2009年 10月 06日
来週金曜日16日、いよいよエーコの『醜の歴史』が東洋書林より発売になります。幸運にも発売前に中身を拝見しましたが、人間の想像力の深淵を垣間見させる奇想の博物誌になっています。醜さと言っても実に多様です。不気味なもの、恐ろしいもの、不格好なもの、衰えていくもの、病んだもの、暗いもの、攻撃的なもの、残酷なもの、不安にさせるもの、不可解なもの、吐き気を催させるもの、痛々しいもの、ぎょっとさせるもの・・・表現しつくせない「何ものか」のオンパレードは、西洋古典から現代思想までの膨大な引用と、オールカラーの図版の洪水と、エーコの的確で簡潔な解説によって構成されています。クリエイター御用達のネタ本になることでしょう。おそらく、『美の歴史』よりかこちらのほうが好き、という方がいらっしゃるのは間違いないと思われます。私自身はこの本を眺めたあとはどうしても『美の歴史』で口直しをしたい方です。そんなわけで、二冊併せての購読をお勧めします。なお、東洋書林の営業マンOさんからお勧めいただいた関連書に、カール・ローゼンクランツ『醜の美学』(鈴木芳子訳、未知谷、07年2月)があります。ローゼンクランツ(1805‐1879)は『ヘーゲル伝』(中埜肇訳、みすず書房、83年7月)で知られている19世紀ドイツの哲学者にして美学者です。 ![]() *** 美を求め続けた人々の心に、なにゆえ醜が宿ったか?27の言語に翻訳され、全世界で50万部以上を売り上げた『美の歴史』。そして今秋いよいよ、イタリアの知の巨人が贈る待望の第2弾『醜(しゅう)の歴史』が刊行! 醜の歴史 原題:Storia della Bruttezza ウンベルト・エーコ編著/川野美也子訳 B5変型版/450頁フルカラー/8,400円/2009年/ISBN 978-4-88721-769-0 C0022 あらゆる「醜さのイメージ」を解剖! 美の対極に心惹かれるのはなぜか? 絵画や彫刻、映画、文学など諸芸術における暗黒、怪奇、魔物、逸脱、異形といった、“恐ろしくぞっとする”ものを数百点に及ぶ写真・図版を駆使し徹底的に探求! ●醜の歴史 目次 【序 論】 【第1章】古典世界の醜⇒①ギリシア世界は美のよって支配されていたのか?/②ギリシア世界と恐怖 【第2章】受難、死、殉教⇒①宇宙の汎美的ヴィジョン/②キリストの苦難/③殉教者、隠者、悔悟者 【第3章】黙示録、地獄、悪魔⇒①恐怖の世界/②地獄/③悪魔のメタモルフォセス 【第4章】モンスターとポルテント⇒①プロディジとモンスター/②計りがたいものの美学/③モンスターの道徳化/④ミラビリア/⑤モンスターの運命 【第5章】醜いもの、滑稽なもの、猥褻なもの⇒①プリアポス/②農夫を主題とした風刺文学と謝肉祭/③ルネサンスと解放/④カリカチュア 【第6章】古代からバロック時代までの女性の醜さ⇒①反女性の伝統/②マニエリスムとバロック 【第7章】近代世界の悪魔⇒①叛逆天使サタンから哀れなメフィストフェレスへ/②敵の悪魔化 【第8章】魔女信仰、悪魔崇拝、サディズム⇒①魔女/②悪魔崇拝、サディズム、残酷趣味 【第9章】フィジカ・クリオーサ(肉体への好奇心)⇒①月の出産と死体の開腹/②人相学 【第10章】ロマン主義と醜の解放⇒①醜の哲学/②醜い者と呪われた者/③醜い者と不幸な者/④不幸な者と病んだ者 【第11章】不気味なもの⇒①不気味なもの 【第12章】鉄の塔と象牙の塔⇒①産業社会の醜さ/②デカダンス主義と醜の勝利 【第13章】アヴァンギャルドと醜の勝利 【第14章】他者の醜、キッチュ、キャンプ⇒①他者の醜/②キッチュ/③キャンプ 【第15章】現代の醜 基本文献 翻訳者による引用参考文献出典一覧 著者名その他の典拠索引 美術家名索引 *** 美の歴史 原題:Storia della Bellezza ウンベルト・エーコ編著/ジローラモ・デ・ミケーレ著/植松靖夫監訳/川野美也子訳 B5変型版/440頁フルカラー/8,400円/2005年/ISBN 978-4-88721-704-1 C0022 絶対かつ完璧な美は存在するのか?