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ウラゲツ☆ブログ

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カテゴリ:雑談( 471 )


2019年 08月 28日

コレクター

とあるライターさんから聞いた話です。

知り合いのライターのカズ君はスピリチュアル系のネタに強く、お宝の熱心なコレクターでした。彼と一緒に飲んでいたある夜、終電を逃し、自宅に寄らせてもらうことになりました。お互い酔っていなければ、私を招くようなことはなかったかもしれませんし、私も遠慮したかもしれないと思います。彼の自宅は神棚や呪物や祭具などが所狭しとひしめきあっていました。コレクションは御朱印や御札や経典だけでなく、入信しないと手に入れることができなさそうな仏具や神具にまで及んでいました。それぞれ宗旨が異なるであろう仏像や御神体、御本尊を祀った色々な祭壇を、隣り合わせにして並べています。あちこちに蝋燭を灯して、奇妙な匂いの御香を焚き、お茶を出してくれたのですが、口にしたくありません。どうやって帰ろうかそわそわしていると、カズ君は一冊のノートを私に差し出しました。開いてみるとそれは様々な宗教や祭祀について書いてある自作のカタログのようでした。ノートの表紙には「数道」と書いてありました。それは彼の名前ではなく、「スウドウ」と読むのだそうです。スウドウというのは彼の異様な収集癖と関係があるらしく、「興味あるならノートを貸すよ」と言われました。借りる気が起きないので話をはぐらかそうと「これって出版用の原稿?」と聞くと、「いや、どうかな。でも××古書店の店主にはコピーをあげたけど」と答えます。「店主も興味があるっていうから」。この夜の出来事は長らく強烈な印象を残しました。御朱印や御札や特殊な文物を集めている人のことを見聞きしたり、神棚と仏壇が一緒にある家に出会ったりすると、彼の部屋のことを思い出して落ち着きません。


by urag | 2019-08-28 11:36 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2019年 08月 27日

ショタレ本

とある書店さんから聞いた話です。

支店が閉店することになり、各店や取次から応援の人員を出してもらって返品作業をしていた時のことです。事務所の片隅に長らく放置されていた小さなダンボールの一つに、すっかり薄汚れた文庫本が十数冊入っているものが見つかりました。買切版元の本でもなく、なんだこれ、と一人が支店長に声を掛けると、ああそれショタレじゃないです、そもそも売り物でもないです、と言います。監視カメラを確認してもよく分からなかったんですけど、店内の一角に古本を置いていくお客さんが時折いたみたいなんです。なに、いったい何の話だよ、と本部社員が文庫本をパラパラめくって、うわっ気持ち悪い、と叫び声を上げました。赤いペンの書き込みがびっしりとあって、支離滅裂な言葉が延々と並んでいたのです。確かにすべてかなり古い文庫本で、お店で扱うようなものでもありませんでした。人だかりができて皆で本部社員の手元を覗き込んでいると、支店長が、あっ、そっちは触らない方が、と鋭く言いました。ダンボールに最後の一冊が残っていました。文庫サイズの手帖のようで、表紙に「D」とレタリングしてあり、他と比べると新しそうでした。それ見ちゃだめなヤツですよ絶対、と真面目な顔をして言います。皆が見たがっているのを察したのか、支店長は畳みかけるように続けました。たぶんその中身、血で書いてます。ページに毛とか皮膚がたくさん挟まってますし、最悪です。すぐに捨てたかったんですけど、お客様の忘れ物だったらどうしようって思って。でももうずっと誰も取りに来ないし、もう閉店だから捨ててもいいですよね、本当に見ない方がいいですよ。支店長はその後、退職しました。送別会の時の笑顔は、今も忘れられません。


by urag | 2019-08-27 10:17 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2019年 08月 26日

パートワーク

とある書店さんから聞いた話です。

自称「霊感の強い」バイトちゃんがうちの店にいます。よく働いてくれるので、バイトリーダーの私も助かっていますが、時折、挙動不審になることがあります。最初は天然かなと思っていました。「見えちゃう人なのかも」と思ったのは、ある日の出来事がきっかけです。その日の昼下がり、私とバイトちゃんはカウンターに入っていました。お客様が自動ドアから出る際に、店員は「ありがとうございました」と挨拶するわけですが、私の隣りにいたバイトちゃんが「イヤッ」と小さく声をあげ、口を押さえました。ゴキブリかと思い、私は周囲の床を見回しました。けれどバイトちゃんはじっと出入口の方を見ています。「どうした」と聞くと「いえ」とうつむいて言葉少なです。気になったので閉店後の帰り道、改めて話を聞くと「お客様がいた」と。パートワークを定期購読していた高齢のお客様で、つい先日ご家族がご来店になり「亡くなったので定期を中止したい」と聞いたばかりの方のことでした。「お客様と入れ替わりで入ってきて、カウンターの前までいらっしゃったので、思わず見えないふりをしました」と言います。幽霊って真昼間に出るものなの、と驚きました。完結まで買えなかったことを悔やんでおられたのでしょうか。お客様のご自宅に行ってお線香をあげるべきかどうか迷いましたが、結局今も伺えず終いです。バイトちゃんにも例のお客様が今なお来店することがあるのか、聞けずにいます。私の淡い恋心もすっかりしぼんだままです。



by urag | 2019-08-26 10:49 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2019年 08月 25日

