2007年 04月 27日
![]() VOL 02 以文社 本体2200円 B5変形判並製カバー装296頁 ISBN978-4-7531-0254-9 現代の貧困問題の議論に一石を投じる第一特集「ベーシック・インカム」、ドゥルーズの大著『シネマ』をめぐる第二特集、さらに緊急特集として、大阪長居公園におけるテント村強制撤去問題を扱う。 ★特集1 ベーシック・インカム――ポスト福祉国家における労働と保障 【座談会】 山森亮、萱野稔人、酒井隆史、渋谷望、白石嘉治、田崎英明「ベーシック・インカムとはなにか」 【インタビュー】 小泉義之「ベーシック・インカムの「向こう側」」(聞き手 白石嘉治、矢部史郎) 堅田香織里「ベーシック・インカムを語ることの喜び」(聞き手 白石嘉治) 【論考】 アンドレア・フマガリ+ステファノ・ルカレリ「認知資本主義下におけるベーシック・インカムと対抗権力」木下ちがや訳 アントニオ・ネグリ「無条件かつ普遍的な所得保証へ――アンドレ・ゴルツ『現在の貧困、可能なるものの豊さ』をめぐって」和泉亮訳 マウリツィオ・ラッツァラート「所得を保証すること――マルチチュードのための政治」中倉智徳訳 アラン・カイエ「しかるべく20世紀と決着をつけるために」谷口清彦訳 廣瀬純「ベーシック・インカムの上下左右――運動なきBIはつまらない」 宇城輝人「労働と個人主義――ロベール・カステルの所説によせて」 入江公康「“能動的”賃金、回帰する政治――賃金闘争史をベーシック・インカムに」 【エッセイ】 矢部史郎「魂の戦争が始まる」 松本麻里「彼女らが知っていること、知っていたこと」 小林勇人「冗談でも、本気ならなおさら、”Don’t Kill Me!”――ニューヨークのワークフェア政策の「現実」」 ★特集2 ドゥルーズ 『シネマ』 【座談会】 鵜飼哲、田崎英明、平沢剛「ドゥルーズ『シネマ』をめぐって」 【『シネマ』/往復書簡】 松本潤一郎「ジャンルと門外――『シネマ2 時間イメージ』をめぐる、宇野邦一への4つの質問」 宇野邦一「離れ離れのインタビューあるいは妄言」 【『シネマ』翻訳者より】 石原陽一郎「世界への信頼 ドゥルーズとカベル」 江澤健一郎「写真という鋳型の時間」 大原理志「アレクセイエフの時間」 岡村民夫「なぜシネマか 『シネマ2 時間イメージ』から」 【インタビュー】 仲里効「歴史を逆撫でにしていく映画の方法」(聞き手 平沢剛、矢部史郎) 【論考】 ジャック・ランシエール「あるイメージから別のイメージへ? ドゥルーズと映画の諸時代」三輪誠一郎訳 ローラ・U・マークス「時間の記号――ドゥルーズ、パース、ドキュメンタリー映像」笹田恭史訳 ジョナサン・ベラー「『シネマ』は20世紀の『資本論』か?」石岡良治訳 古畑百合子「ドゥルーズと映画と「この世界」」 友常勉「「アジア全体に現れている疲労の感覚」――賈樟柯(ジャジャンクー)『三峡好人(サンシャハオレン)/スティル・ライフ』」 【エッセイ】 江川隆男「死体を触発する」 渋谷哲也「ファシズムへの抵抗とイマージュへの信頼」 radio maroon「君は本当に欲しいものを手に入れられる」 五所純子「A級現行犯」 ★インタビュー連載 Global Activism, Global Theory 02 デヴィット・グレーバー「新しいアナーキズムの哲学」(聞き手 高祖岩三郎) ★緊急特集 大阪「長居公園テント村強制排除」から考える 原口剛「都市再編のなかの公共空間――大阪・テント村をめぐる状況」 綱島洋之「「支援者」という言葉を再び骨抜きにするために」 山西麻依「彼らはなぜ踊り、演じたのか」 ★VOL/CRITIC 二木信「Freestyle Wars」 村上潔「「戸籍がない子にもパスポートを!」という運動」 成田圭祐「「Ungdomshuset」をあらゆる場所に」 グレープフルーツ「自己決定と責任」 一色こうき「グライム」 入江宗則「『幽閉者』、貧しさとともに物語ること」 佐藤由美子「ポエトリー・イン・ザ・キッチン」 藤沼亮「戦奏、旋争機械」 中村葉子「ブラック・ダイヤ・パラダイス 『フラガール』の女たち」 *** ベーシック・インカム(基本所得)とは、「生きていく上で必要な金銭をすべての人が無条件で保障されること」。貧困問題の克服を考えるうえで重要なキーワードとして今後大きな注目を浴びていくことでしょう。100頁を超える充実の特集です。 ドゥルーズの『シネマ』は第2巻「時間イメージ」が昨年11月に法政大学出版局より刊行され、1月には早くも3刷に達しました。第1巻「運動イメージ」は本年刊行される予定。 次号(第3号)は2007年冬刊行予定だそうです。 ▲
