"Movimenti nell'impero"(2006, Raffaello Cortina Editore)の抄訳として『アントニオ・ネグリ講演集』全2巻がちくま学芸文庫から出版されました。弊社で刊行しているアガンベンの訳書を手がけられた上村忠男さんと堤康徳さんが関わっておられます。
『アントニオ・ネグリ講演集(上下)』
アントニオ・ネグリ:著 上村忠男:監訳 堤康徳+中村勝己:訳 ちくま学芸文庫 07年8月 各924円 223頁/217頁 ISBN:978-4-480-09094-2/978-4-480-09095-9
上巻の「〈帝国〉とその彼方」には、以下の講演が収録されています。
■第一部 〈帝国〉とその彼方:「〈帝国〉とその彼方、アポリアと矛盾」、「〈帝国〉のための公理体系」、「〈帝国〉のなかのユートピアと抵抗」、「〈帝国〉と市民権」、「〈帝国〉の移動を生きる――闘争するために」、「抵抗とマルチチュード」、「平和と戦争」、「〈帝国〉の時代とマルチチュードの時間における芸術と文化」、「マルクス――〈帝国〉と帝国主義」。■第二部 ポスト社会主義政治:「新自由主義的経済政策への社会的対抗策」、「〈帝国〉内におけるポスト社会主義の政治」、「〈帝国〉の新局面」、「都市型民主主義」、「新たな福祉のために」。
下巻の「〈帝国〉的ポスト近代の政治哲学」には、以下が収録されています。
■第三部 〈帝国〉的ポスト近代の政治哲学:「ポスト近代と自由」、「内在性の共産主義」、「生権力と主体性」、「マルチチュードと生権力」、「〈帝国〉と戦争」、「政治用語集を改革しよう!」、「〈ジェネラル・インテレクト〉の生政治」、「〈年老いたヨーロッパ〉の哲学」、「俳優と観客――非物質的労働、公共サーヴィス、知的協働、共同的なものの構築」、「実質的時間と搾取の時間」、「新しいフーコー」、「ポスト近代か、同時代性か?」。■付録:「ネグリとレオパルディ」(堤康徳)、「イタリア現代史のなかのネグリ」(中村勝己)。■「監訳者あとがき」(上村忠男)。
原著には上記のほかにあと10本ほど収録されています。近年、イタリアでのネグリの出版ペースは上がってきており、新著と旧著新版を織り交ぜ、旺盛な出版活動が見受けられます。上村さんの「あとがき」によれば、現在ネグリは、ハートとの共著『〈帝国〉』、『マルチチュード』に続く第三作『人間論』を準備中だそうです。
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いっぽう、月刊誌『情況』07年7・8月号が「ガタリ+ネグリ『自由の新たな空間』」を特集しています。杉村昌昭さんによる二つの対談、長原豊さんとの「自由の新たな空間とは何か」、丸川哲史さんとの「アジアの自由の新たな空間をめざして」をはじめ、以下の論考が収録されています。
市田良彦「ある唯物論的な笑いと美」、崎山政毅「『自由の新たな空間』を再読することの意味」、山崎カヲル「私たちは死者から解放されたか――ある種のポストモダニズムへの批判的介入」、橋本努「自由主義左派の新たな論理」、的場昭弘「「共産主義」の概念をめぐって」、重光哲明「六八年五月を終わらせる」をめぐって――フェリックス・ガタリ没後十五年にあたって」、伊吹浩一「〈分子革命〉の思想――精神分析とマルクス主義の横断」。
また、同号冒頭には、姜尚中さんよる発言「ネグリは東アジア/日本をどのように見るのか?――ネグリ来日に向けて」が掲載されています。ネグリの来日予定は来年三月。東大・芸大のシンポジウムと、京大のシンポジウムが予定されています。
さらに同号には緊急特集として、「今村仁司追悼」が組まれています。塚原史さんが寄稿された「今村仁司の「絶筆」」によれば、今村さんと塚原さんの共訳で、ジョルジュ・ソレルの『暴力論』が岩波文庫からまもなく刊行される予定で、「今村さんの「解説」は、彼自身の暴力論の新たな展開を示しており、「今村理論」を構成する重要な一部分となるだろう」とのことです。