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2018年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊と近刊
◎2018年10月4日発売予定:東琢磨ほか編『忘却の記憶 広島』本体2,400円。
◎2018年10月1日発売予定:AYUO『OUTSIDE SOCIETY』本体2,000円。
◎2018年8月20日発売:エドワード・ブルワー=リットン『来るべき種族』本体2,400円、叢書・エクリチュールの冒険第12回配本。
◎2018年8月16日発売:ステファヌ・マラルメ『詩集』本体2,200円、叢書・エクリチュールの冒険第11回配本。
◎2018年6月27日発売:岡田温司『アガンベンの身振り』本体1,500円、哲学への扉第2回配本。
◎2018年5月22日発売:荒木優太『仮説的偶然文学論』本体2,000円、哲学への扉第1回配本。
 高原到氏書評「偶然のもたらす妙なる僥倖」(「週刊金曜日」2018年7月6日号(1191号)「きんようぶんか」欄)
◎2018年4月24日発売:岡田聡/野内聡編『交域する哲学』本体3,500円
◎2018年4月23日発売:『表象12:展示空間のシアトリカリティ』本体2,000円
◎2018年4月5日発売:ジャン=リュック・ナンシー『ミューズたち』本体2,700円、芸術論叢書第5回配本。
◎2018年3月16日発売:佐藤真理恵『仮象のオリュンポス』本体3,400円、シリーズ・古典転生第17回配本、本巻16。
◎2018年2月16日発売:『多様体 第1号:人民/群衆』本体2,500円
 宮﨑裕助氏書評「現代日本の思想誌の最良の命脈を継承」(「週刊読書人」2018年4月13日号)
◎2018年1月31日発売:ヴィンフリート・メニングハウス『生のなかば』本体2,500円、叢書・エクリチュールの冒険第10配本。
 廣川智貴氏書評「すぐれた教師による「精読」の集中講義――ヘルダーリン詩学全体、そして同時代の思想へと開かれた一書」(「図書新聞」2018年7月21日号)
 守中高明氏書評「古典的文学研究の静かな凄み――巨大な問題系への繊細で厳密な通路」(「週刊読書人」2018年8月10日号)
◎2017年11月29日発売:ジャン・ウリ『コレクティフ』本体3,800円
◎2017年11月1日発売:南嶌宏『最後の場所』本体3,500円

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『何かへの旅』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください。 
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# by urag | 2018-12-31 23:59 | ご挨拶 | Trackback(1) | Comments(21)
2018年 09月 19日

保管:2017年7月~10月季刊情報

◎2017年10月16日発売:甲斐義明編訳『写真の理論』本体2,500円
◎2017年10月6日発売:森山大道『』本体2,500円
◎2017年8月4日発売:ポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』本体3,800円
 酒井隆史氏書評「不変と変化、この30年――レイシズムとナショナリズムの不可分な力関係」(「図書新聞」2017年11月4日号)
 石田昌隆氏書評(「ミュージックマガジン」2017年11月号「RANDOM ACCESS BOOK」欄)
 野田努氏書評(「ele-king」WEB版2017年10月4日付「Book Reviews」欄)
 無記名氏書評(「河北新報」10月1日付読書欄「新刊抄」)
◎2017年7月4発売:ジャコブ・ロゴザンスキー『我と肉』本体4,800円、シリーズ・古典転生第16回配本。
 廣瀬浩司氏書評「あらたな思考の出発点をうちたてる――現象学的身体論の刷新へと波及する潜在性」(「週刊読書人」2017年9月8日号)

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# by urag | 2018-09-19 17:55 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 19日

「週刊読書人」に、岡田温司『アガンベンの身振り』の書評

「週刊読書人」2018年9月14日号に、弊社6月刊、岡田温司『アガンベンの身振り』の書評記事「「エピゴーネンの流儀」とは何か――哲学者の思考に寄り添いながら、ともに思索を紡ぐ」が掲載されました。評者は岡本源太さんです。曰く「本書で注目されるアガンベンの「エピゴーネンの流儀」とは、「他者から出発してのみ生まれ、この依存関係を決して否定しない」ものだという。幼児期のわたしたちがはじめて言葉を習い覚えたとき、身近な人々の語る内容を理解するよりもまえに、その口調、声音、表情、身振り手振りをなぞって、いつしかそれを自分固有のものにした。エピゴーネンの身振りとは、言ってみればパラダイム――かたわらで示すもの――をなぞる身振りだ。身振りはしばしば自己のかたわらで手本を示してくれる他者の身振りをなぞる。そうして身振りは、自己を示すのみならず他者との関係を築き、自己と他者の境界をかぎりなく不分明にしながら特異性と共同性を同時に打ち立てる。アガンベンはそれを「生の形式」として繰り返し語ってきたのだった」と。
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# by urag | 2018-09-19 17:47 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 19日

注目新刊:『現代思想』2018年10月臨時増刊号「総特集=マルクス・ガブリエル」

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★飯田賢穂さん(共訳:ルソー『化学教程』ウェブ連載中)
★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』)
★清水一浩さん(共訳:ガルシア・デュットマン『友と敵』)
★岡本源太さん(著書:『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』)
『現代思想』2018年10月臨時増刊号「総特集=マルクス・ガブリエル――新しい実在論」や『nyx』第5号「小特集=マルクス・ガブリエル」に寄稿されています。それぞれの目次詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。

飯田賢穂さんは『nyx』第5号に、レポート「なぜ、哲学なのか? 発言する哲学、越境する哲学」を寄せておられます。これは明治大学文学部に今春新設された哲学専攻を記念して行われた同名のシンポジウムの様子を写真とともに報告したものです。 

宮﨑裕助さんは『現代思想』10月臨時増刊号で、大河内泰樹さんおよび斎藤幸平三との討議「多元化する世界の狭間で――マルクス・ガブリエルの哲学を検証する」に参加されています。

清水一浩さんは同号に掲載されたマウリツィオ・フェラーリスの論文「新しい実在論――ショート・イントロダクション」の翻訳を担当されています。

岡本源太さんは同号に論考「マルクス・ガブリエルと芸術の問題――絶対者のもとに休らう芸術作品」を寄せておられます。

なお『nyx』第5号ではガブリエルと千葉雅也さんの2018年の対談「「新実在論」「思弁的実在論」の動向をめぐって」と、京都大学での2018年来日講演「なぜ世界は存在しないのか――〈意味の場の存在論〉の〈無世界観〉」が掲載されています。

また『現代思想』の臨時増刊号では、ガブリエルの2016年のインタビュー2本:アーニャ・シュタインバウアー聞き手「『なぜ世界は存在しないのか』入門」、グレアム・ハーマン聞き手「『意味の場』刊行記念インタビュー、2018年の対談1本:野村泰紀×ガブリエル「宇宙×世界」、2017年の論文の翻訳1本:「意味、存在、超限」のほか、主要著作ガイドが掲載されています。第Ⅰ期:2006年『神話における人間――シェリングの『神話の哲学』における存在神論・人間学・自己意識の歴史に関する諸探求』、第Ⅱ期:2009年『古代における懐疑論と観念論』、第Ⅲ期:2011年『超越論的存在論――ドイツ観念論についての試論』、第Ⅳ期:2012~2013年『世界の認識――認識論入門』『なぜ世界は存在しないのか』、第Ⅴ期:2016年『意味と存在――実在論的存在論』『私は脳ではない――21世紀のための精神哲学』。

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# by urag | 2018-09-19 17:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 17日

注目新刊:『nyx 第5号』堀之内出版、ほか

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nyx 第5号』堀之内出版、2018年9月、本体2,000円、A5判並製344頁、ISBN978-4-906708-72-7
未来のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン著、高野優訳、光文社古典新訳文庫、2018年9月、本体1,800円、828頁、ISBN978-4-334-75384-9
方丈記』鴨長明著、蜂飼耳訳、光文社古典新訳文庫、2018年9月、本体640円、152頁、ISBN978-4-334-75386-3

★『nyx 第5号』は、第一特集は「聖なるもの」(主幹:江川純一×佐々木雄大)で、第二特集が「革命」(主幹:斎藤幸平)です。目次詳細は版元ドットコムに掲出されています。さらに3本目の柱は小特集「マルクス・ガブリエル」で、千葉雅也さんとガブリエルさんの対談「「新実在論」「思弁的実在論」の動向をめぐって」と、ガブリエルさんの京都大学講演「なぜ世界は存在しないのか――〈意味の場の存在論〉の〈無世界観〉」が収載されています。また、特集には属していませんが飯田賢穂さんによるレポート「なぜ、哲学なのか? 発言する哲学、越境する哲学」も掲載されています。これは、明治大学文学部に新設された哲学専攻を記念して今春行われたシンポジウムの様子を写真とともに報告したものです。プログラム内容についてはプレスリリースをご覧ください。また、簡単なイベントレポートが大学ウェブサイトに掲出されています。

