心情の敵対者としての精神 第一巻
ルートヴィッヒ・クラーゲス:著 千谷七郎・平澤伸一・吉増克實:訳
うぶすな書院 08年7月 6,825円 A5判上製カバー装732頁 ISBN978-4-900470-21-7
■「序論」より:肉体と心情とは生命細胞の不可分で共属的に連関する〈双極〉であり、この両極のあいだに〈外部から〉精神が楔のように割りこんで、肉体と心情とのあいだを二つに引き裂き、肉体から心情を奪い心情から肉体を奪って、結局は精神の手の届くかぎりのすべての生命を死滅させようとしている・・・。いまここでその細部にわたって基礎づけして、とりわけその結果現象を探求したいと思っている・・・。
★刊行されているのにようやく気がつきました。ジュンク堂書店池袋店人文書売場の新刊棚に置かれていなかったら、もっと気づくのが遅れたことでしょう。本書は、千谷さん(1912-1992)の遺稿をもとに、引き継いだお二人(ご両名とも心療クリニックの院長さん)が再度翻訳されたものです。全三巻四分冊。トータルで2000頁になる大著。
★ルートヴィッヒ・クラーゲス(Ludwig Klages, 1872-1956)既訳書
1943年『意識と生命』小立稔訳 畝傍書房
1957年『性格学の基礎』千谷七郎・詫摩武元訳 岩波書店
1963年『意識の本質について』千谷七郎訳 勁草書房
1964年『表現学の基礎理論』千谷七郎訳 勁草書房
1971年『リズムの本質』杉浦実訳 みすず書房
1972年『人間学みちしるべ』千谷七郎編訳 勁草書房
1986年『人間と大地』千谷七郎ほか訳 うぶすな書院
1988年『性格学の基礎づけのために』千谷七郎・柴田収一編訳 うぶすな書院
1991年『性格学の基礎』赤田豊治訳 うぶすな書院
2000年『宇宙生成的エロース』田島正行訳 うぶすな書院
★うぶすな書院と言えば、三木成夫、クラーゲス、ナイチンゲールなどの本を出している個性的な出版社として有名ですが、今回の新刊の裏広告に、解剖学の古典であるヴェサリウスの『ファブリカ』第I巻第II巻が、島崎三郎訳の一巻本としてA3判上製函入365頁、本体価格35,000円と出ていて、まったく気づいていなかったことに呆然としました。いつ出たのかと思い、調べてみると、昨秋(07年9月)に刊行されていたのですね。高額書なので簡単には手が出ませんが、ぜひ購読したいものです。