人気ブログランキング |

ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ

<   2013年 03月 ( 14 )   > この月の画像一覧


2013年 03月 10日

注目の新刊と既刊:『世界は考える』土曜社、ほか

a0018105_21321385.jpg

世界は考える
ジョージ・ソロス+ビル・ゲイツ+ジム・オニール+黒田東彦+マイケル・サンデルほか著 野中邦子訳
土曜社 2013年3月 本体1,900円 四六変形判並製192頁 ISBN978-4-9905587-7-2

版元紹介文より:これが世界論調――ソロス、ゲイツ、黒田東彦をつなぐ。国際言論団 PROJECT SYNDICATE、2013年を洞察する強力論集を発表。現代最高の知性たちが、一年の政治・経済のゆくえから社会までを鋭く洞察する。全23名の政策当事者・研究者たちによる圧巻の論考集がここに。

★発売済。「プロジェクトシンジケート叢書」第二弾です。目次詳細等は版元サイトをご参照ください。予価は3000円でしたが、「黒田東彦氏が次期日銀総裁と報じられて以来、注文がぐっと増え」たとのことで、千円以上安くなりました。当初予告されていた安倍晋三首相のエッセイ「アジアの民主的セキュリティ・ダイヤモンド(Asia's Democratic Security Diamond)」は許諾が下りず、収録できなかったそうです。詳しい経緯は土曜社さんの2月26日付のお知らせ「安倍晋三首相エッセイを収録できなくなりました」で説明されています。プロジェクトシンジケートのウェブサイト上に掲載されている安倍首相のエッセイのタイトルは、URLではなぜか「日本とインドの戦略的同盟」と記されています。このエッセイで明かされたいわゆる「セキュリティ・ダイヤモンド構想」の内容は、産経新聞zakzakの2013年1月28日付記事「日、豪、印、米で中国包囲網――安倍政権が掲げた「セキュリティー・ダイヤモンド構想」」などで報じられている通りです。

★「不在」のものの方に興味が沸いてしまうのはひとのさがなので仕方ないですが、本書は安倍論文抜きでも充分興味深いです。次期日銀総裁の黒田東彦さんがアジア開発銀行の総裁として、チーフエコノミストの李昌鏞(イ・チャンヨン)氏と共同執筆された「険しい道を行くアジア(Asia's Hard Road)」は本書の第一部「危機後の国際協調」に収録されています(98-103頁)。第二部「協調の地政学」では冒頭に安倍論文が来るはずでしたが、それに続く米国国防長官レオン・E・パネッタ氏の論文「太平洋に軸足を移す米国(America's Pacific Rebalance)」も目を惹きます。プロジェクトシンジケートによる巻頭の序文「日本の読者へ――「蝗の年」」では「アジア安全保障の問題は米国の防衛戦略の「軸足」の転換を説明するパネッタ氏の論文に引き継がれる」と紹介されています。パネッタ論文では、アメリカの国防の重点がアジア太平洋へと移っていることが明かされ、「リバランス(再均衡)の四つの柱」が説明されています。「20世紀の原則の維持」「地域の同盟・友好関係の近代化、強化、新たな関係の構築」「太平洋・インド洋における米軍のプレゼンスを高めること」「戦力投射」の四つがそれですが、詳細は本書をぜひ手にとってご確認いただきたいと思います。

★なお、本書の発売を記念し、プロジェクトシンジケートのデーモン・ドウスさんを迎えて「祝辞も乾杯もない音楽とアルコールだけのウェルカムパーティ」が以下の通り開催されるとのことです。

◎『世界は考える』出版記念レセプション

日時:2013/3/20(水・祝)19:00-23:00
会場:代官山《M》 渋谷区恵比寿西1-33-18-B1F
主催:土曜社
協賛:Project Syndicate
音楽:Yuki Inoueほか
記録:Gno Kim、Son Min Su

※入場無料、クローク完備、全面禁煙。当日は、ふらりとお越しいただくこともできますが、会場設営の都合がありますので、Facebook で参加表明いただくが、下記フォームで事前登録いただけると大変たすかります(リンク先をご参照ください)。

★「プロジェクトシンジケート叢書」の第三弾は4月下旬刊、ブレマー、ナイほか『新アジア地政学』とのことです。また、近刊予定として、グンナー・ランドグレン『園土の惑星』が予告されています。


薔薇十字社とその軌跡
内藤三津子(ないとう・みつこ:1937-)著
論創社 2013年3月 本体1,600円 四六判並製184頁 ISBN978-4-8460-1224-3

