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2020年 01月 26日 ( 1 )


2020年 01月 26日

注目新刊:飯盛元章『連続と断絶――ホワイトヘッドの哲学』人文書院、ほか

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従弟クリスティアンの家で 他五篇』テーオドール・シュトルム著、岡本雅克訳、幻戯書房、2020年1月、本体3,900円、四六変形判ソフト上製408頁、ISBN978-4-86488-189-0
政治的動物』石川義正著、河出書房新社、2020年1月、本体3,300円、46変形判上製424頁、ISBN978-4-309-24943-8
ポスト・ヒューマニズムの政治』土佐弘之著、人文書院、2020年1月、本体2,400円、4-6判上製306頁、ISBN978-4-409-03107-0
連続と断絶――ホワイトヘッドの哲学』飯盛元章著、人文書院、2020年1月、本体4,500円、4-6判上製324頁、ISBN978-4-409-03106-3
世界の悲惨Ⅱ』ピエール・ブルデュー編、荒井文雄/櫻本陽一監訳、藤原書店、2020年1月、本体4,800円、A5判並製608頁、ISBN978-4-86578-256-1
つながる――生命誌の世界(中村桂子コレクション いのち愛づる生命誌Ⅱ)』中村桂子著、村上陽一郎解説、藤原書店、2020年1月、本体2,900円、四六変判上製352頁/口絵2頁、ISBN978-4-86578-255-4
消えゆくアラル海――再生に向けて』石田紀郎著、藤原書店、2020年1月、本体2,900円、四六判上製344頁、ISBN978-4-86578-251-6
昭和ジャズ論集成』野口久光/油井正一/植草甚一/清水俊彦/相倉久人/平岡正明著、平凡社、2020年1月、本体5,800円、A5判上製432頁、ISBN978-4-582-83823-7
千野共美 いけばな自在』千野共美著、平凡社、2020年1月、本体3,800円、B5変判上製144頁、ISBN978-4-582-27832-3

★『従弟クリスティアンの家で 他五篇』は「ルリユール叢書」の第5回配本。「詩的写実主義の作家シュトルムの転換期を代表する人間個人の心理に肉迫する表題作」(帯文より)のほか、「三色すみれ」「人形つかいのポーレ」「森のかたすみ」「静かな音楽家」「荒野の村」の5篇を収録。ドイツ・リアリズム文学を代表する作家テーオドール・シュトルム(Theodor Storm, 1817–88)の既訳書には未完結の村松書館版『シュトルム全集』や、三元社版『シュトルム名作集』全6巻のほか、複数の文庫本や対訳本などがあり、世界文学全集のようなシリーズものでも常連です。今回の新訳で訳者は「部隊を故郷の厳しい自然と市民世界に限定しながら、普遍的な人間的本質を描いた彼の文学は、強度文学の最高峰と目される」と評価しておられます。「ルリユール叢書」次回配本は2月末、バリェ゠インクラン『独裁者ティラノ・バンデラス』(大楠栄三訳)とのことです。なお、同叢書の第3回配本、ヴェルレーヌ『呪われた詩人たち』と、コルビエール『アムール・ジョーヌ』の刊行を記念し、以下のトークイベントが行なわれる予定です。

日時:2020年2月19日(水)19時~21時
場所:下北沢・本屋B&B(電話:03-6450-8272)
料金:前売1500円+ドリンク500円、当日2000円+ドリンク500円(ともに税別)

★『政治的動物』は文芸評論家の石川義正 (いしかわ・よしまさ:1966-)さんによる、『錯乱の日本文学――建築/小説をめざして』(航思社、2016年)に続く単独著第2弾。2008年から2018年にかけて各誌で発表されてきた5篇の論考に、6本の書き下ろしと、PrologueおよびEpilogueを加えて1冊としたもの。「本書は、文学における政治と動物について論じている。だが、それはアリストテレスがポリス的という言葉に与えた含意から遠く隔たっている。政治的なものとは、ここでは共同体の内と外の境界で、あるいは公的領域と私的領域のはざまで発生する、社会的領域と折り重なりながら、しかし統治とはまったく異なる他者同士の関係を意味する。〔…〕そしてそのたがいに他者同士である形象をここでは「動物」と呼ぶ」(111頁)。

