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2007年 11月 18日

今週の注目新刊(第124回:07年11月18日)

今週は新書に収穫が多く、あれこれ拾っているうちに単行本まで多く選んでしまいました。とはいえ、単行本にも注目新刊多し。シュミット『大地のノモス』の待望の改訳版や、単行本としては本邦初訳となるフランスの思想家ヴィヴィオルカの新刊2点など。天文学史に輝くヘンリエッタ・リーヴィットの伝記や、孤高のフランス作家ロジェ・ラポルトの8年ぶりの翻訳新刊にも注目。

雑誌では岩波書店の「思想」11月号が「ソシュール生誕150年」特集を組みました。岩波書店では、ソシュールの「一般言語学講義草稿」や諸々の「講義録」を含む全4巻本がすでに予告されていますが、今年中には出ないようです。

◎今週の注目新書、選書、文庫

日本を降りる若者たち 下川裕治(1954-):著 講談社現代新書 07年11月 756円 ISBN978-4-06-287917-04 ※海外で何もせずブラブラ過ごすのを、「外こもり」と表現したのが面白いですね。

自殺するなら、引きこもれ--問題だらけの学校から身を守る法 本田透(1969-)+堀田純司(1969-):著 光文社新書 07年11月 735円 ISBN978-4-334-03427-6 ※「多くの人間が囚われている「学校信仰」を相対化し、不登校児や引きこもりを病気のように扱う社会の価値観がいかにおかしいかを解く」とのこと。第4章「孤独力、妄想力がコンテンツ立国を支える」は本田透さん執筆。本田さんらしい主張です。書くことにおける「孤独」についてかつて深く論じたのはブランショ(「本質的孤独」、『文学空間』所収)だったことを思い出します。

ドストエフスキー--謎とちから 亀山郁夫(1949-):著 文春新書 07年11月 819円 ISBN978-4-16-660604-7 ※9月に刊行された『「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する』(光文社新書)に続く新作。版元紹介文に「猛烈なグローバリゼーションに抗して生きる知恵」と。

「プライバシー」の哲学 仲正昌樹(1963-):著 ソフトバンク新書 07年11月 735円 ISBN978-4-7973-4104-1

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか 内山節(1950-):著 講談社現代新書 07年11月 756円 ISBN978-4-06-287918-7 ※1965年が転機である、と。

国語審議会--迷走の60年 安田敏朗(1968-):著 講談社現代新書 07年11月 798円 ISBN978-4-06-287916-3

力士の世界 木村庄之助(1942-):著 文春文庫 746円 ISBN978-4-16-660603-0 ※著者は33代目。行司を今春定年退職。

若き世代に語る日中戦争 伊藤桂一(1917-):著 野田明美:聞き手 文春新書 07年11月 746円 ISBN978-4-16-660607-8

新しい太陽系 渡部潤一(1960-):著 新潮新書 07年11月 903円 ISBN978-4-10-610238-7 ※著者は国立天文台天文情報センター長。

ベートーヴェンの交響曲 金聖響(1970-)+玉木正之(1952-):著 講談社現代新書 07年11月 798円 ISBN978-4-06-287915-6

アイヌの歴史--海と宝のノマド 瀬川拓郎(1958-):著 講談社選書メチエ 07年11月 1,680円 ISBN978-4-06-258401-2

暴力論(下) ソレル:著 今村仁司+塚原史:訳 岩波文庫 07年11月 798円 ISBN978-4-00-341382-1


◎注目の単行本

暴力 ミシェル・ヴィヴィオルカ(1946-):著 田川光照:訳 新評論 07年11月 3,990円 ISBN978-4-7948-0729-8 ※幾度か来日を果たしているヴィヴィオルカの著書が2点ほぼ同時に翻訳出版されました。注目です。

レイシズムの変貌--グローバル化がまねいた社会の人種化、文化の断片化 ミシェル・ヴィヴィオルカ(1946-):著 森千香子:訳 明石書店 07年11月 1,890円 ISBN978-4-7503-2666-5

穢れと差別の民俗学 礫川全次(1949-):編 歴史民俗学資料叢書:批評社 07年11月 3,675円 ISBN978-4-8265-0474-4

凶悪殺人と「超能力者」たち--スキゾタイパル人格障害とは何か 矢幡洋(1958-):著 青弓社 07年11月 1,680円 ISBN978-4-7872-3279-3

閨房哲学 サド:著 小西茂也:訳 一穂社:発行 紀伊國屋書店:発売 07年11月 2,100円 ISBN978-4-900482-33-3 ※訳者の死後に発見された本邦初訳原稿が「60年の時をこえてよみがえる」とのこと。

ラディカル・デモクラシー--可能性の政治学 C・ダグラス・ラミス:著 加地永都子:訳 岩波書店 07年11月 3,360円 ISBN978-4-00-027149-3 ※シリーズ「岩波モダンクラシックス」での再刊。今月は本書や酒井直樹『日本思想という問題--翻訳と主体』をはじめ、多数の人文書が復活。同シリーズは古典の再刊を謳う割には品切が多く、この先さらに文庫化されるのかどうかは不明なので、見逃している方はぜひお買い求めを。

大地のノモス--ヨーロッパ公法という国際法における カール・シュミット:著 新田邦夫:訳 慈学社出版:発行 大学図書:発売 07年10月 10,500円 ISBN978-4-903425-26-9 ※福村出版上下本より30年ぶりの改訳!