ドミノ

あるフリーエディターさんから聞いた話です。

当時の勤務先には、「ダメだダメだ、ああッ」とすぐに頭を抱えて落ち込むタイプのスタッフA君がいて、その声を聞くと部員は「また始まったか」と苦笑するのが日常でした。長かった連休明けの初日に、A君はよほど仕事がさばききれないらしく「ダメだダメだ、ああッ」を繰り返していました。しばらくトイレに閉じこもり唸っていましたが、見かねた同僚が「おい、ちょっといったん整理してみようか」と声を掛け、2人で近くの喫茶店へ出て行きました。30分後、同僚君だけ帰ってきて、社内をキョロキョロ見回しています。先輩が「なに、どうした」と聞くと「A君、帰ってきましたか」と言います。A君は喫茶店で同僚君がトイレに立った間に出て行ったらしいのです。その日は会社にとうとう戻らず、机の上に荷物を残したままでした。翌日は無断欠勤。下宿先に様子を見に行こうとした2日目、会社に退職願が速達で届きました。たぶん以前から限界だったのだと思います。ほどなくして、A君の仕事をフォローしていた同僚君と先輩もダウンし、次々に休職。しばらくは結構な修羅場が続きました。こうしたことに感覚が麻痺して慣れていった自分がある意味怖かったです。


by urag | 2019-08-25 10:08 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2019年 08月 24日

閉店後

こんな話を書店さんから聞いたことがあります。

ある日の閉店後、担当フロアで私は上司と二人で残業していました。棚をいじっていると、背を向けていたバックヤードに上司が入った気配がして、物音がします。しばらくして、上司から私のピッチに在庫の問い合わせが入り、近くにいるのになあ、と思いながらバックヤードに向かいました。誰もいません。「あれ、課長、いまどこにいますか」「えっ、地下だけど」。バックヤードには窓がなく、狭くて薄暗く閉塞感があります。私が仕事をしているフロアでは、バックヤードから明らかに物音がするけど誰もいないということが良くあります。古いビルの店なので、ネズミかもしれないし、あるいは配管の音でしょうか。嫌な感じです。

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by urag | 2019-08-24 14:11 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 09日

ツイート(2)2018年1月

★2018年1月12日
CVSに出荷している版元は取次との取引条件を改定する必要に迫られるのではないかと思います。「出版市場の縮小で積み荷の本は激減しているのに、配送先は増え続ける――。出版社と売り場をつなぐ出版取り次ぎが非効率にあえいでいる。コンビニの増加が背景」
※朝日新聞デジタル「出版取り次ぎ「もう限界」 一晩で配送55店、積み荷は激減」2018年1月12日付(公開終了)

出版業界にはどれほど当てはまる話なのかは正直分からないと感じました。「宅配便料金改定で分かった「一斉値上げ」で儲かる時代の到来」 | ダイヤモンド・オンライン

「出版物流の抜本的な解決、リアル書店とネットの融合、新しい書店モデルの創造を展開する。物流コスト増、物流の協業化の課題に取り組みたい。業界全体でも危機意識を共有して」。新文化1月9日付「トーハンの藤井武彦社長、「出版物流の抜本的な解決などを行う」と発表

昨年12月1日に千代田区一ツ橋2-4-4「岩波書店一ツ橋別館」地下2階付8階建を売却。岩波が今後このほかの一ツ橋や神田神保町の不動産を処分するのかしないのかに注目が集まることになりそうです。
※東京商工リサーチ2018年1月12日付「岩波書店、テナントビルを小学館へ売却

★2018年1月15日
「10年で約1000万部減。最大の発行部数を誇る読売新聞1紙がまるまる消えた計算。新聞発行部数のピークは1997年で、2000年以降は前年を上回ったことがなく、2008年あたりから減少率が大きくなっている」|「新聞崩壊」はたった一年でこんなに進んでしまった|現代ビジネス

★2018年1月16日
空犬(空犬太郎)@sorainu1968さんのご投稿のリツイートおよび私の返信
「「TSUTAYA」...や...「リブロ」をはじめ、ワンダーグー...、西村書店...、啓文社...などの地方チェーンがファミマ一体型店舗の展開を進めている」。| コンビニ+驚きのコラボも!「異業種一体型店舗」に挑むファミマ、その成否は?(HARBOR BUSINESS Online) ◆記事には「本屋やCD店はいずれも出版不況により元気がなく、“逆境”を跳ね除けるため売場の一部を減らしてコンビニの集客力を借りるという「捨て身の覚悟」をおこなっているのだ」とも。

書店さんが読書会を始めた例としては、代官山蔦屋書店さんが始めた「代官山人文カフェ」があります。◆本屋さんは本と人だけでなく人と人とのリアルな出会いの場でもあると思います。そのポテンシャルはとても大きいと感じます。

八重洲山【八重洲ブックセンターの社長】@yaesuyamaさんの投稿のリツイートおよび私の返信
『ネット社会はつながっていると思われているが、本当はそうではない。作り手、売り手、運び手の役割が明確で、買い手と分断されている。情報の共有は乏しい。実店舗の小売業はそこをつなげる使命がある』|アマゾンと小売りの未来(複眼): 日本経済新聞 ◆良品計画会長・金井政明さん曰く「日本には「足るを知る」という言葉がある。「これでいい」世界だ。アマゾンと同じ土俵で闘ってもしょうがない。人や自然、社会と調和した商品や企業の理念によってデジタル革命と異なる世界でやっていけるはずだ。日本の小売業、商人には素養がある」とも。

八重洲山【八重洲ブックセンターの社長】@yaesuyamaさんの投稿のリツイートおよび私の返信
『バラバラだったら把握しづらい膨大な本も、棚の分類や互いの位置関係で記憶される。そう、書店とはそれ自体が巨大なブックマップであり、それを人の頭に入れやすくする記憶装置でもあるのだ』|書店こわい 山本貴光:日本経済新聞 ◆大書店を逍遥する醍醐味。「そうして小一時間も過ごすと、半分は当初の問いと関係のない本を買って帰ることになる。問いが増え、また書店が楽しくなる。以下無限ループである。書店こわい」。さいきん増えているオーサービジットも、棚巡りの面白さにほかなりません。