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| 2007-04-27 20:05
| 本のコンシェルジュ
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2007年 04月 25日
![]() この冊子の存在を業界紙で知って、ぜひ私も読みたいと思い、取り寄せました。専門分野に特化したわが社のような零細出版社の本は、このレポートに登場するような中小書店ではほとんど扱われません。しかし、書店にせよ出版社にせよ、そうした中小零細の存在こそが数の上では多数派であり、この多数派の肉声を聞かなければ業界を理解することにはなりません。大企業が業界総体の売上の大半を創出しているとしても、それを知っているだけではすべてを知ったことにはならないのです。 報告書の調査項目は以下の通りです。 「雑誌(ムック・コミック含む)の入荷状況について」 「新刊書籍の入荷状況について」 「ベストセラーの入荷状況について」 「補充品や客注品に対する出版社・取次の対応について」 「取次の決算月の大量送品について」 「取次の決算月における返品入帳操作について」 「取次からの請求について」 「書籍の支払いサイトについて」 「今後の出版界の発展のため、中小書店の営業の継続のための改善策や意見」 このように、いずれも等閑視することのできない重要な案件ばかりです。業界人でこのレポートを読みたい方は、日本書店商業組合連合会に問い合わせてみてください。一般読者への頒布は行っていないようです。 ▲
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| 2007-04-25 19:57
| 雑談
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2007年 04月 23日
「読売新聞」07年4月22日付の「本・よみうり堂」に、高柳昌行『汎音楽論集』の書評が掲載されています。評者は上智大学教授の林道郎さんです。「剣豪を思わせる修練の記録……創造に裏打ちされた「批評」の手触りがある」と評価していただきました。林先生、ありがとうございました。
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| 2007-04-23 13:34
| 芸術書既刊
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2007年 04月 22日
![]() マサオ・ミヨシ(1928-)×吉本光宏(1961-):著 洛北出版 07年4月 2,940円 46判上製カバー装382頁 ISBN978-4-903127-05-7 ■帯文より:最初の戦争体験、アメリカで英文学者になるまで、ベトナム反戦運動、チョムスキーやサイードとの出会い、「知識人」との訣別、人文科学消滅後の学問……自らの軌跡をたどりながら、批評=抵抗の新たなスタイルを語る。 ●ここ最近読んだものの中ではダントツに面白い、示唆に富んだ一冊です。柄谷行人さんが朝日新聞の書評でも取り上げていらっしゃったことが当然と確信できるほど、素晴らしい本です。 ●一言で言えば日本語版オリジナルの自伝的インタビューですが、ミヨシさんの生きざまと研究姿勢に色々なことを教えられます。楽しいエピソードもあれば、考えさせられる重要な証言もあります。一読者としても堪能しましたが、人文書に関わる業界人はなおさら必読だろうと思います。 ●「遅かれ早かれ、人文・社会科学は崩壊すると思うのです。事実、学問領域としての人文・社会科学はすでに崩壊しているのではないでしょうか」(319頁)と著者は語ります。そして、人文科学崩壊後に到来する超学問領域的な「環境学」への展望について、ごく簡単にですが触れています。