2006年 10月 01日
◎注目の近刊文庫 アンチ・オイディプス--資本主義と分裂症 (上・下) 【10月6日発売予定】 ジル・ドゥルーズ(1925-1995)+フェリックス・ガタリ(1930-1992):著 宇野邦一(1948-):訳 河出文庫:河出書房新社 06年10月刊 各1,260円 文庫判409/401+7頁 ISBN:4-309-46280-4 / 4-309-46281-2 ■上巻帯文より:「分裂分析」をうたう革命的名著の新訳。マグマのような文体によって欲望機械/器官なき身体とともに巨大で危険な思考の実験がはじまる。 ■上巻表4紹介文より:マグマのような苛烈な文体によって、唯物論哲学を大胆に書き変えた名著の新訳。精神分析批判から資本主義と国家への根底的な批判へ向かい、そのための「分裂分析」をうち立てた革命的な思考は、いまこそ「再発見」されなければならない。欲望機械/器官なき身体とともに、最も危険でカオティックな思考の実験がはじまる。 ■下巻帯文より:来たるべき思考/実践のための名著新訳。無意識論、欲望論、身体論、国家論、資本論、芸術論……の全て、そして厳密なる哲学の書。 ■下巻表4紹介文より:無意識論、欲望論、精神病理論、身体論、家族論、国家論、世界史論、資本論、貨幣論、記号論、芸術論、権力論……のすべてであるとともに厳密な哲学の書でもある奇跡的な著作の新訳。「器官なき身体」とともにあらゆる領域を横断しつつ、破壊と生産をうたう「分裂分析」は、来たるべき思考と実践の指標であり続けている。 ■訳者あとがきより:〔原著〕刊行後三〇年以上たち、すでにドゥルーズもガタリも地上の人ではなくなったいま、『アンチ・オイディプス』を新たな訳で、文庫として出版することの意味はなんだろうか。もちろん、どのような読み方も拒むわけにいかないけれど、訳者にとって、それは決してあの熱い思想の時代を〈回顧する〉ためではない。 ■訳者あとがきより:この訳は、すでに存在する市倉宏祐氏の訳をつぶさに検討し参照している。氏の訳は、きわめて丁寧な啓蒙的配慮に貫かれた、すぐれた作品であった。しかしドゥルーズとガタリの書物の大半が訳され、またそれをとりまく思想の展開もよく知られるようになったいまは、むしろあまり解釈や説明を交えず、彼らの思考のリズムと構築をストレートに伝える訳が存在してもいいのではないか。 ●フラゲで申し訳ありませんが、今週金曜日発売だそうです。20年ぶりの新訳! いやはや、そもそも「新訳」がでるなどとは思いもよりませんでした。ポケットに『アンチ・オイディプス』、街頭で、カフェで、牛丼屋で、『アンチ・オイディプス』。授業中に、デモ中に『アンチ・オイディプス』。クラブのVIP席で『アンチ・オイディプス』。ハロワの待ち時間に『アンチ・オイディプス』。リングの上で高々と掲げる『アンチ・オイディプス』、深夜ラジオや早朝のニュース番組で朗読される『アンチ・オイディプス』、国会演説に『アンチ・オイディプス』。ゲーセンの出入口や、デパートのエントランスで配ってみたい『アンチ・オイディプス』。あっちにもこっちにも、本が増殖し続けて……。という妄想はともかくとして、これをきっかけに河出さんでこれまで刊行されてきた現代思想の名著の数々も続々文庫化されるといいですね! ●河出文庫では、全8巻+別巻1の構成で『須賀敦子全集』も刊行開始になりました。素晴らしいの一言です。同社の10月の新刊単行本では、『生命と現実--木村敏との対話』(木村敏+檜垣立哉:著)や、『ブレヒトの政治・社会論』(ベルトルト・ブレヒト:著、石黒英男:責任編集、野村修:訳)が刊行されるそうです。後者は『ベルトルト・ブレヒトの仕事』全6巻の第一回配本。また、最新情報によれば、『アルトー後期集成』全3巻の刊行開始は、予告の11月より遅れて、2007年にかかりそうだとのことです。楽しみですね! ◎注目の単行本新刊 芸術の真理--文学と哲学の対話 ハンス=ゲオルク・ガダマー(1900-2002):著 三浦国泰:訳 法政大学出版局 06年9月刊 2,415円 46判186頁 ISBN:4-588-00853-6 ■収録論文:ゲーテと道徳的世界/人間の精神的発展過程について/バッハとワイマル/心の最も内なる神/ライナー・マリア・リルケの現存在解釈/詩作品と句読法/リルケの『ドゥイノの悲歌』における神話創作的転回/翻訳としての読書 デリダ--なぜ「脱-構築」は正義なのか 斎藤慶典(1957-):著 NHK出版 06年9月刊 1,050円 B6判126頁 ISBN:4-14-009335-8 論理学の基礎と演習 ジョン・バーワイズ+ジョン・エチメンディ:著 大沢秀介ほか:訳 慶応義塾大学出版会 06年9月刊 10,290円 菊判748頁 ISBN:4-7664-1313-X ■付属CD-ROM:"Tarski's World" 古在由重の哲学 古在由重(1901-1990):著 吉田傑俊:編・解説 こぶし書房 06年9月刊 3,780円 46判350頁 ISBN:4-87559-209-4 収容所群島 2 ソルジェニーツィン(1918-):著 木村浩:訳 ブッキング 06年10月刊 3,675円 46判391+28頁 ISBN:4-8354-4249-0 はじまりの場所--日本の沸点 樋口健二(1937-):写真・文 こぶし書房 06年9月刊 2,520円 A5判141頁 ISBN:4-87559-210-8 反戦ストリッパー白血病に死す--沢口友美伝 正狩炎著 グラフ社 06年10月刊 1,300円 B6判221頁 ISBN:4-7662-1003-4 グローバル化時代の日本型多文化共生社会 駒井洋(1940-):著 明石書店 06年9月刊 2,625円 46判208頁 ISBN:4-7503-2412-4 ちょっとヤバイんじゃない?