地元商店街で食料品の買い物ついでに何気なく古本屋で買った斎藤茂吉の『赤光』(岩波文庫)。帰る道すがら、パッと開いたページで最初に目に飛び込んできた一句で自分を占おうとふいに思いついて実行。結果、115頁の、次の一句。
ひた走るわが道暗ししんしんと怺〔こら〕へかねたるわが道くらし
なぜだ、なぜ、なぜこれなんだ。この句は初版『赤光』のまさに冒頭の一句ですが、改選されてからはむしろ後ろのほうになっています。
初版の冒頭のページをもしも開いてこの句に当たっていたら、この後には、皆様ご存知の通り、蛍を殺すであるとか急に走り出すとか睡眠薬を飲むとか不穏な展開が続くので、茂吉は暗いなあ、なとど感慨にふけって終わり、ということになったかもしれないのに、シャッフルしたあとの版のページでこれに当たってしまい、なんだかとても象徴的に感じて、偶然とは思えないのでした。
いっそ玄関にでも掲げておこうかしら。それとも名刺に刷ろうかしら。文庫のカバーに掲げられている、木下杢太郎の挿画「仏頭」の薄目が、私を冷ややかに見つめているのでした。