その折に参照されているのはガタリのエコゾフィー(『三つのエコロジー』大村書店)や、ラヴロックのガイア仮説(『地球生命圏』工作舎)です。 ●本書と一緒に読んでみると勉強になるのは次の本です。人文科学の真価についてはサイードの『人文学と批評の使命』(岩波書店)、学際性の問題をめぐってはハラウェイの『サイボーグ・ダイアローグズ』(水声社)、グローバリズムに抗するプラネタリアニズム、惑星主義的思考をめぐってはスピヴァクの『ある学問の死』(みすず書房)。 悲しみの収穫--ウクライナ大飢饉 / ロバート・コンクエスト(1917-):著 白石治朗:訳 / 恵雅堂出版 / 5,250円 / A5判638頁 アルメニア人ジェノサイド--民族4000年の歴史と文化 / 中島偉晴(1939-):著 / 明石書店 / 3,150円 / 46判241+15頁 兵士になった女性たち--近世ヨーロッパにおける異性装の伝統 / ルドルフ・M・デッカー(1951-)+ロッテ・C・ファン・ドゥ・ポル(1949-):著 大木昌:訳 / 法政大学出版局 / 2,730円 / 46判242頁 ドイツ中世都市の自由と平和--フランクフルトの歴史から / 小倉欣一:著 / 勁草書房 / 4,935円 / A5判348+61頁 フーコーと法--統治としての法の社会学に向けて / A・ハント(1942-)+G・ウィッカム(1951-):著 久塚純一:監訳 永井順子:訳 / 早稲田大学出版部 / 3,150円 / A5判241頁 オフィシャル・ノレッジ批判--保守復権の時代における民主主義教育 / マイケル・W・アップル:著 野崎与志子+井口博充+小暮修三+池田寛:訳 / 東信堂 / 3,990円 / A5判319頁 言葉と在るものの声 / 前田英樹(1951-):著 / 青土社 / 2,310円 / 46判247頁 能の見える風景 / 多田富雄(1934-):著 / 藤原書店 / 2,310円 / B6判182頁 澁澤龍彦幻想美術館 / 巌谷國士:監修・文 / 平凡社 / 2,700円 / B5判246頁 はじまりの物語--デザインの視線 / 松田行正:著 / 紀伊國屋書店 / 2,940円 / A5判355頁 図書館の誕生--古代オリエントからローマへ / L・カッソン:著 新海邦治:訳 / 刀水書房 / 2,415円 / 46判222頁 渦巻きは神であった--謎の古代文様 / 大谷幸市(1943-):著 / 彩流社 / 2,940円 / A5判296頁 或る明治女学生日記--岡山・山陽女学校生「石原登女子」の記録 / 石原登女子:著 太田健一+竹内涼子:編 / 吉備人出版 / 1,890円 / B6判369頁 カストリの時代 / 林忠彦(1918-1990):著 / ピエ・ブックス / 1,890円 / A5判143頁 長崎昭和レトロ冩真館--ガマンせんば!だれもがそんな時代だった。 / 堺屋修一:写真 永松実:文 / 長崎新聞社 / 2,100円 / B5判159頁 GHQカメラマンが撮った戦後ニッポン--カラーで蘇る敗戦から復興への記録 / ディミトリー・ボリア(1902-1990):写真 杉田米行:編著 / アーカイブス出版 / 4,935円 / A4変形判191頁 聖戦のイコノグラフィ--天皇と兵士・戦死者の図像・表象 / 川村邦光(1950-):著 / 青弓社 / 3,570円 / A5判250頁 日本人と戦争責任--元戦艦武蔵乗組員の「遺書」を読んで考える / 斎藤貴男(1958-)+森達也(1956-):著 / 高文研 / 1,785円 / B6判252頁 普通の国になりましょう / C・ダグラス・ラミス(1936-):著 / 大月書店 / 1,260円 / 46判90頁 シリーズ世界周航記 (2) 世界周航記 / 岩波書店 / 3,675円 / 46判225+4頁 ●ブーガンヴィル「世界周航記」と、ディドロ「ブーガンヴィル航海記補遺」を収録。この手の古典は最初から文庫で出してくださると嬉しいのですけれども。 一六世紀文化革命 (1) / 山本義隆(1941-):著 / みすず書房 / 3,360円 / 46判390+29頁 ●全2巻同時発売。