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2018年 05月 13日 ( 1 )


2018年 05月 13日

注目文庫新刊:2018年3月下旬~5月上旬

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鶴見俊輔全漫画論1 漫画の読者として』松田哲夫編、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,700円、656頁、ISBN978-4-480-09855-9
鶴見俊輔全漫画論2 日本の漫画の指さすもの』松田哲夫編、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,600円、624頁、ISBN978-4-480-09856-6
増補 革命的な、あまりに革命的な――「1968年の革命」史論』絓秀実著、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,500円、560頁、ISBN978-4-480-09864-1
初学者のための 中国古典文献入門』坂出祥伸著、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,200円、320頁、ISBN978-4-480-09869-6
荒地/文化の定義のための覚書』T・S・エリオット著、深瀬基寛訳、中公文庫、2018年4月、本体1,000円、336頁、ISBN978-4-12-206578-9

★ちくま学芸文庫の5月新刊から4点。『鶴見俊輔全漫画論』は文庫オリジナル編集。解説者の福住廉さんによれば本書は鶴見さんの漫画論を網羅的に編纂した選集。「幼少の頃から漫画の熱心な読者だった鶴見は、戦後から晩年まで、同時代の漫画を盛んに論じた。〔…〕鶴見の人生には、つねに漫画が同伴しており、彼は漫画とともに思想を練り上げていたと言っても過言ではあるまい。/しかし鶴見俊輔の漫画論は、知の巨人としての知名度とは裏腹に、じつのところ正当に評価されてこなかったのではないか」(第1分冊、解説「反映論の彼方へ」645頁)。

★絓秀実『増補 革命的な、あまりに革命的な』は、2003年に作品社より刊行された親本を増補・改訂したもの。「文庫版あとがき」によれば「文庫化に際しては、やや長めの付論〔「戦後‐天皇‐民主主義をめぐる闘争――八・一五革命vs.一九六八年革命」(453~484頁)〕を書き下ろした。それは、現在の諸状勢にかんがみて六八年を再発見し、併せて、改めて六八年の視点から現在を論じた試みである」(517頁)と。解説「戦後民主主義の「革命的な」批判のために」は王寺賢太さんによるもの。同書について「2003年の刊行後、ただちに日本における「六八年」の運動史と理論・思想史に関する必読文献となった書物である。〔…〕このちくま学芸文庫版は、絓自身の最近の関心に基づく付論とともに、刊行後15年を経た今も古びることのない本書の今日的射程をよく伝える一冊となっている」(520頁)と評価しておられます。

★坂出祥伸『初学者のための 中国古典文献入門』は、2008年に集広舎(福岡)から刊行された『中国古典を読む はじめの一歩』の改題文庫化。「文庫版あとがき」によれば、誤植、脱字、錯字などの校正漏れを正し、「主として書名・人名などのむつかしい感じには読み仮名(ルビ)を付して、より多くの方々に読みやすいように心がけた」とのことです。

★T・S・エリオット『荒地/文化の定義のための覚書』は巻末の編集付記によれば、中央公論社版『エリオット全集』(改訂版、1971年)を底本として語句時に編集したもの。長編詩の代表作「荒地」(1922年)と、最晩年の評論「文化の定義のための覚書」(1948年)に、訳者の深瀬基寛さんによる講義録「エリオットの人と思想」(筑摩書房版『深瀬基寛集』第1巻、1967年所収)、さらに英文学者の阿部公彦さんによる解説「ほんとうのエリオットはどこに」が添えられています。エリオットは「文化の定義のための覚書」の第五章「文化と政治についての一つの覚書」でこう述べています。「山と積まれた印刷文字のなかで、最も深遠で最も独創的な作品が一般大衆の眼に触れ、彼等の注意をひく機会のないことはもちろん、そういうものを玩味するだけの資格をもつ相当多数の読者の注意を捉えることすらも稀であります。一時の流行もしくは時代の単なる情緒におもねるごとき思想の影響するところは遥かに大きいのであります」(204頁)。エリオットの直言は今なお示唆に富んでいると感じます。

