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2006年 02月 05日
今週の注目はパッション屋良です。ファンです。あ、新刊と関係ありません。 *** アクシデント 事故と文明 ポール・ヴィリリオ(1932-)著 / 小林正巳訳 / 青土社 / ¥1,995 ■帯文より:文明は事故を発明する。安全システムの欠陥のみが、原発事故・航空機墜落・テロなどの大惨事を誘発するのではない。技術文明は常に新しい事故を発明する。テクノロジーに原罪のように予め蓄積された未知なる災禍の種子が、不可避的に突如炸裂する……。事故とは何かを根源から問う、全く新しい文明論。 ■目次 序 第一部 1 事故の発明 2 事故というテーゼ 3 事故博物館 4 事故の未来 5 期待の地平 6 未知数 第二部 7 公共的情動 8 原罪的事故 9 走行圏 文献 訳者あとがき ■原書:"L'accident originel", 2005, Galilee. ●第一部を構成する1~6はもともと、2002年11月29日から2003年3月30日にパリのカルティエ財団で開催された、事故をテーマにしたヴィリリオによる美術展「Ce qui arrive (Unknown Quantity)」のカタログにも掲載されていたテクスト群。財団で発行していたフランス語版の同カタログは残念ながらもう入手できませんが、テームズ・アンド・ハドソンから刊行されている英語版("Unknown Quantity")はまだ手に入ります。なお同名(Ce qui arrive 〔いま起こりつつあること〕)のヴィリリオの著書がありますが、これは美術展とは別物でこちらは『自殺へ向かう世界』としてNTT出版から2003年に翻訳刊行されています。 ●美術展「Ce qui arrive」については、季刊誌「インターコニュニケーション」44号(2003年春号)の巻頭カラーページで塚原史さんによる紹介が掲載されています。 ●その昔――1989年3月21日に放映されたTV番組に、NHKスペシャル「事故の博物館」というのがありました。RADICAL TVのお二人(原田大三郎さんと庄野晴彦さん)、そして浅田彰さんが手がけられた見事な番組でしたが、ここで理論的に援用されていたのはほかならぬヴィリリオでした。 ●1988年11月4日号の「朝日ジャーナル」に掲載されたヴィリリオと浅田彰さんの対談「「事故の博物館」のために」をまずご参照ください。この対談は浅田さんの対談本『「歴史の終わり」と世紀末の世界』(小学館、1994年3月)に収録され、のちに本書は『「歴史の終わり」を超えて』と改題されて中公文庫の一冊になっています。 ●TV番組「事故の博物館」については、ペヨトル工房の雑誌「ur (ウル)」no.1(特集=ハイパー・アート)に掲載された、浅田彰「〈事故の博物館〉の舞台裏」、原田大三郎(聞き手=今野裕一)「事故の博物館」、庄野晴彦(聞き手=今野裕一)「デスクトップ・ヴィデオの可能性」などをご参照ください。 ●さらに、RADICAL TVと浅田彰さん、そしてヴィリリオのつながりの一端を見るためには、季刊誌「GS」5号(UPU、1987年4月)の特集「TV進化論」をご参照ください。1985年9月15日に筑波科学博会場のSONY JUMBOTRONで上映された「TV WAR」(音楽=坂本龍一)や、1986年9月12日26:00-6:25にフジテレビで放映された「TVEV BROADCAST」などの様子がわかります。 ●『アクシデント』の原題"L'accident originel"は今回の訳書では「原罪的事故」と訳されているようですが、先の浅田/ヴィリリオ対談では「根源的アクシデント」と訳されていました。ヴィリリオは1986年に同名の論文を発表しており、これは鈴木圭介さんの訳で「GS」4号:特集=戦争機械(UPU、1986年12月)に「根源的アクシデント」として掲載されています。この「GS」4号にはヴィリリオの論文が複数掲載されています。この特集号は700頁もあって、内容がたいへん素晴らしく、戸田ツトムさんの組版造本もものすごくインパクトが強いです。私にとって、学生時代からの宝物の一冊。 ●こうして列記すると関連書や資料が分散していて、なおかつ絶版書もあるので、これらが一冊にまとまっていたら便利なんだけれどもなあと若い読者は思うかもしれません。私にとって80年代後半は、浅田彰さんに象徴されるような日本の現代思想の若き知識人たちが活動的に世界と渉りあっているさまが様々なメディアを通じて見ることができた、実に輝かしく若々しい時代だったように思います。ノスタルジーですね。ごく普通の若い人にはポカーンな話かも。 ●『アクシデント』はこれまでのヴィリリオの技術社会論の「総まとめ」のような手頃な本です。売れて当然だし、売れて欲しい本です。科学技術の悪用を善悪の観点から論じるのではなくて、もともと科学技術には「事故」が内在しているものなのだと喝破したのがヴィリリオだと思います。これは事故が内在しているのだから何が起こっても仕方ないよね、という議論ではありません。 ●何が善で何が悪かという議論の堂々巡りから一歩出て、人間の持つ知識の無垢や無謬性を根本的に疑うことから始めねばならない、ということだと思います。ヴィリリオは熱心なカトリック信徒です。彼の批判精神や懐疑はそこに源泉を持っているとも言えそうです。 ●弊社は今度、ヴィリリオの初期(70年代)作のひとつである『民衆的防衛とエコロジー闘争』を刊行します。私はヴィリリオの大ファンで、『純粋戦争』(UPU、1987年12月)の頃から愛読しているので、とてもうれしいです。『純粋戦争』は古い本ですが、内容的には今なお刺激的。若い読者の方が読んでくださるならば、復刊のために頑張っちゃおうかな。97年版のあとがきを追加して。 エクラ/ブーレーズ――響き合う言葉と音楽 ピエール・ブーレーズ(1925-)著 / 青土社 / ¥3,570 ■帯文より:音楽・思想・文学を横断する夢の競演。音楽界最後の巨星ピエール・ブーレーズを中心に、現代フランスを代表する思想家・文学者・芸術家が集って交わされた“輝き”に満ちた言葉と思索。ドゥルーズ、ブルデュー、リオタール、ベジャール、ビュトール、メシアンら錚々たる寄稿者たちの問いかけにブーレーズが応答。今日の文化創造をめぐる諸テーマを論じ尽くす。20世紀音楽そして西欧現代芸術の総決算。 ●つべこべ言わずに購読しておく本ですね。 辞書の政治学――ことばの規範とはなにか 安田敏朗(1968-)著 / 平凡社 / ¥2,940 ■帯文より:文明国標準としての辞書、国民統合の象徴、戦後国語教育……「私の辞書論」を超えて、辞書と批判的につきあうための基礎作業。ことばは誰のものか、ひとはなぜ辞書を引くのか。 ●これもつべこべ言わず購読すべき本かと。 批判感覚の再生――ポストモダン保守の呪縛に抗して 藤本一勇著 / 白沢社 / ¥1,890 ■帯文より:狂った保守主義から戦う民主主義へ。グローバル化時代のイデオロギーを撃つ! ●藤本さんの 聖堂の現象学――プルーストの『失われた時を求めて』にみる 黒岩俊介著 / 中央公論美術出版 / ¥9,450 ■版元紹介文より:小説という言語媒体を通して、時と空間を超越することによって、プルーストは自らの内面世界に、回想と記憶の大聖堂を構築する。本書は彼の『失われた時を求めて』に登場する聖堂を取り上げ、その建築体験の描写から建築的事象の本質を捉えようとした俊英の意欲作である。 アタナシオス神学の研究 関川泰寛著 / 教文館 / ¥7,875 ■版元紹介文より:キリスト論と三位一体論の歴史に不滅の足跡を残したアタナシオスの神学を様々な角度から論じ、その全体像を明らかにする。 ●正統と異端の長い論争史において、アタナシオスの功績は「正統信仰の父」「教会の柱石」として賞賛されています。異端を学ぶほうが好きな私ですが、当然正統も勉強せねばなりません。 世界エロティシズム文学 第1巻「『Bibliotheca curiosa et erotica 世界珍書解題」 島村輝監修 / ゆまに書房 / ¥11,550 ●図書館向け、研究者向けの復刻本です。「世界エロティシズム文学」全三巻。私は第1巻が欲しいです。 ●版元による紹介によれば、この全三巻は「モダニズム期におけるエロティシズム文学の紹介文献として貴重な、『Bibliotheca curiosa et erotica(世界珍書解題)』『世界好色文学史』を復刻」したもの。以下、版元の書誌情報を再整理してみます。 第1巻 『Bibliotheca curiosa et erotica 世界珍書解題』 本体11,000円/ISBN4-8433-2052-8 ベルハルト・シュテルン=シュザナ著・佐々謙自訳『Bibliotheca curiosa et erotica』は、もともと昭和3年にグロテスク社から刊行された本で、のちに『世界珍書解題』と改題して昭和5年に日本蒐癖家協会より再刊されました。原著は1921年ウィーン刊。カサノヴァ、ボッカチオ、アレティノ、レチフ、サドなど、著者の収集したエロティシズム文学の稀覯本264冊の書誌解題だそうです。 第2巻 『世界好色文学史(1)』 本体40,000円/ISBN4-8433-2053-6 第3巻 『世界好色文学史』2 本体45,000円/ISBN4-8433-2054-4 佐々謙自編著『世界好色文学史』は、昭和4年に文芸市場社から全2冊で刊行されたもので、第2巻の共編者には梅原北明と酒井潔が名を連ねています。 日本で初めて海外文学(ギリシャ・ローマ・ドイツ・フランス・ロシア)をエロティシズムの観点から体系的に記述した著書として知られるそうです。こっちは高額なので、簡単には手が出ません。 脳のなかの倫理――脳倫理学序説 マイケル・S.ガザニガ〔著〕 / 紀伊国屋書店 / ¥1,890 ■帯文より:脳科学の未来は人間に何をもたらすか? 記憶を良くし、「賢い」脳を創り、脳のなかの思想や信条が覗かれる時代が間近に迫る、その是非を問う脳倫理学、遂に日本上陸。 ●ここしばらくずーっと「脳科学」はブームですから、本書の売上も期待できそうですね。ガザニガの既訳書は以下の通りですが、ほとんど品切絶版。嗚呼。 『二つの脳と一つの心――左右の半球と認知』(ジョゼフ・E・レドゥーとの共著/柏原恵龍ほか訳/ミネルヴァ書房/80年7月) 『社会的脳――心のネットワークの発見』(杉下守弘訳/青土社/87年12月) 『マインド・マターズ――心と脳の最新科学』(田中孝顕訳/きこ書房/91年8月) *** 以上です。(H)
by urag
| 2006-02-05 18:11
| 本のコンシェルジュ
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