帯文より:1962年に新書館で「フォア・レディース」シリーズの企画を担当、天声出版からリトルマガジン『血と薔薇』を創刊。1969年に薔薇十字社、出帆社へとその歩みは続く。三島由紀夫・寺山修司・澁澤龍彦らと伴走した日々。伝説の女性編集者の軌跡を辿る。

★発売済。シリーズ「出版人に聞く」第10巻。奥付に記載されている著者紹介文は以下の通り。「内藤三津子(ないとう・みつこ)1937年、中国上海市東洋街生まれ。1960年、青山学院大学文学部英米文学科卒業。玄光社・コマーシャルフォト編集部、中山書店生物学大系編集部を経て、1962年、新書館入社。「フォア・レディース」の担当など編集長として四年間在籍。その後「話の特集」を一年間手伝い、1968年、天声出版にて雑誌『血と薔薇』を企画、その三号までの編集に携わる。1969年、薔薇十字社設立。1973年倒産。その後出帆社を経て、1982年~2002年、編集プロダクションNアトリエ主宰」。

★巻末には「薔薇十字社全刊行書一覧」が掲載されています。これは同社の元スタッフで現在は「古書りぶる・りべろ」を営む川口秀彦さんが2008年に制作されたもの。全36冊の書誌情報に加え、「澁澤龍彦と薔薇十字社」と題した小文が掲載されています。ちなみに「古書りぶる・りべろ」は吉祥寺と神保町に店舗を構えておられます。インタビュワーの小田光雄さんのブログ「出版・読書メモランダム」3月1日記事「出版状況クロニクル58(2013年2月1日~2月28日)」によれば、『薔薇十字社とその軌跡』の発売を記念してトークイベントが予定されているとのことですが現時点では詳細不明。「出版人に聞く」の次回配本は、古田一晴さんへのインタビュー『名古屋とちくさ正文館』だそうです。


内臓とこころ
三木成夫(みき・しげお:1925-1987)著
河出文庫 2013年3月 本体780円 文庫判並製216頁 ISBN978-4-309-41205-4

カバー裏紹介文より:「こころ」とは、内蔵された宇宙のリズムである――おねしょ、おっぱい、空腹感といった子どもの発育過程をなぞりながら、人間の中に「こころ」がかたちづくられるまでを解き明かす解剖学者のデビュー作にして伝説的名著。四億年かけて深化してきた生命の記憶は、毎日の生活の中で秘めやかに再生されている! 育児・教育・保育・医療の意味を根源から問いなおす。解説=養老孟司

★発売済。三木さんの著作の初めての文庫化です。目の付けどころがさすがだなあと感心していると、担当編集者はYさんでした。「図書新聞」や「インターコミュニケーション」を経て現職に至る、とてもセンスの良い本作りをされてきた方です。本書はさくら・さくらんぼ保育園での連続講演録で、語り口は平易かつ軽妙で、随所に笑いが散りばめられた名講義でした。三木さんの著書のほとんどは死後にまとめられたものですが、今回文庫化されたのは生前の、さらに言えばデビュー作です。幸いなことに既刊書はすべてまだ入手可能です。余裕のある方は全冊まとめて大人買いされると良いと思います。

◎三木成夫 (みき・しげお:1925-1987)単独著一覧
1963年04月『オオサンショウウオに於ける脾臓と胃の血管とくに二次静脈との発生学的関係について』東京大学博士論文
1982年08月『内臓のはたらきと子どものこころ』築地書館;1995年12月増補新装版;2013年03月改題『内臓とこころ』河出文庫
1983年05月『胎児の世界――人類の生命記憶』中公新書
1989年11月『生命形態の自然誌 第一巻 解剖学論集』うぶすな書院
1992年08月『海・呼吸・古代形象――生命記憶と回想』うぶすな書院
1992年11月『生命形態学序説――根原形象とメタモルフォーゼ』うぶすな書院
1996年08月『人間生命の誕生』築地書館
1997年07月『ヒトのからだ――生物史的考察』うぶすな書院

a0018105_21324948.jpg

国民アイデンティティの創造――十八~十九世紀のヨーロッパ
アンヌ=マリ・ティエス(Anne-Marie Thiesse)著 斎藤かぐみ訳 工藤庸子解説
勁草書房 2013年2月 本体4,200円 四六判上製384頁 ISBN978-4-326-24841-4

