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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2009年 10月 12日

注目新刊:09年9月~10月発売分・芸術書

巡礼としての絵画――メディチ宮のマギ礼拝堂とゴッツォリの語りの技法
前川久美子:著
工作舎 09年9月 本体4,800円 ISBN978-4-87502-421-7
■帯文より:コジモ・デ・メディチが求めた救済の図像プログラム。
■カバーより:フィレンツェ、パラッツォ・メディチ礼拝堂を飾る絢爛豪華な壁画。注文主コジモあらメディチ家の人々が描かれたことで知られる「マギの旅行」、そして「羊飼い」「天使たち」、祭壇画「幼児礼拝」。そこには「代替巡礼」の図像プログラムが意図されていた。自らを画中に描いた画家ベノッツォ・ゴッツォリは、観る者に指示を与え、天国へと導く。生前に墓を贈られるほど人気を博したルネサンス画家の、その「語りの技法」は師フラ・アンジェリコを受け継いだものなのか。ベノッツォの「語り」を丹念に追う。

イメージの歴史――ザクスル講義選集
フリッツ・ザクスル(1890-1948):著 鯨井秀伸:編訳
ブリュッケ:発行 星雲社:発売 09年9月 本体4,600円 ISBN978-4-434-13641-2
■帯文より:イメージの生成と変容をめぐるヴァールブルク学はの泰斗フリッツ・ザクスルの講義集。
●目次はbk1に詳細あり。ザクスルの日本語訳は単著では、講演集『シンボルの遺産』(松枝到+栗野康和:訳、せりか書房、80年10月刊/松枝到:訳、ちくま学芸文庫、05年2月)のみ。共著には以下があります。『土星とメランコリー――自然哲学、宗教、芸術の歴史における研究』(レイモンド・クリバンスキー+フリッツ・ザクスル+アーウィン・パノフスキー:著、田中英道:監訳、榎本武文+ほか:訳、晶文社、91年4月)、『英国美術と地中海世界』(フリッツ・ザクスル+ルドルフ・ウィトカウアー:著、鯨井秀伸:訳、勉誠出版、05年4月)。

セザンヌのエチュード
ジャン=クロード・レーベンシュテイン(1942-):著 浅野春男(1950-):訳
三元社 09年9月 本体3,000円 ISBN978-4-88303-253-2
■帯文より:究極の不可解を生きた画家に肉迫する5つのエッセイ。鋭敏な眼力と精緻きわまる文献学の総合で他の追随を許さない美術史家レーベンシュテイン、待望の初邦訳。
●目次はbk1に詳細あり。原書は"Études cézanniennes"(Flammarion, 2006)。先月来日公演した際の案内によれば、三元社からはさらに三浦篤氏の監訳により、"Annexes, de l'œuvres d'art"(La Part de l'œil, 1999)の日本語訳が刊行される予定とのこと。

※『巡礼』は先月発売、あとの2冊は10月発売です。芸術書に分類しましたが、これらはすぐれた人文書でもあります。また、今春発売された既刊書になりますが、展覧会の開催と並行する以下の書目をお勧めします。

旅する写真
東京都写真美術館:編
旅行読売出版社 09年5月 本体1,600円 ISBN978-4-89752-287-6
●恵比寿にある東京都写真美術館の平成21年度収蔵展「旅」の公式ガイドブック。「東方へ」「異郷へ」「異邦へ」の三部構成。弊社でもお世話になっている森山大道さんや川田喜久治さんの作品も収められているほか、印象的な素晴らしい写真ばかりです。個人的には柳沢信さんの作品に釘付け。
●写真美術館では現在、本書第3部「異邦へ」が11月23日まで展示中です。11月15日(日)14:00~16:00には、川田喜久治さんの講演会も行われます。また、同22日(日)同時間帯には、港千尋さんの講演会。さらに、今月24日(土)からは、私が敬愛してやまないセバンスチャン・サルガドの「アフリカ」展が2F展示室でスタートします。

The Unavowable Community
Institut Ramon Llull / ACTAR, 2009, ISBN978-84-96954-90-8
●書名はブランショの『明かしえぬ共同体』から採られています。ラモン・リュイ(ライムンドゥス・ルルス)研究所がプロデュースする「明かしえぬ共同体」プロジェクトのために製作されたもので、第53回ヴェネチア・ビエンナーレ(09年6月7日~11月22日)と並行して開催される同名プロジェクトの展示を記念してつくったようです。
●内容はまず、キュレーターのヴァレンティン・ロマによる巻頭エッセイ「明かしえぬ共同体」があり、続く「共同体について書く」と題されたコーナーでは、最初にモーリス・ブランショの『政治論集』の一部が収録されています。弊社刊『ブランショ政治論集』で言うと、西山雄二さんが翻訳された第二部「1968年」のうち、「断絶を肯定すること」から「〔マルクスを読む〕」まで(159-206頁)にあたります。続いてジョルジョ・アガンベンの『目的なき手段』から「主権警察」と「政治についての覚え書き」が収録されています。高桑和巳さんによる訳書『人権の彼方に』(以文社、00年)で言うと、109-124頁です。次に、フィリップ・ラクー=ラバルトとジャン=リュック・ナンシーの論考「政治的なものの〈退-引〉」、ラース・アイアー「われわれの責任――ブランショのコミュニズム」、ペテル・パル・ペルバルト「共同体をもたない者の共同体」、マリナ・ガルセス「共有された世界への探究」が掲載されています。ここまでが前半。後半は展覧会の図版を含む文書記録ですが、細かいので省略御免。

by urag | 2009-10-12 19:09 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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