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2010年 01月 10日

中山元訳『純粋理性批判』全7巻、光文社古典新訳文庫より刊行開始

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弊社既刊書のブランショ『書物の不在』の訳者である中山元さんの翻訳で、光文社古典新訳文庫よりカントの『純粋理性批判』の刊行が今月(10年1月)開始されました。全7巻で、今回は第1巻の刊行です。帯文にはこうあります、「カントの主著であり、西洋哲学における最高かつ最重要の哲学書。難解とされる多くの用語を、ごく一般的な用語に置き換えて分かりやすさを徹底した画期的な新訳。詳細な解説つき」。全7巻というのは、同書の翻訳の文庫版では最長になります。篠田英雄訳岩波文庫版や原佑訳平凡社ライブラリー版が全3巻、天野貞祐訳講談社学術文庫版(品切)が全4巻です。

第1巻目次末尾および訳者あとがきで明かされている全7巻の内訳を記載通りに転記すると、以下の通り。亀甲括弧〔 〕内は私の補足なので、「門」という天野方式の単位を中山訳が採用するかどうかは現時点ではわかりません。

第1巻:序論、第1部「超越論的な原理論」第1部門「超越論的な感性論」、序文。(順番は訳書の体裁通り)
第2巻:〔同第2部門「超越論的な論理学」第1門〕「超越論的な分析論」第1篇「概念の分析論」。
第3巻:〔同「超越論的な分析論」〕第2篇「原則の分析論」。
第4巻:〔同第2部門第2門〕「超越論的な弁証論」第2篇第1章「純粋理性の誤謬推理」まで。
第5巻:〔同「超越論的な弁証論」〕第2章「純粋理性の二律背反」。
第6巻:〔同「超越論的な弁証論」〕第3章「純粋理性の理想」。
第7巻:〔第2部〕「超越論的な方法論」。

競合するのはたいへんですから、今後「純理」は既訳の文庫化や新訳文庫が難しいのかもしれませんけれども、たとえば現在品切の河出書房新社の高峯一愚訳は定評のある翻訳なので、文庫化されたら素晴らしいでしょうね。叶わぬ願いかもしれませんが、どんなに分厚くなってもいいので、全一巻にしていただけると、読者には便利ですよね。また、風聞では、某社で新訳単行本が進行中とのことです。

ちなみに昨年11月以降、注目新刊についてブログで取り上げることが出来ていませんでしたが、この機会に11月以降に刊行された文庫のうち、特に言及しておきたい新刊を掲げると、『プロティノス「美について」』(斎藤忍随+左近司祥子訳、講談社学術文庫、09年11月)と、ジャック・アタリ『1492――西洋文明の世界支配』(斎藤広信訳、ちくま学芸文庫、09年12月)は挙げておきたい気がします。

前者はプロティノスの文庫としては、田中美知太郎訳『善なるもの一なるもの』(岩波文庫、1961年)以来、実に約半世紀ぶりです。巻末に収録された小島和男さん(学習院大学准教授)の解説後半では、左近司ゼミの様子がヴィヴィッドに描かれていて読者の微笑を誘うでしょう。後者は一昨年以来、『21世紀の歴史』(作品社)がロングセラーを続けているアタリの初の文庫化です。親本は94年に刊行された『歴史の破壊 未来の略奪』(朝日新聞社)。この勢いでほかのアタリの品切本が文庫がされるといいですね。

新刊ではありませんが、中公文庫の現代語訳「大乗仏典」シリーズの第7巻『維摩経/首楞厳三昧経』が11月に重版されましたね。実に喜ばしいです。しばらく品切になっていたので、このまま欠本が増えていきやがてスリーズが自然消滅となってしまうのではないかと危惧していましたが、類書が少ないのですからぜひ重版し続けていってほしいです。欲を言えば現状の本体価格1714円が、大乗の名にふさわしくマイナス1000円で714円くらいになると一般読者がより買いやすくなるのですけれども、まあそれは不可能なのでしょうね。

by urag | 2010-01-10 19:59 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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