一年前にフーリエの『愛の新世界』の
抄訳書誌情報について書きました。今日はついに全訳のご紹介ができます。
作品社より7月下旬刊行予定。訳者はビーチャーの『シャルル・フーリエ伝――幻視者とその世界』(作品社)の翻訳を手がけられた、福島知己さんです。
以下に、版元による近刊告知をご紹介します。すでに受注が開始されていますので、部数指定をご希望の書店様は作品社さんに申し込んでください。電話03-3262-9753、ファクスは03-3262-9757です。
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幻の奇書、ついにその全貌が明らかに!
愛の新世界
シャルル・フーリエ著 福島知己(1971-)訳
作品社 06年7月下旬刊行予定 本体予価7800円 A5判上製720頁 ISBN4-86182-089-8
1808年、大著『四運動の理論』(巌谷國士さんによる日本語訳が上下巻で
現代思潮新社より刊行されています)において、尖鋭なユートピア的世界の構想を世に問うたシャルル・フーリエ。その思想に共感した人々による〈フーリエ主義〉運動は、十九世紀のヨーロッパ社会において大きな影響を与えた。
本書『愛の新世界』は、そのユートピア的思想をさらに推し進めていき、性の快楽、食の快楽に至る、全面的な自由を求める壮大な構想の下、フーリエが晩年まで書き続けたものである。しかし、そのあまりに尖鋭的な内容のため、弟子たちによって危険視され、長い間封印されていた。
封印が解かれたのは、フーリエの死後の百数十年後の二十世紀半ばであり、この再発見により、従来のフーリエ評価が大転換を遂げたという画期的な書である。
本書は、フーリエの直筆原稿をもとに起された最も信頼のおけるドゥブー版を元に、草稿ノートのマイクロフィルムも参照しながら、新たに校訂を加えたもので、日本においてこの幻の書の全貌が、いま初めて明らかになる。
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フーリエは間接的に「歴史」の欲望を言い表したのであり、その点で、彼は同時に歴史家でありかつ近代人なのだ。すなわち、欲望の歴史家である。(ロラン・バルト)
性にしろ味覚にしろ、快楽は必要性の充足であることをやめ、欲望がわれわれにわれわれの存在を開示すると同時に、べつの存在となるために彼方へ行くようわれわれを誘う経験へと変化する。想像力と知識、すなわちフーリエがいう美徳と叡智。(オクタビオ・パス)
やっといまになってフーリエが読まれるようになるといえる。つまりかつて当惑した信奉者たちがしたように幻想的でスキャンダラスな部分とまじめな部分とを選り分けようとするのではなく、幻視的な部分もほかと同様意味があると考え、よりまじめな部分も幻視的な精神の跡が残っているものとして、両者ともがスキャンダラスなものと考えるようになったいまになって。(イタロ・カルヴィーノ)