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2008年 02月 17日

注目新刊:『崩壊ホームレス』と『地獄誕生の物語』

注目新刊:『崩壊ホームレス』と『地獄誕生の物語』_a0018105_2345467.jpg
写真右が、明後日2月19日に河出書房新社さんから発売になる新刊、アレキサンダー・マスターズ『崩壊ホームレス』です。左は、先週水曜日2月13日より好評発売中の以文社さんの新刊、中川文人『地獄誕生の物語』です。

崩壊ホームレス ある崖っぷちの人生
アレキサンダー・マスターズ:著 清野栄一(1966-):訳
河出書房新社 08年2月 定価2,520円 46判上製カバー装370頁 ISBN978-4-309-20487-1

版元紹介文より:パンクスで、筋ジストロフィーで、元囚人で、ジャンキー……強烈で愛すべきホームレスだったスチュアートの生涯を、ボランティアで知り合った著者がその死から過去へ逆向きに辿ったノンフィクション。英国でベストセラーになった衝撃作。

原題:"Stuart: A Life Backwards", 2005.

本文より:スチュアートはこの原稿を気に入らない。彼が持っている、テスコ・スーパーの買い物袋の色あせたストライプ越しに、私が書いた原稿の端っこが見える。二年間もの取材と、それを活字にした努力のたまもの。「この原稿の、何が問題なんだ?」「クソ退屈だよ〔・・・〕悪態をつくつもりはないんだ。君がとても頑張ったのはわかってる」 手短にいうと、彼の唱える異論はこうだ。私は原稿を単調にしてしまった。彼はもっと、冗談や、あくびや、ユーモアがほしい。学問的引用や、背景調査なんてどうでもいい。〔・・・〕そんなわけで、これから続くのは、私が二度目に書き直したスチュアート・ショーターの物語だ。泥棒、人質犯、サイコ、社会病質人格で、路上のお話し上手、貴重な人生を持つ男……二十一世紀のはじまりにおいて、イギリスのカオティックな底辺層が、どのように彼らの不穏な日々を過ごすのかについての、私の偵察……。もっと早くこれを書き上げることができていたら、と思う。スチュアートが、十一時十五分発のロンドン発キングスリン行きの列車に飛び込んでしまう前に、これを彼に見せることができていたら。〔・・・夜の最終列車に〕彼がぶつかった時、彼の体は五〇フィートも宙を舞った。旋回しながら小高いプラットフォームを横切り、廃線の横にある雑草とポテトチップスのごみの袋の間に墜落した。夏の暗闇の中を、列車は一〇〇ヤードも走ってやっと停車した。

***

地獄誕生の物語
中川文人(1964-):著
以文社 08年2月 定価1,890円 46判並製カバー装208頁 ISBN978-4-7531-0259-4

推薦文:「私の思い込み、常識が粉砕された!! この男、見かけによらず深い」(鈴木邦男)。

目次:
まえがきにかえて――きみは本当に地獄を見たのか
第一部 日本人の「地獄の原風景」
 第一章 どうして地獄を知っているのか
 第二章 地獄の古典『往生要集』の世界
 第三章 地獄は戦争の記憶
地獄誕生の物語『ナラクの悲劇』
第二部 西洋の「地獄の古典」
 第四章 ダンテの『神曲 地獄篇』
 第五章 ウェルギリウスの『アエネーイス』
解説「暴力・国家・文化」(矢部史郎)

本書は物語『ナラクの悲劇』を真ん中に挟んで、日本と西洋の地獄観を検証しつつ、地獄がどのように生み出されたかに迫るエッセイで構成されている、ユニークな本です。研究書的なお堅い文体ではまったくなく、軽い感じで読める(でも内容は怖い)のがいいです。

by urag | 2008-02-17 22:56 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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