ウラゲツ☆ブログ

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2020年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊と近刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
◎2019年3月6日発売:筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究』本体4,000円、シリーズ・古典転生第19回配本、本巻18。
◎2019年2月22日発売:ハナ・ロスチャイルド『パノニカ――ジャズ男爵夫人の謎を追う』本体2,700円。
◎2019年2月20日発売:十和田市現代美術館編『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』本体2,200円。
◎2019年2月18日発売:須藤温子『エリアス・カネッティ――生涯と著作』本体3,500円、シリーズ・古典転生第18回配本、本巻17。
◎2019年2月1日発売:松江泰治『JP-34』本体3600円。
◎2018年12月17日発売:『森山大道写真集成(1)にっぽん劇場写真帖』本体6,000円。
◎2018年10月5日発売:東琢磨ほか編『忘却の記憶 広島』本体2,400円。
 好井裕明氏書評「読み応えのあるヒロシマ論――「記憶」の「劣化」を防ぐために」(「週刊読書人」12月8日号)
 渡邊英理氏書評「「忘却の口」=他なる記憶の穴へとはいりこむ――「信頼」への「信頼」を忘れていたかもしれないことに、わたしたちは本書を通じて気づくことができる」(「図書新聞」2019年1月19日号)
◎2018年10月1日発売:AYUO『OUTSIDE SOCIETY』本体2,000円。
 松山晋也氏書評「稀有な体験を糧に唯一無二の視点からの優れた音楽論」(「intoxicate」#137(2018 December)O-CHA-NO-MA REVIEW「BOOK」欄)
◎2018年8月20日発売:エドワード・ブルワー=リットン『来るべき種族』本体2,400円、叢書・エクリチュールの冒険第12回配本。
 冬木糸一氏短評(「SFマガジン」2018年12月号「OVERSEAS」欄)
 宇佐和通氏特集記事「地底世界の奇書『来るべき種族』解読:ナチス・ドイツを動かしたヴリル伝説の聖典」(月刊「ムー」誌2019年1月号)
◎2018年8月16日発売:ステファヌ・マラルメ『詩集』本体2,200円、叢書・エクリチュールの冒険第11回配本。
 岡山茂氏書評「ジャーナリズムへと戻る回路――長年のマラルメ研究に一つの区切り」(「図書新聞」2018年12月8日号)
 立花史氏書評「「理解可能なマラルメ」を追求――一般読者に親しみやすい現代語訳を」(「週刊読書人」2018年10月12日号)
◎2018年6月27日発売:岡田温司『アガンベンの身振り』本体1,500円、哲学への扉第2回配本。
◎2018年5月22日発売:荒木優太『仮説的偶然文学論』本体2,000円、哲学への扉第1回配本。
 高原到氏書評「偶然のもたらす妙なる僥倖」(「週刊金曜日」2018年7月6日号(1191号)「きんようぶんか」欄)
◎2018年4月24日発売:岡田聡/野内聡編『交域する哲学』本体3,500円
◎2018年4月23日発売:『表象12:展示空間のシアトリカリティ』本体2,000円
◎2018年4月5日発売:ジャン=リュック・ナンシー『ミューズたち』本体2,700円、芸術論叢書第5回配本。
◎2018年3月16日発売:佐藤真理恵『仮象のオリュンポス』本体3,400円、シリーズ・古典転生第17回配本、本巻16。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『何かへの旅』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

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# by urag | 2020-12-31 23:59 | ご挨拶 | Trackback(1) | Comments(21)
2019年 03月 19日

取次搬入日決定および書影公開:ロザリンド・クラウス『視覚的無意識』

弊社3月新刊、ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』の取次搬入日が決定しましたので、お知らせいたします。日販、トーハン、大阪屋栗田、ともに3月22日(金)です。書店さんへの着荷はおおよそ26日(火)ないし27日(水)以降、順次となります。店頭発売開始はおおよそ来週後半からです。どうぞよろしくお願いいたします。どこの書店さんに並ぶかは、地域をご指定いただければお答えします。電話、FAX、Eメール、当ブログコメント欄、ツイッター、等々でお気軽にお問い合わせください。

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# by urag | 2019-03-19 11:55 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 18日

注目新刊:ハーマン『非唯物論』河出書房新社、ほか

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弊社出版物でお世話になっている皆様の最近のご活躍をご紹介します。

◆上野俊哉さん(著書:『増補新版 アーバン・トライバル・スタディーズ』、共訳:ギルロイ『ブラック・アトランティック』)
一昨年に刊行された『四方対象――オブジェクト指向存在論入門』(岡嶋隆佑/山下智弘/鈴木優花/石井雅巳訳、人文書院、2017年9月)に続くグレアム・ハーマン(Graham Harman, 1968-)の訳書第2弾『非物質論』の翻訳を手掛けられました。同書は『Immaterialism: Objects and Social Theory』(Polity Press, 2016)の訳書です。書誌情報と目次を以下に掲げます。

非唯物論――オブジェクトと社会理論
グレアム・ハーマン著 上野俊哉訳
河出書房新社 2019年3月 本体2,600円 46判上製216頁 ISBN978-4-309-24901-8
帯文より:対象(オブジェクト)は非関係によって知られ、共生は非相互的、非対称的である――。アクター-ネットワーク論や新たな唯物論との対決を通して、オブジェクト指向存在論の核心を「非唯物論」としてあきらかにし、オブジェクトとしての東インド会社の考察によってその社会・歴史への応用をしめしたハーマン自身によるハーマン入門。
訳者解説より:むしろ、こう言ってもいい。ハーマンは、これまで人間について語られてきた哲学的概念を徹底して対象やモノ、非人間一般についても言えるようにするための概念に作りかえることを絶えず試みている、と。

目次:
第一部 非唯物論
 1 オブジェクトとアクター
 2 掘り重ねという危険
 3 唯物論と非唯物論
 4 ANTを発展される試み
 5 モノ自体
第二部 オランダ東インド会社
 6 VOC(東インド会社)の紹介
 7 共生について
 8 総督クーン
 9 バタヴィア、スパイス諸島、マラッカ
 10 アジア内部のVOC
 11 ANT再論
 12 創生、成熟、衰微、終焉
 13 OOOの方法をめぐる15の暫定的なルール
解説 モノたちとのおちつかない共生に向けて|上野俊哉
参考文献

★「この本の第一部は1900年における現象学以降に登場した最も重要な哲学的方法となっているアクター-ネットワーク・セオリー(ANT)、ならびにわたし自身の立場であるオブジェクト指向存在論(OOO)と、これとしばしば混同される現代思想の一派である「新しい唯物論」に焦点をあてている」(9頁)。「オブジェクト指向社会理論の探究の動機は、まずオブジェクト指向哲学への関心に求められる。この哲学の最初の公準はこうなる。一切がひとしなみに実在=現実的であるとは言えないにしても、あらゆる対象はひとしく対象(オブジェクト)である。つまり、実在的対象の自律性と感覚的対象の従属性――対象(オブジェクト)に出会う存在者がどんなものであれ、感覚的対象(オブジェクト)はそれに従属しているということ――をわれわれは区別しなければならないということである」(11頁)。

