朝日新聞社の月刊誌「論座」07年3月号の特集「「人文書」の復興を!」に注目です。
柄谷行人さんのインタビュー「可能なる人文学」、岩波書店前社長・大塚信一さんと講談社顧問・鷲尾賢也さんの対談「「危機」の今を、チャンスに変える--「人文書」編集者の"本分"」、明治学院大学助教授の長谷川一さんの論考「パブリッキングPUBLICingとしての出版」、ジュンク堂書店池袋本店副店長・福嶋聡さんの論考「〈オルタナティブ〉を担うべき書物たち--書店人によるクロニクル」といったラインナップで、いずれも業界人必読といったところです。
柄谷さんのインタビューは人文書および人文学をめぐる大局的な観点を読者に与えてくれるものです。業界人はことに、自分たちの身の回りの危機や困難に気をとられて、ものごとを俯瞰的に見れない状態に陥りがちですから、柄谷さんのインタビューはそうした視野狭窄に効果があるのではないかと思います。
長谷川さんの論考は、著書『出版と知のメディア論――エディターシップの歴史と再生』を出発点とした議論を要約的に再説し、「パブリック(公共的)」価値創造としての「パブリッシュ(出版)」――それを長谷川さんは「パブリッキング」という造語で提示されています――の可能性について示唆しておられます。
福嶋さんの記事は、大いに共感しました。人文書棚というものは、もうひとつの可能なる世界、もうひとつの可能なる価値を読者に提供する、いわば〈オルタナティブ〉な装置であるということを仰っておられると思います。私も〈オルタナティブ〉が人文書の棚作りのキーワードだと思っています。福嶋さん、拙発言の引用、恐縮です。
また、特集にはブックガイドも付されています。「"読み巧者"5人が選ぶ必読ブックガイド25」と題して、佐藤健二さん(東大教授・歴史社会学)、中条省平さん(学習院大教授・仏文学)、成田龍一さん(日女大教授・近現代日本史)、三島憲一さん(東経大教授・社会哲学)、山内昌之さん(東大・国際関係史)が選書&コメントをなさっています。