★第5号はまばゆい金色の表紙がまず目を惹きますが、ここまで全体に金色を使いながらあざとくもしつこくもないというのは稀ではないでしょうか。また内容面でも、今回の二大特集は「聖なるもの」と「革命」で、一見相反する主題のようにも見えますけれども、いずれも規範を超えた力の収斂と放射を伴なう特異点として現われる事象であるという意味では議論の回路が相互に開かれているわけで、この二つが双子として頁を分け合っているのは故なきことではないと言えそうです。一方、ガブリエルをめぐってはまもなく青土社の月刊誌『現代思想』の2018年10月臨時増刊号として「総特集=マルクス・ガブリエル――新しい実在論」が発売になりますので、『nyx 第5号』のほか、ガブリエルの既訳書『神話・狂気・哄笑』(ジジェクとの共著、堀之内出版、2015年)や『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ、2018年)、「資本主義はショウ(見世物)だ」(セドラチェクとの対話、『欲望の資本主義2』所収、東洋経済新報社、2018年)などと併せ、売場が再び盛り上がるのではないかと思われます。

★千葉さんとガブリエルさんの対談は、千葉さんが東浩紀さんと行った対談「モノに魂は宿るか──実在論の最前線」での『なぜ世界は存在しないのか』批判を踏まえてガブリエルに切り込んでおり、哲学者自身の応答を聞く良い機会となっています。千葉さんと東さんの対談は改稿のうえ、「実在論化する相対主義――マルクス・ガブリエルと思弁的実在論をめぐって」として「ゲンロンβ28」に前編が掲載されています。また、千葉さんは来月下旬に河出書房新社より新著『意味がない無意味』を上梓される予定ですし、ガブリエルさんの著書は洋書でも店頭で着実に売れていると聞いていますので(例えば『私は脳ではない(I am Not a Brain: Philosophy of Mind for the 21st Century)』や『意味の場(Fields of Sense: A New Realist Ontology )』など)、『nyx 第5号』はしばらく参照され続けるのではないでしょうか。

★次に創刊12周年だという光文社古典新訳文庫の9月新刊より2点。『未来のイヴ』(1886年)は今までに文庫では渡辺一夫訳(岩波文庫、1938年)や、斎藤磯雄訳(創元ライブラリ、1996年)で読むことができましたが、斎藤訳は『ヴィリエ・ド・リラダン全集』第2巻(東京創元社、1977年)が底本ですから、新訳というのはとても久しぶりのことです。巻末解説をお書きになった海老根龍介さんは本作について「時代に背を向けた、ときに鼻白むような反動的精神が、未来をも見とおすかのような広い射程を備えた鋭い批評精神と結びついているさまもまた、『未来のイヴ』を特徴づける両義性のひとつといえるだろう」と評価しておられます。なお、押井守監督作品『イノセンス』(2004年)の冒頭で『未来のイヴ』第5巻第16章での科白が引用されているのは周知の通りですが、これは渡辺訳(下巻157頁)でも斎藤訳(339頁)でもありません。今回の高橋訳では578頁で読むことができます。曰く「現代の〈神〉や〈希望〉がもはや科学的なものでしかないのであれば、どうして現代の〈愛〉が科学的になってはいけないのだろう〔…〕。いけないことはあるまい」。

★『方丈記』は、現代語訳と原典の間に訳者の書き下ろしエッセイ「移動の可能性と鴨長明」を挟み、さらに原典の後には付録として『新古今和歌集』所収の鴨長明の和歌10首と、『発心集』巻五の一三「貧男、差図を好む事(貧しい男、〔自宅の〕設計図を描くのが好きだった)」の現代語訳と原文を収めています。巻末には、鴨長明が記述した安元の大火や治承の竜巻などの災害地図や「方丈の庵」想像図などをまとめた図版集や、鴨長明年譜、そして訳者による解説とあとがきが付されています。元暦二年(1185年)の大地震の頃、作者は数え年で31歳。「地震こそは、あらゆる恐ろしいものの中でもとりわけ恐ろしいと実感した」(32頁)と書き、その惨状や3か月ほど続いた余震について言及しています。さらに「地震の当初は、人々はみんなこの世の虚しさを口にして、少しは心の濁りも薄くなったかと見えたが、月日が過ぎ、年数が経つと、もうだれもなにもいわなくなる」(32~33頁)とも書き記した晩年の鴨長明は、人間のさがを冷静に見つめていたように思います。800年以上経過しても人間の本質がおおよそ変わらなかったと言うべきか、『方丈記』のメッセージは現代人の心に今なお沁みてくるものです。

★「世界というものは、心の持ち方一つで変わる。もし、心が安らかな状態でないなら、象や馬や七つの宝があっても、なんの意味もないし、立派な宮殿や楼閣があっても、希望はない。いま、私は寂しい住まい、この一間だけの庵にいるけれど、自分ではここを気に入っている。都に出かけることがあって、そんなときは自分が落ちぶれたと恥じるとはいえ、帰宅し、ほっとして落ち着くと、他人が俗塵の中を走り回っていることが気の毒になる」(48頁)。非常に滑らかな現代語訳だと思います。蜂飼さんによる古典の現代語訳は『虫めづる姫君 堤中納言物語』(2015年)に続く2点目です。

★なお光文社古典新訳文庫では、11月に、サルトル最晩年の、ベニ・レヴィとの対談『いま、希望とは(L'espoir maintenant)』が海老坂武さんの訳で刊行される予定とのことです。かつて「朝日ジャーナル」に翻訳が掲載されたものの改訂版でしょうか。何かと問題視されたこともあった対談を、ようやく冷静に読める機会が訪れるのでしょう。

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★続いてまもなく発売となる新刊注目書を列記します。

吉本隆明全集17[1976-1980]』吉本隆明著、晶文社、2018年9月、本体6,700円、A5判変型上製656頁、ISBN978-4-7949-7117-3
脱近代宣言』落合陽一/清水高志/上妻世海著、水声社、本体2,000円、四六判並製304頁、ISBN978−4−8010−0350−7
評伝 小室直樹(上)学問と酒と猫を愛した過激な天才』村上篤直著、ミネルヴァ書房、2018年9月、本体2,400円、4-6判上製762頁、ISBN978-4-623-08384-8
評伝 小室直樹(下)現実はやがて私に追いつくであろう』村上篤直著、ミネルヴァ書房、2018年9月、本体2,400円、4-6判上製744頁、ISBN978-4-623-08385-5
イエズス会の歴史(上)』ウィリアム・V・バンガート著、上智大学中世思想研究所 監修、中公文庫、2018年9月、本体1,500円、576頁、ISBN978-4-12-206643-4
イエズス会の歴史(下)』ウィリアム・V・バンガート著、上智大学中世思想研究所 監修、2018年9月、本体1,500円、576頁、ISBN978-4-12-206644-1

★『吉本隆明全集17[1976-1980]』は第18回配本。『悲劇の解読』(筑摩書房、1979年)と『世界認識の方法』(中央公論社、1980年)を中心に、1980年に発表された詩、評論、講演、エッセイ、アンケート、推薦文、あとがき、等を収録しています。さらに、未発表だったミシェル・フーコー宛の書簡を初収録。『悲劇の解読』は作家論集。歴史の停滞と空虚さの只中で批評の持続を引き受けようとする、五十路を越えた批評家の境地を看取できる見事な名篇です。吉本と作家の生が交差する深度から発せられる、色褪せようのない痛烈な太宰論にはこう綴られています。「気がかりな読者だけは作品や作家の跡から見え隠れに尾行をつづけ、ついに行き倒れて朽ちてしまう姿を見とどけなければならない。かれにはみすみす死地の方へ歩んでゆく作品や作者を、こちら側におしとどめる能力はないが、他人事でない気がかりさえあれば、その死にざまを見とどけることだけはできる。文学の周辺にはそういう悲劇的な関係の仕方も、ときにあるのではないか。わたしは青年のある時期、太宰治の作品にそういう関係に仕方をしたことがあった」(17頁)。人間失格という人ならざるものの地平へと滑り落ち、孤独な暗い水際に座した太宰と、その目の前に佇む亡霊のような吉本の時を超えた対峙には、呪われた葬列へと読者を否応なく引きずり込む禍々しさを感じます。

★フーコーとの対談「世界認識の方法――マルクス主義をどう始末するか」を中心に編まれた『世界認識の方法』に対しては、付属する「月報18」に収められた竹田青嗣さんによる「新しい世代が受け継ぐべきもの」が、興味深い位置づけを与えています。竹田さんは昨今日本でも輸入され話題を呼んでいる、メイヤスー、ガブリエル、ハーマンらの哲学の意義を簡潔に解説しつつ、それに先立つフーコーと吉本の対決を「世界の普遍認識の可能性をめぐる認識論上の根本的対立」と捉え、さらに吉本の「思想家としての最大の業績」が何なのかについて銘記しておられます。詳しくは現物にてご確認下さい。次回配本は12月下旬発売予定、第18巻とのことです。

★『脱近代宣言』は、メディア・アーティストの落合陽一(おちあい・よういち:1989-)さん、哲学者の清水高志(しみず・たかし:1967-)さん、キュレーターの上妻世海(こうづま・せかい:1989-)さんの三氏による鼎談集。お三方にとっても初めての鼎談本となるようです。目次詳細は書名のリンク先でご覧になれます。落合さんは「はじめに」でこう書いています。「近代的な成長社会から成熟社会に臨んだ今、われわれはヒューマニズムの枠組みのなかの成長とは違った解釈を取りうるのではないだろうか。テクノロジーによるアプローチや、芸術的な美意識や価値の勃興に基づいたわれわれの文化的側面の再考は、平成の時代が終わろうとしている今、必要なことに思える」(12頁)。これまでは芸術書売場に置かれることが多かったはずの落合さんの本は本書の登場によって人文書売場まで越境してくることになるのかもしれません。