遠くまで行くんだ… 完全覆刻全6号 1968-1974 スガ秀実:解説 白順社 07年11月 4,935円 ISBN978-4-8344-0096-0

ベーシック・インカム--基本所得のある社会へ ゲッツ・W・ヴェルナー(1944-):著 渡辺一男:訳 現代書館 07年11月 2,100円 ISBN978-4-7684-6963-7 ※「VOL」第二号でも特集された「ベーシックインカム」(すべての人に無条件に基本所得を保障する社会制度案)についての本。「資本家の視点から、その利点を説明し、反対論を持つ研究者と徹底討論」とのこと。話題になりそうな予感。

絶対弱者--孤立する若者たち 三浦宏文(1969-)+渋井哲也(1969-):著 長崎出版 07年11月 1,680円 ISBN978-4-86095-217-4

虐待の家--義母は十五歳を餓死寸前まで追いつめた 佐藤万作子(1951-):著 中央公論新社 07年11月 1,890円 ISBN978-4-12-003885-3

わたしのリハビリ闘争--最弱者の生存権は守られたか 多田富雄(1934-):著 青土社 07年12月 1,260円 ISBN978-4-7917-6362-7

コンビニ不都合な真実--笑うFC本部、泣く加盟店オーナー 月刊VERDAD編集部:著 ベストブック 07年12月 1,575円 ISBN978-4-8314-0101-4

到来する沖縄--沖縄表象批判論 新城郁夫(1967-):著 インパクト出版会 07年11月 2,520円 ISBN978-4-7554-0181-7

一神官の西南戦争従軍記--熊本隊士安藤經俊『戰争概畧晴雨日誌』 安藤經俊:原著 甲斐利雄:編纂 猪飼隆明:監修・解題 熊本出版文化会館:発行 創流出版:発売 2,625円 ISBN978-4-915796-66-1

誠実という悪徳--E・H・カー 1892-1982 ジョナサン・ハスラム:著 角田史幸ほか:訳 現代思潮新社 07年11月 6,720円 ISBN978-4-329-00454-3

歴史家たちのユートピアへ--国際歴史学会議の百年 樺山紘一(1941-):著 刀水書房 07年11月 1,680円 ISBN978-4-88708-500-8

旅の博物誌 樺山紘一(1941-):著 千倉書房 07年11月 1,995円 ISBN978-4-8051-0890-1

高杉晋作・上海行--攘夷から開国への覚醒 新しい視点から見た高杉晋作論 相沢邦衛(1941-):著 叢文社 07年10月 1,575円 ISBN978-4-7947-0588-4 ※叢文社では「書籍編集およびインデザインまたはクォークでの校正」のスタッフを募集中とのこと。勤務形態が自宅可というのが魅力ですね。

リーヴィット--宇宙を測る方法 ジョージ・ジョンソン:著 槇原凛:訳 WAVE出版 07年11月 2,520円 ISBN978-4-87290-321-8 ※ハーヴァード大学天文台で星の写真乾板を整理しデータを記録する職員として働いていたヘンリエッタ・リーヴィットの伝記。聴覚障害を持ち、紡績工場とほぼ同じ時給30セントで働きながら、天文学史上、大きな発見をしました。その偉大な業績にも関わらずあまり語られることのなかった彼女の生涯を描いた好著。

パーシヴァル・ローエル--ボストン・ブラーミンの文化と科学 デイヴィッド・シュトラウス(1937-):著 大西直樹ほか:訳 井上正男:監修 彩流社 07年11月 3,990円 ISBN978-4-7791-1306-2

ヒトラー、ゾルゲ、トーマス・マン--クラウス・プリングスハイム二世回想録 クラウス・H・プリングスハイム(1923-2001):著 池内光久:訳 彩流社 07年10月 3,675円 ISBN978-4-7791-1288-1

英雄伝(2) プルタルコス:著 柳沼重剛:訳 西洋古典叢書:京都大学学術出版会 07年11月 3,990円 ISBN978-4-87698-171-7

十字架の聖パウロの生涯--受難の紋章を心に刻みつけて ポール・フランシス・スペンサー:著 丸山ヒデ子:訳 井上博嗣:監修 ドン・ボスコ社 07年10月 2,100円 ISBN978-4-88626-447-3

レイモン・サヴィニャック自伝 レイモン・サヴィニャック(1907-2002):著 橋本順一:訳 T・Oブックス:発行 ビレッジプレス:発売 07年11月 3,600円 ISBN978-4-9901748-8-0 ※T・Oエンタメイメントでは書籍およびDVDの店舗営業(経験者)を募集中とのこと。