★「本書に登場する動物たちは、おもに1979年から2017年のあいだに日本語で発表された小説作品からとりあげている」(12頁)。「『政治的動物』が実践するのは、ひとまずは恣意的とも思える判断によって1979年から2017年として画定した一時期の政治的・経済的・社会的な断面と作品内の動物的な諸形象との交点を〔…〕いくつかの概念によってピン留めすること、そしてそれらの概念をふたつの系列〔動物/権力〕として、その航跡をたどってみるという試みである。テキストがあるひとつの歴史と交錯し、衝突し、分岐する際の恒常的なマーカーが動物という形象なのである」(13頁)。帯文には大澤真幸さんによる推薦文が記されています。店頭でご確認いただければと思います。

★人文書院さんの1月新刊は2点。『ポスト・ヒューマニズムの政治』は、「人間中心主義の隘路」と「反ヒューマニズムの政治」の2部構成で、2013年から2017年にかけて各媒体で発表されてきた7本の論考に大幅な加筆修正を施し、書き下ろしの序論「ポスト・ヒューマニティをめぐる政治――種を超える/類を分割する」と第1章「人間中心主義の隘路」の2本を加えたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧下さい。「比喩としての地球生命体(ガイア)を維持できるか否かは、視野狭窄的で排他的な人間中心主義からの脱却を目指しつつ、類としての人間を分割する資本の論理、その矛盾の発露である「新しいファシズム」を超えていくような批判的ポスト・ヒューマニズムの思想・運動の成否にかかっているといって過言ではないだろう」(73~74頁)。

★『連続と断絶』はまもなく発売。2018年に中央大学に提出された博士論文「ホワイトヘッド形而上学に置ける存在者の連続性と非連続性について」に加筆修正を施し、新たに第6章「体系を攪乱する実在との断絶――思弁哲学について」と「ホワイトヘッド用語小辞典」を加えたもの。「ホワイトヘッドは抱握をとおして過剰に関係しあう宇宙像を描き出した。だが、じつはその宇宙のうちに断絶の線が走っていて、抱握の手をすりぬける彼方がうごめいているのではないのか。本書は、そうした断絶を探りあてていく試みだ。それは、巨大な宇宙的有機体が奏でるハーモニーのうちには、ある種のノイズを、あるいはノイズでさえない無音を聴きとる試みであると言える」(15頁)。

★「これまでのホワイトヘッド研究は、宇宙のあらゆる存在者が関係しあっているという側面をおもに強調してきたと言える。それは光に満ちた明るい形而上学である。多方で、以上の展開をたどるなかで本書が強調するのは、けっして光が届くことのない闇の領域だ。闇の形而上学者ホワイトヘッド。そうした新しいホワイトヘッドが示されることになる」(18頁)。上記2つの引用を含む「序論」は人文書院さんの単品頁のPDFにて立ち読み可能となっています。本書がデビュー作となる著者の飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さんは現在、中央大学兼任講師を務めておられます。

★藤原書店さんの1月新刊は3点。『世界の悲惨Ⅱ』は全3分冊のうちの第2分冊。帯文に曰く「第2分冊では、正規/非正規労働者の分断、失業者、継承されない農業、学校教育の変容と教師・学生、女性の直面する困難などに耳を傾ける」。第Ⅳ部「没落」、第Ⅴ部「内部からの排除」を収録。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。第Ⅰ分冊は先月(2019年12月刊)。

★『つながる』はシリーズ「中村桂子コレクション いのち愛づる生命誌」の第4回配本となる第Ⅱ巻。『生命誌の世界』(日本放送出版協会、2000年)に2篇のエッセイ「水の生命誌」(『季刊045』創刊号、横浜市市民広報課、1995年10月)、「生成の中に生命の基本を探る」(『思想』2010年7月号、岩波書店)を加え、著者による「はじめに」と「あとがき」、そして村上陽一郎さんによる解説「読む人と書く人の対話」を付したもの。付属の「月報4」には、新宮晋「幼馴染み」、山崎陽子「妖精に会った日」、岩田誠「“蟲愛づる姫君”に教えられて」、内藤いづみ「女の子同盟の呼びかけ人、中村桂子先生へ」が収められています。