帯文より:「国民〔ネーション〕」はどのようにして創られてきたのか。ケルト人、グリム兄弟、キルト、アーツ・アンド・クラフト、ワンダーフォーゲル……。18~20世紀のヨーロッパを自在に横断しながら、その歴史的な形成過程を追う。

カバーソデ紹介文より:あたかも自明のように語られる「国民アイデンティティ」。それは近代ヨーロッパで創り出されたものにすぎない。叙事詩が発見され、国語が定められ、歴史が編まれる。特色ある風景、観光名所、民族衣装が誕生する。その過程は各国で同じ時期に、同じパターンで進行した──。今なおアクチュアルな問題を歴史的な視点から捉えなおすための必読書。

原書:La créations des identités nationales, Seuil, 1999/2001.

★発売済。目次詳細は版元サイトをご参照ください。本邦初訳となる著者Anne-Marie Thiesseさんは、国立学術研究センター(CNRS)研究部長、社会科学高等学院(EHESS)研究部長(美術社会学センター所属)を務めており、大衆文学、国民とアイデンティティ、文学における合理主義を研究なさっているとのことです。巻頭に置かれた工藤庸子さんによる「はじめに」によれば、「アンヌ=マリ・ティエスの著作が優れていると思われる点を三つだけ挙げるとすれば、一、フランス語文献がヨーロッパを語るときにありがちな「フランス中心主義」は抑制されており、英独はもとより、北欧・東欧・バルカン地域・ロシア・スラヴ圏などがドラマの主役として脚光を浴びていること、二、文学・原語・歴史などのハイカルチャーと「フォークロア」と呼ばれる土着の文化、スポーツ競技などの大衆文化までが総合的に検討されていること、三、文化的な活動と全体主義との協力関係など、負の側面も洗い出していることだろう」(vi頁)とのことです。

★工藤さんは本書についてこうも紹介されています。「近代ヨーロッパにおいて「国民アイデンティティ」の起源と見なされる神話や伝承が発見され、国民の歴史が編纂され、国民の言語が形成され、モニュメントが修復され、新しい潮流の文学や音楽や絵画、さらには民族衣装や観光名所などが誕生する経緯を、様々のエピソードをまじえて軽快に物語る書物」(ii頁)だと。本書の末尾に置かれた「ヨーロッパ人としてのアイデンティティ」という文章の中で、ティエスさんは「国民アイデンティティが過去に世紀にわたって果たしてきた社会的、政治的な役割は、今後も続いていくのかどうか」(292頁)を問い、ナショナリズムの高揚とグローバル化の進行との挟み撃ちの中で「国民」にとって代わる新たな集合的アイデンティティが生まれうるかどうかに想いを馳せています。この問いはヨーロッパにとってだけでなく、おそらくアジアに生きる私たち日本人にとっても有効かと思います。本書を読む時、私たちはおのずと日本とアジアの歴史にも向き合わざるをえなくなるようです。


歴史について、およびその他のエッセイ
マイケル・オークショット(Michael Oakeshott, 1901-1990)著 添谷育志+中金聡訳
風行社 2013年1月 本体3,500円 A5判上製276頁 ISBN978-4-86258-069-6

帯文より:保守主義の代表的論客オークショットが語る「歴史とは何か」。

原書:On History and Other Essays, Indianapolis: Liberty Fund, 1999.

目次:
まえがき(ティモシー・フラー)
第一部 歴史についての3篇のエッセイ
 現在、未来、および過去
 歴史的出来事──偶発的なもの、因果的なもの、相似的なもの、相関的なもの、類比的なもの、および偶然的なもの
 歴史的変化──同一性と継続性
第二部 法の支配
第三部 バベルの塔
付録 代議制デモクラシーにおける大衆
訳者解説
索引

★発売済。「政治理論における名著の発掘を目的とする翻訳書のシリーズ」である「ソキエタス叢書」の第一弾です。第一期は全六巻が予定されており、B・バリー『政治的議論』山岡龍一訳、A・マルガリート『品位ある社会』添谷育志+金田耕一訳、が予告されています。

