化するものですが、まさにその変化の過程を論じようとしたものです」(9頁)。「本書は、歴史に関わるあらゆる作品をどのように開かれた姿で読むことができるかを考えています。だから、「歴史」ないし「歴史」の一部を科学的ないし客観的に研究し考察したと主張する歴史学者や歴史哲学者のテキストを、まずは体系的に読解することから始めています。そして、こう問い尋ねるのです。これらのテキストのなかで、過去について、特有の意味での「歴史学的な」説明を生み出すために用いられる文学的、修辞的、象徴的、あるいは端的に言語学的なメカニズムや手段や技術、それに概念や形象や喩法は、はたしてどのような特性をもっているのか、と」(10頁)。

★ホワイトの教え子だったこともあるというロスは師の業績を端的に「歴史的リアリズムの批判的分析」と約し、こう紹介しています。「『メタヒストリー』やさまざまな論考のなかでホワイトが明らかにしているのは、歴史記述がいかにして指示対象や記号システムを作り出しているのかということである。読者は、この記号システムを必然的なもの、あるいは客観的なものとして、あるいは自然なものとして見なすよう定められている。これらは、リアリズムの装いをとったイデオロギー的な処置なのだ」(28頁)。ホワイトの重要論文は、今春発売された日本語版独自アンソロジー『歴史の喩法』(上村忠男編訳、作品社、2017年3月)で読むことができます。また同じく上村さんの監訳で今月27日発売で『実用的な過去』が岩波書店から刊行される予定と聞いています。歴史における「証言」の重要性を説いたカルロ・ギンズブルグとの鋭い対峙がスリリングに展開された論集『アウシュヴィッツと表象の限界』(ソール・フリードランダー編、上村忠男/小沢弘明/岩崎稔訳、未來社、1999年)も必読です。

★同書の刊行を記念して今週末、以下のシンポジウムが行なわれます。

◎国際シンポジウム「『メタヒストリー』の射程で考える歴史叙述と記憶の問題系」

時間:2017年10月7日(土)13時~17時半
場所:東京外国語大学府中キャンパス)、本部管理棟、中会議室

趣旨説明 岩崎稔(東京外国語大学教授・訳者代表)13:00-13:15
第一部 《ホロコーストと表象の限界》 13:00-14:45 モデレーター:岩崎稔
「『メタヒストリー』とアウシュヴィッツのアポリア」林志弦〈韓国・西江大学教授〉
「ホロコーストをどう表象するか――「実用的な過去」の見地から」上村忠男〈東京外国語大学名誉教授〉 
第二部 《思想家、ヘイドン・ホワイト》 15:00-15:45
「インタビューのなかのヘイドン・ホワイト」岡本充弘〈東洋大学名誉教授〉
第三部《『メタヒストリー』論争の現在》 16:00-17:30 モデレーター:成田龍一 
「物語論的転回2.0 『メタヒストリー』と現代歴史学」長谷川貴彦(北海道大学教授)
「『メタスヒストリー』から『実用的過去』へ」ステファン・タナカ(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)
 
内容:ヘイドン・ホワイトによる『メタヒストリー』は、ながく歴史叙述と歴史学の在り方をめぐる論争の震源地のひとつとなってきました。とくに、ナショナルヒストリー批判や集合的記憶に関する議論において、旧態依然たる素朴な歴史理解の擬制を揺るがす役割を果たしてきたように思います。もっとも、その難解な文体のために、他方で『メタヒストリー』は、翻訳不可能な名著の筆頭に挙げられてきた厄介なテキストでもありました。/しかし、このたび同書の翻訳が、作品社のご尽力により、岩崎稔と総勢11名のチームによって平易な日本語で公刊される運びとなりました。待ちに待ったこの翻訳が、現代における歴史叙述と記憶の語りに関する論争にとって、アクチュアルな方法論的な枠組みをひとつ付け加えてくれることを期待しています。たまたま本年の春には、上村忠男氏によるホワイト・アンソロジーの翻訳『歴史の喩法』(作品社)が公刊され、またその上村氏の手でホワイトの近著『実用的な過去』もこの10月末に公刊される運びです。ヘイドン・ホワイトラッシュとでもいうような議論状況が突然現出しました。そこで、東京外国語大学では、この機会に以下の表題の国際会議を開催することにいたします。会議には日-英語の同時通訳が付きます。参加は無料、予約も必要ありません。ぜひご参集ください。主催=科研費基盤A「記憶論的転回以後の集合的記憶論の学際的再検討」、共催=WINC (Workshop in Critical Theories)。