全共闘世代には有名人でも、若い世代にはおそらくほとんどまったく認知されていなかったはずの著者でしたが、『磁力と重力の発見』(全3巻、みすず書房)がずいぶん話題になりましたから、お読みになった方もいらっしゃるでしょうね。今回の新刊も広く話題になりそうな予感がします。 バルト--距離への情熱 / 渡辺諒(1952-):著 / 白水社 / 2,520円 / 46判205頁 ●シリーズ「哲学の現代を読む」の最新刊。 お母さん社長が行く! 橋本真由美(1949-):著 / 日経BP社 / 1,365円 / B6判251頁 ●著者はブックオフ代表取締役社長。パートから登りつめた叩上げの人。「フリーターもニートも主婦も、みんな立派な戦力です!」という帯文が気になります。戦いからいかに降りるか、異他なる価値創造はいかに可能か、ということに関心がある人はどうすればいいでしょうか。 日本中世内乱史人名事典 (上) / 佐藤和彦+樋口州男+錦昭江+松井吉昭+桜井彦+鈴木彰:編 / 新人物往来社 / 12,600円 / A5判380頁 ●上下巻。保元・平治の乱から応仁・文明の乱までの803人を扱っています。 *** ◎注目の文庫、新書、選書 西郷隆盛「南洲翁遺訓」 / 猪飼隆明:訳 / 角川文庫ソフィア / 620円 文学論 (下) / 夏目漱石:著 / 岩波文庫 / 945円 倫理学 (4) 和辻哲郎:著 / 岩波文庫 / 987円 国語学原論 (下) / 時枝誠記:著 / 岩波文庫 / 735円 道化の民俗学 / 山口昌男:著 / 岩波現代文庫 / 1,365円 / 384+16頁 越境の時--一九六〇年代と在日 / 鈴木道彦(1929-):著 / 集英社新書 / 735円 / 253頁 乾隆帝--その政治の図像学 / 中野美代子:著 / 文春新書 / 840円 / 260頁 知の遠近法 / ヘルマン・ゴチェフスキ(1963-):編 / 講談社選書メチエ / 1,575円 / B6判228頁 美術館の政治学 / 暮沢剛巳:著 / 青弓社ライブラリー / 1,680円 / B6判237頁 ▲
by urag
| 2007-04-22 18:21
| 本のコンシェルジュ
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2007年 04月 21日
2007年 04月 19日
熊木裕高写真集『吠えない犬』(限定350部)の販売店情報の最新版です。販売店は順次増える予定です。各店の在庫は常に変動していますので、お買い求めの際は、電話などで在庫をあらかじめご確認いただくことをお勧めいたします。どうぞよろしくお願いいたします。【07年5月21日更新】 ■東北 仙台市:ジュンク堂書店仙台店 ■東京・神奈川 千代田区・丸善丸の内本店 千代田区:三省堂書店神田本店 中央区・八重洲ブックセンター本店 港区・青山ブックセンター六本木店 港区:青山ブックセンター六本木ヒルズ店 港区:東京ランダムウォーク赤坂店 港区:リブロ青山店 渋谷区・青山ブックセンター本店 渋谷区:青山ブックセンターHMV渋谷店 渋谷区:リブロ渋谷店 渋谷区・ブックファースト渋谷店 目黒区:ブックファースト自由が丘店 新宿区・蒼穹舎 新宿区:ブックファーストルミネ新宿2店 新宿区:ジュンク堂書店新宿店 豊島区:ジュンク堂書店池袋店 調布市:リブロ調布店 武蔵野市:リブロ吉祥寺店 横浜市:有隣堂本店4F ■愛知 名古屋市中区:リブロ名古屋店 ■京阪神 京都市中京区・ランダムウォーク京都寺町店 京都市中京区:ジュンク堂書店京都BAL店 大阪市西区・カロブックショップアンドカフェ 大阪市中央区:ジュンク堂書店天満橋店 大阪市北区:ジュンク堂書店大阪本店 大阪市北区:ジュンク堂書店梅田店 大阪市北区:ブックファースト梅田店 神戸市中央区:ジュンク堂書店三宮駅前店 兵庫・西宮市:ジュンク堂書店西宮店 ■広島 広島県安芸郡・フタバ図書TERA広島府中店 ■九州 鹿児島市:ブックジャングル ■オンライン書店 bk1→24時間以内の発送、国内送料無料(07年5月4日23:00現在) ※アマゾン・ジャパンでは「在庫切れ」と表示されています【「通常4日以内の発送」に改善されました。07年5月4日現在】が、これはアマゾンのヘルプ>注文>在庫状況によれば、「在庫がなく、一時的に注文を受け付けられません。