★本書の第一部は主に歴史叙述をめぐる考察です。歴史的事実なるものは存在しないという立場をとるというオークショットの立場は、かの『メタヒストリー』の著者ヘイドン・ホワイトの論点との興味深い交差を思い起こさせますが、訳者解説ではまさしくホワイトとの比較が論及されています。第二部と第三部はオークショットの「保守主義」に特徴的な、近代における合理主義的理性への批判の一端を示すもので、モダニズムの栄光に浴してきた人類一般へのきっぱりとした皮肉を読みとれるように思います。オークショットの保守主義というのはいわゆる守旧派というより、ラディカルな懐疑派というべきもので、その哲学は今なお色あせていません。ちなみに「バベルの塔」は『政治における合理主義』に収められた同名のテクストとは異なる内容で、異稿でもなく、まったくの別稿です。本書への野田裕久教授によるコメント「オークショットの作法──「主義」を絶ちつつ「主義」に進む」は、版元サイトで読むことができます。

◎マイケル・オークショット(Michael Oakeshott, 1901-1990)既訳書
1988年09月05日『政治における合理主義』勁草書房
|訳者=嶋津格+森村進+名和田是彦+玉木秀敏+田島正樹+杉田秀一+石山文彦+桂木隆夫
|Rationalism in Politics and Other Essays, London: Methuen, 1962の全訳。
|序(森村進訳)
|政治における合理主義(島津格訳)
|自由の政治経済学(名和田是彦訳)
|バベルの塔(森村進訳)
|合理的行動(玉木秀敏訳)
|政治教育(田島正樹訳)
|歴史家の営為(杉田秀一訳)
|保守的であるということ(石山文彦訳)
|人類の会話における詩の言葉(田島正樹訳)
|ホッブズの著作における道徳的生(森村進訳)
|大学にふさわしい「政治学」教育について(桂木隆夫訳)
|訳者解説(島津格)

1988年09月10日『保守的であること――政治的合理主義批判』昭和堂
|訳者=澁谷浩+奥村大作+添谷育志+的射場敬一
|Rationalism in Politics and Other Essays, London: Methuen, 1962の抄訳。
|序(澁谷浩訳)
|I 政治における合理主義(澁谷浩訳)
|II バベルの塔(的射場敬一訳)
|III 合理的営為(的射場敬一訳)
|IV 歴史家であるという活動(奥村大作訳)
|V 保守的であることについて(澁谷浩訳)
|VI 人類の会話における詩の声(添谷育志訳)
|VII 大学における「政治学」の研究(奥村大作訳)
|原注
|オークショット政治哲学の動態――『政治における合理主義』解説に代えて
| 1 「政治哲学者」オークショットの形成――『経験とその諸様態』から『政治における合理主義』へ(添谷育志)
| 2 オークショットの二分法的思考――『政治における合理主義』と『人間営為論』(澁谷浩)
|訳者あとがき
|人名索引

1993年06月15日『市民状態とは何か』木鐸社
|訳者=野田裕久
|On Human Conduct, Oxford: Clarendon Press, 1975所収の論文On the Civil Conditionの全訳
|第一部 市民状態について
|第二部 解題に代えて
| 一 人間行為の理論的理解について
| 二 近代ヨーロッパ国家の性格について
|あとがき

2007年12月20日『リヴァイアサン序説』法政大学出版局
|訳者=中金聡
|Hobbes on Civil Association, Indianapolis: Liberty Fund, 2000の全訳。
|序言
|著者注記
|1 リヴァイアサン序説
|2 トマス・ホッブズの著作における道徳的生活
|3 レオ・シュトラウス博士のホッブズ論
|4 『リヴァイアサン』――ひとつの神話
|解説 ホッブズとオークショット
|訳者あとがき
|人名索引

2013年01月25日『歴史について、およびその他のエッセイ』風行社
|訳者=添谷育志+中金聡
|On History and Other Essays, Indianapolis: Liberty Fund, 1999の全訳に、付録として、Albert Hunold編によるFreedom and Serfdom: An Anthology of Western Thought(Dordrecht, Holland: D. Reidel Publishing Company, 1961所収の論文"The Masses in Representative Democracy"の全訳を加えたもの。
|まえがき(ティモシー・フラー)
|第一部 歴史についての3篇のエッセイ
| 現在、未来、および過去
| 歴史的出来事──偶発的なもの、因果的なもの、相似的なもの、相関的なもの、類比的なもの、および偶然的なもの
| 歴史的変化──同一性と継続性
|第二部 法の支配
|第三部 バベルの塔
|付録 代議制デモクラシーにおける大衆
|訳者解説
|索引

a0018105_21332786.jpg

a0018105_21335299.jpg


by urag | 2013-03-10 21:33 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 06日

