昨日発売された、朝日新聞社の月刊誌「
論座」の07年9月号に、弊社刊行のネグリの本『
芸術とマルチチュード』の書評「くそったれな生活を蹴り上げる詩集〔パンク・ナンバー〕」が掲載されました。評者は「remix」編集長の野田努さんです。「実にエモーショナル(・・・)、実に情熱的(・・・)、哲学書というよりも、一冊の詩集のようでさえある。(・・・)本書は世界に変化を望む僕たちへの問いかけである。(・・・)笑ってしまうほどに、熱い本」と評していただきました。野田さん、ありがとうございました。
9月号の特集は、「歴史学と現実政治」、および「深化する「翻訳」」です。後者に仏文学者の加藤晴久さん(1935-)の「翻訳とは忠実さの芸術である」というエッセイが掲載されており、非常に啓発的です。表題はクンデラの引用。
加藤さんはこう仰います。「外国語が話せない人間、つまり、その言語を使って自分が専門とするテーマについて外国人の同僚と自由闊達に討論する能力がない者は翻訳に手を出してはいけない。このようなひとは、意外と、文学の専門家より、人文社会科学の専門家に多い。(…)すぐれた研究者であっても、翻訳者としては不適格のひとがいる。(…)大学院専攻レベルの過程で、有能な会議通訳者とともにエキスパート翻訳者を養成すべきである」。
また、こうも仰っています。「編集者は翻訳書の最初の読者である。編集者が原稿なり校正刷りなりを読んで理解できない個所、奇妙な日本語の個所は、十中八九、誤訳である。相手が大学教授だろうが何だろうが見直しを求めるべきである。これは翻訳書を買う読者にたいする職業倫理上の最低限の義務である」。
引用の後者は編集実務の現場で習い覚えることではありますが、重ねて肝に銘じておきたいところです。