★脱近代を掲げる落合さんは例えば「人文系は、その〔=変革の〕速度を遅くするために働く、ダンパなので。本当にあれはよくないですね。なんとかしたいとは思っています」(131~132頁)と発言したりもします。ただし、こうした言質から彼を例えば加速主義者の枠組みで捉えるというのは単純すぎる割り切り方かもしれません。部分を切り取るような読み方は特に本書ではあまり有効ではないと思われます。新しい人類学や哲学――新実在論やオブジェクト指向哲学など――の動向へと参照項を開く清水さんと、「デジタルネイチャー」へと向かうアートとテクノロジーの可能性を追求する落合さん、そしてそれらを架橋する新しい批評とキュレーションの展望を与える上妻さんの、それぞれの議論のレイヤーが重なり合うさまを、読者は目撃することになります。論及されるのが仏教思想にせよ福沢諭吉にせよ、容赦なく侵犯していく本なので、各方面から様々なリアクションが生まれるだろうと想像します。

★『評伝 小室直樹』上下巻は書名が表す通り、高名な社会学者、小室直樹(こむろ・なおき:1932-2010)をめぐる大部の評伝です。ミネルヴァ書房さんの創業70周年記念出版だそうで、「橋爪大三郎編著『小室直樹の世界』から5年。もう一つの日本戦後史がここにある!「小室直樹博士著作目録/略年譜」の著者・村上篤直が、関係者の証言を元に、学問と酒と猫をこよなく愛した過激な天才の生涯に迫る」と宣伝しておられます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。オビやカバーソデには弟子である橋爪大三郎、副島隆彦、宮台真司、大澤真幸の各氏の推薦の言葉が並んでいます。著者の村上篤直(むらかみ・あつなお:1972-)さんは現役の弁護士。小室さんの弟子ではなく、生前に面識もなかったものの、人生の苦闘の中で小室さんの著書と出会い、ウェブサイト「小室直樹文献目録」を2000年に開設されています。村上さんは本書のはしがきで、小室さんのことを次のように端的に評しておられます。「内から湧き上がる情熱のままに、西洋近代文明の精華を学び尽くした天才。/練り上げられた方法論と研ぎ澄まされた霊感。/これによって洞察された過去・現在・未来の世界を、惜しげもなくわれわれの眼前に広げて見せてくれた」(iii頁)と。なお来月には本書の刊行を記念し、以下のイベントが行われます。

◎ミネルヴァ書房創業70周年企画『評伝 小室直樹 上・下』刊行記念 村上篤直先生×橋爪大三郎先生 トークショー&サイン会

日時:2018年10月23日(火)19:00~
場所:丸善・丸の内本店 3F日経セミナールーム
定員:100名様、要整理券(電話予約可)
参加方法:丸善・丸の内本店和書売場各階カウンターにて、『評伝 小室直樹』(上下巻いずれかでも可)をご購入でイベント参加ご希望の先着100名様に整理券を配布いたします。発売前はご予約にて承り、書籍ご購入時に整理券をお渡しいたします。ご予約およびお取り置きいただいた方には、3Fインフォメーションカウンターにて書籍と整理券をお渡し致します。
整理券がなくなり次第、配布終了といたします。
注意事項:整理券はお一人様1枚までとさせていただきます。
ご予約およびお問い合わせ:丸善・丸の内本店 和書グループ 03-5288-8881(営業時間 9:00~21:00)

★『イエズス会の歴史』上下巻は、原書房より2004年に刊行された書籍を改訳し、文献を追補して文庫化したもの。原書は1986年の『A History of the Society of Jesus』第2版です。上巻には、はしがき、第1章「創立者とその遺産」、第2章「地平の絶え間なき拡大(1556~1580年)」、第3章「急速な発展と新たな取り組み(1580~1615年)」、第4章「政治・文化の新たな覇権国家からの挑戦(1615~1687年)」と文献表Ⅰを収め、「イグナティウス・デ・ヨロラによるパリでの会の発足から17世紀後半まで、西洋諸国の歩みと深く関わる会の展開」(カバー裏紹介文より)を描いています。下巻では第5章「理性の時代との対峙(1687~1757年)」、第6章「追放、弾圧、復興(1757~1814年)」、第7章「新たな政治的・社会的環境と植民地世界への適応(1814~1914年)」、第8章「20世紀」、そしてクラウス・リーゼンフーバーさんによる追補「最近の発展(1985~2000年)」を収め、文献表Ⅱのほか新たに文献表Ⅲが加わっています。下巻では17世紀後半以降における教会と啓蒙主義の対立や、その後の展開を解説。文庫でイエズス会の通史が読めるようになるのは初めてのことです。

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★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。

維新と敗戦――学びなおし近代日本思想史』先崎彰容著、晶文社、2018年8月、本体2,000円、四六判上製316頁、ISBN978-4-7949-7053-4
比較から世界文学へ』張隆溪(チャン・ロンシー)著、鈴木章能訳、水声社、2018年9月、本体4,000円、A5判上製261頁、ISBN978-4-8010-0360-6
ロシア革命――ペトログラード1917年2月』和田春樹著、2018年9月、本体3,600円、46判上製584頁、ISBN978-4-86182-672-6
男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け!――男の健康と老化は、女とどう違うのか』リチャード・ブリビエスカス著、寺町朋子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2018年9月、本体2,200円、四六判並製272頁、ISBN978-4-7726-9561-9
デカルト』ロランス・ドヴィレール著、津崎良典訳、文庫クセジュ:白水社、2018年9月、本体1,200円、新書判220頁、ISBN978-4-560-51022-3
『確率微分方程式』渡辺信三著、ちくま学芸文庫Math&Science、2018年8月、本体1,200円、316頁、ISBN978-4-480-09882-5

★『維新と敗戦』は、産経新聞の二つの連載「『戦後日本』を診る」(2014年4月~2015年3月)および「『近代日本』を診る」(2015年4月~2016年3月)に加筆訂正した第Ⅰ部が全体の半分以上を占めます。福澤諭吉から高坂正堯まで23人の日本の思想家を取り上げ、彼等の言葉から現代を照射すべく試みておられます。第Ⅱ部は2011年から2018年にかけて各媒体に掲載された思想家論をまとめたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。東日本大震災の被災者の一人として著者はこう書いています。「あらゆる言葉が、「速すぎる」ように思えた。天災による激変に即応し、時宜にかなった説明が、すぐに手に入る状況はどうみても異常であった。新聞・出版をにぎわせる老若男女の知識人の手際のよさに、正直、戸惑ってしまったのである。/思想や文学を論じ生活の糧にする者には、もう少し謙虚さが求められるように思う。謙虚さとは、時代の変化に応じるよりは立ち止まり、言葉を発することに躊躇するというほどの意味である」(10頁)。第Ⅰ部では各思想家に3冊ずつ関連書が掲げられており、日本思想の棚を整理したい書店員さんにとって参考になるのではないかと思われます。なお以下のイベントが今週後半に予定されています。


日時:2018年9月21日(金)19:00開演 18:45開場
会場:紀伊國屋書店新宿本店9階イベントスペース
料金:500円
受付:電話にてご予約を受付(先着50名様)。電話番号:03-3354-0131(紀伊國屋書店新宿本店代表番号/10:00~21:00)
内容:1990年代後半、大学に入学した先崎、大澤の二氏が目の当たりにした教養の崩壊。2018年の今、私たちは何を指針に、現代社会を評価すればよいのか。両氏の答えは「過去のことば」の復活。福澤諭吉から丸山真男まで、日本思想を読む醍醐味を、ぞんぶんに語り合う、本格派トークセッション。

★『比較から世界文学へ』は、英語圏で長らく活躍してきた比較文学研究者の張隆溪(チャン・ロンシー:Zhang Longxi, 1941-)による『From Comparison to World Literature』(SUNY Press, 2015)の全訳。『アレゴレシス――東洋と西洋の文学と文学理論の翻訳可能性』(鈴木章能/鳥飼真人訳、水声社、2016年)に続く、2冊目の訳書です。目次は書名のリンク先をご覧ください。序にはこう書かれています。「中国と西洋の文化的通約不可能性や根源的な差異を主張する意見について検証し、中国と西洋は通約可能であり、あらゆる面で違いがあるとしても、あらゆる困難を乗り越えて異文化を理解する必要があることを本書の目的として論じていく」(13頁)。「世界文学における「世界」という言葉を真摯に考えれば、そのような〔世界文学の首都がパリであると考えるような〕ヨーロッパ中心の視野の限界を超えて、世界には驚くべき豊かさと多様性があると我々が日頃認識しているとおりに世界を考える必要がある。だからこそ、世界文学の研究アプローチがもっている包括性、異なる観点や意見の融合、より広い新たな地平の可能性が重視されなければならない」(19頁)。これは他の人文学においても試みうる挑戦かもしれません。

★『ロシア革命』は帯文に曰く「和田ロシア史学のライフワーク、遂に完成」と。ロシア革命100年であった昨年に、50年前の論文「二月革命」(江口朴郎編『ロシア革命の研究』(中央公論社、1968年所収)を書き直し、新たな資料や研究、新たな構想を加えて執筆され、「二月革命からはじまり、一〇月革命、そして第三のレーニンの革命にいたる、三段階のロシア革命像に行きついた」(493頁)のが本書だそうで、「八〇歳となった私の生涯最後の本の一冊である」(494頁)と述懐されています。主要目次は以下の通り。

