紀伊國屋書店が創業80年記念に、品切絶版文庫の復刊を主導しました。「もう一度読み返したい」「店頭で販売をしたい」1冊を全スタッフに募ったそうです。出版社に打診したところ、
40タイトルもの復刊が実現したとのこと。すごいですね。
数えてみたところ、角川文庫とハヤカワ文庫がそれぞれ12点、講談社文庫が6点、集英社文庫と中公文庫が各3点、ちくま文庫が2点。ハヤカワ文庫で、カート・ヴォネガットの文庫が4点もまとめて復刊されているのはGJですね。『タイムクエイク』『ジェイルバード』『青ひげ』『チャンピオンたちの朝食』。ちょっと残念なのは、小説・エッセイ・ノンフィクションなどの文芸系の著者が大半で、学術系の著者が少ないこと。講談社文庫の今西錦司『生物の世界』くらいですかね。
紀伊國屋書店のアンケート結果で復刊、ということは、もちろん紀伊國屋書店に重点的に配本されるわけで、こういう「差別化」は大型チェーン店はどんどんやってもいいのではないかと思うのですけれどもどうなんでしょうか。たとえば、現在改訳中と聞くロールズの『正義論』はよく書店員さんから再刊を望む声を耳にしますが、改訳までのつなぎとして、復刊要請を正式に店売および外商の皆さんが出せば、同じグループ内の会社なのだから、なんとかなるのじゃないかと、外部の人間としては空想したりするわけです。20部~100部を紀伊國屋書店さんの主要店舗で責任販売するならば、1000部重版も可能なのでは。まあ口で言うのは簡単すぎますね。
版元側としては「重版できない理由」というのは様々あるわけですが、すべての品切絶版本が、著作権や版権のやんごとなき理由で再刊できないわけではないでしょう。重版可能な部数分の注文が入るならば、復刊できる可能性はぐっと高まるでしょう。そういう「書店主導型」専売復刊は文庫の場合先例があります。実際のところそうしたことを考えている現場の書店員さんは数多くいらっしゃっているのですが、あとは要は本部側の戦略的な部数のとりまとめが重要なのではないかと思います。人文書の単行本だって、大手チェーンさんが数をまとめてくださるならば、重版可能です。
一読者としても、紀伊国屋書店さんにはぜひ次回は学術系単行本のリクエスト復刊に挑戦していただきたいと期待しています。