◆溝口昭子さん(寄稿:『多様体1』)
◆吉田裕さん(寄稿:『多様体1』)
先月末発売され今月より店頭発売開始となった以下の論文集に『多様体1』へのご寄稿との関連がある論考を執筆されています。溝口さんは第Ⅰ部「ネイションを求めて――コロニアリズムからの脱却」の第2章「国民国家(ネイション=ステイト)を希求する人びと――南アフリカ人作家H・I・E・ドローモの劇における国家観の変遷」(61~97頁)を執筆され、吉田さんは第Ⅱ部「ネイションのはざまで――ポストコロニアリズムの位相」の第4章「植民地主義と情動、そして心的な生のゆくえ――ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』と『故郷喪失の喜び』における恥の位置」(137~174頁)を執筆されています。

国民国家と文学――植民地主義からグローバリゼーションまで
庄司宏子編著
作品社 2019年2月 本体3,200円 46判上製340+11頁 ISBN978-4-86182-727-3
帯文より:〈国民国家〉の“本質”とはなにか? 文学的想像力から迫るポストコロニアル研究の最前線。

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# by urag | 2019-03-18 18:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 17日

注目新刊:中村隆之編訳『ダヴィッド・ジョップ詩集』夜光社、ほか

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新記号論――脳とメディアが出会うとき』石田英敬/東浩紀著、ゲンロン、2019年3月、本体2,800円、四六判並製450頁、ISBN978-4-907188-30-6
いつもそばには本があった。』國分功一郎/互盛央著、講談社選書メチエ、2019年3月、本体900円、四六判並製128頁、ISBN978-4-06-515012-2
日本を解き放つ』小林康夫/中島隆博著、東京大学出版会、2019年1月、本体3,200円、四六判並製424頁、ISBN978-4-13-013097-4
創造と狂気の歴史――プラトンからドゥルーズまで』松本卓也著、講談社選書メチエ、2019年3月、本体2,150円、四六判並製384頁、ISBN978-4-06-515011-5
大人から見た子ども』モーリス・メルロ=ポンティ著、滝浦静雄/木田元/鯨岡峻訳、みすず書房、2019年3月、本体3,800円、四六判上製304頁、ISBN978-4-622-08783-0
アルゴナウティカ』アポロニオス・ロディオス著、堀川宏訳、西洋古典叢書:京都大学学術出版会、2019年3月、本体3,900円、四六変判上製432頁、ISBN978-4-8140-0174-3
社会学用語図鑑――人物と用語でたどる社会学の全体像』田中正人編著、香月孝史著、プレジデント社、2019年3月、本体1,800円、A5判並製296頁、ISBN978-4-8334-2311-3

★年度末の忙しさで一冊ずつ掘り下げる時間に乏しいため、いくつかにまとめてごく簡単にコメントします。まず最初に、ここ約一月半の間に優れた対談本が連続している件です。小林康夫/中島隆博『日本を解き放つ』と、石田英敬/東浩紀『新記号論』、そして対談ではありませんが、二人のやりとりを収めた國分功一郎/互盛央『いつもそばには本があった。』も加えておきたいと思います。最前線の星々の交流と邂逅は美しく刺激的です。東大閥かあ、などという表面的な括りは脇に置いて楽しむ方がいいですが、東大生協書籍部でこの3冊がどんな動きをするのかについては一営業マンとしてとても興味が沸きます。

★次に『創造と狂気の歴史』と『大人から見た子ども』。前者は「「創造と狂気」という問題が西洋思想史のなかでどのように扱われてきたのかを〔…プラトンからドゥルーズまで〕様々な哲学者や思想家の議論をもとに追いかけていきます。そうすることによって、これまでの世界で「クリエイティヴ」であるとされていたのがどのような人々であるのかを理解できるようになるでしょう。さらには、現代において「クリエイティヴ」であるための条件がどのようなものであるのかを理解できるようになるかもしれません」(4~5頁)。後者はカヴァー裏紹介文に曰く「1949年から1951年にかけてメルロ=ポンティがソルボンヌ大学の児童心理学と教育学の講座で行なった一連の講義の要録、およびそれに関連するテクスト4編を収録」。この2冊とも、AIによる分析や判断が社会を覆っていくただなかにおいて「人間とは何か」を考える上で示唆的です。

★最後に『アルゴナウティカ』と『社会学用語図鑑』。前者は古代ギリシアの叙事詩の新訳であり、後者はベストセラー『哲学用語図鑑』『続・哲学用語図鑑』に続く図解本です。一見、まったく別の本ですが、かたや神話世界の、かたや学知の世界の、それぞれ英雄たちが活躍する様を堪能できるという意味ではどちらも素晴らしい本です。詩が喚起するものと、イラストが喚起するものは、想像力と視覚認識の差はあれともに映像的なのですね。この2冊が書店さんの店頭で隣り合わせになることはないと思いますけれども、群舞の壮麗さは特筆すべきではあります。

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★続いてここ最近の文庫新刊から注目書を列記します。

詩学』アリストテレス著、三浦洋訳、光文社古典新訳文庫、2019年3月、本体1,140円、413頁、ISBN978-4-334-75397-9
ソヴィエト旅行記』ジッド著、國分俊宏訳、光文社古典新訳文庫、2019年3月、本体1,100円、350頁、ISBN978-4-334-75396-2
技術とは何だろうか 三つの講演』マルティン・ハイデガー著、森一郎編訳、講談社学術文庫、2019年3月、本体720円、176頁、ISBN978-4-06-515010-8
孟子 全訳注』宇野精一訳、講談社学術文庫、2019年3月、本体1,690円、504頁、ISBN978-4-06-514311-7
花のことば辞典 四季を愉しむ』倉嶋厚監修、宇田川眞人編著、講談社学術文庫、2019年3月、本体1,110円、288頁、ISBN978-4-06-514684-2
悩ましい国語辞典』神永曉著、角川ソフィア文庫、2019年2月、本体1,080円、432頁、ISBN978-4-04-400348-7

★光文社古典新訳文庫の3月新刊は2点。アリストテレス『詩学』は「2000年間クリエーターたちの必読書である「ストーリー創作」の原点」という帯文が秀逸です。訳注だけでなく、本書の半分の分量を占める長編の訳者解説も充実。この解説には作者不明の写本ながら『詩学』と類似した内容をもつ「コワスラン論考」の全訳も含まれています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ジッド『ソヴィエト旅行記』は表題作とその続編『ソヴィエト旅行記修正』の久しぶりの新訳です。これもまた帯文が秀逸。「「楽園」は/看板倒れの/ディストピア。自らも熱烈に支持した理想国家への失望を、作家として誠実につづった紀行文」。今月の2点は何はともあれ即買いでした。

★講談社学術文庫の3月新刊から3点。ハイデガー『技術とは何だろうか』は文庫オリジナル新訳。1954年刊『講演と論文』より「物」「建てること、住むこと、考えること」「技術とは何だろうか」の3講演を収録。なお森さんはブレーメン講演版「物」もかつてお訳しになっておられます(創文社版『ハイデッガー全集』第79巻所収、2003年)。この版と『講演と論文』版との異同は今回の新訳文庫に訳注として掲載されています。『孟子 全訳注』は奥付前の特記によれば、1973年に集英社より刊行された『全釈漢文大系 第二巻 孟子』から抜粋し文庫化したもの。学術文庫での「孟子」の訳書はかの高額古書、穂積重遠『新訳孟子』(1980年)以来の久しぶりのものです(貝塚茂樹さんによる解説書は2004年に文庫化されています)。高額になっている学術文庫はぜひ復刊するかPODに加えていただければと念願しています。『花のことば辞典』は文庫オリジナルの書き下ろし。2014年刊『雨のことば辞典』、2016年刊『風と雲のことば辞典』に続く3部作の第3作。