★2018年1月17日
「トーハンがまとめた出店状況(2017年7月時点)によると書店が1軒もない市区町村数の割合は全国平均が22%だった。四国では香川県の空白率がゼロで、愛媛県も15%にとどまり、全国平均を下回った」と。|「書店ない市・町 香川ゼロ」日本経済新聞 ◆出版社目線で言えば、本屋さんがあっても受注のない地域はいくらでもあるのが現実です。試みに「多様体」創刊号の受注状況を見ると、香川県下、愛媛県下とも各1店舗です。県によっては無受注に終わることもあります。専門書や小零細版元の出版物を扱う書店さんの数はきわめて限られています。◆受注店については弊社の場合、お客様へのお問合せにお答えする時と、ごく数店舗でしか扱われない商品以外は、原則的に公開していません。公開を望まない書店さんもおられるためです。理由は様々ですが、出版社が「在庫あるかも」と言っても店頭では「ない」ことがあるため、等々です。◆店頭にない本はそもそも存在しない本と思われがちなところがあります。書物の樹海は二千坪でも置き切れないくらい本当は広いのですけれども・・・。◆書誌情報が書籍現物よりも実在の基準になるという困った傾向があります。結果、書誌情報だけが消されずに残って実は本が刊行されていなかったり、書誌情報さえ残せば書籍現物は廃棄しても仕方ない、となったりするリスクがあるわけです。◆取次の問題であるとは一概に言えないです。書誌情報を登録すると様々な取引先とそれを共有することになるので、削除や変更が一挙的にはできない場合があります。刊行予定についてはやや面倒ですが、個々の出版社の情報を確認するのが一番かと思います。

共感!「最先端ばかりを追い求めるのではなく、古いものを大事にして、それを何度でも甦らせていく、そういう温かくてエコでセンスある文化や生業がある街にしていきたい」|ヴィンテージ・シティー(Vintage City)で歴史書出版社をやること (有志舎 永滝稔) | 版元ドットコム

図書館もいずれ減っていかざるをえなくなるのでしょうか。|地方インフラ、維持より解体 人口減で市町村限界|日本経済新聞

★2018年1月18日
「創業以来一〇〇年間に発行した全書目を刊行順に並べこれに対応して小社の主要記事出版界国内外事情を掲載」B5判上製函入2344頁、本体20,000円、限定300部なんですね。|『岩波書店百年』2018年1月刊

ほさか@worldtower26さんの投稿のリツイート
いいコラム。「本を読むことも一種の〈移民〉体験だ。なぜならそれは異質な他者の生を想像して生きることだから。読むたびに、また別の生が付け加えられ、僕たちの生はますます豊かになる。」|僕たちはみな<移民> 境界線を跳び越えよう 小野正嗣:朝日新聞デジタル(公開終了)

★2018年1月19日
アマゾンの大義名分「顧客至上主義」は林部さんの言う「本気の資本主義」に裏打ちされているわけで、この二項が両立できない地点に限界が生じるかと思われます。|アマゾンが取引先に課している「冷酷な条件」 合理性を追求した徹底したロジカル経営| 東洋経済オンライン

★2018年1月22日
数百人が束になっても汲み尽くせない価値があるということが「イノベーター」の側から積極的に評価されない事態というのは、一出版人として何ともやるせない貧しさを感じた次第ですが、一方でそれは縮小という現実となって表れているわけですね。出版部数や販売部数も同様かもしれません。

★2018年1月23日
生意気を申し上げてたいへん恐縮ですが、書店さんからの返品依頼書というのは版元にとって、書店さんの内情をかいまみることによってお店の印象が決まってくる、とても大切なツールでございますね。ですから、こう(以下略)

有料記事なので途中までしか読めませんが、取次さんは業界紙だけでなく、ご自身でどんどん意見を発信し、公的な議論に供していただきたいなと強く思います。新春の会は動画配信しても良いのでは。|トーハン・近藤副社長、「物流問題にICタグでイノベーションを」|文化通信 ◆というのも、新春の会に出席する(ことができる)書店や版元は限られているからです。出版界の諸問題はもっとオープンに議論されるべきです。ちなみに同社の新年仕事始め式での藤井武彦社長の挨拶(要旨)は以下で読めます。ここでも物流問題への言及があります。|新年仕事始め式 年頭挨拶(要旨)

★2018年1月24日
今後も出版社のグループ化と淘汰が進みそうな予感がします。|【新文化】 - 日本BS放送、理論社と国土社を連結子会社化

ついに、品物を持って出るだけの「AMAZON GO」がシアトルで開店とのこと。|アマゾンの無人コンビニ体験 購入品の把握、実力十分: 日本経済新聞

八重洲山【八重洲ブックセンターの社長】@yaesuyamaさんの投稿のリツイートおよび私の返信
『レジで滞らないため、100人並んでも待ち時間は10~15分ほど。訪れた人たちからは「忙しい人に最適」「クールだ」といった声が上がった』|AIコンビニ「アマゾン・ゴー」開業 レジ待ち短く: 日本経済新聞 ◆「店の天井にはカメラが確認できただけで130台以上は設置されており、誰が何を取ったかを追跡し続けることで実現」と。監視社会と紙一重とはいえ、この利便性が日本にも導入されるだろうことは想像に難くありません。◆「同じAIの活用を進めるウォルマートでは「いかにレジの行列待ちを減らすか」(幹部)に注力しているが、アマゾンの場合は「そもそもレジは必要か」という視点に立っている」。そもそも論の重要性と有用性。|アマゾンの無人AIコンビニ、米で開店へ:日本経済新聞