2刷出来:ポール・ド・マン『盲目と洞察』

ポール・ド・マン『盲目と洞察』2刷が本日出来上がりました。また、「Book News」さんに同書の紹介記事「ド・マン対デリダ テクストを誤読する盲目性と、批評における洞察とは?」(2013年3月1日付)が掲載されています。また、先日東京堂書店で行われた土田知則さんと巽孝之さんのトークセッション「ポール・ド・マン・ルネサンスのために」の模様が、3月9日付「図書新聞」に「言葉、この不可解なもの――ド・マンを正面から読み直す好機が訪れた」と題され掲載されています。

a0018105_17494516.jpg

「Book News」さんの記事では『盲目と洞察』が最新刊となるシリーズ「叢書・エクリチュールの冒険」の造本についてご好評をいただきました。「疑念や驚きをテクストが読者に与えるということに自覚的な「エクリチュールの冒険」の試みを僕は支持する。今後も「単に書かれている」と思われるだけのテクストに対して「余計な意味」と思われそうな危険な挑戦を続けて欲しい」との励ましのお言葉、光栄です。ナガタさんありがとうございます! 同シリーズの次回配本はエルンスト・ユンガー『労働者』になる予定です。刊行時期が決まりましたら当ブログにてお知らせします。

by urag | 2013-03-06 17:51 | 重版情報 | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 04日

3月下旬新刊:花代『ベルリン』

2013年3月下旬発売予定

ベルリン  hanayos saugeile kumpels
花代 写真集
月曜社 2013年3月 本体3,600円 B5判変型(タテ224mm×ヨコ183mm) ソフトカバー雁垂れ装208頁(4C:176頁、1C:32頁) ISBN978-4-901477-68-0

内容:花代がベルリンで出会った仲間たちと一緒に競演し、過ごした膨大な量の日常=風景、生活、友人、アーティストたち。その15年分の写真から花代というひとりのアーティストの生き方が浮かび上がる集大成的な一冊。当時(1996-2010年)の出来事、関係性を読み解くために写真家自身による注釈を付す。日本語/英語/ドイツ語の三か国語表記

デザイン:須山悠里
編集:網野奈央(TORCH)

著者 :花代(はなよ)――東京とベルリンを拠点に活躍するアーティスト。写真家、芸妓、ミュージシャン、モデルなど多彩な顔を持つ。自身の日常を幻想的な色彩で切り取る写真やコラージュ、またこうした要素に音楽や立体表現を加えたインスタレーションを発表する。パレ・ド・トーキョーなどの個展、展覧会多数。写真作品集に『ハナヨメ』(新潮社、1996年)、『ドリーム ムムムム ブック』(リトル・モア、2000年)、『MAGMA』(赤々舎、2008年)など。1989年にパリで遊学中に連れて行かれたベルリンで、偶然にベルリンの壁崩壊に遭遇し、その後東京で出会ったドイツ人青年との間に一子をもうける。その後、1996年、ロンドン在住中に映画監督のクリストフ・シュリンゲンズィーフに呼ばれて再びベルリンを訪れ、以後1999年から2010年までをドイツで暮す。


◎花代「Berlin」展
会期:2013年3月16日(土)~ 4月20日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー京都

会期:2013年4月5日(金)~5月6日(月)
会場:NADiff A/P/A/R/T ウィンドウギャラリー(東京・恵比寿)

by urag | 2013-03-04 17:09 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 02日

注目新刊:畑中三応子『ファッションフード、あります。』紀伊國屋書店、ほか

a0018105_2240184.jpg

ファッションフード、あります。――はやりの食べ物クロニクル1970-2010
畑中三応子(はたなか・みおこ:1958-)著
紀伊國屋書店 2013年3月 本体2,400円 46判並製380頁 ISBN978-4-314-01097-9

帯文より:「食」はだれもが参加できるポップカルチャーになった。戦後、日本人はいかに食を楽しみ、果ては消費するようになったのか? 痛快な文化史。年表付。

版元紹介文より:70年代以降、加速・拡大・自己増殖・拡散した、日本における情報消費としての食の姿をたどる。チーズケーキ、ティラミス、ペペロンチーノ……戦後、腹いっぱい食べられる経済力を手に入れると、日本人は新しい味を求めて、ファッションのように食を、その情報までもを消費しはじめた。第一線の料理編集者として時代を駆けた著者が、激しくはやりすたりを繰り返す食べ物から日本社会の一断面を切り取った痛快な文化史。年表付。