絵画・彫刻・音楽・文学・哲学・数学・天文学・神学・現代アートまでを博捜し、古代ギリシア・ローマ時代から現代にいたる美の変遷を考察。700を越える写真・図版を使用した豪華な1冊! ●美の歴史 目次 【序 論】 【比較表】裸体のヴィーナス/裸体のアドニス/着衣のヴィーナス/着衣のアドニス/ヴィーナスの顔と髪型/アドニスの顔と髪型/聖母マリア像の変遷/イエス・キリストの変遷/君主像の変遷/女性君主像の変遷/プロポーションの変遷 【第1章】古代ギリシアの理想美⇒①ムーサイの合唱/②芸術家の美の理念/③哲学者たちの美 【第2章】アポロ風の美とディオニュソス風の美⇒①デルフォイの神々/②ギリシア人からニーチェへ 【第3章】均衡と調和の美⇒①数と音楽/②建築の均衡/③人体/④宇宙と自然/⑤その他の芸術/⑥目的との一致/⑦歴史上の比例 【第4章】中世の光と色彩⇒①光と色彩/②光としての神/③光、富、貧困/④装飾/⑤詩と神秘主義における色彩/⑥日常生活の色彩/⑦色のシンボリズム/⑧神学者と哲学者 【第5章】怪物の美⇒①醜いものの見事な描写/②伝説上の生き物と「驚異」/③普遍的象徴体系における醜さ/④美に必要不可欠な醜/⑤自然の好奇なものとしての醜さ 【第6章】牧場の少女から天使のような貴婦人へ⇒①聖愛と俗愛/②貴婦人とトルバドゥール/③貴婦人と騎士/④詩人とかなわぬ愛 【第7章】15・16世紀の魔法の美⇒①独創と自然の模倣の間の美/②似姿/③超感覚的な美/④ヴィーナスたち 【第8章】貴婦人と英雄⇒①貴婦人たちは/②英雄たち/③実用的な美/④官能的な美 【第9章】優美から不安の美へ⇒①主観的な複数の美へ/②マニエリスム/③知の危機/④メランコリア/⑤明察、機知、綺想、/⑥絶対への緊張 【第10章】理性と美⇒①美の弁証法/②厳格さと自由解放/③宮殿と庭園/④古典主義と新古典主義/⑤英雄、人体、廃墟/⑥新たな思想、新たな主題/⑦女性と情熱/⑧美の自由な戯れ/⑨残酷で陰鬱な美 【第11章】崇高⇒①美の新しい観念/②崇高は偉大な魂の反響である/③自然の崇高さ/④廃墟の詩学/⑤文学のおける「ゴシック」/⑥エドマンド・バーグ/⑦カントの崇高 【第12章】ロマン主義の美⇒①ロマンティックな美/②ロマンティックな美とロマンツェスコの美/③「名状しがたいもの」のあいまいな美/④ロマン主義と反逆/⑤真実・神話・アイロニー/⑥陰鬱・グロテスク・メランコリック/⑦オペラとロマン主義 【第13章】芸術至上主義⇒①唯美主義/②ダンディズム/③肉体と死と悪魔/④芸術のための芸術/⑤さかしま/⑥象徴主義/⑦美の神秘主義/⑧物のエクスタシー/⑨印象 【第14章】新しい物体⇒①ヴィクトリア朝の堅固な美/②鉄とガラス:新しい美/③アール・ヌーヴォーからアール・デコへ/④有機的な美/⑤日用品:批判、商品化、大量生産 【第15章】機械の美⇒①機械は「美しい」?/②中世の機械/③15世紀からバロック時代へ/④18・19世紀/⑤20世紀 【第16章】抽象的な形から素材の深みへ⇒①「石の中に彫像を求める」/②現在の素材再評価/③見出されたオブジェ(レディメード)/④素材の複製から産業素材へ、素材の深みへ 【第17章】メディアの美⇒①挑発の美か、消費の美か?/②アヴァンギャルド(前衛)、あるいは挑発の美/③消費の美 引用参考文献出典一覧 美術家名索引
by urag
| 2009-10-06 23:02
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
ブログジャンル
検索
リンク
カテゴリ
最新の記事
画像一覧
記事ランキング
以前の記事
2023年 12月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2004年 06月 2004年 05月 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||