Amazonマーケットプレイスにて予約注文をすることができます。また商品によっては、入荷しだいEメールで発送可能時期をご連絡するサービスを設けています」と定義されています。この定義では一見分かりにくいですが、この場合の在庫切れとは、アマゾンの配送センターに在庫していないという意味であって、当商品は版元品切ではありませんので、くれぐれもご注意ください。 アマゾン・ジャパンは「在庫切れ」の説明文の冒頭にせめて「配送センターに」と付け加えるべきです。当該商品に限った話ではありませんが、いったいいつまでこんなあいまいな説明で満足しているつもりなのでしょうか。理解に苦しみます。 ▲
by urag
| 2007-04-19 13:25
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2007年 04月 18日
![]() 思えば本年になってから、私にとってこれまで親しんできた著者が次々に亡くなりました。1月にラクー=ラバルトが逝去し、2月には池田晶子(1960-2007年2月23日)さんが、そして3月にはボードリヤール(Jean Baudrillard:July 29, 1929, Reims – March 6, 2007, Paris)が逝きました。それらの読書に積極的な接点はほとんどありませんが、それぞれから影響を受けたことは事実です。 歴史の詩学 藤本一勇:訳、本体3200円、46判上製214頁、ISBN978-4-89434-568-3 原著:"Poetique de l'histoire", Paris: Galilee, 2002. 目次:I 起源の舞台[1 ルソーを否認するハイデガー/2 ルソーの存在-技術論/3 ハイデガーはルソーの何を恐れたのか]◆II 先行的演劇[1 ルソーの引き裂かれた核心/2 ルソーの弁証法/3 芝居がかる死] 貧しさ 西山達也:訳、本体3200円、46判上製214頁、ISBN978-4-89434-569-0 原著:"Die Armut / La pauvrete", Strasbourg: Presses universitaires de Strasbourg, 2004. 目次:貧しさ(ハイデガー)/精神たちのコミュニズム(ヘルダーリン)/「貧しさ」を読む(ラクー=ラバルト)/ドイツ精神史におけるマルクス――ヘルダーリンとマルクス(ラクー=ラバルト、聞き手:浅利誠)/訳者解題 「貧しさ」――ある詩的断片の伝承をめぐって 目を惹くのは、本邦初訳となるハイデガーのテクスト「貧しさ」です。1943年から44年の間に書かれた草稿のひとつと目されており、教職停止直前の1945年6月に講演されたもの。この非常に微妙な日付前後のハイデガーの活動を思うとき、なぜこの時期にコミュニズムが語られたのか、熟読熟考が求められるテクストではあります。 「西洋は没落していないし、没落することなどありえない。というのも西洋はまだけっして興隆もしていないからである。この興隆の始まりは、むしろ、その諸民族が貧しさを知ることを学び、それによって貧しく〈存在〉しうるようになることのうちに存している。/貧しく〈ある〉ことにおいて、コミュニズムは回避されるのでも、迂回されるのでもなく、その本質へと乗り越えられてしまっているのである。このようにしてはじめて、我々は、真にコミュニズムを耐え抜くことができる。/道のりははるか遠い。……」(『貧しさ』24頁)。 この程度の短い引用ではハイデガーのテクストの全体像に代えることはとうていできませんが、ラクー=ラバルトの注釈やインタビューと併せ、濃密かつ緊張感のある一冊となっており、現代人が避けて通れない書物であると言えると思います。 ▲
by urag
| 2007-04-18 22:52
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2007年 04月 17日