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★さらに、以下の新刊にも注目したいです。

ラカン「リチュラテール」論――大意・評注・本論
佐々木孝次著
せりか書房 2017年9月 本体5,000円 A5判上製349頁 ISBN978-4-7967-0368-0
帯文より:「盗まれた手紙」(E.A.ポー)から「文字の国」(リチュラテール)へ――「リチュラテール」は、『エクリ(Écrits)』以後に書かれた短文、論考を集めた『オートルゼクリ(Autres écrits)』の巻頭を飾る文である。その内容を原文とともに平易な訳文と詳しい評注によって紹介し、最後の地平(現実界)に向かって進むラカン思想の歩みを、四つの定式(マテーム)を克明に辿りながら解明する。「日本」と「精神分析」を包む深い暗闇に新たな光を投げかける探究の書である。

目次:
第1部 大意と評注
第2部 本論
 Ⅰ 文字まで
  第一章 欲動と表象
  第二章 表象からシニフィアンへ
  第三章 四つのマテーム
   A.シェーマL
   B.欲望のグラフ
   C.四つのディスクール
   D.性別化の論理式
  第四章 文字のステイタス
   A.シニフィアンと文字
   B.文字と現実界
   C.文字と無意識
 Ⅱ 文字の国へ
  第一章 沿岸的ということ
  第二章 「見かけでないようなディスクールについて」
  第三章 漢字の多義性
  第四章 音読みと訓読み
  第五章 翻訳の日本語
  第六章 「お前」(二人称)の大他者化
  第七章 言語活動と慣習
  第八章 無意識への問い
あとがき
「Lituraterre」テキスト〔フランス語原文〕

★『ラカン『アンコール』解説』(佐々木孝次/林行秀/荒谷大輔/小長野航太著、せりか書房、2013年7月)、『ラカン「レトゥルディ」読解』(佐々木孝次著、せりか書房、2015年10月)に続く、日本におけるラカン研究の重鎮である佐々木孝次(ささき・たかつぐ、1938-)さんによるラカン読解本第3弾です。「リチュラテール」というのはラカンの造語で、ラルース社の雑誌『文学(リテラチュール)』第3号(1971年秋)の「文学と精神分析」特集に寄稿した論文の題名です。訪日後に書かれたもので、日本語の音読みと訓読み、書道、文楽、そしてバルトの日本論『表徴の帝国』が言及されています。巻末に収載されている通り「リチュラテール」の原文は13頁ほどの論文ですが、その大意と評注に70頁、その解説(本論)に250頁強が費やされた研究書です。様々な意味が圧縮されたラカンの論文は一見して難解で、たいていの読者はうんざりするほかないのですが、佐々木さんはその内容と背景を解凍するようにして展開図を作り、読者に提示しておられます。2001年にスイユより刊行された『オートルゼクリ(Autres écrits)』はまだいっこうに翻訳が出る気配を感じませんけれども、重要論文やセミネールについては今後もこのように読解本が出るのか、注目したいです。

