フランス暴動――移民法とラップ・フランセ
陣野俊史(1961-)著
河出書房新社 06年2月 本体1,200円 46判並製194頁 ISBN4-309-22446-6
■帯文より:なぜ暴動なのか? なぜラップなのか? 1990年代以降の移民は井関の動きとラッパーたちの苛烈なせめぎあいから見えてくる、フランス郊外暴動の真の姿とこの世界の明日。他にない視点から、全欧を震撼させた事態の深層にせまる、緊急書き下ろしレポート。
■まえがきより:私は、彼らのリリックを聞くことがまず、この暴動に接近する道ではないか、と思った。・・・・この歌が作られたころの、フランスの社会背景を説明することで、ラップとフランス社会のぶつかり合いの歴史を少しでも叙述することができれば、フランスの暴動を、原因もわからぬまま対岸の火事として眺めるところからは脱出することができるのではないか、と考えている。
■目次:
まえがき
第一章 二〇〇五年、秋、フランス
第二章 ラップ・フランセの十五年
第三章 街と多重人格……志人(しびと)インタビュー
ラップ・フランセを知るためのグループ
あとがき
●緊急出版です。第一章は先ごろ発売された「現代思想」2月臨時増刊号(総特集=フランス暴動)に掲載された論考「ラップと暴動」に大幅加筆。第二章は、五年前白水社の「フランス」誌に半年間連載された「ヒップホップ・フランス」を下敷きに、わずか三日間で書き上げたとのことです。第三章は東京在住、23歳男性のラッパー「志人(しびと)」さんにインタビューしたもの。
●第三章について、陣野さんはこう書いています。
「日本では主として中産階級に最初に受容されたラップは、フランスのような政治性を持ち得ないと思われるかもしれないが、私はそんなことはないと考えている。メジャーのレコード会社に属さずとも、CD-Rを焼き、ライヴで販売するラッパーたちの中に、日本の「下流社会」を生きる現実をリリックに込めた者はいる。路上で少しずつオーディエンスを集め、面白い共同体を作りつつある者もいる。彼らと日本のリリックの政治性(非=政治性)について語ってみたい。」
●陣野さんがさいきん『フーリガンの社会学』(白水社クセジュ)という本も翻訳されているのは皆さんご承知の通りです。ぜひ並売・併買・併読しておきたい本です。
●ところで紀伊國屋書店新宿本店5Fの人文書売場では、「フランス暴動」をテーマにブックフェアを今月下旬に展開し、同時に「現代思想」1月号(特集=災害)を題材に、安全学関連の本も多数並べるそうです。皆様ぜひお立ち寄りください!(H)