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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2008年 04月 30日

イベントの反響:鵜飼哲×西山雄二「ジャック・デリダ、他者への現前」@ジュンク堂新宿店

08年4月24日にジュンク堂書店新宿店で行われた、鵜飼哲×西山雄二トークセッション「ジャック・デリダ、他者への現前――教育者として、被写体として、絆として」への感想を複数の参加者の方々から頂戴しました。まことにありがとうございます。当日は平日の夕方で雨模様の天気にもかかわらず、幅広い層のお客様(老若男女本当に幅広い)にお越しいただきました。あらためて御礼申し上げます。

西山雄二さんご自身によるレポートは、UTCPブログに掲載されています。4月25日付「【報告】共に旅するための技法―「ジャック・デリダ、他者への現前」」がそれです。また、会場の様子を写真撮影してくださった三村由佳さんからご提供いただいた写真をご紹介します。また、ジュンク堂書店新宿店人文書担当の阪根正行さんがイベントの様子を記事風にまとめてくださいましたので、あわせてご紹介します。阪根さんによるより詳細なイベントリポートは別エントリ「イベントリポート:鵜飼哲×西山雄二「ジャック・デリダ、他者への現前」@ジュンク堂新宿店」にてご紹介しています。

◆参加者様からの感想

昨日の講演会ですが、行ってみて、とても良かったです。鵜飼さん、西山さんお二方の「デリダから学んだこと」を聞いて、『条件なき大学』のなかでのデリダの言葉が、彼の顔、表情とともに新たに浮き上がってくるような感覚がしました。小さな場所に大勢の人が集まって、質疑応答なども出ていて、終わってしまうのが惜しく感じるほど濃密なひとときでした。

鵜飼さんによると、83年にデリダが初来日した頃にはまだ「大学論」というのは個々の哲学者の思想の一部というだけの認識しかなかったそうですが、大学の現状を考えると、どうやってその危機に抵抗していくか?ということを含め、デリダの語っていたことが強烈な危機感を帯びて目の前に現れているように思います。

言葉が押し潰され、見えなくさせられていくような動きをしている昨今、「全てのことを言う権利」をもつ<条件なき大学>をどのような形で実践の場に移行できるのか?ということ、そして、「全てのことを言う権利」は応答可能性、責任をもつことと表裏一体であること。そうした面においてデリダはとても忍耐強く、相手の話を聞ける人だったと鵜飼さんは強調されていました。

デリダとファティの旅についての西山さんのお話に、共に旅をすることは自分とその空間そのものが旅をすることであると仰っていたのですが、「場所において、その場所とともに旅をするには?」というその問いかけを受けて、あるテクストを読むということも、テクスト自体が旅をすることなのだということ、それが脱構築に結びついているというお二人の言葉がとても印象に残っています。

◆イベントの様子
イベントの反響:鵜飼哲×西山雄二「ジャック・デリダ、他者への現前」@ジュンク堂新宿店_a0018105_21531625.jpg

◆リポート「鵜飼哲×西山雄二トークセッション」《短縮版》

西山氏が持つ"L’Université sans condition", Jacques Derrida.(『条件なき大学』の原書)にいつも挟まれている1枚のポストカードの紹介からトークセッションは始まった。このカードの送り主は鵜飼氏。デリダについて二人で語らう今日という日がくることを、このポストカードは予め告げていたのだろう。

前半は「デリダの大学論」について語られた。鵜飼氏から「デリダの大学論」が、日本では長らく理解されてこなかったという指摘があり、それに続き西山氏から『条件なき大学』についての説明があった。特に興味深かったのは、『条件なき大学』の「場所がない」という性質について。「どこに行けば何があって、そこで講義を受ければ単位がもらえる」というような「場所」はない。そうではなく、例えばニューヨークやパリでシンポジウムを開催する。こちらから出向いて何かを「する」、「動く」という「余白」だけがある。このような大学の在り方が、人文学をどのように発展させるのだろうか。

後半は「デリダと映画」について語られた。とりわけ鵜飼氏による『言葉を撮る』という作品が持つ意義についての説明が印象的だった。デリダはゼミやシンポジウムを通じて毎週公衆の前に現れたが、自身の写真や映像が流通することには危機感を持っていた。だからこの映画、『デリダ、異境から』(『言葉を撮る』付録DVD)に出演することにも慎重だった。ただ、デリダにとって、ファティとの旅(映画制作、共著)は非常に深刻な意味を持っていた。デリダは49年にアルジェリアからパリに移住し、その5年後にアルジェリアで内戦が起こった。その時デリダはアルジェリアにいなかった。何故あんなことが起こったのか分からないし、ムスリムとユダヤ人とが幸せに共存することは可能だったとデリダは考えいたし、内戦の時、自分はアルジェリアにいるべきだったとも思っていた。だから、この問題はデリダのなかでずっと解決できないでいたのだ。こういった思いが、サファー・ファティというエジプト出身の女性監督との共著である『言葉を撮る』という作品には託されている。

トークセッションは終始これ以上ない雰囲気のなかで進められた。デリダについて深い友愛をもって静かに語る鵜飼氏。デリダへの溢れんばかりの想いを情熱的に語る西山氏。そんな二人の姿に魅せられて 熱心に耳を傾ける聴衆。全体が一つになった素晴らしいトークセッションであった。

最後に、担当者としてこのような奇跡的な場に同席できたことを大変うれしく思います。鵜飼、西山両先生、並びに駆けつけて下さったお客様に感謝し、この場を借りて厚く御礼申し上げます。(ジュンク堂書店新宿店人文書担当 阪根正行)

by urag | 2008-04-30 21:43 | Comments(2)
Commented by ttt at 2008-05-05 16:40 x
多忙のため、駆けつけたくてしょうがなかったのに行けなかったトークイベントでしたので、こうした細部に及ぶレポートは非常に助かります。ありがとうございました。
Commented by urag at 2008-05-16 00:40
tttさんこんにちは。亀レスごめんなさい。弊社関連のイベントはできるだけこうしたレポートを掲載していきたいです。今回はなによりジュンク堂さんのお力が大きかったです。


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