
夕空に春は花ひらき
数限りなく薔薇は咲き おだやかに
金色の世界は光を放つ。おお私を引きさらえ
深紅の雲よ! その高みに消えよかし
ヘルダーリン「夕べの幻想」川村二郎訳、岩波文庫版『ヘルダーリン詩集』2002年刊、34頁。
・・・twilightといえば、テレビドラマ版「電車男」のオープニングでELOのこの名曲が流れてきた時には、私はある意味ショックでした。私は「電車男」のことは嫌いではありません。初めてネット上で顛末を一気読みした時には、何とも言えないイイ話に涙が出ました。
でも、私にとって中学高校時代の青春の思い出であるELOの名曲の数々の中でも一番好きだったこの曲が、世間的には「あ、これって電車男のだよね」と印象付けられてしまうのは嫌だ。ELOはELO、エレクトリック・ライト・オーケストラとオタクの世界とは、私の中では全然別のものなのです。
ですから、鮮やかな夕焼けを望んだ胸の内にprologue~twilightが流れてくるとき、それに覆いかぶさるようにして日本全国からの「キター」の映像が時折脳裏にじわっと浮かんでくる、混乱した自分――ついつい自身の邪魔をしてしまう意地悪な自分※――が癪なのです。ま、そんなことはどうでもいいか。ヘルダーリンの引用のあとに書くことじゃないな。うん。
※――懐かしい「ぼのぼの」に仮託して言えば「恐い考えになってしまった」という、意識の思いがけない地すべり的「流れ」。