★角川ソフィア文庫の2月新刊から1点。『悩ましい国語辞典』は2015年に時事通信出版局から刊行された単行本の文庫化。著者の神永曉(かみなが・さとる:1956-)さんは辞書編集のエキスパートでありベテラン。本書を読んでいると「まじか」やら「だよね」やらの連続で、改めて日本語と向き合う良い経験になります。知は細部にあり。一篇ずつは短いので短時間の移動中の読書に最適です。

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★また、最近では以下の新刊との出逢いがありました。

ダヴィッド・ジョップ詩集』中村隆之編訳、夜光社、2019年3月、本体1,200円、四六判変形96頁、ISBN978-4-906944-17-0
ジョルジョ・ヴァザーリと美術家の顕彰――16世紀後半フィレンツェにおける記憶のパトロネージ』古川萌著、中央公論新社、2019年3月、本体4,500円、A5判上製304頁、ISBN978-4-12-005181-4
オーロラの日本史――古典籍・古文書にみる記録』岩橋清美/片岡龍峰著、平凡社、2019年3月、本体1,000円、A5判並製88頁、ISBN978-4-582-36458-3
御簾の下からこぼれ出る装束――王朝物語絵と女性の空間』赤澤真理著、平凡社、2019年3月、本体1,000円、A5判並製120頁、ISBN978-4-582-36459-0
日本思想史の可能性』大隅和雄/大山誠一/長谷川宏/増尾伸一郎/吉田一彦著、平凡社、2019年3月、本体4,200円、4-6判上製512頁、ISBN9784582703597
音楽劇の歴史――オペラ・オペレッタ・ミュージカル』重木昭信著、平凡社、2019年3月、本体4,800円、4-6判上製408頁、ISBN978-4-582-21973-9

★『ダヴィッド・ジョップ詩集』は夜光社さんのシリーズ「民衆詩叢書」の第2弾でまもなく発売。フランス生まれの黒人詩人ジョップ(David Diop, 1927-1960;ディオップとも)の著作から詩作品22篇と散文4篇を選び一冊にまとめたものです。詩人でセネガル共和国初代大統領のサンゴールによるジョップの紹介文と、編訳者の中村さんによるジョップ小伝が付されています。ジョップ(ディオップ)の詩はこれまでに、登坂雅志さんの翻訳による『ブラックアフリカ詩集』(彌生書房、1987年)や『アフリカ詩集』(花神社、2010年)などに数編が訳出されたことがあります。今回の夜光社版詩集から、個人的に印象に残る、義兄のアリウンに宛てた美しく力強い詩篇「確信」を以下に引きます。

いくつもの殺人で肥えて太り
死体の数で自分たちの支配の段階を測っている連中に
私は言う 日々と人々が
太陽と星々が
諸地域の人民の同胞愛のリズムを描くと
私は言う 心と頭が
戦いのまっすぐな線のうちで合流すると
そして どこかで夏が生まれないような
日々などないと
私は言う 強い勢力の暴風雨が
忍耐を売る商人どもを粉砕するだろうと
そして 人々の体と調和する季節は
幸福の身振りが作り直されるのを見るだろうと。

★『ジョルジョ・ヴァザーリと美術家の顕彰』は京都大学大学院人間・環境学研究科へ2017年に提出された博士論文を加筆修正し再構成したもの。16世紀イタリアの画家であり建築家のヴァザーリ(Giorgio Vasari: 1511-1574)による『美術家列伝』(正式には『もっとも卓越せる画家・彫刻家・建築家列伝』)をひもときつつ、「美術史の父」としてのヴァザーリ像を捉え直す試みです。「本書では、ヴァザーリがコジモ一世・デ・メディチのもとおこなった諸活動をあらためて検討し、彼が打ち立てた「美術史」の根底にある儀礼的側面を浮かび上がらせる。特に着目するのは、「美術家を顕彰する」という行為である。〔…〕ヴァザーリ自身の関心と文化的背景の詳細な検討を通して、亡くなった美術家をしかるべきやり方で埋葬し、追悼するという行為が、一種のパトロネージと化していたことが理解されるだろう」(12~13頁)。

★「ヴァザーリはその活動を通して、メディチ家の面々が、美術家に作品を注文する一般的なパトロネージ以外にも、美術家自身の顕彰によって歴史にその記憶を刻み込む「記憶のパトロネージ」をおこなっていたことを強調した。実践しているのはヴァザーリ自身であっても、その出資者としてかならずメディチ家の名前を挙げ、彼らの営みに注意をうながしているのである。つまり、ヴァザーリの諸活動における「記憶のパトロネージ」実践は、16世紀フィレンツェの文化的・社会的・政治的事情が複雑に絡み合う、きわめて重要な結節点にほかならない」(13頁)。本書の主要目次を以下に転記しておきます。
序論
Ⅰ 『美術家列伝』と美術家の死
 第1章 テクストによる墓碑
 第2章 記憶のパトロネージ
Ⅱ アカデミア・デル・ディセーニョと美術家の顕彰
 第1章 ミケランジェロの死
 第2章 「画家の礼拝堂」とアカデミア
Ⅲ ヴァザーリと作品の保存・展示
 第1章 「カリオペの書斎」と歴史性
 第2章 「素描集」と聖なるものの巡礼
結論
あとがき
付録 アントン・フランチェスコ・ドーニ『大理石』抄訳
参考文献

★『オーロラの日本史』と『御簾の下からこぼれ出る装束』は平凡社さんのシリーズ「ブックレット〈書物をひらく〉」の第18巻と第19巻。前者は『日本書紀』や『明月記』をはじめとする数々の古典籍で言及されあるいは絵画史料に描かれててきた、飛鳥時代から江戸時代に至る低緯度オーロラの記録を追うもの。後者は王朝物語絵に描かれた「打出(うちいで)」を分析する内容。「打出」とは中世において、晴れやかな行事で女性の装束をすだれの下からはみださせて見せる、邸宅の空間演出方法のこと。低緯度オーロラにせよ打出にせよ、歴史とその記録への興味は尽きません。

★『日本思想史の可能性』は、大隅和雄、大山誠一、長谷川宏、増尾伸一郎、吉田一彦の5氏による「日本思想史の会」での長年の議論を出発点にして編まれた論文集。増尾さんは2014年7月にお亡くなりになっており、各章末の座談会には参加しておられません。また、増尾さんによる補論は他の論考と違って書き下ろしではなく、2007年に発表された論考の再録です。巻末のあとがきは増尾さん以外の4氏がそれぞれお書きになっています。目次は以下の通り。

はじめに|吉田一彦
序章 日本思想の外来と固有
 西洋の近代思想と日本思想史|長谷川宏
 日本をいつに求めるか――日本的思想の歴史的形成について|吉田一彦
 座談会
第Ⅰ章 天皇制の成立とその政治思想
 天皇制とは何か|大山誠一
 座談会
第Ⅱ章 思想における「日本的なるもの」
 思想における「日本的なるもの」をめぐって|長谷川宏
 座談会
第Ⅲ章 仏教徒日本思想史
 アジアの中の日本仏教の思想――仏教史は日本史より大きい|吉田一彦
 座談会
第Ⅳ章 中世の歴史書と天皇観
 『愚管抄』の天皇論|大隅和雄
 座談会
終章 天皇制は外来か固有か
 日本の思想をどう語るか|大隅和雄
 天皇制の本質|大山誠一
補論 説話の伝播と仏教経典
 説話の伝播と仏教経典――高木敏雄と南方熊楠の方法をめぐって|増尾伸一郎 
 付記|吉田一彦
あとがき|大隅和雄/大山誠一/長谷川宏/吉田一彦