アートに強い二つの書店に動きあり。まず表参道のナディッフ本店が、入居しているビルの解体に伴い、来月末(07年年5月31日)で閉店とのことです。移転先はすでにめどがついており、取引先には文書で通知がありました。おお、けっこう移動距離があるな、という第一印象ですが、詳しいことはまだ一般には公表していないようなので、これ以上は書けません。新店舗は新名称で年内に開店させるようです。 いっぽう、青山ブックセンター福岡店では4Fに約30坪の洋書・洋雑誌売場が誕生し、九州唯一の洋書アウトレットコーナーが新設されたとのことです。アウトレット洋書というのは「ほんの少しのダメージによって書店の棚に並ばない書籍のこと」で、値段が安くなっており、なかには品切絶版本もあるとのこと。同時に、また、従来の1F~3Fまでの和書フロアでも棚数を増やして商品構成もリニューアルしたそうです。3Fにあった写真集コーナーは1Fに移動です。 先日は六本木店が早くもリニューアルされましたが、新生ABCは次々と「更なる一手」を打ち出して、商品群のカテゴリーを時代の先端にマッチさせるべく再編成しています。ABCの個性をより鮮明に示す姿勢を見せているところが、なかなか戦略的です。他書店よりも意識的にマーチャンダイジングに力を入れているというアピールになっていると思います。他書店では書籍の各ジャンルが静的に捉えられている場合が多いのか、売場構成にダイナミックさを感じないことがあります。ABCはむしろそこに勝負をかけているように見えます。 追記:07年4月19日――ABCと同じ、インターカルチュラルグループの東京ランダムウォーク六本木ストラウプハウス店が今月末の4月30日で閉店するとのことです。現在、洋書バーゲンセール中。 ▲
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| 2007-04-17 18:49
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2007年 04月 16日
取次の太洋社が出資している出版総合ポータル「知恵門」が先週正式オープンしました。運営しているのは株式会社知恵門。会社案内に曰く、「出版社、書店、読者を情報でつなぐ総合情報サービス会社です。商品物流と情報流通の一体化を目指し、出版総合ポータルサイトとして出版業界の活性化、読者の開拓と需要の創出・拡大を図ります」とのこと。ここまで充実した業界系情報サイトは初めてじゃないかと思います。大げさな表現ではなく、これほどの集中と集約は前代未聞ではないでしょうか。同サイトの意気込みを感じますね。これからの展開が大いに楽しみです。
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by urag
| 2007-04-16 19:44
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2007年 04月 15日
![]() ポール・ヴィリリオ(1932-):著 竹内孝宏:訳 平凡社 07年4月 2,100円 46判186頁 ハンス・ケルゼン自伝 (慈学選書) ハンス・ケルゼン(1881-1973):著 長尾龍一:訳 慈学社出版 07年3月 1,890円 B6判174頁 ●一九四七年の「自伝」と、訳者による「ケルゼン伝補遺」。 雷文化論 妹尾堅一郎(1953-):編著 慶応義塾大学出版会 07年4月 2,100円 B6判245+4頁 ■収録論文:「雷文化論への試み」妹尾堅一郎/「日本古典文学の中の雷」佐谷真木人/「中国における雷のイメージの変遷」溝部良恵/「ヤハウェ」羽田功/「イスラムと雷」湯川武/「ゼウスと雷とオリュムポス山」西村太良/「制御された雷」クナウプ・ハンス・ヨアヒム/「フランス文学における雷」小潟昭夫/「電気、あるいは生命の火花」萩原真一/「描かれた雷・撮られた雷」横山千晶/「一方で聖バルバラ、もう一方でチャンゴー」工藤多香子/「地理から読み取る「雷」」高木勇夫/「庄内地域の雷文化と人々」植松芳平+奥山真裕 科学論の実在――パンドラの希望 / ブルーノ・ラトゥール:著 川崎勝+平川秀幸:訳 / 産業図書 / 4,725円 / A5判425頁 メーヌ・ド・ビラン研究――自我の哲学と形而上学 / 佐藤国郎:著 / 悠書館 / 3,990円 / B6判411頁 偽史と奇書の日本史 / 佐伯修(1955-):著 / 現代書館 / 2,415円 / 46判284頁 ●題材は竹内文書、聖徳太子未来記、傀儡子記、精進魚類物語、仙境異聞、南洋探検実記など。 