ルミネの2店舗は立地的に言って、他書店も欲しいであろうテナントでした。逆に、六本木店や青山本店はなかなか引継ぎ手は見つからないものと予想されます。
業界人の方はおおかたご存知だろうと思いますが、この秋、新宿にはジュンク堂が進出します。そこで、紀伊國屋とジュンク堂の「新宿頂上対決」が始まるはずでしたが、ここでいきなりブックファーストの殴りこみ。風雲急を告げるとはこのことです。
ブックファーストにとって問題はいくつかあります。彼らのスタンスとしては、紀伊國屋とジュンク堂の「新宿頂上対決」にはあえて参戦しないほうがいいに決まっています。彼らと戦うための戦略を練る準備期間が、今回はないに等しいし、あくまでも私見ですが、彼らと張り合うほどブックファーストは書店として成熟していない。真正面から張り合うのではなく、譬えて言うならば、超大型店という恐竜同士の戦いを尻目に、彼らの足元を縫い歩いて生き抜くちっぽけな哺乳類であるほうが有効だと、私には思われます(ちっぽけな哺乳類というのは、私にとって否定的なイメージではなく、むしろその逆です)。
しかし、ご承知の通り、ブックファーストはジュンク堂ほどではないにせよ、「大型」書店の部類に入ります。私のイメージでは、ブックファーストは恐竜たちのあとにも生き残るようなちっぽけな哺乳類ではない。
世の中には、小規模ながら個性的な品揃えの本屋さんはたくさんあります。私としては、ルミネには、個性派小書店を10店舗ほど引き入れて、本屋横町みたいになってほしかった。
タコシェとか、
シェルフとか、
フィクショネスとか、
ナディッフとか。出来れば古本屋さんも入って欲しい。
株式会社ルミネに、そういう開発ができる人材がいたらよかったのに。まあ、ないものねだりですが。
もうひとつの問題。8月1日の開店に間に合うように商品を調達するためには、なにより、出版社が快く、しかも超特急で出品することが大前提になります。各社がどれほど素早く協力できるかどうか。レスポンスの遅い出版社もあるでしょうから、そういう不着品があるだろうことも見越して、売場に置ききらない冊数を発注することになるでしょう。足りないよりかはマシです。しかし、新規店およびその支援取次はおおかたこうした過剰発注をいままでしてきましたから、出版社は注文品の全冊を漏らさずに納品するのを渋る可能性がある。
こんな体験があります。某書店チェーンの新規出店に伴い、大量の発注が入って、それを出荷した。で、開店後の現場に行って自社商品を探すと一冊もなかった。
書店の立場からすれば仕方ないことですが、出版社にとってこれほど徒労なことはありません。おそらく、ブックファーストほどの書店さんであるならば、発注した商品は極力返品せずに大事に陳列してくださるだろう。しかし、本当にそうしてくださるかどうか、今回はあまりにも時間がなさ過ぎる。
今、私は「ブックファーストほどの書店さんであるならば」と書きました。しかし、本音を言えば、これは正直な声ではありません。「ブックファーストのXXさんや**さんであるならば」と言い換えましょう。出版社の営業マンは、本屋さんのブランドを頼るほどナイーブではない。お店の大小は関係なく、信じられる書店員さんがいればこそ、その書店に肩入れしようとも思うのです。
大書店というブランドは捨てて、ブックファーストは、店員の個性を前面に出し、思い切ってその店員を中心にいくつかのプロジェクトチームを組み、そのプロジェクトチームがそれぞれパーティションで区切られた売場を持つ、というくらいの「革命」を期待したい。もちろんクリアせねばならない様々な課題はありますが、これ、本気で提案したいのです。一元的で大陸的な大書店ではなく、多元的で群島的な複合体。ポスト「大書店」時代の戦略は、そういうイマジネーションの中に潜在しているのではないか、と愚考しています。
皆さんはどう思われますか。