序章 世界戦争に抗する革命――ロシア革命・ペトログラード1917年2月
第1章 ロシア帝国と世界戦争
第2章 革命の序幕
第3章 首都ペトログラードの民衆
第4章 首都の民主党派
第5章 首都の革命
第6章 国会臨時委員会とソヴィエト
第7章 二つの革命――さまざまな路線
第8章 軍部と皇帝
第9章 臨時政府の成立と帝政の廃止
第10章 革命勝利の日々
あとがきにかえて 私は二月革命をどのように研究してきたか
ペトログラード市街地地図(1917年)
ロシア革命年表
参考文献一覧
出典一覧
人物解説・索引

★『男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け!』は『How Men Age: What Evolution Reveals about Male Health and Mortality』(Princeton University Press, 2016)の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。リンク先では第1章「男の老化と進化」と巻末解説も試し読みができます。本書によれば「オスの老化には、メスの老化にはない特徴」があり、それは「オスとメスでは生殖や代謝の生物学的基盤が異なり、そこから生じる制約条件も異なるから」だと言います(11頁)。この前提を踏まえ、本書は男性の老化を進化論から説明してくれます。「前立腺がんや筋肉量の低下、体重管理の難しさなど、男性が年を取るにつれて直面するさまざまな健康問題についての有益な観点」(21頁)が提示され、さらには「高年齢男性における〔成長や生殖に関わる〕形質の進化が人類全体の進化にどんな影響を及ぼしてきたか」(22頁)についても解説されます。父親と独身の違いや、贅肉が付いたり、老いて変わっていくことの進化医学的な意味というのは、男性にとってだけでなく女性にとっても興味深い話ではないかと思います。

★『デカルト』は2013年に刊行された『René Descartes』の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ロランス・ドヴィレール(Laurence Devillairs, 1969-)は西洋近世哲学、とりわけデカルトが専門の研究者で、文庫クセジュではこの先、彼の『思想家たちの100の名言』(2015年刊)も来年翻訳出版予定だそうです。また、訳者の津崎良典さんは今年年頭に魅力的な啓発書『デカルトの憂鬱』を扶桑社から上梓されています。ドヴィレールの初訳本となる今回のデカルト論は「神の「無限な」という在り方に焦点をあてることで、デカルト哲学を構成する代表的な論点のすべて(自我論、存在論、認識論、道徳論、生理学と機械論を含む自然学など)をそれに関連づけ、目配りのきいた豊富なデカルトからの引用文とともに統一的な視座から再解釈する試み」(訳者あとがきより)です。「デカルト形而上学の重心が、私は在る、私は存在すると主張することよりも、無限なものの観念を知解することのほうにかかっている」(64頁)とする著者の切り口を、訳者は特異なものとして評価しておられます。本書の論点は著者の2004年に公刊された博士論文『デカルトと神の認識』(未訳)でも展開されているとのことです。

★『確率微分方程式』は、1975年に産業図書から刊行された書籍の文庫化。著者の師である伊藤清が確立した「伊藤積分」をふまえ、「マルチンゲール的手法に重点」(5頁)を置きつつ確率微分方程式を解説したもので、カバー裏紹介文の文言を借りると「自然界や社会における偶然性を伴う現象」の定式化や、「物理学・数理ファイナンスなど幅広い応用をもつ理論の基礎」をめぐる、基本的文献です。著者の弟子にあたる重川一郎さんによる解説が付されています。主要目次は以下の通り。

はじめに
記号その他
第1章 ブラウン運動
第2章 確率積分
第3章 確率積分の応用
第4章 確率微分方程式
付録Ⅰ 連続確率過程に関する基本定理
附録Ⅱ 連続時間マルチンゲールのまとめ
各章に対する補足と注意
文献
解説(重川一郎)
索引

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# by urag | 2018-09-17 23:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 12日

10月上旬刊行予定新刊:東琢磨/川本隆史/仙波希望編『忘却の記憶 広島』

月曜社新刊案内【2018年10月:人文/歴史/社会】
9月28日受注締切◆10月4日取次搬入予定※
※目下、取次が業量の平準化と分散化を強力に推進しているため、通常の発売予定が数週間ほど延期になる状況下に置かれております。正確な取次搬入日は後日あらためてお知らせいたします。

忘却の記憶 広島
東琢磨・川本隆史・仙波希望編
月曜社 2018年10月 本体価格2,400円
46判変型[天地180mm×左右120mm×束24mm]並製432頁 
ISBN:978-4-86503-065-5 C0020 重量:340g

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

広島学を起動する――被害地でも加害地でもある錯綜した場に立つ者は、いかに記憶を語り、あるいは忘却するのか。なぜそれは忘却されなければならなかったのかを問うことを通して、はじめて現在の広島を揺り動かすことができる。幾度も物語られるこの場所をもう一度語り直すために、批評家、研究者、労働者、アーティストなど13人が、街、島、路地……の記憶を織り上げる新たな試み=広島学の出発!

目次
忘却の記憶:編者まえがきあるいは解題的なものとして|東琢磨

◆忘却と記憶の時空
記憶のケアから記憶の共有へ:エノラ・ゲイ展示論争の教訓|川本隆史
「記憶のケア」を織り上げる:〈脱集計化〉を縦糸、〈脱中心化〉を横糸に|川本隆史インタビュー;聞き手=仙波希望/東琢磨
忘却の口:他なる記憶の避難所として|東琢磨

◆歴史と都市
軍都=学都としての広島|小田智敏
〈平和都市〉空間の系譜学|仙波希望
〈そこにいてはならないもの〉たちの声:広島・「復興」を生きる技法の社会史|西井麻里奈
原爆資料館の人形展示を考える|鍋島唯衣

◆ことば・映像
記憶する言葉へ:忘却と暴力の歴史に抗して|柿木伸之
占領の表象としての原爆映画におけるマリア像:熊井啓『地の群れ』を中心に|片岡佑介
結晶たちの「ヒロシマ」:諏訪敦彦の『H Story』と『A Letter from Hiroshima』|井上間従文

恨と飯:パフォーマンスの記録|ガタロ+ハルミ

◆文化実践と「ジモト学」
ジモトへのだらしない越境:哲学カフェとエルカップの試み|上村崇
「ジモト」を旅する/旅に落ち着く|峰崎真弥

ブックガイド
それぞれの〈ヒロシマ〉をとおって 編者むすび|東琢磨
あとがきにかえて|東琢磨
年表
編者・執筆者紹介

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東琢磨(ひがし・たくま:1964-)音楽・文化批評家。広島に関する本に『ヒロシマ独立論』(青土社、2007年)・『ヒロシマ・ノワール』(インパクト出版、2014年) がある。広島県生まれ・在住。

川本隆史(かわもと・たかし:1951-)国際基督教大学教員。主著は『現代倫理学の冒険』(創文社、1995年)、『ロールズ』(講談社、1997年)、『共生から』(岩波書店、2008年)。広島市生まれ。

仙波希望(せんば・のぞむ:1987-)東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程在籍。専攻は都市研究、メディア研究、歴史社会学。第7回日本都市社会学会若手奨励賞(論文の部)受賞。

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# by urag | 2018-09-12 20:02 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 09日

注目新刊:オスカル・パニッツァ『犯罪精神病』平凡社、ほか

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犯罪精神病』オスカル・パニッツァ著、種村季弘/多賀健太郎訳、平凡社、2018年9月、本体3,600円、4-6判上製340頁、ISBN978-4-582-83524-3
『個人空間の誕生――食卓・家屋・劇場・世界』イーフー・トゥアン著、阿部一訳、ちくま学芸文庫、2018年9月、本体1,300円、368頁、ISBN978-4-480-09886-3
『独立自尊――福沢諭吉と明治維新』北岡伸一著、ちくま学芸文庫、2018年9月、本体1,300円、400頁、ISBN978-4-480-09877-1
『日本人の死生観』立川昭二著、ちくま学芸文庫、本体1,200円、320頁、ISBN9781-4-480-09888-7
呪文』星野智幸著、河出文庫、2018年9月、本体640円、256頁、ISBN978-4-309-41632-8
おとうさんとぼく』e.o.プラウエン作、岩波少年文庫、2018年7月、本体760円、B6変型判並製320頁、ISBN978-4-00-114245-7

★『犯罪精神病』はドイツの作家パニッツァ(Oskar Panizza, 1853-1921)の日本語版独自編集となる作品集。種村季弘(たねむら・すえひろ:1933-2004)さんの遺稿を多賀健太郎(たが・けんたろう:1974-)さんが補訳したものです。周知の通り種村さんは個人全訳版『パニッツァ全集』全3巻(筑摩書房、1991年)を手掛けておられました。全集の「落穂拾い」と多賀さんは「訳者あとがき」に書いておられますが、本書だけでも充分に読み応えがありますし、内容的にも重要です。パニッツァはその最晩年を心の病による入院生活で過ごしたのですが、本書に収録されている作品群は、すべて入院前のもので、表題作を含め8篇中5篇は自ら設立した出版社「チューリヒ討論社」および『チューリヒ討論』誌で公刊されたもの。帯文には「梅毒としての文学」とあります。これは種村さんの著書『愚者の機械学』(青土社、1991年)に収められたパニッツァ論の題名でもあります。『犯罪精神病』の目次は以下の通りです。