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★ちょっとした事情によりコメントを付すのを中断せざるをえないのですが、ここ三ヶ月ほどでほかに注目してきた新刊には以下のものがありました。

ヨハネの黙示録』小河陽訳、講談社学術文庫、2018年5月、本体920円、240頁、ISBN978-4-06-292496-2
新校訂 全訳注 葉隠(中)』菅野覚明/栗原剛/木澤景/菅原令子訳、講談社学術文庫、2018年5月、本体2,450円、872頁、ISBN978-4-06-511642-5
宇治拾遺物語(下)全訳注』高橋貢/増古和子著、講談社学術文庫、2018年4月、本体2,500円、880頁、ISBN978-4-06-292492-4
エスの本――ある女友達への精神分析の手紙』ゲオルク・グロデック訳、岸田秀/山下公子訳、講談社学術文庫、2018年4月、本体1,580円、464頁、ISBN978-4-06-292495-5
哲学の練習問題』河本英夫著、講談社学術文庫、2018年4月、本体1,050円、288頁、ISBN978-4-06-292480-1
内省と遡行』柄谷行人著、講談社文芸文庫、2018年4月、本体1,700円、336頁、ISBN978-4-06-290374-5
帳簿の世界史』ジェイコブ・ソール著、村井章子訳、文春文庫、2018年4月、本体880円、414頁、ISBN978-4-16-791060-0
孤独な帝国 日本の一九二〇年代――ポール・クローデル外交書簡一九二一-二七』ポール・クローデル著、奈良道子訳、草思社文庫、2018年4月、本体1,500円、592頁、ISBN978-4-7942-2330-2
ボルヘス怪奇譚集』ホルヘ・ルイス・ボルヘス/アドルフォ・ビオイ=カサーレス編、柳瀬尚紀訳、河出文庫、2018年4月、本体830円、188頁、ISBN978-4-309-46469-5
ボートの三人男――もちろん犬も』ジェローム・K・ジェローム著、小山太一訳、光文社古典新訳文庫、2018年4月、本体880円、398頁、ISBN978-4-334-75374-0
ヨゼフ・チャペック エッセイ集』飯島周編訳、平凡社ライブラリー、2018年4月、本体1,200円、280頁、ISBN978-4-582-76866-4
ウンガレッティ全詩集』河島英昭訳、岩波文庫、2018年4月、本体1,260円、592頁、ISBN978-4-00-377006-1
文選 詩篇(二)』川合康三/富永一登/釜谷武志/和田英信/浅見洋二/緑川英樹訳注、岩波文庫、2018年4月、本体1,020円、416頁、ISBN978-4-00-320452-8
江戸川乱歩作品集 Ⅲ パノラマ島奇談・偉大なる夢 他』浜田雄介編、岩波文庫、2018年3月、本体1,000円、496頁、ISBN978-4-00-311816-0
全品現代語訳 法華経』大角修訳・解説、角川ソフィア文庫、2018年3月、本体1,200円、480頁、ISBN978-4-04-400391-3

★『内省と遡行』の「文芸文庫版へのあとがき」で柄谷さんは以下のような趣旨のことを述べておられます。2015年に行った講演「移動と批評――トランスクリティーク」(『思想的地震』ちくま学芸文庫所収)の最後で「30年前に未刊に終った「言語・数・貨幣」をこれから完成することも考えています」と話したが、私が近年取り組んでいる「力と交換様式」という論文がそういうものなのかもしれないと思い至った、と。「今考えていることも、かつて考えたことと似ています。「霊的な力」を口にするのだから。〔…〕このような問題が私において再来するということは、そこに私個人の意図や関心を越えたものがあるからだと感じています」(332~333頁)。

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by urag | 2018-05-13 18:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)