「出版物流から撤退する企業が急増。日販の委託先では、5年間で7社が撤退。新たな委託先を開拓しようと21社に見積もりを打診、回答は1社のみで予算の4倍の料金」|(真相深層)物流危機が迫る出版改革 雑誌の発売日分散広がる 配送撤退、電子化を後押し:日本経済新聞 ◆いよいよ今年は取引条件改定か。日経記事に曰く「赤字を全く埋められない。残念ながら自分の代で会社を畳むことになるかもしれない」との声。「別の物流会社の幹部は「数年以内に出版物流からの撤退を考えている」と。ネット通販の普及で食料品の取り扱いが増え、本が売上高に占める割合は1割に」。◆同記事では「物流会社も取次も体力の限界が近い。発売日の分散には、出版市場の継続的な縮小という大きな潮流を変える力はない。発行部数減を止める策が求められている」と書いておられるものの、発行部数を増やすことではなく、販売部数を増やすことが重要なのでは。◆同記事の結論「出版物流が疲弊するなか、読者へ確実に出版物を届ける手段である電子書籍にいつシフトするのか。出版社は決断を迫られている」はいささか事態を単純化して見ているように感じます。電子書籍へのシフトがすべての問題の答えとは思えません。◆ともあれ輸送料や取引条件改定のための外堀はすでに埋まっており、あとは現実的に、コンビニに商品を卸している版元から改定を始めるか、それとも一挙的に二大取次が全出版社に対して改定を申し入れるか、時間の問題かもしれません。説明会が開催されるとしたら紛糾するのは必定です。◆出版社は高齢化が進んでいます。料金改定や条件改定により売上が今より減少すれば廃業を視野に入れざるをえない会社も当然出てくるでしょう。同時に、新規で出版社や書店を開業しようとすることが無謀に見えてしまうかもしれません。この危機をチャンスと捉えている企業もあるでしょうけれども。

日本出版取次協会・雑誌進行委員会「2016年12月31日(土)特別発売日についてのお願い」に曰く「先般、2016度の年間発売日が決定し、本年は12月31日(土)を全国一斉発売日とする新たな試みに、出版業界全体で挑戦することとなりました」。◆取協/雑協「2017 年度「年末年始特別発売日」について」に曰く「2017年12月29日を年末特別発売日、18年1月4日を年始特別発売日とし〔…〕定期誌と年末年始特別商品のラインナップを揃えて、「年末年始は雑誌・読書を楽しみましょう」と引き続いてアピール」と。◆同文書によれば「12月31日の特別発売日には雑誌臨時増刊、ムック、コミックス約130点、約800万部、書籍新刊約70万部が全国一斉発売。雑誌売上は前年比117.3%と急上昇、昨年12月29日から1月4日までの雑誌売上は前年同期比 101.5%(取次合計POS店 4,069 店)と前年を上回ることができました」と。◆長期低迷傾向にある雑誌(および書籍)へのカンフル剤投入によって売上が上昇すれば物流の現場にも恩恵があるはず、という考えなのかもしれませんが、当然現場の負担は大きくなりますね。この特別発売に参加していない版元も多いでしょうから、取協の言う「出版業界全体で挑戦」という表現は・・・。

★2018年1月26日
大坪嘉春氏「委託販売(税法上では買戻条件付販売)をしている版元、取次店に認められる勘定科目、返品調整引当金を廃止することが、昨年12月22日に閣議決定された税制改正の大綱で明らかに。これがどういうことを意味するのか、また、どういう影響が出版業界に生じるのか」新文化1月25日号1面掲載

★2018年1月28日
八重洲山【八重洲ブックセンターの社長】@yaesuyamaさんの投稿のリツイート
『鳴子まちづくりは「温泉も読書も人を元気にする力があり、相性がいい」と話す』|<鳴子温泉>読書湯治の魅力を紹介 キャンベルさん2月4日に講演|2018/1/27 - 河北新報

★2018年1月31日
「日販のグループ書店として、連結対象子会社に。商号と屋号については今後変更する予定」【新文化】 -日販、東武ブックスの株式83.3%を取得

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by urag | 2019-02-09 18:29 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2019年 02月 09日

ツイート(1)2017年12月

当ブログの雑談カテゴリではかつて、主に取次に関する投稿に始まり、2015年7月から2017年11月にかけて、「雑談」(全20回)、「備忘録」(全36回)、「メモ」(全29回)と書き続けた後は、業界への言及を投稿してきませんでした。出版界をめぐる状況がいよいよ厳しくなり、発言しにくくなったためです。しかしその後、2017年12月6日にツイッターのアカウント@uragetsuを開設し、少しずつ業界ウォッチと発言を再開し、こんにち(2019年2月現在)まで続けてきました。ツイッターはブログと違って過去の投稿をまとめて読むことが自他ともに難しいため、過去のつぶやきから選んで当ブログで順次保管していくことにしました。断片的で読みにくい部分がありますこと、お許しを乞う次第です。※は補足です。一連のツイートについては◆で投稿の区切りを示します。まずは2017年12月分からの抜粋。

★2017年12月6日
明日発表する新雑誌は、世間の速い流れから離れた、ロングスパンかつスローな実践を意識しつつ、最先端でも最新でもない、過去に置き去りにされようとしているものに耳を傾ける試みとして準備してきたつもりです。旧式の潜水艇にも暗い場所に降りていく使命はあります、たぶん。

★2017年12月7日
おはようございます。本日2017年12月7日、有限会社月曜社は創業満17周年を迎え、営業18年目に突入しました。皆様のご支援に深く御礼申し上げます。出版不況のさなかでの出発でしたが、近年はますます冬が深まりゆく気配を感じます。新雑誌ではそうした業界の気配にも関心を払いたいと思っています。
※新雑誌=「多様体」第1号

★2017年12月8日
拝啓、ツイッター先生。奇跡の出会いの場所に降り立ってから三日目になりました。僕はなんだか、高速道路のすぐ脇に立って猛スピードの往来へ大声を張り上げている気持ちです。僕の地元のブログでは立ち止まることができたけど、ここではすべてが流れ去っていくみたいに見えます。#ツイッター初心者