目次|発表年:
犯罪精神病〔プシコパテイア・クリミナリス〕|1898年
天才と狂気|1891年
幻影主義と人格の救出――ある世界観のスケッチ|1895年
キリスト教の精神病理学的解明|1898年
フッテンの精神による対話(抄)|1897年
 第四対話 無神論者と検事のあいだで交わされる三位一体論
 第五対話 エラとルイのあいだで交わされるあらゆる時代の精神による愛の対話
壁の内側でも外側でも〔イントラ・ムロス・エト・エクストラ〕|1899年
パリからの手紙 七月十四日〔カトルズ・ジュイエ〕|1900年
進歩的無政府主義狂〔マニア・アナルヒスティカ・プログレッシウァ〕|1900年
原註
訳註
解題
訳者あとがき――オスカル・パニッツァと種村季弘

★戯曲『性愛公会議』の内容を咎められて実刑判決を受け、投獄されたその収監中に書いたという対話篇「フッテンの精神による対話」の第一対話から第三対話は、『性愛公会議』とともに『パニッツァ全集』第Ⅲ巻で読むことができます。

★表題作の「犯罪精神病」では「犯罪的な理性の形態であり、一種の思考のインフルエンザ」(65頁)で、「すこぶる感染力が強いもの」(67頁)としての犯罪精神病について論じており、症例としてパニッツァは革命家や宗教活動家だけでなく哲学者にも言及します。その一方で「幻影主義と人格の救出」では「幻影を吐き出せば吐き出すほど、豊穣な歴史を刻むのだ」(192頁)と書いています。どちらのエッセイにおいてもサヴォナローラや幾人かの思想家たちが出てくるのは偶然ではないと思います。「天才と狂気」の末尾ではハイネの詩「想像の歌」からの一節が引かれています。曰く「病いこそはおそらく/創造衝動すべての究極因。/創造によって私は癒され、/創造によって私は健康を取り戻した。――」。

★パニッツァは「幻影主義と人格の救出」でこうも書きます。「この世界をもみ消してしまったってかまいはしない。自分の五感でこの世界を生み出したからには、おまえがふたたび世界を思考によって破壊するのは、不可避であるばかりでなく、このような状況下では、不可欠でもある。だから、おまえが背後に抱えている悩みの種をぶちまけて前向きに取り組むことだ」(184頁)。「おまえの五感にとっては幻覚は現実のものなのだ。〔…〕おまえは幻影をいつでも消し去り、幻影を解消させることができるのだ」(185頁)。「われわれが思想を破壊しなければ、思想がわれわれを破壊する。われわれが思想を行動に移さず思想を手放さなければ、思想が行動し、われわれの身を滅ぼすことになる」(189頁)。パニッツァの思索は、自らの内面に兆す狂気と常に対峙していた当事者のそれであるような濃密な迫力があります。この機会に『パニッツァ全集』がちくま文庫か平凡社ライブラリーで文庫化されることを期待したいです。

★続いてちくま学芸文庫のまもなく発売となる(10日発売予定)の9月新刊より3点。『個人空間の誕生』は、『空間の経験――身体から都市へ』(山本浩訳、1993年)、『トポフィリア――人間と環境』(小野有五/阿部一訳、2008年)に続く、ちくま学芸文庫でのイーフー・トゥアン(Yi-Fu Tuan: 段義孚, 1930-)の文庫本第3弾。原書は『Segmented Worlds and Self: Group Life and Individual Consciousness』(University of Minnesota Press, 1982)であり、訳書親本はせりか書房より1993年に刊行されています。文庫版あとがきによれば、「わずかに存在した誤字・誤訳個所や、一部の固有名詞等の表記を修正し、また日本語として意味の取りにくい訳文にも手を加えた。さらに、引用文献のうち邦訳のあるものについて、いくつかを注につけ加えた」とのことです。訳者の阿部さんはこの新たなあとがきで、「個室に引きこもってスマホをチェックする個人が、SNSを通じて誰かとつながろうとしている現代社会において、本書の考察は絶えず振り返るべき価値を持ち続けているものと思われる」と綴っておられます。

★『独立自尊』は講談社単行本(2002年)、中公文庫(2011年)を経て再度文庫化されたもの。副題が「福沢諭吉の挑戦」から「福沢諭吉と明治維新」に改められています。著者の北岡さんによる「ちくま学芸文庫版へのあとがき」によれば、中公文庫版へのあとがきや猪木武徳さんによる解説は再録されておらず、巻末文献リストには重要文献が数点追加されているとのことです。そのかわり、新たに細谷雄一さんによる解説が付されています。北岡さんは今回の最新のあとがきで、「こういう時代にこそ、福沢諭吉に学んでほしいと思う。福澤が独立自尊の精神でもって、いかなるタブーにもとらわれることなく、因習に挑戦し続けたことを知ってほしいと思う」としたためておられます。なお本書は昨年に英訳版も刊行されているとのことです。

★『日本人の死生観』の親本は1998年に筑摩書房より刊行された単行本。昨年お亡くなりになった日本文化史家・立川昭二さんの著書のちくま学芸文庫での文庫化は『江戸人の生と死』(1993年)、『江戸病草紙』(1998年)に続いて本書で3冊目になります。本書では、西行、鴨長明、吉田兼好、松尾芭蕉、井原西鶴、近松門左衛門、貝原益軒、神沢杜口、千代女、小林一茶、滝沢馬琴、良寛ら12名の死生観が取り上げられています。「十二人が語ってくれたことばのなかに日本人の死生観を読み解き、彼らの生き方死に方にふれながら、できるだけ現代の私たちが直面している問題にむすびつけ、今日の日本人のメンタリティ(心性)の基層に生きている死生観を照らし出してみることを意図したものである」と親本から再録されたあとがきに記されています。解説「古典文学から日本人の死生観を辿る」は、島内裕子さんによるもの。

★『呪文』は2015年に河出書房新社より刊行された単行本の文庫化。解説は窪美澄さんがお書きになっています。シャッター商店街を舞台にした胸が締め付けられる恐ろしい小説が早くも文庫になりました。「まさに古い時代は終わり、新しい時代が作られようとしてる。人類は少しずつ滅亡しようとしていると、私は実感してる。それで、方舟がどこにあるのかは知らないが、少なくとも私はその乗客ではないことは自覚している。本能的に知ってるというかね。おまえらもそうだろ?〔…〕大切なのは、滅びるほうだろ? 滅びるべき者たちがその使命を悟って死んでいくから、世の中を新しく変えることができるわけだ。つまり、世を変えているのは、死んでいく側なんだよ」(173頁)。「強い意志を持って率先して消えることで」(同頁)新しい世界を創るという選民たちの冷ややかな決意が、フィクションという以上に現実に起こりうることのヴィジョンのように響くのはなぜでしょうか。本当に怖いです。

★『おとうさんとぼく』は先々月の既刊書ですが、なかなか入手する機会に恵まれませんでした。愛読していた旧版(2巻本、1985年)が手元にあるので急ぐことはなかったものの、岩波少年文庫が近所で購入できないどころか、電車に乗ってターミナル駅まで出ないと買えないというのは、色々と考えさせられるものがあります。新版全1巻を手にとってみて、登場する親子の相変わらずの他愛ない愛情と日常に胸を優しく締め付けられながら、どこか昔のようには読んでいないかもしれない自分も発見しました。それでもなお本書は名作であり、これからもずっと名作として読み継がれていくだろうと感じます。名作が残されていく世界であってほしいと心から思います。本書は児童書売場に置かれるのもいいですが、世の中の「おとうさん」たちにもっと読んでもらっていいはずです。その意味で『おとうさんとぼく』はビジネス書の新刊台に半年間は積まれていい本です。ビジネスパーソンが読むべき本がビジネス書なのだと私は思います。

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# by urag | 2018-09-09 21:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 05日

ブックツリー「哲学読書室」に渡名喜庸哲さん、真柴隆弘さん、福尾匠さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、以下の3本が新たに追加されました。


グレゴワール・シャマユー『ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』(明石書店、2018年7月)の訳者、渡名喜庸哲さんによるコメント付き選書リスト「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために」。


キャシー・オニール『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』(インターシフト、2018年6月)の日本語版出版プロデューサー、真柴隆弘さんによるコメント付き選書リスト「AIの危うさと不可能性について考察する5冊」。


眼がスクリーンになるとき――ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社、2018年7月)の著者、福尾匠さんによるコメント付き選書リスト「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊」。


以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊

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# by urag | 2018-09-05 14:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 05日

注目新刊と注目イベント:シュミット『陸と海』、プリンチーペ『錬金術の秘密』、ほか

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★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
必読の名著シリーズ「日経BPクラシックス」から、シュミットの訳書を上梓されました。

陸と海――世界史的な考察
カール・シュミット著 中山元訳
日経BP社 2018年8月 本体2,000円 4-6変型判上製284頁 ISBN978-4-8222-5580-0
帯文より:海〔リヴァイアサン〕と陸〔ビヒモス〕の戦いとしての世界史を描いた、シュミット地政学の傑作。ヴェネチア共和国、オランダ、イギリス、米国――海の国の系譜に連なる〈海洋国家〉である日本の進路を考えるための必読書。

