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2007年 09月 17日

今週の注目新刊(第115回その2:07年9月17日)

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模倣の法則 ガブリエル・タルド:著 池田祥英+村澤真保呂:訳 河出書房新社 07年9月 6,090円 46判560頁 ISBN:978-4-309-24424-2 ●9月21日発売。待望の全訳です。初訳は実に1924年のこと。抄訳でした。フランスでは以前からタルドの再評価がなされていますが、本書の帯文にある通り、日本ではまさに本書から「タルド・ルネサンスはじまる」と言っても過言ではないと思います。前田晃伸さんによる装丁もいつもどおりびしっときまっていて最高です。タルドの訳書で現在入手可能なのは、未来社から刊行されている『世論と群集』のみ。本書の版元宣伝文に曰く、「社会を発明と模倣からとらえる差異と反復の社会学」とあります。1920年代から40年代にかけて幾度か翻訳された『社会法則』もそうですが、タルドの社会論はあたかも宇宙論のように非常にダイナミックなもので、こんにち読み返してもなお新鮮な輝きを失っていません。

コズモグラフィー--シナジェティクス原論 バックミンスター・フラー:著 梶川泰司:訳 白揚社 07年9月 6,090円 A5判457頁 ISBN:978-4-8269-0135-2 ●帯文にフラーの名言が刻まれています。曰く、「複数の原理を相互に調整し秩序づける行為を私はデザインと呼ぶ」。この根源的なデザイン哲学。上記のタルドの主著は社会書ないし人文書売場に、このフラーの遺著は理工書売場に置かれるのでしょうが、この二冊は実に隣り合って販売されてもおかしくありません。フラーにせよタルドにせよ、これらの本からまさに再読解・再評価が始まる予感がします。

数が世界をつくった--数と統計の楽しい教室
I・バーナード・コーエン:著 寺嶋英志:訳 青土社 07年10月 2,310円 46判249頁 ISBN:978-4-7917-6361-0
せん塔--中国の陶芸建築 柴辻政彦(1935-):著 鹿島出版会 07年9月 3,360円 菊判192頁 ISBN:978-4-306-04487-6

森の都市--EGEC 奥野翔(1940-):編著 彰国社 07年9月 2,100円 B5変型判120頁 ISBN:978-4-395-00811-7 ●版元紹介文に曰く、「森を中心におき、森の恩恵を都市に利用する21世紀にふさわしい都市計画の提案。すでに中国ではこの案による都市計画が進行中」とのこと。

夕暮れ東京 鷹野晃(1960-):写真 淡交社 1,470円 A5判128頁 ISBN:978-4-473-03434-2 ●東京都下の「黄昏時に綺麗な風景」を写真で紹介。この写真家さんはこの道十年とのこと。魅力にとりつかれるのも分かる気がします。

巨大建築という欲望--権力者と建築家の20世紀 ディヤン・スジック:著 五十嵐太郎:監修 東郷えりか:訳 紀伊國屋書店 07年9月 3,990円 46判520頁 ISBN:978-4-314-01031-3 ●監修者の五十嵐さんは先月、『「結婚式教会」の誕生』というユニークな論考を春秋社から刊行したばかり。

ギリシア彫刻の見方 L・クルツィウス:著 小竹澄栄:訳 みすず書房 07年9月 4,200円 A5変型判176頁 ISBN:978-4-622-07322-2 ●こちらのクルツィウスは、かのローベルトではなく、ルートヴィヒ。ナチスにより考古学研究所所長の職を追われた人。解題は中村るい氏。

歴史(2) ポリュビオス(205-123BC):著 城江良和:訳 西洋古典叢書:京都大学学術出版会 07年9月 4,095円 46判477頁 ISBN:978-4-87698-169-4 ●全4巻。第2巻は、原典全40巻のうち第4巻から第8巻までを収録。本邦初訳。竹島俊之訳編による龍渓書舎版は『世界史』として現在刊行中。ギリシア語原題は『ヒストリア』。

フランク史--一〇巻の歴史 トゥールのグレゴリウス(538-594):著 杉本正俊:訳 新評論 07年9月 6,825円 A5判632頁 ISBN:978-4-7948-0745-8
発行年月 : 2007.9