ナショナリズム 恵泉女学園大学大学院国際シンポジウム実行委員会編 高橋哲哉+村井吉敬+姜尚中+辛淑玉+内海愛子+李省展:著 解放出版社 06年10月刊 1,575円 A5判237頁 ISBN:4-7592-6703-4 江ノ電写真集--湘南の風吹く街を走り抜けた車輌たち 吉川文夫(1932-):編 生活情報センター 06年10月刊 3,990円 A4変形判158頁 ISBN:4-86126-306-9 山口晃が描く東京風景--本郷東大界隈 山口晃(1969-):著 東京大学出版会 06年9月刊 1,575円 新書判24枚 ISBN:4-13-083101-1 ■書き下ろしポストカード・ブック。24枚入り。 日本という方法--おもかげ・うつろいの文化 松岡正剛(1944-)著 NHKブックス:NHK出版 06年9月刊 1,218円 B6判318頁 ISBN:4-14-091067-4 アンビエント・ドライヴァー 細野晴臣(1947-):著 マーブルトロン:発行 中央公論新社:発売 06年9月刊 1,890円 B6判315頁 ISBN:4-12-390136-0 絵解き菜根譚--一〇八の処世訓 洪自誠:著 傅益瑶:画 李兆良:書 雄山閣 06年9月刊 2,940円 A5判254頁 ISBN:4-639-01946-7 〔ヴィジュアル版〕 ケンブリッジ世界宗教百科 ジョン・ボウカー(1935-):編 松村一男:監修 原書房 06年10月刊 15,750円 B5判338頁 ISBN:4-562-04034-3 コプト語文法--古代エジプト語はいかにしてコプト語となったか 飯田篤:著 国際語学社 06年9月刊 4,200円 A5判238頁 ISBN:4-87731-324-9 最後の絵画 ニコライ・タラブーキン(1889-1956):著 江村公:訳 水声社 06年9月刊 3,150円 A5判220頁 ISBN:4-89176-603-4 カイアシ類・水平進化という戦略--海洋生態系を支える微小生物の世界 大塚攻(1959-):著 NHKブックス:NHK出版 06年9月刊 1,124円 B6判260頁 ISBN:4-14-091069-0
by urag
| 2006-10-01 23:47
| 本のコンシェルジュ
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Comments(5)
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けん
at 2006-10-02 09:51
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ドゥルーズの主著の一冊が文庫化されるとは、思いがけないうれしい驚きです。河出の英断に敬意を表します。フーコーやラカンあたりの主著も文庫化してほしいところです。
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>街頭で、カフェで、牛丼屋で、『アンチ・オイディプス』。
>授業中に、デモ中に『アンチ・オイディプス』。 >クラブのVIP席で『アンチ・オイディプス』。 >ハロワの待ち時間に『アンチ・オイディプス』。 >リングの上で高々と掲げる『アンチ・オイディプス』、深夜ラジオや早朝のニュース番組で朗読される『アンチ・オイディプス』、国会演説に『アンチ・オイディプス』。 >ゲーセンの出入口や、デパートのエントランスで配ってみたい『アンチ・オイディプス』。 このくだり、微笑んでしまいましたw 凄くかっこいいです、そんな光景。 「アンチ・オイディプス」にだけかかわらず、本がもっともっと街の中に溶け込んでいったらステキですね。 書店から、書架から、本棚から、本を街に開放せよ!なんて。
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ys
at 2006-10-02 22:56
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祝『アンチ・オディプス』文庫化!宇野那一氏がドゥルーズに関する仕事を地道に継続されていることには敬服します。ドイツのスーアカンプ社の文庫にはすでに、ドゥルーズやフーコー、デリダらフランス現代思想のラインナップが少なからず並んでいます。日本でも筑摩学芸文庫を筆頭に、いわゆる「現代思想」の文庫化が加速するのかもしれませんね。思想家にもよりますが、ドゥルーズは文庫で読まれるべきポップ哲学者でしょう。『ミル・プラトー』の翻訳が出た時、丹生谷貴志さんは的確にも「この本は寝っ転がって読まれる必要があったのに・・・」と述べていました。
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デス日報
at 2006-10-02 23:44
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アンチ・オイディプス、熱いなあ。こういう本はちくま学芸文庫から出るとばっかり思っていたら、河出文庫で出るものなんですね。
千のプラトーも出るといいなあ。思い切ってタクシー止める時なんかにかざしたいです。
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urag at 2006-10-16 01:39
皆様、コメントをありがとうございます。ここ数ヶ月ブログの更新が思うようにいっておらず、コメントのレスも遅くてごめんなさい。遊びにきてくださる皆さんの声を励みになんとか続けています。けんさん、ysさん、フーコーや『千のプラトー』といった河出さんのコンテンツは将来的に河出文庫で読めるようになる気がしますね。kasugaさん、本を街に開放せよ、という方向性は業界の未来にとって正しいと私も思うんです。デス日報さん、タクシーを止める時にかざすというのはかっこいいなあ。
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