★『消えゆくアラル海』は帯文に曰く「湖面積が琵琶湖の100倍あった世界第4位の湖、中央アジアのアラル海。それが、大規模な農地開発により、琵琶湖のたった10個分にまで縮小した。琵琶湖のほとりで育ち、農学の道に進んだ著者が、アラル海消滅の危機にあるカザフスタンに通いつめ、消滅の現実と再生への希望を描く画期作」。著者の石田紀郎(いしだ・のりお:1940-)さんは京都大学教授、京都学園大学教授などをつとめ、2003年からはNPO法人「市民環境研究所」代表理事でいらっしゃいます。本書のはじめにで石田さんは巻頭の「はじめに」で「この書は、アラル海流域で発生した諸問題を、日本カザフ研究会というう小さな研究者集団が追いかけた記録である」(15頁)と書いておられます。「琵琶湖の汚染を考えるのと同じように、我々への継承になると思ったからである。その軌跡を本書にまとめることができた」(同)。「アラルの環境破壊の点検作業を通して、地球の環境特性を大事にした人の生き方を模索しなければ、人類に未来はないことを確信した」(同)。

★また終章ではこうまとめておられます。「アラル海の干上がりと地域社会の崩壊は、ソ連邦政府、すなわち、モスクワ・クレムリンの意向で実施された農業政策の結果である。この政策の結果、シルダリアやアムダリア流域の農耕民には恩恵を施しただろうが、アラル海流域の漁業や漁村は壊滅し、ほとんどの恩恵はモスクワに吸い取られた。/セミパラチンスクはといえば、大草原の牧民にはなんの恩恵もなく、爾来、半世紀後の今も、放射能に汚染された大地で、多くの障害を抱えながらの生活が続いている。〔…〕世界中にあるこの理不尽さを解消し、あらたな価値を創造するのが環境を冠した科学の最大の課題であり、研究者の使命である」(332頁)。

★平凡社さんの今月新刊から2点。『昭和ジャズ論集成』は編集担当の浜野サトルさんによる「まえがき」によれば、「クラシック・ジャズ(ニュー・オーリンズとスイング)がマニアをとらえた時代から1960年代初頭のファンキー・ブームでジャズ熱が一般に広まりい、さらにフリー・ジャズが爆発し、やがては昭和初期の終焉と歩調を合わせるようにジャズがエンタテインメント化の色を濃くしていく直前までの、日本のジャズ論のエッセンスを集約する。〔…〕この六名が昭和を代表するジャズ論者のすべてというわけではない。しかし、日本でもジャズ需要の変遷とともに変化を続けたジャズ論の精髄はこの一冊に過不足なく盛り込まれているはずである」(4頁)。

★巻末に置かれた「六氏の肖像――解説に代えて」を寄稿されている岡崎正通さんはこう書いています。「本書には1940~80年代に書かれた“ジャズ論”が収められているが、大半は50~60年代のジャズが熱かった時代に掛かれたものだ。〔…〕昭和の時代に論壇をふるった六氏による“ジャズ論”。単なる歴史やミュージシャン、作品紹介のようなものとは次元を画するもので、音楽的、歴史的、思想的にとアプローチは異なっているものの、どれも表現の確かさ、ユニークさは圧倒的で、書かれてから半世紀、あるいはそれ以上を経たいま読んでみても、なおイマジネイションを刺激するに十分なものがある」(423頁)。同書の目次はhontoの単品頁で確認することができます。

★『千野共美 いけばな自在』は華道家の千野共美(ちの・ともみ:1948-)さんのいけばな作品集。ここ10年ほどに手掛けられた132点の写真に加え、作品リスト、略歴、4本のエッセイ、あとがきが付されています。あとがきによれば、一昨年秋に病を得たのをきっかけにまとめられた一冊です。美しく活き活きとした作品群に接していると、冬の寒さにくすんでいた心が浄められるような爽やかさを覚えます。

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by urag | 2020-01-26 22:25 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)