★『音楽劇の歴史』はオペラ(17世紀以降)、オペレッタ(19世紀以降)、ミュージカル(20世紀以降)など、現代に至る音楽劇の変化を通史として記述したもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「ルネサンス、フランス革命、第一次世界大戦、ヴェトナム戦争などの出来事を通じて、社会だけでなく音楽劇も大きく変わった。本書の狙いは、その変化がなぜ起こったのかを考えることだ。そのため、芸術にとどまらず、政治、経済、社会制度、風俗、技術についても広範に言及」した(12頁)、とあります。
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# by urag | 2019-03-17 23:46 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 14日

ブックツリー「哲学読書室」に松山洋平さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、イスラーム神学古典選集』(作品社、2019年2月)の編訳者、松山洋平さんによるコメント付き選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選

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# by urag | 2019-03-14 13:18 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 10日

注目新刊:人文系新雑誌『たぐい』が亜紀書房より創刊、ほか

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中世思想原典集成 精選3 ラテン中世の興隆1』上智大学中世思想研究所編訳/監修、平凡社ライブラリー、2019年3月、本体2,400円、B6変判並製632頁、ISBN978-4-582-76879-4
天皇陛下にささぐる言葉』坂口安吾著、景文館書店、2019年3月、本体200円、四六判変形並製中綴じ32頁、ISBN978-4-907105-08-2
たぐい vol.1』奥野克巳/シンジルト/近藤祉秋編、亜紀書房、2019年3月、本体1,400円、A5判並製164頁、ISBN978-4-7505-1579-3
ドゥルーズとマルクス――近傍のコミュニズム』松本潤一郎著、みすず書房、2019年2月、本体2,700円、四六判上製288頁、ISBN978-4-622-08787-8

★『中世思想原典集成 精選3』は親本の第6巻「カロリング・ルネサンス」、第7巻「前期スコラ学」、第10巻「修道院神学」から9篇を収録。巻頭の解説は佐藤直子さん、巻末エッセイ「「信」の領域に踏み込む」は柳澤田実さんによるもの。収録作は以下の通りです。

書簡集|カール大帝
ペリフュセオン(自然について)|ヨハネス・エリウゲナ
書簡117――聖なる純朴について|ペトルス・ダミアニ
プロスロギオン|カンタベリーのアンセルムス
シャルトルーズ修道院慣習律|グイゴ
愛の本性と尊厳について|サン=ティエリのギヨーム
恩恵と自由意志について|クレルヴォーのベルナルドゥス
書簡集|ペトルス・ウェネラビリス
魂のついての書簡|イサアク・デ・ステラ

★『天皇陛下にささぐる言葉』は坂口安吾のエッセイ4篇を収録。「天皇陛下にささぐる言葉」1948年、「堕落論[初出誌版]」1946年、「天皇小論」1946年、「もう軍備はいらない」1952年。文庫よりひとまわり大きなサイズにホチキス止めの32頁でたったの税別200円。巻末の「読了メモ」も楽しい工夫です。この小さな本は某書店さんの評判によればすでによく売れているそうです。それはなぜかなのか、この本を読んでみれば分かると思います。安吾の諷刺は天皇その人に向けられているというよりは天皇を利用する政治家や国民に向けられています。私たち自身の滑稽さと向き合うために本書ほど端的な効き目のある薬はないかもしれません。

★『たぐい』は表紙表1に曰く「人間の「外から」人間を考えるポストヒューマニティーズ誌」。表2には「人間を超えて、多-種の領野へ。人間は人間だけで生きているのではない。複数種の絡まりあいとして、人間は、ある。種を横断して人間を描き出そうとする「マルチスピーシーズ人類学」の挑戦的試みを伝えるシリーズ、創刊」と印刷されています。また続く1頁目の創刊の辞「〈たぐい〉の沃野へ」には「『たぐい』が目指すのは、「人間以上」の世界に生きる人間を、他の〈たぐい〉との出逢いの中で考える、あらゆる知が絡まりあう場となることである」と記されています。創刊号の特集1は「喰うこと、喰われること」、特集2は「フィールドから マルチスピーシーズ人類学の現在」。目次詳細は例えばhontoの単品頁で紹介されています。編集後記によれば、以後4号まで年1回の刊行予定となっています。要注目の新雑誌です。

★『ドゥルーズとマルクス』は松本潤一郎(まつもと・じゅんいちろう:1974-)さんが2003年から2017年にかけて各媒体に発表されてきた論考を加筆訂正し、1冊にまとめたもので、初の単独著です。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「資本主義の裏面に随伴する資本主義の分身としてのコミュニズムというユートピアを垣間見るべく、私はドゥルーズとマルクスを通して時空の隔たりに制約されないひとつの〈近傍〉ゾーンをつくろうとしました。〔…〕本書は資本主義の〈近傍〉にコミュニズムを探る試みであり、ドゥルーズとマルクスをうまく縒りあわせると浮かびあがる〈近傍〉のユートピアを、資本主義の近傍に幻視するための端緒」である、と松本さんは「あとがき」で説明されています。

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★続いて、ちくま学芸文庫の3月新刊6点です。

『反対尋問』フランシス・ウェルマン著、梅田昌志郎訳、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,900円、文庫判並製736頁、ISBN978-4-480-09912-9
『文語訳聖書を読む――名句と用例』鈴木範久著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,100円、文庫判並製288頁、ISBN978-4-480-09911-2
『バクトリア王国の興亡――ヘレニズムと仏教の交流の原点』前田耕作著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,200円、文庫判並製336頁、ISBN978-4-480-09902-0
『神話学入門』大林太良著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,000円、文庫判並製240頁、ISBN978-4-480-09918-1
『詳講 漢詩入門』佐藤保著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,400円、文庫判並製416頁、ISBN978-4-480-09917-4
『考える英文法』吉川美夫著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,500円、文庫判並製480頁、ISBN 978-4-480-09910-5

★『反対尋問』は旺文社文庫(1979年)からのスイッチ。ちくま学芸文庫版の解説は弁護士の高野隆さんがお書きになっています。原著は1903年刊行され、再版と増補を重ね1932年には第4版が出ています。本書はその第4版の訳書。高野さんは「本書は、100年たったいまでもペーパーバックとして販売され、専門家とともに一般読者にも読み継がれている」と解説されています。前半が第Ⅰ部「反対尋問の原理」、後半が第Ⅱ部「著名な反対尋問の実例」です。古書では高額だったので、今回の再版は歓迎されるのではないかと想像します。

★『文語訳聖書を読む』は文庫オリジナル。文語訳の新約聖書と旧約聖書は数年前に岩波文庫で再刊されており、文語訳聖書の言葉が日本文学やことわざなどに定着した歴史については著者が『聖書の日本語――翻訳の歴史』(岩波書店、2006年)で明らかにしていますが、今回の本では「いわば『聖書の日本語』の続篇のようなかたちで、特に日本で親しまれている文語訳聖書の聖句、名句について述べることにしたい」(はじめに)とのことです。主要目次は以下の通り。

