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2019年 06月 19日 ( 2 )


2019年 06月 19日

『逆説の對位法〔ディアレクティーク〕――八木俊樹全文集』(八木俊樹全文集刊行委員会、2003年)

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お仕事をご一緒したことはないものの常々その厳密な編集姿勢と緻密な編集論に触れるにつけ尊敬の念を抱き続けてきた先輩編集者が私にはいます。郡淳一郎さんです。その郡さんが折に触れて幾度となく紹介されてきた先達の言葉のひとつに次のものがあります。曰く、「出版は二重の断念の上に立った虚数の営為である。それ故、凡ゆる戦術を駆使し凡ゆるエネルギー回路を想定する自由をもつ」。その出典である、『逆説の對位法〔ディアレクティーク〕――八木俊樹全文集』(八木俊樹全文集刊行委員会、2003年)をようやく入手することができました。

A5判上製函入xviii+1286頁の大冊。装訂は石川九楊さんによるもの。ISBNはなし。凡例から引くと「本書は、第一に八木俊樹(以下著者という)が生前に公表した、論文(公表というのではないが、所謂修士論文も含める)、詩篇、時評、書評のすべて、種々の編集後記・あとがき等のすべて、また京都大学学術出版会に於ける活動の一端を示す、著者の手になる、京都大学学術出版会設立に関する報告書・出版編集に関する論稿・刊行図書帯文・刊行図書目録のすべて、更に著者が相手をつとめた対談、著者も加わった座談会の公表記録のすべてを、第二に、著者の手になると判断される遺稿のすべて、様々の研究会に提出されたレジュメ、ノート、原稿断片、メモ等、編集委員会で入手できたものすべてを、収録することを目指して編まれたものである」。主要目次は以下の通りです。

一、自體の呪縛と對位法
二、先験的誤謬の對位法
三、書-言語の對位法
四、編集後記等
五、京都大学学術出版会
六、日本トルコ文化協会
七、研究会レジュメ等
八、ノート
九、原稿断片
一〇、メモ
一一、私の計画
一二、年譜

先に引いた言葉は、第二部「先験的誤謬の對位法」に収められた、「出版――私の図式、又は若い編集者へ」(636~642頁)の最後の方に出てきます。「出版は二重の断念の上に立った虚数の営為である。それ故、凡ゆる戦術を駆使し凡ゆるエネルギー回路を想定する自由をもつ。そこに出版の政治が逆説的に存在する理由があるが、併し出版は殆ど失敗に終わる小さな革命の連続に於て成り立つ不連続であり、その事の決意の上に漸〔ようよ〕う己れの精神の様式〔スタイル〕と政治性を仮定できるものに過ぎない」(640頁)。

高密度な議論が展開されるこの文章の初出は『大学出版』第12号(1991年9月)とのこと。上記の文章には以下の一文が先行します。「彼らの流儀は、終点の不連続を縫合しようとする広告や宣伝〔パフォーマンス〕の先駆者という栄光を担ったが、紛れもなく彼らは、出版に於る政治というものを誤解し錯認していた」。「彼ら」が誰を指すかについては編者注が付されていますが、その種明かしはここでは止めておきます。

郡さんの引用に出会ってから私は『逆説の對位法』を探し求めましたが、新刊書店にも古書店にも扱いはなく、地元の図書館にも所蔵されていませんでした。その後も諦めきれず定期的にネット検索していたところ、リベラシオン社さんのウェブサイトでPDFが公開されていた「Alternative Systems Study Bulletin」メール版第26巻第1号(2018年6月5日)の中に、以下のような記述があることを発見しました。

『逆説の對位法――八木俊樹全文集』(A5版、1280頁、定価2万円)の入手方法。「下記振込先に、書名を記載の上、2万円を送ってください。振込先(郵便振替) 口座番号:01090-5-67283 口座名:資本論研究会。他金融機関からの振り込み 店名:109 当座:0067283」

そこで、「Alternative Systems Study Bulletin」の編集担当の榎原均さんにメールを差し上げ、在庫の確認をしたところ、まだある、と。その時は手元に軍資金がなかったのですが、ほどなくして某原稿料を使って購入することができました。戦後出版史における重要文献のずっしりとした重みを感じています。一般書店に流通しているものばかりが本じゃない、その事をくっきりと理解させてくれるその威容に圧倒されます。年譜によれば、八木俊樹さんは1943年6月14日に生まれ、1996年7月22日に死去。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。財団法人交詢社、株式会社社会思想社、序章社、さらに、桃山学院大学経済学部非常勤講師、関西人民学院講師、株式会社エスシイアイ取締役などを歴任し、1989年に京都大学学術出版会の事務局統括に。書学書道史学会の理事も務めておられました。

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by urag | 2019-06-19 20:36 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 06月 19日

リレー講義「世界と出版文化」@東京外国語大学

本日6月19日に、東京外国語大学出版会企画のリレー講義「世界と出版文化」にて「岐路に立つ出版界:小出版社から見た長期停滞と変化の現在」と題して発表させていただきました。御清聴ありがとうございました。聴講生の皆さんのレスポンスシートはすべて拝読させていただきました。ご質問を書いていただいた方にはただいま回答を準備中です。遠からずお渡しできるのではないかと思います。またどこかで皆さんとお目に掛かれることを楽しみにしております。

2010年7月07日「出版社のつくりかた――月曜社の10年」
2011年6月15日「人文書出版における編集の役割」
2012年6月06日「人文書出版における編集の役割」
2013年5月15日「知の編集――現代の思想空間をめぐって」
2014年7月09日「編集とは何か」
2015年6月06日「編集とは何か――その一時代の終わりと始まり」
2016年5月25日「編集と独立」
2017年4月19日「人文系零細出版社の理想と現実」
2018年6月20日「越境を企画する:汎編集論的転回と出版界の現在」
2019年6月19日「岐路に立つ出版界:小出版社から見た長期停滞と変化の現在」

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by urag | 2019-06-19 18:18 | ご挨拶 | Trackback | Comments(0)