チュルゴーの失脚-1776年5月12日のドラマ(上下) エドガール・フォール(1908-1988):著 渡辺恭彦:訳 法政大学出版局 07年9月 6,825円/5,775円 46判総頁数1038頁 ISBN:978-4-588-00870-2/978-4-588-00871-9

歴史哲学についての異端的論考 ヤン・パトチカ(1907-1977):著 石川達夫:訳 みすず書房 07年9月 4,830円 46判288頁 ISBN:978-4-622-07326-0 ●待望の、まさに待望の、チェコ語原典からの記念碑的初訳。おおかたの場合、私たちはこれまで仏訳版か英訳版からしかパトチカに近づけなかったのではないかと思います。仏訳版ではポール・リクールが序文を、ローマン・ヤーコブソンがあとがきを書いていますが、今回の訳書にはこれらは含まれていません。その代わり、訳者による懇切なイントロダクション「ヤン・パトチカ――受難を超える哲学者」が付されています。月刊誌「みすず」02年12月号に掲載された合田正人さんの訳によるリクールの論文「ヤン・パトチカ――レジスタンスとしての哲学者」が、かの序文でしょうか。不覚にも私はまだ合田さんの訳を読んでいません。月刊誌『現代思想』93年5月号(特集=民族問題の根源へ)に掲載されたパトチカの論考「歴史に意味はあるか」は、今回チェコ語原典から全訳された『異端的論考』の第三章にあたります。菊池恵介さんと若森栄樹さんによって仏訳版から重訳されたものです。さすがに微妙にニュアンスが異なっており、読み比べるとたいへん面白いです。このほか、日本語で読めるパトチカの論考には、新田義弘・村田純一編『現象学の展望』(国文社、1986年)に収録されている、「フッサール現象学の主観主義と「非主観的」現象学の可能性」があります。ドイツ語版から小熊正久さんが訳したものです。ここではパトチュカと表記されています。今道友信さんの忘れがたい半生記『知の光を求めて』(中央公論新社、2000年)の143-146頁には、パトチュカとの出会いの思い出が綴られています。ルドルフ・ベルリンガーとオイゲン・フィンク、今道さんとパトチュカの四人で晩餐をともにした時の話です。その席上でのパトチュカの発言の重みは、この本を読んでからずいぶん経つ今もなお私にのしかかっています。「オイゲン、自由とは時間の制限がないもののはずだ。私の場合、この一週間、ウィーンに滞在許可のある時間だけ、自由なのです。あさってからは、またきびしい、不条理な統制の中です。言いたいこと、言わねばならないと自由な精神が考えること、それは黙っていなくては、牢獄と死です」。パトチュカはハヴェルらとともにチェコの民主化を目指して戦う言論人でした。彼は尋問の名のもとにたびたび当局より拷問され、かの晩餐から十年を待たぬうちに、そうした「尋問」がもとで死去しました。

隠されたジェンダー ケイト・ボーンスタイン(1948-):著 筒井真樹子:訳 新水社 07年9月 2,940円 A5判275頁 ISBN:978-4-88385-101-0
善意の仮面--聴能主義とろう文化の闘い ハーラン・レイン:著 長瀬修:訳 現代書館 07年9月 3,780円 46判462頁 ISBN:978-4-7684-3469-7
僕らは、ワーキング・プー アントニオ・インコルバイア(1974-)+アレッサンドロ・リマッサ(1975-):著 アンフィニジャパン・プロジェクト:訳 世界文化社 07年10月 1,575円 46判255頁 ISBN:978-4-418-07513-3
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策(1) ジョン・J・ミアシャイマー(1947-)+スティーヴン・M・ウォルト(1955-):著 副島隆彦:訳 講談社 07年9月 1,890円 46判366頁 ISBN:978-4-06-214009-6
告発・電磁波公害 松本健造(1948-):著 緑風出版 07年9月 1,995円 46判294頁 ISBN:978-4-8461-0714-7
出版と社会 小尾俊人(1922-):著 幻戯書房 07年9月 9,975円 A5判654頁 ISBN:978-4-901998-28-4
本を売る現場でなにが起こっているのか!? 編集の学校・文章の学校:監修 雷鳥社 07年9月 1,575円 A5判189頁 ISBN:978-4-8441-3494-7

by urag | 2007-09-17 03:24 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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