はじめに
第一章 文語訳聖書の成り立ち
第二章 修正訳と改訳ほか
第三章 名著にみる文語訳聖書
第四章 文語訳聖書の名句と用例
結びに代えて
関連略年表

★『バクトリア王国の興亡』は、1992年に第三文明者から刊行された単行本を一部加筆し図版を追加して文庫化したもの。『神話学入門』は1966年に中央公論社より刊行された単行本の文庫化。新たに山田仁史さんによる解説「探究にいざなう神話語り」が付されています。『詳講 漢詩入門』は1997年に放送大学振興会より『中国古典詩学』として刊行されたテキストを改題したもの。著者自身による新しい「まえがき」が付されています。『考える英文法』は1966年に文建書房より刊行された単行本の文庫化。斎藤兆史さんによる解説が新たに付されています。「古典的名著というにとどまらず、むしろ今の時代にこそ広く読まれるべき英文法学習書である」と斎藤さんは評価されています。親本は2004年時点で14刷に達していましたが、版元の倒産(2014年)に伴い絶版になっていたとのことです。

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★最後に最近出会った新刊を列記します。

作ること 使うこと――生活技術の歴史・民族学的研究』アンドレ-ジョルジュ・オードリクール著、山田慶兒訳、藤原書店、2019年2月、本体5,500円、A5判上製456頁、ISBN978-4-86578-212-7
死とは何か――1300年から現代まで(下)』ミシェル・ヴォヴェル著、立川孝一訳、藤原書店、2019年2月、本体6,800円、A5判上製664頁、ISBN978-4-86578-211-0
女とフィクション』山田登世子著、藤原書店、2019年3月、本体2,800円、四六変判上製320頁、ISBN978-4-86578-213-4
複雑なタイトルをここに』ヴァージル・アブロー著、倉田佳子/ダニエル・ゴンザレス訳、アダチプレス、2019年3月、本体1,600円、A5変型判並製96頁、ISBN978-4-908251-10-8
黒沢清、映画のアレゴリー』阿部嘉昭著、幻戯書房、2019年3月、本体3,600円、四六上製360頁、ISBN978-4-86488-165-4
砺波の人びと』山田和著、平凡社、2019年3月、本体3,000円、A4変判上製260頁、ISBN978-4-582-27829-3
ねむらない樹 vol.2』書肆侃侃房、2019年2月、本体1,400円、A5判並製192頁、ISBN978-4-86385-353-9
実践アディクションアプローチ』信田さよ子編著、金剛出版、2019年3月、本体3,200円、A5判上製300頁、ISBN978-4-7724-1683-2
あなたの飲酒をコントロールする――効果が実証された「100か0」ではないアプローチ』ウィリアム・R・ミラー/リカルド・F・ミューノス著、齋藤利和監訳、小松知己/大石雅之/大石裕代/長縄拓哉/長縄瑛子/斉藤里菜/根本健二訳、金剛出版、2019年3月、本体2,400円、B5判並製280頁、ISBN978-4-7724-1684-9

★藤原書店さんの2月新刊より3点。『作ること 使うこと』は農学者オードリクール(André-Georges Haudricourt, 1911-1996;オドリクールとも)の単独著の初めての訳書。『La Technologie, science humaine : Recherches d'histoire et d'ethnologie des techniques』 (Édition de la Maison des sciences de l'Homme, 1987)の「ほぼ全訳」で、原書のフランソワ・シゴーの序文と、第Ⅲ部「道具と農業技術」の第18~21章、第Ⅳ部第23章の、小論文計5篇が「きわめて限定された地域」ないし「特殊な事物」を扱っているために割愛されているほか、表題作である第1章「人文学としての技術学」と、ドラマルとの対話「研究と方法」(訳書では第25章)で一部省略した箇所があるとのことです。訳書は全6部に27編の論考と1篇の対話から成ります。本書が言う技術学というのはマルセル・モースが提唱したもので、オードリクールの説明によると「全住民の物質的活動の、つまり狩る、漁る、耕す、着る、住む、食べるそのやり方の研究」(388頁)のこと。なお、オードリクールの既訳書にはルイ・エダンとの共著『文明を支えた植物』(原著1943年;改訂版1987年:小林真紀子訳、八坂書房、1993年)があります。

★あと2点、ヴォヴェル『死とは何か(下)』は先月刊行された上巻に続く完結編。18世紀から現代を扱っています(第五部「啓蒙の世紀――問い直される死」、第六部「安心と不安――19世紀におけるブルジョワの死」、第七部「現代の死」を収録)。「将来への重い抵当としてのしかかってくるもうひとつの記憶がある。我々はすべてヒロシマの子供である」(1150頁)とヴォヴェルは指摘しています。山田登世子『女とフィクション』は『モードの誘惑』『都市のエクスタシー』に続く単行本未収録論考集の第3弾。「文学と女たち」「フランス美女伝説」「バルザックとその時代」「フィクションの力」の4部構成で40篇を収録しています。

★アダチプレスさんの3月新刊より『複雑なタイトルをここに』は、『Insert Complicated Title Here』(Harvard University Graduate School of Design and Sternberg Press, 2018)の訳書。著者のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh, 1980-)は米国のクリエイティブ・ディレクターでファッション・デザイナー。建築家やアーティストの肩書も持つ彼が2017年10月26日にハーヴァード大学デザイン大学院で行った特別講義の模様がまとめられています。心地よい軽やかさを感じる口調には、売れる予感しかしません。印象的だった発言のひとつを引用しておきます。質疑応答から。「もっとも重要なのは、自分の作品をエディットしてくれる存在を見つけること。いまの時代、もはやデザインに正解も間違いもないけれど、適切なエディットの方法はある。エディットを批判として受け取らないこと。アートの練習のためのコミュニケーションだと捉えてほしい。デザインに必要不可欠なのはそれ」(69頁)。

★幻戯書房さんの3月新刊より『黒沢清、映画のアレゴリー』は、映画評論家であり詩人で北海道大学准教授の阿部嘉昭(あべ・かしょう:1958-)さんが昨年度勤務先に提出された博士論文を書籍化したもの。「黒沢清=カフカ+ベンヤミン?」という帯が興味をそそります。主要目次を以下に列記しておきます。

序章 アレゴリーについて
第一章 代理と交換――『神田川淫乱戦争』『ドレミファ娘の血は騒ぐ』
第二章 復讐の寓意化――『蛇の道』
第三章 罹患と留保――『CURE』
第四章 選択と世界――『カリスマ』
第五章 転写と反復の機械――『LOFT』
第六章 人間の擬人化、隣接と類似――『クリーピー・偽りの隣人』
第七章 二重の身体、メランコリカー――『散歩する侵略者』
終章 映画のアレゴリーについて
あとがき

★平凡社さんの3月新刊より『砺波の人びと』は、富山県西部の砺波市の中高年の住民約200名を写真とプロフィール紹介で記録したもの。「超広角レンズを使って、1枚のスナップ写真にその人とその人を育んだ風景(風土)とを写し込み、また、自身の子ども時代の古い写真を手にしてもらって過去の記憶をも盛り込」(まえがきより)んでいます。飯沢耕太郎さんは解説で「砺波という限られた地域であるにもかかわらず、これだけ多様な生のかたちがあり、「エッケ・ホモ!(この人を見よ!)」と叫びたくなるような出会いがあるのは驚くべきことだ」と記されています。

