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2008年 02月 27日

注目新刊:パオロ・ヴィルノ(人文書院)、大谷能生(以文社)

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ポスト・フォーディズムの資本主義――社会科学と「ヒューマン・ネイチャー」
パオロ・ヴィルノ(1952-):著 柱本元彦(1961-):訳
人文書院 08年2月 2,625円 46判並製カバー装250頁 ISBN978-4-409-03075-2

帯文より:現代の労働において、人間はフレキシブルな奴隷に過ぎないのか? 人間的能力のすべてを労働へと動員し、その生物としての存在を剥き出しにするポストフォーディズム。フーコーとチョムスキーの討論を手がかりに、根底から変化する社会と人間の関係から現代資本主義の本質を分析する、『マルチチュードの文法』に続く講義形式の入門書。本書刊行後に書かれた論文2本を付す。

原書:"Scienze sociali e 'natura umana'",Rubbettino, 2002.

ヴィルノ待望の日本語訳第二弾です。今週末くらいから書店店頭発売と聞いています。弊社刊行の『マルチチュードの文法』はいま、ネグリ来日記念フェアであちこちの大型書店さんの店頭に並んでいるはずですが、この本もお奨めします。ヴィルノは世代的には、ネグリ(1933-)がパドヴァ大学で教鞭を執っていたころはまだ若い学生でしたが、ネグリと共に活動し、投獄されたこともありました。思想的ポジションは、パリで活躍するマウリツィオ・ラッツァラート(ラザラート)とともに、ポスト・ネグリ世代の政治哲学を代表する一人と言えるでしょうか。ネグリと同様、アガンベン(1942-)には批判的な立場をとっています。

ちなみに追加された二つのテクストとは、2004年の「鏡ニューロン、言語的否定、相互認知」と、2005年の「いわゆる「悪」と国家批判」です。「訳者あとがき」では、本編と2本の論考について次のように整理されています。

「これら三つの論はいずれも『マルチチュードの文法』の射程内にあり、ひとつの思想がいわば「外」と「内」に向かっていくような、ある意味で補完的な関係にあると言えなくもない。すなわち、『マルチチュードの文法』が実践に向けて放たれた言葉であるのに対して、『ポストフォーディズムの資本主義』は、より理論的な基盤を確認するところに重点をおく。そして「鏡ニューロン、言語否定、相互認知」がマルチチュードの根底=人間的自然の理論をさらに掘り下げる一方、「いわゆる「悪」と国家批判」は、マルチチュードの実践論につながっているのである」。

ネグリと異なるヴィルノ特有の思考を測るには、本書の参考文献を一瞥してみると一番いいかもしれません。「言語」をめぐる様々な本が参照されていることに気づかれることと思います。

***

大谷能生のフランス革命
大谷能生(1972-)+門松宏明(1975-):著
以文社 2,310円 B5変形判並製カバー装296頁 ISBN978-4-7531-0258-7

菊地成孔氏推薦――「まだ読んでないけど、凄いに決まってる。」

3月7日ごろから店頭発売開始と聞いています。内容は、05年7月から06年7月まで渋谷のUPLINK FACTORYにて合計11組の先端的表現者たちをゲストに行ったマンスリー・イベントの全編を、豊富なテキストとヴィジュアルで徹底的に再構築したもの、そうです。門松さんによるドキュメント日誌が併録されています。

ゲストは以下の通り(略敬称):冨永昌敬、ばるぼら、岡田利規、岸野雄一、志人、宇波拓、RIOW ARAI、西島大介、小川てつオ+狩生健志+(音がバンド名)、杉田俊介、堀江敏幸。イベント終了後に、「後書き的対談」として行われた、佐々木敦さんとのダイアローグが収録されています。

デザイン的にもすぐれた本で、門松さんのテクストの組み方は、細かい文字で一行がやたらと長い、読み手を挑発するレイアウトになっています。かっこいいですね。各対談は、写真や注釈が多数ついていて、イベントに擬似的に参加しているような気分を味わえます。弊社から刊行した大谷さんの第一評論集『貧しい音楽』は売行好調ですが、この新刊もきっと好評を得るに違いありません。大谷さんと菊地さんの共著が遠からず某社から刊行されるとも耳にしています。

ところで何で、何が「フランス革命」なんでしょうか。不思議に思っていましたが、「由来」は序文に書いてありました。なんてこった、そういうことだったのか! 引用したいところですが、それではネタバレになってしまうので、どうぞ皆さんご自身でお確かめになってください。

***
InterCommunication no.64 音楽/メディア――ポストCD時代のMAKING MUSIC
NTT出版 08年2月(発行は4月づけ) 1,400円

【対談】:渋谷慶一郎+佐々木敦「ゼロ年代の「音響」と「音楽」をめぐって」、高橋悠治+渡辺裕「世界音楽と反システム音楽」
【テクノロジーへの視点】:高橋健太郎「検索」「制作ソフトウェア」、津田大介「携帯オーディオ」「SNS」、小野島大「音楽再生」
【テキスト】:佐々木敦「MAXIMAL MUSIC(承前)」、津田大介「未来の音楽ビジネス」、鈴木謙介「同期するメッセージ、空虚への呼びかけ」、増田聡「「作曲の時代」と初音ミク」、久保田晃弘「生成技術時代の音楽作品――プログラミング言語から計算する宇宙へ」、清水穣「セリー、フォルメル、メディア――シュトックハウゼンの《ヘルコプター弦楽四重奏曲》」、ペーター・サンディ+廣瀬純「ハイウェイ・ディアフォニック――ペーター・サンディは何を聴くのか?」
【アーカイヴ】:薮崎今日子「エレクトロニック・ミュージック・レーベル・ガイド――「音響」はどこに存在しているか」、ばるぼら「年表・21世紀の音楽/メディア史――1995-2008」

上記大谷本でも登場した佐々木さんやばるぼらさん、また、ヴィルノ『マルチチュードの文法』の訳者である廣瀬純さんが寄稿されています。廣瀬さんとのメールのやりとりが今回公開されたペーター・サンディ(1967-)はフランスの音楽学者。著書に『ムジカ・プラクティカ――アレンジとフォノグラフィ、モンテヴェルディからジェームズ・ブラウンへ』(1997年)、『聴取――ぼくたちの耳の歴史』(ジャン=リュック・ナンシー序文、2001年)、『ワンダーランド――音楽、表裏』(ジョルジュ・アペルギスとの共著、2004年)、『リヴァイアサン=テクストの預言――メルヴィルにそって読むこと』(ジョルジュ・アペルギス序文、2004年)などがあり、『聴取』は廣瀬さんの訳でインスクリプトより刊行予定だそうです。待ち遠しいですね。なお、アペルギス(1945-)はギリシア出身のフランスの作曲家で、日本でも知られています。

by urag | 2008-02-27 23:02 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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