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★ヒロ・ヒライさん(編著書:『ミクロコスモス 第1号』)
ヒライさんが監修されている「bibliotheca hermetica叢書」より、ジョンズ・ホプキンス大学教授プリンチーペ(Lawrence M. Principe, 1962-)さんの著書『The Secrets of Alchemy』(The University of Chicago Press, 2013)の訳書を上梓されました。刊行記念のトークイベントも行われる予定です。

錬金術の秘密
ローレンス・M・プリンチーペ著 ヒロ・ヒライ訳
勁草書房 2018年8月 本体4,500円 A5判上製344頁 ISBN978-4-326-14830-1
帯文より:魔術? 詐欺? オカルト? ファンタジー? 古代ギリシア・エジプトから現代まで、歴史学によって「高貴なる技」が科学史、医学史、文化史に占めた地位を示すとともに、再現実験によって錬金術師たちの実際の操作を検証する。理論と実践の両面から炙りだされる錬金術の本当の姿。決定的研究書、ついに邦訳。

◎ヒロ・ヒライ×山本貴光「歴史学と科学から読みとく錬金術
日時:2018年9月8日(土)15:00~17:00(14:30開場)
場所:下北沢 本屋B&B(http://bookandbeer.com/map/)電話03-6450-8272
料金:前売1,500円 + 1 drink order 当日店頭2,000円 + 1 drink order

内容:哲学と歴史を架橋し、テクスト成立の背景にあった「知のコスモス」に迫るインテレクチュアル・ヒストリー。その魅力を紹介する「bibliotheca hermetica(ヘルメスの図書館)」叢書の第5回配本は、『錬金術の秘密:再現実験と歴史学から解きあかされる「高貴なる技」』(8月末刊行)です。/「錬金術」と聞いて、どんなイメージをもちますか? 魔術? 偽科学? オカルト? ファンタジー? 本書では、怪しげなイメージがつきまとう錬金術について、そもそもの基礎にある化学・医薬的な技術とその発展過程、ある時代に詐欺や魔術と誤解・断罪されていく経緯、暗号化されたテクストの読解、錬金術師たちの社会的な評価、文学や演劇、宗教との関係、背景となる自然観や人間観などを通し、科学史と文化史に占めている重要な地位を示します。また実験を再現し、実際にはどんな操作が行われていたのかを解明しています。/イベントでは、ゲーム作家で『「百学連環」を読む』の山本貴光さんをお相手に迎え、本書の訳者でありBH叢書監修のヒロ・ヒライさんと、錬金術について、たっぷり語っていただきます。

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★荒木優太さん(著書:『仮説的偶然文学論』)
以下のイベントに登壇されます。さる7月7日にご著書『仮説的偶然文学論』の刊行を記念して下北沢の本屋B&Bnite行われた荒木さんと吉川さんのイベント「クリナメンズ作戦会議」に続き、今回は吉川さんの新著『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』(河出書房新社)の刊行記念で催されるイベントで、荒木さんと山本貴光さんを交えて同書店にて行われます。

◎吉川浩満×荒木優太×山本貴光「人間問題(F+f)+、あるいは科学・文学・人間の運命
日時:2018年9月22日(土)19:00~21:00 (18:30開場)
場所:本屋B&B(世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)
料金:前売1,500円 + 1 drink order 当日店頭2,000円 + 1 drink order

内容:7月、吉川浩満さんの新刊『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』が刊行されました。発展をつづける認知と進化にかんするサイエンスとテクノロジーがもたらす人間観の変容についての中間報告書です。人工知能、ゲノム編集、ナッジ、認知バイアス、人新世、利己的遺伝子……我々はどこへ行こうとしているのでしょうか?/著者の吉川さんは、人間の情動(と理性の関係)、偶然性(と運命の関係)に着目することが大事だと考えています。認知科学の展開は、我々の思考や行動に情動が大きな役割をはたすことを実証してきました。また、ヒトもまたその一員であるところの生物の進化は、偶然の積み重ねが運命のごとき轍となるような仕方で進んでいくからです。/そこでゲストにお呼びしたのが、山本貴光さんと荒木優太さんのおふたりです。山本さんは近著『文学問題(F+f)+』において、文学をF(認識、理性)とf(情緒、情動)の組み合わせと考えた夏目漱石の『文学論』を現代によみがえらせました。また、荒木さんは『仮説的偶然文学論』において、日本近代文学にあらわれた偶然性という主題の諸相を見事に析出しています。おふたり以上にふさわしいゲストがいるでしょうか(いや、いないでしょう!)。/今回のイベントでは、偶然と運命、情動と理性、文学と科学という複眼的な視点から、我々の本性と運命について存分に語り合っていただきます。

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★渡名喜庸哲さん(共訳書:サラ-モランス『ソドム』)
明石書店さんより先般上梓された訳書、シャマユー『ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』の刊行を記念し、吉川浩満さんとのトークイベントが以下の通り行われます。

◎渡名喜庸哲×吉川浩満「ドローンと人間の未来
日時:2018年10月5日(金)20:00~22:00 (19:30開場)
場所:本屋B&B(世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)
料金:前売1,500円 + 1 drink 当日店頭2,000円 + 1 drink

内容:7月に、フランスの哲学者グレゴワール・シャマユー『ドローンの哲学』(明石書店)が発売されました。/同書は、ドローンの登場によって、戦争や私たちの社会がどう変わっていくのか、軍用ドローンの現状について考察を展開した一冊です。/この刊行を記念して、トークイベントを開催します。/出演は、同書を翻訳した、慶應義塾大学商学部准教授で、フランス現代思想を専門とする渡名喜庸哲さん。ゲストに、哲学・科学・芸術、ロック、映画など幅広い関心をもち、『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』『理不尽な進化』の著者である吉川浩満さん。/ドローンは、「便利な世の中」をもたらすだけではなく、軍事、法律、政治、心理、倫理、地理などさまざまな分野に影響し、そして、わたしたち人間自身をも変えることになります。/そもそも、現代では、技術を操作するのが人間なのか機械なのか、分かりにくくなってきていますが、期待と同時に悩ましさをもつこの新しい技術をどのように考えたらよいのでしょうか。/シャマユーの話題の本『ドローンの哲学』を通じて考える人間の未来。そして、これからの戦争とは?/お二人に存分に語っていただきます。お楽しみに!

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★宮﨑裕助さん(共訳書:ド・マン『盲目と洞察』)
以下の二つの催事に登壇されます。

第17回アーレント研究大会(2018年度)シンポジウム「アーレントvs カント――政治・自由・判断力」宮﨑裕助×齋藤宜之×網谷壮介×小谷英生(司会)
日時:2018年9月8日(土) 15:00~18:00
場所:中央大学 後楽園キャンパス 3号館(3300教室)
大会参加費:一律1000円(高校生以下無料)

日時:2018年9月16日(日)13:00-16:15
場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
受講料(税込):会員6,480円、一般7,776円

内容:ここ数年、「ポスト・トゥルース(脱真実)」や「オルタナティヴ・ファクト(代替的事実)」といった言葉が世間を騒がせています。SNSの情報拡散にせよ公文書の改竄にせよ、真理/虚偽、事実/虚構といった二項対立が崩れ去り、まさに脱構築されつつある現実を私たちは目の当たりにしています。脱構築をキーワードとしてきたフランスの哲学者ジャック・デリダであれば、こうした事態をどう考えるでしょうか。本講座では、昨年翻訳が出たデリダの『嘘の歴史』(未來社刊)を読み解くことを通じて「嘘の哲学」を試みるとともに、私たちの時代のポスト・トゥルース的な現実にいかに向き合うべきかについて考えてみたいと思います。(講師・記)

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★星野太さん(著書:『崇高の修辞学』)
福尾匠さんの著書の刊行を記念した以下のイベントに登壇されます。


日時:2018年9月8日(土) at 18:00~20:00
場所:芸宿 ge-Shuku(石川県金沢市小立野4-2-1 すみれ台ハウス)
料金:1000円(1ドリンク付)※予約不要

内容:福尾匠『眼がスクリーンになるとき:ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社)が刊行された。本書は哲学と映画の正面衝突を記録したドゥルーズの『シネマ』の解説書だが、そこにはとおりいっぺんの解説におさまらない探求がたしかにある。今回のトークでは『シネマ』とその拡張可能性だけでなく、『眼がスク』の「新しさ」について、著者を含む3人によって活発な議論が交わされるだろう。/高橋明彦は近世文学研究者でありながら大著『楳図かずお論』(青弓社、2015年)を刊行しており、昨年福尾がおこなった「5時間でわかるドゥルーズ『シネマ』」を聴講したうえ、芸宿で独自に「補講」を組織していた。/星野太は『崇高の修辞学』(月曜社、2017年)で高密度な学術的な達成をマークする一方で、旺盛に批評を執筆し続けている。哲学と批評の相互的な生成という『シネマ』的な方法を地で行く彼に本書はどう見えるのだろうか。/なお当日会場では特別に『眼がスクリーンになるとき』を税抜価格(2200円)で販売する。