★書肆侃侃房さんの2月新刊より短歌ムック「ねむらない樹」vol.2は、特集1が「第1回 笹井宏之賞発表!」で第2特集が「ニューウェーブ再考」。巻頭言は俵万智さんで、3首を取り上げ「葛藤があるからこそ、短歌が生まれる」と評しておられるのが印象的。目次詳細は書名のリンク先でご覧ください。なお笹井宏之賞の第2回は今年9月30日が応募締切。

★金剛出版さんの3月新刊より2点。主要目次は2点とも書名のリンク先でご確認いただけます。『実践アディクションアプローチ』は「アディクションの歴史から始まりその広がり、当事者と自助グループ、多様な立場からの取り組み、今後の潮流までを見据えた」(5頁)論文集。『あなたの飲酒をコントロールする』は『Controlling Your Drinking : Tools to Make Moderation Work for You』(Second Edition, Guilford Press, 2013)の訳書。帯文に曰く「お酒とのつきあい方・別れ方がわかる決定版」と。「物質的なごほうびと精神的なごほうびの両方が重要です」(91頁)というくだりには、依存の克服に留まらない普遍的な意味があるように感じます。

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# by urag | 2019-03-10 23:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 08日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2019年3月10日(日)開店予定
本屋イトマイ:25坪(BOOK:10坪)
東京都板橋区常盤台1-2-5 町田ビル 2F
トーハン帳合。芸術書読み物をご発注いただきました。東武東上線「ときわ台」駅北口のロータリーを抜けてすぐ、松屋の入居しているビルの2Fにブックカフェとして新規開店。かつては焼肉屋のあった場所です。取次さんの情報によれば、下北沢のB&Bで働いたことがある方がおやりになるのだとか。板橋区は個人書店が減少し続けているので、どんなお店になるのか非常に楽しみです。

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2019年3月16日(土)開店予定
大垣書店京都本店:350坪(BOOK:320坪、文具雑貨30坪)
京都府京都市下京区四条室町東入函谷鉾町78番地 京都経済センター SUINA室町 1F

トーハン帳合。弊社へのご発注は芸術書主要商品。京都市営地下鉄烏丸線「四条」駅の駅前であり、阪急京都線「烏丸駅」26番出口直結の複合ビル「SUINA室町」の1階に新規開店。大垣書店代表取締役の大垣守弘さんのお名前がある挨拶状によれば「店舗コンセプトは「旬の京都」。「観光」「伝統」「作法」「建物」「祭り」「料理」など、京都への興味、憧れを深みのある選書やイベントで演出し、国内外の方々に京都の魅力を発信していきます。また、経営書、経済書を充実させ、京都の経済の中心地にそぐわしい書籍を揃えます」とのことです。同チェーンのウェブサイトに「開店のお知らせ」が出ています。駅周辺には烏丸通を挟んで四条烏丸FTスクエアーの地下1階に「くまざわ書店四条烏丸店」があり、四条通を挟んだ反対側の京都御幸ビルの2階には「大垣書店四条店」があります。

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# by urag | 2019-03-08 18:56 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 07日

ブックツリー「哲学読書室」に門林岳史さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ロージ・ブライドッティさんの『ポストヒューマン――新しい人文学に向けて』(フィルムアート社、2019年2月)の監訳者、門林岳史さんによるコメント付き選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。

◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知

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# by urag | 2019-03-07 11:07 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 05日

取次搬入日決定:筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究』

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弊社3月新刊、筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究――その作品における形象と装飾性』の取次搬入日をお知らせします。日販と大阪屋栗田へ本日3月5日搬入いたしました。トーハンには明日3月6日搬入します。書店さんの店頭に並び始めるのは、今週末以降、順次の予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

# by urag | 2019-03-05 18:58 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 03月 04日

注目新刊:バエス『書物の破壊の世界史』紀伊國屋書店、ほか

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ゆるく考える』東浩紀著、河出書房新社、2019年2月、本体1,800円、46判並製336頁、ISBN978-4-309-02744-9
あたかも壊れた世界――批評的、リアリズム的』小泉義之著、青土社、2019年2月、本体2,000円、四六判並製232頁、ISBN978-4-7917-7146-2
世界史の実験』柄谷行人著、岩波新書、2019年2月、本体780円、新書判並製224頁、ISBN978-4-00-431762-3
吸血鬼百科 復刻版』佐藤有文著、復刊ドットコム、2019年2月、本体3,900円、B6判上製192頁、ISBN978-4-8354-5651-5

★『ゆるく考える』は2008年から2018年にかけて発表された文章のうち、「比較的時評性が低く、文学性が高いものを抜粋して編まれたエッセイ集」(あとがきより)。第i章は2018年1月から6月まで「日本経済新聞」夕刊「プロムナード」欄に掲載されたコラムをまとめたもの。続く第ii章は「文學界」2008年8月号から2010年4月号まで全20回掲載された連載評論「なんとなく、考える」をまとめたもの。「なんとなく、考える」は「じつは最初は「ゆるく考える」というシリーズタイトルを提案していた」(326頁)とのことです。「友と敵の境界をクリアに引かず、「ゆるく」考えることは、最近のぼくにとって大きな課題になっている」(同)。「ゼロ年代はじつに甘い時代だった。まだみながネットの力を信じることができ、若い世代が日本を変えると信じることができた時代だった。第二章には、そんな時代のぼくが見た夢が記録されている」(327頁)。

★第iii章は、2010年から2018年にかけて主に「新潮」誌で掲載されたものなどから9篇。一番新しいのは「新潮」2019年1月号(2018年12月発売)に掲載された「悪と記念碑の問題」です。「このエッセイ集は、いわば〔…〕、長い思考錯誤の末、ようやく批評家として「やるべきこと」を発見した、その過程の文章を集めたものだと言える」(329頁)。本書に続く東さんの新刊はまもなく一般発売開始となる、石田英敬さんとの対談本『新記号論――脳とメディアが出会うとき』。昨秋刊行された小松理虔さんの『新復興論』に続く「ゲンロン叢書」第2弾です。

★『あたかも壊れた世界』は「初の批評集」(帯文より)。コミック、映画、小説、ラノベなどを考察対象に、2004年から2018年にかけて各媒体で発表されてきた作品論14篇を収録し、「身体的」「精神的」「社会的」の3部に振り分けています。巻頭に書き下ろしの「はじめに」が置かれています。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「作品を読むこと、作品を見ることは、わたしからするなら、鑑賞・受容・消費であるというよりは、経験の一部である。〔…〕作品における愛の経験と現実における愛の経験は、本質的に異なってはいない。ともにリアルである。そして、そのような経験を可能にするものとして作品を読解することが、作品論の基本中の基本であると思う」(11頁)。「作品の経験は、愛なる概念の経験になる。〔…〕私は、批評は、少なくともその出発点においては概念実在論(概念リアリズム)に立たざるをえないと考える」(15頁)。