聖なる妄想の歴史――世界一危険な書物の謎を解く / ジョナサン・カーシュ:著 松田和也:訳 / 柏書房 / 2,310円 / 46判304+20頁 ●題材は「ヨハネ黙示録」。 〈図説〉中国の神々――道教神と仙人の大図鑑 / 学研 / 1,575円 / A5判214+6頁 日本大神楽事典 〔改訂増補版〕 / 柳貴家勝蔵:著 / 彩流社 / 3,150円 / A5判182+ 図版16頁 文学環境論集 東浩紀コレクションL / 東浩紀:著 / 講談社 / 2,730円 / B6判862頁 / ISBN978-4-06-283621-0 国家と神とマルクス――「自由主義的保守主義者」かく語りき / 佐藤優(1960-):著 / 太陽企画出版 / 1,680円 / 46判254頁 ほんとうの『ゲド戦記』――英文で読む『アースシー物語』 / 本橋哲也(1955-):著 / 大修館書店 / 1,680円 / A5判215頁 平和の種をはこぶ風になれ / ノーマ・フィールド(1947-)+内海愛子(1941-):著 / 梨の木舎 / 2,310円 / A5判258頁 劇的な精神分析入門 / 北山修(1946-):著 / みすず書房 / 2,940円 / 46判301頁 ブルターニュ紀行――野を越え、浜を越え / ギュスターヴ・フローベール(1821-1880):著 渡辺仁:訳 / 新評論 / 3,360円 / A5判323頁 昭和の大阪――郷愁のあの街この街 / アーカイブス出版編集部:編 青木茂夫:文 / アーカイブス出版 / 4,935円 / A4変形判175頁 *** ◎注目のISBN付雑誌最新号 新現実 vol.4 特集=ジャパニメーションからファシズムへ 上野俊哉+中塚圭骸+大塚英志:編集委員 太田出版 07年4月 1,000円 A5判311頁 *** ◎注目の文庫・ライブラリー・新書 平凡社ライブラリーではドアーズのデビュー40周年にちなんで、オルダス・ハクスリーの『知覚の扉』が久しぶりに重版されています。 神を見た犬 ブッツァーティ(1906-1972):著 関口英子:訳 光文社古典新訳文庫 07年4月 720円 402頁 ISBN4-978-334-75127-2 ●短編集です。ブッツァーティ作品の初の文庫本。「一九八〇年の教訓」を読んでいたら、「デスノート」を思い出しました。 遠野物語 森山大道:写真 光文社文庫 07年4月 540円 221頁 ●親本は1976年、朝日ソノラマの現代カメラ新書。 哲学事典――AからZの定義集 W・V・クワイン(1908-2003):著 吉田夏彦+野崎昭弘:訳 ちくま学芸文庫 07年4月 1,365円 408頁 ISBN978-4-480-09055-3 ●親本は1994年、白揚社刊。 空間・時間・物質 (上・下) ヘルマン・ワイル(1885-1955)著 内山龍雄:訳 ちくま学芸文庫 07年4月 1,575円/1,300円 473頁/289頁 ISBN4-480-09061-4/09062-1 ●親本は1973年、講談社刊。 視覚論 ハル・フォスター編 榑沼範久:訳 平凡社ライブラリー 07年4月 1,470円 245頁 ISBN978-4-582-76608-0 ●親本は同出版社から2000年に刊行。 フロイト=ユンク往復書簡 (下) / マクガイアー+ザウアーレンダー:編 金森誠也:訳 / 講談社学術文庫 / 1,103円 / 330頁 箱舟の航海日誌 / ウォーカー:著 安達まみ:訳 / 光文社古典新訳文庫 / 580円 / 262頁 レオナルド・ダ・ヴィンチと受胎告知 / 岡田温司(1954-)+池上英洋(1967-):著 / 平凡社ライブラリー / 1,050円 / 236頁 国家は僕らをまもらない / 田村理:著 / 朝日新書 / 777円 歴史学の名著30 / 山内昌之:著 / ちくま新書 / 819円 政治学の名著30 / 佐々木毅:著 / ちくま新書 / 735円 靖国史観 / 小島毅:著 / ちくま新書 / 714円 ▲
by urag
| 2007-04-15 00:35
| 本のコンシェルジュ
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