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★森山大道さん(写真集:『新宿』『新宿+』『ニュー新宿』『大阪+』『Osaka』『ハワイ』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『オン・ザ・ロード』『カラー』『モノクローム』『パリ+』『犬と網タイツ』『K』、フォト・ボックス:『NOVEMBRE』、エッセイ集:『通過者の視線』、共著:『鉄砲百合の射程距離』『絶対平面都市』)
bookshop Mより今年1月に刊行された写真集『Daido Moriyama: Ango』を記念し、先月末から写真展が行なわれています。

◎森山大道写真展「Ango
会期:2018年8月31日(金)~9月30日(日)13:00~19:00
場所:gallery 176(阪急宝塚線「服部天神駅」下車徒歩1分)
※会期終わりの曜日が通常と異なります
※休廊日:9月5日(水)、6日(木)、12日(水)、13日(木) 、19日(水)、20日(木)、 26日(水)、27日(木)
※一部雑誌等で土曜、日祝日の開廊時間が11:00~と紹介されていますが、開廊時間は全日13:00~19:00となります。ご注意ください。
内容:数多く発表されている坂口安吾の著作の中でも傑作とされる『桜の森の満開の下』と、森山大道が撮りおろした漆黒の桜の写真を、デザイナーの町口覚が “交配” させ一冊の書物を生み出しました。その出版記念として、同書に収録された森山大道の写真作品を展示いたします。

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★川田喜久治さん(写真集:『地図』)
先月末より以下の通り写真展が行なわれています。

日時:2018年8月31日(金)~2018年10月11日(木)
場所:キヤノンギャラリー S(品川)
内容:川田氏の作品群の中から「ロス・カプリチョス」と「ラスト・コスモロジー」を再編し、タイトル「百幻影-100 Illusions」のもと50点ずつ計100点を展示致します。また、グラフィックデザイナー田中義久氏が本展のために制作したポスターを川田氏の作品と合わせて展示します。

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# by urag | 2018-09-05 11:32 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2018年 09月 02日

注目新刊:熊野純彦『本居宣長』、栗原康/白石嘉治『文明の恐怖に直面したら読む本』、ほか

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『死海文書Ⅸ 儀礼文書』上村静訳、ぷねうま舎、2018年8月、本体4,000円、A5判上製30+208+4頁、ISBN978-4-906791-83-5
ローティ論集――「紫の言葉たち」/今問われるアメリカの知性』リチャード・ローティ著、冨田恭彦編訳、勁草書房、2018年8月、本体4,200円、A5判上製292頁、ISBN978-4-326-10269-3
文系と理系はなぜ分かれたのか』隠岐さや香著、星海社新書、2018年8月、本体980円、新書判253頁、ISBN978-4-06-512384-3

★『死海文書Ⅸ 儀礼文書』は原典からの初訳シリーズ『死海文書』の第二回配本。「祝福の言葉」「ベラホート」「日ごとの祈り」「光体の言葉」「祭日の祈り」「典礼文書」「安息日供犠の歌」「結婚儀礼」「浄化儀礼」を収録。「ベラホート」はヘブライ語で「祝福」を意味します。「光体(マオール)」というのは訳注や解説によれば「(天の)発光体」すなわち「天体」を意味しているそうで、「天の光る物のことで、聖書では時や季節のしるしとされているが、クムラン文書では「天使」をも意味しうる」とも説明されています。「本文書の祈りは、天体によってしるしづけられる時――すなわち、日の出ないし日没、あるいはその両方――に朗唱される言葉であった」(79頁)と。欠損の多い文書群を解読しようとする研究者の情熱を感じます。

★『ローティ論集』は、アメリカの哲学者ローティ(Richard McKay Rorty, 1931-2007)がヴァージニア大学の「人文学大学教授」を務めていた時代(1982-1998)に書いた論文三篇と、それ以降(2003-2007)の論文三篇を、「彼の思想の特徴をさまざまな切り口で示すもの」として選び、さらに「亡くなる直前に書いた」という「知的自伝」をあわせて訳出したもの(編訳者まえがき)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「紫の言葉(purple words)」というのは、明確な定義が与えられているわけではないようですが、政治的にも哲学的にも両極に囚われず、それらを共に見据えつつ大道をゆくという姿勢を表すもののように見えます。革新と保守、大陸哲学と分析哲学、それら両翼に通じた越境者の矜持と言うべきでしょうか。

★『文系と理系はなぜ分かれたのか』は帯文に曰く「サントリー学芸賞受賞の科学史界の俊英、待望の初新書」と。受賞作というのは『科学アカデミーと「有用な科学」――フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ』(名古屋大学出版会、2011年)のこと。「はじめに」によれば今回の新書では、文系/理系という区分がどのようにできあがってきたのかについて欧米や日本の歴史的事例を確認し、続いてそうした区分が私たちの人生や社会制度とどのように関わっているか、特に産業やジャンダーとの関わりを検証。最後に学際化が進む昨今における文系/理系の関係のあるべき姿が考察されます。「文系・理系の分類が使われなくなる日もいつか来るはずです」(246頁)と著者は書いています。書店や図書館における分類にもいずれ変化が訪れるでしょうか。

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★最近では以下の書籍との出会いがありました。

文明の恐怖に直面したら読む本』栗原康/白石嘉治著、ele-king books:Pヴァイン、2018年8月、本体1,800円、四六判並製200頁、ISBN978-4-909483-04-1
私のティーアガルテン行』平出隆著、紀伊國屋書店、2018年9月、本体¥2,700円、B6判並製304頁、ISBN978-4-314-01163-1
投壜通信』山本貴光著、本の雑誌社、2018年9月、本体2,300円、四六判並製448頁、ISBN978-4-86011-418-3
ヴィクトリア朝怪異譚』ウィルキー・コリンズ/ジョージ・エリオット/メアリ・エリザベス・ブラッドン/マーガレット・オリファント著、三馬志伸編訳、作品社、2018年8月、本体2,800円、四六判上製344頁、ISBN978-4-86182-711-2
本居宣長』熊野純彦著、作品社、2018年9月、本体8,800円、A5判上製902頁、ISBN978-4-86182-705-1
新装版 新訳 共産党宣言』カール・マルクス著、的場昭弘訳著、作品社、2018年8月、本体3,800円、46判上製480頁、ISBN978-4-86182-715-0
カール・マルクス入門』的場昭弘著、作品社、2018年8月、本体2,600円、46判並製400頁、ISBN978-4-86182-683-2

★『文明の恐怖に直面したら読む本』は栗原康さんと白石嘉治さんの対談本ですが、お二人それぞれにとっても初めての対談本となります。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。栗原さんの軽妙で転覆的な語り口と、白石さんによる理論的な裏打ちが絶妙に交錯し、ここ最近毎月のように発売されている栗原さんの新刊(『菊とギロチン』『何ものにも縛られないための政治学』『狂い咲け、フリーダム』)の中でも出色の深い味わいとなっています。読みやすくて、情報量が多く、読み応えがあるのは対談ならでは。相変わらず栗原さんの「はじめに」のトーンも絶好調。担当編集者氏の破天荒なエピソードも暴露されています。

★『私のティーアガルテン行』は、紀伊國屋書店のPR誌「scripta」21~40号(2011年秋号~2016年夏号)に掲載された同名連載の自伝的回想録の単行本化。ティーアガルテン(Tiergarten)とはドイツ語で動物園や猟場を意味します。「気ままな筆の赴くところを自分で予測していえば、ここでいう「私のティーアガルテン」とは、ベルリンのティーアガルテンを思うたびに蘇るさまざまな私の過去の、次元は異なるが類似した空間、それらを想起の順に打ち重ねたものかと思える」(10~11頁)。瀟洒な造本は著者自身によるもの。60歳で創刊された「via wwalnuts 叢書」への言及がある「はじめての本づくり」に記されている、廃刊をくり返さないための一般原理五か条(26頁)が示唆的です。曰く:

一、刊行の基本はひとりの営みとする。
一、技術革新によって必ずやもたらされる翻弄を、あらかじめ長期的に見越しておく。
一、労力と資力の関係を精密につくり、薄利の確保のみに甘んじ、下部構造から破綻しないようにする。
一、読者を最小の数、最良の質に見定める。それ以上の数を求めず、それ以下の質に妥協しない。
一、つくっていて無駄がなく、飽きない形態とする。

★『投壜通信』はまもなく発売(9月3日取次搬入予定)。『考える人』『ユリイカ』『アイデア』「日本経済新聞」等々への寄稿をまとめ、書き下ろしを加えた一冊。「いろんな壜が取り揃えてあります。どれからなりとおためしください」とのこと。山本さんの精力的なご活躍の足跡を一望できるとともに、書物の海ないし森で翻弄されつつも探究/探求を続けている一読書人の歓喜(と悲鳴)を封じ込めた(といってもけっして禍々しいわけではない)小宇宙となっています。空想上の事物の実在性とそのたゆまぬ遷移というものを書物を通じて直感できる人々にとっては、バベルの図書館の書見台で自分と隣り合っている人物の気配が実は山本さんのものではないかと感じることがあるのではないでしょうか。私はあります。