★「およそこの二十年ほど、種々のアプローチが後退して流行してきたあいだに、作品に内在する批評が軽侮されるだけでなく、かつてのリアリズム論争の諸論点がすっかり忘れ去られて、リアリズムに関連する諸概念が一方的に安直に否定されてきたことにあらためて気づかされた」(16頁)。「結局のところ、作品のリアリティ、作品の経験、現実の経験を見る目が失われてきたのである」(20頁)。コミック作品をしばしば取り上げている本書は、そっとコミック売場に紛れ込ませて人文書の読者とは別の読者との出会いを果たすべき運命にあると思われます。

★『世界史の実験』はあとがきから推察するに、岩波書店の月刊誌「図書」での連載エッセイ「思想の散策」(全20回、2015年9月「思うわ、ゆえに、あるわ」~2017年4月「柳田と国学」)と、ジュンク堂書店池袋本店での「柄谷行人書店」に連動して行われた連続講演「歴史と実験」(2018年8月25日、10月27日)をもとに、加筆修正されたもののようです。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。「私は『世界史の構造』〔岩波書店、2010年;岩波現代文庫、2015年〕で論じた諸問題が回帰してくるのを感じた。だから、私はこの本を『世界史の実験』と呼ぶことにしたのである」(あとがき、199頁)とあります。阪神淡路大震災のあと、そして東日本大震災のあと、柄谷さんは柳田国男の「先祖の話」(角川ソフィア文庫、2013年)を再読してきたといいます。「そこ〔『世界史の構造』〕で確立した観点から、柳田の考えたことを見直すようになった」(12頁)と。また、本書第二部「山人から見る世界史」は『遊動論――柳田国男と山人』(文春新書、2014年)の考察を引き継いでいます。『世界史の実験』の刊行を機に、「週刊読書人」では柄谷さんのロングインタヴュー「普遍的な世界史の構造を解明するために」が公開されています。

★『吸血鬼百科 復刻版』は、講談社「ドラゴンブックス」全11巻(1974~1975年)の第1巻(1974年刊)の復刻。復刊ドットコムではこれに先行して第4巻『悪魔全書 復刻版』が2018年11月に復刻されています。これまで復刊ドットコムでは立風書房「ジャガーバックス」(1972~1983年頃)や、学研「ジュニアチャンピオンコース」(1971~1980年頃)などから人気タイトルを復刻してきましたが、「ドラゴンブックス」の『悪魔全書』と『吸血鬼百科』はとりわけダークな内容。私は初版刊行当時この2点には出会っていませんでしたが、たとえ出会っていたとしても怖くて頁をめくれなかったことでしょう。そこそこキツいのです。これが児童書だったとは。復刊ドットコムさんには今後も3シリーズからの復刻を継続してほしいです。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで』フェルナンド・バエス著、八重樫克彦/八重樫由貴子訳、紀伊國屋書店、2019年3月、本体3,500円、B6判上製739頁、ISBN978-4-314-01166-2
宇宙の果てまで離れていても、つながっている――量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』ジョージ・マッサー著、吉田三知世訳、インターシフト発行、合同出版発売、2019年3月、本体2,300円、四六判並製352頁、ISBN978-4-7726-9563-3
イスラーム神学古典選集』松山洋平編訳、作品社、2019年2月、本体4,800円、A5判上製336頁、ISBN978-4-86182-736-5
ドゥルーズ『差異と反復』を読む』森田裕之著、作品社、2019年2月、本体2,200円、46判並製176頁、ISBN978-4-86182-735-8
ロシア構成主義――生活と造形の組織学』河村彩著、共和国、2019年2月、本体3,200円、菊変型判並製304頁、ISBN978-4-907986-43-8
ハバナ零年』カルラ・スアレス著、久野量一訳、共和国、2019年2月、本体2,700円、菊変型判並製280頁、ISBN978-4-907986-53-7
現代思想 2019年3月号 特集=引退・卒業・定年』青土社、2019年2月、本体1,400円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1378-3

★『書物の破壊の世界史』はベネズエラの作家で過去にベネズエラ国立図書館館長も務めたことがあるバエス(Fernando Báez, 1970-)の高名な著書『Nueva historia universal de la destrucción de libros』(Océano, 2013)の訳書。2004年に刊行された原著初版に大幅加筆し、新たに図版を加えた増補改訂版が底本です。主要目次は例えば版元ドットコムでの単品頁をご覧ください。「本書のタイトルを“書物の破壊の〈歴史〉”ではなく“書物の破壊の〈世界史〉”としたのは、世界中で起こっている身近な問題として捉えてほしかったからだ」(18頁)と著者は書きます。「五〇世紀以上も前から書物は破壊され続けているが、その原因のほとんどは知られていない。本や図書館に関する専門書は数あれど、それらの破壊の歴史を綴った書物は存在しない。何とも不可解な欠如ではないか?」(25頁)。

★「書物の破壊は、公的機関によるものでも個人によるものでも、必ずといっていいほど、規制、排斥、検閲、略奪、破壊という暗澹たる段階を経る」(33頁)。「書物を焼いたり図書館を空爆したりするのは、それらが敵対する側のシンボルだからだ」(同)。「ビブリオコースト(書物の破壊を端的に表現する新語、“書物の大量虐殺”の意)とは、何らかの理由で優越性を持つ一方の記憶にとって、直接あるいは間接的な脅威となる記憶を抹殺することだ」(34頁)。著者は第5章「大災害の世紀」で、日中戦争における教育施設の破壊についても触れています。「日中戦争前の1936年に4041あった図書館のうち、少なくとも2500が破壊されている。さらに92の高等教育施設が全壊。戦争中に失われた本の総数は、約300万冊に上るといわれる」(507頁)。書物は戦争や検閲、さらには不注意による廃棄や営利目的による分解ばら売りなど様々な人為的破壊にさらされてきただけでなく、天災や材料の劣化や虫害等々によっても失われていきます。本書は特に人間の暗部を如実に描出しており、その闇が今なお息づいていることを教えてくれます。未来への警告の書でもあるわけです。

★『宇宙の果てまで離れていても、つながっている』は『Spooky Action at a Distance: The Phenomenon That Reimagines Space and Time - and What It Means for Black Holes, the Big Bang, and Theories of Everything』(Scientific Americans, 2015)の訳書です。目次詳細と巻頭の「はじめに: あらゆる謎の根源」が書名のリンク先でご覧いただけます。「量子力学をはじめとする物理学の各分野では、場所も距離も、より深いレベルでは存在しないかもしれないという説が提案されているのだ。物理学の実験では、2つの粒子の運命を結びつけて、一対の魔法ののコインのように振る舞わせることができる――投げれば当然、それぞれ表か裏かを上にして落ちるのだが、なんとびっくり、常に2枚が同じ面を上にして落ちる、そんな魔法のコインのように。それらの粒子は、あいだに横たわる空間を伝わる力など一切存在しないにもかかわらず、協調して振る舞う。これらの2個の粒子は、それぞれ宇宙の反対側に飛んで行って離れ離れになったとしても、やはり一致した振る舞いをする。つまり、これらの粒子は局所性をやぶっている。要するに、空間を超越しているのだ」(7頁)。

