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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2006年 07月 02日

今週の注目新刊(第57回:06年7月2日)

たわいなさの考古学――コンディヤックを読む
ジャック・デリダ著 / 飯野和夫訳 / 人文書院 / ¥2,520 / 46判200頁 / ISBN4-409-03072-8
■版元紹介文より:デリダの初期代表作であるルソー論『グラマトロジーについて』と対をなす「双子の書物」。『グラマトロジーについて』でのルソー『言語起源論』につづき、18世紀フランス哲学の雄コンディヤックを論じたデリダ初期の論文。当初、コンディヤック全集版『人間知識起源論』への序論として刊行された。コンディヤックは人間の精神活動の根本にある関心をルソーと共有しながら、異なるアプローチで論じた。コンディヤックによれば、人間の知的能力が生み出す「観念の新しい連関」こそ、新しい学問の発見だという。デリダは、「天才」がなすその過程に、ときとして「たわいなさ」として現れる記号のずれや逸脱を認め、『グラマトロジー』で提示した自らの諸概念を発展させていく。

裸体とはじらいの文化史 〔新装版〕
ハンス・ペーター・デュル(1943-)著 / 藤代幸一+三谷尚子訳 / 法政大学出版局 / ¥4,725 / 46判 507+57頁 / ISBN4-588-09907-8
●デュルの連作「文明化の過程の神話」から、本書『裸体とはじらいの文化史』(原書88年/訳書90年)と『秘めごとの文化史』(原書90年/訳書94年)、『性と暴力の文化史』(原書93年/訳書97年)が新装復刊。第4作目『挑発する肉体』(原書97年/訳書02年)は同出版局から刊行済み。最終作となる第5巻"Die Tatsachen des Lebens"は02年にズーアカンプから発売されています。第2作以降の共訳者である藤代幸一さんと津山拓也さんがおそらくこの最後の書も手がけられていらっしゃるのでしょうね。
●デュルの単独著は全部、法政大学出版局から刊行されています。売れる売れないの問題ではなく、一人の著者とずっと付き合い続けるというのは非常に良心的な態度だと思います。それは単なる「版権独占」というような事業ではありません。売れっ子小説家なら話はともかく、一般読者向けでは必ずしもない学術書で、しかも翻訳に苦労する著書を手がけるとなれば、それは独占ではなく使命に近い作業です。
●法政ではほかにもノルベルト・エリアス、エリアス・カネッティ、ヴォルフガング・シヴェルブシュ、リュディガー・ザフランスキー、ポール・ヴェーヌ、ジョルジュ・カンギレム、ミシェル・アンリ、セルジュ・モスコヴィッシ、リュック・フェリー、アラン・ルノーなども一手に引き受けてきました。若干の例外はありますが、ルネ・ジラール、ミシェル・セール、フランソワ・ダゴニェ、ツヴェタン・トドロフ、エルヴィン・シャルガフらもそうです。壮観ですね。

女人蛇体――偏愛の江戸怪談史
堤邦彦(1953-)著 / 角川学芸出版 / ¥2,835 / 46判251頁 / ISBN: 4-04-702133-4
●角川叢書(角川選書とはまた違います)からの一冊。江戸文学において、悲恋の女性が蛇身を得るという怪談の成立を読み解くもののようです。
●角川学芸出版は「角川グループ」の一角。設立は1986年。当初は「飛鳥企画」という名称で、角川書店の編集業務を担っていたのけれど、2003年に現在の名前になり、2005年には「角川選書・角川叢書・角川ソフィア文庫および人文関係書の出版を本格的に拡張」したそうだ。「「日本文化の伝統」であり「角川書店の伝統」でもある「俳句」「短歌」等の詩歌のエリアと、「学問」「学術」「芸術」「教養」「教育」を中心としたエリアを基盤に出発しました」と同社「ごあいさつ」にはある。

アーキペラゴ――群島としての世界へ
吉増剛造+今福龍太著 / 岩波書店 / ¥2,730 / 46判256頁 / ISBN4-00-022031-4
■版元紹介文より:現代世界の文化の混交と変容をどのようにとらえるのか。クレオール主義を提唱する人類学者今福龍太氏と、言語の解体と創造をラディカルに追及してきた詩人吉増剛造氏が、群島という概念によって世界像を組替える、20年にわたったスリリングな対論。用語解説や図版も充実した、グローバル化時代の文化を考える必読の書。
●弊社の近刊予定カッチャーリ『多島海(アーキペラゴ)』はそういえばどうなっているんだというお叱りの声が聞こえてきそうです。もうすぐです。もうすぐで正式な刊行時期を発表します。
●7月の岩波の注目新刊は、ジョン・ロールズ『万民の法』 14日発売予定、レイ・ジャッケンドフ『言語の基盤――脳・意味・文法・進化』25日発売予定、『カント全集6: 純粋理性批判(下)/プロレゴーメナ』27日発売予定、といったところです。カントは本書をもって新全集が完結ということですね。6月27日に発売された『セネカ哲学全集2:倫理論集II』で、セネカ哲学全集全6巻も完結。

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今週はこのほかに次の新刊が目に留まりました。廃墟好きの私としてはもちろん軍艦島も好きなわけですが、大橋弘さんの写真集はまだ人々が生活していた頃の軍艦島を撮影したものだそうです。ぜひとも見なければなりません。

1972青春軍艦島 / 大橋弘著 / 新宿書房 / ¥2,415 / ISBN4-88008-356-9
日本シュルレアリスム画家論 / 鶴岡善久著 / 沖積舎 / ¥3,990 / ISBN4-8060-4716-3
ニューミュージアム / ウル・A・レネチェ著 / ファイドン / ¥8,379 / ISBN4-902593-45-9
チャベス / ウーゴ・チャベス+アレイダ・ゲバラ著 / 作品社 / ¥2,100 / ISBN4-86182-080-4
真相――イラク報道とBBC / グレッグ・ダイク著 / 日本放送出版協会 / ¥2,940 / ISBN4-14-081118-8

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◎今週の注目文庫

神になった人びと――日本人にとって「靖国の神」とは何か / 小松和彦著 / 知恵の森文庫(光文社) / ¥680 / ISBN4-334-78432-1 / 親本:淡交社、01年刊
体の記憶 / 布施英利著 / 知恵の森文庫(光文社) / ¥580 / ISBN4-334-78436-4 / 親本:NECクリエイティブ、01年刊
ブッシュ妄言録――ブッシュとおかしな仲間たち / 村井理子編 / 二見文庫(二見書房) / ¥630 / ISBN4-576-06098-8 / 親本:ぺんぎん書房、03年刊
ホーキング、未来を語る / スティーヴン・ホーキング著 / SB文庫(ソフトバンククリエイティブ) / ¥788 / ISBN4-7973-3634-X / 親本:アーティストハウス、01年刊

by urag | 2006-07-02 23:58 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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