★また、ここ二か月ほどに次のような注目新刊もありましたが、懐具合によりまだ購読できていません。

図説 ゲルマン英雄伝説』アンドレアス・ホイスラー著、マックス・コッホ挿画、吉田孝夫訳、八坂書房、2017年8月、本体2,400円、A5判上製228頁、ISBN978-4-89694-239-2
自由の哲学』ルドルフ・シュタイナー著、森章吾訳、イザラ書房、2017年8月、本体3,000円、四六判上製288頁、ISBN978-4-7565-0135-6
マッド・トラベラーズ――ある精神疾患の誕生と消滅』イアン・ハッキング著、江口重幸/大前晋/下地明友/三脇康生/ヤニス・ガイタニディス訳、岩波書店、2017年8月、本体5,400円、A5判上製360頁、ISBN978-4-00-024822-8
これがすべてを変える――資本主義 vs. 気候変動』上巻、ナオミ・クライン著、幾島幸子/荒井雅子訳、岩波書店、2017年8月、本体各2,700円、四六判上製各384頁、ISBN978-4-00-022956-2/022957-9
ロラン・バルト著作集(8)断章としての身体――1971-1974』ロラン・バルト著、吉村和明訳、みすず書房、2017年9月、本体6,400円、A5変型判392頁、ISBN978-4-622-08118-0
ポチョムキン都市』アドルフ・ロース著、鈴木了二/中谷礼仁監修、加藤淳訳、みすず書房、2017年9月、本体5,800円、A5判上製336頁、ISBN978-4-622-08567-6
メイキング――人類学・考古学・芸術・建築』ティム・インゴルド著、金子遊/水野友美子/小林耕二訳、左右社、2017年9月、本体3,100円、四六判上製332頁、ISBN978-4-86528-179-8
図像の哲学――いかにイメージは意味をつくるか』ゴットフリート・ベーム著、塩川千夏/村井則夫訳、法政大学出版局、2017年9月、本体5,000円、四六判上製320頁、ISBN978-4-588-01066-8
ヘーゲルとハイチ――普遍史の可能性にむけて』スーザン・バック=モース著、岩崎稔/高橋明史訳、法政大学出版局、本体3,600円、四六判上製294頁、ISBN978-4-588-01064-4

★こうやってほんの少し見ただけでも、まだ辿り着いていない本が多いことに嘆くほかはありません。ロースはアセテート版著作集の装丁の名残を思わせるもので好感が持てます。インゴルドの『メイキング』は『ラインズ――線の文化史』(工藤晋訳、左右社、2014年)に続く邦訳第2弾。左右社さんでは7月にレベッカ・ソルニットの好著『ウォークス――歩くことの精神史』(東辻賢治郎訳)も刊行されています。一方、法政大学出版局さんには思わず「すごい」の三連発です。ベームの新刊は「ガダマーの薫陶を受け、ブレーデカンプと並ぶイコノロジーの第一人者による最新の成果」と帯文に謳われており、100点以上ある図版は「ウニベルシタス初のオールカラー」とのこと。すごいです。バック=モースの新刊の訳者である岩崎さんと高橋さんは上述の『メタヒストリー』の共訳者でもあり、重要書の同時発売には讃嘆するばかりです。すごい。なお叢書・ウニベルシタスでは今月ついに、ドゥルーズ/ガタリの『カフカ〈新訳〉――マイナー文学のために』が宇野邦一さんによる新訳で発売となる予定だそうです。これもすごい。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。
パンツァー・オペラツィオーネン』ヘルマン・ホート著、大木毅編訳・解説、作品社、2017年9月、本体3,600円、四六判上製464頁、ISBN978-4-86182-653-5
トーキョー・レコード――軍国日本特派員日記』上巻、オットー・D・トリシャス著、鈴木廣之/洲之内啓子訳、作品社、2017年9月、本体各1,300えん、各448頁、ISBN978-4-12-206459-1/206460-7
たいへんな生きもの――問題を解決するとてつもない進化』マット・サイモン著、松井信彦訳、インターシフト発行、合同出版発売、2017年9月、本体1,800円、46判並製328頁、ISBN978-4-7726-9557-2