★「どうやら自然は、奇妙であると同時に微妙なバランスを保っているらしい。たいていの場面では、自然は局所性〔ローカリティ〕に従っている――なにしろ、自然には局所性に従ってもらわないと、私たちは存在できないのだから――が、その一方で、自然はその基盤においては非局所的なのだという、かすかな証拠があちこちで見え始めている。本書では、この緊張した状況を詳しく紹介していきたい。/非局所性〔ノンローカリティ〕は、それを研究する者にとっては、物理学のあらゆる謎の根源であり、今日物理学者が直面するさまざまな謎――量子論的粒子の奇妙さのみならず、ブラックホールの運命、宇宙の起源、そして自然の本質的統一までも――の核心に関わるものなのである」(7~8頁)。なお、本書の一部は、昨秋発売された「別冊日経サイエンス」の『量子宇宙――ホーキングから最新理論まで』にも掲載されています。著者のマッサー(George Musser, 1965-)は科学ジャーナリストで、『サイエンティフィック・アメリカン』誌の寄稿編集者。本書が初めての訳書となります。

★『イスラーム神学古典選集』は版元紹介文に曰く「現存するイスラームの三大宗派、スンナ派(アシュアリー学派、マートゥリーディー学派、ハンバリー学派)、シーア派(一二イマーム派、イスマーイール派、ザイド派)、イバード派の読みやすい古典テクストを選書、この一冊から読めるイスラーム概論を付し、各テクストを丁寧に解説」と。巻頭の「はじめに」によれば「本書では、特定のテーマに特化するのではなく、イスラーム教の信条全体、またはその基礎的な部分を論じたテクストを中心に翻訳の対象とした」(5頁)とのこと。目次は以下の通りです。

はじめに
序章
 コラム(1)信仰告白「シャハーダ」
 コラム(2)啓典クルアーン
 コラム(3)預言者と使徒
 コラム(4)イスラーム法学
 コラム(5)アリーと「教友」の間の確執・対立
第一章 イージー『信条』|スンナ派(アシュアリー学派)
第二章 サヌースィー『証明の母』|同上
第三章 アブー・ハニーファ『訓戒』|スンナ派(マートゥリーディー学派)
第四章 イブン・カマール・パシャ『一二の問題におけるアシュアリー学派とマートゥリーディー学派の相違』|同上
第五章 アブー・ヤアラー『信条』|スンナ派(ハンバリー学派)
第六章 イブン・クダーマ『比喩的解釈の咎』|思弁神学の是非を巡る対立:ハンバリー学派
第七章 アシュアリー『思弁神学に従事することの正当化』|思弁神学の是非を巡る対立:アシュアリー学派
第八章 ヒッリー『第一一の門』|シーア派(一二イマーム派)
第九章 アリー・イブン・アル=ワリード『諸信条の王冠』抄訳|シーア派(イスマーイール派〔タイイブ派〕)
第一〇章 ラッサース『提要』|シーア派(ザイド派)
第一一章 サーリミー『子供への教授』第一部|イバード派
付録 礼拝の作法
補記と謝辞
索引

★『ドゥルーズ『差異と反復』を読む』は大谷大学教授で教育哲学がご専門の森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さんによる、『ドゥルーズ=ガタリのシステム論と教育学――発達・生成・再生』(学術出版会、2012年)、『贈与-生成変化の人間変容論――ドゥルーズ=ガタリと教育学の超克』(青山社、2015年)に続く単独著第三弾。ドゥルーズの主著である「『差異と反復』の理論をできるかぎり図式的かつ体系的に描き出すことを目指した」(11頁)、ドゥルーズ思想入門です。目次は以下の通り。

はじめに
第一章 先験的経験論の方法と主題
 1 先験的経験論の方法
 2 先験的経験論の主題
第二章 強度による理念の個体化論
 1 強度による理念の個体化論に向けて
 2 強度による理念の個体化論
第三章 理念の差異化=微分化論と理念の異化=分化論
 1 理念の差異化=微分化論
 2 理念の異化=分化論
第四章 個体化-ドラマ化-差異化/異化=微分化/分化としての先験的経験論
 1 先験的経験論の理論的な位置づけ
 2 先験的経験論の理論的展開
補論
 1 思考という能力の超越論的な行使の捉え直し
 2 理念の差異化=微分化の捉え直し
ドゥルーズの著作
あとがき

★『ロシア構成主義』は『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』(水声社、2014年)に続く河村さんの単独著第二弾となる書き下ろし。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「問題の根本は、東西対立の終焉とともに二十世紀の夢そのものが失われたことにある。二十世紀の大衆社会は、西側も東側も結局すべての人に物質的に豊かな生活を等しく供給することができなかったばかりか、もはや今となってはそれを目指す努力すら放棄されてしまった」(13頁)。「本書は構成主義の残骸を拾い集め、初期ソヴィエトで構想された、近代の夢の一つのヴァリアントを復元する試みである。残骸が「星座の布置」を描いて輝きを放つならば、それは暗い夜道のような二十一世紀を照らす、ささやかな道しるべとなるだろう」(14頁)。なお本書の、カバーと帯が斜めにカットされているのは初版のみの仕様とのことです。奥付発行日にも驚くべき仕掛けが刻まれていますが、これもまた初版のみの〈不可能な日付〉かもしれません。

★『ハバナ零年』は共和国さんの叢書「世界浪漫派」の一冊。ハバナ出身の作家カルラ・スアレス(Karla Suárez, 1969-)さんの本邦初訳となる小説です。原書は『Habana año cero』(Ediciones Unión, 2016)。ポルトガル語版が2011年、フランス語版が2012年に刊行されており、同2012年にカルベ・ド・ラ・カリブ文学賞と フランス語圏島嶼文学賞を受賞しています。「数学とミステリーの要素を巧みに織り込んで挑んだ代表作」だと謳う帯文によれば、本書のあらすじは以下の通り。「1993年、深刻な経済危機下のキューバ。数学教師のジュリアは、ハバナで初めて電話が発明されたことを証明する、イタリア人発明家メウッチの重要な自筆文書の存在を知る。その文書をめぐって、作家、ジャーナリスト、そして元恋人までが虚々実々の駆け引きと恋を展開するが……」。なお、メウッチ(Antonio Meucci, 1808-1889)は実在の発明家です。

★『現代思想 2019年3月号 特集=引退・卒業・定年』は樫田祐一郎編集長体制になってから2つ目の通常号。巻頭の山田ルイ53世さんと武田砂鉄さんの対談「理にかなわない生存――芸人×ライターの続け方」は議論の緩やかな勾配が見事。同誌の新たな地平を見る思いがします。トップスピードでハイレベルな議論が交わされる硬派な対談や鼎談もいいですが、一見世間話のようで特集内容への入口となるようなこうした良い意味での「雑談」を意識的に組み込んでおくことが、どんな特集内容であれますます重要になってくるように思われました。

★竹熊健太郎さんへのインタヴュー「フリーランスに「引退」はあるのか――漫画家・編集家・ライターの未来」では、出版社所属の編集者から仲介エージェントに変わる「生き残り戦略」をめぐるヒントを得られる箇所があります。「僕自身は、作品をつくる上で、プロデューサーがいたほうがいいと思っています。自己プロデュースができる作家はまれにいて、そういった人に編集者は正直必要ないのですが、僕が出会った限りでは生活していけるレベルまで世間に売り込めるほどの自己プロデュースができる人はなかなかいないですよ。創作とプロデュースは本来両立しません。どんなに自分でKindle版で発売しても全然結果がついてこない」(70頁)。さらに考えるなら、プロデューサーやエージェントが資金を引っ張ってくるのが出版社からではなくなる時代がもう到来しているのかもしれない、とも感じました。

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# by urag | 2019-03-04 02:37 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)