〔新装改訂版〕ブレヒト作業日誌(下)1942-1955 ベルトルト・ブレヒト:著 秋葉裕一ほか:訳 河出書房新社 07年11月 7,560円 ISBN978-4-309-70629-0 ※ソレルスの『女たち』が上下巻で河出文庫にて12月に刊行されるそうです。

人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。 岡本太郎:著 イースト・プレス 07年12月 1,680円 ISBN978-4-87257-796-9 ※『にらめっこ』(番町書房、1975年)の改題改訂版。

僕のアルバム 植田正治(1913-2000):写真 仲田薫子:監修 求龍堂 07年12月 2,415円 ISBN978-4-7630-0729-2 ※版元紹介文によれば「植田正治の没後発見されたネガの束より編纂した妻を被写体とした1935~1950年代の未発表写真を綴った夫婦愛の軌跡」とのこと。

ラナーク--四巻からなる伝記 アラスター・グレイ(1934-):著 森慎一郎:訳 国書刊行会 07年11月 3,675円 ISBN978-4-336-04939-1

翻訳の作法 斎藤兆史(1958-):著 東京大学出版会 07年11月 2,310円 ISBN978-4-13-082130-8 ※著者と野崎歓さんとの対談イベント「翻訳のたのしみ」が12月15日(土)午後7時から、ジュンク堂書店池袋本店4F喫茶コーナーにて開催されます。定員40名、入場料1000円(ドリンク付き)。

ヨーロッパの博物館 カトリーヌ・バレ+ドミニク・プーロ:著 松本栄寿+小浜清子:訳 雄松堂出版 07年11月 2,940円 ISBN978-4-8419-0459-8

バッハ傾聴〔改装版〕 ヨハン・ニコラゥス・フォルケル(1749-1818):著 田中吉備彦:訳著 法政大学出版局 07年11月 3,150円 ISBN978-4-588-41017-8 ※同版元では今月は音楽書系の再刊が複数あり。本書のほか、ジョン・オシエー『音楽と病--病歴にみる大作曲家の姿』など全5点。『バッハ傾聴』所収のフォルケルの名著"Ueber Johann Sebastian Bachs Leben, Kunst und Kunstwerke"は、複数の翻訳が存在します。柴田治三郎訳の岩波文庫版『バッハの生涯と芸術』は今月21日に復刊。このほか、白水社のUブックスで角倉一朗訳『バッハ小伝』(03年)があります。

美の解析--変遷する「趣味」の理念を定義する試論 ウィリアム・ホガース(1697-1764):著 宮崎直子:訳 中央公論美術出版 07年11月 3,990円 ISBN978-4-8055-0549-6

古代・中世の挿絵芸術--その起源と展開 クルト・ワイッツマン(1906-1993):著 辻成史:訳 中央公論美術出版 22,050円 ISBN978-4-8055-0552-6

ギリシア・ローマ時代の書物 ホルスト・ブランク:著 戸叶勝也:訳 朝文社 07年10月 6,731円 ISBN978-4-88695-203-5

哲学者西田幾多郎の書の魅力 北室南苑:著 里文出版 07年11月 1,890円 ISBN978-4-89806-282-1

ブラフマ・スートラ--シャンカラの註釈(下) シャンカラ:註釈 湯田豊:訳著 大東出版社 07年10月 19,950円 ISBN978-4-500-00709-7 ※上巻は06年4月刊行。

青いガーネットの秘密--“シャーロック・ホームズ”で語られなかった未知の宝石の正体 奥山康子:著 誠文堂新光社 07年11月 1,890円 ISBN978-4-416-80758-3

Distance HKアーツ・アンド・ブックス:発行 INFASパブリケーションズ:発売 07年12月 5,000円 ISBN978-4-900785-57-1 ※コントリビューターの面々が豪華。

秩序を求めて エリック・フェーゲリン(1901-1985):著 山口晃:訳 而立書房 07年11月 2,625円 ISBN978-4-88059-293-0 ※フェーゲリンの既訳はすべて山口晃さん訳で、而立書房より刊行。96年『自伝的省察』(エリス・サンドス:編)、03年『政治の新科学--地中海的伝統からの光』。

スウェーデンボルグを読み解く 日本スウェーデンボルグ協会:編 春風社 07年11月 2,940円 ISBN978-4-86110-130-4

探究--思考の臨界点へ ロジェ・ラポルト(1925-2001):著 山本光久:訳 新宿書房 07年11月 3,570円 ISBN978-4-88008-372-8 ※ラポルトの訳書は『プルースト/バタイユ/ブランショ--十字路のエクリチュール』(水声社、1999年)に続いて二冊目。いずれも山本光久さんによる訳。

by urag | 2007-11-18 01:32 | 本のコンシェルジュ | Comments(2)
Commented by yn at 2007-11-21 01:11 x
岩波書店の「思想」12月号「ヤン・パトチカ生誕100年」特集となっていますね。こちらも期待大です。
Commented by urag at 2007-11-23 00:06
ynさんこんにちは。コメントありがとうございます。それは実に楽しみですね。人文業界での今までの等閑視は何だったのだろうとふと不思議に思いました。


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