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2018年 08月 15日 ( 1 )


2018年 08月 15日

注目新刊:『パウリ=ユング往復書簡集1932‐1958』、ほか

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ペルペトゥアの殉教――ローマ帝国に生きた若き女性の死とその記憶』ジョイス・E・ソールズベリ著、後藤篤子監修、田畑賀世子訳、白水社、2018年8月、本体5,200円、4-6判上製344頁、ISBN978-4-560-09648-2
『魔女・怪物・天変地異――近代的精神はどこから生まれたか』黒川正剛著、筑摩選書:筑摩書房、2018年8月、本体1,600円、四六判並製256頁、ISBN978-4-480-01671-3
パウリ=ユング往復書簡集1932‐1958――物理学者と心理学者の対話』ヴォルフガング・パウリ/カール・グスタフ・ユング著、湯浅泰雄/黒木幹夫/渡辺学監修、定方昭夫/高橋豊/越智秀一/太田恵訳、ビイング・ネット・プレス、2018年8月、本体6,300円、A5判上製410頁、ISBN978-4-908055-13-3
『時のかたち――事物の歴史をめぐって』ジョージ・クブラー著、中谷礼仁/田中伸幸訳、加藤哲弘翻訳協力、SD選書:鹿島出版会、2018年8月、本体2,400円、四六判並製220頁、ISBN978-4-306-05270-3
驚くべきCIAの世論操作』ニコラス・スカウ著、伊藤真訳、インターナショナル新書:集英社インターナショナル、2018年8月、本体760円、新書判並製256頁、ISBN978-4-7976-8027-0 C0231

★ソールズベリ『ペルペトゥアの殉教』は『Perpetua's Passion: The Death and Memory of a Young Roman Woman』(Routledge, 1997)の訳書。帯文に曰く「起源203年のカルタゴ。闘技場で野獣刑に処された、キリスト教徒の殉教の記憶を鮮烈に蘇らせる」と。『聖ペルペトゥアと聖フェリキタスの殉教』をひもときつつ、当時21、22歳だった若い母親であった女性の生と死、そして後世への影響について論じられています。処刑の目撃者による記録に基づき、第五章「闘技場」では執行の詳細が綴られますが、ペルペトゥアの気高い振る舞いに畏怖を覚えます。なお『聖ペルペトゥアと聖フェリキタスの殉教』は本書において細かく引用されていますが、『キリスト教教父著作集(22)殉教者行伝』(教文館、1990年、オンデマンド版あり)でも読むことができます。

★『魔女・怪物・天変地異』は、魔女狩りの激化と驚異(天変地異や怪物)の増殖を同時代の現象として分析し、新世界や新奇な物事への好奇心の高まりが近代的学知の形成に寄与するさまを論じたもの。「近世以前の驚異と好奇心」「大航海時代の幕開けと驚異の増殖」「氾濫する宗教改革時代の怪物と驚異」「「魔女狩りと好奇心」、そして近代的精神の成立」の四章立て。分類コードは「22」で外国歴史ですが、文化史としてだけでなく思想史としてもたいへん興味深く読めると思います。

★『パウリ=ユング往復書簡集1932‐1958』は、二人の著書『自然現象と心の構造――非因果的連関の原理』(河合隼雄訳、海鳴社、1976年)でユングが論じている共時性(シンクロニシティ)をめぐる重要書の待望の邦訳。「この書簡集は、パウリが物理学者として共時性の考え方を強く支持していたことを明らかにしている」と湯浅泰雄さんは解説で指摘されています(333頁:生前に執筆されたもの)。底本は1992年にシュプリンガー・フェアラークから刊行されたC・A・マイヤー編のドイツ語原版ですが、日本語版では新たな校訂作業を行ない、独自に注を付したとのことです。関連書として湯浅さんによる『ユング超心理学書簡』(白亜書房、1999年)があります。なお、ユングの新刊としてはまもなく『心理療法の実践』(横山博監訳、大塚紳一郎訳、みすず書房)が発売されます。

★クブラー『時のかたち』は、『The Shape of Time: Remarks on the History of Things』(Yale University Press, 1962)の全訳。「人のつくったすべての事物を芸術として扱うことで出現する単線的でも連続的でもなく、持続する様々な時のかたち。〔・・・〕革命的書物、宿願の初邦訳」と述べる岡﨑乾二郎さんによる推薦文全文と主要目次は版元さんのサイトに掲出されています。「本書の目的は、シリーズやシークエンスのなかで持続する形態学的問題に注意を向けることにある。これらの問題は意味やイメージとは独立して生じる」(7頁)。「あらゆる事物はそれぞれに異なった系統年代に起因する特徴を持つだけでなく、事物の置かれた時代がもたらす特徴や外観としてのまとまりを持った複合体となる」(193頁)。「すべての事物は時とともに変化し、場所によっても変化する。私たちには、様式概念が想定するような不変の特質にもとづいて、どこかに事物をとどめおくことはできない。〔・・・〕事物における持続とその位置づけを視野に入れると、私たちは、生きた歴史のなかに、移行する関係、過ぎゆく瞬間、変わりゆく場所を見出すことができる」(247~248頁)。「出来事はすべて独自なのだから分類は不可能だとするような非現実的な考え方をとらず、出来事にはその分類を可能とする原理があると考えれば、そこで分類された出来事は、疎密に変化する秩序を持った時間の一部として群生していることがわかる」(189頁)。SD選書なので建築論の書棚に置かれると思うのですが、本書は建築論や芸術論の枠組みを超えており、哲学書のような印象があります。

★スカウ『驚くべきCIAの世論操作』は、『Spooked – how the CIA manipulates the media and hoodwinks Hollywood』(Skyhouse, 2016)の訳書。CIAが政府当局の機密情報を隠したり、印象操作のために、海外メディアや大手メディア、そしてハリウッドなどと通じてせっせと活動していることが暴かれています。従軍記者が国防総省の宣伝ボランティアに成り下がったり、悪名高いグアンタナモ収容所での虐待事件の隠蔽工作やそれを暴いたジャーナリストがマスコミから抹殺された次第なども書かれています。まもなく集英社新書で『スノーデン 監視大国 日本を語る』が発売となるので、併せて読むとたいへん涼しくなりそうです。

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by urag | 2018-08-15 19:55 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)