目次:
はじめに
ファッションフード前史
 江戸から戦前まで
 戦後から高度経済成長期まで
第1部 加速するファッションフード――1970年代
 1970――本格的なファッションフード成立元年
 女の子の“フィーリング”に訴えかけたアンノンの表現法
 黒船のごとくファストフード来襲
 次から次へとヒット作誕生
第2部 拡大するファッションフード――1980年代
 「グルメ」に浮かれた激動の10年
 和洋中エスニック林立――多国籍化の時代
第3部 自己増殖するファッションフード――1990年代
 まだまだバブルの90年代
 「失われた10年」に生じた方向転換と変質
 ますます短期化する流行サイクルのなかで
第4部 拡散するファッションフード――2000年代
 不安と危機のゼロ年代
 節約ムードから生まれたささやかなヒット作
あとがき
参考文献
ファッションフード年表

★発売済。紀伊國屋書店の月刊PR誌「スクリプタ」での連載に書き下ろしを加えて刊行。内容も造本もともに楽しい一冊です。1970年代から2000年代に至る40年間を中心に、日本の食文化における流行の変遷を活写しています。ワッフルのように型押ししている書籍本体に、その包装紙のようなカバー。本を開くとメニューのような体裁の三つ折の目次が現れ、本文は「部」ごとに紙や刷り色を変えています。図版はわざと粗めに刷られていてポップ感が増しています。装丁は祖父江慎さんと佐藤亜沙美さんによるもの。今年に入って一番美しいデザインに出会いました。自炊のために断裁などしようものなら絶対にもったいない本。これで2400円は安いです。

a0018105_22403917.jpg

吉本隆明
吉田純写真 吉本多子序文
河出書房新社 2013年2月 本体3,800円 A4変形判上製128頁 ISBN978-4-309-27381-5

帯文より:戦後最大の思想家を40年以上にわたって撮り続けた記念碑的写真集。「ある時、本に掲載された一枚の写真を見た。吉本さんが眼帯をした幼女を抱いて、無骨な手つきで絵本を読んであげている写真だった。その瞬間、ずっと読んできた吉本さんのことばのすべてが繋がり、腑に落ちた気がした。「この人がほんものでないなら、この世界にほんものなんか一つもない」とぼくは思った」(高橋源一郎氏「朝日新聞」)。「吉田さんの撮る父は、私の知らない貌の父だ。“竜骨”の入った人の貌だ」(吉本多子氏)。

版元紹介文より:戦後思想最大の巨人をもっとも長期にもっとも近くで撮り続けた写真家による肖像を没後一年に集成。生涯市井にあったその思考と生活の現場を刻印する記念碑的出版。

★発売済。昨年3月16日に亡くなった吉本さんを1968年から2009年にわたって間近で撮影してきたモノクロ写真が収録されています。1996年から2006年までは記録の「空白の10年」が生じています。96年夏に、吉本さんが伊豆・土肥海岸で溺れ、翌年春に今度は吉田さんが心筋梗塞を患ったためです。巻頭には長女で漫画家の多子(さわこ)さんが書かれた「吉田さんの写真集に寄せて」という一文があり、写真のあいまには吉本さんの著書からの引用が置かれています。巻末には「吉本隆明略年譜」と吉田さんの「あとがき」。すべてマニュエル・ヤンさんによる英語対訳が付いています。装幀はしばしば弊社でもお世話になっている中島浩さんによるもの。シンプルで力強く、存在感に満ちた素晴らしい写真集です。立錐の余地もない会場で多数の若い聴衆を前にした講演での壇上の吉本さん、家族とともに穏やかな表情を見せる吉本さん、海で泳ぐ姿が実に嬉しそうな吉本さん、下町の商店街で買い物をする吉本さん。本と書類に埋め尽くされた書斎の吉本さん、前かがみにひたすら自著にサインをする吉本さん、フーコーとの対談に臨み互いにお辞儀をする吉本さん。一枚一枚が実に活き活きとしていて、圧倒されます。


縄文美術館 
小川忠博写真 小野正文・堤隆監修
平凡社 2013年3月 本体2,500円 B5変型判並製208頁 ISBN978-4-582-83598-4

帯文より:550余点の写真で豊かな縄文文化を旅する。「縄文文化をこれほど鮮明に映しだした写真によるイメージの集まりを、わたくしは見たことがない」(青柳正規・国立西洋美術館館長)。

版元紹介文より:縄文時代の各時期を代表する土器・土偶の優品600点を美しいオールカラー写真で紹介する最新の縄文図鑑。専門家による簡潔な解説と、出土遺跡・収蔵先リスト付き。