★『パンツァー・オペラツィオーネン』は発売済。訳者解説「知られざる作戦の名手――その明と暗」によれば、本書は「第二次世界大戦において重要な役割を果たしたヘルマン・ホート将軍の回想録にして唯一の著書である『装甲部隊の諸作戦』〔Panzer-Operationen: Die Panzer-gruppe 3 und der operative Gedanke der deutschen Führung Sommer 1941, Heidelberg, 1956〕に、ドイツの軍事専門誌『国防知識』(Wehrkunde)に発表された諸論文を加えて翻訳刊行するものである」とのこと。帯文には「貴重な原書オリジナル図版全収録」と謳われています。『国防知識』からの所収論文は以下の7本です。「ハンス=アドルフ・ヤーコプセン博士『黄号作戦』への書評」「1940年の西方戦役に対するマンシュタインの作戦契約と1940年2月27日付OKH開進訓令」「1940年2月24日の鎌の一撃計画成立について(ハンス=アドルフ・ヤーコプセン)」「1940年の西方戦役第一段階におけるフタンス機甲部隊の運命」「「1940年の西方戦役に対するマンシュタインの作戦計画と1940年2月27日付OKH開進訓令」について」「戦史の実例にみる、船体として運用された装甲師団の戦闘」「防御における戦車の運用と1959年のドイツ軍NATO式師団の新編制」。巻末には「ホート年譜」が併載されています。

★『トーキョー・レコード』は発売済。文庫オリジナル版の訳書で、原書は『ニューヨーク・タイムズ』の記者トリシャス(Otto David Tolischus, 1890-1967)が東京特派員時代(1941~1942年)における日本での出来事や印象、個人的体験を綴った記録『Tokyo Record』(New York: Reynald and Hitchcock, 1943)です。著者自身による巻頭の特記には、「記録の元になったのは、日本の官憲に押収された著者の原資料の複製、『ニューヨーク・タイムズ』紙に送った特電、そして著者の記憶である。これらすべての事物は、六か月にわたる日本の官憲の尋問によって、また、独房監禁の間の著者自身の省察によって、払拭できないほど深く心に刻み込まれた」と記されています。「日米開戦前後の日本を伝える貴重な証言」(カバー紹介文より)で、全40章からなります。スパイ容疑で逮捕された著者は尋問と拷問を課せられました。訳者が強い印象を受けたというその実態は第38章「拷問」や第39章「日本の正義」で綴られています。上巻巻末に「訳者あとがき」、下巻巻末に佐藤卓己さんによる解題「伝説のスター記者、オットー・D・トリシャスがいま再び」と人名索引、事項索引が配されています。

★『たいへんな生きもの』は発売済。原書は『The Wasp That Brainwashed the Caterpillar: Evolution's Most Unbelievable Solutions to Life's Biggest Problems』(Penguin Books, 2016)です。読んでいる最中に自然と声が出てしまう本。昆虫や動物、菌類たちの数々の戦略を紹介してくれます。生殖、子育て、住居、生き残り、捕食する方法やされない方法、等々、じつにアレな(繊細な方は要注意)、興味深い話が満載です。登場する生物は以下の通り。アアンテキヌス、チョウチンアンコウ、扁形動物、ヒゲガエル、ガマアンコウ、アリ断頭バエ、グリプタパンテレス属のハチ、アスプキャタピラー、マンボウ、シマテンレック、ピパピパ、カクレウオ、ウオノエ、テッポウエビ、シャカイハタオリ、ヒーローアリ、クマムシ、ミズグモ、ゾンビアリ、ヒメアルマジロ、ハダカデバネズミ、ヌタウナギ、アホロートル、コウイカ、エダハヘラオヤモリ、センザンコウ、タテガミネズミ、アフリカマイマイ、アイアイ、シャコ、ホネクイハナムシ、ハンミョウ、ナゲナワグモ、カギムシ、アンボイナガイ、ヤツメウナギ、サシガメ。本書が学校での生物の授業の教材だったら絶対に退屈しないでしょう。ひとつずつにイラストが付されていますが、スマホなどで画像検索、動画検索しながら読むとよりいっそう感心できると思います。

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by urag | 2017-10-01 17:43 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)