★2017年12月11日
ありのままを言えば、12月9日午後に「多様体」の新刊案内をFAXで送った書店さんの軒数は321店、丸2日経った現在、受注件数が多い順に言うと、トーハン>大阪屋栗田>日販。受注冊数が多い順も同様。ちなみにトーハン帳合の受注冊数は現時点では日販帳合の倍。最近はこの初動パターンが多いです。◆補足すると、直近の人文書の実績では、案内した書店さんの約3割から受注があり、受注軒数はトーハン>大阪屋栗田>日販、受注冊数では日販>トーハン>大阪屋栗田。軒数に大きな差はありませんが、日販の受注冊数の約半分はネット書店分なので、これを差し引くと日販の受注冊数は他社の6割程度です。◆ひと昔前は、受注軒数も冊数も取次さんの順位通りでした。しかし弊社の場合、日販帳合で受注する書店さんの軒数はどんどん減っていき、トーハンや大阪屋栗田に抜かれるようになったものの、圧倒的なネット書店の発注数で、日販での新刊配本のライン取りが支えられてきた、という状況です。◆はっきり言えば、アマゾンからの受注分を乗せない限り、リアル書店単独分の受注数では日販で配本してもらえる冊数に届かないことがある、という意味です。これでアマと直取引したら、日販での弊社の売上がどうなるかはご想像いただけると思います。 #零細出版社の実情 ◆日販帳合の大型リアル書店数十軒分を合わせた受注冊数よりも、アマゾン一軒(こう数えるのが正しいかどうか分かりませんが)からの受注数が多いことがしばしばあります。少しでも事前人気が高い新刊書の場合、初版部数の半分以上の発注数がアマゾンから入る、という事態が今年は二度ありました。◆直取引でアマゾンの発注数をそのまま受け入れていたら、ほかのリアル書店さんに配本する本が少なくなってしまうリスクがあります。だからこそ、日販さんが間に立って下さる方が状況をコントロールしうる余地があるわけです。これが一般化できる話なのかどうかは分かりません。

★2017年12月13日
せっかく出版社や書店で働いたのに、退職後にその技能を活かせる場所が少ないと感じるざるをえない状況というのは、業界にとって〈自壊〉的な要素だと思っています。

これは公開記事にしていただきたかったですが、二大取次からこうした声が出るのは初めてではないので、出版社としては来年が取引条件改定の年になるのではないかと恐れます。「自然科学書協会懇親会、2大取次専務が物流問題訴える」文化通信2017年12月13日
※曰く「自然科学書協会が12月7日、東京・新宿区の日本出版クラブ会館で開いた年末懇親会で、大手取次2社の役員が、出版物の輸送が危機的な状況を迎えていることを訴えた。/懇親会には同協会会員社をはじめ、…」

★2017年12月15日
この業界では誰しもが何かしらの無力感と戦っているのではないかと想像します。「信じる気持ちを十分に心のなかに持てば、あなたが思い描くことは、最終的には事実になる。だから、不安から解放される自分の姿を思い描こう」と書いたピールの言葉を噛みしめている次第です。◆出典は、ノーマン・V・ピール『新訳 積極的考え方の力』(月沢李歌子訳、ダイヤモンド社、2012年、142頁)です。キリスト教への信仰心を背景にしているので、日本人の場合「神」という言葉にぴんとこない部分もあるかもしれませんが、それでも読む者の背中を押してくれる素晴らしい本です。

本日付けで子会社化。「主婦の友社の培ってきた編集力やノウハウ、取引先や読者との信頼関係を活かしながらCCCグループの各事業や企画力と掛け合わせ、新しいライフスタイル提案を行っていきたい」カルチュア・エンタテインメント株式会社
※ニュースリリース「株式会社主婦の友社子会社化に関するお知らせ」2017年12月15日付

★2017年12月17日
本の仕事に携わる人々とその読者は、たとえどんなに一人ひとりが小さな存在でも、その双肩でそれぞれの天球を支える小さなアトラスなのだと思います。そのアトラスたちの奮戦が当たり前のものではもはやなくなる時代が近づいている予感がします。「立ち上がれ」と本たちが囁きます。◆「立ち上がれ、アトラスたち。川を渡れ、クリストフォロスたち。たとえお前が拷問され、斬首されようとも、お前が大地に植えた杖はいずれ巨木となろう」。◆「そしてお前の天球は満天を飾る星座の一部となる。」

★2017年12月18日
空犬(空犬太郎)@sorainu1968さんのご投稿のリツイート
「誰もが書店を開けるポジティブな未来をつくる。そのために柳下は、従来の流通構造をそのまま残したかたちで、「横」でつながる小規模流通の仕組みを築き上げようとする」。| 「誰でもどこでも本屋になれるようにする」本を愛する男の小さな声

★2017年12月21日
「"ただ不便"な超大型書店はもう無理なのか:「化石のような商売」の活路」(2017年8月に収録)の後、11月に行われた東京組合書店経営研修会での、丸善ジュンク堂書店・工藤恭孝会長のご講演。「「化石店舗対策」テーマに講演」(「全国書店新聞」平成29年12月15日号)。◆私自身は超大型書店を「ただ不便」とはほとんど思っていない利用者なのですが、それについては一出版人の視点も踏まえ、議論を整理する必要があるなと感じています。

拝啓、ツイッター先生。始めた頃は、少し経てば「木綿のハンカチーフ」を歌いたい気持ちになるだろう、と想像していたのですが、二週間が過ぎてそうでもないことが分かりました。ビュンビュン通り過ぎていく車に飛び乗ろうとするのは危険で、まだ慣れませんし、距離感もつかめません。まだ初心者です。

