2008年 07月 27日
◎今週の注目新刊 ダルフールの通訳――ジェノサイドの目撃者 ダウド・ハリ:著 山内あゆ子:訳 ランダムハウス講談社 08年7月 1,890円 46判270頁 ISBN978-4-270-00388-6 ■版元紹介文より:アフリカ北部スーダン――250万人以上が家を失い、30万人以上が殺害され、いまだ解決の目処さえたたぬ民族浄化問題「ダルフール紛争」。なぜこんなことが起きたのか?故郷ダルフールとそこに暮らす人々を愛するがゆえに、辛く苦しいその物語を世界に伝えることを、その身に課した男の心揺さぶる真実の記録。 虚構の「近代」――科学人類学は警告する ブルーノ・ラトゥール(1947-):著 川村久美子:訳 新評論 08年8月 3,360円 A5判324頁 ISBN978-4-7948-0759-5 ■帯文+版元紹介文より:かつて私たちが近代人であったことは一度もない。われわれは自然科学と社会科学の「分離」を近代の特徴と見なしてきた。しかし〈世界〉は両者の「混合」でしか成立しえない現実を歩んできた。近代人の自己認識の虚構性とは。先鋭的分析に基づく危機の処方箋。 ★ブルーノ・ラトゥール既訳書:『科学論の実在――パンドラの希望』(川崎勝+平川秀幸:訳、産業図書、07年4月)、『科学が作られているとき――人類学的考察』(川崎勝+高田紀代志:訳、産業図書、99年3月)、『細菌と戦うパストゥール』岸田るり子+和田美智子:訳、偕成社文庫、88年11月)。 コペルニクスの仕掛人――中世を終わらせた男 デニス・ダニエルソン:著 田中靖夫:訳 東洋書林 08年7月 3,360円 46判333頁 ISBN978-4-88721-748-5 ■帯文より:地球は太陽のまわりを回転している――。今では常識とされる太陽系の構造を理論立てたコペルニクスの天球回転論は、後に世界を大きく揺さぶることになる。しかし25歳の若き数学者レティクス(1514-1574)と、コペルニクスが出会わなければ科学革命は起きえなかったかもしれない。では、レティクスとは、いかなる人物だったのか? これまで謎とされてきた影の仕掛人」の正体を明らかにする。初の本格評伝。 ★魅力的な語り口で好感度が高く、面白く読めます。ニコラウス・コペルニクス(1473-1543)の地動説の書「天球回転論」には二つの訳書があります。『コペルニクス・天球回転論』(高橋憲一訳、みすず書房、93年12月)、『天体の回転について』(矢島祐利訳、岩波文庫、53年5月)。ちなみにここ数年で翻訳出版された研究書には以下のものがあります。『誰も読まなかったコペルニクス――科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険』(オーウェン・ギンガリッチ著、柴田裕之訳、早川書房、05年9月)、『コペルニクス的宇宙の生成(1)』(ハンス・ブルーメンベルク著、後藤嘉也ほか訳、法政大学出版局、02年12月)。 *** ◎以前、「近刊チェック《知の近未来》」で取り上げたことがある書目で、発売になったもの。 『フロイトのイタリア――旅・芸術・精神分析』岡田温司:著 平凡社 3,990円 『歴史の交差点に立って』孫歌:著 日本経済評論社 2,100円 『妖精学大全』井村君江:著 東京書籍 8,190円 『書店の未来をデザインする』本の学校:編 唯学書房 2,310円 『イーハトーブ温泉学』岡村民夫:著 みすず書房 3,360円 ※再度強調しておきますが、岡田さんのこのところの新刊刊行ペースがすごいです。6月には『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ)と『肖像のエニグマ――新たなイメージ論に向けて』(岩波書店)。 ◎実に粒揃いな青土社の新刊と近刊。9月近刊には★印を付けています。 『オリエンタル・ジプシー――音・踊り・ざわめき』関口義人:著 2,730円 『新しい貧困――労働、消費主義、ニュープア』ジグムント・バウマン:著 伊藤茂:訳 2,520円 『壁画洞窟の音――旧石器時代・音楽の源流をゆく 新発見の旅』土取利行:著 2,310円 『後期近代の眩暈――排除から過剰包摂へ』ジョック・ヤング:著 木下ちがやほか:訳 2,940円★ 『要塞都市LA〔増補新版〕』マイク・デイヴィス:著 村山敏勝+日比野啓:訳 3,570円★ ※ジョック・ヤング(1942-)の訳書は、昨年に洛北出版から刊行され大きな反響を呼んだ『排除型社会――後期近代における犯罪・雇用・差異』(青木秀男+伊藤泰郎+岸政彦+村澤真保呂訳)に続く第二弾。今度の近刊は昨年刊行された"The Vertigo of Late Modernity"の翻訳だろうと思います。 ◎その他、気になった単行本。 『ガブリシ』スズキ・コージ:作 ブッキング 1,680円 『誰の上にも青空はある』HABU:写真・文 ヴィレッジブックス 1,260円 『定本和の色事典』内田広由紀:著 視覚デザイン研究所 3,360円 『鉱物図鑑――美しい石のサイエンス』青木正博:著 誠文堂新光社 2,940円 『人形見』伽羅:著 たかはし・じゅんいち:写真 木耳社 08年7月 5,250円 『〔完全版〕水木しげる妖怪原画集――妖鬼化(5)中部-2』Softgarage 08年7月 3,000円 『神学大全 第33/34冊 第3部 第31問題-第37問題』トマス・アクィナス:著 稲垣良典:訳 創文社 5,250円 『建築家の果たす役割』レンゾ・ピアノ+安藤忠雄:著 NHK出版 998円 『遠きにありてつくるもの――日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』細川周平:著 