★『ヴィクトリア朝怪異譚』は、ウィルキー・コリンズ「狂気のマンクトン」1855年、ジョージ・エリオット「剥がれたベール」1859年、メアリ・エリザベス・ブラッドン「クライトン・アビー」1871年、マーガレット・オリファント「老貴婦人」1884年、の四篇を収録。「優れた作品でありながら、選集に収録するには長すぎるし、かといって、それ一作を単行本として刊行するには短かすぎる」ために日の目を見ずにきた「長めの怪異譚の中から、読み応えのある力作で、かつ、日本の読者にはあまり馴染みがない作品を」まとめた、と解題にあります。ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの絵画をあしらい、金箔文字でまとめた美麗なカヴァーも目を惹きます。

★『本居宣長』はまもなく発売(9月5日取次搬入予定)。カントの三批判書、ハイデガー『存在と時間』、レヴィナス『全体性と無限』などの新訳や、廣松渉論、マルクス論など数々の重要作を世に問うてきた熊野さんの最新著です。外篇「近代の宣長像」と内篇「宣長の全体像」の二部構成の大著。「本書の「外篇」は、明治改元によってこの国の近代が開かれたそののち、宣長のうえに流れてきた時間を測りなおそうとするこころみである。一方でその蓄積をふまえ、他方でその堆積をかき分けてゆくことで、私たちははじめて、今日の時代のただなかで、宣長の全体像をあらためて捉えかえすことができる。本書の「内篇」でもくろまれるのはそのくわだてにほかならない。〔…〕本居宣長はいまなお生きている」(「はしがき」2頁)。「内篇」では「本居宣長の思考を、やがてその畢生の大著『古事記傳』に焦点をあわせながら考えてゆく」(390頁)。「宣長に典型をみる、学知のいとなるの無償な立ちよう」(871頁)に肉薄する迫力は、熊野さんの大学人としての苦闘の影を感じさせるものではないでしょうか。あとがきによれば本書と並行してヘーゲルの翻訳を手掛けておられたとのことです。

★『新装版 新訳 共産党宣言』と『カール・マルクス入門』は共に8月28日取次搬入済の新刊。マルクス生誕200年を記念して同時発売。『新装版 新訳 共産党宣言』は2010年に刊行されたものの新装版であり、巻頭に「新装版によせて――今こそ共産党宣言を読む意味――資本主義の終焉と歴史の未来を考えるために」が加えられています。目次は書名のリンク先をご覧ください。同書は類書の中でももっとも資料、注釈、解題が充実しており、「共産党宣言」の本文からのみでは理解を深めにくい点はこれらの豊富な資料と注釈、解題で補うことができ、たいへん有益です。「資本主義が変遷する中で、またかつて「マルクス主義」を標榜した国家が消滅した中でも、つねに読まれ続けたのは、まさに大筋で『共産党宣言』が予想したとおり歴史が進んでいったからである。そしてこれからも読まれ続けるであろう」(「新装版によせて」4頁)。

★『カール・マルクス入門』は、『新装版 新訳 共産党宣言』の訳者であり、『超訳『資本論』』をはじめ、多数のマルクス関連書を上梓されてきた的場昭弘さんによる力作入門書です。生活編と理論編に分け、マルクスの人生と思想を丁寧に教えて下さいます。「マルクスの思想は、資本主義が独り勝ちで発展し、富の偏在を生み出し、地球環境を破壊し、それゆえ経済成長も実現できなくなりつつある、現在のような時代にこそ、その思想の意味を発揮するといえます。いつかははっきりとしないのですが、資本主義的メカニズムが役割を終えなければならない日は遠からず来る、そうでなければ、人類、いや地球は滅亡するかもしれません」(「はじめに」3頁)。ですます調で書かれており、親しみやすいです。目次詳細は以下の通り。

目次:
はじめに 今、マルクスを学ぶ意味
序 マルクスはどんな時代に生き、何を考えたか
第Ⅰ部について
第Ⅱ部について
第Ⅰ部 マルクスの足跡を訪ねて――マルクスとその時代
はじめに 旅人マルクス――その足跡を訪ねる
第一章 マルクスはどこに住んでいたか
Ⅰ-一-1 私の研究から
Ⅰ-一-2 トリーア 生まれ故郷の様子 教育、宗教、文化
Ⅰ-一-3 長い大学時代 ボンとベルリン
Ⅰ-一-4 ジャーナリスト生活の始まり
Ⅰ-一-5 新しい世界を求めて 
Ⅰ-一-6 追放生活
Ⅰ-一-7 革命の中
Ⅰ-一-8 ロンドンでの生活
第二章 マルクスの旅
Ⅰ-二-1 社会運動の旅
Ⅰ-二-2 新婚旅行の旅
Ⅰ-二-3 読書の旅
Ⅰ-二-4 調査報告書の旅
Ⅰ-二-5 療養の旅
Ⅰ-二-6 『資本論』の旅
Ⅰ-二-7 遺産の旅
第三章 家族、友人との旅
Ⅰ-三-1 エンゲルスの旅
Ⅰ-三-2 祖先の旅
Ⅰ-三-3 兄弟の旅
Ⅰ-三-4 娘たちの旅
第Ⅱ部 マルクスは何を考えたか――マルクスの思想と著作
第一章 哲学に関する著作
Ⅱ-一-1 『デモクリトスとエピクロスの自然哲学の差異』(一八四一年)  
Ⅱ-一-2 「ヘーゲル法哲学批判序説」と「ユダヤ人問題によせて」(一八四三年執筆、一八四四年掲載)  
Ⅱ-一-3 『経済学・哲学草稿』(一八四四年四月~七月執筆『パリ草稿』とも言われる)  
Ⅱ-一-4 「フォイエルバッハの一一のテーゼ」(一八四五年 マルクスのノートにメモ書きされたもの)  
Ⅱ-一-5 『ドイツ・イデオロギー』(一八四五~四六年執筆)  
第二章 政治に関する著作
Ⅱ-二-1 『フランスにおける階級闘争』(一八五〇年『新ライン新聞――政治・経済評論』に掲載される)  
Ⅱ-二-2 『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(『レヴォルツィオーン』第一号、一八五二年掲載)  
Ⅱ-二-3 『フランスの内乱』(インターナショナル総評議会のパンフレットとして一八七一年出版された)  
Ⅱ-二-4 「フランスの憲法論」(一八五一年六月一四日チャーティストの雑誌Note to the peopleに掲載)  
第三章 経済に関する著作
Ⅱ-三-1 『哲学の貧困』(一八四七年ブリュッセルで出版されたフランス語で書かれたマルクス最初の単著)  
Ⅱ-三-2 『経済学批判』(一八五九年ベルリンで出版)、そして『経済学批判要綱』(一八五七~八年草稿)  
Ⅱ-三-3 『資本論』(第一巻は一八六七年ハンブルク、オットー・マイスナー社で出版。第二巻はエンゲルスの手で一八八五年、第三巻もエンゲルスの手で一八九四年同社から出版された)  
Ⅱ-三-4 『賃労働と資本』(一八四九年四月『新ライン新聞』に五回にわたり連載された)、『賃金、価格および利潤』(一八六五年インターナショナルの中央評議会で行った講演草稿で娘エレナーによって刊行された)  
第四章ジャーナリストとしての著作
Ⅱ-四-1 『ライン新聞』(一八四二年から一八四三年まで寄稿する)  
Ⅱ-四-2 『フォアヴェルツ』(一八四四年)  
Ⅱ-四-3 『ブリュッセル・ドイツ人新聞』(一八四七~四八年)  
Ⅱ-四-4 『新ライン新聞』(一八四八~四九年)  
Ⅱ-四-5 『ニューヨーク・デイリー・トリビューン』  
第五章 政治活動家としての著作
Ⅱ-五-1 『共産党宣言』(一八四八年)  
Ⅱ-五-2 第一インターナショナル
Ⅱ-五-3 『ゴータ綱領批判』(『ドイツ労働者党綱領評注』一八七五年)  
Ⅱ-五-4 『ドイツ人亡命者偉人伝』、『フォークト氏』、『ケルン共産主義者裁判』  
補遺1 エンゲルスについて 
補遺2 マルクスの遺稿
補遺3 マルクス全集の編纂
補遺4 マルクス以後のマルクス主義
●エピソード
1  怪人ヴィドックとマルクス
2  マルクスとアメリカ南北戦争
3  マルクスは何を買っていたのか、どんな病気であったのか
4  東ドイツの中のマルクス
5  ベルリン時代のマルクス
6  マルクスの結婚とクロイツナハ
7  パンと恋と革命――ヴェールトとマルクス
8  マルクス、ソーホーに出現す
9  一八五〇年代のロンドンの生活――マルヴィダ・マイゼンブーク
10  マルクスとオランダとの関係
11  マルクスとラッフルズ
12  アルジェリアのマルクス
13  ブライトンのルーゲ
14  イェニー・マルクスの生まれ故郷ザルツヴェーデル
15  リサガレとエレナー・マルクス
16  マルクスの「自殺論」と『ゲセルシャフツ・シュピーゲル』  
17  ドイツ人社会の発行した新聞について
18  マルクスのインド論
19  編集者チャールズ・デナとマルクス
20  バクーニンのスパイ問題
21  フランス政府の資料とマルクス・エンゲルスのブリュッセル時代
22  ポール・ラファルグとラウラ・マルクス
23  マルクス・エンゲルス遺稿の中の警察報告

マルクスを知るために読んで欲しい参考文献
マルクス家の家系図とヴェストファーレン家の家系図 
マルクス略年表  
マルクス=エンゲルス関連地図

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# by urag | 2018-09-02 23:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)