★2017年12月25日
前刀禎明さん曰く「アマゾンの強みは3つ。1つ目は物流を自ら仕切っていること。2つ目は目的視点での製品の開発力。3つ目は「超」が付く生活密着です」。「アマゾンの強さ ブランド戦略なきブランド力」 NIKKEI STYLE

日販さん曰く「新刊本の売上額2016年度は1兆7,221億円、前年比730億円減。業界トップクラスの書店チェーン1企業分の売上額に相当。ここ数年、毎年1チェーンが消えている計算」。『出版物販売額の実態2017』について:日販営業推進室経営相談グループ書店サポートチーム

★2017年12月26日
出版科学研究所『出版月報12』特集「2017年出版動向」によれば今年1~11月の書籍と雑誌をあわせた推定販売金額は1兆2557億3100万円で、前年同期比6・5%減。雑誌とコミックの落ち込みが大きい、と。「出版科研、1~11月の出版市場6・5%減と発表」文化通信

★2017年12月27日
「消費者庁によると、同社はウェブサイトの商品ページで、メーカー小売価格より高かったり根拠のなかったりする金額を「参考価格」として掲載。実際の販売価格との差を大きくすることで、割引率が高いように見せ掛けていた」アマゾンジャパンに措置命令=二重価格表示で違反―消費者庁(時事通信)
※「毎日新聞」2017年12月27日付記事「消費者庁 「参考価格」が不当 アマゾンに再発防止命令

★2017年12月28日
非常に興味深い記事です。「ナイキに学ぶ、Amazon軍門下における「ブランド」の宿命:提携から6カ月を経て」DIGIDAY ◆「ナイキがAmazon上で販売を開始したあとも、「特集・おすすめ」で表示される製品はサードパーティの販売者のもので埋め尽くされている。『多くのブランドのあいだで、Amazonはパートナーとして非協力的なことで悪名高い』」というくだりが特に印象深いです。◆「誰から買うのか、選ぶのは客だ」という立場かと受け止めていますが、メーカーを守る立場ではないというのは危ういと思います。作り手が弱体化するリスクを回避しきれないからです。大胆ですが、繊細とは言えません。つまり逆に言えば「繊細さ」の価値追求こそ、アマゾンと競合しない道になるかと。

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by urag | 2019-02-09 15:07 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2018年 07月 11日

フェア棚「じんぶんや 川越」が紀伊國屋書店川越店に誕生

2004年9月に紀伊國屋書店新宿本店で始まった「じんぶんや」というフェア棚の第1回に私も参加させていただいたことがありましたが、今般、堂書店の川越店人文書棚のリニューアルに伴い「じんぶんや 川越」が誕生したとのことです。その記念すべき第1回が開催中。弊社の本はフェアではおいていませんが、ご紹介します。


期間:2018年7月4日(水)~9月30日(日)
場所:紀伊國屋書店川越店2階人文書コーナー

概要:本フェアでは、T.V.O.D.のお二人に1970年代から2010年代(現代)までのサブカルチャーの変遷を解説していただきます。現在語られる「サブカル」は一体、どういう文脈を持つのか? そして、サブカルチャーの未来とは? T.V.O.D.による、約70冊の選書を通したサブカル戦後史入門講義の開講! 1万字におよぶ解説冊子も配布中。

T.V.O.D.(てぃーゔぃーおーでぃー):コメカ+パンスのテキストユニット。2017年、政治とサブカルチャーをごちゃまぜに語る場を作ろうと結成、ブログ「T.V.O.D.」 を開設する。現在は、北尾修一氏主宰の出版社「百万年書房」サイト内で「ポスト・サブカル焼け跡派」連載中。ほか、タブロイド・ジン「Making-Love Club」にも寄稿。5月にWWW/GALLERY X BY PARCOで開催された「THE M/ALL」では精神科医・香山リカさんと鼎談を行う。

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by urag | 2018-07-11 15:35 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 01日

メモ(29)

「新文化」2017年11月1日付記事「丸善ジュンク堂書店、工藤恭孝社長と岡充孝副社長が辞任」に曰く「10月25日に行われた臨時株主総会および取締役会で承認され、11月1日に発表した。両氏は取締役を退任してそれぞれ会長、副会長に、同社取締役だった嶋崎富士雄氏(文教堂グループホールディングス社長)も退任した。中川清貴取締役が社長に、大越久成取締役が常務に昇任、岡山好和氏、五味英隆氏、杉本昌嗣氏が取締役に新任。監査役だった野村育弘氏も取締役に就いた」と。

「文化通信」2017年11月1日付記事「丸善ジュンク堂書店、工藤社長が退任」では「新社長に就任した中川取締役はDNPの常務執行役員。このほか、大越久成取締役が常務取締役に就任、岡山好和営業本部長、野村育弘監査役、五味英隆氏が取締役に新任した。ジュンク堂書店を1976年に創業して以来、トップとしてジュンク堂を率いてきた工藤氏は経営の第1線から退くことになる」と。

「新文化」記事では続けて「11月1日付で東日本営業部と西日本営業部を新設。池袋本店の中村洋司店長と京都本店の西川仁店長が両部の部長を兼務する。/丸善ジュンク堂書店営業本部のもとで店舗運営を担う(株)淳久堂書店においても同日付で、工藤社長と岡副社長が退任した。中川清貴氏が新社長に就任。また、毛利聡、中村洋司、西川仁、船木照道、杉本昌嗣の5氏が取締役に新任した」とあります。

岡さんのコメントは以下の通り。「2014年度から赤字決算を続けていました。決算期は1月で、株主総会は従来4月に行っていますが、こういうことは早い方がよいと思いました」(「新文化」)。「昨期までの厳しい売上、利益状況から脱し、黒字化への道筋に目処がつきつつあります。が、創業期からの現体制は、全国90店舗を数える会社の規模からみても、もはや限界であるのは明らかです。さらなる会社発展のためには、次世代の体制作りが急務であろうと考えました。また好機でもあろうと思います」(「文化通信」)。

