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2007年 11月 21日

ヴェルナー・ハーマッハー『他自律――多文化主義批判のために』発売中

シリーズ「暴力論叢書」二年ぶりの第二弾、ヴェルナー・ハーマッハー『他自律--多文化主義批判のために』を発売開始いたしました。本日より、順次書店店頭に並びます。
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他自律--多文化主義批判のために
ヴェルナー・ハーマッハー:著 増田靖彦:訳
46判並製カバー装200頁 本体2,200円 ISBN978-4-901477-37-6

文化融合主義ではない多文化主義を透視する〈解放のポリティクス〉

同一性に基づく政治には暴力に向かう性質が潜在的に備わっている。本書は、文化と野蛮のアポリア的な関係を浮き彫りにし、利己と自律に関するカント、ニーチェ、マルクス、フロイト、アドルノらの論点、さらにはチャールズ・テイラーやハーバーマスといった近年の思想家の議論を参照しつつ、「多文化主義」をより幅広い文脈の中で捉え直す。理想化と従属化、普遍主義と敵対感、自己創出と他者犠牲……これらの表裏一体化を根本的に批判し、民主主義に潜む暴力性を再審に付す。デリダ=ハーバーマス以後の現代思想の最前線で活躍する未邦訳の重要思想家たちの星座を出現させるアクチュアルなシリーズ、「暴力論叢書」の第二弾!

彼のテクストはきわめて印象的で、独創性に満ちており、賞賛に値する……彼の解釈の中に数多く見られる卓抜で力強い身振り。――ジャック・デリダ

ヴェルナー・ハーマッハー(Werner Hamacher):1948年、ドイツのオーア=エアケンシュヴィックに生まれる。ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学(フランクフルト大学)比較文学科教授。論文の邦訳に以下のものがある。宮崎裕助訳「ヘーゲルの読解行為――「吐き気」をめぐるトロープ操作」、『SITE ZERO/ZERO SITE』No.0(特集=エステティクスの臨界)所収、メディア・デザイン研究所、2006年。清水一浩訳「(仮面をつけた芸術の終わり)」、『現代思想』七月臨時増刊号(総特集=ヘーゲル『精神現象学』二〇〇年の転回)所収、青土社、2007年。

原書:Heterautonomien - One 2 Many Multiculturalisms -, 2003, by Werner Hamacher.

***
原書は単行本としてはまだ刊行されていません。最初に95年に"One 2 Many Multiculturalisms"として口頭で発表されて以来、幾度かのヴァージョンアップと改題を経て、最終稿が2003年にドイツで出版されたアンソロジーに掲載されました。日本語訳版は園都度のヴァージョンアップに立ち会ってきたので、最終稿では削除された文章も、重要な個所については注において言及しています。邦訳副題は、著者と協議の上、より分かりやすいものに変更しました。

本書は、今月15日に再刊された論文集『マルチカルチュラリズム』(A・ガットマン編、岩波書店)で中核となっているチャールズ・テイラーの論文「承認をめぐる政治」が言うところの「多文化主義」を批判する論考ともなっています。参考までに両書を読み比べていただけたら幸いです。

「暴力論叢書」の第一弾、サミュエル・ウェーバー『破壊と拡散』も好評発売中です。ウェーバーの論文「『人間/男モーセ』を始末する」の第二回が、月刊誌「みすず」10月号に掲載されていますので、ご興味のある方はご覧下さい。

「暴力論叢書」第三弾は、ヘント・デ・ヴリーズの本邦初訳となる予定です。

by urag | 2007-11-21 00:01 | Comments(2)
Commented by iso at 2007-12-26 06:45 x
いつも拝見しております。ハーマッハーよりクリスマスプレゼント(?)に一冊もらいました。瀟洒な本ですね。にわかにハーマッハーブーム到来(Advent)でしょうか。しかしAfformativの著者にはAd-vent>Avvent>Aventがふさわしいのかもしれませんね。それこそまさにEx-ventとしてのEvent! にぎやかだったAdventもおわり、急にさびしくなったフランクフルトより失礼しました。
Commented by urag at 2007-12-27 01:28
isoさんご無沙汰しております。お元気そうですね。「他自律」をご高覧いただき恐縮です。ブームというわけにはまだいかないようですが、テイラーの論文「承認をめぐる政治」も再び読めるようになりましたし、田崎英明さんの『無能な者たちの共同体』も刊行されたので、界隈で話題になればと祈っています。東京は寒いです。寒くて乾燥しているので、インフルエンザが流行っています。


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