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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2007年 10月 14日

今週の注目新刊(第119回:07年10月14日)

◎注目の単行本新刊

久生十蘭「従軍日記」 久生十蘭(1902-1957):作 小林真二:翻刻 講談社 07年10月 1,890円 ISBN978-4-06-214269-4 ※没後半世紀の発見だそうで。「久生十蘭が海軍報道班員としてジャワ・ティモール・アンボン・ニューギニアなどの南方に派遣された際の日記3冊をもとに単行本化」とbk1では紹介されています。
灰燼・露草 大佛次郎:著 村上光彦:編・解説 未知谷 07年10月 3,360円 ISBN978-4-89642-202-3 ※シリーズ「大佛次郎セレクション」からの1冊。

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◎注目のコミック、新書、文庫

羅生門 芥川龍之介:原作 バラエティ・アートワークス:企画・漫画 イースト・プレス 07年10月 580円 ISBN978-4-87257-834-8 ※「まんがで読破 」シリーズ。同時発売がドストエフスキー『罪と罰』と小林多喜二『蟹工船』というのがいい。
高学歴ワーキングプア--「フリーター生産工場」としての大学院 水月昭道(1967-):著 光文社新書 07年10月 735円 ISBN978-4-334-03423-8 ※著者は大学非常勤講師のお坊さん。ご専門は環境心理学・環境行動論とのこと。
・人智学・心智学・霊智学 ルドルフ・シュタイナー:著 高橋巖:訳 ちくま学芸文庫 07年10月 1,365円 ISBN978-4-480-09104-8

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今週はピックアップできた書目が少なかったので、ここ最近注目した本の中で特に伝記&自伝ものが目についたことを記しておきたいと思います。シュテファン・ミュラー=ドーム『アドルノ伝』(作品社)、B・ハースト+B・メイソン『ケイト・モス--美しく呪われし者』(ブルース・インターアクションズ)、『馮友蘭自伝--中国現代哲学者の回想(1)』(平凡社)の三冊です。
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『アドルノ伝』は03年に原書がアドルノの生誕百周年記念に出版されたもので、日本語訳ではA5判800頁を超える大著です。アドルノが生きた20世紀前半は二度の世界大戦が起きた激動の時代であったわけですが、アドルノの人生のみならず、同時代に生きた知識人たちの群像をも浮かび上がらせます。まさに劇的な伝記です。「劇的」という意味では、ケイト・モスの辿ってきた半生も半端なものではありません。セレブリティのゴシップに興味がなくても、このバイオグラフィはどんどん次のページへと読者の背中を押していきます。ジェットコースターのような本です。馮友蘭(ふうゆうらん)の自伝第一巻でもっとも「劇的」な場面のひとつは、60年代後半から70年代前半にかけての「文化大革命」において知識人たちが容赦なく弾圧されていく様を描写しているあたりかと私には読めました。淡々と書かれているのですが、実際は怖い。馮友蘭さんご自身はさほど弾圧を受けなかったように書いてありますけれども、飄々とした彼のキャラクターが暗い記述に終始するのを良しとしなかったのかなとも思えます。むろんそんなふうに書くと当局からにらまれてしまうという理由もあるのかもしれませんが。

by urag | 2007-10-14 17:47 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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