2014年は大阪屋が新会社へ以降した年で、その翌年(2015年)には栗田出版販売が民事再生法適用申請、翌々年(2016年)には太洋社が倒産し、大阪屋と栗田が統合しました。今回の退任劇は、DNP傘下書店である丸善、ジュンク堂、文教堂のみが抱える問題ではなく、どの書店でもここ3年間は正念場だったと言えます。潮目とも言うべき象徴的な変化であり、本年末から来年にかけてさらなる変動が現れるものと想像できます。一言で言えば、合理化による負の嵐です。従業員の支えきれる限界を超えた時、いかなる組織でも瓦解が始まります。

マチナカ書店だけでなくチェーン書店も減少し、書店への大量配本に売上を頼っているタイプの版元や、そうした取引先を抱える取次は、配本先を確保できずに経営が脆弱になるでしょう。そのあおりを食らって、印刷製本会社は減少するでしょうし、製造と流通のインフラがやせ細れば、中小版元はいよいよ不安定な状況に陥る可能性が増します。ひるがえってパターン配本への依存度が高いタイプの書店は、取次や版元の弱体化の影響を受けて方向性を失うでしょう。出版業界での雇用はますます流動的になり、労働環境は今以上にブラック化するものと思われます。うまく逃げ切って勤め上げた世代とそうでない世代の格差はいよいよ深刻になり、業界の現状にそぐわない政治力学的な議論がいたずらに交わされて、言論そのものも空転するでしょう。

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【11月2日追記】コメント欄だけでなくメールでもご感想やご意見を頂戴しています。御礼申し上げます。あえて書かずにいたことを図らずも補足しなければならなくなる機会を得ることは、幸運とも不運とも言えるでしょうか。

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【11月6日追記】個人投資家で作家の山本一郎さんのオフィシャルブログの11月2日付エントリー「新聞や出版などメディア業界の「先の読めなさ」と「購買活動の仕組み」について」を、知人から紹介されました。

山本さんは「丸善ジュンク堂の一報も、また一歩、出版という紙に情報を印刷して売って回収するというモデルが崩壊している、ということ」と指摘され、「新聞業界よりも先に鬼籍に入りそうな出版業界は、版元も取次も本屋もそう遠くない未来に死ぬ運命にあります。これはもう、仕方のないことです。それでも、特殊な分野、価値のある情報を束ねて適切な価格で日本人に対して売っていくというサイクルは、あくまでこの「紙に印刷する本で情報を流通させるというビジネス」において破綻しているのであって、必要となるものはバリューとプレファレンスです。ニッチでもお金を払ってくれる誰にどのくらい愛されるのかが見えてくれば、転換していくビジネスの先も予想がつくようになります」とお書きになっておられます。

山本さんのご意見には大筋のところ異論はありません。ゆえにここからは、山本さんのように「破綻」を見ることができる方についてではなく、認めたくない方々とも一緒に生きていかねばならない出版業界の難しさについてほんの少し書きたいと思います。

何とか会社を生き延びさせなければならないという至上命題を抱えている経営者はともかくとして、出版界の現場では「もうとっくに破綻している」と冷静に状況を分析されている方も多いだろうと想像します。状況を悪くしているのは、そうした現場の諦めや手詰まり感というよりも、適切に絶望することのできない人々による都合の良い、場当たり的な振る舞いではないか、と思わなくもありません。「適切に絶望すること」は「座して死を待つこと」ではありません。出版界が寄る辺なき状況に陥っているのは、共有すべき(再)スタートラインをすでに失っているからです。私企業間の利害の一致をふんわりした希望で包んで飲み込もうとしても、所詮無理があります。知人は私に「なぜもっとはっきりと書かないのか」と尋ねましたが、今はまだ、察していただける方にのみ語りかけるしかありません。

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by urag | 2017-11-01 17:31 | 雑談 | Trackback | Comments(3)
2017年 10月 12日

メモ(28)

「文化通信」2017年10月9日付1面トップ記事は「取次へのバックオーダー終了で直取引開始は少数」という非常に興味深い内容だったのですが、なぜか同通信ウェブサイトのトップページの総合欄では見出しが載っていません。12日付「アマゾンジャパン、Kindle最上位機種発表」は無料で全文を読める記事になっていますが、出版業界にとってより重要なのはKindleよりも直取引問題ではないかと思われ、未掲載の理由がよく分かりません。8月17日付有料記事「版元ドットコム アマゾン「バックオーダー終了」で調査 直取引が41%余に増加」との関係から言っても、今回の10月9日付記事は重要です。

「取次へのバックオーダー終了で直取引開始は少数」は1面と8面に掲載されており、アマゾンジャパンにおける年間売上上位100社に対して文化通信社が行なったアンケートの結果(36社から回答あり)が集計されています。同記事は「出版社の規模が大きくなると直接取引を行う割合が低くなっているようだ」と分析しており、先般の版元ドットコムさんのアンケート結果も含めて、おおよそ予想通りの内容とはなっています。つまり、売上上位100社の本は当然ながら一般のリアル書店でも売れており、アマゾンだけを特別に優遇する理由はないのですが、小零細版元の場合、リアル書店での扱いが少ないですから、相対的にアマゾンの売上比率が高くなり、否応なく直取引に乗り出さざるをえないわけです。

