2006年 10月 15日
◎注目の文庫、新書、ライブラリー フーコー・コレクション (6) 生政治・統治 / ミシェル・フーコー:著 / ちくま学芸文庫 / 1,470円 / 459頁 / ISBN:4-480-08996-9 ■収録論文:真理と裁判形態/〈生物-歴史学〉と〈生物-政治学〉/ドゥルーズ=ガタリ『アンチ・オイディプス』への序文/社会医学の誕生/汚辱に塗れた人々の生/統治性/十八世紀における健康政策/全体的なものと個的なもの-政治的理性批判に向けて/啓蒙とは何か/ 道徳の回帰/生命-経験と科学 ●コレクション完結。来月10日には『フーコー・ガイドブック』(フーコー著、小林康夫+石田英敬編)を発売。来月のラインナップにはデリダの『雄羊』(林好雄訳)が見えます。 タオ - 老子 / 加島祥造:訳著 / ちくま文庫 / 672円 / 284頁 / ISBN:4-480-42267-6 黄金伝説 (4) / ヤコブス・デ・ウォラギネ:著 / 平凡社ライブラリー / 1,995円 掟の問題 / カフカ:著 / 池内紀:訳 / 白水uBooks / 1,260円 / 326頁 / ISBN:4-560-07159-4 愛国の作法 / 姜尚中:著 / 朝日新書 / 735円 / 205頁 / ISBN:4-02-273101-X ●『黄金伝説』全4巻完結。『掟の問題』の刊行で「カフカ・コレクション」全8巻も完結。 ●いっぽう、「朝日新書」は10月13日に創刊です。上記『愛国の作法』や清水良典さんの『村上春樹はくせになる』をはじめ、12点でスタート。『村上春樹~』の帯文は「近し!ノーベル文学賞」となっていて、ちょっと早まった観が。ところで文庫にせよ新書にせよ創刊時はなぜ点数が多いのかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。答えは「売場での販売スペースを確保するためにそれなりのボリュームが必要」だから。朝日新聞社は時事問題をめぐって幅広い知識人と付き合ってきましたから新書への新規参入組としては一番強力だといえると思います。 ●姜さんの愛国論は、昨今の「嫌韓中」の渦中へ投じられるべき重要な一冊。本屋さんでは新首相の『美しい国へ』(文春新書)の隣に置けば、売場の中和作用になるでしょう。 *** ◎注目の単行本 侵入思考--雑念はどのように病理へと発展するのか デイビッド・A・クラーク:編 丹野義彦:監訳 星和書店 2,940円 46判377頁 ISBN:4-7911-0610-5 ●「意思とは無関係に生じる侵入的な思考が心理的障害に果たす役割について論じた」初めての論文集だそうです。副題が恐くないですか。だって「雑念」というのは人間だれしもが持っているわけですし。それが度を越してくると、「強迫性障害、外傷後ストレス障害、うつ病、全般性不安障害、不眠症など、数多くの心理的障害の重要な認知的特徴」と認められるということなのでしょうけれど。かつて「境界例」について初めて知ったときも、これって単なるわがままやキレやすい性格とほとんど地続きの症状だなあという感想を私は持ちました。「正常/異常」のパラダイムが変容しつつあるのでしょうか。 近代日本の誕生 イアン・ブルマ:著 小林朋則:訳 クロノス選書:ランダムハウス講談社 1,890円 46判222頁 ISBN:4-270-00150-X ●新潮新書の『反西洋思想』もそうですがブルマさんの本の翻訳が連続しています。本書はこのたびランダムハウス講談社から創刊された「クロノス選書」の一冊。クロノス選書というのは、版元の宣伝文句によれば「現代を生きるための“教養”をテーマとした新シリーズ」だそうです。より詳しい説明では、「混迷する現代社会を生きるうえで、当たり前のこととして目にしている事象を前にあらためて立ち止まり、そのルーツや来歴を振り返ることから人間/社会について再考のきっかけを与える新シリーズ」とのこと。同時配本はアンソニー・パグデン『民族と帝国』、ジョン・ミクルスウェイト+エイドリアン・ウールドリッジ『株式会社』。オビ裏の予告によれば、以後の刊行予定は、11月がロベルト・S・ヴィストリヒ『ヒトラーとホロコースト』、12月がポール・ジョンソン『ルネサンス』。 日本残酷写真史 下川耿史(1942-):著 作品社 2100円 46判237頁 ISBN:4-86182-095-2 ■帯文より:江戸末期から戦後まで、秘蔵写真170点。江戸時代の「さらし首」「はりつけ」「切腹」の写真から、明治の斬首、大正の猟奇犯罪、関東大震災の朝鮮人虐殺、日清・日露・太平洋戦争の無残な戦死者、そして戦後まで。 ●近現代日本の最暗黒を容赦なく露呈させる、痛烈なる陰画史。グロが苦手な人は敬遠なさってください。かなりキビシイですよ。けれど、著者の意図は「世の中きれいごとばかりじゃない」という点にあります。興味本位で買うような人もしっかり本文を読むべきだろうと思います。オグリッシュやロッテンを見慣れている人は本書に掲載されている写真を見てもまったく動じないでしょうが、そうした方々にも「読んで」いただきたい本です。 ピーク・オイル・パニック――迫る石油危機と代替エネルギーの可能性 ジェレミー・レゲット:著 益岡賢ほか:訳 作品社 2520円 46判399頁 ISBN:4-86182-103-7 ■帯文より:世界は、史上最悪のエネルギー危機を乗り越えられるか? 石油業界が隠しつ づけるピーク・オイルの真実を明らかにし、世界的経済パニックの回避に向けて代替エネルギーの可能性を示す。 ●同社から昨夏刊行されたマクェイグの『ピーク・オイル』の衝撃に続いて、今度は経済パニックと代替エネルギーに焦点を当てた本が出ました。原著は昨年刊行された"Half Gone"です。先日、『アンチ・オイディプス』の文庫化に際して、私はゲーセンやデパートで配りたいと話しましたが、この『ピーク・オイル・パニック』は国会議事堂の前で配りたい本です。これを読まない政治家は馬鹿です。いや、馬鹿以下です。本書を読むと心底ぞっとしますよ、私たちの未来の危うさに。 世界のダイアグラムコレクション--機能的かつ情報伝達に優れたダイアグラムベストコレクション ピエ・ブックス 3,885円 A4判216頁 ISBN:4-89444-572-7 古今東西吉祥の印 多田文昌(1964-):著 木耳社 1,890円 B6判351頁 ISBN:4-8393-6905-4 山の気--写真集 全日本山岳写真協会同人「遥」:著 東京新聞出版局 2,940円 25×26cm 82頁 ISBN:4-8083-0857-6 ●山の写真というのは本当にいいものですね。癒されます。
by urag
| 2006-10-15 20:37
| 本のコンシェルジュ
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