目次:
1 縄文人
2 採り、狩り、漁る日々
3 飾り、装う
4 装飾された土器群
5 文様に込められたもの
6 ひとがた
7 祭り・祈りの広場
日本列島に最初にやってきた人びと――縄文の幕があけるまで(堤隆)
縄文時代のくらし――日本列島の森、川、海などの大自然の恵みを最大限活用した人びと(小野正文)
埋もれた歴史を掘る(堤隆)
所蔵先一覧
あとがき

★発売済。史書成立にはるかに先立つ時代の日本の原像に迫るたいへん魅力的な写真集です。巻頭に青柳正規さん(国立西洋美術館館長)による無題の緒言が置かれており、「おそらく、縄文文化を専門とする考古学者も驚かざるをえない縄文像の提示である」と推薦されています。小川さんによる「あとがき」によれば、この貴重な写真資料は30年に及ぶ地道な撮影作業によるものだそうで、感動します。出土品はいずれもユニークかつダイナミックで自然の魔力をそのまま写しとったかのような躍動感に溢れています。遙か昔の自分たちのご先祖がかくも豊かな想像力と造形力を持っていたことに、驚きを禁じえません。1万年以上続いたとされる縄文時代に比べると、現代人の生きる世界などほんのわずかな時間にすぎず、何とも言えない気持ちにさせられます。

a0018105_2241134.jpg

新訳 初期マルクス――ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判−序説
カール・マルクス著 的場昭弘訳著
作品社 2013年2月 本体3,800円 46判上製496頁 ISBN978-4-86182-407-4

帯文より:なぜ“ユダヤ人”マルクスは、『資本論』を書かなければならなかったのか? この世に宗教と金儲け主義がはびこる不思議。そして、私たちの社会にとっての本当の「公共性」、真の意味での「解放」「自由」とは何か? この難問に立ち向かったのが青年マルクスであった。現代社会の根本問題――“レ・ミゼラブル”は救えず、貧富の格差がますます拡大する強欲資本主義の謎――を解く“鍵”と“答え”、それこそが、この《プロレタリアート》発見の1844年に出版された、この二論文にある。貴重な原文を掲載の上、マルクス研究の第一人者が、長年あたため、半生をかけての世界レベルでの研究を反映した新訳、さらにマルクスのユダヤ人性に注目した解説・資料・研究編で“鍵”と“答え”にせまる。

目次:
はじめに――なぜ、マルクスは『資本論』を書かねばならなかったのか?
資料 『独仏年誌』に掲載された「ユダヤ人問題に寄せて」「ヘーゲル法哲学批判-序説」一八四四年オリジナル版
第一編 「ユダヤ人問題に寄せて」「ヘーゲル法哲学批判-序説」のオリジナル版からの訳
第二編 解説編
第三編 資料編
 『独仏年誌』の表紙と裏表紙
 アーノルト・ルーゲ「『独仏年誌』の計画」
 ブルーノ・バウアー「今日のユダヤ人とキリスト教徒が自由になる可能性」
 モーゼス・ヘス「パリからの手紙」
 パスカル・デュプラ「パリのヘーゲル学派アーノルト・ルーゲとカール・マルクスの編集による『独仏年誌』」
 マルクス、ルーゲ、フォイエルバッハ、バクーニン「一八四三年の往復書簡」
 カール・マルクスの父ハインリヒ・マルクスの書簡
 ハインリヒ・マルクス「我が国とプロイセン王国との幸いなる併合の際の一八〇八年三月一七日のナポレオン令に関するいくつかの注意書き」
第四編 研究編
 第一章 マルクスとユダヤ
 第二章 マルクス家とユダヤ教
 第三章 『独仏年誌』と独仏関係――ラインラントをめぐって
 第四章 ルーゲとフランス――ヘーゲル左派と独仏関係
あとがき
重要用語解説
人名索引
マルクス略伝

★発売済。『新訳 共産党宣言』(作品社、2010年)に続く、的場さんによる新訳マルクスの第二弾です。今回も、解説・資料・研究と、新訳の基礎となる三本の柱が充実しています。圧倒的なヴォリュームはまさに的場さんの情熱の賜物で、ここまで文書を揃えていただいたことに読者としてはただただ有り難く押し戴くばかりです。「あとがき」の末尾にはこうあります。「このマルクスの翻訳の仕事はいまや私にとって日々の生活の一部であり、ライフワークそのものとなっている。どこまで続くかは年齢との勝負であるが、目処がつくまでは続けたい」(473頁)。ということは、今後も新訳本が続くということで、いずれ私たちは『経済学批判要綱』や『資本論』をも新訳で手にする日が来るのかもしれません。


