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2007年 08月 03日

ドゥルーズの名著『フーコー』が河出文庫に

ドゥルーズの名著『フーコー』が河出文庫に_a0018105_21221915.jpg
ジル・ドゥルーズの友愛に満ちた名著『フーコー』が文庫化されました。来週火曜日、8月7日に河出文庫の新刊として発売されます。同時発売がアンドレ・ブルトンの『黒いユーモア選集』第一巻および第二巻。

フーコー
ジル・ドゥルーズ:著 宇野邦一:訳
河出文庫 07年8月 1050円 文庫判264頁 ISBN:978-4-309-46294
■帯文より:二大思想の遭遇が生んだ決定版フーコー論。ミシェル・フーコーの軌跡と核心をたどりつつドゥルーズ哲学のエッセンスを示す孤高の名著。
■カバー表4紹介文より:ドゥルーズが盟友への敬愛をこめてまとめたフーコー論の決定版。「知」「権力」「主体化」を指標に、フーコーの軌跡と核心を精緻に読みときながら、「外」「襞」「線」などドゥルーズ自身の哲学のエッセンスをあざやかにあかす。二十世紀、最も重要な二つの哲学の出会いから生まれた思考のドラマをしるす比類なき名著。
■目次:
前書き
古文書〔アルシーヴ〕からダイアグラムへ
 新しい古文書学者(『知の考古学』)
 新しい地図作成者(『監獄の誕生』)
トポロジー、「別の仕方で考えること」
 地層あるいは歴史的形成物、可視的なものと言表可能なもの(知)
 戦略あるいは地層化されないもの、外の思考(権力)
 褶曲あるいは思考の内(主体化)
付記――人間の死と超人について
訳註
訳者後記

写真右は1987年刊行の単行本。原著が86年にミニュイから刊行されたわけなので、実に迅速な翻訳出版だったのですね。フーコーが亡くなったのはその二年前、1984年でした。「訳者後記」によれば、「1987年に単行本として、1999年にはその新装版として出版されたこの訳書を河出文庫に収録するにあたって、新たに訳文を推敲し、いささか訳語を変更し、誤りや遺漏をできるだけ修正するようにした」とのことです。

ドゥルーズがフーコーを論じるとき、そこには友愛の喜びが満ち溢れているように思えます。ことばが躍動し、はじけるようなリズムとともに次々と新しい展望を開きます。たとえば「新しい地図作成者」の末尾の次のような部分。

「形態の歴史、つまり古文書は、力の生成つまりダイアグラムによって二重化される。つまり力は「点から点のあらゆる関係」のうちに現れるのだ。ダイアグラムは地図である。あるいはむしろかずかすの地図が重なったものである。そして、あるダイアグラムから別のダイアグラムへと新しい地図が取り出される。だから、ダイアグラムは、ダイアグラムが連結する数々の点の傍らに、比較的自由で、解き放たれている点、創造や、変動や、抵抗の点を必ずもっている。そして、おそらく、今出てきた全体を理解するには、このようなざまざまな点から出発しなくてはならないのだ。ダイアグラムの継続、あるいはその不連続性を超える新たな連結を理解するには、それぞれの時代の様々な「闘争」、闘争のスタイルから出発しなくてはならない。なぜならその一つ一つが、外の線がねじまげられる仕方を示しているからだ。メルヴィルは、その外の線、始めも終わりもなく、抵抗のあらゆる点を通過し、いつも最も新しいものに関わりながら、ダイアグラムを動揺させ、衝突させる大洋の線について語っている。一九六八年は、なんと興味深い線のねじれであったことか。無数の逸脱でできた線! ここから書くことについて三つの定義が生まれる。書くことは抵抗すること。書くことは生成すること。書くことは地図を作ること。「私は一人の地図作成者である……」」(86-87頁)。

なお、「新しい古文書学者」には、蓮実重彦さんの既訳「あらたなるアルシヴィスト」がかつてありました。蓮実さんの『フーコーそして/あるいはドゥルーズ』という本に、フーコーのドゥルーズ論「劇場としての哲学」の翻訳とともに収められています。1975年、小沢書店より刊行。小沢書店は2000年に廃業。2002年の時点では、小沢書店新社準備室という版元が存在して、小沢書店時代に刊行していた、堀越孝一さんによる「ヴィヨン遺言詩注釈」の『遺言の歌』全三巻のうち未刊だった下巻を出版し、冬至書房から発売していました。準備室が刊行した書籍はあとにもさきにもこの一冊のようです。

河出書房新社では10月に財津理訳『差異と反復』が文庫化されるとのことです。さらに、来月(9月)には、ガブリエル・タルドの『模倣の法則』の初の全訳版を単行本で刊行するそうです。すごいですね。タルドのこの名著が初めて翻訳されたのははるか昔、大正13年(1924年)のこと。風早八十二による抄訳で、而立社(じりゅうしゃ)という東京の版元から「社会科学大系」の一冊として発行されていました。

而立社の「社会科学大系」シリーズでは、タルドのほか、L・モルガン、J・S・ミル、H・スペンサー、Th・ヴェブレン、W・ゾンバルト、A・ロリア、A・ラブリオラなど、錚々たる研究者の著書が翻訳されていました。こんなシリーズがかつてあったんですねえ。

タルドの日本語訳で入手できるのは現在、未来社から刊行されている『世論と群集』(稲葉三千男訳)のみ。そういえば、大村書店から何年か前にタルド著作集が刊行される予定だったことをふいに思い出しました。その第一回配本が「模倣の法則」だったはず。その大村書店、昨年6月の新刊以降、検索でヒットする書目がありません。ウェブサイトも消えています。まだ出版物は流通していますので、会社自体は存在するのだと思いますが、どうやら…。

この大村書店の企画が、河出によって救われたようです。タルドはフランスではしばらく前から再評価されていて、いつ日本で再評価されてもおかしくない状態でした。ちょうど、八雲出さんが「作品メモランダム」で情報をまとめていらっしゃいます。大村書店にお勤めだった方に、私が存じ上げているスタッフの方がいたのですが、今はどうしていらっしゃるのでしょう……。

by urag | 2007-08-03 21:23 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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