みすず書房 5,460円 『心的現象論本論』吉本隆明:著 文化科学高等研究院出版局:発行 星雲社:発売 8,400円 『現代フロイト読本(2)』西園昌久:監修 北山修:編集代表 みすず書房 3,780円 『細胞の意思――〈自発性の源〉を見つめる』団まりな(1940-):著 NHKブックス 1,019円 『日本猟奇史 大正・昭和篇』富岡直方:著 国書刊行会 2,415円 『アメリカの雑誌ビジネス』 桑名淳二:著 風濤社 3,150円 『環 vol.34 2008Summer 特集:多民族国家中国の試練』藤原書店 3,360円 『季刊d/SIGN no.16 特集:廃墟と建築』中谷礼仁:特集監修 太田出版 1,785円 ※アクィナス『神学大全』の完訳がいつになるのか気になります。1960年5月から刊行され、全45巻のうち、35点は刊行されました。一年で三冊出た年もありますが、数年に一冊しか出ない時もありました。一年に一冊ないし二冊出せたとして、あと早くて5年から10年はかかることになります。 ※『現代フロイト読本(2)』の内容についての版元の説明は以下の通り。「ジークムント・フロイト(1856-1939)が残した二百余におよぶ著作のなかから重要著作を精選し、論文/著作成立の背景、その後の理論・概念の発展をフロイトの個人史・精神分析史との関わりから解説し、精神分析体系のダイナミズムに迫る。第2巻は『精神分析入門』(1916-17)から『防衛過程における自我の分裂』(1940)まで。対象喪失の意味を問い、自我の概念の提示、死の本能の考察から宗教論へ、人生と思索の関連が見えてくる」。 ◎注目の文庫 『竹取物語〔改版〕』星新一:訳 角川文庫 460円 『百億の星と千億の生命』カール・セーガン:著 滋賀陽子+松田良一:訳 新潮文庫 700円 『ダライ・ラマ「死の謎」を説く』ダライ・ラマ:著 角川ソフィア文庫 780円 『ゲリラ戦争――キューバ革命軍の戦略・戦術〔新訳〕』チェ・ゲバラ:著 甲斐美都里:訳 中公文庫 740円 ◎小林多喜二! 蟹工船 小林多喜二:著 雨宮処凛:解説 野崎六助:解題・注記 金曜日 08年7月 1,365円 46判190頁 ISBN978-4-906605-44-6 小林多喜二名作集「近代日本の貧困」 祥伝社新書 08年7月 819円 新書判336頁 ISBN978-4-396-11122-9 ■収録作品:「オルグ」「地区の人々」「残されるもの」「疵」「失業貨車」「山本巡査」「銀行の話」など全10編。 *** ◎先週分で書ききれなかった書目。 『「生きづらさ」について――貧困、アイデンティティ、ナショナリズム』雨宮処凛+萱野稔人:著 光文社新書 798円 『パール判決を問い直す――「日本無罪論」の真相』中島岳志+西部邁:著 講談社現代新書 735円 『昭和とは何であったか――反哲学的読書論』子安宣邦:著 藤原書店 3,360円 『抵抗の同時代史――軍事化とネオリベラリズムに抗して』道場親信(1967-):著 人文書院 2,940円 『中国臓器市場』城山英巳(1969-):著 新潮社 1,470円 『折り返し点 1997-2008』宮崎駿(1941-):著 岩波書店 2,835円 『日本家系・系図大事典』奥富敬之:著 東京堂出版 12,600円 『古典ユダヤ教事典』長窪専三:著 教文館 18,900円 『新錬金術入門』大槻真一郎(1926-):著 ガイアブックス:発行 産調出版:発売 1,260円 『モラリア(1)』プルタルコス:著 瀬口昌久:訳 京都大学学術出版会 3,570円 『小さな哲学史』アラン:著 橋本由美子:訳 みすず書房 2,940円 『ガラス蜘蛛』モーリス・メーテルリンク:著 高尾歩:訳 工作舎 1,890円 『ユリイカ』ポオ:著 八木敏雄:訳 岩波文庫 588円 『セビーリャの理髪師』ボーマルシェ:著 鈴木康司:訳 岩波文庫 525円 『イタリア映画史入門 1905-2003』ジャン・ピエロ・ブルネッタ:著 川本英明:訳 6,090円 『どすこい出版流通――筑摩書房「蔵前新刊どすこい」営業部通信1999-2007』田中達治(1950-2007):著 ポット出版 1,890円 『酷道をゆく(2)日本全国の「酷い国道」をまだまだ走る!!』イカロス出版 1,680円 ※スターダストプロモーションが“文庫+写真集”の新ブランドSDP Bunko「文学日和~晴れたらいいな」を立ち上げました。SDPの発表によれば、「第1弾シリーズとして夏帆(宮沢賢治『注文の多い料理店』)、山下リオ(夏目漱石『こころ』)、岡本杏理(樋口一葉『たけくらべ』)、早見あかり(芥川龍之介『蜘蛛の糸』を7月20日に同時発売。それぞれ表紙と巻頭グラビア8ページを飾っている。第2弾は9月27日に発売予定。第5弾までのシリーズ全20作まで刊行予定」とのこと。そうくるか~。価格も400~500円とたいへんお値打ち。これじゃあつい買っちゃうじゃないか! ずるいぞ! なんなんだこの夏帆ちゃんの横顔の可愛さは! 思わずニヤけちゃうじゃないか! 花が似合うあかりちゃん、海辺のリオちゃん、物思い顔の杏理ちゃん、こういうのは若い読者よりおじさんを悶絶させることになるんだろうな。反則だ! ……いや、究極の販促か。少女系だけじゃなくて、少年系もそのうち出すのだろうか。
by urag
| 2008-07-27 03:57
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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