カール・シュミット入門講義
仲正昌樹著
作品社 2013年3月 本体2,000円 46判並製496頁 ISBN978-4-86182-426-5

帯文より:21世紀最も重要、かつ《危ない》思想家の主要著作と原文を徹底解読し、《危うく》理解され続けるキーターム「決断主義」「敵/味方」「例外状態」などを、その思想の背景にある彼が生きた時代と独特な世界観を探りながら、丁寧に解説。現代思想の第一人者による、本邦初の“本格的”入門書。

帯文(裏)より:「“暗黒面〔ダークサイド〕”の思想家」「ナチスの御用学者」「独裁の擁護者」……、カール・シュミット。いま時代は、彼を求めているのか?――ビジネスの現場、日常の生活……、すべてにおいて常に“決断”を迫られる私たち。統治/政治の不能、法と民主主義の限界、終わりなき世界内戦時代の到来、そして対テロ戦争のための非常事態体制が常態化する社会で、「決断主義」の思想家を徹底解剖する。

目次:
[前書き]はたして、ダークサイドで、危ない!? カールシュミットは「決められない政治」を何とかしてくれるのか?
[講義]第1回『政治的ロマン主義』1――秩序思考
[講義]第2回『政治的ロマン主義』2――政治の本質とは何か?
[講義]第3回『政治神学』1――主権者、法-秩序と例外状態
[講義]第4回『政治神学』2――誰が法を創り出すのか? あるいは「最後の審判」
[講義]第5回『政治的なものの概念』1――「友 Freund/敵 Feind」、そして他者
[講義]第6回『政治的なものの概念』2――政治を決めるのは、誰か?
[講義]補講『陸と海と――世界史的一考察』――空間革命と『人間存在 menschliche Existenz』
[後書き]「決断」についてきちんと考えろ!
カール・シュミットについて更に学ぶためのブックガイド
 本書では触れていない重要なカール・シュミットの著作
 カール・シュミットを知るために読んでおいたほうがいい研究書
カール・シュミット関連年表

★発売済。2011年10月から2012年8月にかけて行われた連続講義をもとに書籍化されたものです。「前書き」で仲正さんはこう書いています。「「決められない政治」を批判するジャーナリストやコメンテーターたちは、「決断できる政治家」への待望を口にする。〔…〕そうした「指導者」待望論は、「民主主義の限界」論としばしば結び付く。異なった利害関係や価値観を持つ人たちが、「議会」に集まって延々とおしゃべりし続けたところで、本当の意味で誰もが納得のいく「合意」を形成することなど不可能なのだから、“民主主義”という建前に拘らないで、「決断力」のある「指導者」に任せて、「危機」を乗り越えればいい、という議論である。こういう考え方を「決断主義」という。ただし、「決められる指導者」への期待を漠然と語っている“論客”たちは、「決断主義」が、政治哲学・政治思想史的にどういう意味を持っているか、本気で考えたことがあるようには見えない。〔…〕ワイマール期のドイツに、「決断主義」を理論的に根拠付け、その代名詞になった思想家がいた。憲法学者・法哲学者のカール・シュミットである」(1-2頁)。

★シュミットを読み直すことはいまいっそうアクチュアルな作業になりつつあります。そうした状況の中でシュミットの主著を読み解く懇切な入門書が出たことは喜ばしい限りです。それぞれの講義の末尾には質疑応答も採録されていて、非常に興味深いです。まもなくちくま学芸文庫でシュミットの『政治思想論集』(社会思想社、1974年)が再刊されますし、大人の教養としてのカール・シュミット、を書店店頭で起動させるべき時が来ているのかもしれません。本書と、先の新訳マルクスの編集担当者は、Fさんです。仲正さんの精力的な講義及び執筆活動もさることながら、それを本というかたちにしていく編集者の作業もまた、重要なものです。Fさんはそう言えば、現在紀伊國屋書店で開催されている「じんぶん大賞」フェアの小冊子に収録されている仲正さんと與那覇潤さんの対談のコーディネーターもつとめておられますね。

★なお、作品社さんはウェブサイトを本日3月2日正式にリニューアルされました。ブログも開設されています。おめでとうございます!

by urag | 2013-03-02 22:43 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)