
来週水曜日、08年1月9日発売のちくま学芸文庫、サルトルの『存在と無(III)』です。これで全三巻完結。第三巻は約600頁、第四部「「持つ」「為す」「ある」」と「結論」が収録されており、さらに、訳者の松浪信三郎さんによる「用語解説」や「訳者あとがき」、文庫版編集協力者の北村晋さんによる「解説」が付されています。巻末には、事項索引と人名索引。税込1,890円。
第三巻に登場する有名な言葉には、「われわれは自由へと呪われている〔=人間は自由の刑を宣告されている〕」(146頁)や「人間は一つの無益な受難である」(463頁)などがあります。周知のようにサルトルは小説家にして劇作家でもあるのですが、上記のような言葉は哲学者の思惟でありつつ、シェイクスピアの劇のせりふのようでもありますね。サルトルが戦後初めて翻訳されたのは、まず小説家としてでした(『水いらず・壁』)。
解説者の北村さんはこう書いています、「本書は20世紀フランス現象学の古典にして、その後のさまざまな現代思想の源流でもある。(・・・)『存在と無』には、(・・・)まだまだ新たな読解を可能にする汲み尽くせぬ源泉が秘められているのである。読者諸氏は、既成の解釈に囚われぬ自由な読解に是非ともチャレンジしていただきたい」と。
なお、今月のちくま学芸文庫では、ドゥルーズ『カントの批判哲学』の、國分功一郎さんによる新訳が刊行され、ハイゼンベルクやディラックら7名の物理学者の肉声を集めた『物理学に生きて―─巨人たちが語る思索のあゆみ』も発売されます。また、2月6日発売の同文庫では、スチュアート・カウフマン『自己組織化と進化の論理』 、ネルソン・グッドマン『世界制作の方法』、 岡村浩訳『ディラック現代物理学講義』が刊行される予定。
単行本では、ハンナ・アレント『政治の約束』(ジェローム・コーン編、高橋勇夫訳)や、ジグムント・バウマン『コミュニティ―─安全と自由の戦場』(奥井智之訳)が1月8日に発売されます。バウマンは大月書店からも『リキッド・ライフ――現代における生の諸相』(長谷川啓介訳)も1月18日に発売。今月は出費を覚悟しなければなりません。