興味深いのは8面にある、直取引しない理由の数々でした。いずれも首肯できる内容で、アマゾンさんは版元からこう見られているんだということをもっと細やかに分析して対応を考えるべきなのではないかと思う理由ばかりです。こうした記事こそ文化通信さんには無料記事で公開していただきたいなあと切実に感じます。そうすればもっと公的に議論する材料が増えます。いま業界に必要なのは、腹蔵なく「リアルな話」を交わすことであり、できることとできないことをしっかりと腑分けして、できることの可能性を伸ばしつつ、できないことをどう乗り越えるか、ということだと思います。

「日本経済新聞」2017年10月6日付有料記事「大廃業時代の足音 中小「後継未定」127万社」に書かれてある状況は、出版界でも変わりません。曰く「中小企業の廃業が増えている。後継者難から会社をたたむケースが多く、廃業する会社のおよそ5割が経常黒字という異様な状況だ。2025年に6割以上の経営者が70歳を超えるが、経済産業省の分析では現状で中小127万社で後継者不在の状態にある。優良技術の伝承へ事業承継を急がないと、日本の産業基盤は劣化する。「大廃業時代」を防ぐ手立てはあるか」と(以下、無料登録で全文読めます)。

私の住む街の地元商店街では今年2店舗の新刊書店が廃業しましたが、いずれも原因は高齢による事業継続の困難さでした。あまり明るみになってはいませんが、高齢化の波は出版社にも押し寄せていて、後継者がおらず遠からず廃業せざるをえないだろう版元もそこかしこに存在しています。継続的に出版活動している約2000社のうち、7割が従業員10名以下の小規模会社だとも聞きます。我が身を振り返っても見て言えるのは、つまり、おおよそ半数以上の版元が10~20年以内に激減する危険があると予想してもけっして大げさではない、ということです。こうした緩慢な死滅を逃れるためには、出版界を挙げて議論し対応していくのが理想ではありますが、この業界はその多様性ゆえに、利害が一致するのはせいぜい債権者集会の出席率くらいで、誰もが納得しうる条件下での団結は非常に困難であるように思えます。文化の一端を担う社会的な役割があるにもかかわらず、営利を目的とした私企業の雑多な集団であるために、情報公開して公的に議論することすら難しいのです。

それでも全体として必要なのは、若い世代が出版社や書店を開業したり事業承継しうる余地を常に作り続けることではなかろうかと感じます。取次さんが書店さんを傘下に収めるのにも限界があり、出版社がリストラを続けるのにも限界があります。出版社が廃業する場合、つらいことの一つに、出版物を引き受けてくれる他社がいない限り、全点全冊を破棄しなければならないというものがあります。例えばすでに2020年に解散することを公表しておられ創文社さんの商品はどうなるのでしょうか。ハイデッガー全集(刊行中)や、神学大全(完結)はどうなるのでしょう。同社の2016年9月付の挨拶文「読者の皆様へ」によれば、「新刊書籍は2017年3月まで刊行し、それ以降、2020年までは書籍の販売のみを継続いたします」とあります。すでに新刊刊行停止から半年経過しているのです。このように廃業まで数年かけることを約束しうるのはむしろ誠実な少数派であり、こうはならずいつの間にか倒れる会社が大半であることは周知の通りです。

先日のゲンロン・カフェ(10月4日)の質疑応答において「やめたい人とやりたい人の事業承継のマッチングができないものか」とお話しし、質問者の方が興味を示して下さったのは幸いでした。こうした困難さに立ち向かうことが大事であると思われてなりません。

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10月16日追記:上記のような「街ナカ書店」や、小零細自営業版元の廃業危機とは別に、チェーン店はチェーン店でスリム化を推進しています。たとえば、「ASCII.jp」2017年10月16日付、O.D.A.氏記名記事「TSUTAYAが最近やたら閉店している件について――背景にあるのは「BtoB型事業」への業態シフト」では、昨今の大量閉店が次のように分析されています。

「閉店する店舗を見てみると、大都市圏に比較的簡単にアクセスできる住宅の駅近くに立地する店が相当多いことがわかります。ここから導かれるのはこれらの閉店は不採算店の整理ということだけではなく、もう経営側としては今の「ご近所のTSUTAYA」形態の未来に希望を持っていないのではないかという推測。〔・・・〕現在CCCが推進している図書館の運営委託、代官山・湘南や枚方のT-SITEや蔦屋書店、二子玉川の蔦屋家電等の業態は、〔・・・〕いずれもが滞在型の施設です。/会社や学校の帰りについでに寄ってもらっては小銭をちゃりんちゃりん稼ぐのではなく、わざわざそのために来てもらう滞在型の施設で1人頭の消費金額・消費時間を最大化する方向。言い換えれば「ケ」のビジネスから「ハレ」のビジネスへのシフトが今まさに実行されている最中であるということでしょう」。

少し補足しますと、この「ハレ」ビジネスが成功しうるかどうかについてはすでに懐疑的な評価や分析が出版界では散見されます。確かに「「ハレ」のビジネスへのシフトが今まさに実行されている最中」ではあるものの、CCCがシフトに乗りだせた背景には、他社にはないグループの経営的基盤があります。ですから、他社がまねをしても成功するというものではなく、蔦屋型の複合化とは別の、多様な次世代型書店像もまた、追求する必要性があると言えそうです。CCCは「蔦屋書店」は全国のあちこちに作り、紀伊國屋書店やMJを向こうに回して、書店業界の覇権を目指しておられるはずですが、人材確保に苦慮されているようにお見受けします。

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10月23日追記:事業承継について。これははっきり書いておかねばなりませんが、主観的に言えば、小零細の出版事業は誰かに継いでもらえる仕事だとはあまり思えないというのが本音です。ですから先日の日経記事はあまり驚くに値しませんし、事業承継の困難さも理解できます。ほとんどの場合「一代限り」にしかならないのが現実ではないでしょうか。しかしそれでもなお、出版事業の持続性について問うことは重要だと思います。

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by urag | 2017-10-12 18:22 | 雑談 | Trackback | Comments(0)