昨晩京都大学で行われたイベント「
大都市とマルチチュード」は、参加した方に伺ったところ盛会だったとのことです。「京都新聞」08年3月25日付の記事「
ネグリ氏のテキストを代読――入管問題で不在 京大で講演」では壇上の写真とともにイベントの様子が伝えられています。曰く、「ネグリ氏が講演予定だった「大都市とマルチチュード」と題されたテキストでは、大都市におけるサービス業や情報通信などの非物質的な労働から生み出される「共(コモン)」という概念が搾取に対抗する、との考えが紹介された。会場を埋めた学生や市民は熱心に聞き入っていた」とのこと。
24日の三大学共同声明については以下の記事がオンラインで読めます。記者会見には8大学19名もの関係者が同席したのですね。
「毎日新聞」3月24日付政治欄記事「
ネグリ氏:入国許可求め大学教授らが共同声明」
「朝日新聞」3月24日付文化欄記事「
姜尚中・東大教授ら、ネグリ氏来日中止で政府に抗議声明」
いっぽう、芸大イベントの一環として23日に新宿3丁目の路上で行われた田中泯さんの「場踊り」の様子が、s.hakuさんのブログ「奏書」08年3月24日付のエントリー「
昨日、今日」にて、写真付きで報告されています。木幡和枝さんが警官と対峙している写真もありますね。
田中泯さんと木幡和枝さんといえば、かつてフェリックス・ガタリが書いた田中さんへのオマージュを訳したのが木幡さんでした。その詩は、朝日出版社から85年6月に出版された『週刊本(35)光速と禅炎』の冒頭に掲げられています。
田中泯
闇のイルカ
日本の奇跡の足の下に
感覚のもうひとつの境界線を画した
彼の禅の炎。
〔中略〕
I dance not in the place but I dance the place
(私は場所で踊るのではなく場所を踊る)
田中泯
身体気象
存在について我われが抱く不可能な記憶の裸の王
ガタリとネグリの共著『自由の新たな空間』が丹生谷貴志さんの活き活きとした訳で朝日出版社から刊行されたのは、『光速と禅炎』から半年後の86年1月のことでした。『自由の新たな空間』は昨年夏(07年7月)、ネグリさんによる「日本語版への序文(07年3月)」を添えて、杉村昌昭さんによる新訳が世界書院から刊行されています。
なお、ネグリさんの著書には、「アントニオ・ネグリ」名で書かれているものと、「トニ・ネグリ」名で書かれているものがあります。「トニ」は言うまでもなく「アントニオ」の愛称で、友人たちに呼びかける際には親愛の情をこめて「トニ」を名乗っておられるようです。
トニ名義で書かれている本は、日本語訳があるものでは『自由の新たな空間』(朝日出版社版)、『
未来への帰還』(インパクト出版会、99年)、『
芸術とマルチチュード』(月曜社、07年)の三冊です。未訳書では、『パイプライン――レビッビアからの手紙』(エイナウディ、83年)、『イタリア 赤と黒――日記 83年2月~83年11月』(ヤン・ムーリエ訳、ベルナール・アンリ=レヴィ序文、アシェット、85年/イタリア語版『脱獄日記』、MBP、86年)などがあります。